説明

導電性部材

【課題】帯電ローラの表面形状をクラウン化する方法としては、芯材の表面にプライマーと呼ばれる接着剤を塗布した後、導電性弾性体層を成形、加硫した後に研磨によって形状を整える方法がとられる。この方法は弾性ローラを成形する工程に加え、後工程として研磨工程が必要であるためにコストアップにつながり、また、表面が荒れる、研磨粉を除去する工程が必要になるなどの課題がある。
【解決手段】外径が両端部から中央部に向かって漸次増大するクラウン形状の導電性芯材の外周に、少なくとも導電性弾性体層を含む層構造を有する導電性部材であって、該芯材の外周に沿うよう略均厚の導電性弾性体層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザプリンター、ファクシミリ、これらの複合OA機器等の電子写真装置に用いられる導電性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属製芯材の外周に導電性弾性体層を形成したゴムローラは、前記OA機器の部品として数多く使用されている。例えば、感光ドラム表面を帯電させる帯電ローラ、感光ドラム表面のトナーを用紙に転写させる転写ローラなどがあげられる。帯電ローラは、通常その両端部に荷重をかけた状態で感光ドラムに加圧接触するものであり、帯電ローラは図5に示したように、中実の導電性芯材200の外周に導電性弾性体層210を形成し、更に該導電性弾性体層の外周に表面層220を形成したものである。通常ゴムのポアソン比の関係上、ニップ(接触幅)を該帯電ローラ両端部で大きく中央部で小さくしており、帯電ローラの表面形状をクラウン化することが多い。
【0003】
【特許文献1】特開平6−242659号公報
【特許文献2】特開平10−048915号公報
【特許文献3】特開2004−145012号公報
【特許文献4】特開2005−208280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、帯電ローラの表面形状をクラウン化する方法としては、芯材の表面にプライマーと呼ばれる接着剤を塗布した後、導電性弾性体層を成形・加硫した後に、研磨によって形状を整える方法がとられる。この方法は弾性ローラを成形する工程に加え、後工程として研磨工程が必要であるためにコストアップにつながり、また、表面が荒れる、研磨粉を除去する工程が必要になるなどの課題がある。
特許文献1ではクラウン状の芯材に、ゴム材料の収縮特性を利用してクラウン化する方法が提案されている。しかしながらこの方法ではゴム部の肉厚が端部と中央部で異なっているために、弾性体層に硬度差が生じ、画質に影響を及ぼすという欠点がある。また、成形方法として軸体を配置した円筒金型の内面にゴムを流し込むいわゆる注型方式を採用しており、連続的に成形することができないため生産性が悪いという欠点がある。
【0005】
特許文献2ではクラウン状の芯材の外周に、弾性体の外径が略均一となるように弾性層を形成し、該弾性層の厚みを端部と中央部で異ならせることにより、ニップ分布を均一にする方法が開示されている。しかしながら導電性弾性体層の収縮の差により、導電性弾性体層の外径を均一にすることは非常に困難である。
【0006】
特許文献3では押出成形方法を用いてゴムローラを成形する際、軸方向のゴム付着量を制御することにより、ゴム層をクラウン形状にするOAローラの製造方法が開示されている。しかしながら、押出成形機でゴム材料の吐出量を可変させるためには、高精度な制御システムが必要で、またシャフトの引取り速度を可変させるためには高精度な制御システムが必要であり、これらの製造設備は高額であるためゴムローラのコストアップを招くという問題がある。
【0007】
特許文献4では押出成形した未加硫のチューブ状弾性体に対して凹レンズ形状の型付部材を押圧することでクラウン形状に成形することが開示されている。しかし、この方法では加硫させる間、型付部材を回転/押圧する必要があり、本ローラを製造する設備が大きく高額になるため、ゴムローラのコストアップを招くというという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
