導電性部材及びこの導電性部材を用いた帯電部材及びこの帯電部材を用いたプロセスカートリッジ及びこのプロセスカートリッジを用いた画像形成装置
【課題】空隙保持部材と電気抵抗調整層との境界部にバリや糸状の切り屑が残留する場合であっても画像形成に支障が生じるのを避けることができる導電性部材を提供する。
【解決手段】本発明の導電性部材20は、軸部材をなす長尺状の導電性支持体21と、導電性支持体21の外周面に設けられた電気抵抗調整層22と、電気抵抗調整層22と異なる材質からなりかつ導電性支持体21の両端部に設けられて電気抵抗調整層22の端面部22aに対向される一対の空隙保持部材23とを備え、空隙保持部材23の外周面は像担持体と当接したときに像担持体の外周面と電気抵抗調整層22の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように電気抵抗調整層22の外周面に対して高低差が設けられているものにおいて、電気抵抗調整層22の端面部22aと各空隙保持部材23の端面部23aとの間に環状溝24が形成されている。
【解決手段】本発明の導電性部材20は、軸部材をなす長尺状の導電性支持体21と、導電性支持体21の外周面に設けられた電気抵抗調整層22と、電気抵抗調整層22と異なる材質からなりかつ導電性支持体21の両端部に設けられて電気抵抗調整層22の端面部22aに対向される一対の空隙保持部材23とを備え、空隙保持部材23の外周面は像担持体と当接したときに像担持体の外周面と電気抵抗調整層22の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように電気抵抗調整層22の外周面に対して高低差が設けられているものにおいて、電気抵抗調整層22の端面部22aと各空隙保持部材23の端面部23aとの間に環状溝24が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性部材及びこの導電性部材を用いた帯電部材及びこの帯電部材を用いたプロセスカートリッジ及びこのプロセスカートリッジを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置には、感光体ドラム(像担持体)に対して帯電処理を行う帯電部材や、感光体ドラム上のトナーに対して転写処理を行う転写部材として導電性部材が用いられている。
【0003】
図1は画像形成装置の模式図を示したものであり、画像形成装置1は、静電潜像が形成される像担持体としての感光体ドラム4と、感光体ドラム4に対して帯電処理を行う帯電部材としての帯電ローラ2と、帯電ローラ2に電圧を印加するためのパワーパック(電圧印加源)3と、感光体ドラム4の表面電位を測定する表面電位計5と、感光体ドラム4の静電潜像にトナーを固着させる現像ローラ6と、感光体ドラム4上のトナー像を記録紙Sに転写処理する転写ローラ7と、転写処理後の感光体ドラム4をクリーニングするクリーニング装置8とを備えている。なお、図2に示すように、感光体ドラム4、帯電ローラ2、現像ローラ6、クリーニング装置8を一括して有するプロセスカートリッジ9が画像形成装置1内に設置される場合もある。そのプロセスカートリッジ9としては、少なくとも感光体ドラム4と帯電ローラ2とを有していれば良く、画像形成装置の所定箇所に着脱可能に装着される。
【0004】
帯電ローラ2はパワーパック3から電源供給を受け、感光体ドラム4を所望の電位に帯電させる。なお、その帯電ローラ2による帯電メカニズムは帯電ローラ2と感光体ドラム4との間の微小空間におけるパッシェンの法則に従った放電であることが知られている。感光体ドラム4は図示を略す駆動機構により矢印A方向に回転する。表面電位計5はその回転方向に沿って帯電ローラ2の直後に設けられ、感光体ドラム4の表面4aの電位を測定する。
【0005】
現像ローラ6は帯電した感光体ドラム4にトナーを付着させ、転写ローラ7は感光体ドラム4に付着したトナーを記録紙Sに転写する。クリーニング装置8は感光体ドラム4に残留したトナーを除去し、感光体ドラム4をクリーニングする。
【0006】
この画像形成装置1による画像形成過程では、まず、帯電ローラ2により感光体ドラム4の表面4aが一様に負の高電位に帯電される。
【0007】
続いて、その表面4aが露光される。その表面4aの露光された部分はその電位が低下する。この露光Lにより表面4aの各電位が受光量に応じた電位分布となり、これにより、静電潜像がその表面4aに形成される。
【0008】
感光体ドラム4が回転して、その表面4aの静電潜像が形成された部分が現像ローラ6を通過すると、表面4aには電位分布に応じたトナーが付着して静電潜像がトナー像として可視化される。記録紙Sはレジストローラ(図示を略す)によって所定のタイミングで感光体ドラム4に向かって給送され、そのトナー像は転写ローラ7により記録紙Sに転写される。その記録紙Sは図示を略す定着ユニットに向かって矢印B方向に搬送される。
【0009】
一方、転写後、感光体ドラム4は、表面4aに残留するトナーがクリーニング装置8により除去されてクリーニングされると共に、図示を略すクエンチングランプにより電荷が除去されて次回の作像処理に移行する。
【0010】
上記の画像形成装置1における一般的な帯電方式として帯電ローラ2を感光体ドラム4に接触させる接触帯電方式が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0011】
しかしながら、接触帯電方式からなる帯電ローラ2を用いた場合には、以下に掲げるような問題がある。
(1)帯電ローラの構成物質が帯電ローラから染み出して感光体ドラムの表面に付着し、この固着が進行すると、感光体ドラムの表面に帯電ローラの跡が残る。
(2)帯電ローラ2に交流電圧を印加した際に、感光体ドラムに接触している帯電ローラが振動して帯電音が発生する。
(3)感光体ドラムの表面のトナーが帯電ローラに固着して帯電性能が低下する。特に、帯電ローラにおいて(1)の染み出しが生じると、トナーが一層付着し易くなる。
(4)帯電ローラを構成している物質が感光体に固着し易い。
(5)感光体ドラムを長期間駆動しないと、帯電ローラに永久変形が生じる。
【0012】
このような問題に対処するために、帯電ローラ2を感光体ドラム4に接触するのではなく近接させる近接帯電方式が考案されている(特許文献3〜特許文献5等参照)。
【0013】
この近接帯電方式は、帯電ローラ2と感光体ドラム4との最近接距離(以下、空隙という)が50μm〜300μmとなるように両者を対向させ、帯電ローラ2に電圧を印加して感光体ドラム4の帯電を行うものである。
【0014】
近接帯電方式では、帯電ローラ2と感光体ドラム4とが接触していないので、接触帯電方式で問題となる「帯電ローラの構成物質の感光体ドラムへの付着」、及び「長期間の不使用により生じる帯電ローラの永久変形」は問題とはならない。また、「トナーの固着による帯電ローラの帯電性能の低下」についても、帯電ローラに付着するトナーがすくなるため、近接帯電方式が優れている。
