説明

導電性ペーストおよびセラミックコンデンサ

【課題】保存安定性の良好なセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペースト、および同ペーストからなる外部電極を備えたセラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】(A)銅粉末、(B)ガラス粉末、(C)有機バインダおよび(D)有機溶剤を含有するセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペーストであって、前記(A)銅粉末が球状銅粉末とフレーク状銅粉末からなり、その質量比率が90:10〜50:50であり、かつ、前記(D)有機溶剤がジヒドロターピネオールを70質量%以上含むことを特徴とするセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペースト、および同ペーストを用いて形成された外部電極を備えたセラミックコンデンサである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペーストおよび同導電性ペーストを外部電極形成材料として用いたセラミックコンデンサに関する。より詳しくは、セラミックコンデンサの外部電極形成用材料として用いられる導電性ペースト、および、そのような導電性ペーストを外部電極形成材料として用いたセラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサは、複数のセラミック層が積層されてなるセラミック素体と、それぞれの端縁が前記セラミック層のいずれかの端面に露出するように前記セラミック層間に形成された複数の内部電極と、露出した前記内部電極に電気的に接続されるように設けられた外部電極とを備えている。外部電極は、例えば有機バインダを溶剤に溶解した有機ビヒクル中に導電性を有する金属粉末およびガラス粉末を分散させて得られる導電性ペーストをセラミック素体の表面に塗布し焼き付けることにより形成されている(特許文献1)。よってセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペーストの粘度は、塗布後の形状と焼成によって形成される外部電極の表面外観、これに伴う各種コンデンサ特性を安定させるために、経時的に確認を要する事項の一つとなっている。
さらに、導電性ペースト用の有機溶剤を検討したものとして各種の提案がなされている(特許文献2〜8)。特許文献2〜4においては、ターピネオール等が検討され、特許文献5〜8においては、ジヒドロターピネオール等が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−323817号公報
【特許文献2】特開平5−55076号公報
【特許文献3】特開2000−234109号公報
【特許文献4】特開2003−86449号公報
【特許文献5】特開2007−116083号公報
【特許文献6】特開2008−282763号公報
【特許文献7】特開2009−146732号公報
【特許文献8】特開2009−200009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明の導電性ペースト中の有機溶剤成分としてターピネオールを用いた場合、本溶剤の二重結合に由来すると思われる重合成分が副生し、導電性ペーストの保存安定性が維持できない。そのため、上記導電性ペーストを焼成して電極を形成した場合、電極外観のみならずコンデンサ特性が安定しないという問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、保存安定性や外観の良好なセラミックコンデンサ外部電極形成用ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の溶剤の組み合わせと銅粉の形状を工夫することにより、上記目的を達成することができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は下記
(1)(A)銅粉末、(B)ガラス粉末、(C)有機バインダおよび(D)有機溶剤を含有するセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペーストであって、前記(A)銅粉末が球状銅粉末とフレーク状銅粉末からなり、その質量比率が90:10〜50:50であり、かつ、前記(D)有機溶剤がジヒドロターピネオールを70質量%以上含むことを特徴とするセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペースト、
(2)前記球状銅粉末の平均粒径が1〜6μmである上記(1)に記載のセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペースト、
(3)前記(D)有機溶剤がブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ベンジルアルコールの中から選択される少なくとも1種を30質量%以下併用する上記(1)または(2)に記載のセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペースト、
