説明

導電性ナノ薄膜およびこれを利用した微細電気機械システムセンサー

本発明は、導電性ナノ薄膜およびこれを利用した微細電気機械システムセンサーに関するものであり、より詳しくは、高分子電解質膜と炭素ナノチューブ層が積層して形成される導電性ナノ薄膜およびこれを利用した微細電気機械システムセンサーに関するものである。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ナノ薄膜およびこれを利用した微細電気機械システムセンサーに関するものであり、より詳しくは、高分子電解質膜と炭素ナノチューブ層が積層され形成される導電性ナノ薄膜、及びこれを利用した微細電気機械システムセンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生命工学は様々な学問分野と技術的交流、及び融合を通じて新たな研究や産業分野を創出している。特に、電子工学、半導体工学等で研究されてきた技術を応用してBIT(Bio−Information Technology)という学問分野が成長しており、マイクロ/ナノ工学(Micro/Nano technology)の融合によりBINT(Bio−Information Nanotechnology)という新学問分野に領域を拡張している。このような融合生命工学は、現在の生命工学分野において主に研究されている疾病の診断、新薬開発、信号伝達体系の解釈等の分野で生体物質の機能および相互作用の解釈に大きく寄与できる技術として多くの研究が行われている。特に、バイオセンサー(biosensor)は、バイオ診断技術(bio−diagnosis technology)としての研究が活発に進められている。
【0003】
バイオセンサーとは、半導体のような無機物からなる固体基質に、生物に由来したDNA(deoxyribonucleicacid)、タンパク質、酵素、抗体、微生物、動植物の細胞および器官、神経細胞等の物質を高密度で集積化し、組み合わせて既存の半導体チップ形態に作った混成素子(hybrid device)であって、生体分子の固有機能を利用して遺伝子の発現様相、遺伝子結合、タンパク質分布等の生物学的情報を得たり、生化学的工程および反応速度または情報処理速度を高める道具や装置を言う。このようなバイオセンサーは、検出方法によってバイオ−光学的検出(bio−optical sensing)とバイオ−機械的検出(bio−mechanical detection)方法に大きく分けることができる。
【0004】
バイオ−光学的検出方法は、蛍光顕微鏡を利用して蛍光標識された生体物質の反応を検出する方法であり、ELISA(enzyme−linked immunosorbent assays)、FRET(fluoresence resonance energy transfer)及び電気泳動(electrophoresis)を利用した検出等が代表的である。バイオ−機械的検出方法は、生体物質の化学反応時に発生する表面エネルギーの変化を機械的な変位として直接検出する方法であり、検出過程中、蛍光物質等を標識させる必要がなく(label−free)、高い検出分解能と再使用が可能だということが長所で近年活発に研究されている。
【0005】
ラップオンアチップ(lap−on−a−chip)は、微細電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems、以下“MEMS”とする)技術を利用して試料の分離、精製、混合、反応および検出等の様々な作業を一つのチップ上でできるようにしたものである。上記ラップオンアチップは、非常に少量の様々なサンプルを連続的に分析できる方法であり、高速処理分析が可能で、全体の機器の大きさを小型化できるため、携帯用に適している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存のバイオ診断技術は、主にバイオ−光学的分析方法を利用するため大規模で高価な装備を必要としていた。上記ラップオンアチップは、MEMS技術を利用し該装備を小型化できるという技術を提供する。ラップオンアチップは多くの長所を有している反面、常用として普及するためには精密流体流れの制御および高感度検出方法の開発等、未だ解決すべき問題が多い。
【0007】
特に、バイオセンサーにおいて流体流れチャンネルを形成する技術、ポンプ、バルブ等の研究は、MEMS技術の発達と共に活発に行われているが、光学的分析方法に基づいた既存のバイオセンサーをラップオンアチップ装置とするためには、レーザー及び分光器等を小型化しなくてはならないという難題に直面している。
【0008】
