説明

導電性ペースト組成物、燃料電池用導電性セパレータ及び燃料電池用導電性セパレータの製造方法

【課題】要求される良好な低い体積抵抗率を実現した、導電性ペースト組成物、燃料電池用導電性セパレータ及び燃料電池用導電性セパレータの製造方法を提供する。
【解決手段】導電性ペースト組成物が、ポリイミド樹脂100重量部に対して、炭素質物質を50〜170重量部含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト組成物、燃料電池用導電性セパレータ及び燃料電池用導電性セパレータの製造方法に係り、特に導電性に優れ、燃料電池用セパレータの表面被覆等に好適する導電性ペースト組成物、これを用いた燃料電池用導電性セパレータ及び燃料電池用導電性セパレータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池として、図1に示すように、イオン交換膜1と、このイオン交換膜1を燃料極2及び空気極3とで挟んだ単位電池4を、水素ガス流路及び酸素ガス流路となる平行する複数の凹溝5,6を形成したセパレータ7を介して、複数直列に接続してなるものが知られている(矢印は、ガスの流通方向を示す。)。このような燃料電池におけるセパレータ7は、水素や酸素(空気)を供給する通路の役目を果たすと共に、上記のように単位燃料電池の間を電気的に接続する集電体として機能するため、高い電導率(すなわち低い体積抵抗率)を有することが要求されている。
このようなセパレータとしては、バインダ樹脂と導電性粒子からなる混合組成物を所定の形状に成形加工したものや、所定の形状に形成した金属基体の表面に金の薄膜を形成して不動態化(防錆処理)したものが知られている(例えば、特許文献1及び2。)。
【0003】
しかしながら、前者のセパレータは、製造コストが高く、良好な低い体積抵抗率を得ることが困難である。また、後者のセパレータは、セパレータ表面の微細な損傷、構成成分のゆらぎ等によって引き起こされる腐食不良の防止ができず、さらに、セパレータの表面処理に使用される金属が高価であるために製造コストが高くなるという問題点がある。
【0004】
このような問題点を解決するために、金属セパレータの表面をカーボン系導電性ペースト(例えば、特許文献3及び4。)で被膜する方法が提案されている(例えば、特許文献5。)。
【特許文献1】特開2000−40517号公報
【特許文献2】特開2000−311695号公報
【特許文献3】特開平9−31402号公報
【特許文献4】特開2001−19891号公報
【特許文献5】特開2002−260680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような導電性ペーストを用いたセパレータでは、導電性ペーストの体積抵抗率が金の薄膜の場合に比べて高くなり、燃料電池の効率が低下するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる従来の問題点を解決すべくなされたもので、要求される良好な低い体積抵抗率を実現した、導電性ペースト組成物、燃料電池用導電性セパレータ及び燃料電池用導電性セパレータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の導電性ペースト組成物は、ポリイミド樹脂100重量部に対して、炭素質物質を50〜170重量部含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、要求される良好な低い体積抵抗率を実現した、導電性ペースト組成物、燃料電池用導電性セパレータ及び燃料電池用導電性セパレータの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の導電性ペースト組成物は、ポリイミド樹脂と炭素質物質とを必須成分として含有し、より好ましくは溶剤を含有するものである。
【0011】
本発明に用いる炭素質物質は、導電性物質として機能し、例えば黒鉛、カーボンブラック、活性炭、カーボン繊維(カーボンファイバー)、コークス、有機前駆体を不活性雰囲気中で熱処理して合成した炭素、カーボンナノ材料(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー)等が挙げられる。
高い導電性の観点から、カーボンブラック、黒鉛が好ましく、黒鉛がさらに好ましく、粒子状黒鉛、又は粒子状黒鉛と鱗片状黒鉛とを混合したものが最も好ましい。
【0012】
黒鉛は、炭素質物質のなかで、規則的な構造をとり導電性が高いため、黒鉛を用いることにより低い体積抵抗率を実現できる導電性ペースト組成物を得ることができる。
これらの炭素質物質は、平均粒子径が3nm〜50μmであるものが好ましく、3μm〜25μmのものがより好ましい。これらの平均粒子径はJIS−Z8823−2に従って測定される。