(4)セラミック素体の表面に、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペーストを塗布し焼き付けてなる外部電極を具備することを特徴とするセラミックコンデンサを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、有機溶剤成分として用いるジヒドロターピネオールは分子中に二重結合を有していないので重合反応が抑制されるため、保存安定性の良好な導電性ペーストを提供することができる。これにより、この導電性ペーストを焼成後、均一な品質のセラミックコンデンサの外部電極を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のセラミックコンデンサの一実施形態の積層セラミックコンデンサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のセラミックコンデンサ外部電極形成用ペーストは、(A)銅粉末、(B)ガラス粉末、(C)有機バインダおよび(D)有機溶剤を含むものである。
これらの銅粉末の形状は、特に限定されるものではなく、球状、フレーク状等、任意の形状であってよいが、ポアおよび亀裂の少ない外部電極を形成させるという観点からは、その少なくとも50質量%以上が、平均粒子径1μm以上、6μm以下の球状銅粉末であることが好ましい。すなわち、平均粒子径1μm以上、6μm以下の球状銅粉末を、銅粉末全体の50質量%以上含有させることにより、外部電極を形成する際、乾燥後の塗膜内の空隙を少なくすることができるとともに、銅粉末自身のネッキングが生じやすくなり、その結果、ポアや亀裂の発生が抑制される。なお、平均粒子径1μm以上、6μm以下の球状銅粉末は、銅粉末全体の70質量%以上とすることがより好ましく、銅粉末の全量を平均粒子径1μm以上、6μm以下の球状銅粉末とすることも可能である。また、この場合、球状銅粉末は、平均粒子径が1.3μm以上、5.5μm以下であることがより好ましく、平均粒子径が1.5μm以上、5μm以下であることがよりいっそう好ましい。ここで、上記銅粉末の平均粒子径は、エキネン溶媒(10%イソプロパノール及び0.1%のオクタアセチル化蔗糖により変性した変性アルコール)でマイクロトラックにより測定した個数積算分布における50%粒子径(D50値)である。
【0009】
上記球状銅粉末に併用するフレーク状銅粉末としては、平均粒径4μm以上、6μm以下のものを用いるのが好ましい。但し、平均粒径は、フレーク粉末の長径の平均値であり、エキネン溶媒でマイクロトラックにより測定した個数積算分布における50%粒子径(D50値)である。平均粒径を上記範囲内とすることにより、塗布後の形状を良好なものとすることができる。なお、平均粒子径4μm以上、6μm以下のフレーク状銅粉末は、銅粉末全体の30質量%以下とすることがより好ましい。
この銅粉末のセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペースト中における含有量は、セラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペースト全体の65質量%以上、85質量%以下とすることが好ましく、70質量%以上、80質量%以下とすることがより好ましい。65質量%以下であると、ポア(空隙)が多くなり導電性が低下する。また、85質量%を超えると、表面外観が不良となる。
【0010】
本発明において用いられる(B)ガラス粉末は、基本的に上記銅粉末の焼結を容易にするために加えられるものである。
脱バインダの効率を落とさず、かつ、銅粉末をネッキングさせてポアや亀裂の発生を抑制するためには、ガラス粉末は、セラミックコンデンサ外部電極形成用ペースト全体の4質量%以上、15質量%以下となる範囲で配合することが好ましい。より好ましくは、5質量%以上、12質量%以下となる範囲である。
また、ガラス粉末は、堀場製作所製LA−920により測定される平均粒子径が、0.1μm以上、5μm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5μm以上、3.5μm以下となる範囲である。
ガラス粉末の種類としては特に限定されるものではなく、BaO−B23−SiO2系ガラス、Bi23−B23−SiO2系ガラス、ZnO−B23−SiO2系ガラス等が挙げられる。また、これらのガラスを混合して使用してもよい。これらのガラスには、特性に影響のない範囲で、少量の他の酸化物、例えばアルカリ金属、ストロンチウム、鉛、銅、スズ、鉄、コバルト等の酸化物を含有させることができる。
本発明において用いられるガラス粉末は、各成分の原料化合物を混合し、溶融後、急冷し、粉砕する通常の方法の他、ゾルゲル法、噴霧熱分解法、アトマイズ法等の方法で製造することができる。これらの方法のなかでも、噴霧熱分解法は、微細で粒度の揃った球状のガラス粉末が得られ、導電性ペーストに使用する際の粉砕処理を行う必要がないことから好ましい。
【0011】
