導電性ボール配列用マスク、及びその製造方法
【課題】製造効率が良好で、低コストでありながら、導電性ボールを傷つけることなく円滑に開口部に振り込み、基板の所定位置により確実に搭載可能とした導電性ボール配列用マスクとその製造方法を提供する。
【解決手段】導電性ボールを基板の所定位置に搭載するために、前記導電性ボールを挿通可能な複数の開口部が前記基板に応じた所定の配列パターンで配置された導電性ボール配列用マスクの製造方法であって、母型の表面に、前記開口部に対応するレジスト体を有するパターンレジストを設けるパターニング工程と、前記パターンレジストを用いて前記母型上に電着金属を電鋳し、電着層を形成する電鋳工程と、前記レジスト体を除去し、前記開口部を露呈させるレジスト除去工程と、前記開口部の底部周縁にスロープ状のボール誘導部を形成する電解研磨工程と、を有する導電性ボール配列用マスクの製造方法とした。
【解決手段】導電性ボールを基板の所定位置に搭載するために、前記導電性ボールを挿通可能な複数の開口部が前記基板に応じた所定の配列パターンで配置された導電性ボール配列用マスクの製造方法であって、母型の表面に、前記開口部に対応するレジスト体を有するパターンレジストを設けるパターニング工程と、前記パターンレジストを用いて前記母型上に電着金属を電鋳し、電着層を形成する電鋳工程と、前記レジスト体を除去し、前記開口部を露呈させるレジスト除去工程と、前記開口部の底部周縁にスロープ状のボール誘導部を形成する電解研磨工程と、を有する導電性ボール配列用マスクの製造方法とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体と回路基板の接続などに用いられる導電性ボールを、所定のパターンで基板上に配列するための導電性ボール配列用マスク、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性ボールを基板のパッドなどに搭載する方法として振込みタイプが知られている。これは、図19に示すように、必要数の開口110が形成されたボール配列用マスク100を用いて導電性ボール200を搭載する方法である。図19中、符号300で示したものは基板となるウェハー、符号310は同ウェハー300に形成された電極パッド、符号320は同電極パッド310上に塗布されたフラックスである。また、符号400で示したものはボール配列用マスク100を保持するマスク保持枠である。
【0003】
図19(a)に示すように、開口110は、一般に、導電性ボール200よりも若干大きい程度に形成されており、通常であれば、ボール配列用マスク100を転がってきた導電性ボール200は開口110内に落下する(振り込まれる)。
【0004】
しかし、導電性ボール200の開口110への挿入阻害要因となるバリ(図示せず)などが開口110の端縁111に残存している場合があり、かかるバリの存在によって導電性ボール200が開口へ侵入して行かない場合があった。
【0005】
そこで、振込みタイプに用いるボール配列用マスクとして、前記バリなどを予め除去しつつ、より確実に導電性ボールを開口に挿入できるように、かかる開口の少なくとも一方の開口端縁の全周をレーザー加工してC面又はR面を形成したボール配列用マスクが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−147697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、導電性ボール200の開口110への入口となる上端部周縁には目がいくものの、開口110の下端部周縁には注意が払われることはかつてなかった。
【0008】
すなわち、従来のボール配列用マスク100では、場合によっては導電性ボール200が開口110内で引っ掛かってしまい、円滑にウェハー300に搭載されないことが生じる虞があった。特に、フラックス320が開口110の内壁面に一旦触れてしまうと、図19(b)に示すように上方へ進行して行き、これに触れた導電性ボール200が捕捉されて開口部3内に留まってしまうことがあった。これでは、電極パッド310に正確に搭載されることが全く期待できなくなってしまう。
【0009】
本発明は、開口内を導電性ボールが円滑に通過できるようにした導電性ボール配列用マスク、及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、導電性ボールを基板の所定位置に搭載するために、前記導電性ボールを挿通可能な複数の開口部が前記基板に応じた所定の配列パターンで配置された導電性ボール配列用マスクであって、前記開口部の下端周縁に椀状の凹部が形成されていることとした。
【0011】
(2)本発明は、上記(1)の導電性ボール配列用マスクにおいて、前記凹部の曲率半径は、前記導電性ボールの曲率半径よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
(3)本発明は、上記(1)又は(2)の導電性ボール配列用マスクにおいて、前記凹部の端縁部がR状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
(4)本発明は、導電性ボールを基板の所定位置に搭載するために、前記導電性ボールを挿通可能な複数の開口部が前記基板に応じた所定の配列パターンで配置され、しかも、前記開口部の下端周縁には椀状の凹部が形成された導電性ボール配列用マスクの製造方法であって、母型の表面に、前記開口部に対応するレジスト体を有するパターンレジストを設けるパターニング工程と、前記パターンレジストを用いて前記母型上に、所定メッキ液を用いて電着金属を電鋳し、電着層を形成する電鋳工程と、前記レジスト体を残した状態で前記電着金属をエッチングし、前記レジスト体の近傍を椀状に食刻するエッチング工程と、を有することとした。
【0014】
(5)本発明は、上記(4)に記載の配列用マスクの製造方法において、前記メッキ液は、NiとCoと所定の添加剤とを含有することを特徴とする。
【0015】
(6)本発明は、上記(5)に記載の配列用マスクの製造方法において、前記メッキ液は、前記添加剤として、それぞれ配合率1%未満としたSとCとを含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、導電性ボール配列用マスクの開口部に振り込まれた導電性ボールの抜けが向上するため、基板の所定位置に、より確実に搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る導電性ボール配列用マスクが用いられる基板の説明図である。
【図2】同導電性ボール配列用マスクの説明図である。
【図3】同導電性ボール配列用マスクの使用状態を示す説明図である。
【図4】同導電性ボール配列用マスクの開口部を示す説明図である。
【図5】同開口部の拡大図である。
【図6】本実施形態に係る導電性ボール配列用マスクの一製造工程を示す説明図である。
【図7】同導電性ボール配列用マスクの一製造工程を示す説明図である。
【図8】導電性ボール配列用マスクの変形例を示す説明図である。
【図9】本実施形態に係る導電性ボール配列用マスクの一製造工程を示す説明図である。
【図10】同導電性ボール配列用マスクの一製造工程を示す説明図である。
【図11】同導電性ボール配列用マスクの一製造工程を示す説明図である。
【図12】同導電性ボール配列用マスクを用いて導電性ボールを基板上に配列させた状態を示す説明図である。
【図13】本実施形態に係る導電性ボール配列用マスクの製造工程の流れを示す説明図である。
【図14】他の実施形態に係る導電性ボール配列用マスクの製造工程を示す説明図である。
【図15】同製造工程の変形例を示す説明図である。
【図16】支柱の形成方法の一例を示す説明図である。
【図17】支柱の形成方法の一例を示す説明図である。
【図18】変形例に係る凹部の説明図である。
【図19】従来の導電性ボール配列用マスクと、同マスク上における導電性ボールの挙動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(導電性ボール配列用マスクの概要)
図1に所定の配列パターンで複数の電極パッド11が配置されたウェハーからなる基板10を、図2には基板10の電極パッド11に導電性ボール2(図3参照)をそれぞれ搭載させるために用いられる導電性ボール配列用マスク1(以下、単に「配列用マスク1」とする)示している。
【0019】
この配列用マスク1は、基板10の電極パッド11の配列パターンに対応するとともに、半田ボールや銅ボールなどからなる導電性ボール2が挿通可能な開口部3が複数形成されている。なお、以下では導電性ボール2として半田ボールを用いたものとして説明する。
【0020】
また、配列用マスク1は、図3に模式的に示した搭載装置4にセットされて用いられる。搭載装置4は、図示するように、電極パッド11が配列された面を上方に向けた状態で基板10を載置することができ、かつ、この基板10の電極パッド11が配列された面に対面させるとともに、開口部3を電極パッド11に位置合わせしてマスク保持枠5を介してセット可能なテーブル41を備えている。なお、符号42で示すものはテーブル41の支持基台である。