平均粒子径が3nm未満であると粒子が細かすぎて接触抵抗が高くなるため体積抵抗率が高くなる。平均粒子径が50μmを超えると形成した導電性被膜等の硬化体の表面が粗くなり、また、粉落ちが起こりやすくピンホールを生じるおそれがある。
【0013】
粒子状黒鉛は、粒子状の黒鉛で、鱗片状黒鉛よりも粒子径が小さいものである。形成された導電性被膜等において鱗片状黒鉛等の導電粉間の隙間を埋めるように充填され、導電性を向上させる作用をする。
鱗片状黒鉛は、鱗片(平板)の形状の黒鉛で、粒子状黒鉛よりも粒子径が大きいものである。導電性被膜等において導電粉(粒子状黒鉛及び鱗片状黒鉛)どうしの接触ポイント数を少なくすることによって、導電性を向上させる作用をする。
そのため、炭素質物質として、粒子状黒鉛、又は粒子状黒鉛と鱗片状黒鉛とを混合したものを用いることにより、高い導電性(低い体積抵抗率)を実現できる導電性ペースト組成物が得られる。
【0014】
粒子状黒鉛は、平均粒子径が3〜12μmであるものが好ましい。平均粒子径が3μm未満であると粒子が細かすぎて接触抵抗が高くなるため導電性被膜等の硬化体の体積抵抗率が高くなり、平均粒子径が12μmを超えると導電性被膜等の硬化体において鱗片状黒鉛等の導電粉間の隙間を埋める充填が悪くなり導電粉の接触が十分とはいえず体積抵抗率が高くなるおそれがある。
【0015】
鱗片状黒鉛は、平均粒子径が20〜50μmであるものが好ましい。平均粒子径が20μm未満であると粒子が小さいため鱗片状黒鉛による接触抵抗の減少が十分であるとはいえない場合がある。平均粒子径が50μmを超えると形成した導電性被膜等の硬化体の表面が粗くなり、また、粉落ちが起こりやすくピンホールを生じるおそれがある。
【0016】
本発明の炭素質物質の配合量は、ポリイミド樹脂100重量部を基準にして、50〜170重量部とされ、80〜150重量部が好ましい。炭素質物質の配合量が50重量部未満であると絶縁体であるポリイミド樹脂量が多くなり、導電粉(炭素質物質)間の導電性が低下し導電性被膜等の硬化体の体積抵抗率が高くなるおそれがある。炭素質物質の配合量が170重量部を超えるとペースト状になりにくくなり、基材に対して良好な密着性が得られないおそれがある。
【0017】
粒子状黒鉛と鱗片状黒鉛の重量比は、5:95〜100:0であることが好ましい。炭素質物質中の粒子状黒鉛の比率が5重量%未満であると、鱗片状黒鉛の隙間を粒子状黒鉛が十分に埋めることができないため接触状態が不十分となり導電性被膜等の硬化体の体積抵抗率が高くなるおそれがある。
【0018】
炭素質物質の他に炭素質物質以外の導電性物質も必要に応じて配合することが可能である。炭素質物質の他に配合可能な導電性物質としては、金、白金、銀、銅、ニッケル、チタン、アルミニウムなどの金属粉末、又は導電性酸化チタン、導電性酸化錫などの導電性酸化物、或いはその他の導電性を有する金属化合物が挙げられる。
これらの金属粉末、導電性酸化物又は導電性金属化合物を使用する場合の配合量は、それぞれ、炭素質物質の100重量部を基準にして、20〜100重量部であることが好ましく、50〜90重量部であることがさらに好ましく、60〜80重量部であることが最も好ましい。
【0019】
本発明に用いるポリイミド樹脂は、バインダーとして機能する。バインダーにポリイミド樹脂を用いることにより、耐熱性、耐薬品性、基材との密着性等に優れた導電性被膜等の硬化体を得ることができる。
本発明に用いるポリイミド樹脂は、次の一般式で示されるものである。
【化1】

【0020】
ここで、式中のR1は、4価の有機酸残基であり、4価の芳香族基、4価の脂肪族基、又は、2つの芳香族基若しくは脂肪族基が単結合、−O−、−CO−、−SO−、−CH−、若しくは−C(CF−等で結合された4価の有機基を表す。R2は、2価のジアミン残基であり、2価の芳香族基、2価の脂肪族基、又は、2つの芳香族基若しくは脂肪族基が単結合、−O−、−CO−、−SO−、−CH−、若しくは−C(CF−等で結合された2価の有機基を表す。nは1以上の整数である。
【0021】
ポリイミド樹脂は、酸成分とジアミン成分とを反応させて得られるものである。
式中のRl骨格となる酸成分は、例えば、3,3′,4,4′−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4’−オキシジフタル酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−コハク酸等、又はこれらの無水物が挙げられ、これらは単独で、または2種類以上混合して使用することができる。
【0022】