外径が両端部から中央部に向かって漸次増大するクラウン形状の導電性芯材の外周に、少なくとも導電性弾性体層を含む層構造を有する導電性部材であって、該芯材の外周に沿うよう略均厚の導電性弾性体層を形成ことが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明を用いることで、研磨工程が不要になり、導電性弾性体層表面が荒れることもなく、研磨粉を除去することも不要で、ゴムローラのコストダウンができるという効果を奏する。本発明を以下に詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の帯電部材において、層構造は、導電性弾性体層有していれば特に制限はなく、具体的には例えば、芯材に、少なくとも導電性弾性体層と表面層とを順次積層してなる層構造等があげられる。なお、層構造としては、導電性弾性体層および表面層の他、導電性弾性体層と表面層との間に設けられる中間層、芯材と導電性弾性体層との間に設けられる接着層等、その他の層が設けられていても構わない。また、これら各層は単層からなってもよいし、複数層からなってもよい。本発明においては、これら各層を構成する各種材料や厚みを適宜選択することができる。以下、詳しく説明する。
【0011】
<芯材>
本発明において、芯材としては、鉄、ニッケルメッキ処理鉄、銅、ステンレス等、従来公知の金属を用いることができる。芯材の形状としては、外径が両端部から中央部に向かって漸次増大するクラウン形状が好ましい。クラウン形状の最大径と最小径は、導電性弾性体層の硬度や厚みと、ニップ分布を考慮して適宜決めれば良い。
【0012】
<導電性弾性体層>
本発明において、導電性弾性体層は、導電性を有する弾性体からなるものである。このようなものであれば、特に材料や組成は限定されないが、通常、ベースとなる基材に導電性物質を分散、配合してなる。導電性物質としては、有機イオン導電性物質、カーボンブラック、金属酸化物等があげられる。本発明において、導電性弾性体層に用いられる導電性物質としては、帯電部材における構成層内の抵抗均一性の観点から、特に有機イオン導電性物質が好ましい。
【0013】
有機イオン導電性物質としては、四級アンモニウム塩(例えばラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等)等)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩、各種ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、等があげられる。
【0014】
有機イオン導電性物質としては、多価アルコール(1,4ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)およびその誘導体と金属塩との錯体、モノオール(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等)と金属塩の錯体もあげられる。金属塩としては、例えばLiClO、LiCFSO、LiBF、NaClO、NaSCN、KSCN、NaCl等の周期律表第1族の金属塩;NH+の塩等の電解質;Ca(ClO、Ba(ClO等の周期律表第2族の金属塩;これらに、少なくとも1個以上の水酸基、カルボキシル基、一級ないし二級アミン基等イソシアネートと反応する活性水素を有する基を持ったもの;等があげられる。このような錯体として具体的には、PEL(LiClOとポリエチレングリコールとの錯体)等があげられる。
【0015】
これらの中でも、有機イオン導電性物質としては、基材との相溶性の点から第四級アンモニウム塩が好ましい。この四級アンモニウム塩としては、ブリードを防止する観点から、重量平均分子量(Mw)が100〜600であるものが好ましく、150〜300であるものがより好ましい。また、四級アンモニウム塩としては、ベンゼン環を1つ以上有するものが、ブリードを防止する観点から特に好ましい。
【0016】
好ましい有機イオン導電性物質として、下記一般式(I)で表される四級アンモニウム塩があげられる。
【0017】
【化1】