【特許文献1】特開昭63−149668号公報
【特許文献2】特開平1−267667号公報
【特許文献3】特開2003−330249号公報
【特許文献4】特開2003−337464号公報
【特許文献5】特開2004−354477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この種の近接帯電方式に用いる帯電ローラ10は、図3に示すように、例えば、以下に説明する工程を経て製作される。まず、図3に示す軸部材をなす長尺状の導電性支持体11を準備し、ついで、押し出し成形、射出成形等の手段を用いて半導電性樹脂組成物からなる電気抵抗調整層12を導電性支持体11の外周面11aを被覆するようにしてその導電性支持体11に形成する。ついで、その電気抵抗調整層12が所定の長さとなるようにその電気抵抗調整層12の端面部を切削する。
【0016】
ついで、感光体ドラム4の表面4aと電気抵抗調整層12との空隙を形成するための一対の空隙保持部材13を電気抵抗調整層12の両端面部に当接するようにして導電性支持体11に装着する。
【0017】
そして、電気抵抗調整層12と感光体ドラム4との空隙G(図4参照)が導電性支持体11の長手方向に沿って一定に保たれるように、切削バイト等の切削工具によって空隙保持部材13、電気抵抗調整層12の外周面を切削、研削して、要求される寸法径、表面精度を有する導電性部材としての帯電ローラ10を作製している。
【0018】
すなわち、図5に示すように、導電性支持体11を回転させながら切削工具14を導電性支持体11の長手方向に沿って移送することにより、一方の空隙保持部材13から電気抵抗調整層12を経て他方の空隙保持部材13に向かって連続してその外周面12bを切削している。
【0019】
ところが、その切削加工の際に、空隙保持部材13と電気抵抗調整層12との間で、図6に示すようにバリや糸状の切り屑15が生じ、これらが空隙保持部材13と電気抵抗調整層12との境界部、特に空隙保持部材13の端面部13aと電気抵抗調整層12の端面部12aとの微細な隙間Hに入り込んで残存するという問題がある。このバリや糸状の切り屑15は、微細な隙間Hに入り込んでいるので除去することが困難である。
【0020】
このバリや糸状の切り屑15が残存する導電性部材10を例えば画像形成装置に組み込んだ場合、バリや糸状の切り屑15が何らかの加減で、空隙保持部材13と電気抵抗調整層12との微細な隙間Hから電気抵抗調整層12の表面に露呈すると、導電性部材10と感光体ドラム4との空隙Gが一定に確保されないために、帯電電位が一様に保たれず、画像むらが発生するおそれがあり、ひいては、高品質の画像を得るための障害となるおそれがある。
【0021】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、空隙保持部材と電気抵抗調整層との境界部にバリや糸状の切り屑が残留するのを極力回避でき、画像形成に支障が生じるのを避けることができる導電性部材及びこの導電性部材を用いた帯電部材及びこの帯電部材を用いたプロセスカートリッジ及びこのプロセスカートリッジを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
請求項1に記載の導電性部材は、軸部材をなす長尺状の導電性支持体と、該導電性支持体の外周面に設けられた電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と異なる材質からなりかつ前記導電性支持体の両端部に設けられて前記電気抵抗調整層の端面部に対向される一対の空隙保持部材とを備え、該空隙保持部材の外周面は像担持体と当接したときに該像担持体の周面と前記電気抵抗調整層の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように前記電気抵抗調整層の外周面に対して高低差が設けられている導電性部材において、前記電気抵抗調整層の各端面部と前記各空隙保持部材の端面部との間に非加工領域を形成するための環状溝が形成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項2に記載の導電性部材は、前記環状溝が前記電気抵抗調整層の各端面部と前記空隙保持部材の端面部との間に介装されたスペーサ部材によって構成されていることを特徴とする。
【0024】
請求項3に記載の導電性部材は、前記環状溝が前記電気抵抗調整層の端面部に形成された環状段差部によって構成されていることを特徴とする。
【0025】
請求項4に記載の導電性部材は、前記環状溝が前記空隙保持部材の端面部に形成された環状段差部によって構成されていることを特徴とする。
【0026】
請求項5に記載の導電性部材は、前記環状溝が前記空隙保持部材の端面部に形成された環状段差部と前記電気抵抗調整層の端面部に形成された環状段差部との突き合わせによって構成されていることを特徴とする。
【0027】
請求項6に記載の導電性部材は、前記環状溝を構成する前記電気抵抗調整層の端面部が円弧状の面取り又は60度以下の角度の面取りがされていることを特徴とする。
【0028】
請求項7に記載の導電性部材は、前記環状溝を構成する前記空隙保持部材の端面部が円弧状の面取り又は60度以下の角度の面取りがされていることを特徴とする。
【0029】
請求項8に記載の帯電部材は、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の導電性部材からなることを特徴とする。
【0030】
請求項9に記載のプロセスカートリッジは、請求項8に記載の帯電部材を有することを特徴とする。
【0031】
請求項10に記載の画像形成装置は、請求項9に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
請求項1に記載の発明によれば、空隙保持部材の端面部と電気抵抗調整層の端面部との間に環状溝を形成したので、バリや糸状の切削屑が発生したとしても、空隙保持部材の端面部と電気抵抗調整層の端面部との隙間に入り込むのを防止でき、また、たとえ、バリや糸状の切削屑が空隙保持部材の端面部と電気抵抗調整層の端面部との間の境界部付着したとしても、このバリや糸状の切削屑を容易に除去できる。
【0033】
請求項2に記載の発明によれば、簡単な形状のスペーサ部材を用いて環状溝を形成できる。
【0034】
請求項3、請求項4に記載の発明によれば、空隙保持部材又は電気抵抗調整層の端面部に環状段差部を設けることにより環状溝を形成できるので、スペーサ部材を用いる必要がなく、部品点数の増加を図ることなく環状溝を形成できる。
【0035】
請求項5に記載の発明も、請求項3、請求項4に記載の発明と同様の効果を奏する。
【0036】
請求項6又は請求項7に記載の発明によれば、バリや糸状の切り屑そのものの発生を軽減できるので、バリや糸状の切り屑の除去作業の軽減化を図ることができる。
