説明

導電性粒子、導電性粒子の製造方法及び異方性導電材料

【課題】突起の強度が高く、導電性粒子を相対向する回路基板等の間に挟んで圧着しても突起がつぶれにくいため、導電性粒子と回路基板等とは点接触しかすることができず、接続抵抗の低減効果が不充分であったという従来の問題に鑑み、導通不良防止とともに抵抗値の低減化が可能な導電性粒子、導電性粒子の製造方法及び異方性導電材料を提供する。
【解決手段】基材粒子、前記基材粒子の表面に形成されたニッケル層、及び、前記ニッケル層の表面に形成された突起を有する金層からなる導電性粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導通不良防止とともに抵抗値の低減化が可能な導電性粒子、導電性粒子の製造方法及び異方性導電材料に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粒子は、バインダー樹脂や粘接着剤等と混合、混練することにより、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、異方性導電シート等の異方性導電材料として広く用いられている。
【0003】
これらの異方性導電材料は、例えば、液晶ディスプレイ、パーソナルコンピュータ、携帯電話等の電子機器において、回路基板同士を電気的に接続したり、半導体素子等の小型部品を回路基板に電気的に接続したりするために、相対向する回路基板や電極端子の間に挟み込んで使用されている。
【0004】
このような異方性導電材料に用いられる導電性粒子としては、従来、粒子径が均一で、適度な強度を有する樹脂粒子等の非導電性粒子の表面に、導電層として金属メッキ層を形成させた導電性粒子が用いられている。しかしながら、このような異方性導電材料を用いて回路基板同士を電気的に接続すると、導電性粒子表面の導電層と回路基板等との間にバインダー樹脂等がはさまり、導電性粒子と回路基板等との間の接続抵抗が高くなることがあった。特に近年の電子機器の急激な進歩や発展に伴って、導電性粒子と回路基板等との間の接続抵抗の更なる低減が求められてきている。
【0005】
接続抵抗を低減する目的で、表面に突起を有する導電性粒子が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この導電性粒子は、導電性粒子表面の導電層と回路基板等との間に存在するバインダー樹脂等を突起が突き破ることで(樹脂排除性)、突起と回路基板等とを確実に接続させることで、導電性粒子と回路基板等との間の接続抵抗の低減を図っている。
【0006】
しかしながら、この導電性粒子は突起がニッケルにより形成されているため、突起の強度が高く、導電性粒子を相対向する回路基板等の間に挟んで圧着しても突起がつぶれにくいため、導電性粒子と回路基板等とは点接触しかすることができず、接続抵抗の低減効果は不充分であった。
【特許文献1】特開2000−243132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、導通不良防止とともに抵抗値の低減化が可能な導電性粒子、導電性粒子の製造方法及び異方性導電材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材粒子、前記基材粒子の表面に形成されたニッケル層、及び、前記ニッケル層の表面に形成された突起を有する金層からなる導電性粒子である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、回路基板等の電気的接続に用いる導電性粒子として、所定の突起を有する導電性粒子を用いることで、樹脂排除して確実に導電性粒子と回路基板等とを接触させることができることに加え、導電接続時に回路基板間を圧着したときに、突起部分がつぶれることにより導電性粒子と回路基板等との接触を点接触から面接触とすることにより、導電性粒子と回路基板等との間の接続抵抗を低減することができるということを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の導電性粒子は、基材粒子、上記基材粒子の表面に形成されたニッケル層、及び、上記ニッケル層の表面に形成された突起を有する金層からなる。
【0011】
上記基材粒子としては特に限定されず、適度な弾性率、弾性変形性及び復元性を有するものであれば、有機系材料であっても無機系材料であってもよいが、なかでも、樹脂粒子等の有機系材料であることが好ましい。
【0012】
