説明

導電性ゴムローラおよび導電性ゴムローラの製造方法

【課題】帯電ローラ、現像ローラおよび転写ローラ等として電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に使用することのできる、芯金とゴム層との接着状態がより安定しかつ接着力も良好な導電性ゴムローラおよびその製造方法を提供する。
【解決の手段】芯金と、該芯金の外周上に接着剤層を介して接着されたゴム層を有する導電性ゴムローラにおいて、前記接着剤層が、少なくとも親水基を有する溶媒で接着剤を希釈して調製した接着剤溶液を前記芯金上に塗布して形成したものであることを特徴とする導電性ゴムローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンターおよびファクシミリ等に代表される電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に使用される帯電ローラ、現像ローラおよび転写ローラ等として用いられる導電性ゴムローラおよび導電性ゴムローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターおよびファクシミリ等に代表される電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に組み込まれる導電性ゴムローラは、一般的に導電性弾性体からなるゴム層を有する。導電性弾性体には、品質、望むべき導電性を得られやすいことからゴムが用いられることが多い。
【0003】
ゴムとしては非極性のエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)や、極性を持つアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロロヒドリン系ゴム(CO,ECO,GECO)およびアクリルゴム(ACM)等が用いられる。
【0004】
極性ゴムは自身が極性を持つため、所定の導電性に調整しやすく、ゴム練りのばらつきや成形加工時の変動がなく安定した導電性を得られやすい。しかしながら、湿度による環境変動が大きく湿度環境下の品質が不安定であることや、ゴムとしてはコストが非常に高く、品質とコストで不利になり易いと言う問題がある。
【0005】
一方、非極性ゴムは、所定の導電性に調整するために、カーボンブラック等の導電性フィラーや導電剤を添加し分散するとき、混練りバッチごとにばらつきが生じやすくその電気特性にもばらつきを生じやすいという問題がある。近年は、ゴム層の上にゴム層を形成した多層の機能層を用いることで、導電性を制御するため、上記のばらつきを小さくすることが可能になってきている。
【0006】
非極性ゴムは、上記の問題点以外の問題はなく、環境変化が小さく、コスト的にも優位であるため、多層の機能層を有する導電性ローラに広く用いられている。
【0007】
導電性ゴムローラの芯金としては、導電性および必要とされる形状精度が満たされればどのような素材でも差し支えなく使用できる。一般的には、芯金は、耐食性および耐摩擦性等を得るためにメッキが施されている。
【0008】
上記導電性ゴムローラの製造方法としては金型を用いる方法、導電性ゴム組成物をチューブ状に押出して加硫した後に、芯金に圧入する方法および未加硫の導電性ゴム組成物層を芯金に被覆してから加硫する方法などがある。これらの導電性ゴムローラの製造方法は加工性やコスト、画像形成装置用部材として要求される寸法精度や物理的および電気的特性を満たすためにそれぞれ適した製造方法を任意に選択することができる。近年では、金型を用いる方法や加硫したチューブを芯金に圧入する方法よりも、未加硫ゴム組成物層を芯金上に配置してから加硫する方法が採用されるようになった。この理由は、製造ラインの小型化や連続化に適しているためと考えられる。
【0009】
接着剤をあらかじめ必要部分に塗布した芯金の外周上に未加硫の導電性ゴム組成物層を配置せしめた後に加硫工程を有する製造方法で導電性ゴムローラを製造すると、芯金と導電性ゴム層との接着が不十分で、接着不良を発生する場合がある。特に導電性ゴム層が発泡ゴム層である際は、導電性ゴム組成物が発泡して膨れるため、芯金との密着が不十分になりやすくなる傾向にある(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