【0037】
請求項8に記載に発明によれば、バリや糸状の切り屑に起因する画像形成不良を避けることができる帯電部材を得ることができる。
【0038】
請求項9に記載の発明によれば、バリや糸状の切り屑に起因する画像形成不良を避けることができるプロセスカートリッジを提供できる。
【0039】
請求項10に記載の発明によれば、バリや糸状の切り屑に起因する画像形成不良を避けることができ、画像むらのない高品質の画像を得ることのできる画像形成装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明に係わる導電性部材の発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0041】
図7は本発明に係わる導電性部材としての帯電部材(帯電ローラ)20の実施例を説明するための模式図である。この図7において、21は軸部材をなす長尺状の導電性支持体、22は導電性支持体21の外周面に設けられた電気抵抗調整層、23は電気抵抗調整層22とは異なる材質からなりかつ導電性支持体21の両端部21aにそれぞれ設けられて電気抵抗調整層22の端面部22aに当接される一対の空隙保持部材である。
【0042】
この空隙保持部材23の外周面23bは、感光体ドラム4と当接したときに感光体ドラム4の周面4aと電気抵抗調整層22の外周面22bとの間に一定間隔の空隙Gが形成されるように電気抵抗調整層22の外周面22bに対して高低差が設けられている。
【0043】
この導電性部材20は所定の圧力で感光体ドラム4に当接配置される。この導電性部材20は、その感光体ドラム4の周面4aに対向される対向軸部20’の外径が空隙保持部材23の外径に対して僅かに小径を呈する。空隙保持部材23の外周面23bは感光体ドラム4の表面4aに当接するが、空隙保持部材23と対向軸部20’との間には高低差があるので、電気抵抗調整層22の外周面22bと表面4aとの間には空隙Gが形成される。対向軸部20’と感光体ドラム4の表面4aとの空隙Gの量は、100μm以下であるのが望ましい。
【0044】
空隙保持部材23は予め任意の形状に形成された空隙保持部材材料品を電気抵抗調整層22の両端面部22aに対向するようにして導電性支持体21の両端部21aに挿入する。この際、空隙保持部材23の端面部23aと電気抵抗調整層22の端面部22aあるいは導電性支持体(中心軸(芯軸))21の両端部21aとの間に接着剤を介在させるのが望ましい。
【0045】
その空隙保持部材23は絶縁性材料が好ましく、体積固有抵抗で1013Ω・cm以上であることが望ましい。絶縁性が必要である理由は、感光体ドラム4の基層と空隙保持部材23との間にショート電流が発生するのを無くすためである。空隙保持部材23の材料としては、空隙Gの量を長期間に渡って保持するために、吸湿性及び耐摩耗性の小さい材料が好ましい。また、感光体ドラム4に摺接して摺動するので、感光体ドラム4を傷つけずかつ摩耗させにくい材料であることが望ましい。更に、トナー及びトナー添加剤が付着しにくい材料であることも重要な要素となる。
【0046】
このような条件を満足する空隙保持部材23の材料としては、各種のものが挙げられるが、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレン共重合体(AS、ABS)等の樹脂、或いは、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。ここでは、空隙保持部材23は、このような樹脂を成形加工するにより製作されている。
【0047】
この空隙保持部材23としては、特に、分子量100万以上、HDD60度〜70度、密度が0.96以上の高密度ポリエチレン(PE)が、耐摩耗性が良好で、感光体ドラム4を傷つけず、かつ、摩耗させず、しかも、トナー及びトナー添加剤も付着しにくく、更に成形加工も容易であることから、望ましいということがわかった。
【0048】
電気抵抗調整層22の体積固有抵抗は、106〜109Ω・cmであることが望ましい。体積固有抵抗が109Ω・cmを超えると、帯電能力や転写能力が不足し、電気抵抗調整層22の体積固有抵抗が、106Ω・cm未満であると、感光体ドラム4全体への電圧集中によりリークが生じる。
【0049】
これに対して、電気抵抗調整層22の体積固有抵抗が106〜109Ωcmであると十分な帯電能力と転写能力とを確保でき、感光体ドラム4全体への電圧集中に起因する異常放電の発生を防止でき、均一な画像を得ることができる。
【0050】
電気抵抗調整層22に用いる樹脂は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレン共重合体(AS、ABS)等の樹脂、或いは、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は加工性が良いので好ましい。
【0051】
このような樹脂に分散させる高分子型イオン導電剤としては、ポリエーテルエステルアミドを含有する高分子化合物が好ましい。ポリエーテルエステルアミドはイオン導電性の高分子材料であるので、マトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化される。
【0052】
従って、金属酸化物、カーボンブラック等の電子伝導系の導電剤を分散した樹脂組成物に見られるような分散不良に起因する電気抵抗値のバラツキを抑制できる。また、ポリエステルエーテルアミドは高分子材料なので、ブリードアウトが生じ難い。電気抵抗値を所望の値に設定するには、熱可塑性樹脂が30重量%〜70重量%、高分子型イオン導電剤が70重量%〜30重量%の配合比とすることが望ましい。
【0053】
これらの配合比によって、樹脂組成物を生成する方法には特に制限はなく、各樹脂材料の混合物を二軸混練機やニーダー等を用いて溶融状態で混練することによって作製する。
【0054】
例えば、導電性支持体21としてはステンレスからなる芯軸を用いる。この芯軸の胴部の外径は10mmであり、両端部21aの外径は6mmである。なお、この両端部21aは軸受け部に支承されるものである。
【0055】
この芯軸の外周面に芯軸の長手方向の幅が318mmの電気抵抗調整層22を射出成形により形成した。この電気抵抗調整層22の形成に用いる樹脂組成物としては以下に説明する樹脂材料を用いた。
【0056】
その樹脂組成物を形成する樹脂材料には、ここでは、ABS樹脂(デンカABS GR−0500(商品名)、電気化学工業株式会社製)とポリエステルエーテルアミド(IRGASTAT P18(商品名)、チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)とを用い、これらの配合量を50重量%づつとした。また、樹脂組成物の体積固有抵抗は2.1×
108Ωcmである。
【0057】