【0021】
また、搭載装置4は、配列用マスク1の左方端(一方端)の上方に供給口44を臨設した導電性ボール供給部45を備えるとともに、配列用マスク1の図における左方端と右方端の間を、配列用マスク1の上面と先端部が接触しつつ横行可能なスキージ46を備えている。
【0022】
すなわち、導電性ボール供給部45から配列用マスク1の上面に供給された導電性ボール2は、スキージ46の先端部で捕捉されるとともに、配列用マスク1の両端間を移動させられながら開口部3に挿入される。
【0023】
さらに、搭載装置4は、導電性ボール2の除去部47を備えている。これは、開口部3に挿入されない残余の導電性ボール2を配列用マスク1の上面から除去するためのものであり、配列用マスク1の右側端の上方に配設した供給口48を具備し、スキージ46で右方端に移動された残余の導電性ボール2を除去することができるように構成されている。
【0024】
(導電性ボール配列用マスクの特徴)
以下、本実施形態に係る配列用マスク1について、より具体的に説明する。図4は配列用マスク1の開口部3の断面図、図5は同開口部3の拡大図である。図4中、符号12は基板10の電極パッド11上に塗布された仮固定材であるフラックスである。また、符号6は配列用マスク1の裏面に形成された支柱部であり、本実施形態では、この支柱部6を、複数の開口部3,3の間で適宜間隔に形成するようにしている。すなわち、支柱部6を備えていない、あるいは支柱部6の数が極めて少ないといった場合、導電性ボール2をスキージ46で押しながら開口部3に振り込む際に、配列用マスク1が下方へ撓んで開口部3自体が沈み込み、開口部3の縁部に導電性ボール2を擦りつけたり、開口部3に振り込まれた導電性ボール2が飛び出たりする虞がある。しかし、本実施形態のように、複数の開口部3,3の間に支柱部6を適宜数形成することによって、配列用マスク1の撓みによる開口部3の沈み込みが防止されるため、導電性ボール2を擦りつけたりすることもない。なお、各開口部3間にそれぞれ1つの支柱部6を形成してもよい。また、本実施形態では支柱部6を配列用マスク1と同一素材で一体成形しているが、異なる素材で後付けなどにより形成しても構わない。
【0025】
係る支柱の形成は、例えば、図16に示すように、後述する電着層16の表面にパターンレジスト95を形成後(図16(a))、レジストパターン95内に電着層16と同一又は異なる素材(ニッケル、銅など)でメッキしてメッキ層96を形成、あるいは樹脂を埋め込んで樹脂層96を形成し(図16(b))、母型15やパターンレジスト95を除去する(図16(c))。こうして、金属や樹脂からなる支柱部6を有する配列用マスク1を形成することができる。また、図17に示すように、電着層16の表面にレジストパターニングを行うことで、レジスト97からなる支柱部6を形成することも可能である。なお、本工程は、後に説明する電鋳工程後であればいつでも施すことが可能である。
【0026】
図4及び図5に示すように、配列用マスク1に形成された本実施形態に係る開口部3は、導電性ボール2の直径の10〜20%だけ長い径を有し、電極パッド11の直上方に位置するように対応している。
【0027】
本実施形態に係る開口部3は、導電性ボール2を開口部3に誘導し易くするために、当該開口部3の上端周縁30にスロープ状のボール誘導部7が形成されている。そして、より特徴的な構成として、当該開口部3の下端周縁には椀状の凹部8が形成されており、しかも、この凹部8の椀状を形成する曲率が導電性ボール2の曲率と異ならせている。
【0028】
すなわち、単に裾広がりとなるような断面視略ハ字状のようなテーパ面ではなく、図示するように、マスク基体側に所定の曲率で椀状にえぐれた湾曲面を有する凹部8が開口部3の下端周縁に形成されている。詳しくは後述するが、本実施形態では、この凹部8をエッチングにより形成している。
【0029】
かかる椀状の凹部8を開口部3の下端周縁に形成したことにより、開口部3に振り込まれた導電性ボール2は、落下しつつ当該開口部3を通過していく中で内壁面との接触時間が短くなる。これにより、導電性ボール2が開口部3に引っ掛かる起因と思われる摩擦抵抗又は静電気の影響を受けにくくなる。しかも、凹部8の端縁部においては、導電性ボール2は点接触になるため、基板10側へ落下し易い。したがって、導電性ボール2の球離れが良好となり、電極パッド11への搭載性が向上する。
【0030】
また、椀状の凹部8であるため、電極パッド11に塗布されたフラックス12は開口部3の内壁面に触れにくい。したがって、例えば、内壁面に付着したフラックス12により導電性ボール2が捕捉され、落下することなく開口部3内に留まるようなこともないため、電極パッド11との接着不良を生起する虞を未然に防止することができる。
【0031】
なお、凹部8の形状、例えば椀状に凹んだその凹み具合は、搭載される導電性ボール2が凹部8内に入り込まない程度にするのが好ましい。したがって、凹部8の径は導電性ボール2の径より小さくする必要がある。本実施形態では、導電性ボール2の半径を50μmと仮定すると、マスク配列用マスク1の厚みが50〜70μm程度の場合、凹部8の仮想半径を略15〜25μmの範囲に設定して、凹部8の曲率半径(曲率)を導電性ボール2の曲率半径(曲率)よりも小さく(大きく)している。
【0032】
すなわち、開口部3の径はその途中までは、導電性ボール2の直径の10〜20%程度長くするだけにして導電性ボール2が極力開口部3の中心から外れることなく落下するようにする一方、開口部3の下端部には仮想半径を略15〜25μmの凹部8を形成して、球離れを良好にしている(導電性ボール2の通過抵をの低減させている)のである。したがって、導電性ボール2は電極パッド11に確実に搭載され易くなる。
【0033】
一方、ボール誘導部7は、高さHよりも水平方向の距離Lが長く設定されている(図5)。したがって、配列用マスク1の上を転動する導電性ボール2がこのなだらかなボール誘導部7に至ると、開口部3へと導かれていき、円滑に落とし込まれることになる。本実施形態では、高さ方向と水平方向との比が、略1:2〜1:20の傾斜を有するスロープ状に形成されており、導電性ボール2の直径が100μmと仮定すると、高さH=1〜5μm、水平方向の距離L=10〜20μmの範囲で寸法を設定している。
【0034】
このように、開口部3の上端周縁30にスロープ状のボール誘導部7が形成されているために、導電性ボール2を傷つける虞がなく、導電性ボール2へのダメージを可及的に軽減させることができ、なおかつ円滑に開口部3の中に落とし込むことができる。
【0035】
また、図4や図5に示すように、ボール誘導部7における開口部3に臨む端部の高さ寸法は、導電性ボール2の直径よりも大きくしている。すなわち、導電性ボール2が開口部3から基板10上に落下して電極パッド11に搭載されたときに、導電性ボール2が開口部3の上端周縁30から上方へ突出しないようにしている。このようにすることで、導電性ボール2が収容されている開口部3に他の導電性ボール2が入り込むことはなく、また、スキージ46で水平方向に押された導電性ボール2は、既に開口部3内に存在する導電性ボール2の上部を円滑に通過していくことになるため、いずれの導電性ボール2についても損傷を受ける虞がなくなる。
【0036】
以下、本実施形態に係る配列用マスク1の製造方法について、図6〜図11及び図13を参照しながら説明する。
【0037】
(パターニング工程)
まず、母型15を用意し、図示しないが、この母型15の表面に、フォトレジスト層を形成し、周知の方法で露光、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解若しくは膨潤除去することにより、開口部3に対応するレジスト体91を有するパターンレジストを設ける(図6参照)。前記フォトレジスト層は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを適宜枚数ラミネートして形成するとよい。
【0038】
(電鋳工程)
次いで、前記パターンレジストが設けられた母型15を、所定の条件に建浴した電鋳槽(図示せず)に入れ、先のレジスト体91の高さと同じ程度かそれ以上に、当該レジスト体91で覆われていない表面に電着金属を電鋳して電着層16を形成する。なお、電鋳後は、電着層16やレジスト体91の表面に機械的研磨を施すことが好ましい。
【0039】
この電鋳工程で用いるメッキ液は、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)を主成分とするとともに、第1添加剤としてのS(イオウ)と、第2添加剤としてのC(炭素)とを、それぞれ1%未満程度含有している。したがって、電着層16を形成する電着金属はNi−Co合金となっている。また、母型15の材料としては電着層16よりも選択的に電解研磨されやすいSUSを用いている。これは、後述するように、ボール誘導部7を形成するには、母型15の材料として、電着層16よりも選択的に電解研磨される材料とすることが重要だからである。
【0040】
(支柱形成用マスキング工程)
