説明

導電性ゴムローラの製造方法および導電性ゴムローラ

【課題】容易に導電性を付与できるカーボンブラックを含むゴム組成物を押出し工程で押出し後、無加圧下で加硫する加硫工程を経て製造される導電性ゴムローラにおいて、電気抵抗の安定した導電性ゴムローラを提供すること。
【解決の手段】カーボンブラックとゴム成分を含むゴム組成物を混練りする混練工程と、ゴム組成物を押出しする押出工程と、押出ししたゴム組成物を無加圧下で加硫する加硫工程を経て導電性ゴムローラを製造する際に、混練工程以前にカーボンブラックの水分量を0.03質量%以上0.80質量以下に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、特に電子写真等における帯電ローラ、転写ローラ等として利用できる導電性ゴムローラ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターなどの電子写真方式の画像形成装置における画像形成プロセスは以下の通りである。
【0003】
まず、感光体の表面を均一に帯電させ、この感光体に光学系から映像を投射して、光の当たった部分の帯電を消去することによって潜像を形成する。次いで、トナーの付着によるトナー像の形成(現像)、転写紙等の記録媒体へのトナー像の転写により、記録媒体へ画像をプリントする。
【0004】
感光体の表面を均一帯電するための方式としては、電圧を印加した帯電部材を感光体に所定の押圧力で当接させて感光体を所定の電位に帯電させる接触帯電方式が知られている。接触帯電方式には、ブラシ帯電方式、ブレード帯電方式、帯電ローラ方式などがある。帯電ローラを用いた帯電では、接触による均一帯電のための重要なポイントである感光体への一様な接触が、二つの回転円筒体同士によりなされる。そのため、ブラシ帯電方式やブレード帯電方式などの他の接触帯電方式の中でも帯電ローラ方式は、感光体とのマッチングに優れ、帯電効率もよく、画像形成装置において多用されている。
【0005】
帯電ローラは、感光体との接触により帯電を行うものであるため、帯電ローラが電気的に不均一な場合、その電気的な不均一性を反映した帯電濃度ムラを生じる。したがって、帯電ローラは所定の抵抗をもち、かつ電気的に均一であることが要求される。
【0006】
帯電ローラとしては、例えば、導電体たる所定の軸体(芯金)の外周面上に、少なくとも導電性ゴム弾性体層が設けられた構造を有するものが一般的である。導電性ゴム弾性体層の外周面上には、さらに必要に応じて、塗工などにより抵抗調整層や保護層が、順次積層形成される。いずれにしても、帯電ローラには、感光体ドラム等に対する均一な接触性を確保するために、良好な表面平滑性や高い寸法精度が要求されている。
【0007】
ローラの弾性体層の形成に用いられるゴム組成物としては、原料ゴムに添加剤を加えた組成ものが一般的である。原料ゴムとしては、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリン系ゴム等の各種のゴムが利用されている。添加剤としては、カーボンブラックや炭酸カルシウム等のフィラー類、加硫剤、加硫促進剤、軟化剤、導電性付与剤等が利用されている。原料ゴムに添加剤を加えたものをミキサーやニーダー等の密閉型の混練り機を用いて混練りしてゴム組成物を得ることができる。導電性ゴムローラの製造に用いられるゴム組成物では、導電性を付与する物質(導電剤)を原料ゴム(ゴム成分)に配合することが行われている。導電性を付与する物質としては、カーボンブラックは、他の導電性付与剤と比較して、粒子径やストラクチャー等のカーボンブラックの特徴により、好ましい導電性への調整が容易であること、コストが安いことなどの理由から、広く使用されている。
【0008】
しかしながら、導電剤としてカーボンブラックを用いると、導電性ゴムローラの電気抗値が安定しない場合があることが広く知られており、電気抵抗を安定化する方法として、以下の例が知られている。
【0009】
カーボンブラックは、一般的には、比表面積が大きいほど、つまり同一配合量において粒子径が小さくなるほど導電性を高くすることができる。しかしながら、比表面積の大きなカーボンブラックを用いると、導電性ゴムローラでの抵抗変動が生じる場合があった。そこで、特許文献1では、比較的比表面積が小さいカーボンブラックを多量に用いることで、電気抵抗を安定化する方法が提案されている。この特許文献1の方法は、粒子径が大きいカーボンブラックを多量に含有させることで、電気通電時にカーボンブラックの微妙な動きを封じることと、多量のカーボンブラックにより導電経路を多く持つことで、電気抵抗の安定化を図るものである。
【0010】
