説明

導電性ナノファイバーシート及びその製造方法

【課題】導電パターン層の光線透過率を向上させ、かつヘイズ値を低下させることができる導電性ナノファイバーシート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】導電性ナノファイバーシート1は、基体シート10と、基体シート10上に形成され、導電性ナノファイバー3を含み、導電性ナノファイバー3を介して導通可能であり、目視により認識することができない大きさの複数の微小ピンホール7を有する導電パターン層6とを備えている。導電パターン層6は平面視帯状に形成され、一方向を軸方向として一定の間隔をあけるように形成されている。微小ピンホール7は、導電パターン層6の全面に渡って形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タッチパネルなどに使用する導電性ナノファイバーシートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂やガラス等よりなる基材の表面に導電層を有するナノファイバーからなる層を形成する方法として、例えば下記の特許文献1のように、バインダー樹脂を揮発性溶剤に溶解した溶液に極細導電繊維を分散させた塗液を、基材表面に塗布し、この塗布塗液を乾燥して導電層を形成する方法があった。
【0003】
【特許文献1】特許第3903159号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような方法によって得られた導電性ナノファイバーシートは、塗液に極細導電繊維を分散させたままで塗布するため、導電パターン層の導電性が極細導電繊維の含有率に依存する。したがって、導電性を向上させようとして極細導電繊維の含有率を高くすると、透明性が低下しへイズ値が上昇する問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、基体シート上に導電性ナノファイバーを含む導電パターン層が形成された導電性ナノファイバーシートであって、その導電パターン層に目視で認識できない大きさの複数の微小ピンホールが形成されている導電性ナノファイバーシートである。あるいは、上記微小ピンホールの1つが、面積1μm〜10000μmである導電性ナノファイバーシートとしてもよい。あるいは、上記微小ピンホールの占有総面積が導電パターン層の総面積の20%〜80%である導電性ナノファイバーシートとしてもよい。
【0006】
又、この発明は、基体シート上に導電性ナノファイバーを含む導電パターン層を形成し、その導電パターン層の一部にエネルギー線を照射して導電パターン層を除去させることにより、導電パターン層に目視で認識できない大きさの微小ピンホールを形成した導電性ナノファイバーシートの製造方法である。あるいは、この発明は、基体シート上に導電性ナノファイバーを含む導電パターン層をに形成し、その導電パターン層の一部にエッチングレジスト層を形成後、全面をエッチングして、エッチングレジスト層が形成されていない部分の導電パターン層を除去させることにより、導電パターン層に目視で認識できない大きさの微小ピンホールを形成したナノファイバーシートの製造方法としてもよい。
【0007】
更に、この発明は、導電性ナノファイバーシートを電極として用いたタッチパネルとしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明で得られる導電性ナノファイバーシートは、導電性ナノファイバーを含む導電パターン層が形成され、その導電パターン層に目視で認識できない面積1μm〜10000μm程度の大きさの微小ピンホールが導電パターン層の総面積の20%〜80%を占有していることを特徴とする。したがって、上記微小ピンホールによって導電パターン層の光線透過率を向上させ、かつヘイズ値を低下できるという効果がある。
【0009】
この発明で得られる導電性ナノファイバーシートの製造方法は、基体シート上に導電性ナノファイバーを含む導電パターン層を全面に形成し、その導電パターン層の一部にエネルギー線を照射したり、あるいはエッチングしたりして、導電パターン層に目視で認識できない大きさの微小ピンホールを形成したことを特徴とする。したがって、光線透過率を向上させ、かつヘイズ値を低下できる導電パターン膜が容易に形成できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、その(1)がこの発明の第1の実施の形態による導電性ナノファイバーシートの概略構成を示した平面図であり、その(2)がその(1)で示したII―IIラインの断面図である。図2は、その(1)が図1の(2)で示した導電パターン層の部分拡大図であり、その(2)が図1で示した導電性ナノファイバーシートを電極として用いたタッチパネルの概略構成を示した断面図である。図3は、図1で示した導電性ナノファイバーシートの製造工程を示した図である。
【0012】
図1及び図2の(1)を参照して、この発明の第1の実施の形態による導電性ナノファイバーシート1は、基体シート10と、基体シート10上に形成され、導電性ナノファイバー3を含み、導電性ナノファイバー3を介して導通可能であり、目視により認識することができない大きさの複数の微小ピンホール7を有する導電パターン層6とを備えている。導電パターン層6は平面視帯状に形成され、一方向を軸方向として一定の間隔をあけるように形成されている。尚、導電パターン層6の平面視形状は、複数のひし形形状を一方向に直線的に連続された形状等の他の形状に形成されてもよい。微小ピンホール7は、導電パターン層6の全面に渡って形成されている。導電性ナノファイバーシート1は、基体シート10上に多くの微小ピンホール7からなる導電パターン層6が形成された構造で、導電性ナノファイバー3の高導電性を生かし、導電パターン層6の導電性に問題が生じない程度の微小ピンホール7を設けることにより、導電性ナノファイバー3含有による導電パターン層6の光線透過率低下とヘイズ値の増加を防止するものである。