微細カンチレバー配列を利用したバイオ−機械的検出分析は、生体物質の固定化(immobilization)のための金薄膜蒸着や表面処理等の前処理過程を必要とする。また、バイオ−機械的検出分析は、生体物質の反応によって発生したナノメータースケールの変位を測定するためのレーザー−変位測定システムを必要とする。また、バイオ−機械的検出分析は、カンチレバー構造材(シリコン窒化膜)と金薄膜の厚み及び熱膨張係数の違いによるバイメタル効果のため、温度に相当敏感だという短所を有する。
【0009】
よって、バイオ適合材料(bio−compatible material)及び新たな検出方法による高性能ラップオンアチップのためのバイオセンサーの開発が切実に要求されている。
【0010】
本発明は、前記のような問題点を解決するために案出されたものであり、高分子電解質膜と炭素ナノチューブ層が積層されて形成される導電性ナノ薄膜、及びこれを利用した微細電気機械システムセンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の導電性ナノ薄膜は、下部高分子電解質膜と、前記下部高分子電解質膜の上部に炭素ナノチューブがネットワークを成すように形成される炭素ナノチューブ層とを含んで形成されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の導電性ナノ薄膜は、前記炭素ナノチューブ層の上面に形成される上部高分子電解質膜をさらに含んで形成できる。このとき、前記下部高分子電解質膜及び前記上部高分子電解質膜は、それぞれPAH、PSS、PVP、PAA、PPy、PANI、PTs及びPEDOTからなる群から選択されるいずれかの樹脂で形成できる。
【0013】
また、本発明の炭素ナノチューブ層は、前記炭素ナノチューブがカルボキシル基およびヒドロキシ基で機能化され、水溶液中で水素イオンが前記炭素ナノチューブから放出されて負電荷を有するように形成できる。このとき、前記下部高分子電解質膜はPAHとPSSとが交互に積層されてなり、前記炭素ナノチューブ層と接する最上層はPAHで形成できる。また、前記上部高分子電解質膜は、PAHとPSSとが交互に積層されてなり、前記炭素ナノチューブ層と接する最下層はPAHで形成できる。また、前記下部高分子電解質膜及び上部高分子電解質膜は、担持自己組立て方法またはスピン自己組立て方法から成り得る。
【0014】
また、本発明の導電性ナノ薄膜は、前記炭素ナノチューブ層の上面に銅、金、銀、及び白金からなる群から選択されるいずれかの金属で形成される上部金属層を更に含んで形成できる。
【0015】
また、本発明の微小電気機械システムセンサーは、開口部が形成された基板と、前記開口部を含む基板上に形成される導電性ナノ薄膜と、前記導電性ナノ薄膜の上部にスペーサーで離隔されて配置される上板と、前記基板の下部に配置される下板と、前記導電性ナノ薄膜の上面と離隔されて前記上板の下部に形成される上部電極とを含んで形成できる。このとき、前記導電性ナノ薄膜は、スペースの開口部を通じて露出されるように形成できる。また、前記微小電気機械システムセンサーは、感知しようとする対象に応じて圧力センサー、湿度センサー、温度センサー、接触センサー、生化学センサーで形成できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、高分子電解質膜と炭素ナノチューブ層を利用して、非常に薄く、且つ機械的物性と電気的物性に優れた導電性ナノ薄膜を作製できる。
【0017】
また本発明によると、電気伝導性を有する導電性ナノ薄膜を利用して静電容量の変化を利用した微細電気機械システムセンサーを作製できる。
【0018】
また本発明によると、高分子電解質膜と炭素ナノチューブ層を含む導電性ナノ薄膜を利用して検出分解能および信頼性が向上するセンサーを作製できる。
【0019】
また本発明によると、高分子電解質膜と炭素ナノチューブ層を含む導電性ナノ薄膜を利用してDNA等の生体物質を直接固定させることができるバイオセンサーを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例にかかる導電性ナノ薄膜の断面図である。
【図2】PAHの構造式である。
【図3】PSSの構造式である。
【図4】PDACの構造式である。
【図5】PMAの構造式である。
【図6】PVPの構造式である。
【図7】PAAの構造式である。
【図8】PPyの構造式である。
【図9】PANIの構造式である。
【図10】PTs構造式である。
【図11】PEDOTの構造式である。
【図12】本発明の実施例にかかる機能化された炭素ナノチューブの概念図である。
【図13】本発明の別の実施例にかかる導電性ナノ薄膜の断面図である。
【図14】本発明のまた別の実施例にかかる導電性ナノ薄膜の断面図である。