しかしながら、粒子径が大きいカーボンブラックで必要な電気抵抗を得るためには、多量なカーボンブラックを添加しなければならない場合が多い。カーボンブラックの多量添加は、加硫ゴムの硬度が高くなりやすく、接触帯電用の導電性ゴムローラでは、均一な接触が得られなくなる場合があった。
【0011】
また、特許文献2には、シリカが表面に固定されたカーボンブラックを用いることで、カーボンブラックとポリマーとの相互作用が良くなり、カーボンブラックの均一な分散が可能となって、電気抵抗を安定化する方法も提案されている。
【0012】
しかしながら、上記の効果を導くためには、使用されるポリマーの種類が限定されているため、それ以外のポリマーを用いると分散性の改善が得られない場合がある。また、カーボンブラックに特殊な処理をしているため、資材コストが高くなる。
【特許文献1】特開平9−62051号公報
【特許文献2】特開2003−330248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
導電性ゴムローラに用いるカーボンブラックには、粒子径に対する制約や、その製造コスト上での制約(例えば、コストのかかる特殊処理が必要であるなどの制約)がなく、如何なるカーボンブラックを用いても、電気抵抗を安定化させる導電性ゴムローラの製造方法が望まれている。
【0014】
本発明の目的は、従来のような電気抵抗の安定化を行う上でのカーボンブラックに対する粒子径や製造コストに関する制約がない導電性ゴムローラおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上述した従来技術における事情を背景とし、ゴム組成物に配合するカーボンブラックの水分量を予め所定の範囲に調節するという簡易な処理により、導電性ゴムローラの電気抵抗を効果的に安定化できるとの新たな知見に基づいてなされたものである。
【0016】
すなわち、本発明にかかる導電性ゴムローラの製造方法は、カーボンブラックとゴム成分を含むゴム組成物を混練りする混練工程と、該混練されたゴム組成物を押出しする押出工程と、押出しした該ゴム組成物を無加圧下で加硫する加硫工程と、を有する導電性ゴムローラの製造方法において、
前記ゴム組成物中に配合するカーボンブラックの水分量を、0.03質量%以上0.80質量%以下に前記混練工程前に予め調整する工程を更に有することを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法である。
【0017】
本発明にかかる導電性ゴムローラは、カーボンブラックとゴム成分を含むゴム組成物を混練り後、該混練されたゴム組成物を芯金に被覆し、加硫してなる導電性ゴムローラにおいて、前記カーボンブラックの水分量が、0.03質量%以上0.80質量%以下に混練より前に調整されたものであることを特徴とする導電性ゴムローラである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ゴム組成物に配合するカーボンブラックの水分量を予め所定の範囲に調節するという簡易な処理により、電気抵抗の安定した導電性ゴムローラを提供できる。かかる水分調節工程を追加したことで、カーボンブラックとゴム成分を含むゴム組成物を押出し工程で押出し後、無加圧下で加硫する加硫工程を経て製造される導電性ゴムローラにおいても本発明にかかる効果を得ることができる。よって、本発明の導電性ゴムローラは、電子写真等の画像形成装置に用いられる帯電ローラなどの導電性ローラに好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の導電性ゴムローラは、以下の工程を有する製造方法による製造することができる。
(A)ゴム組成物中に配合するカーボンブラックの水分量を0.03質量%以上0.80質量%以下に調整する工程。
(B)カーボンブラックとゴム成分を含むゴム組成物を混練りする混練工程。
(C)混練されたゴム組成物を押出しする押出工程。
(D)押出ししたゴム組成物を無加圧下で加硫する加硫工程。

電気抵抗を安定化するため、カーボンブラックの特性自体のバラツキについて検証を重ねた結果、本発明者らは、カーボンブラックの水分量が多くなると電気抵抗バラツキやすいことを見出し、さらなる検討を積み重ねて、以下二点を発見して本発明を完成するに至った。
【0020】
第一に、混練工程前のカーボンブラックの水分量と混練りして得られたゴム組成物の水分量は明確な相関関係がある。すなわち、カーボンブラックの水分量が高いとゴム組成物の水分量も高くなる傾向を示し、カーボンブラックの水分量がある一定値以上になると導電性ゴムローラの電気抵抗にバラツキが生じやすくなること。
【0021】