【0018】
上記式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に水素、または置換基を含んでもよい炭化水素基であり、好ましくは水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または炭素数7〜20のアルキルアリール基である。また、Tは単結合を含む連結基を表し、好ましくは単結合、または、炭素数1〜5のアルキレン基である。
【0019】
以下に、好適な四級アンモニウム塩の具体例を示すが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0020】
【化2】

【0021】
導電性物質として用いられる金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ等があげられる。
【0022】
導電性物質としてカーボンブラックを用いることができるが、特に酸性のカーボンブラックを用いると、一部に過剰な電流が流れ、繰り返しの電圧印加による酸化の影響を受けにくく、さらに、その表面に付着する酸素含有官能基の効果で、基材への分散性が高く、抵抗バラツキを小さくすることができるとともに、電界依存性も小さくなり、通電による電界集中が起きづらくなる。その結果、通電による抵抗変化を防止し、電気抵抗の均一性を改善し、電界依存性が少なく、さらに環境による抵抗の変化の少なく、均一帯電が可能である。このため、カーボンブラックの大きな凝集体に起因する電場集中、絶縁破壊によって発生すると考えられるピンホールリーク等のリーク放電を防止することができ、トナーの固着をも防止することができる。さらに抵抗変化や抵抗のバラツキによる帯電ムラやリーク放電に起因する画質欠陥、環境変動による画像濃度の変動が少なくなり、長期に渡り高画質画像を得ることができる。また、カーボンブラックは、分散性を向上させるためのカップリング処理や、絶縁粒子や金属酸化物等の添加等を行う必要性がなく、製造工程が簡易となる。さらに、カーボンブラックは、電子伝導であるため、イオン導電を利用した、例えばエーテルセグメントを含み像担持体を汚染させる傾向のあるイオン導電性の材料による汚染(ブリード)の問題がない。これにより、特にブリードを防止する層等を設ける必要がなく、同様に製造工程が簡易となる。
【0023】
カーボンブラックとして、酸性のものは、酸素含有官能基(カルボン酸基、水酸基(例えばフェノール水酸基)、ラクトン基、キノイド基などの各官能基などが表面に非常に多いものである。一般にカーボンブラック表面の酸素含有官能基は、炭素だけからなるカーボンブラックに極性を与え、基材(バインダーポリマー)との親和性が向上し、均一に分散することが可能になる。このことはインキ・塗料のような溶剤を含む系では広く認められているが、乾式で混練・分散を行う場合でも成り立っていると推察される。
【0024】
カーボンブラックは、コンタクト法により製造することができる。このコンタクト法としては、チャネル法、ガスブラック法等があげられる。また、カーボンブラックは、ガスまたはオイルを原料とするファーネスブラック法により製造することもできる。必要に応じて、これらの処理を施した後、硝酸などで液相酸化処理を行ってもよい。なお、カーボンブラックは、コンタクト法で製造することができるが、このコンタクト法は大気汚染などの問題から現在ではほとんど生産されておらず、密閉式のファーネス法によって製造するのが通常である。ファーネス法では通常高pH・低揮発分のカーボンブラックしか製造されないが、これに上述の液相酸処理を施してpHを調整することができる。このためファーネス法製造により得られるカーボンブラックで、後工程処理によりpHが6以下となるように調節されたカーボンブラックも、本発明に含まれるとみなす。
【0025】
カーボンブラックとして、具体的には、デグサ社製の「カラーブラックFW200」(pH2.5、揮発分20%)、同「FW2」(pH2.5、揮発分16.5%)、同「FW2V」(pH2.5、揮発分16.5%)、「スペシャルブラック6」(pH2.5、揮発分18%)、同「5」(pH3、揮発分15%)、同「4」(pH3、揮発分14%)、同「4A」(pH3、揮発分14%))、「プリンテックス150T」(pH4、揮発分10%)[これらはチャネル法に似たガスブラック法で製造されえているが、当業界ではチャネルブラックに分類されている];キャボット社の「REGAL