【図15】本発明の実施例にかかる導電性ナノ薄膜を利用した微小電気機械システムセンサーの断面図である。
【図16】炭素ナノチューブ層が形成された導電性ナノ薄膜の写真である。
【図17】導電性ナノ薄膜とスペースを示す写真である。
【図18】本発明の好ましい実施例にかかる微細電気機械システムセンサーの製造方法を示す断面図である。
【図19】本発明の好ましい実施例にかかる微細電気機械システムセンサーの製造方法を示す断面図である。
【図20】本発明の好ましい実施例にかかる微細電気機械システムセンサーの製造方法を示す断面図である。
【図21】本発明の好ましい実施例にかかる微細電気機械システムセンサーの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら実施例を通じて本発明の導電性ナノ薄膜とこれを利用した微細電気機械システムセンサーに対して詳しく説明する。
以下の実施例にて、同一な構成要素は同一な図面符号を付与し、同一な構成要素についての重複説明は省略する。また、添付の図面にて、導電性ナノ薄膜を成す各層および物質の形および厚みは、説明の便宜を考慮し誇張または概略化して図示した。
【0022】
本発明は、炭素ナノチューブと高分子電解質を利用して導電性ナノ薄膜を作製し、これを静電容量変化測定に基づいた微細電気機械システムセンサーに応用して検出分解能を向上させるためのものである。上記炭素ナノチューブは、物性が非常に優れ導電性ナノ薄膜の電気的および機械的物性を一層向上させる。また、上記導電性ナノ薄膜を利用した微細電気機械システムセンサーは、高性能で且つ信頼性が向上されたものとすることができる。
【0023】
先ず、本発明の実施例にかかる導電性ナノ薄膜について説明する。図1は、本発明の実施例にかかる導電性ナノ薄膜の断面図を示す。
図2はPAHの構造式であり、図3はPSSの構造式であり、図4はPDACの構造式であり、図5はPMAの構造式である。
図6はPVPの構造式であり、図7はPAAの構造式である。
図8はPPyの構造式であり、図9はPANIの構造式であり、図10はPTs構造式であり、図11はPEDOTの構造式である。
図12は、本発明の実施例にかかる機能化された炭素ナノチューブの概念図である。
【0024】
本発明の実施例にかかる導電性ナノ薄膜10は、図1を参照すると、基板110の上部に形成される下部高分子電解質膜11と炭素ナノチューブ層13を含んで形成される。導電性ナノ薄膜10は、下部高分子電解質膜11と炭素ナノチューブ層13からなり、各種センサーに適用できる。
【0025】
下部高分子電解質膜11は、基板110の上面に薄膜層で形成される。下部高分子電解質膜11は、好ましくは複数層で形成することができる。また、下部高分子電解質膜11は、単一層で形成することができる。また、下部高分子電解質膜11は、ナノ厚さの薄膜で形成される。
【0026】
下部高分子電解質膜11は、分子間の静電気力による薄膜、水素結合による薄膜、pi−pi相互作用による薄膜で形成できる。すなわち、下部高分子電解質膜11は、形成される原理に応じて様々な高分子物質を使用できる。
【0027】
分子間の静電気力による薄膜は、poly(allylaminehydrochloride)(以下“PAH”とする)、poly(sodium, styrene sulfonate)(以下“PSS”とする)、diallyldimethylammonium chloride(以下“PDAC”とする)及びpoly(methyl acrylate)(以下“PAM”とする)からなる群から選択されるいずれかの樹脂で形成できる。図2はPAHの構造式であり、図3はPSSの構造式であり、図4はPDACの構造式であり、図5はPMAの構造式である。
【0028】
特に、分子間の静電気力による薄膜は、正電荷高分子電解質であるPAHとPSSとによって形成できる。下部高分子電解質膜11は、複数層で形成される場合、PAHとPSSとが繰り返し積層されて形成される。
【0029】
下部高分子電解質膜11は、最上層に正電荷のPAHが積層されるように形成される。炭素ナノチューブ層13は、カルボキシル基およびヒドロキシル基で機能化され、水溶液中で水素イオンが放出されて負電荷を有するようになる。よって、下部高分子電解質膜11は、最上層の炭素ナノチューブ層13が形成される層がPAHで形成される。下部高分子電解質膜11は、炭素ナノチューブ層13と化学結合を形成するようになる。すなわち、下部高分子電解質膜11は、PAHのアミン(NH)基が炭素ナノチューブのカルボキシル基(COOH)と結合し、炭素ナノチューブ層13と強い静電気的化学結合を形成する。
【0030】