第二に、カーボンブラックの水分は、ゴム混練り工程以前にカーボンブラックから取り除かないと、その後の工程では容易に取り除けないこと。そして、カーボンブラックの水分を除去する方法は、導電性ゴムローラの電気抵抗が安定しやすいことから熱処理が好ましいこと。
【0022】
より詳しく発明について述べると、カーボンブラックの製造ロットやカーボンブラックを保管している環境での変化により、カーボンブラックに吸着する水分や不純物の微量な変化によって、導電性ゴムローラの電気抵抗にバラツキが生じやすい傾向を示すのである。
【0023】
如何なる理由で、導電性ゴム層中の水分量によりその電気抵抗がバラツクのかの詳細な理由は不明である。しかしながら、水分含量と電気抵抗のバラツキとの関連については、以下のことが推測される。すなわち、カーボンブラックの水分量がある一定値を超えると、ゴム成分部分の加硫速度が速くなり、加硫工程で水分の発泡により気泡が発生しやすくなる(以下、気泡が発生した状態をボイド不良と称する)。水分量が一定値以上になると、この気泡発生も一因となって、導電性ゴム層においてなんらかの特性の変化を起こしていることが電気抵抗のバラツキの要因と推測される。そして、カーボンブラックに吸着した水分は、ゴム練り工程での高温度での混練や、混練りして得られたゴム組成物の脱気乾燥や、ゴム配合中に水分の吸収する効果のある酸化カルシウムを多量に配合すること等では所望の水分含量まで取り除くことは非常に難しい。従って、混練りしてゴム組成物となる以前に、カーボンブラックから取り除かないと、以降の工程で取り除くことが非常に難しくなる。
【0024】
カーボンブラックから水分を除去する方法としては熱処理工程を有する方法が望ましい。熱処理工程を経ることで、ゴム組成物の加硫速度が安定化する傾向にある。その結果、得られた導電性ゴム層の電気抵抗の安定化を図ることが可能となる。
【0025】
加硫速度が安定する理由はさだかではないが、水分量のみでは判別できないカーボンブラックの吸着物が熱処理により不活性にされ、加硫速度が安定する可能性が推測される。すなわち、本発明におけるカーボンブラックの水分量に関する規定は、カーボンブラックの水分量を調節する際の目標値であるとともに、加熱処理を施す場合における上記の吸着物の不活性化という効果を得るための指標ともなる。
【0026】
加硫速度が安定すると、ゴム組成物のスコーチ防止や導電性ゴムローラの硬度バラツキの低減などに効果があると推測され、より安定した導電性ゴムローラを得られやすくなるため、電気抵抗が安定化している可能性も推測される。
【0027】
電気抵抗を安定化するカーボンブラックの水分量は少ないほど良い。ただし、熱処理によりカーボンブラックの水分量を0.03質量%未満に調整することは、大規模な装置を導入する等が必要となる。また、カーボンブラックの水分量が0.80質量%以下であれば、ボイド不良の発生を防止して導電性ゴムローラの電気抵抗のバラツキを極めて効果的に抑制可能である。
【0028】
カーボンブラックの水分量の調節のための熱処理における温度、時間等の処理条件はカーボンブラックの水分量が上記の範囲となるように設定すればよい。好ましい熱処理条件としては、(常圧下で)50〜130℃で0.5〜400時間の条件を挙げることができる。
【0029】
より好ましくは、0.03質量%以上0.50質量%以下の範囲にカーボンブラックの水分量を調整するとゴム組成物の加硫速度もより安定化する傾向にあって望ましい。すなわち、本発明によれば、カーボンブラックの水分量を範囲とすることで、同じ組成のゴム組成物でカーボンブラックの水分量がこの範囲を超えているものを用いた場合に対して得られる導電性ゴムローラの電気抵抗のバラツキを効果的に抑えることができる。
【0030】
ゴム組成物のカーボンブラックの含有量は特に限定されるものではないが、ゴム成分を100質量部としたとき、30質量部以上100質量部以下にすることが好ましい。カーボンブラックの含有量が30質量部以上であると、本発明の効果をより一層発揮しやすい。また、100質量部超えると押出工程の加工性が悪くなる場合がある。
【0031】
押出工程は、特に限定されるものではない。
【0032】
加硫工程を含む押出成形の方式としては、ゴム組成物をチューブ状に押出し後に加硫する方式、ゴム組成物を芯金に配置してから加硫する方式等が挙げられる。チューブ状に押出し後加硫する方式の場合は、加硫チューブを芯金へ圧入する工程が必要となり製造工程が多くなる。そのため、製造コストの低減という観点からは、ゴム組成物を芯金に配置して、すなわち混練されたゴム組成物で芯金を被覆し、加硫する方式がより好ましい。よって、押出工程としては、連続的に押出し機を用いて該ゴム組成物を押出すと同時に、接着剤を塗布した芯金を押出し機のクロスヘッドダイを通過させて、芯金の外周上にゴム組成物を配置する押出工程がより好ましい。