また、芯金と導電性ゴム層との接着性は芯金に起因することが多く、芯金のロット毎に接着力が大きく変動する場合があり、特に問題視されている。芯金のロット毎に接着力が大きく変動する要因としては、芯金表面のメッキ処理において用いるメッキ液の製造ロットのバラツキ、メッキ処理後の芯金の洗浄工程における洗浄処理時間や洗浄度合いの変動、芯金を保管する環境による変化等が挙げられる。
【0011】
特許文献1では、接着性の改善として、接着剤をゴム層との接着部分を超えて塗布することで接着不良の回避を試みている。しかしながら、根本である芯金とゴム層との接着性の改良については何らふれられていない。
【0012】
また、接着剤に起因する接着不良に関しては、主鎖にエステル基を有する樹脂からなる接着剤により対策が行われている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2で開示された導電性ローラは、導電性弾性体をチューブ形状に押出し成形し加硫した後に芯金を圧入して製造される。この導電性ローラにおいては、チューブ成形時にチューブ内径を芯金の外径よりも小さくすることで、芯金と導電性弾性層との接着力を確保している。このため、特許文献2には、あらかじめ必要部分に接着剤を塗布した芯金上に未加硫の導電性ゴム組成物層を配置した後に、加硫工程を経て製造される導電性ローラにおける効果については開示されていない。
【0013】
【特許文献1】特開2005−178021号公報
【特許文献2】特開2002−147435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はこれらの点を鑑みなされたものである。すなわち、本発明は、帯電ローラ、現像ローラおよび転写ローラ等として電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に用いることのできる、芯金ロットに起因するバラツキ等を抑制した、芯金とゴム層との接着がより安定しかつ接着力も良好な導電性ローラおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、本発明を完成した。すなわち、本発明は、芯金と、該芯金の外周上に接着剤層を介して接着されたゴム層を有する導電性ゴムローラにおいて、前記接着剤層が、少なくとも親水基を有する溶媒で接着剤を希釈して調製した接着剤溶液を前記芯金上に塗布して形成したものであることを特徴とする導電性ゴムローラである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、帯電ローラ、現像ローラおよび転写ローラ等として画像形成装置に用いることのできる、芯金とゴム層の接着がより安定しかつ接着力も良好な導電性ゴムローラを供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上述したように、芯金とゴム層との接着性のバラツキは、芯金に起因することが多く、芯金のロット毎に接着力が大きく変動する場合があり、特に問題視されている。接着力に劣る芯金を、接着剤塗布直前に、アルコール等の溶剤で洗浄すると、あるいは、ベーキング処理をすると、接着力が向上する場合があることから、芯金の表面状態が何らかの悪影響を及ぼしていると推測された。
【0018】
本発明者らは、上記現象に鑑みて、鋭意検討を重ねた結果、芯金のロット毎に接着力に差が出る現象の要因の一つは、芯金表面に吸着または付着した水分であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明の導電性ゴムローラは、芯金と、該芯金の外周上に接着剤層を介して接着されたゴム層を有する導電性ゴムローラにおいて、前記接着剤層が、少なくとも親水基を有する溶媒で接着剤を希釈して調製した接着剤溶液を前記芯金上に塗布して形成したものであることを特徴とする。現時点では、接着性が安定化し向上する明確な理由は定かではないが、親水基を有する溶媒で接着剤を希釈して調製した接着剤溶液を用いたことで、該芯金表面の水分子が容易に溶媒分子と結合するため、水分の影響がなくなったためと推測される。
【0020】
ここで言う親水基とは、水との相互作用の強い有極性の基(原子団)をいい、例えば、水酸基(OH)、カルボキシル基(COOH)、アミノ基(NH2)、ケトン基(CO)、スルホ基(SO3H)等が挙げられる。
【0021】