そして、レジスト体91及び電着層16が形成された母型15の表面にフォトレジスト層を形成し、周知の方法で露光、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を除去することにより、図6に示すように、レジスト体91を除く位置(電着層16上)に適宜間隔で支柱形成用レジスト体92が形成されたパターンレジストを設けて支柱形成用のマスキングとする。この場合のフォトレジスト層についても、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを適宜数枚ラミネートして形成するとよい。
【0041】
(エッチング工程)
次いで、図6に示すように、支柱形成用レジスト体92が形成された状態のまま、支柱形成のためにハーフエッチングを行う。この場合のエッチングは、所定のエッチング液を収容したエッチング槽内で浸食させるディップ式でよく、エッチング液としても一般的な塩化第二鉄水溶液を使用することができる。
【0042】
このエッチング工程によれば、図7に示すように、Ni−Co合金である電着層16はレジスト体91の近傍が優先的にエッチングされる。これは、レジスト体91近傍の電着層16が高電流密度部分であること、また、電着層16を、前述したように、Ni、Coを主成分とし、1%未満程度のSとCとを添加剤として含有するメッキ液を使用して形成したことに起因すると考えられ、図示するように、レジスト体91の近傍とそれ以外の部分ではエッチング深さの比が略2:1となり、レジスト体近傍の深掘りされた部分には椀状の凹部8が形成されることになる。
【0043】
ここで、電着層16から母型15を溶解・剥離などにより除去すれば、図8に示すように、開口部3の下端周縁椀状の凹部8が形成された配列用マスク1を得ることができる。この場合の配列用マスク1は、開口部3の上端周縁にボール誘導部7は形成されていないが、開口部3内を導電性ボール2が円滑に通過できるようにして、電極パッド11への搭載性を向上させる目的は十分に達成することができる。すなわち、かかる凹部8が開口部3の下端周縁に形成された配列用マスク1を用いた場合、前述したように、導電性ボール2の開口部3からの抜け性が大きく改善される。
【0044】
ところで、本実施形態では、電鋳工程とエッチング工程との間に支柱形成用マスキング工程を実行したが、支柱部6を電着層16とは異なる素材で後付けすることもできるため、この支柱形成用マスキング工程は特に必須ではなく省略しても構わない。
【0045】
開口部3の上端周縁にボール誘導部7を形成する配列用マスク1を得るためには、この後、以下の工程を実行していくことになる。
【0046】
(レジスト除去工程)
すなわち、図7で示したエッチング工程の後、レジスト体91及び支柱形成用レジスト体92を除去し、開口部3(母型15)を露呈させる(図9参照)。
【0047】
(電解研磨工程)
そして、図9に示すように、SUSからなる母型15上に成膜された状態の電着層16を、開口部3から母型15が露呈した状態で電解研磨する。
【0048】
電解研磨は、周知の通り、被研磨体(本実施形態では母型15と電着層16からなる)を陽極として、リン酸などの一般的に用いられる電解液中で電解し、陽極面すなわち、被研磨体表面を平滑化させる方法である。
【0049】
ここで、特に、電流は、バリのような極小突起や、本実施形態における母型15と電着層16との界面に形成される極小間隙などに強く作用するため、図10に示すように、開口部3内においては、母型15と電着層16との界面部分が溶解され、開口部3の母型側周縁にスロープを有するボール誘導部7が形成される(図5参照)。
【0050】
しかも、本実施形態のように、母型15の材料をSUSとし、電着層16の電着金属をNi−Co合金としているため、母型15と電着層16の組成の違いによる電解腐食特性により、母型15の方が電着層16よりも選択的に電解研磨され、より容易にスロープ状のボール誘導部7を形成することができる。さらに、電解研磨工程において、電解研磨の時間及び/又は電流(電圧)の管理を行うことで、理想的なスロープ形状を容易に形成することが可能である。
【0051】
最後に、電着層16から母型15を剥離や溶解により除去して、図11に示すように、開口部3の上端周縁にスロープ状のボール誘導部7が、また開口部3の下端周縁には椀状の凹部8が形成された配列用マスク1を得る。
【0052】
かかる配列用マスク1において、電解研磨によって形成されたボール誘導部7は、表面粗さRa(平均粗さ)が改善されて平滑化されており、しかも、上述したように微細なバリ取りなどにも優れた効果を奏するため、前述したように、搭載装置4を用いて導電性ボール2を開口部3に振り込む際に、導電性ボール2が開口部3の上端周縁30に衝突して傷ついたりするおそれがなく、円滑に開口部3内に入り込み、しかも、開口部3の下端周縁には椀状の凹部8がされているため、ボール離れが向上して、導電性ボール2は開口部3から円滑に抜け落ち、図12に示すように、基板10の電極パッド11上に整然と搭載させることができる。
【0053】
その後、搭載装置4から配列用マスク1を取り外し、電極パッド11に搭載された導電性ボール2をリフローすれば、基板10の電極パッド11に精度良く導電性ボール2を溶着させることができる。
【0054】
各開口部3の下端周縁に椀状の凹部8がそれぞれ形成され、基板10の電極パッド11に精度良く導電性ボール2を取り付けることのできる配列用マスク1を、上述してきたように、一般的な塩化第二鉄水溶液をエッチング液として使用するエッチング工程を有する製造方法で得るようにしたため、生産性が向上してコストの面でも極めて有利となる。
【0055】
以上説明してきたように、本実施形態に係る配列用マスクの製造方法によれば、電着層16に開口部3を形成し、開口部3に対応するレジスト体91を除去する前にエッチングすることにより、レジスト体91の近傍が優先的にエッチングされ(レジスト体91の近傍とそれ以外の部分とおエッチング深さの比=略2:1)、電着層16(マスク基体)側に椀状にえぐれた湾曲面を有する凹部8が開口部3の下端周縁に形成されることになる。
【0056】
ところで、配列用マスク1の開口部3の下端周縁に形成された椀状の凹部8の上下端縁部81,81は、図18に示すように、R状に形成されている。
【0057】
すなわち図9及び図10に示すように、電解研磨工程を実行すると、開口部3の母型側周縁にスロープを有するボール誘導部7が形成されるが、このとき、凹部8についてみれば、上下端縁部81,81についても電解研磨の影響が及び、ミクロ的にR状に形成されるものと考えられる。
【0058】
こうして、本実施形態のように配列用マスク1を製造した場合、開口部3の下端周縁に形成される凹部8の端縁部81は、エッジとなるのではなく曲面となるため、導電性ボール2と接触しても、当該導電性ボール2を傷つけたりするおそれがない。
【0059】
なお、本実施形態では、凹部の上下端縁部81,81がそれぞれR状になっていることとしたが、少なくともいずれか一方がR状となっていれば、導電性ボール2を傷つける虞は大幅に減少する。そして、その場合、上端縁部81がR状であることが望ましい。
【0060】
(他の実施形態)
ここで、開口部3の下端周縁に椀状の凹部8が形成された配列用マスクを得るための他の実施形態に係る製造方法について、図14を参照しながら説明する。
【0061】
先の製造方法が、レジスト体91近傍とその他の領域とにおけるエッチングスピードの差のみを利用して、レジスト体91の近傍を優先的に深くエッチングして凹部8を形成したが、ここでは、電着層16を2層構造として、選択的エッチングを取り入れることによって凹部8を形成するようにしている。
【0062】
すなわち、図14(a)に示すように、先ず、やはりSUSなどを材料とする母型150を用意し、この母型150の表面に、フォトレジスト層を形成し、周知の方法で露光、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、開口部3に対応するレジスト体160を有するパターンレジストを設ける。この場合もフォトレジスト層は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを適宜枚数ラミネートして形成するとよい。
【0063】
次いで、図14(b)に示すように、前記パターンレジストが設けられた母型150を、所定の条件に建浴した電鋳槽(図示せず)に入れ、先のレジスト体160の半分の高さ程度に堆積されるように、当該レジスト体160で覆われていない表面にCuを電鋳して第1電着層170を形成し、次いで、今度はNiを電着金属として、レジスト体160と同高さになるまで堆積するように電鋳を行い、第1電着層170の上に第2電着層180を形成する。
【0064】
なお、ここで、Cuからなる第1電着層170とNiからなる第2電着層180とは上下逆であっても構わない。つまり、Niを電着金属とした電鋳を先に行い、その後にCuを電着金属とした電鋳を行ってもよい。
【0065】