【0033】
加硫方法は、加圧加硫と無加圧加硫に分けられる。加圧加硫としては、金型を用いた加硫や直接水蒸気による加硫缶による加硫が知られているが、連続生産には適用し難いことから、コスト面で不利になる場合がある。無加圧加硫としては、熱風炉やマイクロ波加硫装置を用いた加硫が知られており、押出しから連続して成形が容易なため、加圧加硫に対してコストでは優位になりやすいため好ましい。その中でも、熱風炉加硫方式が、装置の簡略化によるコスト低減が容易でありより好ましい。
【0034】
本発明に使用するゴム組成物のゴム成分は特に限定されず、所望とする導電性ゴムローラの構造や特性に応じて適宜選択したゴム成分を用いる。ゴム成分として一例を挙げれば、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、エピクロルヒドリン系ゴム(CO、ECO、GECO)等を挙げることができる。ゴム組成物には、更に、フィラー類、導電剤、加硫促進剤、加硫剤及び軟化剤等の添加剤や各種の配合材料の少なくとも1種を、導電性ゴムローラの所望とする特性や構造に応じて配合することもできる。水分量が上記した範囲に調節されたカーボンブラックと、ゴム成分と、必要に応じて添加される添加剤と、を混練りしてゴム組成物を得ることができる。
【実施例】
【0035】
実施例および比較例では、以下の原材料を、密閉型ゴム用混練り機のニーダー(7リットル)を用いて混合して、温度130℃になるまで混練りし、加硫剤の含まれないゴム組成物を得た。次に、ロールにて以下に示した加硫配合により10分間練り込み、加硫剤含有ゴム組成物を得た。
【0036】
<ゴム組成物>
・ゴム成分及びカーボンブラック成分等
エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム 100質量部
[商品名:エスプレン505A、住友化学(株)製]
酸化亜鉛 5質量部
[商品名:亜鉛華2種、白水テック(株)製]
ステアリン酸 1質量部
[商品名:ルナックS−20、花王(株)製]
FEF級カーボンブラック 60質量部
[商品名:旭#60、旭カーボン(株)製](比表面積:40m2/g)
パラフィンオイル 50質量部
[商品名:ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産(株)製]
・加硫剤配合
2−メルカプトベンゾチアゾール 2質量部
[商品名:ノクセラーM、大内振興化学工業(株)製]
ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド 2質量部
[商品名:ノクセラーTRA、大内振興化学工業(株)製]
硫黄 2質量部
[商品名:サルファックスPMC、鶴見化学工業(株)製]
エピクロルヒドリン系ゴム 100質量部
得られたゴム組成物は、φ40mmのクロスヘッド押出し機を用いて、予め加硫接着剤を塗布したφ6mmのSUM22材に無電解ニッケルメッキを施した円柱状の芯金と同時に押出して、芯金の外周上にゴム組成物を配置せしめてローラ形状にした。次に、得られたローラを170℃で30分間熱風炉に投入して加硫を行い、研磨前導電性ゴムローラを得た。この研磨前導電性ゴムローラを、研磨砥石GC80を取り付けた研磨機にセットし、研磨条件として回転速度2000RPM、送り速度500m/分で外径がφ10mmになるように研磨し、導電性ゴムローラを得た。
【0037】
また、各例で得られた特性は、以下の方法に従って測定した。
〔カーボンブラックの水分量〕
カールフィッシャー法水分量測定装置〔装置名:AQ−7型 平沼産業(株)製〕を用いて、測定重量10g、温度150℃、窒素ガス(50ml/min)を通気して、発揮してくる水分量を測定した。カーボンブラックの水分量は、3回測定した平均値とした。
【0038】
〔ゴムローラ電流値〕
同じ水分量(調整後)のカーボンブラックを用いて、上記の成形条件で3回混練りをして、3バッチのゴム組成物を得た。その後、ゴム組成物のバッチ毎に上記の成形条件で導電性ゴムローラを10本作成して、導電性ゴムローラの電流値を確認した。電流値は10本の平均値とし、ゴム組成物3バッチ中の最大値マイナス最小値を電流値のバラツキとした。なお、電流値の確認は以下のようにして行った。まず、導電性ゴムローラの軸体に総圧1kgの荷重が掛かるように、外径30mmのアルミニウム製のドラムに、導電性ゴムローラの軸体とアルミニウム製ドラムの軸とが平行であり、かつ導電性ゴムローラの軸体の加圧方向が、アルミニウム製ドラムの軸に向かうようにこれらを圧着した。この圧着状態で、軸体とアルミドラムとの間に200Vの電圧を印加し、得られた電流を測定した。
