導電性インク、導電性インクの製造方法および透明導電膜の製造方法
【課題】印刷プロセス適合性があり、高い導電性を有する透明導電膜を印刷プロセスにより容易に製造することができる導電性インクおよびその製造方法ならびにこの導電性インクを用いた透明導電膜の製造方法を提供する。
【解決手段】導電性インクは、カーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒を含み、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下である。この導電性インクは、カーボンナノチューブを溶媒に分散させた分散液を調製し、この分散液に少なくともイオン液体を加えて攪拌することにより粘度を0.01Pa・s以上10000Pa・s以下とすることにより製造することができる。導電性インクには、必要に応じて、界面活性剤、導電性ポリマー、アルコールなどをさらに含ませる。この導電性インクを用いて印刷プロセスにより透明導電膜を製造する。
【解決手段】導電性インクは、カーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒を含み、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下である。この導電性インクは、カーボンナノチューブを溶媒に分散させた分散液を調製し、この分散液に少なくともイオン液体を加えて攪拌することにより粘度を0.01Pa・s以上10000Pa・s以下とすることにより製造することができる。導電性インクには、必要に応じて、界面活性剤、導電性ポリマー、アルコールなどをさらに含ませる。この導電性インクを用いて印刷プロセスにより透明導電膜を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導電性インク、導電性インクの製造方法および透明導電膜の製造方法に関し、例えば、タッチパネル、ディスプレイ、太陽電池などに用いられる透明導電膜の製造に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜は、タッチパネル、ディスプレイ、太陽電池といった各種の電子機器や電子素子に必須の要素材料である。現在、透明導電膜は、インジウム錫酸化物(ITO)に代表される金属酸化物のターゲットを真空装置内でスパッタリングすることにより量産されている(例えば、非特許文献1、2参照)。しかしながら、高い密閉度を必要とする真空装置内で、希少金属であるインジウムを含んだターゲットをスパッタリングする方法は高コストかつ低スループットであるという問題がある。
【0003】
そこで近年では、スパッタリング法に代わる手法として、銀インクを用いた印刷プロセスにより透明導電膜を製造する技術の開発が進められている(特許文献1、非特許文献3参照)。この方法では、真空装置が必要ではなく、成膜時に直接パターニングすること、投入材料の利用率が高いことから、成膜プロセスの低コスト化、高スループット化が期待されている。しかしながら、銀は金属であるため、反射率が高いだけでなく、エレクトロマイグレーションを起こしやすいことから信頼性に問題がある。この結果として、銀インクを用いて透明導電膜を製造する場合には膜厚を大きくする必要があるため、透明性の悪化原因となるなど、現段階で透明導電膜として量産が可能となっていない。これらの課題を解決するために銀のナノ粒子を用いた高分散インクの開発が進められているが、信頼性や透明性などを十分満足できるものは得られていない。
【0004】
近年、高い導電性を有するナノ材料であるカーボンナノチューブを用いて導電膜を製造する技術が提案されている(特許文献2参照)。カーボンナノチューブを適切な溶媒に分散させることでインク化させる技術に関しても報告がある。しかしながら、これらの従来のカーボンナノチューブインクを用いて印刷を行うと、印刷時の滲みや乾燥のために十分なパターン特性を得ることが困難であった。
【0005】
一方で近年、カーボンナノチューブとイオン液体との混合物がゲル状の組成物となるという報告がなされている(特許文献3参照)。このようなゲルは非常に高い粘度と不揮発性とを有しており、射出成形などを用いた導電体の作製に用いることが期待できる。他方でゲル状であるために、インクジェットや版を用いた印刷・転写プロセスに適用できるようなインクではない。
【0006】
また、導電性微粒子、イオン液体および有機樹脂を含有する透明導電材料が提案されている(特許文献4参照)。しかしながら、この透明導電材料においては、イオン液体、有機樹脂自体は電気伝導性を持たないため、透明導電特性の劣化要因となる。また、この透明導電材料による印刷プロセス適合性の向上などの報告はなされておらず、上記と同様の高粘度および不揮発性であるという課題が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−151361号公報
【特許文献2】国際公開WO2006/126604
【特許文献3】特開2004−142972号公報
【特許文献4】特開2008−269963号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日経エレクトロニクス、2009年11月30日号
【非特許文献2】[平成22年3月25日検索]、インターネット〈URL:http://techon.nikkeibp.co.jp/article/WORD/20060922/121370/〉
【非特許文献3】[平成22年3月25日検索]、インターネット〈URL:http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20100219/180438/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のような理由により、印刷プロセス適合性、導電性の双方が優れた導電性インクが求められているが、これまでそのような導電性インクは提案されていなかった。
【0010】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、印刷プロセス適合性があり、高い導電性を有する透明導電膜を印刷プロセスにより容易に製造することができる導電性インクを提供することである。
【0011】
この発明が解決しようとする他の課題は、印刷プロセス適合性があり、高い導電性を有する導電性インクを容易に製造することができる導電性インクの製造方法を提供することである。
【0012】
この発明が解決しようとするさらに他の課題は、上記のような優れた導電性インクを用いて高い導電性を有する透明導電膜を容易に製造することができる透明導電膜の製造方法を提供することである。
上記課題および他の課題は本明細書の記述によって明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、この発明は、
カーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒を含み、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下の導電性インクである。
【0014】
また、この発明は、
カーボンナノチューブを溶媒に分散させた分散液を調製する工程と、
上記分散液に少なくともイオン液体を加えて攪拌することにより粘度を0.01Pa・s以上10000Pa・s以下とする工程とを有する導電性インクの製造方法である。
【0015】
また、この発明は、
カーボンナノチューブをイオン液体に加える工程と、
上記カーボンナノチューブを加えた上記イオン液体を磨り潰してペースト状物を得る工程と、
上記ペースト状物を遠心分離することにより、上記カーボンナノチューブを含む上記イオン液体からなるゲル状組成物と上記イオン液体とに分離する工程と、
上記ゲル状組成物に溶媒を加えて攪拌することにより粘度を0.01Pa・s以上10000Pa・s以下とする工程とを有する導電性インクの製造方法である。
【0016】
また、この発明は、
カーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒を含み、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa0・s以下の導電性インクを基材上に印刷する工程を有する透明導電膜の製造方法である。
【0017】