R2骨格をもつジアミン成分としては、例えば、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノトルエン、1−メトキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノ−2−メトキシ−5−メチルベンゼン、1,3−ジアミノ−4,6−ジメチルベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、1,2−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノ−2−メチルナフタレン、1,5−ジアミノ−2−メチルナフタレン、1,3−ジアミノ−2−フェニルナフタレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,1ビス(4−アミノフェニル)エタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(3,3’−ジメチル−シクロヘキシルアミン)、2,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン、ビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、ビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、o−トルイジンスルフォン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エ−テル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられ、これらは単独で、または2種類以上混合して使用することができる。
【0023】
酸成分とジアミン成分は、等モルで使用するのが好ましいが、使用目的や最終粘度、分子量に合わせて0.9〜1.2倍モルの範囲で使用することができる。
【0024】
本発明に用いるポリイミド樹脂は、酸成分とジアミン成分とを反応させて得られるが、それら酸成分およびジアミン成分がブロック或いはランダムに含有されていてよい。
【0025】
また、ポリイミド樹脂は、Rl骨格をもつテトラカルボン酸化合物またはその二無水物と、R2骨格をもつジアミン化合物との重縮合反応により得られるポリアミック酸樹脂(ポリイミド前駆体)も本発明の導電性ペースト組成物の原料として使用される。このポリイミド前駆体を加熱し脱水閉環させてポリイミド樹脂を得ることができる。
なお、ポリイミド前駆体には、ポリアミック酸のほか、ポリアミック酸が部分的にイミド化されたものも含まれる。
【0026】
本発明に用いるポリイミド前駆体(ポリアミック酸樹脂)の合成溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトンなどが用いられ、これらは単独、もしくは組み合わせて使用することができる。これらの溶媒を用いて常温で反応を行うのが好ましい。
【0027】
本発明に用いる溶剤(希釈剤)は、導電性ペースト組成物の粘度調節に使用され、製膜状態の制御に関係する。導電性ペースト組成物を希釈する溶剤は、ポリイミド樹脂の硬化温度よりも低い沸点を持つ溶剤であれば、ポリイミド樹脂と反応性を有する溶剤も反応性を有しない溶剤も使用することができるが、反応性を有しない溶剤が好ましい。
【0028】
反応性のない溶剤としては、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ターピネオール、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレン等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素等のハロゲン化炭素、等の有機溶剤を挙げることができる。
【0029】
この中でも、高沸点のため、例えば、ターピネオール、ブチルカルビトールアセテート等が好ましく、ターピネオールがより好ましい。
【0030】
本発明の溶剤の配合量は、使用されるポリイミド樹脂の重量平均分子量、等を考慮して、室温での、導電性ペースト組成物の粘度が適切に調整されるように容易に決定することができる。導電性ペースト組成物の粘度は、25℃において500〜5000mPa・Sであることが好ましく、800〜3000mPa・Sであることがさらに好ましい。
【0031】
導電性ペースト組成物の粘度が5000mPa・Sを超えると、粘度が高くピンホール等が発生しやすく、その結果耐腐食性及び基材に対する密着性が低下するおそれがある。500mPa・S未満であると、導電性ペースト組成物の粘度が低く導電性被膜の厚みが薄くなり、また、加熱による溶剤除去の際に発生したガスが、炭素質粉末に吸着されて完全に除去できずピンホール等が発生し、耐腐食性が低下するおそれがある。
【0032】
以上のように、本実施の形態によれば、導電性物質として、例えば黒鉛等の炭素質物質を用いることによって、良好な低い体積抵抗率を実現でき、また、バインダーとしてポリイミド樹脂を用いることによって、良好な耐熱性、耐薬品性、基材との密着性等を実現できる導電性ペースト組成物を得ることができる。