本発明において用いられる(C)有機バインダとしては、炉内の雰囲気の酸素濃度が低い状態でも熱分解するものが好ましく、例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース類、メチルアクリレート、エチルアクリレート等のアクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、スチレン樹脂、ロジンエステル、(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体等のアクリル樹脂が使用される。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソ−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソ−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかでも、イソ−ブチル(メタ)アクリレートが、熱分解性が良好で、残留カーボンが少なく、電気的特性を低下させないことから好ましい。
有機バインダは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、そのセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペースト中の含有量は、ペースト化を容易にし、かつ、乾燥後の塗膜内の空隙を少なくするという観点からは、セラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペースト全体の2質量%以上、15質量%以下とすることが好ましく、4質量%以上、8質量%以下とすることがより好ましい。
【0012】
本発明において用いられる有機溶剤は、ジヒドロターピネオールが、セラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペーストの保存安定性の観点から必須成分として使用される。またジヒドロターピネオールは有機溶剤中に70質量%以上含まれることが好ましい。それ以下ではペーストの粘度上昇が抑えられない。また、他の有機溶剤を30質量%以下併用してもよい。具体的には、ジオキサン、トルエン、エチルセロソルブ、シクロヘキサノン、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、脂肪族炭化水素、乳酸ブチル、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等のフタル酸エステル、ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート等のアジピン酸エステル等が使用される。
これらのなかでも、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ベンジルアルコールの中から選択される少なくとも1種を単独で若しくは2種以上混合して用いるのが好ましい。
特に、ジヒドロターピネオールを70質量%以上含み、ブチルカルビトールアセテート、
ブチルカルビトール、ベンジルアルコールを30質量%以下含むような混合物として用いるのが好ましい。
【0013】
この有機溶剤の添加量は、セラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペーストを塗布する際の適度な流動性を確保するとともにタレを防止する観点から、銅粉末100質量部に対して3質量部以上、30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上、20質量部以下であることがより好ましい。
本発明のセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペーストには、以上の各成分の他、銅粉末の分散性を向上させる目的で分散剤を添加することができる。また、セラミック素体等に塗布した際の塗布形状等を調整する目的で、レベリング剤、増粘剤、チクソトロピック性付与剤、消泡剤等を添加することも可能である。これらの添加剤は、いずれも本発明の効果を阻害しない範囲で使用される。
本発明のセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペーストは、上述したような銅粉末と、ガラス粉末と、有機バインダと、有機溶剤と、必要に応じて配合される各種成分とを十分に混合し、ペースト状にすることにより得られる。本発明のセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペーストの粘度は、20〜100Pa・s(E型粘度計、3°コーン、2.5rpm、25°)であることが好ましい。
本発明のセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペーストには、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の導電性ペーストに一般に配合される無機成分、例えばアルミナ、シリカ、酸化銅、酸化マンガン、チタン酸バリウム、酸化チタン等の金属酸化物や、誘電体層と同質のセラミック粉末、モンモリロナイト等を、必要に応じて、かつ、本発明の目的に反しない範囲で、添加することができる。
