説明

導電性ゴムローラ、その製造方法および電子写真画像形成装置

【課題】ローラの抵抗値が均一で長時間にわたって安定しており、高画質で良好な画像の得られる導電性ゴムローラの製造方法を提供する。
【解決手段】導電性軸芯体上に成形されている発泡ゴム層用の主剤ゴムがアクリロニトリルブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムから選択され、発泡系が、発泡剤としてp,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)のみが使用され、かつ尿素系発泡助剤を含まないものであり、発泡ゴム層の加硫発泡が、マイクロ波照射および熱風加熱による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ゴムローラおよびその製造方法に関し、更には、該導電性ゴムローラを組み込んでなる電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター等の電子写真方式の画像形成装置の多くに、帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等の導電性ゴムローラが用いられている。そして、これらゴムローラの導電性ゴム層としては、通常発泡ゴム層となっているものが多い。
【0003】
また、これらゴムローラは、装置の高速化、良画質化に応えるために、感光体との当接により一様なニップ幅を保つことが要求され、発泡ゴム層の発泡セルが緻密かつ均一であることが望まれている。
【0004】
従来これらのゴムローラは、ゴム材料に発泡剤、加硫剤等を配した原料ゴム組成物を円筒状に成形して加硫発泡させ、発泡ゴムチューブを得、それに軸芯体を圧入したり、軸芯体の周りに原料ゴム組成物層を形成し、その後該原料ゴム組成物層を加硫発泡させたりして製造されている。
【0005】
このような加硫発泡させる方法として、例えば、発泡ゴムチューブを得る場合、高圧蒸気による加硫缶加硫(特許文献1)、金型を用いた加硫方法(特許文献2)、マイクロ波照射によるマイクロ波加硫(UHF加硫)(特許文献3)等がある。
【0006】
しかしながら、加硫缶加硫では比較的微細なセルを得ることは容易であるが、発泡ゴムチューブの径方向で発泡体のセルが不均一であり、導電性ゴムローラとしたときに好ましいセル状態を表面に形成するために、軸芯体を圧入した後に、表面を砥石等で多量に研磨することが必要である。
【0007】
また、金型加硫においては、発泡ゴムローラを型内(割型)発泡法で作製することが多く、この割型では二つの金型の合わせ目が存在する。化学発泡剤を含む原料ゴム組成物をこのような割型を使用して加硫発泡を行った場合、この合わせ目に原料ゴム組成物が染込んで漏れ(パーティングライン)が生じ、脱型後の発泡ゴムにはこの影響が現れ、例えば電気抵抗、硬さ、セル形状などにおいて、この割型合わせ面で異常が発生しやすい。従って、これらの特性が均質であることが望まれる発泡ゴムローラにおいては、この特性の不均質化は大きな問題となる。
【0008】
さらに段取りに時間が掛かり、且つ再使用に当たり金型洗浄を行う必要があるため、数多く作るのには不向きであった。
【0009】
UHF加硫は、押し出し直後に連続してマイクロ波を用いて加硫発泡を行うため非常に効率の良い生産が可能である。さらにマイクロ波を用いて連続的に押し出し後の未加硫チューブを均質に加熱することから、均一な抵抗値、硬さ、セル径を有する加硫チューブを得ることができる。
【0010】
このUHF加硫で製造される導電性ローラは電気抵抗値のばらつき抑制に優れるとされているが、特許文献3では、実施例として開示されているのは、エピクロルヒドリンゴムやアクリロニトリルブタジエンゴムなどのイオン導電性ポリマーを用い、発泡剤系として発泡剤がアゾジカルボンアミドであり、尿素系発泡助剤との併用系である。このような発泡剤−発泡助剤系では、イオン導電性ポリマーを主成分とするゴム材料に使用した場合、製造された導電性ゴムローラでは、ローラ抵抗値が経時で著しく上昇してしまうという問題がある。
【0011】
電子写真画像形成装置の導電性ゴムローラにおいては、ローラ抵抗値が均一で、かつ経時で変化しないことが要求されている。
【特許文献1】特開平11−114978号公報
【特許文献2】特開2002−115714号公報
【特許文献3】特開2002−221859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