導電性インクに含ませるイオン液体としては、従来公知のものを用いることができ、必要に応じて選ぶことができるが、好適には、カチオン部分がカーボンナノチューブのπ電子と相互作用するものが用いられる。また、導電性インクに含ませる溶媒としては、従来公知のものを用いることができ、必要に応じて選ぶことができるが、好適には、有機溶媒および/または水が用いられる。有機溶媒としては、好適には、例えば、アミン基、アミド基、スルホン基、カルボキシル基およびヒドロキシル基のうちの少なくとも一つを側鎖に持つ有機溶媒が用いられる。有機溶媒としては、最も好適には、水溶性有機溶媒が用いられる。水溶性有機溶媒としては、好適にはアルコール類が用いられ、具体的には、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリンなどのほか、オレイルアルコールなどの高級アルコールなどが用いられる。導電性インクに含ませるカーボンナノチューブの濃度は必要に応じて選ぶことができるが、典型的には10g/L以下である。また、導電性インク中の溶媒に対するイオン液体の体積比は必要に応じて選ぶことができるが、例えば0.01以上30以下、好適には0.01以上10以下、より好適には0.5以上2以下である。好適には、導電性インクの粘度は、ずり速度が0.01rpm以上1000rpm以下の範囲で0.01Pa・s以上10000Pa0・s以下であり、より好適には、ずり速度が0.1rpm以上100rpm以下の範囲で0.1Pa・s以上100Pa0・s以下である。また、好適には、導電性インクは、チキソトロピーインデックス値(TI値)が、ずり速度が5rpmの時の粘度に対する、ずり速度が0.5rpmの時の粘度の比で1以上10以下であり、より好適には4以上8以下である。
【0018】
導電性インクには、必要に応じて、界面活性剤および導電性ポリマーのうちの少なくとも一種以上をさらに含ませてもよく、溶媒としてアルコールを用いない場合には界面活性剤、導電性ポリマーおよびアルコールのうちの少なくとも一種以上をさらに含ませてもよい。界面活性剤としては、従来公知の各種の陰イオン(アニオン)界面活性剤、陽イオン(カチオン)界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などのいずれを用いてよく、これらのうちの2種類以上を混合して用いてもよい。導電性ポリマーとしては、従来公知の各種のものを用いることができ、必要に応じて選ばれる。導電性ポリマーは、大別して、炭化水素系のものとヘテロ原子含有系のものとがある。アルコールは、一価アルコールであっても二価アルコールなどの多価アルコールであってもよく、第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコールのいずれであってもよく、これらのうちから適宜選択される。
【0019】
上述のように構成されたこの発明においては、導電性インクは、カーボンナノチューブにより高い導電性を確保することができる。また、導電性インクは、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下であることにより、各種の印刷方法に対して印刷プロセス適合性を有する。さらに、導電性インクにおけるカーボンナノチューブ以外のイオン液体および溶媒の混合比の選択により、揮発性を低くすることができるので、印刷時の滲みや乾燥などを防止することができ、この意味でも印刷プロセス適合性を有する。また、適度な粘度および揮発性を有する導電性インクを用いることにより、カーボンナノチューブの飛散を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、印刷プロセス適合性があり、高い導電性を有する透明導電膜を印刷プロセスにより容易に製造することができる導電性インクを得ることができる。また、この優れた導電性インクを容易に製造することができる。また、この優れた導電性インクを用いて高い導電性を有する透明導電膜を容易に製造することができ、この透明導電膜を電子機器あるいは電子素子などの透明導電膜に用いることにより高性能の電子機器あるいは電子素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施例3において作製した導電性インクにおける溶媒に対するイオン液体の体積比と導電性インクの粘度との関係を示す略線図である。
【図2】この発明の実施例6において導電性インクを用いて作製された透明導電膜の原子間力顕微鏡像を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(導電性インクおよびその製造方法)
2.第2の実施の形態(透明導電膜の製造方法)
【0023】
〈1.第1の実施の形態〉
[導電性インク]
第1の実施の形態による導電性インクは、カーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒を含み、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下、典型的には例えば0.4Pa・s以上200Pa・s以下の導電性インクである。
【0024】
カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブであっても多層カーボンナノチューブであってもよく、直径や長さは特に限定されない。このカーボンナノチューブは、基本的にはどのような方法により合成したものであってもよいが、具体的には、例えば、レーザーアブレーション法、電気的アーク放電法、化学気相成長(CVD)法などにより合成することができる。
【0025】
イオン液体としては、従来公知のものを用いることができるが、好適には、カチオン部分がカーボンナノチューブのπ電子と相互作用するものが用いられる。イオン液体の具体例を挙げると次の通りである。
【0026】
・EMI−BF4 :1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート(1-ethyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate)
・DEME−BF4 :N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート(N,N-diethyl-N-methyl-N-(2-methoxyethyl)ammonium tetrafluoroborate)
・EMI−TCB:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラシアノボレート(1-ethyl-3-methylimidazolium tetracyanoborate)
・EMI−TFSI:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホン)アミド(1-ethyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethanesulfone)imide)
・EMI−FAP:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスヘート(1-ethyl-3-methylimidazolium tris(pentafluoroethyl)trifluorophosphate)
・EMI−OTf(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロメタンスルホネート(1-ethyl-3-methylimidazolium trifluorometanesulfonate) )
・P222 MOMTFSI(トリエチル(メトキシメチル)ホスホニウム ビス(トリフルオロメチルスホニル)アミド(triethyl(methoxymethyl)phosphonium bis(trifluoromethylsufonyl)imide )
【0027】
上記のイオン液体の中でも、EMI−BF4 およびDEME−BF4 が優れている。それは、これらのイオン液体は、水溶性であることにより導電性インクの溶媒として水を採用できること、高いイオン伝導性を有すること、カチオン−π相互作用に伴うカーボンナノチューブの分散化・ゲル化が起こることなどによる。一例として、DEMEBF4 のカチオン部分を示すと次の通りである。
【0028】
【化1】
【0029】
溶媒としては、従来公知のものを用いることができるが、好適には、アミン基、アミド基、スルホン基、カルボキシル基およびヒドロキシル基のうちの少なくとも一つを側鎖に持つ有機溶媒、取り分け水溶性有機溶媒または水が用いられる。
【0030】
導電性インクに含まれるカーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒の各組成は、必要とされる導電性を得ることができ、かつ、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下となるように適宜選ばれる。導電性インク中のカーボンナノチューブの濃度は典型的には10g/L以下である。また、導電性インクにおける溶媒に対するイオン液体の体積比は、好適には、0.01以上10以下である。
【0031】