上記有機系材料としては特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ジビニルベンゼン重合体;ジビニルベンゼン−スチレン共重合体、ジビニルベンゼン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のジビニルベンゼン系重合体;(メタ)アクリル酸エステル重合体等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステル重合体は、必要に応じて架橋型、非架橋型のいずれを用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。なかでも、ジビニルベンゼン系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体が好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸エステルとは、メタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルを意味する。
【0013】
上記無機系材料としては特に限定されず、例えば、金属、ガラス、セラミックス、金属酸化物、金属ケイ酸塩、金属炭化物、金属窒化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属硫化物、金属酸塩、金属ハロゲン化物、炭素等が挙げられる。
これらの基材粒子は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
上記基材粒子の平均粒子径としては特に限定されないが、好ましい下限は1μm、好ましい上限は100μmである。1μm未満であると、例えば、後述する無電解メッキ等をする際に凝集しやすく、単粒子としにくくなることがあり、100μmを超えると、異方性導電材料として回路基板等に用いられる範囲を超えることがある。より好ましい上限は15μmである。
なお、上記基材粒子の平均粒子径は、無作為に選んだ50個の基材粒子について粒子径を測定し、これらを算術平均したものとする。
【0015】
上記ニッケル層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は10nm、好ましい上限は500nmである。10nm未満であると、所望の導電性が得られないことがあり、500nmを超えると、基材粒子とニッケル層との熱膨張率の差から、上記ニッケル層が剥離しやすくなることがある。
なお、上記ニッケル層の厚さは、無作為に選んだ10個の粒子について測定し、これらを算術平均した厚さである。
【0016】
本発明の導電性粒子は、上記ニッケル層と後述する突起を有する金層との間に、通常の金層が形成されていてもよい。
ニッケル層の表面に通常の金層を形成させ、該金層の表面に、突起を有する金層を形成させることにより、ニッケル層と突起を有する金層との密着性が高まるため、突起を有する金層が剥れるのを防ぐことが可能となる。
【0017】
上記金層の形成方法としては特に限定されず、無電解メッキ、置換メッキ、電気メッキ、還元メッキ、スパッタリング等の従来公知の方法が挙げられる。
【0018】
上記金層の厚さとしては特に限定されないが、好ましい下限は1nm、好ましい上限は100nmである。1nm未満であると、ニッケルを含有する導電層の酸化を防止することが困難となることがあり、接続抵抗値が高くなることがあり、100nmを超えると、金層がニッケル層を侵食し、基材粒子とニッケルを含有する導電層との密着性を悪くすることがある。
【0019】
本発明の導電性粒子は、上記ニッケル層又は上記通常の金層の表面に突起を有する金層を有する。
本発明の導電性粒子においては、上記突起が金からなることにより、上記突起が、本発明の導電性粒子を用いてなる異方性導電材料を回路基板等に挟んで導電接続時に圧着することにより崩れる柔らかい突起となる。その結果、回路基板等と本発明の導電性粒子との間に存在する異方性導電材料中のバインダー樹脂等を突き破るとともに(樹脂排除性)、回路基板等の面で突起がつぶれ、先端が平坦化するため、本発明の導電性粒子と回路基板等とが面接触となり、導通不良防止とともに、抵抗値の低減化が可能となる。
また、ニッケル層の表面に金層が存在することにより、ニッケル層の酸化防止、接続抵抗の低減化、表面の安定化等を図ることができる。
【0020】
上記突起の高さとしては特に限定されないが、好ましい下限は上記基材粒子の平均粒子径の0.5%、好ましい上限は上記基材粒子の平均粒子径の25%である。上記基材粒子の平均粒子径の0.5%未満であると、充分な樹脂排除性が得られないことがあり、上記基材粒子の平均粒子径の25%を超えると、突起が回路基板等に深くめり込み、回路基板等を破損させるおそれがある。
【0021】
上記突起の存在密度としては特に限定されないが、導電性粒子の表面において好ましい下限は0.4個/μm、好ましい上限は1個/μmである。0.4個/μm未満であると、導電性粒子の向きによっては突起と回路基板等とが接触しないことがあり、1個/μmを超えると、突起同士が重なり合い、導電接続時に導電性粒子と回路基板等とを圧着した際に突起がつぶれにくいことがある。
【0022】
後述するように、上記突起を作製する際に、金メッキ浴中にタリウム塩、銀塩及び鉄塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有させた場合には、上記突起は、タリウム、銀及び鉄からなる群より選択される少なくとも1種の金属を含有することとなる。このような金属の含有量は、突起を有する金層に対して100ppm以下であることが好ましい。