【0013】
図2の(2)を参照して、導電性ナノファイバーシート1を電極として用いたタッチパネル8は、互いの導電パターン層6の軸方向が直交するように、2枚の導電性ナノファイバーシート1を貼り合わせて構成されている。貼り合わされた導電性ナノファイバーシート1の上面を覆うように保護板52が接着され、下面に液晶表示装置53が接着するようにして配置されている。
【0014】
基体シート10の材質としては、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニルなどの樹脂フィルムが挙げられる。基体シート10層の厚みは5〜800μmの範囲で適宜設定可能である。5μm未満では、層としての強度が不足して剥離する際に破れたりするので取り扱いが困難となり、800μmを越える厚みでは、基体シート10層に剛性がありすぎて加工が困難となる。尚、導電性ナノファイバーシート1を転写シートとする場合には、上記樹脂フィルム上にシリコン、メラミン、アクリルなどの樹脂を塗布して離型性のある基体シート10層としておくのが好ましい。
【0015】
導電パターン層6は、例えば、アクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルなどのバインダー樹脂33と、導電性ナノファイバー3とからなる。導電パターン層6は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等の汎用の各種印刷手法、ダイコーター等による各種塗布手法により設けることができる。具体的には、導電パターン層6は、基体シート10上に導通するように導電性ナノファイバー3を面状に広がるように印刷・塗布し、その上から保護膜であるバインダー樹脂33を印刷・塗布することにより形成される。バインダー樹脂33の厚みは、導電パターン層6の上面に導電性ナノファイバー3が露出するように設定される。その露出した導電性ナノファイバー3の一部を端子として、各導電パターン層6の静電容量の変化を検出する。
【0016】
導電パターン層6の厚みは数十nmから数百nmの範囲で適宜設定可能である。厚みが数十nmより薄いと層としての強度が不足し、厚みが数百nmより厚いと層としての柔軟性がなくなり加工が困難となる。なお、導電パターン層6と基体シート10との間に、剥離層やアンカー層等を設けてもよいし、導電パターン層6上にアンカー層や接着層等を設けてもよい。
【0017】
導電性ナノファイバー3の例としては、カーボンナノファイバーのほか、金、銀、白金、銅、パラジウムなどの金属イオンを担持した前駆体表面にプローブの先端部から印加電圧又は電流を作用させ連続的にひき出して作製した金属ナノワイヤや、基板上に原料ガスを導入しCVD法により作製したグラファイトナノファイバー、ペプチド又はその誘導体が自己組織化的に形成したナノファイバーに金粒子を付加してなるペプチドナノファイバーなどが挙げられる。
【0018】
導電パターン層6に設ける複数の微小ピンホール7は、目視で認識することができない面積1μm〜10000μm程度の大きさのピンホールが好ましく、導電パターン層6に対する微小ピンホール7の占有面積の割合を20%〜80%にするように全面に渡って均等に設けるのが好ましい。微小ピンホール7の面積を1μm未満にすることは技術的に難しく、これより小さいと光線の透過がしにくくなるからである。また、微小ピンホール7の占有面積の割合が20%未満であれば光線透過率の向上やヘイズ値を低下の程度が少なくなり、80%を超えれば導電パターン層6の表面抵抗値が高くなり導電性に問題が生じる場合があるからである。
【0019】
微小ピンホール7の平面視形状は、円形状のほか、多角形状、楕円状、円弧状、直線状のいずれでもよく、これらの異なる形状のピンホールが混ざっているようなものであっても構わない。
【0020】
図3の(1)を参照して、微小ピンホール7の形成方法としては、基体シート10上に導電性ナノファイバー3を含む導電パターン層6を必要なパターンとなるように形成し、その導電パターン層6の一部にスポット径数十μmのYAGレーザーなどのエネルギー線を照射して導電パターン層6のバインダー樹脂33を焼き切ることにより形成する方法が挙げられる。
【0021】
図3の(2)及び(3)を参照して、他の微小ピンホール7の形成方法としては、基体シート10上に導電性ナノファイバー3を含む導電パターン層6を必要なパターンとなるように形成し、その導電パターン層6の一部にエッチングレジスト層11を形成後、全面をエッチングして、エッチングレジスト層11が形成されていない部分の導電パターン層6のバインダー樹脂33を除去させることにより形成する方法が挙げられる。使用するエッチングレジスト層11としては光硬化性の樹脂などが挙げられ、エッチング液として導電パターン層6のバインダー樹脂33を除去できるケトン、芳香族炭化水素などの有機溶剤等が好ましい。
【0022】
尚、基体シート10上には、例えば3〜10mm角くらいの大きさの位置検知マーク25を形成するのが好ましい。この位置検知マーク25を光学的方法により読み取れば、導電パターン層6上の所定の位置に微小ピンホール7を形成できるからである。
【0023】
以上の方法によって得られた導電性ナノファイバーシート1を転写シートとして、AおよびB金型からなる成形金型に挿入し、B金型から成形樹脂を射出し、冷却後、その成形金型から成形品を取り出せば、成形と同時に表面に転写された導電パターン層6が形成された成形同時加飾品を得ることができる。
【0024】
使用する成形樹脂としてはアクリル、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリエチレンなどがある。