ついで、その樹脂組成物の長手方向の両端面部を適宜の長さに研削し、図7に示すようにこの電気抵抗調整層22の両端面部22aに、非加工領域を形成するために環状溝24を構成するリング状のスペーサ部材25が当接するようにして芯軸の両端部21aに装着した。ついで、電気抵抗調整層22を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料からなるリング状の空隙保持部材23をスペーサ部材25の端面に当接するようにして装着した。なお、スペーサ部材25には、外径11.90mm、幅1.5mmのものを用いた。
【0058】
その空隙保持部材23の材料には高密度ポリエチレン樹脂(ノバティックHY54(商品名)、日本ポリケム株式会社製)を用いた。そのスペーサ部材25と空隙保持部材23とは芯軸の両端部21aと接着した。
【0059】
ついで、図5に示す研削バイト14を用いて空隙保持部材23、電気抵抗調整層22の外周面を、導電性支持体21を回転させながら導電性支持体21の一方から他方に向かって切削、研削して、要求される寸法径、表面精度を有する導電性部材を作製した。
【0060】
その空隙保持部材23の外径は12.12mm、電気抵抗調整層22の外径は12.00mmとした。
【0061】
研削バイト14には、先端ノーズがr3mmの多結晶焼結ダイヤモンドバイトを用いた。導電性支持体21の回転数は3000rpmとし、研削バイト14の送り量は0.2mm/revとした。
【0062】
その結果、電気抵抗調整層22の各端面部22aと各空隙保持部材23の端面部23aとの間の境界部である環状溝24に図6に示すバリや糸状の研削屑15の残存は生じなかった。
【0063】
これは、環状溝24が電気抵抗調整層22の端面部22aと空隙保持部材23の端面部23aとの間に存在し、環状溝24を構成するスペーサ部材25の存在により研削されない非加工領域が生じるので、たとえバリや糸状の屑が電気抵抗調整層22の端面部22aと空隙保持部材の端面部23aに切削中に生じたとしても、その生じたバリや糸状の屑15が導電性支持体21の回転中に跳ね飛ばされて除去されるからであると考えられる。
【0064】
そのスペーサ部材25は必ずしも設ける必要はなく、図8に示すように電気抵抗調整層22の端面部22aに環状段差部22cを形成することによって環状溝24を形成しても良く、また、図9に示すように空隙保持部材23の端面部23aに環状段差部23cを形成することによって、環状溝24を形成しても良い。
【0065】
更には、図10に示すように環状溝24を空隙保持部材23の端面部23aに形成された環状段差部23cと電気抵抗調整層22の端面部22aに形成された環状段差部22cとの突き合わせによって構成しても良い。
【0066】
また、図11に示すように、環状溝24を構成する電気抵抗調整層22の端面部22aに円弧状の面取り部22d又は60度以下の角度の面取り部22dを形成しても良い。更には、図11、図12に示すように環状溝24を構成する空隙保持部材23の端面部23aに円弧状の面取り部23d又は60度以下の角度の面取り部23dを形成しても良い。
【0067】
この図10〜図12には、角度60度以下の面取り部22d、23dを端面部22a、23aに形成した例が示されている。
【0068】
この導電性部材20は帯電部材として用いることができ、この帯電部材をプロセスカートリッジに組み込み、このプロセスカートリッジを画像形成装置に組み込んで用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】従来及び本発明に係わる画像形成装置の説明図である。
【図2】プロセスカートリッジを有する画像形成装置の説明図である。
【図3】従来の導電部材の一例を示す断面図である。
【図4】本発明に係わる導電性部材と感光体ドラムとの位置関係を説明するための図である。
【図5】従来の導電性部材の製作過程の説明図であって、切削工程を示す部分拡大断面図である。
【図6】図5に示す切削過程で生じる糸状の切り屑を示す部分拡大断面図である。
【図7】本発明に係わる導電性部材の一例を示す部分拡大断面図である。
【図8】本発明に係わる導電性部材の他の例を示す部分拡大断面図であって、電気抵抗調整層の端面部に環状段差部を構成することにより環状溝を形成した例を示す図である。
【図9】本発明に係わる導電性部材の他の例を示す部分拡大断面図であって、空隙保持部材の端面部に環状段差部を構成することにより環状溝を形成した例を示す図である。
【図10】本発明に係わる導電性部材の他の例を示す部分拡大断面図であって、電気抵抗調整層の端面部と空隙保持部材の端面部とに環状段差部を構成することにより環状溝を形成した例を示す図である。
【図11】図10に示す電気抵抗調整層の端面部と空隙保持部材の端面部とに面取りを行った例を示す説明図である。
【図12】図9に示す空隙保持部材の端面部に面取りを行った例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0070】
20…導電性部材
21…導電性支持体
22…電気抵抗調整層
23…空隙保持部材
22a、23a…端面部
24…環状溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性部材及びこの導電性部材を用いた帯電部材及びこの帯電部材を用いたプロセスカートリッジ及びこのプロセスカートリッジを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置には、感光体ドラム(像担持体)に対して帯電処理を行う帯電部材や、感光体ドラム上のトナーに対して転写処理を行う転写部材として導電性部材が用いられている。
【0003】
図1は画像形成装置の模式図を示したものであり、画像形成装置1は、静電潜像が形成される像担持体としての感光体ドラム4と、感光体ドラム4に対して帯電処理を行う帯電部材としての帯電ローラ2と、帯電ローラ2に電圧を印加するためのパワーパック(電圧印加源)3と、感光体ドラム4の表面電位を測定する表面電位計5と、感光体ドラム4の静電潜像にトナーを固着させる現像ローラ6と、感光体ドラム4上のトナー像を記録紙Sに転写処理する転写ローラ7と、転写処理後の感光体ドラム4をクリーニングするクリーニング装置8とを備えている。なお、図2に示すように、感光体ドラム4、帯電ローラ2、現像ローラ6、クリーニング装置8を一括して有するプロセスカートリッジ9が画像形成装置1内に設置される場合もある。そのプロセスカートリッジ9としては、少なくとも感光体ドラム4と帯電ローラ2とを有していれば良く、画像形成装置の所定箇所に着脱可能に装着される。
【0004】
帯電ローラ2はパワーパック3から電源供給を受け、感光体ドラム4を所望の電位に帯電させる。なお、その帯電ローラ2による帯電メカニズムは帯電ローラ2と感光体ドラム4との間の微小空間におけるパッシェンの法則に従った放電であることが知られている。感光体ドラム4は図示を略す駆動機構により矢印A方向に回転する。表面電位計5はその回転方向に沿って帯電ローラ2の直後に設けられ、感光体ドラム4の表面4aの電位を測定する。