導電性インクには、必要に応じて、界面活性剤、導電性ポリマーおよびアルコールのうちの少なくとも一種以上をさらに含ませてもよい。界面活性剤の具体例を挙げると、次の通りである。陰イオン界面活性剤としては、C8 H17SO3 - Na+ 、C10H21SO3 - Na+ 、C12H25SO3 - Na+ 、C14H29SO3 - Na+ 、C16H33SO3 - Na+ 、C8 H17SO4 - Na+ 、C10H21SO4 - Na+ 、C11H23SO4 - Na+ 、C12H25SO4 - Na+ 、C12H25SO4 - Li+ 、C12H25SO4 - K+ 、(C12H25SO4 - )2 Ca2+、C12H25SO4 - N(CH3 )4 + 、C12H25SO4 - N(C2 H5 )4 + 、C12H25SO4 - N(C4 H9 )4 + 、C13H27SO4 - Na+ 、C14H29SO4 - Na+ 、C15H31SO4 - Na+ 、C16H33SO4 - Na+ 、C12H25CH(SO4 - Na+ )C3 H7 、C10H21CH(SO4 - Na+ )C5 H11、C13H27CH(CH3 )CH2 SO4 - Na+ 、C12H25CH(C2 H5 )CH2 SO4 - Na+ 、C11H23CH(C3 H7 )CH2 SO4 - Na+ 、C10H21CH(C4 H9 )CH2 SO4 - Na+ 、C12H25OC2 H4 SO4 - Na+ 、C12H25(OC2 H4 )2 SO4 - Na+ 、C12H25(OC2 H4 )4 SO4 - Na+ 、C8 H17OOC(CH2 )2 SO3 - Na+ 、C10H21OOC(CH2 )2 SO3 - Na+ 、C12H25OOC(CH2 )2 SO3 - Na+ 、C14H29OOC(CH2 )2 SO3 - Na+ 、p−n−C8 H17C6 H4 SO3 - Na+ 、p−n−C10H21C6 H4 SO3 - Na+ 、p−n−C12H25C6 H4 SO3 - Na+ 、C7 F15COO- K+ 、C7 F15COO- Na+ 、(CF3 )2 CF(CF2 )4 COO- Na+ 、n−C8 F17SO3 - Li+ などが挙げられる。また、陽イオン界面活性剤としては、C8 H17N(CH3 )3 + Br- 、C10H21N(CH3 )3 + Br- 、C12H25N(CH3 )3 + Br- 、C14H29N(CH3 )3 + Br- 、C16H33N(CH3 )3 + Br- 、C12H25Pyr+ Br- 、C12H25Pyr+ Cl- 、C12H25Pyr+ l- 、C16H33Pyr+ Cl- 、C12H25N+ (C2 H5 )(CH3 )2 Br- 、C12H25N+ (C8 H17)(CH3 )2 Br- 、C14H29N+ (C2 H5 )3 Br- 、C14H29N+ (C4 H9 )3 Br- などが挙げられる。また、両性界面活性剤としては、C8 H17N+ (CH3 )2 CH2 COO- 、C10H21N+ (CH3 )2 CH2 COO- 、C12H25N+ (CH3 )2 CH2 COO- 、C14H29N+ (CH3 )2 CH2 COO- 、C16H33N+ (CH3 )2 CH2 COO- 、C10H21CH(Pyr+ )COO- 、C14H29CH(Pyr+ )COO- などが挙げられる。また、非イオン界面活性剤としては、C8 H17CHOHCH2 OH、C12H25CHOHCH2 CH2 OH、C8 H17(OC2 H4 )3 OH、C10H21(OC2 H4 )4 OH、C11H23(OC2 H4 )8 OH、C12H25(OC2 H4 )2 OH、C12H25(OC2 H4 )4 OH、C12H25(OC2 H4 )6 OH、C12H25(OC2 H4 )8 OH、C13H27(OC2 H4 )8 OH、C14H29(OC2 H4 )8 OH、C15H31(OC2 H4 )8 OH、p−t−C8 H17C6 H4 O(C2 H4 O)2 H、p−t−C8 H17C6 H4 O(C2 H4 O)8 H、n−オクチル−β−D−グルコシド、n−デシル−β−D−グルコシドなどが挙げられる。必要に応じて、これらの界面活性剤を2種類以上混合して使用してもよい。これらの界面活性剤の中でも、カーボンナノチューブの分散しやすさの点から、陰イオン界面活性剤の一種であるC12H25SO4 - Na+ (硫酸ドデシルナトリウム(SDS))が特に好ましいが、これに限られるものではない。導電性ポリマーの具体例を挙げると、次の通りである。炭化水素系導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン、ポリナフタレンなどが挙げられる。ヘテロ原子含有系導電性ポリマーとしては、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテンなどが挙げられる。アルコールの具体例を挙げると、メチルアルコール(メタノール)、エチルアルコール(エタノール)、プロピルアルコール(プロパノール)、ブチルアルコール(ブタノール)、ペンチルアルコール(ペンタノール)、エチレングリコールなどである。
【0032】
[導電性インクの製造方法]
この導電性インクの製造方法について説明する。
第1の製造方法では、カーボンナノチューブを溶媒に分散させた分散液を調製し、この分散液に少なくともイオン液体を加えて攪拌することにより粘度を0.01Pa・s以上10000Pa・s以下とすることにより導電性インクを製造する。
【0033】
第2の製造方法では、カーボンナノチューブをイオン液体に加え、このカーボンナノチューブを加えたイオン液体を磨り潰してペースト状物を得て、このペースト状物を遠心分離することにより、カーボンナノチューブを含むイオン液体からなるゲル状組成物とイオン液体とに分離し、このゲル状組成物に溶媒を加えて攪拌することにより粘度を0.01Pa・s以上10000Pa・s以下とすることにより導電性インクを製造する。
【0034】
〈実施例1〉
1.株式会社名城ナノカーボン製のカーボンナノチューブ(グレードFH−P)を0.1g採取し、これをガラス瓶に入れられた水およびイソプロピルアルコールの混合溶媒(混合体積比は1:1)100mlに加える。
2.カーボンナノチューブを加えたガラス瓶を超音波式ホモジナイザーにて出力50Wで10分間ホモジナイズ処理を行い、カーボンナノチューブの分散液を調製する。
3.次に、この分散液に対して、室温で10000Gの遠心分離処理を行い、90mlの上澄み液を回収する。
4.上澄み液を回収した残りの分散液に90mlのEMI−BF4 (イオン液体)を加え、撹拌器を用いて3時間撹拌する。
5.こうして得られたインクを30時間安置する。
以上により導電性インクが製造される。
【0035】
〈実施例2〉
1.株式会社名城ナノカーボン製のカーボンナノチューブ(グレードAPJ)を0.1g採取し、これを10mlのDEME−BF4 (イオン液体)に加える。
2.このカーボンナノチューブとDEME−BF4 との混合物を自動乳鉢に入れ、室温で30分磨り潰し、ペースト状物を得た。次に、このペースト状物を遠心分離し、導電性微粒子を95質量%含有するイオン液体のゲル状組成物と透明なイオン液体とに分離した。
3.上記のペースト状物を遠心分離し、カーボンナノチューブを90質量%含有するイオン液体のゲル状組成物と透明なイオン液体とに分離した。
4.このゲル状組成物に、20mlの水およびジメチルホルムアミドの混合物(混合体積比1:1)を加え、超音波式ホモジナイザーにて出力50Wで10分間ホモジナイズ処理を行った。
5.こうして作製したインクを30時間安置する。
以上により導電性インクが製造される。
【0036】
〈実施例3〉
1.実施例2のインクの製造プロセス4において、加える溶媒を水、イソプロピルアルコールおよびエタノールの混合物(混合体積比2:1:1)に変更する。
2.加える溶媒の量を0.5ml、1ml、2ml、3ml、5ml、10ml、50ml、100mlに変えて、計8ロット作製する。
3.実施例2のプロセス4、5を経て導電性インクを製造する。
【0037】
実施例3により作製された導電性インクの粘度を粘度計により測定した。測定結果を図1に示す。図1の横軸は導電性インクにおける溶媒に対するイオン液体の体積比、縦軸は導電性インクの粘度を示す。図1に示すように、導電性インクにおける溶媒に対するイオン液体の体積比が0.1から30に変化すると、導電性インクの粘度は0.4Pa・sから200Pa・sに変化する。
【0038】
〈実施例4〉
1.ILJIN nanotech社製のカーボンナノチューブ(グレードCM−95)を0.1g採取し、これを30mlのDEME−BF4 (イオン液体)に加える。
2.このカーボンナノチューブとDEME−BF4 との混合物を自動乳鉢に入れ、室温で30分磨り潰し、ペースト状物を得た。次に、このペースト状物を遠心分離し、導電性微粒子を95質量%含有するイオン液体のゲル状組成物と透明なイオン液体とに分離した。
3.上記のペースト状物を遠心分離し、カーボンナノチューブを90質量%含有するイオン液体のゲル状組成物と透明なイオン液体とに分離した。
4.このゲル状組成物に、40mlの水、イソプロピルアルコールおよびエタノールの混合物(混合体積比1:1:1)を加え、超音波式ホモジナイザーにて出力50Wで10分間ホモジナイズ処理を行った。
5.こうして作製したインクを30時間安置する。
以上により導電性インクが製造される。
【0039】