400R」(pH4.0、揮発分3.5%)、同「MONARCH 1000」(pH2.5、揮発分9.5%)、同「MONARCH 1300」(pH2.5、揮発分9.5%)、同「モーグルL」(pH2.5、揮発分4.5%);三菱化学社製「3030B」(pH6.5、揮発分0.5%);等があげられる。
【0026】
導電性物質は、基材中に単独で配合してもかまわないが、任意の2種以上を配合してもよく、弾性体層としての電気抵抗(表面抵抗率、体積抵抗率)の他、力学強度、硬度等のシステム全体としての要求に合致するように配合することができる。導電性物質の基材ヘの配合量としては、システム全体としての要求を満足するように適宜調整すればよいが、基材100重量部に対して、5〜50重量部程度とすることが一般的に好ましい。
【0027】
導電性弾性体層の基材としては、特に制限はなく、従来公知の材料を用いることができるが、例えば、ポリウレタン、塩素化ポリイソプレン、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPM)、水素添加ポリブタジエン、ブチルゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴムなどの弾性材料等があげられる。熱可塑性エラストマー、熱収縮性(熱硬化性)ゴム、発泡性ゴム、上述にあげたようにジエン系に問わず非ジエン系のゴム等も好適に利用するができる。これらは2種以上を配合したアロイ(ブレンド材)として用いることもできる。
【0028】
導電性弾性体層の基材としては、上記の中でもエピクロロヒドリンゴムを主体とするものであることが、ゴム自身の電気的特性(抵抗の均一性、安定性等)の点で好ましい。なお、「エピクロロヒドリンゴムを主体とする」とは、基材成分の主たる成分がエピクロロヒドリンゴムであるのことを指し、基材成分の50重量%以上占めるものは、「主体とする」の概念中に含まれる。
【0029】
導電性弾性体層の基材としては、エピクロロヒドリンゴムを主体としつつ、さらに第2のゴム成分を1〜5重量%含有することが望ましい。第2のゴム成分を含有することで、電気的特性を維持しながら加工性を向上することができる。第2のゴム成分が1重量%未満では、第2のゴム成分を含有することによる効果が得られず、第2のゴム成分が5重量%を超えると、主体成分の電気的特性を阻害する虞がある。第2のゴム成分としては、基材の材料としてあげた既述のゴム材料をいずれもあげることができるが、特に、アクリルゴム、ニトリルブタジエンゴム、及びウレタンゴムから選ばれる少なくとも1種を用いることが、主体成分の電気的特性に影響を与えない点で好ましい。
【0030】
導電性弾性体層には、前記基材、前記導電性物質の他に、必要に応じて、硬化剤、可塑剤、加硫促進剤等を用いてもよい。また、発泡させる場合、適宜発泡剤等も用いることができる。導電性弾性体層の厚みとしては、特に限定されないが、1〜10mm程度とすることが好ましく、2〜5mm程度とすることがより好ましい。
【0031】
導電性弾性体層は、前記基材、前記導電性物質、その他必要に応じて添加されるその他の物質を混練し、コンパウンド化したものを、押出成形などの公知成形法により形成することができる。
【0032】
<表面層>
本発明において、表面層は、抵抗調整のほか、導電性弾性体層からのブリード物のブロッキング、汚染物からの保護等の働きを担う層であり、ベースとなる基材に導電性物質を分散してなるものである。導電性物質としては、有機イオン導電性物質、カーボンブラック、金属酸化物等があげられる。
【0033】
導電性物質としての導電性物質は、導電性弾性体層の項において説明したものと同様のものを用いることができるが、特に表面層にカーボンブラックを用いることが、ブリードを防止する観点から好ましい。
【0034】