【0033】
以下に、本発明の導電性ペースト組成物の製造方法について説明する。
例えば、万能混合機中に、まず液状の組成物であるポリイミド樹脂、若しくはポリイミド前駆体(ポリアミック酸樹脂)を投入し、混合しながら黒鉛粉末を徐々に加え、混練してからペースト状組成物を3本ロールに投入し、せん断力を加えながら長時間、混練する。
混練中、粘度を調節するため溶剤を入れることも可能である。
せん断力を加えながら混合する方法としては、ボールミルによる方法、プレートコーンによる方法、臼杵方式による方法、等を使用することができる。せん断力を加えれば加える程、生成した導電性ペースト組成物の電気伝導性、また機械強度などが改善される。
【0034】
本発明の燃料電池用導電性セパレータについて説明する。本発明の燃料電池用導電性セパレータは、セパレータ基材の表面に、本発明の導電性ペースト組成物の硬化物からなる導電性被膜が形成されてなるものである。
本発明の導電性ペースト組成物で被覆される燃料電池用セパレータ基材は、金属製であっても、他の材料製、例えば樹脂と炭素質物質とからなる材料製であってもよいが、金属製セパレータが最も好ましい。金属製セパレータ基材の表面には、複数の並列に構成された凹溝からなるガス流路が形成されている(図1参照)。
導電性被膜は、前述した本発明の導電性ペースト組成物を金属製セパレータ基材の表面に塗布し、加熱硬化して得られるものであり、後述するように導電性、耐熱性、耐薬品性(例えば、強酸性)、膜強度、膜密着性等の要求される特性を満たすものである。導電性ペースト組成物の被膜の厚さは、10〜1000μmが好ましく、50〜100μmがより好ましい。
【0035】
本発明の燃料電池用導電性セパレータは、セパレータ基材の表面に本発明の導電性ペースト組成物の硬化物からなる導電性被膜が形成されてなるものに限られない。本発明の燃料電池用導電性セパレータは、本発明の導電性ペースト組成物を所定の形状に金型成形し加熱硬化することによって製造することができる。また、本発明の燃料電池用導電性セパレータは、アルミ等の導電性金属をインサート材料として、その外周に本発明の導電性ペースト組成物を所定の形状となるように金型を用いて成形してもよい。必要に応じてさらに表面加工を施すようにしてもよい。
なお、本発明においては、燃料電池は、例えば家庭用燃料電池、モバイル用燃料電池、自動車用燃料電池等の全ての燃料電池を含むものである。
【0036】
次に、導電性ペースト組成物を塗布した燃料電池用導電性セパレータの製造方法について説明する。まず、例えばガス流路を形成したステンレス板の表面を、研磨剤で粗面化し、その表面上(後述する前処理がなされている場合には前処理された表面上)に粘度調整された本発明の導電性ペースト組成物を塗布し、加熱硬化させる。その後さらに熱処理を行うことにより、導電性ペースト組成物で被覆された、燃料電池用セパレータを製造することができる。
【0037】
研磨剤で粗面化した後、さらにカップリング剤を塗布乾燥して基材表面の前処理を行い、本発明の導電性ペースト組成物を塗布してもよい。また、加熱硬化の前に、プリベークしてもよい。また、加熱硬化を十分に行うことにより、その後の熱処理を省略してもよい。
加熱硬化の条件は、硬化温度が、300℃以下、好ましくは150℃〜250℃、より好ましくは160℃〜200℃である。また、加熱硬化の時間は、1〜10時間である。なお、加熱硬化は、1段階の加熱硬化の条件を使用するだけではなく、複数の段階の加熱硬化の条件を使用してもよい。
導電性ペースト組成物の塗布は、スクリーン印刷法、スキージ法、ディップ法、エアブラシ等の方法で行うことができ、ディップ法が好ましい。
【0038】
本発明の導電性ペースト組成物は、導電性が要求される用途について良好に使用することができる。例えば、燃料電池用導電性セパレータの他に、燃料電池用カーボン電極にも使用することができる。
【0039】
さらに、ガラス板の表面にスクリーン印刷法を用いて本発明の導電性ペースト組成物を塗布し、加熱硬化させ、その後さらに熱処理を行うことにより、導電性樹脂で被覆されたガラス基板を製造することが可能である。
【0040】
また、ガラス繊維基板の表面に本発明の導電性ペースト組成物を使って回路を描き、加熱硬化させ、その後さらに熱処理を行って、基板上に電気回路を形成することも可能である。さらに、本発明の導電性ペースト組成物は、導電性シール、静電防止用ペースト等、の幅広い用途の導電性ペースト組成物として使用することができる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例を用いて本発明の内容を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