実施例4により作製された導電性インクの粘度は11.2Pa・sであり、TI値を測定したところ、ずり速度が5rpmの時の粘度に対する、ずり速度が0.5rpmの時の粘度の比で6.15であった。
【0040】
以上のように、この第1の実施の形態による導電性インクは、カーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒を含み、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下であることにより、高い導電性に加えて印刷プロセス適合性を有している。このため、この優れた導電性インクを用いることにより、高い導電性を有する透明導電膜を印刷プロセスにより容易に製造することができる。
【0041】
〈2.第2の実施の形態〉
[透明導電膜の製造方法]
第2の実施の形態による透明導電膜の製造方法においては、第1の実施の形態による導電性インクを用いて印刷プロセスにより透明導電膜を製造する。
【0042】
具体的には、カーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒を含み、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下の導電性インクを用い、印刷プロセスにより基材上に印刷することにより透明導電膜を製造する。
【0043】
基材は種々のものであってよく、必要に応じて選択することができる。具体的には、この基材としては、ガラス、石英、シリコン(特に、表面に酸化膜を形成したもの)などを用いることができ、フレキシブルな基材としては各種のプラスチック基材を用いることができる。プラスチック基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネートなどからなるものを用いることができるが、これに限定されるものではない。透明プラスチック基材としては、ポリエチレンテレフタレートなどからなるものを用いることができる。印刷方法は特に限定されないが、例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、平板印刷法、凸版印刷法、オフセット印刷法、凹版印刷法、ゴム版印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
【0044】
〈実施例5〉
1.実施例1により作製された導電性インクを、50μmのラインアンドスペースで設計された凹版基板に塗布し、ステンレスブレードを用いて余分なインクを除去する。
2.この凹版をロール式のブランケットに押印し、インクをブランケットに写す。
3.インクのパターン化されたブランケットから、ポリエチレンテレフタレート基板にロール方式で押印することで、約50μmのラインアンドスペースを持った透明導電膜を基板上に形成する。
4.10分間自然乾燥させた後、基板を純水にて3分洗浄する。
【0045】
こうして得られた透明導電膜の可視光領域での光透過性およびシート抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示すように、得られた透明導電膜は膜厚100nm、シート抵抗180Ω/□、波長550nmに対する透過率87%であり、透明導電特性が優れた透明導電膜が得られていることが分かる。
【0048】
〈実施例6〉
1.実施例2により作製された導電性インクを、ステンレス鋼製のアニロックスロールに塗布し、100μmのラインアンドスペースで設計された凸版基板にロール方式で転写した。
2.導電性インクを転写した凸版基板からポリエチレンテレフタレート基板にロール方式で押印することで、約100μmのラインアンドスペースを持った透明導電膜を形成した。
3.10分間自然乾燥させた後、基板を純水にて3分洗浄する。
【0049】
こうして得られた透明導電膜を原子間力顕微鏡(AFM)により観察した。撮影されたAFM像を図2に示す。図2に示すように、カーボンナノチューブの緻密なネットワーク構造が観察され、これにより高い導電性が得られている。
【0050】
〈実施例7〉
1.実施例4により作製された導電性インクを、100μmのラインアンドスペースが描かれたガラス製の凹版パターンにステンレス鋼製スキージーを用いて展開した。
2.対向ロールにポリエチレンテレフタレート基板を固定し、これと上記の凹版パターンとを5rpmの速度で接触させることで、約100μmのラインアンドスペースを持った透明導電膜を基板上に形成した。
3.10分間自然乾燥させた後、基板を純水にて3分洗浄する。
【0051】
こうして得られた透明導電膜の可視光領域での光透過性を測定した結果、波長550nmに対する透過率は90.5%であった。
【0052】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態による導電性インクを基板上に印刷することにより、透明導電特性が優れた透明導電膜を容易に製造することができる。この透明導電膜は、種々の電子機器あるいは電子素子に用いることができる。電子機器あるいは電子素子は、およそ透明導電膜を用いるものである限り全てのものが含まれ、用途や機能を問わない。具体的には、例えば、タッチパネル、ディスプレイ、太陽電池、光電変換素子、電界効果トランジスタ(FET)(薄膜トランジスタ(TFT)など)、分子センサーなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0053】
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0054】
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構造、構成、形状、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成、形状、材料などを用いてもよい。
【技術分野】
【0001】
この発明は、導電性インク、導電性インクの製造方法および透明導電膜の製造方法に関し、例えば、タッチパネル、ディスプレイ、太陽電池などに用いられる透明導電膜の製造に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜は、タッチパネル、ディスプレイ、太陽電池といった各種の電子機器や電子素子に必須の要素材料である。現在、透明導電膜は、インジウム錫酸化物(ITO)に代表される金属酸化物のターゲットを真空装置内でスパッタリングすることにより量産されている(例えば、非特許文献1、2参照)。しかしながら、高い密閉度を必要とする真空装置内で、希少金属であるインジウムを含んだターゲットをスパッタリングする方法は高コストかつ低スループットであるという問題がある。
【0003】
そこで近年では、スパッタリング法に代わる手法として、銀インクを用いた印刷プロセスにより透明導電膜を製造する技術の開発が進められている(特許文献1、非特許文献3参照)。この方法では、真空装置が必要ではなく、成膜時に直接パターニングすること、投入材料の利用率が高いことから、成膜プロセスの低コスト化、高スループット化が期待されている。しかしながら、銀は金属であるため、反射率が高いだけでなく、エレクトロマイグレーションを起こしやすいことから信頼性に問題がある。この結果として、銀インクを用いて透明導電膜を製造する場合には膜厚を大きくする必要があるため、透明性の悪化原因となるなど、現段階で透明導電膜として量産が可能となっていない。これらの課題を解決するために銀のナノ粒子を用いた高分散インクの開発が進められているが、信頼性や透明性などを十分満足できるものは得られていない。
【0004】
近年、高い導電性を有するナノ材料であるカーボンナノチューブを用いて導電膜を製造する技術が提案されている(特許文献2参照)。カーボンナノチューブを適切な溶媒に分散させることでインク化させる技術に関しても報告がある。しかしながら、これらの従来のカーボンナノチューブインクを用いて印刷を行うと、印刷時の滲みや乾燥のために十分なパターン特性を得ることが困難であった。
【0005】
一方で近年、カーボンナノチューブとイオン液体との混合物がゲル状の組成物となるという報告がなされている(特許文献3参照)。このようなゲルは非常に高い粘度と不揮発性とを有しており、射出成形などを用いた導電体の作製に用いることが期待できる。他方でゲル状であるために、インクジェットや版を用いた印刷・転写プロセスに適用できるようなインクではない。
【0006】
また、導電性微粒子、イオン液体および有機樹脂を含有する透明導電材料が提案されている(特許文献4参照)。しかしながら、この透明導電材料においては、イオン液体、有機樹脂自体は電気伝導性を持たないため、透明導電特性の劣化要因となる。また、この透明導電材料による印刷プロセス適合性の向上などの報告はなされておらず、上記と同様の高粘度および不揮発性であるという課題が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−151361号公報
【特許文献2】国際公開WO2006/126604