前記導電性物質は、基材中に単独で配合してもかまわないが、任意の2種以上を配合してもよく、表面層としての電気抵抗(表面抵抗率、体積抵抗率)の他、力学強度、硬度等のシステム全体としての要求に合致するように配合することができる。導電性物質の基材ヘの配合量としては、システム全体としての要求を満足するように適宜調整すればよいが、基材100重量部に対して、4級アンモニウム塩の場合0.01〜5重量部程度、或いはカーボンブラックの場合20〜200重量部程度とすることが一般的に好ましい。
【0035】
表面層の基材としては、導電性弾性体層の項において説明したものと同様のものを用いることができるが、表面層においては、脂肪族ポリエステル樹脂をメラミン樹脂と架橋反応させてなる熱硬化性樹脂を用いることが、力学的強度に悪影響を与えない点で望ましい。
【0036】
両者の混合割合としては、脂肪族ポリエステル樹脂100重量部に対し、メラミン樹脂を30〜70重量部とすることが好ましく、45〜55重量部とすることがより好ましい。メラミン樹脂を30重量部未満であると架橋が弱まり強度が得られないことがあり、70重量部を超えると硬度が高くなり可とう性が悪化することがあり、それぞれ好ましくない。
【0037】
表面層の基材に前記熱硬化性樹脂を用いた場合、表面層中には、さらにフッ素系高分子化合物および/またはシリコーン系高分子化合物が含有されることが、外周面の汚れを防止する点で望ましい。該フッ素系高分子化合物および/または該シリコーン系高分子化合物としては、粒子径15μm以下の微粒子として含有されることが、耐久性、表面特性の点で望ましい。かかる微粒子の粒子径としては、0.1〜5の範囲内であることがより好ましい。
【0038】
当該フッ素系高分子化合物および/または該シリコーン系高分子化合物の含有量としては、前記熱硬化性樹脂100重量部に対し、5〜200重量部の範囲内とすることが好ましく、15〜75重量部の範囲内とすることがより好ましい。これらの含有量が5重量部未満であると含有させることによる効果が得られず、200重量部を超えると表面粗さ粗くなる、加工性が悪くなるといった問題が生じることがある。
【0039】
表面層は、前記基材、前記導電性物質、その他必要に応じて添加されるその他の物質を適当な溶剤に溶解して、芯材に塗布することにより、導電性物質を基材と混練しコンパウンド化したものを芯材に巻き付けてプレスすることにより、形成することができる。また、基材として熱硬化性樹脂を用いる場合には、塗布あるいは成型の後に、硬化させるのに十分な温度で加熱することが好ましい。
【0040】
<製造方法>
本発明の導電性部材の製造方法は、従来の押出成形によってチューブ状に成形し加硫された導電性弾性体チューブにクラウン形状の導電性の芯材を圧入し、該芯材の外周に導電性弾性体層を形成することができる。または、クロスヘッドダイを用いて導電性弾性材料をクラウン形状の導電性芯材の外周に押出し形成した後、加硫し、該芯材の外周に導電性弾性体層を形成しても良い。
得られた導電性弾性体層の外周に表面層を形成するには、所定の材料を配合した塗料を用いて従来の浸漬方法、フローコーティング方法、スプレー塗装方法、静電塗装方法などを用い形成することができる。
【0041】
<本発明の適用>
以上説明した本発明の帯電部材は、複写機、レーザプリンター、ファクシミリ、これらの複合OA機器等の電子写真装置における接触式帯電方式の帯電器において、帯電部材として好適に用いられる。
【0042】
本発明の帯電部材が好適に適用される電子写真装置について、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の帯電部材が適用された電子写真装置の一例を示す模式断面図である。図1に示す電子写真装置は、電子写真感光体10と、電子写真感光体10の表面を帯電する本発明の帯電部材からなる帯電器11と、帯電器11に電圧を印加するための電源12と、電子写真感光体10の表面に潜像を形成する画像入力器13と、トナーにより電子写真感光体10の表面に形成された潜像を現像してトナー画像を得る現像器14と、形成されたトナー画像を転写材20表面に転写する転写器15と、電子写真感光体10表面の残留トナー等を除去するクリーニング器16と、電子写真感光体10表面の残存電位を除去する除電器17と、被転写体20表面に転写されたトナー画像を熱および/または圧力等により定着する定着器18と、を有する。