次に、図14(c)に示すように、第2のパターンレジストを設ける。すなわち、第2電着層180又は第1電着層170の上に、フォトレジスト層を形成し、周知の方法で露光、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、レジスト体190を有するパターンレジストを設ける。なお、この第2のパターンレジストを設ける工程は必須ではなく、実行することが好ましいものの、省略しても構わない。
【0066】
次いで、図14(d)に示すように、エッチング工程を実行するのであるが、ここでは最上層となる第2電着層180のみをエッチングするに相応しいエッチング液を使用する。したがって、レジスト体190の近傍のエッチングが進行して第1電着層170でストップしたときには、レジスト体190の近傍よりも、レジスト体190から離隔している領域についてはエッチング速度が遅いため、図示するように、レジスト体190の上端近傍に椀状の凹部8が形成される。
【0067】
最後に、図14(e)に示すように、レジスト体190を溶解除去するとともに、2層の電着層(第1電着層170と第2電着層180)を母型150から剥離すれば、開口部3の下端周縁に椀状の凹部8が形成された配列用マスク1が得られることになる。
【0068】
なお、例えば、第1電着層170と第2電着層180との間にAu層などのバリア層を介在させた場合は、第1電着層170と第2電着層180の材質はCuやNiなどに限らず、適宜の材料を選択することができる。
【0069】
また、配列用マスクの製造方法の変形例として、図15に示す手順について説明する。これは、単一の材料からなる単一電着層140を形成し、所定のレジストパターンを行ってからエッチングすることで、開口部3の下端周縁に2段の椀状凹部8’を形成するようにしたものである。
【0070】
すなわち、図15(a)に示すように、やはりSUSなどを材料とする母型150を用意し、この母型150の表面に、フォトレジスト層を形成し、周知の方法で露光、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、開口部3に対応するレジスト体160を有するパターンレジストを設ける。この場合もフォトレジスト層は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを適宜枚数ラミネートして形成するとよい。
【0071】
次いで、前記パターンレジストが設けられた母型150を、所定の条件に建浴した電鋳槽(図示せず)に入れ、先のレジスト体160と同高さになるまで、例えばNiを電着金属として堆積させ、単一電着層140を形成する。なお、このとき使用したメッキ液には添加剤を含有させていない。
【0072】
そして、この単一電着層140の上にフォトレジスト層を形成し、これも周知の方法で露光、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、レジスト体190を有するパターンレジストを設けるのである。
【0073】
次いで、図15(b)に示すように、一般的な塩化第二鉄水溶液を用いたエッチングを行うと、図示するように、レジスト体160とレジスト体190との間には、2段の椀状凹部8’が形成される。
【0074】
このような2段の椀状凹部8’が形成されるメカニズムとしては解明されていないものの、レジスト体160とレジスト体190との距離、あるいはメッキ液の添加剤の有無あるいは配合比などが影響するものと考えられる。
【0075】
本実施形態によれば、以下のような導電性ボール配列用マスク、及びその製造方法が実現される。
【0076】
(1)導電性ボール2を基板10の所定位置に搭載するために、導電性ボール2を挿通可能な複数の開口部3が基板10に応じた所定の配列パターンで配置された導電性ボール配列用マスク1であって、開口部3の下端周縁に椀状の凹部8が形成されている導電性ボール配列用マスク1。かかる配列用マスク1を使用することにより、開口部3に振り込まれた導電性ボール2を、基板10の所定位置に確実に搭載することが可能となる。
【0077】
(2)凹部8の曲率半径が導電性ボール2の曲率半径よりも小さい導電性ボール配列用マスク1。かかる導電性ボール配列用マスク1であれば、搭載される導電性ボール2が凹部8内に入り込む虞がなく、円滑に基板10に搭載される。
【0078】
(3)凹部8の端縁部81がR状に形成されている導電性ボール配列用マスク1。かかる導電性ボール配列用マスク1であれば、導電性ボール2を傷付ける虞がなくなる。
【0079】
(4)導電性ボール2を基板10の所定位置に搭載するために、導電性ボール2を挿通可能な複数の開口部3が基板10に応じた所定の配列パターンで配置され、しかも、開口部3の下端周縁には椀状の凹部8が形成された導電性ボール配列用マスク1の製造方法であって、母型15の表面に、開口部3に対応するレジスト体91を有するパターンレジストを設けるパターニング工程と、前記パターンレジストを用いて母型15上に、所定メッキ液を用いて電着金属を電鋳し、電着層16を形成する電鋳工程と、レジスト体91を残した状態で前記電着金属をエッチングし、前記レジスト体91の近傍を椀状に食刻するエッチング工程と、を有する配列用マスクの製造方法。かかる製造方法によれば、開口部3に振り込まれた導電性ボール2を、基板10の所定位置により確実に搭載することのできる配列用マスク1を、極めて低コストで提供することが可能となる。また、エッチングにより凹部8が形成されるため、複数の凹部8を一様に形成することができ、しかも安価で実現できる
(5)前記メッキ液は、NiとCoと所定の添加剤とを含有する配列用マスクの製造方法。かかる製造方法によれば、所定形状の椀状の凹部8を容易に形成することが可能となる。
【0080】
(6)前記メッキ液は、前記添加剤として、それぞれ配合率1%未満としたSとCとを含有する配列用マスクの製造方法。かかる製造方法によれば、所望する形状の椀状の凹部8を容易に形成することが可能となる。
【0081】
(7)前記エッチング工程の前に、前記電着金属及びレジスト体91の上面に、支柱形成用レジスト体92を有するエッチング用マスキングレジストを設ける支柱形成用マスキング工程を有する配列用マスクの製造方法。かかる製造方法によれば、複数の開口部3,3の間に支柱部6を適宜数容易に形成することができ、配列用マスク1の撓みによる開口部3の沈み込みが防止されるため、導電性ボール2を擦りつけたりしてダメージを与えることを防止できる。
【0082】
ところで、上述してきた実施形態において、各開口部3は、配列用マスク1を搭載装置4に搭載した際に、基板10に向かって下窄まりのテーパー状に形成することもでき、その場合、導電性ボール2を所定位置により精度良く搭載することが可能となる。
【0083】
また、本実施形態において、開口部3の上端周縁部に形成されるボール誘導部7のスロープ形状を規定するには、電解研磨工程の時間の長短や電流の強弱をそれぞれ制御したり、あるいは両者を同時に制御したりするなど、電解研磨工程の時間及び/又は電流の管理で行うことができる。すなわち、ボール誘導部7のスロープ形状を、例えば高さ方向と水平方向との比を略1:2〜1:20の間でどのような値に設定するか、あるいは、開口部3側へ向かって一様な傾斜とするか、あるいは傾斜面(スロープ面)の中で段部が形成されるようにするか、などを電流値や研磨時間で管理することができる。
【0084】
上述してきた実施形態を通して本発明を説明してきたが、本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではない。請求の範囲から逸脱することのない限り、適宜設計変更することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 導電性ボール配列用マスク
2 導電性ボール
3 開口部
8 凹部
10 基板
11 電極パッド
15,150 母型
16 電着層
91 レジスト体
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体と回路基板の接続などに用いられる導電性ボールを、所定のパターンで基板上に配列するための導電性ボール配列用マスク、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性ボールを基板のパッドなどに搭載する方法として振込みタイプが知られている。これは、図19に示すように、必要数の開口110が形成されたボール配列用マスク100を用いて導電性ボール200を搭載する方法である。図19中、符号300で示したものは基板となるウェハー、符号310は同ウェハー300に形成された電極パッド、符号320は同電極パッド310上に塗布されたフラックスである。また、符号400で示したものはボール配列用マスク100を保持するマスク保持枠である。
【0003】
図19(a)に示すように、開口110は、一般に、導電性ボール200よりも若干大きい程度に形成されており、通常であれば、ボール配列用マスク100を転がってきた導電性ボール200は開口110内に落下する(振り込まれる)。
【0004】
しかし、導電性ボール200の開口110への挿入阻害要因となるバリ(図示せず)などが開口110の端縁111に残存している場合があり、かかるバリの存在によって導電性ボール200が開口へ侵入して行かない場合があった。