【0023】
本発明の導電性粒子の平均粒子径としては特に限定されないが、好ましい下限は1μm、好ましい上限は100μmである。1μm未満であると、凝集しやすく、単粒子としにくくなることがあり、100μmを超えると、異方性導電材料として微細な配線を有する基板等の電極端子間で用いられる範囲を超えてしまうことがある。より好ましい上限は15μmである。
【0024】
本発明の導電性粒子のCV値(粒子径分布の標準偏差を平均粒子径で除して百分率とした値)が10%以下であることが好ましい。CV値が10%以下であることにより、導電性粒子と回路基板等との接触面積のばらつきが小さく、安定した接続が得られやすい。
【0025】
本発明の導電性粒子を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、還元金メッキ法により製造することができる。
特に、本発明の導電性粒子を製造する方法においては、自己触媒型の還元金メッキ法が好ましく、また、自己触媒型の還元金メッキ法と下地触媒型の還元金メッキ法とを併用してもよい。
更に、自己触媒型の還元金メッキ法を用いる際に、置換金メッキが起こっていることが好ましい。置換金メッキが起こっていることにより、ニッケルとの置換領域が形成され、ニッケル層との密着性が優れた金の突起を形成することができる。
【0026】
上記自己触媒型の還元金メッキ法とは、析出金属(金)上で酸化触媒活性を有する還元剤の反応を利用することにより金メッキ被膜を形成する方法である。
また、上記下地触媒型の還元金メッキ法とは、下地ニッケルの表面で酸化反応を起こし析出金属(金)の表面では酸化反応を起こさない還元剤を下地ニッケルの表面に存在させ、金塩を還元させて金を析出させることにより金メッキ被膜を形成する方法である。
【0027】
ここで、基材粒子の表面に金メッキを形成させる金メッキ浴中に含有される錯化剤及び結晶調整剤の濃度が低い場合に、極めて高い効率で金の異常析出による突起を有する本発明の導電性粒子を製造することができる。
基材粒子の表面に触媒付与を行う工程1、ニッケル、及び、メッキ安定剤を含有するメッキ液中で、触媒付与された上記基材粒子の表面にニッケル層を形成させる工程2、及び、
金塩、錯化剤、及び、結晶調整剤を含有する金メッキ浴中で、表面に導電層が形成された上記基材粒子の表面に突起を有する金層を形成させる工程3を有する導電性粒子の製造方法であって、上記金メッキ浴中における上記錯化剤の濃度が0.04〜0.4mol/L、かつ、上記結晶調整剤の濃度が0.01〜0.15mol/Lである導電性粒子の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0028】
上記触媒付与を行う方法としては、例えば、アルカリ溶液でエッチングされた基材粒子に酸中和、及び、二塩化スズ(SnCl)溶液におけるセンシタイジングを行い、二塩化パラジウム(PdCl)溶液におけるアクチベイジングを行う無電解メッキ前処理工程を行う方法等が挙げられる。
なお、センシタイジングとは、絶縁物質の表面にSn2+イオンを吸着させる工程であり、アクチベイチングとは、絶縁性物質表面にSn2++Pd2+→Sn4++Pdで示される反応を起こしてパラジウムを無電解メッキの触媒核とする工程である。
【0029】
上記メッキ安定剤としては特に限定されず、例えば、硝酸ビスマス、硝酸タリウム等が挙げられる。
【0030】
上記基材粒子の表面にニッケル層を形成する方法としては特に限定されず、例えば、無電解メッキ、電気メッキ、溶融メッキ、蒸着等の方法が挙げられる。
上記基材粒子が樹脂粒子等の非導電性である場合は、無電解メッキ法が好適に用いられる。
【0031】
基材粒子の表面にニッケル層を形成した後、突起を有する金層を形成させる前に、通常の金層を形成させてもよい。
例えば、ニッケル層の表面に置換金メッキ法により通常の金層を形成させ、この金層の表面に突起を有する金層を形成させることにより、ニッケル層と通常の金層、及び、通常の金層と突起を有する金層との密着性が高まるため、突起を有する金層が剥れるのを防ぐことが可能となる。
上記金メッキの形成方法としては特に限定されず、例えば、無電解メッキ、置換メッキ、電気メッキ、還元メッキ、スパッタリング等が挙げられる。
【0032】
上記金塩としては特に限定されず、例えば、KAu(CN)等のシアン化金、NaAuCl・2HO等の塩化金酸ナトリウム、亜硫酸金等のノーシアン系金塩等が挙げられる。
上記ノーシアン系金塩を用いることにより、ノーシアン系の無電解金メッキを行うことができ、シアン浴のように強アルカリで用いられることがないため、基材粒子等への浸食がなく、環境にも配慮したものとなる。上記ノーシアン系金塩のなかでも、塩化金酸ナトリウムが好ましい。
【0033】