【0005】
現像ローラ6は帯電した感光体ドラム4にトナーを付着させ、転写ローラ7は感光体ドラム4に付着したトナーを記録紙Sに転写する。クリーニング装置8は感光体ドラム4に残留したトナーを除去し、感光体ドラム4をクリーニングする。
【0006】
この画像形成装置1による画像形成過程では、まず、帯電ローラ2により感光体ドラム4の表面4aが一様に負の高電位に帯電される。
【0007】
続いて、その表面4aが露光される。その表面4aの露光された部分はその電位が低下する。この露光Lにより表面4aの各電位が受光量に応じた電位分布となり、これにより、静電潜像がその表面4aに形成される。
【0008】
感光体ドラム4が回転して、その表面4aの静電潜像が形成された部分が現像ローラ6を通過すると、表面4aには電位分布に応じたトナーが付着して静電潜像がトナー像として可視化される。記録紙Sはレジストローラ(図示を略す)によって所定のタイミングで感光体ドラム4に向かって給送され、そのトナー像は転写ローラ7により記録紙Sに転写される。その記録紙Sは図示を略す定着ユニットに向かって矢印B方向に搬送される。
【0009】
一方、転写後、感光体ドラム4は、表面4aに残留するトナーがクリーニング装置8により除去されてクリーニングされると共に、図示を略すクエンチングランプにより電荷が除去されて次回の作像処理に移行する。
【0010】
上記の画像形成装置1における一般的な帯電方式として帯電ローラ2を感光体ドラム4に接触させる接触帯電方式が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0011】
しかしながら、接触帯電方式からなる帯電ローラ2を用いた場合には、以下に掲げるような問題がある。
(1)帯電ローラの構成物質が帯電ローラから染み出して感光体ドラムの表面に付着し、この固着が進行すると、感光体ドラムの表面に帯電ローラの跡が残る。
(2)帯電ローラ2に交流電圧を印加した際に、感光体ドラムに接触している帯電ローラが振動して帯電音が発生する。
(3)感光体ドラムの表面のトナーが帯電ローラに固着して帯電性能が低下する。特に、帯電ローラにおいて(1)の染み出しが生じると、トナーが一層付着し易くなる。
(4)帯電ローラを構成している物質が感光体に固着し易い。
(5)感光体ドラムを長期間駆動しないと、帯電ローラに永久変形が生じる。
【0012】
このような問題に対処するために、帯電ローラ2を感光体ドラム4に接触するのではなく近接させる近接帯電方式が考案されている(特許文献3〜特許文献5等参照)。
【0013】
この近接帯電方式は、帯電ローラ2と感光体ドラム4との最近接距離(以下、空隙という)が50μm〜300μmとなるように両者を対向させ、帯電ローラ2に電圧を印加して感光体ドラム4の帯電を行うものである。
【0014】
近接帯電方式では、帯電ローラ2と感光体ドラム4とが接触していないので、接触帯電方式で問題となる「帯電ローラの構成物質の感光体ドラムへの付着」、及び「長期間の不使用により生じる帯電ローラの永久変形」は問題とはならない。また、「トナーの固着による帯電ローラの帯電性能の低下」についても、帯電ローラに付着するトナーがすくなるため、近接帯電方式が優れている。
【特許文献1】特開昭63−149668号公報
【特許文献2】特開平1−267667号公報
【特許文献3】特開2003−330249号公報
【特許文献4】特開2003−337464号公報
【特許文献5】特開2004−354477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この種の近接帯電方式に用いる帯電ローラ10は、図3に示すように、例えば、以下に説明する工程を経て製作される。まず、図3に示す軸部材をなす長尺状の導電性支持体11を準備し、ついで、押し出し成形、射出成形等の手段を用いて半導電性樹脂組成物からなる電気抵抗調整層12を導電性支持体11の外周面11aを被覆するようにしてその導電性支持体11に形成する。ついで、その電気抵抗調整層12が所定の長さとなるようにその電気抵抗調整層12の端面部を切削する。
【0016】
ついで、感光体ドラム4の表面4aと電気抵抗調整層12との空隙を形成するための一対の空隙保持部材13を電気抵抗調整層12の両端面部に当接するようにして導電性支持体11に装着する。
【0017】
そして、電気抵抗調整層12と感光体ドラム4との空隙G(図4参照)が導電性支持体11の長手方向に沿って一定に保たれるように、切削バイト等の切削工具によって空隙保持部材13、電気抵抗調整層12の外周面を切削、研削して、要求される寸法径、表面精度を有する導電性部材としての帯電ローラ10を作製している。
【0018】
すなわち、図5に示すように、導電性支持体11を回転させながら切削工具14を導電性支持体11の長手方向に沿って移送することにより、一方の空隙保持部材13から電気抵抗調整層12を経て他方の空隙保持部材13に向かって連続してその外周面12bを切削している。
【0019】
ところが、その切削加工の際に、空隙保持部材13と電気抵抗調整層12との間で、図6に示すようにバリや糸状の切り屑15が生じ、これらが空隙保持部材13と電気抵抗調整層12との境界部、特に空隙保持部材13の端面部13aと電気抵抗調整層12の端面部12aとの微細な隙間Hに入り込んで残存するという問題がある。このバリや糸状の切り屑15は、微細な隙間Hに入り込んでいるので除去することが困難である。
【0020】
このバリや糸状の切り屑15が残存する導電性部材10を例えば画像形成装置に組み込んだ場合、バリや糸状の切り屑15が何らかの加減で、空隙保持部材13と電気抵抗調整層12との微細な隙間Hから電気抵抗調整層12の表面に露呈すると、導電性部材10と感光体ドラム4との空隙Gが一定に確保されないために、帯電電位が一様に保たれず、画像むらが発生するおそれがあり、ひいては、高品質の画像を得るための障害となるおそれがある。
【0021】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、空隙保持部材と電気抵抗調整層との境界部にバリや糸状の切り屑が残留するのを極力回避でき、画像形成に支障が生じるのを避けることができる導電性部材及びこの導電性部材を用いた帯電部材及びこの帯電部材を用いたプロセスカートリッジ及びこのプロセスカートリッジを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