〔初期加硫:t5
JIS K 6300に準じて、125℃で測定をした。
【0039】
〔カーボンブラック〕
納品されたカーボンブラックを冷暗所に1日から8ヶ月放置したものを用いて、熱処理調整前後で水分量を測定した。なお、各実施例における熱処理方法においては、温度、時間等は特に限定するものではなく、熱処理後のカーボンブラックの水分量0.03質量%以上0.80質量%以下に調整できれば何ら問題はない。各例で示した熱処理は、金属トレイに20kgのカーボンブラックを10cmに堆積させたものを電気炉に所定の温度、時間投入して行った。
【0040】
実施例1〜5
実施例1〜5の結果を表1に示す。各実施例では、熱処理以前の水分量が0.84質量%から1.27質量%であるカーボンブラックを、熱処理により水分量0.03質量%から0.78質量%に調整したものを用いた。カーボンブラックの製造ロットや保管状態により変化する如何なる水分量のカーボンブラックでも熱処理でその水分量を調整しているため、得られた導電性ゴムローラの電流値のバラツキ(ゴム組成物3バッチ中の最大値マイナス最小値)は、200μAから600μAと安定していた。そして、加硫速度t5も8.4から8.6分と安定した傾向を示した。また、熱処理により水分量を0.50質量%以下に調整したものは、特に導電性ゴムローラの電流値が安定していた。
【0041】
【表1】

【0042】
比較例1〜3
比較例の結果を表2に示す。各比較例で、使用したカーボンブラックは、水分量が0.84%から1.27%であるカーボンブラックを用いた。比較例で得られた導電性ゴムローラの電流値のバラツキ(ゴム組成物3バッチ中の最大値マイナス最小値)は、1620μAから3170μAと実施例に比べてバラツキが大きかった。また、加硫速度t5も7.8から8.5分とバラツキが見られた。これらの比較例では、カーボンブラックの水分量を熱処理で調整しないものや、適正値以外に調整したため、カーボンブラックの製造ロットや保管状態により変化するカーボンブラックの水分量により導電性ゴムローラの電流値にバラツキが生じたと考えられる。
【0043】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックとゴム成分を含むゴム組成物を混練りする混練工程と、該混練されたゴム組成物を押出しする押出工程と、押出しした該ゴム組成物を無加圧下で加硫する加硫工程と、を有する導電性ゴムローラの製造方法において、
前記ゴム組成物中に配合するカーボンブラックの水分量を、0.03質量%以上0.80質量%以下に前記混練工程前に予め調整する工程を更に有することを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項2】
前記カーボンブラックの水分量を調整する工程が、熱処理であって、該熱処理の条件が、50〜130℃で0.5〜400時間である請求項1に記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項3】
前記ゴム組成物のカーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分を100質量部としたとき、30質量部以上100質量部以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項4】
前記押出工程が押出し機を用いて連続的に前記ゴム組成物を押出すと同時に、接着剤を塗布した芯金を押出し機のクロスヘッドダイを通過させて、該芯金の外周上に該クロスヘッドダイから押し出されたゴム組成物を配置する工程であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項5】
前記加硫工程が熱風炉により無加圧加硫する工程であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項6】
カーボンブラックとゴム成分を含むゴム組成物を混練り後、該混練されたゴム組成物を芯金に被覆し、加硫してなる導電性ゴムローラにおいて、
前記カーボンブラックの水分量が、0.03質量%以上0.80質量%以下に混練り前に調整されたものであることを特徴とする導電性ゴムローラ。

【公開番号】特開2009−23105(P2009−23105A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185509(P2007−185509)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】