本発明において使用する、少なくとも親水基を有する溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ヘプタノール、エチルヘキサノール等のアルコール類、セロソルブ、カルビトール等のグリコール類、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルブチルケトン(MBK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ギ酸アミル等のエステル類等を挙げることができる。
【0022】
また、本発明において使用する、少なくとも親水基を有する溶媒は、8.0以上10.0以下の溶解性パラメータ値(SP値と表すことがある)を有することがより好ましい。この理由は、接着剤に使用される熱可塑性エラストマーやゴム層に使用される各種ゴムが、この範囲のSP値を持つものが多いためである。すなわち、上記SP値を有する親水基を有する溶媒を用いると、相互が溶解しやすくなる傾向があるため、SP値が近いもの同士は接着力が強固になりやすく好ましい。上記SP値を有する親水基を有する溶媒としては、例えば、アセトン、MBK、MIBK、酢酸ブチル、ヘプタノール、エチルヘキサノール、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、酪酸エチル、酢酸アミル、ギ酸アミル等を挙げることができる。
【0023】
本発明において使用する、少なくとも親水基を有する溶媒は、接着剤を溶解可能なもののなかから、接着剤の溶解性や芯金への塗布状態等を加味して好適なものを選択すればよい。
【0024】
本発明においては、接着剤として、数々のゴム用接着剤を使用することができる。ゴム用接着剤としては、加硫型接着剤とホットメルト型接着剤が挙げられる。加硫型接着剤はゴムと接着剤が架橋反応により強固に結び付き接着力が高いことが知られている。しかしながら、加硫型接着剤は、プライマー処理工程が必要であり、かつ、接着剤塗布後に焼き付け工程も必須となるため、製造コストが高くなりやすい。これに対して、ホットメルト型接着剤は、加硫型接着剤のようにプライマー処理工程や、焼き付け工程を必要としないため、製造コストで優位にある反面、加硫型接着剤のように高い接着力を得にくいことがある。本発明においては、加硫型接着剤を用いることも、ホットメルト型接着剤を用いることもできる。本発明においては、接着剤を溶解可能な、少なくとも親水基を有する溶媒で希釈して接着剤溶液の形態で用いるため、接着力が向上するので、製造コスト面で優位にあるホットメルト接着剤を用いることが好ましい。
【0025】
ホットメルト接着剤としては、少なくとも熱可塑性エラストマー成分を含むものが好ましい。具体的には、例えば、熱可塑性エラストマー成分として、例えば、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、アクリル系エラストマー等を含むホットメルト接着剤が挙げられる。本発明において使用するホットメルト接着剤は、特に限定されるものではないが、耐熱性が高いスチレン系エラストマーを含むものがより好ましい。スチレン系エラストマーを含むホットメルト接着剤としては、例えば、スリーボンド3315E(商品名、スリーボンド(株)製)を挙げることができる。
【0026】
また、本発明において使用する接着剤は、導電性を有するものが好ましい。導電性を有する接着剤を使用すると、芯金の外周上に形成された接着剤層に膜厚ムラ等が発生した場合においても、導電性ローラの抵抗ムラを抑えることができる。導電剤として、カーボン等を用いて導電化したものを用いることが好ましい。
【0027】
少なくとも親水基を有する溶媒で接着剤を希釈して接着剤溶液を調製する際の希釈倍率は特に限定するものではないが、接着力の向上という観点から、通常、使用する接着剤の体積の1〜10倍の体積の溶媒で希釈することが好ましい。親水基を有する溶媒を複数種使用するときは、各々の溶媒の体積の合計が前記範囲となるようにすればよい。このような希釈倍率とすると、充分な接着効果が得られやすい。また、親水基を有する溶媒と親水基を有していない溶媒とを併用するときは、親水基を有する溶媒は、使用する接着剤の体積の1倍以上の体積であって、親水基を有していない溶媒の体積以上の量を用いることが好ましい。このようにすると、充分な接着効果を得ることができる。
【0028】