【0005】
そこで、振込みタイプに用いるボール配列用マスクとして、前記バリなどを予め除去しつつ、より確実に導電性ボールを開口に挿入できるように、かかる開口の少なくとも一方の開口端縁の全周をレーザー加工してC面又はR面を形成したボール配列用マスクが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−147697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、導電性ボール200の開口110への入口となる上端部周縁には目がいくものの、開口110の下端部周縁には注意が払われることはかつてなかった。
【0008】
すなわち、従来のボール配列用マスク100では、場合によっては導電性ボール200が開口110内で引っ掛かってしまい、円滑にウェハー300に搭載されないことが生じる虞があった。特に、フラックス320が開口110の内壁面に一旦触れてしまうと、図19(b)に示すように上方へ進行して行き、これに触れた導電性ボール200が捕捉されて開口部3内に留まってしまうことがあった。これでは、電極パッド310に正確に搭載されることが全く期待できなくなってしまう。
【0009】
本発明は、開口内を導電性ボールが円滑に通過できるようにした導電性ボール配列用マスク、及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、導電性ボールを基板の所定位置に搭載するために、前記導電性ボールを挿通可能な複数の開口部が前記基板に応じた所定の配列パターンで配置された導電性ボール配列用マスクであって、前記開口部の下端周縁に椀状の凹部が形成されていることとした。
【0011】
(2)本発明は、上記(1)の導電性ボール配列用マスクにおいて、前記凹部の曲率半径は、前記導電性ボールの曲率半径よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
(3)本発明は、上記(1)又は(2)の導電性ボール配列用マスクにおいて、前記凹部の端縁部がR状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
(4)本発明は、導電性ボールを基板の所定位置に搭載するために、前記導電性ボールを挿通可能な複数の開口部が前記基板に応じた所定の配列パターンで配置され、しかも、前記開口部の下端周縁には椀状の凹部が形成された導電性ボール配列用マスクの製造方法であって、母型の表面に、前記開口部に対応するレジスト体を有するパターンレジストを設けるパターニング工程と、前記パターンレジストを用いて前記母型上に、所定メッキ液を用いて電着金属を電鋳し、電着層を形成する電鋳工程と、前記レジスト体を残した状態で前記電着金属をエッチングし、前記レジスト体の近傍を椀状に食刻するエッチング工程と、を有することとした。
【0014】
(5)本発明は、上記(4)に記載の配列用マスクの製造方法において、前記メッキ液は、NiとCoと所定の添加剤とを含有することを特徴とする。
【0015】
(6)本発明は、上記(5)に記載の配列用マスクの製造方法において、前記メッキ液は、前記添加剤として、それぞれ配合率1%未満としたSとCとを含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、導電性ボール配列用マスクの開口部に振り込まれた導電性ボールの抜けが向上するため、基板の所定位置に、より確実に搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る導電性ボール配列用マスクが用いられる基板の説明図である。
【図2】同導電性ボール配列用マスクの説明図である。
【図3】同導電性ボール配列用マスクの使用状態を示す説明図である。
【図4】同導電性ボール配列用マスクの開口部を示す説明図である。
【図5】同開口部の拡大図である。
【図6】本実施形態に係る導電性ボール配列用マスクの一製造工程を示す説明図である。
【図7】同導電性ボール配列用マスクの一製造工程を示す説明図である。
【図8】導電性ボール配列用マスクの変形例を示す説明図である。
【図9】本実施形態に係る導電性ボール配列用マスクの一製造工程を示す説明図である。
【図10】同導電性ボール配列用マスクの一製造工程を示す説明図である。
【図11】同導電性ボール配列用マスクの一製造工程を示す説明図である。
【図12】同導電性ボール配列用マスクを用いて導電性ボールを基板上に配列させた状態を示す説明図である。
【図13】本実施形態に係る導電性ボール配列用マスクの製造工程の流れを示す説明図である。
【図14】他の実施形態に係る導電性ボール配列用マスクの製造工程を示す説明図である。
【図15】同製造工程の変形例を示す説明図である。
【図16】支柱の形成方法の一例を示す説明図である。
【図17】支柱の形成方法の一例を示す説明図である。
【図18】変形例に係る凹部の説明図である。
【図19】従来の導電性ボール配列用マスクと、同マスク上における導電性ボールの挙動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(導電性ボール配列用マスクの概要)
図1に所定の配列パターンで複数の電極パッド11が配置されたウェハーからなる基板10を、図2には基板10の電極パッド11に導電性ボール2(図3参照)をそれぞれ搭載させるために用いられる導電性ボール配列用マスク1(以下、単に「配列用マスク1」とする)示している。
【0019】
この配列用マスク1は、基板10の電極パッド11の配列パターンに対応するとともに、半田ボールや銅ボールなどからなる導電性ボール2が挿通可能な開口部3が複数形成されている。なお、以下では導電性ボール2として半田ボールを用いたものとして説明する。
【0020】
また、配列用マスク1は、図3に模式的に示した搭載装置4にセットされて用いられる。搭載装置4は、図示するように、電極パッド11が配列された面を上方に向けた状態で基板10を載置することができ、かつ、この基板10の電極パッド11が配列された面に対面させるとともに、開口部3を電極パッド11に位置合わせしてマスク保持枠5を介してセット可能なテーブル41を備えている。なお、符号42で示すものはテーブル41の支持基台である。
【0021】
また、搭載装置4は、配列用マスク1の左方端(一方端)の上方に供給口44を臨設した導電性ボール供給部45を備えるとともに、配列用マスク1の図における左方端と右方端の間を、配列用マスク1の上面と先端部が接触しつつ横行可能なスキージ46を備えている。
【0022】
すなわち、導電性ボール供給部45から配列用マスク1の上面に供給された導電性ボール2は、スキージ46の先端部で捕捉されるとともに、配列用マスク1の両端間を移動させられながら開口部3に挿入される。
【0023】
さらに、搭載装置4は、導電性ボール2の除去部47を備えている。これは、開口部3に挿入されない残余の導電性ボール2を配列用マスク1の上面から除去するためのものであり、配列用マスク1の右側端の上方に配設した供給口48を具備し、スキージ46で右方端に移動された残余の導電性ボール2を除去することができるように構成されている。
【0024】
(導電性ボール配列用マスクの特徴)
以下、本実施形態に係る配列用マスク1について、より具体的に説明する。図4は配列用マスク1の開口部3の断面図、図5は同開口部3の拡大図である。図4中、符号12は基板10の電極パッド11上に塗布された仮固定材であるフラックスである。また、符号6は配列用マスク1の裏面に形成された支柱部であり、本実施形態では、この支柱部6を、複数の開口部3,3の間で適宜間隔に形成するようにしている。すなわち、支柱部6を備えていない、あるいは支柱部6の数が極めて少ないといった場合、導電性ボール2をスキージ46で押しながら開口部3に振り込む際に、配列用マスク1が下方へ撓んで開口部3自体が沈み込み、開口部3の縁部に導電性ボール2を擦りつけたり、開口部3に振り込まれた導電性ボール2が飛び出たりする虞がある。しかし、本実施形態のように、複数の開口部3,3の間に支柱部6を適宜数形成することによって、配列用マスク1の撓みによる開口部3の沈み込みが防止されるため、導電性ボール2を擦りつけたりすることもない。なお、各開口部3間にそれぞれ1つの支柱部6を形成してもよい。また、本実施形態では支柱部6を配列用マスク1と同一素材で一体成形しているが、異なる素材で後付けなどにより形成しても構わない。
【0025】
係る支柱の形成は、例えば、図16に示すように、後述する電着層16の表面にパターンレジスト95を形成後(図16(a))、レジストパターン95内に電着層16と同一又は異なる素材(ニッケル、銅など)でメッキしてメッキ層96を形成、あるいは樹脂を埋め込んで樹脂層96を形成し(図16(b))、母型15やパターンレジスト95を除去する(図16(c))。こうして、金属や樹脂からなる支柱部6を有する配列用マスク1を形成することができる。また、図17に示すように、電着層16の表面にレジストパターニングを行うことで、レジスト97からなる支柱部6を形成することも可能である。なお、本工程は、後に説明する電鋳工程後であればいつでも施すことが可能である。