上記金メッキ浴中における上記金塩の濃度としては特に限定されないが、好ましい下限は0.01mol/L、好ましい上限は0.1mol/Lである。0.01mol/L未満であると、金メッキが形成されない部分が生じることがあり、0.1mol/Lを超えると、突起の大きさを好ましい範囲に制御できないことがある。
【0034】
上記錯化剤としては特に限定されず、例えば、チオ硫酸塩等が挙げられる。
【0035】
上記金メッキ浴中における上記錯化剤の濃度の下限は0.04mol/L、上限は0.4mol/Lである。0.04mol/L未満であると、メッキが形成されないことがあり、0.4mol/Lを超えると、突起が形成されにくくなる。好ましい上限は0.1mol/Lである。
【0036】
上記結晶調整剤としては特に限定されず、例えば、ヒドロキシルアミン等が挙げられる。
【0037】
上記金メッキ浴中における上記結晶調整剤の濃度の下限は0.01mol/L、上限は0.15mol/Lである。0.01mol/L未満であると、安定なメッキが形成されず、0.15mol/Lを超えると、突起が形成されにくくなる。好ましい上限は0.12mol/Lである。
【0038】
また、pHを調整するために、上記金メッキ浴にpH調整剤を添加することが好ましい。上記金メッキ浴のpHは、8〜10であることが好ましく、突起形成のためにはpHは低い方が好ましい。pH調整剤としては特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア等が挙げられる。
【0039】
上記金メッキ浴の浴温としては特に限定されないが、好ましい下限は50℃、好ましい上限は70℃である。50℃未満であると、反応に時間がかかりすぎることがあり、70℃を超えると、浴分解が起こることがある。
【0040】
また、上記金メッキ浴は、水溶液中に粒子が均一に分散していないと反応による凝集が生じ易くなるため、粒子を均一に分散させ、凝集を生じさせないように超音波、攪拌機等を用いて粒子を分散させることが好ましい。
更に、このような物理的方法で凝集を抑制するだけでなく、化学的に凝集を抑制するために、ポリエチレングリコール等の界面活性剤を併用することがより好ましい。
【0041】
上記金メッキ浴は、更に、タリウム塩、銀塩及び鉄塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
このような塩を含有することにより、金の析出速度が速くなるため、効率よく金の異常析出による突起を形成させることができる。
なかでも、効率よく突起を形成させることができることから、タリウム塩が好適に用いられる。
基材粒子の表面に触媒付与を行う工程1、ニッケル、及び、メッキ安定剤を含有するメッキ液中で、触媒付与された前記基材粒子の表面にニッケル層を形成させる工程2、及び、
金塩、錯化剤、及び、結晶調整剤を含有する金メッキ浴中で、表面に導電層が形成された前記基材粒子の表面に突起を有する金層を形成させる工程3を有する導電性粒子の製造方法であって、前記金メッキ浴は、更に、タリウム塩、銀塩及び鉄塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する導電性粒子の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0042】
上記タリウム塩としては特に限定されず、例えば、硫酸タリウムが挙げられる。
上記銀塩としては特に限定されず、例えば、シアン化銀ナトリウムが挙げられる。
上記鉄塩としては特に限定されず、例えば、硫酸鉄が挙げられる。
【0043】
本発明の導電性粒子をバインダー樹脂に分散させることにより異方性導電材料を製造することができる。このような異方性導電材料もまた、本発明の1つである。
【0044】
本発明の異方性導電材料の具体的な例としては、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘着剤層、異方性導電フィルム、異方性導電シート等が挙げられる。
【0045】
上記樹脂バインダーとしては特に限定されないが、絶縁性の樹脂が用いられ、例えば、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等のビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂及びこれらの硬化剤からなる硬化性樹脂;スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、これらの水素添加物等の熱可塑性ブロック共重合体;スチレン−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等のエラストマー類(ゴム類)等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
また、上記硬化性樹脂は、常温硬化型、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型のいずれの硬化型であってもよい。