本発明のセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペーストは、本セラミックコンデンサの他、例えば、セラミックインダクタ、セラミックサーミスタ等のセラミック電子部品に用いることができ、また、単板型のセラミック電子部品のペーストとしても用いることができる。
【0014】
次に、本発明のセラミックコンデンサ外部用導電性ペーストを用いた本発明のセラミックコンデンサの実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明のセラミックコンデンサの一実施形態の積層セラミックコンデンサを示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体12と、内部電極14と、外部電極16と、めっき膜18とを備えている。
セラミック素体12は、誘電体材料、例えばBaTiO3を主成分とする、セラミック層12aとなるべきセラミックグリーンシートを複数枚、例えば30〜50枚程度積層し、所定の温度で焼成したものである。このセラミック素体12は、ほぼ直方体の形状を有している。
内部電極14は、それぞれの端縁がセラミック素体12の互いに対向するいずれかの端面に露出するようにセラミック層12a間に形成されている。これらの内部電極14は、例えば銅、ニッケル等の導電成分を含む導電性ペーストを所定のセラミックグリーンシート上に、スクリーン印刷やインクジェット方式等により直接所望のパターンに塗布し、同時に焼成することにより形成される。
この内部電極14の厚さは、公知の技術により、導電成分を含む導電性ペーストの塗布量を調整することにより制御することができる。具体的には、複数回塗布する方法、固形分濃度を増大または低減する方法、印刷版の深さ、スクリーン版のレジスト厚み等を変更する方法等により制御することができる。
外部電極16は、セラミック素体12の内部電極14が露出している両端面に、本発明の導電性ペーストをディップ法やスクリーン印刷等の公知の方法により塗布し、乾燥させた後、例えば700〜900℃で30分〜2時間程度焼き付けることにより形成される。つまり、この外部電極16は、本発明の導電性ペーストの焼結体から構成される。これらの外部電極16は、上記内部電極14と電気的かつ機械的に接合されている。なお、外部電極16用の導電性ペーストの焼成は、セラミック素体12の焼成と同時に行うようにしてもよい。すなわち、内部電極14用の導電性ペーストを塗布したセラミックグリーンシートを積層し、この積層体の両端面に外部電極16用の導電性ペーストを塗布した後、同時に焼成するようにしてもよい。
めっき膜18は、外部電極16を覆うように、例えばニッケル、スズ、はんだ等による湿式めっきにより形成される。
このように構成される積層セラミックコンデンサ10においては、残留カーボンが少なく、かつ、ポアや亀裂のない緻密度の高い外部電極16が得られるため、めっき液の浸入に伴う内部欠陥不良の発生が防止され、高い信頼性を備えることができる。
【実施例】
【0015】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1〜6、比較例1〜4>
表1または表2に示す組成のセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペーストを調製した。
まず、(C)成分の有機バインダを(D)成分の有機溶剤に溶解した後、この溶液に(A)成分の銅粉末および(B)成分のガラス粉末を加え、さらに、任意成分である分散剤およびチクソトロピック性付与剤を加え三本ロールで分散、混練して、セラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペーストを調製した。
なお、溶解、分散および混練は室温で行なった。
次いで、得られた各導電性ペーストを1005型セラミック素体〔京セラ(株)製〕の両端部にディップ法により塗布し、150℃で15分間乾燥した後、窒素雰囲気中において800℃で50分間加熱することにより導電性ペーストを焼き付けて外部電極を形成した。この後、この外部電極上にニッケルめっき膜を無電解めっきにより形成し、さらにこのニッケルめっき膜上にスズめっき膜を電解めっきにより形成してセラミックコンデンサを作製した。
実施例および比較例において使用した各成分は以下の通りである。
球状銅粉末:HWQ1.5〔平均粒径1.5μm、福田金属(株)製〕
球状銅粉末:HWO3.0〔平均粒径3.0μm、福田金属(株)製〕
フレーク状銅粉末〔HWF6.0、平均粒径6.0μm、福田金属(株)製〕
ガラス粉末:ガラス粉〔GF6550、平均粒径3.0μm、奥野製薬(株)製〕
有機バインダ:イソブチルメタクリレート(表1または表2ではi-BMAと記載)の 単独重合体〔根上工業(株)製〕、実施例3においてのみi-BMAとブ チルアクリレート(表1または表2ではBAと記載)との質量比3.9 2/0.98の共重合体〔根上工業(株)製〕を使用
有機溶剤:ジヒドロターピネオール〔メンタノール、日本香料(株)〕
ターピネオール〔日本香料(株)〕
α-ターピネオール〔日本香料(株)〕
ブチルカルビトールアセテート〔関東化学(株)〕
ブチルカルビトール〔関東化学(株)〕
ベンジルアルコール〔関東化学(株)〕
分散剤:アニオン系分散剤〔KD9、クローダジャパン(株)製〕