【特許文献3】特開2004−142972号公報
【特許文献4】特開2008−269963号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日経エレクトロニクス、2009年11月30日号
【非特許文献2】[平成22年3月25日検索]、インターネット〈URL:http://techon.nikkeibp.co.jp/article/WORD/20060922/121370/〉
【非特許文献3】[平成22年3月25日検索]、インターネット〈URL:http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20100219/180438/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のような理由により、印刷プロセス適合性、導電性の双方が優れた導電性インクが求められているが、これまでそのような導電性インクは提案されていなかった。
【0010】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、印刷プロセス適合性があり、高い導電性を有する透明導電膜を印刷プロセスにより容易に製造することができる導電性インクを提供することである。
【0011】
この発明が解決しようとする他の課題は、印刷プロセス適合性があり、高い導電性を有する導電性インクを容易に製造することができる導電性インクの製造方法を提供することである。
【0012】
この発明が解決しようとするさらに他の課題は、上記のような優れた導電性インクを用いて高い導電性を有する透明導電膜を容易に製造することができる透明導電膜の製造方法を提供することである。
上記課題および他の課題は本明細書の記述によって明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、この発明は、
カーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒を含み、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下の導電性インクである。
【0014】
また、この発明は、
カーボンナノチューブを溶媒に分散させた分散液を調製する工程と、
上記分散液に少なくともイオン液体を加えて攪拌することにより粘度を0.01Pa・s以上10000Pa・s以下とする工程とを有する導電性インクの製造方法である。
【0015】
また、この発明は、
カーボンナノチューブをイオン液体に加える工程と、
上記カーボンナノチューブを加えた上記イオン液体を磨り潰してペースト状物を得る工程と、
上記ペースト状物を遠心分離することにより、上記カーボンナノチューブを含む上記イオン液体からなるゲル状組成物と上記イオン液体とに分離する工程と、
上記ゲル状組成物に溶媒を加えて攪拌することにより粘度を0.01Pa・s以上10000Pa・s以下とする工程とを有する導電性インクの製造方法である。
【0016】
また、この発明は、
カーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒を含み、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa0・s以下の導電性インクを基材上に印刷する工程を有する透明導電膜の製造方法である。
【0017】
導電性インクに含ませるイオン液体としては、従来公知のものを用いることができ、必要に応じて選ぶことができるが、好適には、カチオン部分がカーボンナノチューブのπ電子と相互作用するものが用いられる。また、導電性インクに含ませる溶媒としては、従来公知のものを用いることができ、必要に応じて選ぶことができるが、好適には、有機溶媒および/または水が用いられる。有機溶媒としては、好適には、例えば、アミン基、アミド基、スルホン基、カルボキシル基およびヒドロキシル基のうちの少なくとも一つを側鎖に持つ有機溶媒が用いられる。有機溶媒としては、最も好適には、水溶性有機溶媒が用いられる。水溶性有機溶媒としては、好適にはアルコール類が用いられ、具体的には、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリンなどのほか、オレイルアルコールなどの高級アルコールなどが用いられる。導電性インクに含ませるカーボンナノチューブの濃度は必要に応じて選ぶことができるが、典型的には10g/L以下である。また、導電性インク中の溶媒に対するイオン液体の体積比は必要に応じて選ぶことができるが、例えば0.01以上30以下、好適には0.01以上10以下、より好適には0.5以上2以下である。好適には、導電性インクの粘度は、ずり速度が0.01rpm以上1000rpm以下の範囲で0.01Pa・s以上10000Pa0・s以下であり、より好適には、ずり速度が0.1rpm以上100rpm以下の範囲で0.1Pa・s以上100Pa0・s以下である。また、好適には、導電性インクは、チキソトロピーインデックス値(TI値)が、ずり速度が5rpmの時の粘度に対する、ずり速度が0.5rpmの時の粘度の比で1以上10以下であり、より好適には4以上8以下である。
【0018】
導電性インクには、必要に応じて、界面活性剤および導電性ポリマーのうちの少なくとも一種以上をさらに含ませてもよく、溶媒としてアルコールを用いない場合には界面活性剤、導電性ポリマーおよびアルコールのうちの少なくとも一種以上をさらに含ませてもよい。界面活性剤としては、従来公知の各種の陰イオン(アニオン)界面活性剤、陽イオン(カチオン)界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などのいずれを用いてよく、これらのうちの2種類以上を混合して用いてもよい。導電性ポリマーとしては、従来公知の各種のものを用いることができ、必要に応じて選ばれる。導電性ポリマーは、大別して、炭化水素系のものとヘテロ原子含有系のものとがある。アルコールは、一価アルコールであっても二価アルコールなどの多価アルコールであってもよく、第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコールのいずれであってもよく、これらのうちから適宜選択される。
【0019】
上述のように構成されたこの発明においては、導電性インクは、カーボンナノチューブにより高い導電性を確保することができる。また、導電性インクは、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下であることにより、各種の印刷方法に対して印刷プロセス適合性を有する。さらに、導電性インクにおけるカーボンナノチューブ以外のイオン液体および溶媒の混合比の選択により、揮発性を低くすることができるので、印刷時の滲みや乾燥などを防止することができ、この意味でも印刷プロセス適合性を有する。また、適度な粘度および揮発性を有する導電性インクを用いることにより、カーボンナノチューブの飛散を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、印刷プロセス適合性があり、高い導電性を有する透明導電膜を印刷プロセスにより容易に製造することができる導電性インクを得ることができる。また、この優れた導電性インクを容易に製造することができる。また、この優れた導電性インクを用いて高い導電性を有する透明導電膜を容易に製造することができ、この透明導電膜を電子機器あるいは電子素子などの透明導電膜に用いることにより高性能の電子機器あるいは電子素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施例3において作製した導電性インクにおける溶媒に対するイオン液体の体積比と導電性インクの粘度との関係を示す略線図である。
【図2】この発明の実施例6において導電性インクを用いて作製された透明導電膜の原子間力顕微鏡像を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(導電性インクおよびその製造方法)
2.第2の実施の形態(透明導電膜の製造方法)
【0023】
〈1.第1の実施の形態〉
[導電性インク]
第1の実施の形態による導電性インクは、カーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒を含み、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下、典型的には例えば0.4Pa・s以上200Pa・s以下の導電性インクである。
【0024】
カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブであっても多層カーボンナノチューブであってもよく、直径や長さは特に限定されない。このカーボンナノチューブは、基本的にはどのような方法により合成したものであってもよいが、具体的には、例えば、レーザーアブレーション法、電気的アーク放電法、化学気相成長(CVD)法などにより合成することができる。