すなわち、本発明の課題は、ローラ抵抗値が均一で、長時間にわたって変動しない導電性ゴムローラの製造方法を提供すること、また、該製造方法で得られるローラの抵抗値が均一で長時間にわたって安定しており、高画質で良好な画像の得られる導電性ゴムローラを提供すること、および該導電性ゴムローラを転写ローラ等として組み込まれた電子写真画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、下記構成により達成される。
【0014】
(1)導電性軸芯体上に発泡ゴム層が成形されている導電性ゴムローラの製造方法において、発泡ゴム層用の主剤ゴムがアクリロニトリルブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムから選択され、発泡剤系が、発泡剤としてp,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)のみが使用され、かつ尿素系発泡助剤を含まないものであり、発泡ゴム層の加硫発泡が、マイクロ波照射および熱風加熱によることを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
【0015】
(2)OBSHの配合量が、発泡ゴム層の原料ゴム成分100質量部に対し1質量部以上10質量部以下である上記(1)の導電性ゴムローラの製造方法。
【0016】
(3)上記(1)、(2)の製造方法で製造されたことを特徴とする導電性ゴムローラ。
【0017】
(4)転写ローラが、上記(3)の導電性ゴムローラであることを特徴とする電子写真画像形成装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、発泡剤としてp,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)のみを使用し、尿素系の発泡助剤を含んでいないので、また、加硫発泡がマイクロ波を使用した短時間で行われるので、発泡ゴム層が効率的に形成されると共に、製造された導電性ゴムローラは長時間にわたって均一で安定したローラ抵抗値を有しており、電子写真画像形成装置に使用したときには、高画質で良好な画像が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明が対象とする導電性ゴムローラの斜視図を、図1に示す。
【0020】
図1において、1は少なくとも表面が導電性である導電性軸芯体であり、その表面に発泡ゴム層2が形成されている。なお、該発泡ゴム層2の上には、各種機能を付与するために、さらに表面層が形成されていても構わない。
【0021】
導電性軸芯体1は、表面が導電性であれば特に限定されないが、鉄、銅、真鍮、SUS等の金属、導電性カーボンブラック、金属粉、金属繊維、炭素繊維、導電性金属酸化物等の導電性材料を含む樹脂等の導電性材料の円柱あるいは円筒、樹脂製の円柱あるいは円筒の表面にニッケル等の導電性金属層を形成したもの等が使用可能である。好ましくは、金属製の円柱、円筒であり、さらに表面がニッケル等でメッキされているものが好ましい。また、導電性軸芯体1の外径としては、導電性ゴムローラの使用目的により適宜変えられるが、電子写真画像形成装置用に使用する場合、通常、4mmから10mmの範囲とするのが適当である。
【0022】
導電性軸芯体1の上に形成される発泡ゴム層2は、本発明では、主剤ゴムとしてアクリルニトリルブタジエンゴム(以下、NBR)およびエピクロルヒドリンゴム(以下、CHR)から選択され、これに発泡剤、加硫剤、加硫促進剤、導電剤、充填剤等が配合ざれたゴム原料を加硫発泡したものである。
【0023】
本発明では、主剤ゴムとして、NBRおよびCHRから選択して使用するが、その他、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム等のゴム材料、ポリスチレン系高分子材料、ポリオレフィン系高分子材料、ポリエステル系高分子材料、ポリウレタン系高分子材料、熱可塑性エラストマー、アクリル系樹脂等の高分子材料を必要により混合して用いてもよい。
【0024】
本発明では、発泡剤としてp,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(以下、OBSH)のみを使用し、尿素系発泡助剤は全く使用しない。
【0025】
すなわち、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(以下、ADCA)を用いると、ADCAの分解生成物としてアンモニアやシアン酸等の物質が生成し、これらの分解生成物が発泡ゴム層中でイオン導電材として作用したり、発泡ゴム層の極性を変化させたりすることにより経時でローラ抵抗値が大きく変動してしまうという問題が生じる。特に高温高湿環境(例えば32.5℃/80%RH)におけるローラ抵抗値の上昇が大きい。また、尿素系発泡助剤を用いた場合もアンモニア等が生成し、ADCAを用いた場合と同様に経時でローラ抵抗値が大きく上昇してしまい実用には適さないという問題が生じてしまう。