【実施例1】
【0025】
基体シート10として厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製F−55.以下PETフィルムとする)の片面に塩化ビニル系樹脂で位置検知マーク25を形成した。
【0026】
次いで、アクリル系樹脂バインダー33中に平均直径60nm、平均長さ30μmの銀ナノワイヤからなる導電性ナノファイバー3を分散したインキを用いてグラビア印刷し、熱風乾燥して膜を形成後、200℃、20秒間の条件で焼き付けを行って導電パターン層6を形成した(図1参照)。
【0027】
次いで位置検知マーク25を光学的方法により読み取って所望の位置にYAGレーザー照射機の先端50を配置し、レーザー照射光51により導電パターン層6を焼き切り、導電パターン層6全面に微小ピンホール5を多数形成させた(図3の(1)参照)。導電パターン層6が形成された部分の光線透過率は90%で、ヘイズ値も2%と良好な導電性ナノファイバーシート1となった(図1参照)。
【0028】
形成された微小ピンホール5は平均の面積が1000μm程度の外観上存在が判別できない大きさであり、導電パターン層6の総面積の40%程度を占有していて、微小ピンホール7を形成しない場合に比べて、光線透過率が1%向上し、ヘイズ値も1%低下することができた。一方、導電パターン層6の表面抵抗値の上昇は2倍程度に留まり、タッチパネル8の導電膜としては問題にならない範囲であった。そして、これをX電極とし、同様の方式によってY電極を作成した後、それらを積層して、透明な静電容量タッチパネル8を作製することができた(図2の(2)参照)。
【実施例2】
【0029】
導電性ナノファイバーシート1の作成において、導電パターン層6の微小ピンホール5の形成を導電パターン層6の一部にウレタンアクリレート系の光硬化性のエッチングレジスト層11を形成し、現像後、トルエンをエッチング液として、エッチングレジスト層11が形成されていない部分の導電パターン層6を剥離除去した他は実施例1と同様にして導電性ナノファイバーシート1を得た(図3の(2)及び(3)参照)。
【0030】
この方法によって得られた微小ピンホール7も、平均の面積が4000μm程度の外観上存在が判別できない大きさであり、導電パターン層6の総面積の50%程度を占有していて、微小ピンホール7を形成しない場合に比べて、光線透過率が2%向上し、ヘイズ値も2%低下することができた。一方、導電パターン層6の表面抵抗値の上昇は3倍程度に留まり、タッチパネル8の導電膜としては問題にならない範囲であった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】その(1)がこの発明の第1の実施の形態による導電性ナノファイバーシートの概略構成を示した平面図であり、その(2)がその(1)で示したII―IIラインの断面図である。
【図2】その(1)が図1の(2)で示した導電パターン層の部分拡大図であり、その(2)が図1で示した導電性ナノファイバーシートを電極として用いたタッチパネルの概略構成を示した断面図である。
【図3】図1で示した導電性ナノファイバーシートの製造工程を示した図である。
【符号の説明】
【0032】
1 導電性ナノファイバーシート
3 導電性ナノファイバー
6 導電パターン層
7 微小ピンホール
8 タッチパネル
10 基体シート
11 エッチングレジスト層
25 位置検知マーク
33 樹脂バインダー
50 レーザー照射機の先端
51 レーザー照射光
52 保護板
53 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体シートと、
前記基体シート上に形成され、導電性ナノファイバーを含み、その導電性ナノファイバーを介して導通可能であり、目視により認識することができない大きさの複数の微小ピンホールを有する導電パターン層とを備えた、導電性ナノファイバーシート。
【請求項2】
前記微小ピンホールの1つの面積が、1μm〜10000μmである、請求項1記載の導電性ナノファイバーシート。
【請求項3】
前記導電パターン層に対して、前記複数の微小ピンホールが占有する面積の割合が20%〜80%である、請求項1又は請求項2記載の導電性ナノファイバーシート。
【請求項4】
基体シート上に、導通可能となるように導電性ナノファイバーを含む導電パターン層を形成する形成工程と、
前記形成された導電パターン層の一部にエネルギー線を照射して前記導電パターン層の一部を除去することにより、前記導電パターン層に目視により認識することができない大きさの複数の微小ピンホールを形成する工程とを備えた、導電性ナノファイバーシートの製造方法。
【請求項5】
基体シート上に、導通可能となるように導電性ナノファイバーを含む導電パターン層を形成する工程と、
前記形成された導電パターン層上の一部にエッチングレジスト層を形成する工程と、
前記エッチングレジスト層が形成された前記導電パターン層の全面をエッチングして、前記エッチングレジスト層が形成されていない部分の導電パターン層を除去することにより、前記導電パターン層に目視により認識することができない大きさの複数の微小ピンホールを形成する工程とを備えた、導電性ナノファイバーシートの製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の導電性ナノファイバーシートを電極として用いた、タッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−153210(P2010−153210A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330055(P2008−330055)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】