【0025】
イオン液体としては、従来公知のものを用いることができるが、好適には、カチオン部分がカーボンナノチューブのπ電子と相互作用するものが用いられる。イオン液体の具体例を挙げると次の通りである。
【0026】
・EMI−BF4 :1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート(1-ethyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate)
・DEME−BF4 :N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート(N,N-diethyl-N-methyl-N-(2-methoxyethyl)ammonium tetrafluoroborate)
・EMI−TCB:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラシアノボレート(1-ethyl-3-methylimidazolium tetracyanoborate)
・EMI−TFSI:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホン)アミド(1-ethyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethanesulfone)imide)
・EMI−FAP:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスヘート(1-ethyl-3-methylimidazolium tris(pentafluoroethyl)trifluorophosphate)
・EMI−OTf(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロメタンスルホネート(1-ethyl-3-methylimidazolium trifluorometanesulfonate) )
・P222 MOMTFSI(トリエチル(メトキシメチル)ホスホニウム ビス(トリフルオロメチルスホニル)アミド(triethyl(methoxymethyl)phosphonium bis(trifluoromethylsufonyl)imide )
【0027】
上記のイオン液体の中でも、EMI−BF4 およびDEME−BF4 が優れている。それは、これらのイオン液体は、水溶性であることにより導電性インクの溶媒として水を採用できること、高いイオン伝導性を有すること、カチオン−π相互作用に伴うカーボンナノチューブの分散化・ゲル化が起こることなどによる。一例として、DEMEBF4 のカチオン部分を示すと次の通りである。
【0028】
【化1】
【0029】
溶媒としては、従来公知のものを用いることができるが、好適には、アミン基、アミド基、スルホン基、カルボキシル基およびヒドロキシル基のうちの少なくとも一つを側鎖に持つ有機溶媒、取り分け水溶性有機溶媒または水が用いられる。
【0030】
導電性インクに含まれるカーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒の各組成は、必要とされる導電性を得ることができ、かつ、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下となるように適宜選ばれる。導電性インク中のカーボンナノチューブの濃度は典型的には10g/L以下である。また、導電性インクにおける溶媒に対するイオン液体の体積比は、好適には、0.01以上10以下である。
【0031】
導電性インクには、必要に応じて、界面活性剤、導電性ポリマーおよびアルコールのうちの少なくとも一種以上をさらに含ませてもよい。界面活性剤の具体例を挙げると、次の通りである。陰イオン界面活性剤としては、C8 H17SO3 - Na+ 、C10H21SO3 - Na+ 、C12H25SO3 - Na+ 、C14H29SO3 - Na+ 、C16H33SO3 - Na+ 、C8 H17SO4 - Na+ 、C10H21SO4 - Na+ 、C11H23SO4 - Na+ 、C12H25SO4 - Na+ 、C12H25SO4 - Li+ 、C12H25SO4 - K+ 、(C12H25SO4 - )2 Ca2+、C12H25SO4 - N(CH3 )4 + 、C12H25SO4 - N(C2 H5 )4 + 、C12H25SO4 - N(C4 H9 )4 + 、C13H27SO4 - Na+ 、C14H29SO4 - Na+ 、C15H31SO4 - Na+ 、C16H33SO4 - Na+ 、C12H25CH(SO4 - Na+ )C3 H7 、C10H21CH(SO4 - Na+ )C5 H11、C13H27CH(CH3 )CH2 SO4 - Na+ 、C12H25CH(C2 H5 )CH2 SO4 - Na+ 、C11H23CH(C3 H7 )CH2 SO4 - Na+ 、C10H21CH(C4 H9 )CH2 SO4 - Na+ 、C12H25OC2 H4 SO4 - Na+ 、C12H25(OC2 H4 )2 SO4 - Na+ 、C12H25(OC2 H4 )4 SO4 - Na+ 、C8 H17OOC(CH2 )2 SO3 - Na+ 、C10H21OOC(CH2 )2 SO3 - Na+ 、C12H25OOC(CH2 )2 SO3 - Na+ 、C14H29OOC(CH2 )2 SO3 - Na+ 、p−n−C8 H17C6 H4 SO3 - Na+ 、p−n−C10H21C6 H4 SO3 - Na+ 、p−n−C12H25C6 H4 SO3 - Na+ 、C7 F15COO- K+ 、C7 F15COO- Na+ 、(CF3 )2 CF(CF2 )4 COO- Na+ 、n−C8 F17SO3 - Li+ などが挙げられる。また、陽イオン界面活性剤としては、C8 H17N(CH3 )3 + Br- 、C10H21N(CH3 )3 + Br- 、C12H25N(CH3 )3 + Br- 、C14H29N(CH3 )3 + Br- 、C16H33N(CH3 )3 + Br- 、C12H25Pyr+ Br- 、C12H25Pyr+ Cl- 、C12H25Pyr+ l- 、C16H33Pyr+ Cl- 、C12H25N+ (C2 H5 )(CH3 )2 Br- 、C12H25N+ (C8 H17)(CH3 )2 Br- 、C14H29N+ (C2 H5 )3 Br- 、C14H29N+ (C4 H9 )3 Br- などが挙げられる。また、両性界面活性剤としては、C8 H17N+ (CH3 )2 CH2 COO- 、C10H21N+ (CH3 )2 CH2 COO- 、C12H25N+ (CH3 )2 CH2 COO- 、C14H29N+ (CH3 )2 CH2 COO- 、C16H33N+ (CH3 )2 CH2 COO- 、C10H21CH(Pyr+ )COO- 、C14H29CH(Pyr+ )COO- などが挙げられる。また、非イオン界面活性剤としては、C8 H17CHOHCH2 OH、C12H25CHOHCH2 CH2 OH、C8 H17(OC2 H4 )3 OH、C10H21(OC2 H4 )4 OH、C11H23(OC2 H4 )8 OH、C12H25(OC2 H4 )2 OH、C12H25(OC2 H4 )4 OH、C12H25(OC2 H4 )6 OH、C12H25(OC2 H4 )8 OH、C13H27(OC2 H4 )8 OH、C14H29(OC2 H4 )8 OH、C15H31(OC2 H4 )8 OH、p−t−C8 H17C6 H4 O(C2 H4 O)2 H、p−t−C8 H17C6 H4 O(C2 H4 O)8 H、n−オクチル−β−D−グルコシド、n−デシル−β−D−グルコシドなどが挙げられる。必要に応じて、これらの界面活性剤を2種類以上混合して使用してもよい。これらの界面活性剤の中でも、カーボンナノチューブの分散しやすさの点から、陰イオン界面活性剤の一種であるC12H25SO4 - Na+ (硫酸ドデシルナトリウム(SDS))が特に好ましいが、これに限られるものではない。導電性ポリマーの具体例を挙げると、次の通りである。炭化水素系導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン、ポリナフタレンなどが挙げられる。ヘテロ原子含有系導電性ポリマーとしては、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテンなどが挙げられる。アルコールの具体例を挙げると、メチルアルコール(メタノール)、エチルアルコール(エタノール)、プロピルアルコール(プロパノール)、ブチルアルコール(ブタノール)、ペンチルアルコール(ペンタノール)、エチレングリコールなどである。
【0032】
[導電性インクの製造方法]
この導電性インクの製造方法について説明する。
第1の製造方法では、カーボンナノチューブを溶媒に分散させた分散液を調製し、この分散液に少なくともイオン液体を加えて攪拌することにより粘度を0.01Pa・s以上10000Pa・s以下とすることにより導電性インクを製造する。