【0026】
その他の発泡剤として、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(以下、DPT)や炭酸水素ナトリウムが挙げられる。DPTは分解時に有害なホルムアルデヒドが発生することおよびそのもの自体が変異原性を疑われており、人体への安全性に劣るという欠点を持っている。炭酸水素ナトリウムは均一な発泡を得難く、ローラ抵抗値の環境変動を悪化させるという欠点がある。
【0027】
OBSHの配合量は、発泡ゴム層の固さ、発泡度、使用目的等により適宜決定することが可能であるが、本発明では、ゴム原料中のポリマー成分100質量部に対し1質量部以上10質量部以下とするのが適当である。なお、OBSHの配合量が1質量部より少ないと発泡ガス量が少なすぎるため良好な発泡状態を得ることができず、10質量部より多いとOBSHによる加硫阻害があるので、発泡ゴム層の加硫不足となることが多く、導電性ゴムローラとして使用した際に汚染性等の問題が生じる。さらに、OSBHは高価な発泡剤であるため、材料コストが上昇してしまうという問題も生じる。
【0028】
加硫剤としては、NBR、CHRの加硫剤として使用可能なものはいずれも使用可能であるが、例えば、硫黄、有機過酸化物等を挙げることが可能であり、硫黄が好ましい。また、加硫促進剤としては、チウラム系、チアゾール系、グアニジン系、スルフェンアミド系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系、これらの混合物等あり、適宜選択して使用できる。加硫促進助剤としては、酸化亜鉛等の金属酸化物、ステアリン酸等の脂肪酸等有り、適宜選択して使用できる。
【0029】
本発明では、主剤ゴムとして、NBRおよびCHRのイオン導電性ゴムを使用しているので、必ずしも必要でないが、導電性を安定化させるため、あるいは導電性を調整するために、導電性カーボンブラック、グラファイト、金属粉、カーボン繊維、金属繊維、導電性金属酸化物、樹脂粉末の表面を導電化したもの、イオン導電性化合物等を、発泡性を阻害しない範囲で、適宜配合することもできる。
【0030】
本発明では、発泡ゴム層の固さを調整するためや加工性を改良するために、カーボンブラック、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ等の充填剤を使用しても構わない。
【0031】
導電性軸芯体上に上記ゴム原料を加硫発泡させた発泡ゴム層を形成して導電性ゴムローラを製造するが、本発明では、上記ゴム原料をバンバリーミキサー、ニーダー等の密閉式混練機を用い混練した後、オープンロールとリボン成形分出し機によりリボン状に成形した後、押出機で円筒状に押出し、次いでマイクロ波加硫炉で加硫発泡し、さらに熱風加熱し加硫発泡を完結して、発泡ゴムチューブとし、次いで、この発泡ゴムチューブを目的とする導電性ゴムローラの発泡ゴム層として必要な長さに切断し、得られた発泡ゴムチューブに上記した導電性軸芯体を挿入して発泡ゴム層を有する導電性ゴムローラとする。なお、導電性軸芯体を挿入した後に発泡ゴム層の厚みを調整するため、或いは発泡ゴム層の表面を目的の表面状態にするために、さらに研磨されることがある。また、その後に、導電剤、表面粗し剤等を含む樹脂層が表面機能を整えるため表面上に表面層として形成されることがある。
【0032】
図2に、この発泡加硫に適したマイクロ波を用いる連続発泡ゴムチューブ製造装置の説明図を示す。
【0033】
この連続発泡ゴムチューブ製造装置は、押出機11、マイクロ波加硫(UHF加硫)装置12、熱風加熱(HAV加硫)装置13、引取機14及び定尺切断機15からなる。
【0034】
ゴム原料はバンバリーミキサー、ニーダー等の密閉式混練機(不図示)で混練した後、オープンロール(不図示)とリボン成形分出し機(不図示)によりリボン状に成形し、押出機11に連続投入される。押出機11からゴム原料が外径8mmから15mmで、内径2mmから8mmであるチューブ状に成形され押出され、UHF加硫装置12に搬送される。チューブ状に成形されたゴム原料はUHF加硫装置12内で0.5kWから3.0kWの範囲のマイクロ波が照射され、加硫発泡される。なお、UHF加硫装置12内ではフッ素樹脂でコートされたメッシュ状ベルトあるいはフッ素樹脂で被覆されたコロが設けられており、チューブ状に成形されたゴム原料はこのベルト(コロ)上で加硫発泡される。
【0035】