請求項1に記載の導電性部材は、軸部材をなす長尺状の導電性支持体と、該導電性支持体の外周面に設けられた電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と異なる材質からなりかつ前記導電性支持体の両端部に設けられて前記電気抵抗調整層の端面部に対向される一対の空隙保持部材とを備え、該空隙保持部材の外周面は像担持体と当接したときに該像担持体の周面と前記電気抵抗調整層の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように前記電気抵抗調整層の外周面に対して高低差が設けられている導電性部材において、前記電気抵抗調整層の各端面部と前記各空隙保持部材の端面部との間に非加工領域を形成するための環状溝が形成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項2に記載の導電性部材は、前記環状溝が前記電気抵抗調整層の各端面部と前記空隙保持部材の端面部との間に介装されたスペーサ部材によって構成されていることを特徴とする。
【0024】
請求項3に記載の導電性部材は、前記環状溝が前記電気抵抗調整層の端面部に形成された環状段差部によって構成されていることを特徴とする。
【0025】
請求項4に記載の導電性部材は、前記環状溝が前記空隙保持部材の端面部に形成された環状段差部によって構成されていることを特徴とする。
【0026】
請求項5に記載の導電性部材は、前記環状溝が前記空隙保持部材の端面部に形成された環状段差部と前記電気抵抗調整層の端面部に形成された環状段差部との突き合わせによって構成されていることを特徴とする。
【0027】
請求項6に記載の導電性部材は、前記環状溝を構成する前記電気抵抗調整層の端面部が円弧状の面取り又は60度以下の角度の面取りがされていることを特徴とする。
【0028】
請求項7に記載の導電性部材は、前記環状溝を構成する前記空隙保持部材の端面部が円弧状の面取り又は60度以下の角度の面取りがされていることを特徴とする。
【0029】
請求項8に記載の帯電部材は、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の導電性部材からなることを特徴とする。
【0030】
請求項9に記載のプロセスカートリッジは、請求項8に記載の帯電部材を有することを特徴とする。
【0031】
請求項10に記載の画像形成装置は、請求項9に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
請求項1に記載の発明によれば、空隙保持部材の端面部と電気抵抗調整層の端面部との間に環状溝を形成したので、バリや糸状の切削屑が発生したとしても、空隙保持部材の端面部と電気抵抗調整層の端面部との隙間に入り込むのを防止でき、また、たとえ、バリや糸状の切削屑が空隙保持部材の端面部と電気抵抗調整層の端面部との間の境界部付着したとしても、このバリや糸状の切削屑を容易に除去できる。
【0033】
請求項2に記載の発明によれば、簡単な形状のスペーサ部材を用いて環状溝を形成できる。
【0034】
請求項3、請求項4に記載の発明によれば、空隙保持部材又は電気抵抗調整層の端面部に環状段差部を設けることにより環状溝を形成できるので、スペーサ部材を用いる必要がなく、部品点数の増加を図ることなく環状溝を形成できる。
【0035】
請求項5に記載の発明も、請求項3、請求項4に記載の発明と同様の効果を奏する。
【0036】
請求項6又は請求項7に記載の発明によれば、バリや糸状の切り屑そのものの発生を軽減できるので、バリや糸状の切り屑の除去作業の軽減化を図ることができる。
【0037】
請求項8に記載に発明によれば、バリや糸状の切り屑に起因する画像形成不良を避けることができる帯電部材を得ることができる。
【0038】
請求項9に記載の発明によれば、バリや糸状の切り屑に起因する画像形成不良を避けることができるプロセスカートリッジを提供できる。
【0039】
請求項10に記載の発明によれば、バリや糸状の切り屑に起因する画像形成不良を避けることができ、画像むらのない高品質の画像を得ることのできる画像形成装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明に係わる導電性部材の発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0041】
図7は本発明に係わる導電性部材としての帯電部材(帯電ローラ)20の実施例を説明するための模式図である。この図7において、21は軸部材をなす長尺状の導電性支持体、22は導電性支持体21の外周面に設けられた電気抵抗調整層、23は電気抵抗調整層22とは異なる材質からなりかつ導電性支持体21の両端部21aにそれぞれ設けられて電気抵抗調整層22の端面部22aに当接される一対の空隙保持部材である。
【0042】
この空隙保持部材23の外周面23bは、感光体ドラム4と当接したときに感光体ドラム4の周面4aと電気抵抗調整層22の外周面22bとの間に一定間隔の空隙Gが形成されるように電気抵抗調整層22の外周面22bに対して高低差が設けられている。
【0043】
この導電性部材20は所定の圧力で感光体ドラム4に当接配置される。この導電性部材20は、その感光体ドラム4の周面4aに対向される対向軸部20’の外径が空隙保持部材23の外径に対して僅かに小径を呈する。空隙保持部材23の外周面23bは感光体ドラム4の表面4aに当接するが、空隙保持部材23と対向軸部20’との間には高低差があるので、電気抵抗調整層22の外周面22bと表面4aとの間には空隙Gが形成される。対向軸部20’と感光体ドラム4の表面4aとの空隙Gの量は、100μm以下であるのが望ましい。
【0044】
空隙保持部材23は予め任意の形状に形成された空隙保持部材材料品を電気抵抗調整層22の両端面部22aに対向するようにして導電性支持体21の両端部21aに挿入する。この際、空隙保持部材23の端面部23aと電気抵抗調整層22の端面部22aあるいは導電性支持体(中心軸(芯軸))21の両端部21aとの間に接着剤を介在させるのが望ましい。
【0045】
その空隙保持部材23は絶縁性材料が好ましく、体積固有抵抗で1013Ω・cm以上であることが望ましい。絶縁性が必要である理由は、感光体ドラム4の基層と空隙保持部材23との間にショート電流が発生するのを無くすためである。空隙保持部材23の材料としては、空隙Gの量を長期間に渡って保持するために、吸湿性及び耐摩耗性の小さい材料が好ましい。また、感光体ドラム4に摺接して摺動するので、感光体ドラム4を傷つけずかつ摩耗させにくい材料であることが望ましい。更に、トナー及びトナー添加剤が付着しにくい材料であることも重要な要素となる。
【0046】
このような条件を満足する空隙保持部材23の材料としては、各種のものが挙げられるが、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレン共重合体(AS、ABS)等の樹脂、或いは、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。ここでは、空隙保持部材23は、このような樹脂を成形加工するにより製作されている。