【0033】
第2の製造方法では、カーボンナノチューブをイオン液体に加え、このカーボンナノチューブを加えたイオン液体を磨り潰してペースト状物を得て、このペースト状物を遠心分離することにより、カーボンナノチューブを含むイオン液体からなるゲル状組成物とイオン液体とに分離し、このゲル状組成物に溶媒を加えて攪拌することにより粘度を0.01Pa・s以上10000Pa・s以下とすることにより導電性インクを製造する。
【0034】
〈実施例1〉
1.株式会社名城ナノカーボン製のカーボンナノチューブ(グレードFH−P)を0.1g採取し、これをガラス瓶に入れられた水およびイソプロピルアルコールの混合溶媒(混合体積比は1:1)100mlに加える。
2.カーボンナノチューブを加えたガラス瓶を超音波式ホモジナイザーにて出力50Wで10分間ホモジナイズ処理を行い、カーボンナノチューブの分散液を調製する。
3.次に、この分散液に対して、室温で10000Gの遠心分離処理を行い、90mlの上澄み液を回収する。
4.上澄み液を回収した残りの分散液に90mlのEMI−BF4 (イオン液体)を加え、撹拌器を用いて3時間撹拌する。
5.こうして得られたインクを30時間安置する。
以上により導電性インクが製造される。
【0035】
〈実施例2〉
1.株式会社名城ナノカーボン製のカーボンナノチューブ(グレードAPJ)を0.1g採取し、これを10mlのDEME−BF4 (イオン液体)に加える。
2.このカーボンナノチューブとDEME−BF4 との混合物を自動乳鉢に入れ、室温で30分磨り潰し、ペースト状物を得た。次に、このペースト状物を遠心分離し、導電性微粒子を95質量%含有するイオン液体のゲル状組成物と透明なイオン液体とに分離した。
3.上記のペースト状物を遠心分離し、カーボンナノチューブを90質量%含有するイオン液体のゲル状組成物と透明なイオン液体とに分離した。
4.このゲル状組成物に、20mlの水およびジメチルホルムアミドの混合物(混合体積比1:1)を加え、超音波式ホモジナイザーにて出力50Wで10分間ホモジナイズ処理を行った。
5.こうして作製したインクを30時間安置する。
以上により導電性インクが製造される。
【0036】
〈実施例3〉
1.実施例2のインクの製造プロセス4において、加える溶媒を水、イソプロピルアルコールおよびエタノールの混合物(混合体積比2:1:1)に変更する。
2.加える溶媒の量を0.5ml、1ml、2ml、3ml、5ml、10ml、50ml、100mlに変えて、計8ロット作製する。
3.実施例2のプロセス4、5を経て導電性インクを製造する。
【0037】
実施例3により作製された導電性インクの粘度を粘度計により測定した。測定結果を図1に示す。図1の横軸は導電性インクにおける溶媒に対するイオン液体の体積比、縦軸は導電性インクの粘度を示す。図1に示すように、導電性インクにおける溶媒に対するイオン液体の体積比が0.1から30に変化すると、導電性インクの粘度は0.4Pa・sから200Pa・sに変化する。
【0038】
〈実施例4〉
1.ILJIN nanotech社製のカーボンナノチューブ(グレードCM−95)を0.1g採取し、これを30mlのDEME−BF4 (イオン液体)に加える。
2.このカーボンナノチューブとDEME−BF4 との混合物を自動乳鉢に入れ、室温で30分磨り潰し、ペースト状物を得た。次に、このペースト状物を遠心分離し、導電性微粒子を95質量%含有するイオン液体のゲル状組成物と透明なイオン液体とに分離した。
3.上記のペースト状物を遠心分離し、カーボンナノチューブを90質量%含有するイオン液体のゲル状組成物と透明なイオン液体とに分離した。
4.このゲル状組成物に、40mlの水、イソプロピルアルコールおよびエタノールの混合物(混合体積比1:1:1)を加え、超音波式ホモジナイザーにて出力50Wで10分間ホモジナイズ処理を行った。
5.こうして作製したインクを30時間安置する。
以上により導電性インクが製造される。
【0039】
実施例4により作製された導電性インクの粘度は11.2Pa・sであり、TI値を測定したところ、ずり速度が5rpmの時の粘度に対する、ずり速度が0.5rpmの時の粘度の比で6.15であった。
【0040】
以上のように、この第1の実施の形態による導電性インクは、カーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒を含み、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下であることにより、高い導電性に加えて印刷プロセス適合性を有している。このため、この優れた導電性インクを用いることにより、高い導電性を有する透明導電膜を印刷プロセスにより容易に製造することができる。
【0041】
〈2.第2の実施の形態〉
[透明導電膜の製造方法]
第2の実施の形態による透明導電膜の製造方法においては、第1の実施の形態による導電性インクを用いて印刷プロセスにより透明導電膜を製造する。
【0042】
具体的には、カーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒を含み、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下の導電性インクを用い、印刷プロセスにより基材上に印刷することにより透明導電膜を製造する。
【0043】
基材は種々のものであってよく、必要に応じて選択することができる。具体的には、この基材としては、ガラス、石英、シリコン(特に、表面に酸化膜を形成したもの)などを用いることができ、フレキシブルな基材としては各種のプラスチック基材を用いることができる。プラスチック基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネートなどからなるものを用いることができるが、これに限定されるものではない。透明プラスチック基材としては、ポリエチレンテレフタレートなどからなるものを用いることができる。印刷方法は特に限定されないが、例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、平板印刷法、凸版印刷法、オフセット印刷法、凹版印刷法、ゴム版印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
【0044】
〈実施例5〉
1.実施例1により作製された導電性インクを、50μmのラインアンドスペースで設計された凹版基板に塗布し、ステンレスブレードを用いて余分なインクを除去する。
2.この凹版をロール式のブランケットに押印し、インクをブランケットに写す。
3.インクのパターン化されたブランケットから、ポリエチレンテレフタレート基板にロール方式で押印することで、約50μmのラインアンドスペースを持った透明導電膜を基板上に形成する。
4.10分間自然乾燥させた後、基板を純水にて3分洗浄する。
【0045】
こうして得られた透明導電膜の可視光領域での光透過性およびシート抵抗値を測定した。その結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示すように、得られた透明導電膜は膜厚100nm、シート抵抗180Ω/□、波長550nmに対する透過率87%であり、透明導電特性が優れた透明導電膜が得られていることが分かる。
【0048】
〈実施例6〉
1.実施例2により作製された導電性インクを、ステンレス鋼製のアニロックスロールに塗布し、100μmのラインアンドスペースで設計された凸版基板にロール方式で転写した。
2.導電性インクを転写した凸版基板からポリエチレンテレフタレート基板にロール方式で押印することで、約100μmのラインアンドスペースを持った透明導電膜を形成した。
3.10分間自然乾燥させた後、基板を純水にて3分洗浄する。
【0049】
こうして得られた透明導電膜を原子間力顕微鏡(AFM)により観察した。撮影されたAFM像を図2に示す。図2に示すように、カーボンナノチューブの緻密なネットワーク構造が観察され、これにより高い導電性が得られている。
【0050】
〈実施例7〉
1.実施例4により作製された導電性インクを、100μmのラインアンドスペースが描かれたガラス製の凹版パターンにステンレス鋼製スキージーを用いて展開した。
2.対向ロールにポリエチレンテレフタレート基板を固定し、これと上記の凹版パターンとを5rpmの速度で接触させることで、約100μmのラインアンドスペースを持った透明導電膜を基板上に形成した。
3.10分間自然乾燥させた後、基板を純水にて3分洗浄する。
【0051】
こうして得られた透明導電膜の可視光領域での光透過性を測定した結果、波長550nmに対する透過率は90.5%であった。