まず、ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミック酸樹脂)の合成について説明する。
攪拌機、冷却器および窒素導入管を設けたフラスコに、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを36.9g(0.09mol)と、ビス(γ−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン2.49g(0.01mol)と、N−メチル−2−ピロリドン279.1gを投入し、室温で窒素雰囲気下に3,3′,4,4′−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物30.38g(0.098mol)を溶液温度の上昇に注意しながら分割して加え、室温で約12時間攪拌してポリアミック酸樹脂溶液を製造した。このポリアミック酸樹脂溶液の一部をメタノールで再沈澱し、得られたポリアミック酸樹脂粉末をN−メチル−2−ピロリドンで溶解し、固形分の濃度を15%とした。
【0043】
次に、導電性ペースト組成物の作成について説明する。
このようにして得られたポリイミド樹脂前駆体(ポリアミック酸樹脂) 13.3重量部(ポリイミド樹脂2.0重量部に相当する)、粒子状黒鉛(株式会社SEC製、商品名 SGL−3、粒径 3μm) 2.7重量部、鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製、商品名 SP−20、粒径 20μm) 0.3重量部を配合した。
このように配合した組成物を万能混合機でよく混練し、さらに3本ロールミルで1時間混練した後、ターピネオールを添加してペースト組成物の粘度を調整し、カーボン系導電性ペースト組成物を作成した。
【0044】
次に、導電性被膜の作成について説明する。
このようにして得られた導電性ペースト組成物をステンレス鋼板上にディップ法により塗布した。この際、ディップするペーストの粘度及びディップ時の引き上げ速度により、被膜の膜厚を制御する。塗布後、100℃で1時間、200℃で1時間、300℃で1時間の熱硬化処理を施して、導電性被膜を形成した。
【0045】
(実施例2)
ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミック酸樹脂) 13.3重量部(ポリイミド樹脂2.0重量部に相当する)、粒子状黒鉛(株式会社SEC製、商品名 SGL−3、粒径 3μm) 2.1重量部、鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製、商品名 SP−20、粒径 20μm) 0.9重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして導電性被膜を形成した。
【0046】
(実施例3)
ポリイミド樹脂前駆体 13.3重量部(ポリイミド樹脂2.0重量部に相当する)、粒子状黒鉛(株式会社SEC製、商品名 SGL−3、粒径 3μm) 1.5重量部、鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製、商品名 SP−20、粒径 20μm) 1.5重量部を配合した以外は、実施例1と同様にして導電性被膜を形成した。
【0047】
(実施例4)
まず、ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミック酸樹脂)の合成について説明する。
攪拌機、冷却器および窒素導入管を設けたフラスコに、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンを46.6g(0.09mol)と、ビス(γ−アミノプロピル)テトラフェニルジシロキサン4.97g(0.01mol)と、N−メチル−2−ピロリドン268.3gを投入し、室温で窒素雰囲気下に3,3’,4,4′−ビスフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物15.5g(0.050mol)と、ピロメリット酸二無水物10.46g(0.048mol)を溶液温度の上昇に注意しながら分割して加え、室温で約10時間攪拌してポリアミック酸樹脂溶液を製造した。このポリアミック酸樹脂溶液の一部をメタノールで再沈澱し、得られたポリアミック酸樹脂粉末をN−メチル−2−ピロリドンで溶解し、固形分の濃度を15%とした。
【0048】
次に、導電性ペースト組成物の作成について説明する。
このようにして得られたポリイミド樹脂前駆体(ポリアミック酸樹脂) 13.3重量部(ポリイミド樹脂2.0重量部に相当する)、粒子状黒鉛(株式会社SEC製、商品名 SGL−3、粒径 3μm) 0.9重量部、鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製、商品名 SP−20、粒径 20μm) 2.1重量部を配合した。