芯金としては、導電性および必要とされる形状精度が満たされればどのような素材を使用しても、本発明の効果は損なわれない。一例を挙げれば、芯金にはコストおよび加工性の面から鉄材が一般的に使用され、さらに、耐食性および耐摩擦性等を得るためにその表面にメッキが施される。一般的なメッキ方法としては電解メッキ法と無電解メッキ法の大きく2つの方法がある。通常、後者の方がメッキ膜厚の均一性に優れているために高い精度が得られ、かつピンホール等の欠陥が少ない。また耐食性に優れるという点から本発明において好ましく用いられる。さらに、芯金としては、無電解メッキの中でも無電解ニッケルメッキを表面に施したものが好ましい。無電解ニッケルメッキとするとメッキ液の安定性やコストの面で好ましい。
【0029】
芯金への接着剤溶液の塗布方法は、特に限定されものではない。一例を挙げれば、両端部をチャックした芯金を周方向に回転させながら、接着剤溶液を含浸させたウレタンスポンジ等の各種スポンジで芯金に押し当てて塗布する方法や、ロールコータ等の機器を用いても何ら差し支えない。接着剤層の膜厚は特に限定するものではないが、2〜20μmが好ましく、4〜10μmがより好ましい。接着剤層の膜厚を2μm以上とすると本発明の効果が発揮しやすくなり、20μm以下とすると十分な接着力が得られ、かつ、使用する接着剤を節減することができる。
【0030】
本発明におけるゴム層を形成するために用いるゴム組成物は、特に限定をされるものではない。一例を挙げれば、ゴム組成物としてエチレンープロピレン共重合ゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(以下EPDMと約す場合がある)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、エピクロルヒドリン系ゴム(CO、ECO、GECO)等のゴムに、カーボンブラック等のフィラー類、導電剤、加硫促進剤、加硫剤、軟化剤、発泡剤等の添加剤を加えたものを混練りして得ることができる。上記ゴムの中でEPRは極性が低く、主鎖にジエン成分を含まないため、接着性が悪いゴムとして知られるが、本発明の効果により、EPRもなんら問題なく使用することができる。
【0031】
加硫剤としては、過酸化物系加硫剤および硫黄系加硫剤のどちらも使用できるが、工程の制約が多い過酸化物加硫剤より、硫黄系加硫剤がより好ましい。また、ゴム層をソリッドゴム層とする場合においても、発泡剤を用いて発泡させ発泡ゴム層とする場合においても、特に問題なくどちらも使用することができる。特に発泡ゴム層とする場合は、一般的には、ソリッドゴム層とする場合より発泡時のゴム層の膨張や発泡ガス残渣等により接着力が不利になる傾向が高いが、本発明によれば発泡ゴム層とする場合においても十分な効果を引き出すことができる。
【0032】
発泡ゴム層とするときは、各種発泡剤を使用すればよい。発泡度合いの制御の容易さから、通常、有機発泡剤を用いることが好ましい。
【0033】
導電性ゴムローラの製造方法としては、金型を用いる方法、チューブ状に押出したゴム組成物を加硫した後に芯金に圧入する方法および未加硫ゴムを芯金に被覆してから加硫する方法等の製造方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。製造ラインの小型化や連続化に適している等の利点があることから、本発明の導電性ゴムローラの製造方法としては、次の方法が好ましい。すなわち、上記本発明の導電性ゴムローラの製造方法において、少なくとも親水性を有する溶剤で接着剤を希釈して調製した接着剤溶液を芯金に塗布して、該芯金の表面上に接着剤層を形成する工程と、該芯金の外周上にゴム組成物層を配置せしめる工程と、該工程の後に、該ゴム組成物層を加硫する工程とを有することを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法である。その中でも、前記芯金の外周上にゴム組成物層を配置せしめる工程が、押出機を用いて連続的にゴム組成物を押出すと同時に、前記接着剤溶液を塗布して形成した接着剤層を表面に有する芯金を押出機のクロスヘッドダイを通過させて、該芯金の外周上に該ゴム組成物層を配置せしめるものであるものがより好ましい。
【0034】
また、加硫工程は、金型を用いると運用コスト面で不利になることや連続生産性に劣ることから、電気炉や熱風炉を用いた、連続生産することが可能なものが好ましい。
【実施例】
【0035】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例により、なんら限定されるものではない。
【0036】
本実施例においては、下記材料を準備し使用した。
【0037】
<ゴム組成物A>
以下の原材料(a)及び(b)を準備した。
原材料(a)
・エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム(EPDM) 100質量部