【0047】
この空隙保持部材23としては、特に、分子量100万以上、HDD60度〜70度、密度が0.96以上の高密度ポリエチレン(PE)が、耐摩耗性が良好で、感光体ドラム4を傷つけず、かつ、摩耗させず、しかも、トナー及びトナー添加剤も付着しにくく、更に成形加工も容易であることから、望ましいということがわかった。
【0048】
電気抵抗調整層22の体積固有抵抗は、106〜109Ω・cmであることが望ましい。体積固有抵抗が109Ω・cmを超えると、帯電能力や転写能力が不足し、電気抵抗調整層22の体積固有抵抗が、106Ω・cm未満であると、感光体ドラム4全体への電圧集中によりリークが生じる。
【0049】
これに対して、電気抵抗調整層22の体積固有抵抗が106〜109Ωcmであると十分な帯電能力と転写能力とを確保でき、感光体ドラム4全体への電圧集中に起因する異常放電の発生を防止でき、均一な画像を得ることができる。
【0050】
電気抵抗調整層22に用いる樹脂は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリスチレン共重合体(AS、ABS)等の樹脂、或いは、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は加工性が良いので好ましい。
【0051】
このような樹脂に分散させる高分子型イオン導電剤としては、ポリエーテルエステルアミドを含有する高分子化合物が好ましい。ポリエーテルエステルアミドはイオン導電性の高分子材料であるので、マトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化される。
【0052】
従って、金属酸化物、カーボンブラック等の電子伝導系の導電剤を分散した樹脂組成物に見られるような分散不良に起因する電気抵抗値のバラツキを抑制できる。また、ポリエステルエーテルアミドは高分子材料なので、ブリードアウトが生じ難い。電気抵抗値を所望の値に設定するには、熱可塑性樹脂が30重量%〜70重量%、高分子型イオン導電剤が70重量%〜30重量%の配合比とすることが望ましい。
【0053】
これらの配合比によって、樹脂組成物を生成する方法には特に制限はなく、各樹脂材料の混合物を二軸混練機やニーダー等を用いて溶融状態で混練することによって作製する。
【0054】
例えば、導電性支持体21としてはステンレスからなる芯軸を用いる。この芯軸の胴部の外径は10mmであり、両端部21aの外径は6mmである。なお、この両端部21aは軸受け部に支承されるものである。
【0055】
この芯軸の外周面に芯軸の長手方向の幅が318mmの電気抵抗調整層22を射出成形により形成した。この電気抵抗調整層22の形成に用いる樹脂組成物としては以下に説明する樹脂材料を用いた。
【0056】
その樹脂組成物を形成する樹脂材料には、ここでは、ABS樹脂(デンカABS GR−0500(商品名)、電気化学工業株式会社製)とポリエステルエーテルアミド(IRGASTAT P18(商品名)、チバスペシャリティケミカルズ株式会社製)とを用い、これらの配合量を50重量%づつとした。また、樹脂組成物の体積固有抵抗は2.1×
108Ωcmである。
【0057】
ついで、その樹脂組成物の長手方向の両端面部を適宜の長さに研削し、図7に示すようにこの電気抵抗調整層22の両端面部22aに、非加工領域を形成するために環状溝24を構成するリング状のスペーサ部材25が当接するようにして芯軸の両端部21aに装着した。ついで、電気抵抗調整層22を構成する樹脂材料とは異なる樹脂材料からなるリング状の空隙保持部材23をスペーサ部材25の端面に当接するようにして装着した。なお、スペーサ部材25には、外径11.90mm、幅1.5mmのものを用いた。
【0058】
その空隙保持部材23の材料には高密度ポリエチレン樹脂(ノバティックHY54(商品名)、日本ポリケム株式会社製)を用いた。そのスペーサ部材25と空隙保持部材23とは芯軸の両端部21aと接着した。
【0059】
ついで、図5に示す研削バイト14を用いて空隙保持部材23、電気抵抗調整層22の外周面を、導電性支持体21を回転させながら導電性支持体21の一方から他方に向かって切削、研削して、要求される寸法径、表面精度を有する導電性部材を作製した。
【0060】
その空隙保持部材23の外径は12.12mm、電気抵抗調整層22の外径は12.00mmとした。
【0061】
研削バイト14には、先端ノーズがr3mmの多結晶焼結ダイヤモンドバイトを用いた。導電性支持体21の回転数は3000rpmとし、研削バイト14の送り量は0.2mm/revとした。
【0062】
その結果、電気抵抗調整層22の各端面部22aと各空隙保持部材23の端面部23aとの間の境界部である環状溝24に図6に示すバリや糸状の研削屑15の残存は生じなかった。
【0063】
これは、環状溝24が電気抵抗調整層22の端面部22aと空隙保持部材23の端面部23aとの間に存在し、環状溝24を構成するスペーサ部材25の存在により研削されない非加工領域が生じるので、たとえバリや糸状の屑が電気抵抗調整層22の端面部22aと空隙保持部材の端面部23aに切削中に生じたとしても、その生じたバリや糸状の屑15が導電性支持体21の回転中に跳ね飛ばされて除去されるからであると考えられる。
【0064】
そのスペーサ部材25は必ずしも設ける必要はなく、図8に示すように電気抵抗調整層22の端面部22aに環状段差部22cを形成することによって環状溝24を形成しても良く、また、図9に示すように空隙保持部材23の端面部23aに環状段差部23cを形成することによって、環状溝24を形成しても良い。
【0065】
更には、図10に示すように環状溝24を空隙保持部材23の端面部23aに形成された環状段差部23cと電気抵抗調整層22の端面部22aに形成された環状段差部22cとの突き合わせによって構成しても良い。
【0066】
また、図11に示すように、環状溝24を構成する電気抵抗調整層22の端面部22aに円弧状の面取り部22d又は60度以下の角度の面取り部22dを形成しても良い。更には、図11、図12に示すように環状溝24を構成する空隙保持部材23の端面部23aに円弧状の面取り部23d又は60度以下の角度の面取り部23dを形成しても良い。
【0067】
この図10〜図12には、角度60度以下の面取り部22d、23dを端面部22a、23aに形成した例が示されている。
【0068】
この導電性部材20は帯電部材として用いることができ、この帯電部材をプロセスカートリッジに組み込み、このプロセスカートリッジを画像形成装置に組み込んで用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】従来及び本発明に係わる画像形成装置の説明図である。
【図2】プロセスカートリッジを有する画像形成装置の説明図である。
【図3】従来の導電部材の一例を示す断面図である。