【0046】
本発明の異方性導電材料には、本発明の導電性粒子、及び、上記樹脂バインダーの他に、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、増量剤、軟化剤(可塑剤)、粘接着性向上剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、有機溶媒等の各種添加剤を添加してもよい。
【0047】
本発明の異方性導電材料の製造方法としては特に限定されず、例えば、絶縁性の樹脂バインダー中に本発明の導電性粒子を添加し、均一に混合して分散させ、例えば、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤等とする方法や、絶縁性の樹脂バインダー中に本発明の導電性粒子を添加し、均一に溶解(分散)させるか、又は、加熱溶解させて、離型紙や離型フィルム等の離型材の離型処理面に所定のフィルム厚さとなる用に塗工し、必要に応じて乾燥や冷却等を行って、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電シート等とする方法等が挙げられ、製造しようとする異方性導電材料の種類に対応して、適宜の製造方法をとればよい。
また、絶縁性の樹脂バインダーと、本発明の導電性粒子とを混合することなく、別々に用いて異方性導電材料としてもよい。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、導通不良防止とともに抵抗値の低減化が可能な導電性粒子、導電性粒子の製造方法及び異方性導電材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
粒径4μmのジビニルベンゼン樹脂粒子を、イオン吸着剤の10%溶液で5分間処理し、その後、硫酸パラジウム0.01%水溶液で5分間処理し、更にジメチルアミンボランを加えて還元処理を施し、ろ過、洗浄することにより、パラジウムを担持した基材粒子を得た。
次に、コハク酸ナトリウム1%とイオン交換水500mL含む溶液を調製し、基材粒子10gとを混合してスラリーを調製し、更に硫酸を添加してスラリーのpH5に調整した。
一方、ニッケルメッキ液として、硫酸ニッケル10%と次亜リン酸ナトリウム10%、水酸化ナトリウム4%及びコハク酸ナトリウム20%を含む前期ニッケル溶液を調製した。スラリーを80℃にし、これに作製した前期ニッケル溶液を連続的に滴下し、20分間攪拌することによりメッキ反応させた。このメッキ反応中に、著しい凝集はなく、水素の発生がなくなることを確認してメッキ反応を終了させた。
次に、硫酸ニッケル20%、ジメチルアミンボラン5%、水酸化ナトリウム5%を含む後期ニッケル溶液を調製し、後期ニッケル液を調製した。その後、前期ニッケル液反応終了後の溶液に作製した後期ニッケル液を連続的に滴下し、1時間攪拌することによりメッキ反応させた。
【0051】
塩化金酸ナトリウム10gとイオン交換水1000mLとを含む溶液を調製し、得られた無電解ニッケルメッキ粒子12gを混合して水性懸濁液を調製した。得られた水性懸濁液に、チオ硫酸アンモニウム15g、亜硫酸アンモニウム80g、及び、リン酸水素アンモニウム40gを投入しメッキ液を調製した。得られたメッキ液にヒドロキシルアミン4gを投入後、アンモニアを用いpHを9に合わせ、浴温を60℃にし、15〜20分程度反応させることにより金メッキ被膜が形成された導電性粒子を得た。
【0052】
(実施例2)
実施例1と同様にして基材粒子の表面にニッケルメッキを形成させた後、置換メッキ法により表面に金メッキを形成させた。
次に、塩化金酸ナトリウム10gとイオン交換水1000mLとを含む溶液を調製し、得られた金メッキ粒子12gを混合して水性懸濁液を調製した。得られた水性懸濁液に、チオ硫酸アンモニウム15g、亜硫酸アンモニウム80g、リン酸水素アンモニウム40g、及び、硫酸タリウム0.1gを投入しメッキ液を調製した。得られたメッキ液にヒドロキシルアミン4gを投入後、アンモニアを用いpHを9に合わせ、浴温を60℃にし、15〜20分程度反応させることにより金メッキ被膜が形成された導電性粒子を得た。
【0053】
(比較例1)
ニッケルメッキ液として、硫酸ニッケル10%と次亜リン酸ナトリウム10%、水酸化ナトリウム7%及びコハク酸ナトリウム7%を含む前期ニッケル溶液を調製した。
実施例1と同様のスラリーを80℃にし、これに作製した前期ニッケル溶液を連続的に滴下し、20分間攪拌することによりメッキ反応させた。このメッキ反応中に、著しい凝集はなく、水素の発生がなくなることを確認してメッキ反応を終了させた。
次に、硫酸ニッケル20%、ジメチルアミンボラン5%、水酸化ナトリウム5%を含む後期ニッケル溶液を調製し、後期ニッケル液を調製した。その後、前期ニッケル液反応終了後の溶液に、作製した後期ニッケル液を連続的に滴下し、1時間攪拌することによりメッキ反応させた。