一方、導電性ナノ薄膜10は、下部高分子電解質膜11でPAHとPSSの積層回数を調節して薄膜の厚みを調整できるようにする。下部高分子電解質膜11は、数ナノメーターから数百ナノメーターの厚みで形成される。
【0031】
水素結合による薄膜は、poly(4−vinyl pyridine)(以下“PVP”とする)とpoly(acrylic acid)(以下“PAA”とする)によって形成できる。図6はPVPの構造式であり、図7はPAAの構造式である。
【0032】
水素結合による薄膜は、PVP表面の高い電気陰性度を有する窒素原子とPAA表面の水素原子との水素結合によって形成される。よって、水素結合による薄膜は、水素結合によって安定的に積層されて形成できる。
【0033】
pi−pi相互作用による薄膜は、導伝性樹脂であるpolypyrrole(以下“PPy”とする)、polyaniline(以下“PANI”とする)、polythiophenes(以下“PTs”とする)及びpoly(3,4−ethylenedioxythiophene)(以下“PEDOT”とする)からなる群から選択されるいずれかの樹脂で形成できる。導伝性樹脂は、pi電子によって導伝性を有するようになる。よって、pi−pi相互作用による薄膜は、導伝性樹脂相互間のpi電子によって形成されるpi−pi共有結合によって安定的に積層されて形成できる。
【0034】
図8はPPyの構造式であり、図9はPANIの構造式であり、図10はPTsの構造式であり、図11はPEDOTの構造式である。
【0035】
下部高分子電解質膜11は、積層分子自己組立て(layer−by−layer self assembled)現象を利用して形成される。積層分子自己組立て方法としては、担持自己組立て方法(dipping self−assembly method)とスピン自己組立て方法(spin−assisted self−assembly method)等がある。
【0036】
以下では、担持自己組立て方法によって形成される下部高分子電解質膜11について説明する。下部高分子電解質膜11は、基板110の上面にPAHとPSSとが交互に積層されて形成される。より具体的に説明すると、先ず、負電荷で置換された基板110は、正電荷高分子物質であるPAHの水溶液に担持され、PAHが静電力によって基板110の上面に吸着する。PAHが吸着された基板110は、洗浄溶媒である水に担持され、基板110の上面に弱く付着したPAHが除去される。基板110の上面に相対的に強く吸着したPAHは高分子電解質膜を形成し、基板はPAHの正電荷によって正電荷を帯びるようになる。次に、PAHが塗布された基板110は、負電荷を有するPSS水溶液に担持され、PAHの上面に静電力によってPSSが吸着する。PSSが吸着された基板110は、洗浄溶媒である水に担持され、基板110の上面に弱く付着したPSSが除去される。基板110の上面に相対的に強く吸着したPSSは、高分子電解質膜を形成するようになる。上記のような過程を繰り返すことにより、基板110の上面には静電力によって複数層の下部高分子電解質膜11が形成される。
【0037】
一方、前記スピン自己組立て方法は、スピンコーティングによって高分子電解質薄膜を形成する方法であり、担持自己組立て方法に比べて工程時間が短く、且つ整列度が高い薄膜の形成が可能になる。スピンコーティングは、高分子電解質水溶液を利用して4,000rpmにて20秒程度で実施でき、弱く付着した余剰高分子電解質は水で洗浄して静電気的引力によって薄膜を形成できる。
【0038】
炭素ナノチューブ層13は、多数の炭素ナノチューブ13aで形成される。炭素ナノチューブ層13は、炭素ナノチューブがネットワークを成す層で形成できる。また、炭素ナノチューブ層13は、図12を参照すると、カルボキシル基およびヒドロキシ基で機能化された炭素ナノチューブ13aで形成される。炭素ナノチューブ13aは、導電性ナノ薄膜10の機械的物性を向上させると同時に、電気伝導性を向上させるフィラー(filler)として作用する。炭素ナノチューブは、95%以上の高純度単一壁炭素ナノチューブが好ましい。炭素ナノチューブは、炭素ナノチューブ固有の非常に優れた機械的電気的特性を効果的に利用するために、その構造を損傷させないようにする必要がある。
【0039】
炭素ナノチューブ層13は、下部高分子電解質膜11との層間分離(delamination)を防止し、積層強度を高めるために前処理された炭素ナノチューブで形成される。前処理過程は、炭素ナノチューブをカルボキシル基およびヒドロキシ基で機能化させ、水溶液中で水素イオンを放出させて負電荷を有するようにし、炭素ナノチューブが正電荷の高分子電解質と静電気的に結合できるようにする。また、前処理過程では、炭素ナノチューブの製造過程で吸着された不純物を除去することになる。
【0040】