【図4】本発明に係わる導電性部材と感光体ドラムとの位置関係を説明するための図である。
【図5】従来の導電性部材の製作過程の説明図であって、切削工程を示す部分拡大断面図である。
【図6】図5に示す切削過程で生じる糸状の切り屑を示す部分拡大断面図である。
【図7】本発明に係わる導電性部材の一例を示す部分拡大断面図である。
【図8】本発明に係わる導電性部材の他の例を示す部分拡大断面図であって、電気抵抗調整層の端面部に環状段差部を構成することにより環状溝を形成した例を示す図である。
【図9】本発明に係わる導電性部材の他の例を示す部分拡大断面図であって、空隙保持部材の端面部に環状段差部を構成することにより環状溝を形成した例を示す図である。
【図10】本発明に係わる導電性部材の他の例を示す部分拡大断面図であって、電気抵抗調整層の端面部と空隙保持部材の端面部とに環状段差部を構成することにより環状溝を形成した例を示す図である。
【図11】図10に示す電気抵抗調整層の端面部と空隙保持部材の端面部とに面取りを行った例を示す説明図である。
【図12】図9に示す空隙保持部材の端面部に面取りを行った例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0070】
20…導電性部材
21…導電性支持体
22…電気抵抗調整層
23…空隙保持部材
22a、23a…端面部
24…環状溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材をなす長尺状の導電性支持体と、該導電性支持体の外周面に設けられた電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と異なる材質からなりかつ前記導電性支持体の両端部に設けられて前記電気抵抗調整層の端面部に対向される一対の空隙保持部材とを備え、該空隙保持部材の外周面は像担持体と当接したときに該像担持体の周面と前記電気抵抗調整層の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように前記電気抵抗調整層の外周面に対して高低差が設けられている導電性部材において、
前記電気抵抗調整層の各端面部と前記各空隙保持部材の端面部との間に、非加工領域を形成するための環状溝が形成されていることを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記環状溝が前記電気抵抗調整層の各端面部と前記空隙保持部材の端面部との間に介装されたスペーサ部材によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記環状溝が前記電気抵抗調整層の端面部に形成された環状段差部によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記環状溝が前記空隙保持部材の端面部に形成された環状段差部によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記環状溝が前記空隙保持部材の端面部に形成された環状段差部と前記電気抵抗調整層の端面部に形成された環状段差部との突き合わせによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記環状溝を構成する前記電気抵抗調整層の端面部が円弧状の面取り又は60度以下の角度の面取りがされていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項7】
前記環状溝を構成する前記空隙保持部材の端面部が円弧状の面取り又は60度以下の角度の面取りがされていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の導電性部材からなる帯電部材。
【請求項9】
請求項8に記載の帯電部材を有するプロセスカートリッジ。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスカートリッジを有する画像形成装置。
【請求項1】
軸部材をなす長尺状の導電性支持体と、該導電性支持体の外周面に設けられた電気抵抗調整層と、該電気抵抗調整層と異なる材質からなりかつ前記導電性支持体の両端部に設けられて前記電気抵抗調整層の端面部に対向される一対の空隙保持部材とを備え、該空隙保持部材の外周面は像担持体と当接したときに該像担持体の周面と前記電気抵抗調整層の外周面との間に一定間隔の空隙が形成されるように前記電気抵抗調整層の外周面に対して高低差が設けられている導電性部材において、
前記電気抵抗調整層の各端面部と前記各空隙保持部材の端面部との間に、非加工領域を形成するための環状溝が形成されていることを特徴とする導電性部材。
【請求項2】
前記環状溝が前記電気抵抗調整層の各端面部と前記空隙保持部材の端面部との間に介装されたスペーサ部材によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記環状溝が前記電気抵抗調整層の端面部に形成された環状段差部によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記環状溝が前記空隙保持部材の端面部に形成された環状段差部によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記環状溝が前記空隙保持部材の端面部に形成された環状段差部と前記電気抵抗調整層の端面部に形成された環状段差部との突き合わせによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記環状溝を構成する前記電気抵抗調整層の端面部が円弧状の面取り又は60度以下の角度の面取りがされていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項7】
前記環状溝を構成する前記空隙保持部材の端面部が円弧状の面取り又は60度以下の角度の面取りがされていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の導電性部材からなる帯電部材。
【請求項9】
請求項8に記載の帯電部材を有するプロセスカートリッジ。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスカートリッジを有する画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−140021(P2007−140021A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332545(P2005−332545)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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