このように配合した組成物を万能混合機でよく混練し、さらに3本ロールミルで1時間混練した後、ターピネオールを添加してペースト組成物の粘度を調整し、カーボン系導電性ペースト組成物を作成した。
【0049】
次に、導電性被膜の作成について説明する。
このようにして得られた導電性ペースト組成物をステンレス鋼板上にディップ法により塗布した。この際、ディップするペーストの粘度及びディップ時の引き上げ速度により、被膜の膜厚を制御する。塗布後、100℃で1時間、200℃で1時間、300℃で1時間の熱硬化処理を施して、導電性被膜を形成した。
【0050】
(実施例5)
ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミック酸樹脂) 13.3重量部(ポリイミド樹脂2.0重量部に相当する)、粒子状黒鉛(株式会社SEC製、商品名 SGL−3、粒径 3μm) 0.3重量部、鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製、商品名 SP−20、粒径 20μm) 2.7重量部を配合した以外は、実施例4と同様にして導電性被膜を形成した。
【0051】
(実施例6)
まず、ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミック酸樹脂)の合成について説明する。
攪拌機、冷却器および窒素導入管を設けたフラスコに、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル18.00g(0.09mol)と、ビス(γ−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン2.49g(0.01mol)と、N−メチル−2−ピロリドン167.4gを投入し、室温で窒素雰囲気下にピロメリット酸二無水物21.36g(0.098mol)を加え、室温で約10時間攪拌してポリアミック酸樹脂溶液を製造した。このポリアミック酸樹脂溶液の一部をメタノールで再沈澱し、得られたポリアミック酸樹脂粉末をN−メチル−2−ピロリドンで溶解し、固形分の濃度を15%とした。
【0052】
次に、導電性ペースト組成物の作成について説明する。
このようにして得られたポリイミド樹脂前駆体(ポリアミック酸樹脂) 13.3重量部(ポリイミド樹脂2.0重量部に相当する)、粒子状黒鉛(株式会社SEC製、商品名 SGL−3、粒径 3μm) 1.4重量部を配合した。
このように配合した組成物を万能混合機でよく混練し、さらに3本ロールミルで1時間混練した後、ターピネオールを添加してペースト組成物の粘度を調整し、カーボン系導電性ペースト組成物を作成した。
【0053】
次に、導電性被膜の作成について説明する。
このようにして得られた導電性ペースト組成物をステンレス鋼板上にディップ法により塗布した。この際、ディップするペーストの粘度及びディップ時の引き上げ速度により、被膜の膜厚を制御する。塗布後、100℃で1時間、200℃で1時間、300℃で1時間の熱硬化処理を施して、導電性被膜を形成した。
【0054】
(実施例7)
ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミック酸樹脂) 13.3重量部(ポリイミド樹脂2.0重量部に相当する)、粒子状黒鉛(株式会社SEC製、商品名 SGL−3、粒径 3μm) 2.1重量部を配合した以外は、実施例6と同様にして導電性被膜を形成した。
【0055】
(実施例8)
まず、導電性ペースト組成物の作成について説明する。
ビスマレイミド樹脂(丸善石油化学株式会社製、商品名BANI−H、分子量488.63g/mol) 2重量部、粒子状黒鉛(株式会社SEC製、商品名 SGL−3、粒径 3μm) 2.7重量部、鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製、商品名 SP−20、粒径 20μm)を0.3重量部を配合した。
このように配合した組成物を万能混合機でよく混練し、さらに3本ロールミルで1時間混練した後、ターピネオールを添加してペースト組成物の粘度を調整し、カーボン系導電性ペースト組成物を作成した。
【0056】
次に、導電性被膜の作成について説明する。
このようにして得られた導電性ペースト組成物をステンレス鋼板上にディップ法により塗布した。この際、ディップするペーストの粘度及びディップ時の引き上げ速度により、被膜の膜厚を制御する。塗布後、160℃で1時間、250℃で3時間の熱硬化処理を施して、導電性被膜を形成した。
【0057】
(実施例9)
ビスマレイミド樹脂(丸善石油化学株式会社製、商品名BANI−H、分子量488.63g/mol) 2重量部、粒子状黒鉛(株式会社SEC製、商品名 SGL−3、粒径 3μm) 2.1重量部、鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製、商品名 SP−20、粒径 20μm)を0.9重量部配合した以外は、実施例8と同様にして導電性被膜を形成した。