得られた無電解ニッケルメッキ粒子に対して、置換メッキ法により表面に金メッキを施すことで、金メッキ被膜が形成された導電性粒子を得た。
【0054】
(比較例2)
塩化金酸ナトリウム10gとイオン交換水1000mLとを含む溶液を調製し、実施例1と同様の無電解ニッケルメッキ粒子12gを混合して水性懸濁液を調製した。得られた水性懸濁液に、チオ硫酸アンモニウム30g、亜硫酸アンモニウム80g、及び、リン酸水素アンモニウム40gを投入しメッキ液を調製した。得られたメッキ液にヒドロキシルアミン10gを投入後、アンモニアを用いpHを10に合わせ、浴温を60℃にし、15〜20分程度反応させることにより金メッキ被膜が形成された導電性粒子を得た。
【0055】
<評価>
実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた導電性粒子について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0056】
(導電性粒子のメッキ密着性評価)
エタノール20mLにジルコニアボール40g、得られた導電性粒子1gを添加し、4枚羽根を用いて400rpmで2分間攪拌した後、濾過乾燥を行い、導電性粒子を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。測定は1000倍視野で写真5枚を撮影し、メッキの割れた粒子数をカウントした。
【0057】
(異方性導電材料の抵抗値評価)
樹脂バインダーの樹脂としてエポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、「エピコート828」)100重量部、トリスジメチルアミノエチルフェノール2重量部、及びトルエン100重量部に、得られた導電性粒子を添加し、遊星式攪拌機を用いて充分に混合した後、離型フィルム上に乾燥後の厚さが7μmとなるように塗布し、トルエンを蒸発させて導電性粒子を含有する接着フィルムを得た。なお、導電性粒子の配合量は、フィルム中の含有量が5万個/cmとした。
その後、導電性粒子を含有する接着フィルムを、導電性粒子を含有させずに得た接着フィルムと常温で貼り合わせ厚さ17μmで2層構造の異方性導電フィルムを得た。
【0058】
得られた異方性導電フィルムを5×5mmの大きさに切断した。また、一方に抵抗測定用の引き回し線を持つ、L/S100μm/100μmの銅パターンを持つガラス基板を2枚用意した。異方性導電フィルムを一方のガラス基板のほぼ中央に貼り付けた後、他方のガラス基板を異方性導電フィルムが貼り付けられたガラス基板の電極パターンと重なるように位置あわせをして貼り合わせた。
2枚のガラス基板を、圧力10N、温度180℃の条件で熱圧着した後、電極間の抵抗値を四端子法にて測定した。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、導通不良防止とともに抵抗値の低減化が可能な導電性粒子、導電性粒子の製造方法及び異方性導電材料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材粒子、前記基材粒子の表面に形成されたニッケル層、及び、前記ニッケル層の表面に形成された突起を有する金層からなることを特徴とする導電性粒子。
【請求項2】
基材粒子の表面に触媒付与を行う工程1、
ニッケル、及び、メッキ安定剤を含有するメッキ液中で、触媒付与された前記基材粒子の表面にニッケル層を形成させる工程2、及び、
金塩、錯化剤、及び、結晶調整剤を含有する金メッキ浴中で、表面に導電層が形成された前記基材粒子の表面に突起を有する金層を形成させる工程3を有する導電性粒子の製造方法であって、
前記金メッキ浴中における前記錯化剤の濃度が0.04〜0.4mol/L、かつ、前記結晶調整剤の濃度が0.01〜0.15mol/Lである
ことを特徴とする導電性粒子の製造方法。
【請求項3】
基材粒子の表面に触媒付与を行う工程1、
ニッケル、及び、メッキ安定剤を含有するメッキ液中で、触媒付与された前記基材粒子の表面にニッケル層を形成させる工程2、及び、
金塩、錯化剤、及び、結晶調整剤を含有する金メッキ浴中で、表面に導電層が形成された前記基材粒子の表面に突起を有する金層を形成させる工程3を有する導電性粒子の製造方法であって、
前記金メッキ浴は、更に、タリウム塩、銀塩及び鉄塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする導電性粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の導電性粒子が樹脂バインダーに分散されてなることを特徴とする異方性導電材料。

【公開番号】特開2006−351508(P2006−351508A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357578(P2005−357578)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】