[商品名:エスプレン505、住友化学(株)製]
・酸化亜鉛 5質量部
[商品名:亜鉛華2種、白水テック(株)製]
・ステアリン酸 1質量部
[商品名:ルナックS−20、花王(株)製]
・導電性カーボンブラック 10質量部
[商品名:ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックインターナショナル(株)製]
・炭酸カルシウム 20質量部
[商品名:スーパーSS、丸尾カルシウム(株)製]
・パラフィンオイル 50質量部
[商品名:ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産(株)製]
原材料(b)
・モルホリノジチオ化合物(MDB) 2質量部
[商品名:ノクセラーMDB、大内振興化学工業(株)製]
・2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT) 2質量部
[商品名:ノクセラーM、大内振興化学工業(株)製]
・ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT) 2質量部
[商品名:ノクセラーTRA、大内振興化学工業(株)製]
・硫黄 2質量部
[商品名:サルファックスPMC、鶴見化学工業(株)製]
・p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH) 10質量部
[商品名:ネオセルボン1000S、永和化成工業(株)製]
75リットルニーダーを用いて、上記原材料(a)をゴム温度130℃になるまで混練し、ゴム生地を得た。その後、ゴム生地を80℃まで冷却し、22インチロールを用いて、該ゴム生地に上記原材料(b)を80℃で10分間練り込みゴム組成物Aを得た。
【0038】
<接着剤>
接着剤として、以下のもの準備した。
・スチレン系ホットメルト接着剤(接着剤Psと表すことがある)
[商品名:スリーボンド3315E、スリーボンド(株)製]
・ポリエステル系ホットメルト接着剤(接着剤Esと表すことがある)
[商品名 PES320SB 東亞合成化学(株)製]
【0039】
<溶媒>
親水基を有する溶媒として、エタノール、アセトン、メチルブチルケトン(MBK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸ブチルおよび酪酸ブチルを準備した。また、親水基を有していない溶媒として、トルエン、ヘプタンを準備した。
【0040】
<接着剤溶液の調製>
接着剤の体積を1とした時、体積3の割合の溶媒を加えボールミルで分散溶解して希釈し接着剤溶液を準備した。複数種の溶媒を用いる場合には、各々の溶媒の体積の合計が接着剤の体積の3倍となるように加えた。例えば、実施例5に用いた接着剤溶液eの調製においては、接着剤Psの体積に対し、1.5倍の体積のMIBK及び1.5倍の体積のトルエンを用いた。調製した接着剤溶液を表1に示す。
【0041】
本実施例において得られた導電性ゴムローラのゴム層の接着性は下記の方法で評価した。
【0042】
<ゴム層の接着性の評価>
得られた導電性ゴムローラ10本の各々に、カッターの刃をゴム層から入れ、芯金に接触するまでカッター刃を入れてから、導電性ゴムローラの長手方向に10cmゴム層に切り込みを入れる。該切れ込みを切り込み幅が5mmになるように2箇所入れて、最先端部分をペンチで摘み、力を加え、切り込みを入れた範囲のゴム層が芯金からどのように引き剥がされるかを観察して接着状態を確認した。また、全て接着剤層とゴム層の境界面で剥がれが発生したときは、該導電性ゴムローラの芯金を固定し、該ゴムローラを手で握り周方向に回転させて、芯金とゴム層との境界でよじれが発生するか否かを調べた。得られた結果に基づき下記基準で接着性を評価した。
◎ :ゴム層が破壊されてもゴム層と接着剤層とが完全な密着状態にあった
○ :ゴム層が破壊されたものが10本中の8〜9本を占めたが、接着剤層とゴム層との境界面で剥がれたものが1〜2本みられた
△ :全て接着剤層とゴム層の境界面で剥がれが発生したが、上記よじれは発生せず品質的には全く問題がないレベルの接着力を有していた
× :全ての導電性ゴムローラが、接着剤層とゴム層の境界面で容易に剥がれる部分があるかまたは一部分に剥離がみられる状態であった
××:全ての導電性ゴムローラが、ゴム層と接着剤層とが全く密着していない状態であった
【0043】
[実施例1]