ここで、UHF加硫装置12内の温度は、通常160℃から230℃である。ここで、照射されるマイクロ波の強度は、ゴム原料の組成、チューブの厚み、搬送速度等によって適宜上記範囲内で設定する。なお、搬送速度は、通常、0.5m/minから5.0m/minの範囲が適当である。
【0036】
UHF加硫装置12内で、マイクロ波により加硫発泡されたゴムチューブは、表面がフッ素樹脂でコートされたコロによりHAV加硫装置13に搬送されて加硫が完結される。該HAV加硫装置13内は熱風により160℃から230℃にされている。
【0037】
HAV加硫装置13で加硫発泡が完結した発泡ゴムチューブは引取機14より引き取られ、さらに定尺切断機15に送られ、そこで所望の寸法に切断され、チューブ状の導電性ゴム成形物とされる。
【0038】
このチューブ状の導電性ゴム成形物に、必要に応じてホットメルト接着剤または加硫接着剤を塗布した外径4mmから10mmである導電性軸芯体を圧入し、ローラ状の成形体とする。なお、導電性ゴムローラとして外径、表面性状等が満足しているときは、このローラ状の成形体が最終の製品となるが、通常は、この成形体を、研磨砥石により研磨し、導電性ゴムローラとされる。
【0039】
なお、研磨砥石による場合は、例えば、研磨砥石GC80を取り付けた研磨機にローラ状の成形体をセットし、成形体を回転速度500rpmで回転させ、送り速度500mm/minで、ローラとしての外径、例えば、15mmになるよう研磨する。
【0040】
上記して示したような製造方法で得られた導電性ゴムローラは、必要によりさらに表面層が設けられた後、電子写真画像形成装置の帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等の感光体に当接して用いられる、柔軟性と共に導電性が必要なローラ、特に、転写ローラとして使用できる。
【0041】
図3に、上記して製造された導電性ゴムローラが組み込まれる、電子写真用プロセスカートリッジタイプの電子写真画像形成装置の一例の説明図を示す。
【0042】
この電子写真画像形成装置では、像担持体として、ドラム型の電子写真感光体(以下、「感光体」と略す。)21を備えている。感光体21は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光体21は、駆動手段(不図示)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/secで回転駆動される。
【0043】
感光体21表面は、接触帯電部材としての帯電ローラ22によって均一に帯電される。帯電ローラ22は、感光体21に接触配置されており、感光体21の矢印R1方向の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラ22には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光体21の表面は、−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理される。帯電後の感光体21の表面は、レーザスキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザ光23、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザ光により走査露光を受ける。これにより、感光体21の表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl=−150V)が形成される。
【0044】
その静電潜像は、現像装置24の現像ローラ24aに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナーが付着され、トナー像として反転現像される。
【0045】
給紙部から給搬送された紙等の転写材27が、転写ガイドにガイドされて、感光体21と転写ローラ26との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光体21上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された転写材27は、転写バイアス印加電源により転写ローラ26に印加された転写バイアスによって、表面に感光体21上のトナー像が転写される。このとき、転写材27に転写されないで感光体1表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニング装置29によって除去される。ここで、転写ローラ26として、本発明の導電性ゴムローラが使用され、導電性軸芯体1および発泡ゴム層2からなっている。
【0046】