炭素ナノチューブの前処理過程は次の通りである。製造された炭素ナノチューブ束は、製造過程で金属触媒、非晶質炭素層、炭素ナノ粒子等が含まれるため、炭素ナノチューブを高分子電解質へ積層する前に不純物を除去する必要がある。また、炭素ナノチューブは、単一層(monolayer)で均一に積層するためには、適当な大きさを有するように形成されなければならない。
【0041】
炭素ナノチューブ束は、硝酸(HNO)溶液に入れて(10g/liter)1時間50℃に加熱して湿式酸化を行う。よって、炭素ナノチューブ束に含まれている非晶質炭素および炭素成分のナノ粒子は酸化され、金属触媒は除去される。また、上記の酸化された炭素ナノチューブは、カルボキシル基(carboxyl group)及びヒドロキシル基(hydroxyl group)によって機能化(functionalization)されて炭素ナノチューブ間に静電気的反発力を有するようになる。
【0042】
硝酸溶液によって精製され酸化された炭素ナノチューブは、超純水によって中和され、フィルターで濾した後、分散溶媒であるメタノールに分散される。上記の酸化された炭素ナノチューブは、静電気的反発力を有するようになるため、溶媒中で効果的に分散できる。
【0043】
炭素ナノチューブが分散された分散溶媒は、45Hzで10〜20時間超音波処理される。炭素ナノチューブは、超音波処理で1〜2μmの長さに切断され、末端に付着している金属触媒が放出される。
【0044】
炭素ナノチューブが分散された分散溶媒は、遠心分離機によって遠心分離処理される。炭素ナノチューブは、遠心分離処理で金属触媒および炭素の塊等の不純物から分離される。
【0045】
上記のような過程を通じて炭素ナノチューブは精製され、一定の大きさに切断される。また、炭素ナノチューブは表面および末端にカルボキシル基およびヒドロキシル基が付着しているため溶液中での分散性に優れ、高分子電解質と強い化学結合を形成するようになる。よって、炭素ナノチューブは層間分離を防ぎ、積層強度を高める役割をするようになる。
【0046】
次に、本発明の別の実施例にかかる導電性ナノ薄膜について説明する。
図13は、本発明の別の実施例にかかる導電性ナノ薄膜の断面図を示す。
本発明の別の実施例にかかる導電性ナノ薄膜20は、図13を参照すると、基板110の上部に形成される下部高分子電解質膜11、炭素ナノチューブ層13及び上部金属膜25を含んで形成される。
【0047】
本発明の別の実施例にかかる導電性ナノ薄膜20は、図1の実施例にかかる導電性ナノ薄膜10に追加的に上部金属膜25が形成される。よって、以下で本発明の別の実施例にかかる導電性ナノ薄膜20は、上部金属膜25を中心に説明する。また、導電性ナノ薄膜20では、図1の実施例にかかる導電性ナノ薄膜10と同一または類似する構成に対して同一な図面符号を付与し、ここでの詳細な説明は省略する。
【0048】
導電性ナノ薄膜20は、炭素ナノチューブ層13の上部に形成される上部金属膜25によって面抵抗が小さくなる。図1の実施例にかかる導電性ナノ薄膜10は、上部に形成される外部電極と炭素ナノチューブとの間の接触抵抗(contact resistance)によって面抵抗が大きくなる場合がある。しかし、導電性ナノ薄膜20は、上部金属膜25によって相対的に面抵抗が小さくなる。
【0049】
上部金属膜25は、炭素ナノチューブ層13の上面に導電性金属で形成される。上部金属膜25は、銅、金、銀、及び白金などの導電性金属で形成される。上部金属膜25は、スパッタリング(sputtering)などの方法によって5nm程度の厚さで蒸着されて形成される。上部金属膜25が白金蒸着膜で形成される場合、面抵抗値は10〜100Ω/□程度に低減される。
【0050】
上部金属膜25は、導電性金属の一部が炭素ナノチューブ間に充填されながら炭素ナノチューブと複合体に形成できる。上部金属膜25は、導電性金属と炭素ナノチューブとの複合体に形成される下部層と、導電性金属で形成される上部層とからなり得る。また、上部金属膜25は、導電性金属が炭素ナノチューブ間に全体的に充填されて炭素ナノチューブと一つの層に形成できる。炭素ナノチューブと導電性金属が複合体に形成された導電性ナノ薄膜20は、金属層だけで形成された場合に比べ相対的に機械的強度が高くなり、反りによる亀裂伝播が減少する。また、炭素ナノチューブは、上部金属膜25を構成する粒界(grain boundary)を電気的に連結(bridging)する役割をする。よって、導電性ナノ薄膜20は、面抵抗が相対的に低い非常に効果的な導電層として形成される。
【0051】
次に、本発明のまた別の実施例にかかる導電性ナノ薄膜について説明する。
図14は、本発明の別の実施例にかかる導電性ナノ薄膜の断面図を示す。