表面に無電解ニッケルメッキを施したSUM22材からなるφ6mm、長さ250mmの円筒状の芯金に接着剤溶液aをロールコーターを用いて塗布し乾燥して該芯金の外周上に膜厚5±1μmの接着剤層を形成した。
【0044】
次に、φ40mmのクロスヘッド押出機を用いてゴム組成物Aを、押出温度50℃、回転数20rpm、芯金上のゴム組成物層の厚みが2mmとなるように調整して押出すと同時に、連続的に上記芯金をクロスヘッド押出機のクロスヘッドダイを通過させた。こうして、接着剤層を介して上記芯金の外周上にゴム組成物層を配置せしめてローラを作製した。得られたローラを熱風炉中で200℃で30分間加熱して加硫を行い、芯金上に接着剤層を介して接着されたゴム層を有する外径がφ13mmの導電性ゴムローラを得た。得られた導電性ゴムローラのゴム層の接着性を上記の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0045】
[実施例2〜9並びに比較例1、2]
接着剤溶液aに替えてそれぞれ表1に示す接着剤溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、導電性ゴムローラを得た。得られた導電性ゴムローラのゴム層の接着性を上記の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1〜9においては、親水基を有する溶媒を用いて調製した接着剤溶液により接着剤層を形成したことで、概ね接着性が良好な導電性ゴムローラを得ることができた。これに対して、比較例1、2においては、親水基を有していない溶媒を用いて調製した接着剤溶液により接着剤層を形成したため、比較例1では、極僅かではあるが、ゴム層との接着力が不足し容易に剥がれる部分あるいは、一部分には剥離が発生した。比較例2では、ゴム層が全く密着していない状態の導電性ゴムローラが作製されるに至った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と、該芯金の外周上に接着剤層を介して接着されたゴム層を有する導電性ゴムローラにおいて、前記接着剤層が、少なくとも親水基を有する溶媒で接着剤を希釈して調製した接着剤溶液を前記芯金上に塗布して形成したものであることを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項2】
前記接着剤が、熱可塑性エラストマー成分を含むホットメルト接着剤であって、該熱可塑性エラストマー成分として少なくともスチレン系エラストマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
前記少なくとも親水基を有する溶媒が、8.0以上10.0以下の溶解性パラメータ値を有することを特徴とする請求項1又は2記載の導電性ゴムローラ。
【請求項4】
前記芯金が、無電解ニッケルメッキを表面に施したものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の導電性ゴムローラ。
【請求項5】
前記ゴム層が、発泡ゴム層であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の導電性ゴムローラ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の導電性ゴムローラの製造方法において、少なくとも親水基を有する溶媒で接着剤を希釈して調製した接着剤溶液を芯金に塗布して、該芯金の表面上に接着剤層を形成する工程と、該芯金の外周上にゴム組成物層を配置せしめる工程と、該工程の後に、該ゴム組成物層を加硫する工程とを有することを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項7】
前記芯金の外周上にゴム組成物層を配置せしめる工程が、押出機を用いて連続的にゴム組成物を押出すと同時に、前記接着剤溶液を塗布して形成した接着剤層を表面に有する芯金を押出機のクロスヘッドダイを通過させて、該芯金の外周上に該ゴム組成物層を配置せしめるものであることを特徴とする請求項6に記載の導電性ゴムローラの製造方法。

【公開番号】特開2008−134296(P2008−134296A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318422(P2006−318422)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】