転写部Tを通った転写材27は、感光体21から分離されて定着装置30へ導入され、ここでトナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として画像形成装置本体外部に排出される。
【0047】
ここで、感光体21、帯電ローラ22、現像装置24およびクリーニング装置25が一体となってプロセスカートリッジになっており、内蔵するトナー25が空になったときに取り替えられる。
【0048】
なお、上記では、転写ローラとして本発明の導電性ゴムローラを示したが、上記するように、帯電ローラあるいは現像ローラとしても本発明の導電性ゴムローラを用いることができる。
以下、実施例により本発明を説明する。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0050】
まず、以下の実施例、比較例で用いた原材料を説明する。
NBR:日本ゼオン株式会社製、アクリルニトリルブタジエンゴム「ニッポールDN401LL」(商品名)。
CHR:日本ゼオン株式会社製、エピクロルヒドリンゴム「ハイドリンT3106」(商品名)。
硫黄:鶴見化学工業株式会社製、硫黄「サルファックスPMC」(商品名)。
OBSH:永和化成工業株式会社製、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド「ネオセルボンN#1000S」(商品名)。
ADCA:永和化成工業株式会社製、アゾジカルボンアミド「ビニホールAC」(商品名)。尿素:永和化成工業株式会社製、尿素系発泡助剤「セルペーストK5」(商品名)。
DM:大内新興化学工業株式会社製、ジベンゾチアジルジスルフィド「ノクセラーDM−P」(商品名)。
TOT:大内新興化学工業株式会社製、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド「ノクセラーTOT−N」(商品名)。
【0051】
実施例1〜6、比較例1〜6
図2に示す加硫装置において、押出機11を除く全長は約13mであり、UHF加硫装置12は4mで、HAV加硫装置13は6mで、引取機14は1mとなっている。そして、各装置間は0.1mから1mの間で調整でき、定尺切断機15は引取機14に当接して設けられている。なお、押出機11とUHF加硫装置12の間はUHF加硫装置12内のメッシュ様ベルトが押出機11から押し出された被加硫発泡される円筒状ゴム原料を受けるようにされている。また、UHF加硫装置12とHAV加硫装置13の間は表面がフッ素樹脂でコートされたコロが設けられており、UHF加硫装置12内で加硫発泡された円筒状のゴム成形体はこのコロの上を搬送されるようになっている。ここで、UHF加硫装置11はマイクロ波出力1.5kW、槽内温度200℃とされており、また、HAV加硫装置13内は200℃になるよう保たれている。
【0052】
表1に示す組成割合で、バンバリーミキサーで混練した後、オープンロールとリボン成形分出し機によりリボン状に成形したゴム原料を、押出機11に投入し、押出機11から加硫発泡後の外径が20mm、内径5mmになるように口金を調整して円筒状に押し出した。なお、OBSHの配合量により押し出す円筒状成形体の厚み、内径を変動させた。次いで、マイクロ波出力1.5kWにされたUHF加硫装置12内へ円筒状成形体を搬入し、加硫発泡させた。次いで、HAV加硫装置13内で加硫発泡を完結した円筒状成形体を引取機14で引き取り、定尺切断機により長さ230mmで切断した。
【0053】
その後、外径6mm、長さ250mmの表面に化学ニッケルメッキをした鉄製の棒にホットメルト接着剤を塗布した導電性軸芯体を圧入して、ローラ状成形体を得た。この成形体の発泡ゴム層の両端を発泡ゴム層の長さが220mmになるように突き切り、次いで表面を研磨して、外径15mmの導電性ゴムローラを得た。
【0054】
上記して作製した導電性ゴムローラの抵抗値を下記にて初期と600時間経過後に測定し、600時間経過後の抵抗値の対数から初期の抵抗値の対数を引いた値をローラ抵抗値の変動量とした。なお、この変動量が0.2以下、好ましくは0.15以下であることが望ましい。結果を表1に示した。
【0055】
(導電性ゴムローラの抵抗値の測定方法)
20rpmで回転している外径30mmのステンレス製ドラムに、導電性軸芯体の両端裸出部に各4.9Nの荷重をかけて導電性ゴムローラを当接させ、連れ回る状態にする。この状態で32.5℃、80%RHの環境で導電性軸芯体とステンレス製ドラムとの間に2kVの電圧を印加し、抵抗値を導電性ゴムローラ4周分以上連続測定し、最大値と最小値の平均値を導電性ゴムローラの抵抗値とする。続いて32.5℃、80%RHの環境に導電性ゴムローラを600時間放置した後に再度抵抗値を測定する。600時間経過後の抵抗値の対数から初期の抵抗値の対数を引いた値を算出し、導電性ゴムローラのローラ抵抗値の変動量とする。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例1〜3は、主剤ゴムがNBR 80質量部およびCHR 20質量部であり、これに対して、発泡剤としてOBSH 6.0質量部、1.0質量部または10.0質量部のみが使用されており、ADCAや尿素系発泡助剤が使用されていないので、ローラ抵抗値変動量が0.15、0.12あるいは0.17と良好な結果であった。