【0026】
図4及び図5に示すように、配列用マスク1に形成された本実施形態に係る開口部3は、導電性ボール2の直径の10〜20%だけ長い径を有し、電極パッド11の直上方に位置するように対応している。
【0027】
本実施形態に係る開口部3は、導電性ボール2を開口部3に誘導し易くするために、当該開口部3の上端周縁30にスロープ状のボール誘導部7が形成されている。そして、より特徴的な構成として、当該開口部3の下端周縁には椀状の凹部8が形成されており、しかも、この凹部8の椀状を形成する曲率が導電性ボール2の曲率と異ならせている。
【0028】
すなわち、単に裾広がりとなるような断面視略ハ字状のようなテーパ面ではなく、図示するように、マスク基体側に所定の曲率で椀状にえぐれた湾曲面を有する凹部8が開口部3の下端周縁に形成されている。詳しくは後述するが、本実施形態では、この凹部8をエッチングにより形成している。
【0029】
かかる椀状の凹部8を開口部3の下端周縁に形成したことにより、開口部3に振り込まれた導電性ボール2は、落下しつつ当該開口部3を通過していく中で内壁面との接触時間が短くなる。これにより、導電性ボール2が開口部3に引っ掛かる起因と思われる摩擦抵抗又は静電気の影響を受けにくくなる。しかも、凹部8の端縁部においては、導電性ボール2は点接触になるため、基板10側へ落下し易い。したがって、導電性ボール2の球離れが良好となり、電極パッド11への搭載性が向上する。
【0030】
また、椀状の凹部8であるため、電極パッド11に塗布されたフラックス12は開口部3の内壁面に触れにくい。したがって、例えば、内壁面に付着したフラックス12により導電性ボール2が捕捉され、落下することなく開口部3内に留まるようなこともないため、電極パッド11との接着不良を生起する虞を未然に防止することができる。
【0031】
なお、凹部8の形状、例えば椀状に凹んだその凹み具合は、搭載される導電性ボール2が凹部8内に入り込まない程度にするのが好ましい。したがって、凹部8の径は導電性ボール2の径より小さくする必要がある。本実施形態では、導電性ボール2の半径を50μmと仮定すると、マスク配列用マスク1の厚みが50〜70μm程度の場合、凹部8の仮想半径を略15〜25μmの範囲に設定して、凹部8の曲率半径(曲率)を導電性ボール2の曲率半径(曲率)よりも小さく(大きく)している。
【0032】
すなわち、開口部3の径はその途中までは、導電性ボール2の直径の10〜20%程度長くするだけにして導電性ボール2が極力開口部3の中心から外れることなく落下するようにする一方、開口部3の下端部には仮想半径を略15〜25μmの凹部8を形成して、球離れを良好にしている(導電性ボール2の通過抵をの低減させている)のである。したがって、導電性ボール2は電極パッド11に確実に搭載され易くなる。
【0033】
一方、ボール誘導部7は、高さHよりも水平方向の距離Lが長く設定されている(図5)。したがって、配列用マスク1の上を転動する導電性ボール2がこのなだらかなボール誘導部7に至ると、開口部3へと導かれていき、円滑に落とし込まれることになる。本実施形態では、高さ方向と水平方向との比が、略1:2〜1:20の傾斜を有するスロープ状に形成されており、導電性ボール2の直径が100μmと仮定すると、高さH=1〜5μm、水平方向の距離L=10〜20μmの範囲で寸法を設定している。
【0034】
このように、開口部3の上端周縁30にスロープ状のボール誘導部7が形成されているために、導電性ボール2を傷つける虞がなく、導電性ボール2へのダメージを可及的に軽減させることができ、なおかつ円滑に開口部3の中に落とし込むことができる。
【0035】
また、図4や図5に示すように、ボール誘導部7における開口部3に臨む端部の高さ寸法は、導電性ボール2の直径よりも大きくしている。すなわち、導電性ボール2が開口部3から基板10上に落下して電極パッド11に搭載されたときに、導電性ボール2が開口部3の上端周縁30から上方へ突出しないようにしている。このようにすることで、導電性ボール2が収容されている開口部3に他の導電性ボール2が入り込むことはなく、また、スキージ46で水平方向に押された導電性ボール2は、既に開口部3内に存在する導電性ボール2の上部を円滑に通過していくことになるため、いずれの導電性ボール2についても損傷を受ける虞がなくなる。
【0036】
以下、本実施形態に係る配列用マスク1の製造方法について、図6〜図11及び図13を参照しながら説明する。
【0037】
(パターニング工程)
まず、母型15を用意し、図示しないが、この母型15の表面に、フォトレジスト層を形成し、周知の方法で露光、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解若しくは膨潤除去することにより、開口部3に対応するレジスト体91を有するパターンレジストを設ける(図6参照)。前記フォトレジスト層は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを適宜枚数ラミネートして形成するとよい。
【0038】
(電鋳工程)
次いで、前記パターンレジストが設けられた母型15を、所定の条件に建浴した電鋳槽(図示せず)に入れ、先のレジスト体91の高さと同じ程度かそれ以上に、当該レジスト体91で覆われていない表面に電着金属を電鋳して電着層16を形成する。なお、電鋳後は、電着層16やレジスト体91の表面に機械的研磨を施すことが好ましい。
【0039】
この電鋳工程で用いるメッキ液は、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)を主成分とするとともに、第1添加剤としてのS(イオウ)と、第2添加剤としてのC(炭素)とを、それぞれ1%未満程度含有している。したがって、電着層16を形成する電着金属はNi−Co合金となっている。また、母型15の材料としては電着層16よりも選択的に電解研磨されやすいSUSを用いている。これは、後述するように、ボール誘導部7を形成するには、母型15の材料として、電着層16よりも選択的に電解研磨される材料とすることが重要だからである。
【0040】
(支柱形成用マスキング工程)
そして、レジスト体91及び電着層16が形成された母型15の表面にフォトレジスト層を形成し、周知の方法で露光、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を除去することにより、図6に示すように、レジスト体91を除く位置(電着層16上)に適宜間隔で支柱形成用レジスト体92が形成されたパターンレジストを設けて支柱形成用のマスキングとする。この場合のフォトレジスト層についても、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを適宜数枚ラミネートして形成するとよい。
【0041】
(エッチング工程)
次いで、図6に示すように、支柱形成用レジスト体92が形成された状態のまま、支柱形成のためにハーフエッチングを行う。この場合のエッチングは、所定のエッチング液を収容したエッチング槽内で浸食させるディップ式でよく、エッチング液としても一般的な塩化第二鉄水溶液を使用することができる。
【0042】
このエッチング工程によれば、図7に示すように、Ni−Co合金である電着層16はレジスト体91の近傍が優先的にエッチングされる。これは、レジスト体91近傍の電着層16が高電流密度部分であること、また、電着層16を、前述したように、Ni、Coを主成分とし、1%未満程度のSとCとを添加剤として含有するメッキ液を使用して形成したことに起因すると考えられ、図示するように、レジスト体91の近傍とそれ以外の部分ではエッチング深さの比が略2:1となり、レジスト体近傍の深掘りされた部分には椀状の凹部8が形成されることになる。
【0043】
ここで、電着層16から母型15を溶解・剥離などにより除去すれば、図8に示すように、開口部3の下端周縁椀状の凹部8が形成された配列用マスク1を得ることができる。この場合の配列用マスク1は、開口部3の上端周縁にボール誘導部7は形成されていないが、開口部3内を導電性ボール2が円滑に通過できるようにして、電極パッド11への搭載性を向上させる目的は十分に達成することができる。すなわち、かかる凹部8が開口部3の下端周縁に形成された配列用マスク1を用いた場合、前述したように、導電性ボール2の開口部3からの抜け性が大きく改善される。
【0044】
ところで、本実施形態では、電鋳工程とエッチング工程との間に支柱形成用マスキング工程を実行したが、支柱部6を電着層16とは異なる素材で後付けすることもできるため、この支柱形成用マスキング工程は特に必須ではなく省略しても構わない。
【0045】
開口部3の上端周縁にボール誘導部7を形成する配列用マスク1を得るためには、この後、以下の工程を実行していくことになる。
【0046】
(レジスト除去工程)
すなわち、図7で示したエッチング工程の後、レジスト体91及び支柱形成用レジスト体92を除去し、開口部3(母型15)を露呈させる(図9参照)。
【0047】
(電解研磨工程)
そして、図9に示すように、SUSからなる母型15上に成膜された状態の電着層16を、開口部3から母型15が露呈した状態で電解研磨する。