【0058】
(比較例1)
まず、導電性ペースト組成物の作成について説明する。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名EPICLON830、分子量350g/mol) 2.5重量部、エポキシ系硬化剤(四国化成株式会社製、商品名キュアゾール2E4MZ−CN) 0.025重量部、粒子状黒鉛(株式会社SEC製、商品名 SGL−3、粒径 3μm) 2.7重量部、鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製、商品名 SP−20、粒径 20μm) 0.3重量部を配合した。
このように配合した組成物を万能混合機でよく混練し、さらに3本ロールミルで1時間混練した後、ターピネオールを添加してペースト組成物の粘度を調整し、カーボン系導電性ペースト組成物を作成した。
【0059】
次に、導電性被膜の作成について説明する。
このようにして得られた導電性ペースト組成物をステンレス鋼板上にディップ法により塗布した。この際、ディップするペーストの粘度及びディップ時の引き上げ速度により、被膜の膜厚を制御する。塗布後、160℃で1時間、250℃で3時間の熱硬化処理を施して、導電性被膜を形成した。
【0060】
(比較例2)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名EPICLON830、分子量350g/mol) 2.5重量部、エポキシ系硬化剤(四国化成株式会社製、商品名キュアゾール2E4MZ−CN) 0.025重量部、粒子状黒鉛(株式会社SEC製、商品名 SGL−3、粒径 3μm) 2.1重量部、鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製、商品名 SP−20、粒径 20μm) 0.9重量部を配合した以外は、比較例1と同様にして導電性被膜を形成した。
【0061】
(比較例3)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名EPICLON830、分子量350g/mol) 2.5重量部、エポキシ系硬化剤(四国化成株式会社製、商品名キュアゾール2E4MZ−CN) 0.025重量部、粒子状黒鉛(株式会社SEC製、商品名 SGL−3、粒径 3μm) 1.5重量部、鱗片状黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製、商品名 SP−20、粒径 20μm) 1.5重量部を配合した以外は、比較例1と同様にして導電性被膜を形成した。
【0062】
(比較例4)
ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミック酸樹脂) 13.3重量部(ポリイミド樹脂2.0重量部に相当する)、粒子状黒鉛(株式会社SEC製、商品名 SGL−3、粒径 3μm) 0.7重量部を配合した以外は、実施例4と同様にして導電性被膜を形成した。
【0063】
(比較例5)
ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミック酸樹脂) 13.3重量部(ポリイミド樹脂2.0重量部に相当する)、粒子状黒鉛(株式会社SEC製、商品名 SGL−3、粒径 3μm) 4.0重量部を配合した以外は、実施例6と同様にして導電性被膜を形成した。
【0064】
(比較例6)
ビスマレイミド樹脂(丸善石油化学株式会社製、商品名BANI−H、分子量488.63g/mol) 2重量部、粒子状黒鉛(株式会社SEC製、商品名 SGL−3、粒径 3μm) 4.0重量部を配合した以外は、実施例8と同様にして導電性被膜を形成した。
【0065】
各実施例および比較例の導電性ペースト組成物の原料配合表を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
各実施例および比較例の導電性被膜の性能評価結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

:JIS−K7194に準じて、ロレスタGP(ダイアインスツルメンツ株式会社製)を用いて、貫通抵抗率(体積抵抗率)(Ω・cm)を測定した。
:JIS−K5600に従って、鉛筆法により、膜強度を測定した。
:JIS−K5600に従って、膜密着性を100枚当たりの剥離数として測定した。
:JIS−K8001に準じて、耐酸性を濃塩酸により測定した。
:設定温度の乾燥器中に放置したサンプルについて、JIS−K5600に従って膜密着性を評価し、剥離数0枚(0/100)となる温度を測定した。