本発明の別の実施例にかかる導電性ナノ薄膜30は、図14を参照すると、基板110の上部に形成される下部高分子電解質膜11と炭素ナノチューブ層13、及び上部高分子電解質膜35を含んで形成される。
【0052】
本発明の別の実施例にかかる導電性ナノ薄膜30は、図1の実施例にかかる導電性ナノ薄膜10に追加的に上部高分子電解質膜35が形成される。よって、以下での本発明の別の実施例にかかる導電性ナノ薄膜30は、上部高分子電解質膜35を中心に説明する。また、導電性ナノ薄膜30は、図1の実施例にかかる導電性ナノ薄膜10と同一または類似する構成に対しては同一な図面符号を付与し、ここでの詳細な説明は省略する。
【0053】
導電性ナノ薄膜30は、炭素ナノチューブ層13を上部高分子電解質膜が全体的に覆いながら炭素ナノチューブを固定させる。導電性ナノ薄膜30は、炭素ナノチューブ層13の上部に形成される上部高分子電解質膜35によってより堅固な膜を形成できる。
【0054】
上部高分子電解質膜35は、炭素ナノチューブ層13の上面に高分子電解質で形成される。上部高分子電解質膜35は、下部高分子電解質膜11の材質と同一な高分子材質で形成される。即ち、上部高分子電解質膜35は、PAH又はPSSによって薄膜で形成される。
【0055】
上部高分子電解質膜35は、PAHとPSSが交互に積層され多層膜で形成できる。但し、上部高分子電解質膜35が多層膜で形成される場合、炭素ナノチューブ層13と接する最下層は、正電荷のPAHで形成される。よって、上部高分子電解質膜35は、静電気的結合によって炭素ナノチューブ層13と強く結合される。
【0056】
一方、導電性ナノ薄膜30は、下部高分子電解質膜11及び上部高分子電解質膜35でPAH及びPSSの積層回数を調節して薄膜の厚さが調整できるようになる。
【0057】
次に、本発明の実施例にかかる導電性ナノ薄膜を利用した微小電気機械システムセンサーについて説明する。
図15は、本発明の実施例にかかる導電性ナノ薄膜を利用した微小電気機械システムセンサーの断面図である。
図16は炭素ナノチューブ層が形成された導電性ナノ薄膜の写真であり、図17は導電性ナノ薄膜とスペースを示す写真である。
【0058】
微小電気機械システムセンサーは、導電性ナノ薄膜の機械的物性と電気的物性によって性能が左右される。微小電気機械システムセンサーに利用される本発明の実施例にかかる導電性ナノ薄膜10、20、30は、電気的に不導体である高分子電解質膜と電気的に導電体である炭素ナノチューブ層とで形成される。よって、炭素ナノチューブ層は導電性ナノ薄膜の機械的物性を向上させる役割と電気的な伝導体の役割を果たす。上記の炭素ナノチューブは、機械的物性だけでなく、電気的な物性も非常に優れた材料であり、高い縦横比は電気的なネットワークの形成に非常に有利である。
【0059】
微小電気機械システムセンサー100は、図15を参照すると、開口部105が形成された基板110と、開口部105を含む基板110上に下部高分子電解質膜11、炭素ナノチューブ層13、上部高分子電解質膜35が順次積層されて形成される導電性ナノ薄膜30を含んで形成される。導電性ナノ薄膜30は、図16を参照すると、上面に炭素ナノチューブ層13が形成されていることが分かる。また、微小電気機械システムセンサー100は、導電性ナノ薄膜30の上部にスペーサー135によって離隔されて配置される上板140と、基板110の下部に配置される下板145と、上板140の下部に形成される上部電極150を含んで形成される。前記導電性ナノ薄膜30は、図17を参照すると、スペース135の開口部を通じて露出されるように形成される。
【0060】
上部電極150は、図15で一体型の単一電極として図示されているが、必要に応じて多数の電極が配列(array)されている形態に形成できる。
【0061】
微小電気機械システムセンサー100は、基板110と下板145との間に形成されている下部シリコン窒化膜103を含んで形成できる。また、微小電気機械システムセンサー100は、基板110と導電性ナノ薄膜30との間に形成される上部シリコン窒化膜107と金属層109とを更に含んで形成できる。
一方、未説明符号の‘160’は、センサーに固定されている生体物質を示す。
【0062】
微小電気機械システムセンサー100は、上部電極150によって導電性ナノ薄膜30と上板140との間の静電容量を測定する。
微小電気機械システムセンサー100は、感知しようとする対象に応じて圧力センサー、湿度センサー、温度センサー、接触センサー、生化学センサーのように様々な対象を感知するセンサーとして使用できる。
【0063】