【0058】
また、主剤ゴムがNBR単独(実施例4)、CHR単独(実施例5)あるいはCHRリッチな使用(実施例6)であっても、発泡剤としてOBSHのみを使用し、ADCAや尿素系発泡助剤を使用していないので、ローラ抵抗値の変動量が0.14から0.16と良好であった。
【0059】
一方、発泡系としてADCAと尿素の併用では、NBRとCHRの併用(比較例1)、それぞれの単独使用(比較例5、6)では、ローラ抵抗値の変動量は0.60から0.73と大きく、問題であった。
【0060】
発泡系にOBSHを加え、尿素系発泡助剤を減らしても、比較例2に見られるようにローラ抵抗値の変動量は0.61であり、全く尿素系発泡助剤を使用しなくても、比較例3や比較例4に見られるように、ローラ抵抗値変動量は0.44、0.23であり、所望のローラ抵抗値の変動量の範囲内にない。
【0061】
上記により作製した導電性ゴムローラを32.5℃、80%RHの環境に600時間放置した後、23℃、55%RHの環境に24時間放置した後、電子写真方式のレーザービームプリンタ「LBP−1310」の転写ローラとして組み込み、15℃、10%RHの環境で画像評価を行った。得られた画像に印字ムラを目視により調べ、下記基準で評価し、表1に示した。
◎:全く印字ムラは観察されない。
○:よく見ると印字ムラが観察されるが、実用上問題がない。
△:印字ムラが観察されるが、実用上問題がない。
×:印字ムラが顕著であり、実用上も問題がある。
【0062】
以上から明らかなように、導電性ゴムローラにおいて、発泡ゴム層の主剤ゴムがNBR、CHRまたはその混合物であり、発泡系が、発泡剤OBSHのみで、かつ尿素系発泡助剤を含まないこと、およびその加硫発泡をマイクロ波照射および熱風加熱による場合、長時間にわたって安定したローラ抵抗値を有する導電性ゴムローラを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る導電性ゴムローラの斜視図である。
【図2】本発明に係る加硫成形装置の説明図である。
【図3】本発明に係る電子写真画像形成装置の説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 導電性軸芯体
2 発泡ゴム層
11 押出機
12 マイクロ波加硫(UHF加硫)装置
13 熱風加熱(HAV加硫)装置
14 引取機
15 定尺切断機
21 感光体
22 帯電ローラ
23 露光手段
24 現像装置
24a 現像ローラ
25 トナー
26 転写ローラ
27 転写材
28 クリーニングブレード
29 クリーニング装置
30 定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸芯体上に発泡ゴム層が成形されている導電性ゴムローラの製造方法において、
発泡ゴム層用の主剤ゴムがアクリロニトリルブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムから選択され、発泡剤系が、発泡剤としてp,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)のみが使用され、かつ尿素系発泡助剤を含まないものであり、
発泡ゴム層の加硫発泡が、マイクロ波照射および熱風加熱による
ことを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項2】
OBSHの配合量が、発泡ゴム層の原料ゴム成分100質量部に対し1質量部以上10質量部以下である請求項1に記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項4】
転写ローラが、請求項3に記載の導電性ゴムローラであることを特徴とする電子写真画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−322729(P2007−322729A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152581(P2006−152581)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】