【0069】
表2に示されるように、ポリイミド樹脂100重量部に対して、炭素質物質である黒鉛を50重量部未満配合した比較例4の導電性被膜は、実施例に比べて貫通抵抗率(体積抵抗率)が若干高くなることが認められた。また、ポリイミド樹脂100重量部に対して、炭素質物質である黒鉛を170重量部を超えて配合した比較例5、6の導電性被膜は、製膜が困難であることが認められた。
これに対して、ポリイミド樹脂100重量部に対して、炭素質物質である黒鉛が50〜170重量部配合された実施例の導電性被膜は、貫通抵抗率(体積抵抗率)が低い、良好な導電性を有する被膜であることが認められた。また、エポキシ樹脂を用いた比較例1〜3と比べて耐熱性が優れていることが認められた。また、耐酸性、膜密着性、膜強度が良好であることが確認された。
【0070】
本発明の一態様である実施例3の導電性被膜の電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)写真を図2に示す。なお、写真の倍率は5000倍である。撮影に使用した電子顕微鏡は、加速電圧が15kVであるABT−60型の電子顕微鏡(SEM)である。
図2から理解されるように本発明の実施例3の導電性被膜は、炭素質物質が接続されて導電性を生じていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】燃料電池における単位電池の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例3の導電性被膜の電子顕微鏡写真による表面図である。
【符号の説明】
【0072】
1…イオン交換膜、2…燃料極、3…空気極、4…単位電池、5、6…凹溝、7…セパレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂100重量部に対して、炭素質物質を50〜170重量部含むことを特徴とする導電性ペースト組成物。
【請求項2】
前記炭素質物質の平均粒子径が3nm〜50μmであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項3】
前記炭素質物質が、黒鉛からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項4】
前記黒鉛が、平均粒子径が3〜12μmの粒子状黒鉛のみ、又は、平均粒子径が3〜12μmの粒子状黒鉛と平均粒子径が20〜50μmの鱗片状黒鉛からなることを特徴とする請求項3に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項5】
前記ポリイミド樹脂が、次の一般式
【化1】

(但し、式中R1は、4価の芳香族基、4価の脂肪族基、又は、2つの芳香族基若しくは脂肪族基が単結合、−O−、−CO−、−SO−、−CH−、若しくは−C(CF−で結合された4価の有機基を表し、
R2は、2価の芳香族基、2価の脂肪族基、又は、2つの芳香族基若しくは脂肪族基が単結合、−O−、−CO−、−SO−、−CH−、若しくは−C(CF−で結合された2価の有機基を表し、
nは1以上の整数である。)
で表されることを特徴とする請求項1乃至4項のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項6】
金属、導電性酸化物から選ばれる少なくとも1種からなる導電性の粉末をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物を所定の形状に金型成形し、加熱硬化してなることを特徴とする燃料電池用導電性セパレータ。
【請求項8】
所定の形状に形成された金属製セパレータ基材と、
前記金属製セパレータ基材の表面上に、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物が塗布され、加熱硬化して形成された導電性被膜と、
を具備することを特徴とする燃料電池用導電性セパレータ。
【請求項9】
所定の形状に形成された金属製セパレータ基材の表面を粗面加工する工程と、
前記粗面加工した表面に請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物を塗布し、加熱硬化して導電性被膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする燃料電池用導電性セパレータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−66743(P2007−66743A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252334(P2005−252334)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】