圧力センサーは、ナノ薄膜に圧力が加わると変形し、これを静電容量変化として圧力を測定する。また、湿度センサーは、湿度の変化による上部金属電極150とナノ薄膜との間に存在する媒質(空気)の誘電率の変化から静電容量の変化を測定することにより湿度を測定する。温度センサーは、湿度センサーと同様に、温度変化による媒質の誘電率の変化から静電容量変化を測定して温度を測定する。
【0064】
接触センサーは、外部との接触によって誘導される圧力によって配列形態で形成されるナノ薄膜の静電容量変化を測定して接触可否を測定するようになる。
【0065】
生化学センサーは、ナノ薄膜の下部に生体物質分子あるいは気体分子が固定/吸着された場合に表れるナノ薄膜の表面エネルギーの変化によるナノ薄膜の変形から静電容量の変化を測定する。
【0066】
次に、図15に示す微小電気機械システムセンサーの製造方法について説明する。
図18〜図21は、本発明の微細電気機械システムセンサーの製造方法を示す工程図である。
【0067】
図18を参照すると、基板110下部に下部シリコン窒化膜103を積層し、通常の蝕刻工程でマスクパターン103を形成する。基板110上に上部シリコン窒化膜(SixNy)107を積層し、基板110の下部をシリコン窒化膜マスク103を蝕刻マスクとして使用して上部シリコン窒化膜107が露出されるまで蝕刻して開口部105を形成する。開口部105は、様々な大きさ及び形状に形成できる。
【0068】
図19を参照すると、上部シリコン窒化膜107上に金属層109を蒸着する。金属層109は、金属層109の上面に積層される下部高分子電解質膜11と蝕刻選択比が高く、親水性(hydrophilic)の金属を使用する。金属層109は、チタニウム(Ti)で形成できる。
【0069】
図20を参照すると、金属層109上に下部高分子電解質膜11、炭素ナノチューブ層13、上部高分子電解質膜35からなる導電性ナノ薄膜30を形成する。金属層109は、親水性のため下部高分子電解質膜11の最下層であるPAHと強く結合できる。
【0070】
図21を参照すると、基板110の開口部105に露出されている上部シリコン窒化膜107を乾式蝕刻する。また、金属層109を下部高分子電解質膜11が露出されるまで湿式蝕刻して、開口部105上に導電性ナノ薄膜30のメンブレンを完成する。
【0071】
以下、具体的に図示してはいないが、基板110の下部に下板145を、基板110の上部にスペーサー135で離隔され上部電極150が備えられた上板140を配置して図14に図示されたような微小電気機械システムセンサーを完成させる。
【0072】
次に、本発明の実施例にかかる微小電気機械システムセンサーの作用について説明する。
以下の説明では、前記微小電気機械システムセンサー100がバイオセンサーとして使用される場合について説明する。
既存のバイオセンサーは、大部分がバイオ−光学的検出方法に基づいているため、生体物質の蛍光処理過程が必須である。また、既存のバイオセンサーは光学的特性を検出するために蛍光物質を活性化できるレーザー及び発光した生体物質を観察する蛍光顕微鏡等の検出システムが必要である。
【0073】
また、既存の微細カンチレバー配列バイオセンサーは、DNAをカンチレバー表面に固定化するために表面処理が必須となる。一般的に、カンチレバー上面に金薄膜を蒸着した後、その上に自己組立て分子薄膜(self−assembled monolayer)であるチオール(thiol)をコーティングする方法が用いられており、ラングミュア−ブロジェット(Langmuir−Blodgett)蒸着方法およびソル−ゲル技術(sol−gel technique)等も用いられている。
【0074】
しかし、本発明の実施例にかかる微小電気機械システムセンサー100を利用したバイオセンサーは、静電容量の変化を利用することになり全ての検出システムが単一バイオチップ上に統合されるため、小型化およびラップオンアチップが可能である。
【0075】
また、本発明の導電性ナノ薄膜は、下部高分子電解質膜のPAHの正電荷を有するアミン(NH)基が負電荷を有するDNAとペプチド(peptide)結合をすることになる。よって、導電性ナノ薄膜は、DNAを直接固定することになり別途の表面処理が不要である。即ち、導電性ナノ薄膜は光学検出と特定結合(specific binding)のための別途の蛍光処理および基板の表面処理過程がなく、高分子電解質膜にDNAを直接固定化できるという長所を有する。
【0076】
また、導電性ナノ薄膜の厚さ方向に対する対称的な構造は、微細カンチレバー配列を利用したバイオ−機械的検出方法で大きな問題と認識されるバイメタル効果をなくすことができる最も効果的な代案となると言える。
【0077】
表1は、本発明にかかる導電性ナノ薄膜を利用するバイオセンサーと従来技術にかかる微細カンチレバー配列を利用したセンサーの特徴を比較した表である。