チクソトロピック性付与剤:脂肪酸アマイド系〔PFA231、楠本化成(株)製〕
【0016】
上記各実施例および各比較例で得られたセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペーストおよびセラミックコンデンサについて、下記に示す方法で各種特性を測定して評価し、その結果を表1および表2に併せ示した。
1.保存安定性
導電性ペーストの初期粘度および40℃で15日間保管後の粘度をE型粘度計(3°コーン、2.5rpm、25℃)で測定し、以下の基準で評価した。
○:粘度変化率が初期粘度基準で±30%以下のもの
×:上記の粘度変化率範囲外のもの
2.塗布後の形状
外部電極を形成したセラミック素体を、一方の外部電極から他方の外部電極にかけて切断し、その角部の外観を目視で評価した。
図1に示すように、セラミック素体の垂直方向の厚みをa、セラミック素体の角部斜め方向の厚みをbとして(b/a)×100の数値を下記の基準で評価した。
○:80%以上
△:50%以上80%未満
×:50%未満
3.緻密性
外部電極を形成したセラミック素体を、一方の外部電極から他方の外部電極にかけて切断し、その切断面(外部電極)におけるポアの面積率を画像解析装置〔KEYENCE(株)製、機器名VHX-200〕により算出し、以下の基準で評価した(試料数各50個)。
5:ポア面積率が0%
4:ポア面積率が0%より大きく、1%未満
3:ポア面積率が1%以上、3%未満
2:ポア面積率が3%以上、5%未満
1:ポア面積率が5%以上
4.湿中負荷
セラミックコンデンサの絶縁抵抗〔YOKOGAWA-HEWLETT-PACKARD(株)製、機器名4329A〕を測定し、65℃、92%RH、定格電圧×1倍、125時間の環境試験後に再び絶縁抵抗を測定した(試料数各300個)。
○:変動なし
△:変動率1%未満
×:変動率1%以上
5.高温負荷
セラミックコンデンサの絶縁抵抗を測定し、85℃、定格電圧×2倍、125時間の環境試験後に再び絶縁抵抗を測定した(試料数各300個)。
○:変動なし
△:変動率1%未満
×:変動率1%以上
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
表1から明らかなように、実施例で得られた導電性ペーストの保存安定性は、いずれも良好で、塗布後の形状も良く、かつ、緻密性、湿中負荷、高温負荷試験の結果も良好であった。とりわけ溶剤としてジヒドロターピネオールを必須成分として、ブチルカルビトールアセテートやブチルカルビトール、ベンジルアルコールを併用した(後者の含有量20質量%)実施例2〜4においては、さらに高い緻密性を有していた。
これに対し、表2に示すように、比較例1〜3で得られた、溶剤としてターピネオールのみを用いた導電性ペーストにおいてはいずれも増粘が見られ、保存安定性が悪く、かつコンデンサー性能も悪かった。また、溶剤としてブチルカルビトールアセテートのみを用いた比較例4では、ペーストの増粘は見られず、保存安定性も良く、緻密性、湿中負荷、高温負荷試験いずれの結果も良好であったものの、塗布後の形状が悪かった。
【符号の説明】
【0020】
10:積層セラミックコンデンサ
12:セラミック素体
12a:セラミック層
14:内部電極
16:外部電極
18:めっき膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)銅粉末、(B)ガラス粉末、(C)有機バインダおよび(D)有機溶剤を含有するセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペーストであって、前記(A)銅粉末が球状銅粉末とフレーク状銅粉末からなり、その質量比率が90:10〜50:50であり、かつ、前記(D)有機溶剤がジヒドロターピネオールを70質量%以上含むことを特徴とするセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペースト。
【請求項2】
前記球状銅粉末の平均粒径が1〜6μmである請求項1に記載のセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペースト。
【請求項3】
前記(D)有機溶剤がブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ベンジルアルコールの中から選択される少なくとも1種を30質量%以下併用する請求項1または2に記載のセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペースト。
【請求項4】
セラミック素体の表面に、請求項1乃至3のいずれかに記載のセラミックコンデンサ外部電極形成用導電性ペーストを塗布し焼き付けてなる外部電極を具備することを特徴とするセラミックコンデンサ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−138704(P2011−138704A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298463(P2009−298463)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】