【0048】
電解研磨は、周知の通り、被研磨体(本実施形態では母型15と電着層16からなる)を陽極として、リン酸などの一般的に用いられる電解液中で電解し、陽極面すなわち、被研磨体表面を平滑化させる方法である。
【0049】
ここで、特に、電流は、バリのような極小突起や、本実施形態における母型15と電着層16との界面に形成される極小間隙などに強く作用するため、図10に示すように、開口部3内においては、母型15と電着層16との界面部分が溶解され、開口部3の母型側周縁にスロープを有するボール誘導部7が形成される(図5参照)。
【0050】
しかも、本実施形態のように、母型15の材料をSUSとし、電着層16の電着金属をNi−Co合金としているため、母型15と電着層16の組成の違いによる電解腐食特性により、母型15の方が電着層16よりも選択的に電解研磨され、より容易にスロープ状のボール誘導部7を形成することができる。さらに、電解研磨工程において、電解研磨の時間及び/又は電流(電圧)の管理を行うことで、理想的なスロープ形状を容易に形成することが可能である。
【0051】
最後に、電着層16から母型15を剥離や溶解により除去して、図11に示すように、開口部3の上端周縁にスロープ状のボール誘導部7が、また開口部3の下端周縁には椀状の凹部8が形成された配列用マスク1を得る。
【0052】
かかる配列用マスク1において、電解研磨によって形成されたボール誘導部7は、表面粗さRa(平均粗さ)が改善されて平滑化されており、しかも、上述したように微細なバリ取りなどにも優れた効果を奏するため、前述したように、搭載装置4を用いて導電性ボール2を開口部3に振り込む際に、導電性ボール2が開口部3の上端周縁30に衝突して傷ついたりするおそれがなく、円滑に開口部3内に入り込み、しかも、開口部3の下端周縁には椀状の凹部8がされているため、ボール離れが向上して、導電性ボール2は開口部3から円滑に抜け落ち、図12に示すように、基板10の電極パッド11上に整然と搭載させることができる。
【0053】
その後、搭載装置4から配列用マスク1を取り外し、電極パッド11に搭載された導電性ボール2をリフローすれば、基板10の電極パッド11に精度良く導電性ボール2を溶着させることができる。
【0054】
各開口部3の下端周縁に椀状の凹部8がそれぞれ形成され、基板10の電極パッド11に精度良く導電性ボール2を取り付けることのできる配列用マスク1を、上述してきたように、一般的な塩化第二鉄水溶液をエッチング液として使用するエッチング工程を有する製造方法で得るようにしたため、生産性が向上してコストの面でも極めて有利となる。
【0055】
以上説明してきたように、本実施形態に係る配列用マスクの製造方法によれば、電着層16に開口部3を形成し、開口部3に対応するレジスト体91を除去する前にエッチングすることにより、レジスト体91の近傍が優先的にエッチングされ(レジスト体91の近傍とそれ以外の部分とおエッチング深さの比=略2:1)、電着層16(マスク基体)側に椀状にえぐれた湾曲面を有する凹部8が開口部3の下端周縁に形成されることになる。
【0056】
ところで、配列用マスク1の開口部3の下端周縁に形成された椀状の凹部8の上下端縁部81,81は、図18に示すように、R状に形成されている。
【0057】
すなわち図9及び図10に示すように、電解研磨工程を実行すると、開口部3の母型側周縁にスロープを有するボール誘導部7が形成されるが、このとき、凹部8についてみれば、上下端縁部81,81についても電解研磨の影響が及び、ミクロ的にR状に形成されるものと考えられる。
【0058】
こうして、本実施形態のように配列用マスク1を製造した場合、開口部3の下端周縁に形成される凹部8の端縁部81は、エッジとなるのではなく曲面となるため、導電性ボール2と接触しても、当該導電性ボール2を傷つけたりするおそれがない。
【0059】
なお、本実施形態では、凹部の上下端縁部81,81がそれぞれR状になっていることとしたが、少なくともいずれか一方がR状となっていれば、導電性ボール2を傷つける虞は大幅に減少する。そして、その場合、上端縁部81がR状であることが望ましい。
【0060】
(他の実施形態)
ここで、開口部3の下端周縁に椀状の凹部8が形成された配列用マスクを得るための他の実施形態に係る製造方法について、図14を参照しながら説明する。
【0061】
先の製造方法が、レジスト体91近傍とその他の領域とにおけるエッチングスピードの差のみを利用して、レジスト体91の近傍を優先的に深くエッチングして凹部8を形成したが、ここでは、電着層16を2層構造として、選択的エッチングを取り入れることによって凹部8を形成するようにしている。
【0062】
すなわち、図14(a)に示すように、先ず、やはりSUSなどを材料とする母型150を用意し、この母型150の表面に、フォトレジスト層を形成し、周知の方法で露光、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、開口部3に対応するレジスト体160を有するパターンレジストを設ける。この場合もフォトレジスト層は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを適宜枚数ラミネートして形成するとよい。
【0063】
次いで、図14(b)に示すように、前記パターンレジストが設けられた母型150を、所定の条件に建浴した電鋳槽(図示せず)に入れ、先のレジスト体160の半分の高さ程度に堆積されるように、当該レジスト体160で覆われていない表面にCuを電鋳して第1電着層170を形成し、次いで、今度はNiを電着金属として、レジスト体160と同高さになるまで堆積するように電鋳を行い、第1電着層170の上に第2電着層180を形成する。
【0064】
なお、ここで、Cuからなる第1電着層170とNiからなる第2電着層180とは上下逆であっても構わない。つまり、Niを電着金属とした電鋳を先に行い、その後にCuを電着金属とした電鋳を行ってもよい。
【0065】
次に、図14(c)に示すように、第2のパターンレジストを設ける。すなわち、第2電着層180又は第1電着層170の上に、フォトレジスト層を形成し、周知の方法で露光、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、レジスト体190を有するパターンレジストを設ける。なお、この第2のパターンレジストを設ける工程は必須ではなく、実行することが好ましいものの、省略しても構わない。
【0066】
次いで、図14(d)に示すように、エッチング工程を実行するのであるが、ここでは最上層となる第2電着層180のみをエッチングするに相応しいエッチング液を使用する。したがって、レジスト体190の近傍のエッチングが進行して第1電着層170でストップしたときには、レジスト体190の近傍よりも、レジスト体190から離隔している領域についてはエッチング速度が遅いため、図示するように、レジスト体190の上端近傍に椀状の凹部8が形成される。
【0067】
最後に、図14(e)に示すように、レジスト体190を溶解除去するとともに、2層の電着層(第1電着層170と第2電着層180)を母型150から剥離すれば、開口部3の下端周縁に椀状の凹部8が形成された配列用マスク1が得られることになる。
【0068】
なお、例えば、第1電着層170と第2電着層180との間にAu層などのバリア層を介在させた場合は、第1電着層170と第2電着層180の材質はCuやNiなどに限らず、適宜の材料を選択することができる。
【0069】
また、配列用マスクの製造方法の変形例として、図15に示す手順について説明する。これは、単一の材料からなる単一電着層140を形成し、所定のレジストパターンを行ってからエッチングすることで、開口部3の下端周縁に2段の椀状凹部8’を形成するようにしたものである。
【0070】
すなわち、図15(a)に示すように、やはりSUSなどを材料とする母型150を用意し、この母型150の表面に、フォトレジスト層を形成し、周知の方法で露光、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、開口部3に対応するレジスト体160を有するパターンレジストを設ける。この場合もフォトレジスト層は、ネガタイプの感光性ドライフィルムレジストを適宜枚数ラミネートして形成するとよい。
【0071】
次いで、前記パターンレジストが設けられた母型150を、所定の条件に建浴した電鋳槽(図示せず)に入れ、先のレジスト体160と同高さになるまで、例えばNiを電着金属として堆積させ、単一電着層140を形成する。なお、このとき使用したメッキ液には添加剤を含有させていない。
【0072】
そして、この単一電着層140の上にフォトレジスト層を形成し、これも周知の方法で露光、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、レジスト体190を有するパターンレジストを設けるのである。
【0073】
次いで、図15(b)に示すように、一般的な塩化第二鉄水溶液を用いたエッチングを行うと、図示するように、レジスト体160とレジスト体190との間には、2段の椀状凹部8’が形成される。