【表1】

【0078】
表1を参照すると、本発明のバイオセンサーは従来の微細カンチレバー変換機の限界を超える有利な効果があることが確認できる。
上記導電性ナノ薄膜は、バイオセンサーへの応用だけでなく、圧力センサー、慣性センサー、ガスセンサー、湿度センサー、指紋センサー等の薄膜を利用する様々なセンサーの性能を一層向上させることができることは当業者にとって明白である。
【0079】
以上で説明した本発明は、上記の実施例および添付の図面によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想から外れない範囲内で様々な置換、変形および変更ができるということは、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者において明白だと言える。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の炭素ナノチューブと高分子電解質を利用した導電性ナノ薄膜は、静電容量の変化測定に基づいた微細電気機械システムセンサーに適用できる。導電性ナノ薄膜を利用した微細電気機械システムセンサーは、高性能で且つ信頼性を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部高分子電解質膜と、
前記下部高分子電解質膜の上部に炭素ナノチューブがネットワークを成すように形成される炭素ナノチューブ層と、を含んで形成されることを特徴とする導電性ナノ薄膜。
【請求項2】
前記炭素ナノチューブ層の上面に形成される上部高分子電解質膜をさらに含んで形成されることを特徴とする請求項1に記載の導電性ナノ薄膜。
【請求項3】
前記下部高分子電解質膜及び前記上部高分子電解質膜は、それぞれPAH、PSS、PVP、PAA、PPy、PANI、PTs及びPEDOTからなる群から選択されるいずれかの樹脂で形成されることを特徴とする請求項2に記載の導電性ナノ薄膜。
【請求項4】
前記炭素ナノチューブ層は、前記炭素ナノチューブがカルボキシル基およびヒドロキシ基で機能化され、水溶液中で水素イオンが放出されて負電荷を有するように形成されることを特徴とする請求項2に記載の導電性ナノ薄膜。
【請求項5】
前記下部高分子電解質膜は、PAHとPSSとが交互に積層されてなり、前記炭素ナノチューブ層と接する最上層はPAHで形成されることを特徴とする請求項4に記載の導電性ナノ薄膜。
【請求項6】
前記上部高分子電解質膜は、PAHとPSSとが交互に積層されてなり、前記炭素ナノチューブ層と接する最下層はPAHで形成されることを特徴とする請求項4に記載の導電性ナノ薄膜。
【請求項7】
前記下部高分子電解質膜及び上部高分子電解質膜は、担持自己組立て方法またはスピン自己組立て方法で形成されることを特徴とする請求項2に記載の導電性ナノ薄膜。
【請求項8】
前記炭素ナノチューブ層の上面に銅、金、銀、及び白金からなる群から選択されるいずれかの金属で形成される上部金属層を更に含んで形成されることを特徴とする請求項1に記載の導電性ナノ薄膜。
【請求項9】
開口部が形成されている基板と、
前記開口部を含む基板上に形成される請求項1〜8に記載の導電性ナノ薄膜と、
前記導電性ナノ薄膜の上部にスペーサーで前記導電性ナノ薄膜と離隔されて配置される上板と、
前記基板の下部に配置される下板と、
前記導電性ナノ薄膜の上面と離隔されて前記上板の下部に形成される上部電極と、を備えることを特徴とする微小電気機械システムセンサー。
【請求項10】
前記導電性ナノ薄膜は、スペースの開口部を通じて露出されるように形成されることを特徴とする請求項9に記載の微小電気機械システムセンサー。
【請求項11】
前記微小電気機械システムセンサーは、感知しようとする対象に応じて圧力センサー、湿度センサー、温度センサー、接触センサー、生化学センサーで形成されることを特徴とする請求項9に記載の微小電気機械システムセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2010−536710(P2010−536710A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522781(P2010−522781)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際出願番号】PCT/KR2008/001883
【国際公開番号】WO2009/123371
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510051152)エスエヌユー アールアンドディービー ファウンデーション (3)
【Fターム(参考)】