【0052】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態による導電性インクを基板上に印刷することにより、透明導電特性が優れた透明導電膜を容易に製造することができる。この透明導電膜は、種々の電子機器あるいは電子素子に用いることができる。電子機器あるいは電子素子は、およそ透明導電膜を用いるものである限り全てのものが含まれ、用途や機能を問わない。具体的には、例えば、タッチパネル、ディスプレイ、太陽電池、光電変換素子、電界効果トランジスタ(FET)(薄膜トランジスタ(TFT)など)、分子センサーなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0053】
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0054】
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構造、構成、形状、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成、形状、材料などを用いてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒を含み、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下の導電性インク。
【請求項2】
上記イオン液体はカチオン部分がカーボンナノチューブのπ電子と相互作用するものである請求項1記載の導電性インク。
【請求項3】
上記溶媒は有機溶媒および/または水である請求項2記載の導電性インク。
【請求項4】
上記有機溶媒はアミン基、アミド基、スルホン基、カルボキシル基およびヒドロキシル基のうちの少なくとも一つを側鎖に持つ有機溶媒である請求項3記載の導電性インク。
【請求項5】
上記カーボンナノチューブの濃度が10g/L以下である請求項4記載の導電性インク。
【請求項6】
上記溶媒に対する上記イオン液体の体積比が0.01以上30以下である請求項5記載の導電性インク。
【請求項7】
界面活性剤、導電性ポリマーおよびアルコールのうちの少なくとも一種以上をさらに含む請求項6記載の導電性インク。
【請求項8】
ずり速度が0.01rpm以上1000rpm以下の範囲で粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下である請求項1記載の導電性インク。
【請求項9】
チキソトロピーインデックス値が、ずり速度が5rpmの時の粘度に対する、ずり速度が0.5rpmの時の粘度の比で1以上10以下である請求項1記載の導電性インク。
【請求項10】
カーボンナノチューブを溶媒に分散させた分散液を調製する工程と、
上記分散液にイオン液体を加えて攪拌することにより粘度を0.01Pa・s以上10000Pa・s以下とする工程とを有する導電性インクの製造方法。
【請求項11】
上記イオン液体はカチオン部分がカーボンナノチューブのπ電子と相互作用するものである請求項10記載の導電性インクの製造方法。
【請求項12】
上記溶媒は有機溶媒および/または水である請求項11記載の導電性インクの製造方法。
【請求項13】
上記導電性インク中のカーボンナノチューブの濃度が10g/L以下である請求項12記載の導電性インクの製造方法。
【請求項14】
上記溶媒に対する上記イオン液体の体積比が0.01以上30以下である請求項13記載の導電性インクの製造方法。
【請求項15】
カーボンナノチューブをイオン液体に加える工程と、
上記カーボンナノチューブを加えた上記イオン液体を磨り潰してペースト状物を得る工程と、
上記ペースト状物を遠心分離することにより、上記カーボンナノチューブを含む上記イオン液体からなるゲル状組成物と上記イオン液体とに分離する工程と、
上記ゲル状組成物に溶媒を加えて攪拌することにより粘度を0.01Pa・s以上10000Pa・s以下とする工程とを有する導電性インクの製造方法。
【請求項16】
上記イオン液体はカチオン部分がカーボンナノチューブのπ電子と相互作用するものである請求項15記載の導電性インクの製造方法。
【請求項17】
上記溶媒は有機溶媒および/または水である請求項16記載の導電性インクの製造方法。
【請求項18】
上記有機溶媒はアミン基、アミド基、スルホン基、カルボキシル基およびヒドロキシル基のうちの少なくとも一つを側鎖に持つ有機溶媒である請求項17記載の導電性インクの製造方法。
【請求項19】
カーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒を含み、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下の導電性インクを基材上に印刷する工程を有する透明導電膜の製造方法。
【請求項20】
上記イオン液体はカチオン部分がカーボンナノチューブのπ電子と相互作用するものである請求項19記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項1】
カーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒を含み、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下の導電性インク。
【請求項2】
上記イオン液体はカチオン部分がカーボンナノチューブのπ電子と相互作用するものである請求項1記載の導電性インク。
【請求項3】
上記溶媒は有機溶媒および/または水である請求項2記載の導電性インク。
【請求項4】
上記有機溶媒はアミン基、アミド基、スルホン基、カルボキシル基およびヒドロキシル基のうちの少なくとも一つを側鎖に持つ有機溶媒である請求項3記載の導電性インク。
【請求項5】
上記カーボンナノチューブの濃度が10g/L以下である請求項4記載の導電性インク。
【請求項6】
上記溶媒に対する上記イオン液体の体積比が0.01以上30以下である請求項5記載の導電性インク。
【請求項7】
界面活性剤、導電性ポリマーおよびアルコールのうちの少なくとも一種以上をさらに含む請求項6記載の導電性インク。
【請求項8】
ずり速度が0.01rpm以上1000rpm以下の範囲で粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下である請求項1記載の導電性インク。
【請求項9】
チキソトロピーインデックス値が、ずり速度が5rpmの時の粘度に対する、ずり速度が0.5rpmの時の粘度の比で1以上10以下である請求項1記載の導電性インク。
【請求項10】
カーボンナノチューブを溶媒に分散させた分散液を調製する工程と、
上記分散液にイオン液体を加えて攪拌することにより粘度を0.01Pa・s以上10000Pa・s以下とする工程とを有する導電性インクの製造方法。
【請求項11】
上記イオン液体はカチオン部分がカーボンナノチューブのπ電子と相互作用するものである請求項10記載の導電性インクの製造方法。
【請求項12】
上記溶媒は有機溶媒および/または水である請求項11記載の導電性インクの製造方法。
【請求項13】
上記導電性インク中のカーボンナノチューブの濃度が10g/L以下である請求項12記載の導電性インクの製造方法。
【請求項14】
上記溶媒に対する上記イオン液体の体積比が0.01以上30以下である請求項13記載の導電性インクの製造方法。
【請求項15】
カーボンナノチューブをイオン液体に加える工程と、
上記カーボンナノチューブを加えた上記イオン液体を磨り潰してペースト状物を得る工程と、
上記ペースト状物を遠心分離することにより、上記カーボンナノチューブを含む上記イオン液体からなるゲル状組成物と上記イオン液体とに分離する工程と、
上記ゲル状組成物に溶媒を加えて攪拌することにより粘度を0.01Pa・s以上10000Pa・s以下とする工程とを有する導電性インクの製造方法。
【請求項16】
上記イオン液体はカチオン部分がカーボンナノチューブのπ電子と相互作用するものである請求項15記載の導電性インクの製造方法。
【請求項17】
上記溶媒は有機溶媒および/または水である請求項16記載の導電性インクの製造方法。
【請求項18】
上記有機溶媒はアミン基、アミド基、スルホン基、カルボキシル基およびヒドロキシル基のうちの少なくとも一つを側鎖に持つ有機溶媒である請求項17記載の導電性インクの製造方法。
【請求項19】
カーボンナノチューブ、イオン液体および溶媒を含み、粘度が0.01Pa・s以上10000Pa・s以下の導電性インクを基材上に印刷する工程を有する透明導電膜の製造方法。
【請求項20】
上記イオン液体はカチオン部分がカーボンナノチューブのπ電子と相互作用するものである請求項19記載の透明導電膜の製造方法。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2012−97219(P2012−97219A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247266(P2010−247266)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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