【0074】
このような2段の椀状凹部8’が形成されるメカニズムとしては解明されていないものの、レジスト体160とレジスト体190との距離、あるいはメッキ液の添加剤の有無あるいは配合比などが影響するものと考えられる。
【0075】
本実施形態によれば、以下のような導電性ボール配列用マスク、及びその製造方法が実現される。
【0076】
(1)導電性ボール2を基板10の所定位置に搭載するために、導電性ボール2を挿通可能な複数の開口部3が基板10に応じた所定の配列パターンで配置された導電性ボール配列用マスク1であって、開口部3の下端周縁に椀状の凹部8が形成されている導電性ボール配列用マスク1。かかる配列用マスク1を使用することにより、開口部3に振り込まれた導電性ボール2を、基板10の所定位置に確実に搭載することが可能となる。
【0077】
(2)凹部8の曲率半径が導電性ボール2の曲率半径よりも小さい導電性ボール配列用マスク1。かかる導電性ボール配列用マスク1であれば、搭載される導電性ボール2が凹部8内に入り込む虞がなく、円滑に基板10に搭載される。
【0078】
(3)凹部8の端縁部81がR状に形成されている導電性ボール配列用マスク1。かかる導電性ボール配列用マスク1であれば、導電性ボール2を傷付ける虞がなくなる。
【0079】
(4)導電性ボール2を基板10の所定位置に搭載するために、導電性ボール2を挿通可能な複数の開口部3が基板10に応じた所定の配列パターンで配置され、しかも、開口部3の下端周縁には椀状の凹部8が形成された導電性ボール配列用マスク1の製造方法であって、母型15の表面に、開口部3に対応するレジスト体91を有するパターンレジストを設けるパターニング工程と、前記パターンレジストを用いて母型15上に、所定メッキ液を用いて電着金属を電鋳し、電着層16を形成する電鋳工程と、レジスト体91を残した状態で前記電着金属をエッチングし、前記レジスト体91の近傍を椀状に食刻するエッチング工程と、を有する配列用マスクの製造方法。かかる製造方法によれば、開口部3に振り込まれた導電性ボール2を、基板10の所定位置により確実に搭載することのできる配列用マスク1を、極めて低コストで提供することが可能となる。また、エッチングにより凹部8が形成されるため、複数の凹部8を一様に形成することができ、しかも安価で実現できる
(5)前記メッキ液は、NiとCoと所定の添加剤とを含有する配列用マスクの製造方法。かかる製造方法によれば、所定形状の椀状の凹部8を容易に形成することが可能となる。
【0080】
(6)前記メッキ液は、前記添加剤として、それぞれ配合率1%未満としたSとCとを含有する配列用マスクの製造方法。かかる製造方法によれば、所望する形状の椀状の凹部8を容易に形成することが可能となる。
【0081】
(7)前記エッチング工程の前に、前記電着金属及びレジスト体91の上面に、支柱形成用レジスト体92を有するエッチング用マスキングレジストを設ける支柱形成用マスキング工程を有する配列用マスクの製造方法。かかる製造方法によれば、複数の開口部3,3の間に支柱部6を適宜数容易に形成することができ、配列用マスク1の撓みによる開口部3の沈み込みが防止されるため、導電性ボール2を擦りつけたりしてダメージを与えることを防止できる。
【0082】
ところで、上述してきた実施形態において、各開口部3は、配列用マスク1を搭載装置4に搭載した際に、基板10に向かって下窄まりのテーパー状に形成することもでき、その場合、導電性ボール2を所定位置により精度良く搭載することが可能となる。
【0083】
また、本実施形態において、開口部3の上端周縁部に形成されるボール誘導部7のスロープ形状を規定するには、電解研磨工程の時間の長短や電流の強弱をそれぞれ制御したり、あるいは両者を同時に制御したりするなど、電解研磨工程の時間及び/又は電流の管理で行うことができる。すなわち、ボール誘導部7のスロープ形状を、例えば高さ方向と水平方向との比を略1:2〜1:20の間でどのような値に設定するか、あるいは、開口部3側へ向かって一様な傾斜とするか、あるいは傾斜面(スロープ面)の中で段部が形成されるようにするか、などを電流値や研磨時間で管理することができる。
【0084】
上述してきた実施形態を通して本発明を説明してきたが、本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではない。請求の範囲から逸脱することのない限り、適宜設計変更することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 導電性ボール配列用マスク
2 導電性ボール
3 開口部
8 凹部
10 基板
11 電極パッド
15,150 母型
16 電着層
91 レジスト体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ボールを基板の所定位置に搭載するために、前記導電性ボールを挿通可能な複数の開口部が前記基板に応じた所定の配列パターンで配置された導電性ボール配列用マスクであって、
前記開口部の下端周縁に椀状の凹部が形成されていることを特徴とする導電性ボール配列用マスク。
【請求項2】
前記凹部の曲率半径は、前記導電性ボールの曲率半径よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の導電性ボール配列用マスク。
【請求項3】
前記凹部の端縁部がR状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ボール配列用マスク。
【請求項4】
導電性ボールを基板の所定位置に搭載するために、前記導電性ボールを挿通可能な複数の開口部が前記基板に応じた所定の配列パターンで配置され、しかも、前記開口部の下端周縁には椀状の凹部が形成された導電性ボール配列用マスクの製造方法であって、
母型の表面に、前記開口部に対応するレジスト体を有するパターンレジストを設けるパターニング工程と、
前記パターンレジストを用いて前記母型上に、所定メッキ液を用いて電着金属を電鋳し、電着層を形成する電鋳工程と、
前記レジスト体を残した状態で前記電着金属をエッチングし、前記レジスト体の近傍を椀状に食刻するエッチング工程と、
を有することを特徴とする配列用マスクの製造方法。
【請求項5】
前記メッキ液は、NiとCoと所定の添加剤とを含有することを特徴とする請求項4記載の配列用マスクの製造方法。
【請求項6】
前記メッキ液は、前記添加剤として、それぞれ配合率1%未満としたSとCとを含有することを特徴とする請求項5に記載の配列用マスクの製造方法。
【請求項1】
導電性ボールを基板の所定位置に搭載するために、前記導電性ボールを挿通可能な複数の開口部が前記基板に応じた所定の配列パターンで配置された導電性ボール配列用マスクであって、
前記開口部の下端周縁に椀状の凹部が形成されていることを特徴とする導電性ボール配列用マスク。
【請求項2】
前記凹部の曲率半径は、前記導電性ボールの曲率半径よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の導電性ボール配列用マスク。
【請求項3】
前記凹部の端縁部がR状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ボール配列用マスク。
【請求項4】
導電性ボールを基板の所定位置に搭載するために、前記導電性ボールを挿通可能な複数の開口部が前記基板に応じた所定の配列パターンで配置され、しかも、前記開口部の下端周縁には椀状の凹部が形成された導電性ボール配列用マスクの製造方法であって、
母型の表面に、前記開口部に対応するレジスト体を有するパターンレジストを設けるパターニング工程と、
前記パターンレジストを用いて前記母型上に、所定メッキ液を用いて電着金属を電鋳し、電着層を形成する電鋳工程と、
前記レジスト体を残した状態で前記電着金属をエッチングし、前記レジスト体の近傍を椀状に食刻するエッチング工程と、
を有することを特徴とする配列用マスクの製造方法。
【請求項5】
前記メッキ液は、NiとCoと所定の添加剤とを含有することを特徴とする請求項4記載の配列用マスクの製造方法。
【請求項6】
前記メッキ液は、前記添加剤として、それぞれ配合率1%未満としたSとCとを含有することを特徴とする請求項5に記載の配列用マスクの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−44615(P2011−44615A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192591(P2009−192591)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000164461)九州日立マクセル株式会社 (338)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000164461)九州日立マクセル株式会社 (338)
【Fターム(参考)】
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