【0043】
本発明の帯電部材からなる帯電器11は、電源12から供給される電圧により作動し、感光体表面を帯電する。その他、画像入力器13、現像器14、転写器15、クリーニング器16、除電器17、定着器18の構成は、本発明において特に制限されるものではなく、電子写真分野において従来公知のあらゆる構成をそのまま適用することができる。なお、除電器17は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0044】
図1の電子写真装置の動作について説明する。電子写真感光体10の表面は、帯電器11により一様に帯電された上で、画像入力器13により潜像が形成される。電子写真感光体10の表面に形成された潜像は、現像器14に内蔵されたトナーにより現像され、トナー像が形成される。電子写真感光体10の表面に形成されたトナー像は、電子写真感光体10と、それに対向する転写器15との間に挿通された被転写体20表面に転写され、さらに定着器18の熱および/または圧力等により定着される。一方、転写後の電子写真感光体10表面の残留トナーは、クリーニング器16により除去される。そして、次の画像形成サイクルに進む前に、電子写真感光体10表面の残存電位が、除電器17により除去される。
【実施例1】
【0045】
図2で示したように、a部およびa’部の外径がφ10mm、b部(中央部)の外径が10.1mmで、a−b−a’部を滑らかなR形状としたクラウン量100μmで、長さ331mmの芯材100を作製した。該芯材の表面粗さはRa=0.2μmであった。該芯材100を加硫した導電性ゴムチューブに挿入し導電性ゴムローラを作製した。
【0046】
導電性ゴムチューブは、ゴムとしてエピクロルヒドリン95.7重量部、NBR43重量部を、導電性物質として第4級アンモニウム塩1重量部を、導電材・補強材としてカーボンブラック15重量部を、加硫材として硫黄0.025重量部、二硫化硫黄1.6重量部を、加硫促進剤としてテトラメチルチウラム・ジスルフィド1重量部、ジベンゾチアジル・ジスルフィド1.5重量部を、充填材として炭酸カルシウム18重量部、シリコーンパウダー2重量部を、加硫促進剤としてステアリン酸1重量部、酸化亜鉛5重量部を用いた。
【0047】
該導電性ゴムチューブの作製は、導電性ゴム組成物を押出機によりチューブ状に押出した後、高周波加熱装置を用いて170℃まで加熱した後30分間加硫させ、内径φ9.8mm、肉厚3mmの導電性ゴムチューブを得た。該ゴムチューブ内に圧縮空気を送り込み該ゴムチューブの内径を拡張させたところに、該芯材100を挿入し導電性弾性体層110を有するゴムロールを得た。
【0048】
次に、脂肪族ポリエステル樹脂(商品名「バイロン30SS」)1300g、メラミン樹脂(商品名「スーパーベッカミンG821−60」)を342g、カーボンブラック(商品名「FW200」)を8重量%、およびフッ素樹脂(商品名「ルブロンL−2」)を200gからなる塗液に該ゴムロールを浸漬した後、乾燥・焼成させ表面層120を形成した。
その結果、図3に示したような、最小径がφ16mm、最大径がφ16.1mmで、芯材100の外周に導電性弾性体層110と表面層120を積層したクラウン量が100μmの導電性ゴムローラを得た。
【実施例2】
【0049】
実施例1に対し、図4に示したように、c部およびc’部の外径がφ8mm、d部(中央部)の外径がφ8.1mmで、c−d−c’部を滑らかなR形状としたクラウン量70μmで、長さ331mmの芯材150を作製した。該芯材の該芯材の表面粗さはRa=0.08μmであった。
次に該芯材を通すための貫通穴を設けたクロスヘッドダイを装着した押出成形機(図示せず)に、該芯材150を挿入し、実施例1記載の導電性ゴム組成物を該芯材表面に被覆形成した後、170℃に設定した加熱炉内に入れ加硫させ、導電性ゴムローラ350を作製した。該押出成形機の導電性ゴム組成物の吐出量は一定とし、該芯材の引取り速度も一定とした。その後実施例1と同様に塗液に浸漬し、乾燥・焼成させ表面層を形成した。最小径がφ14mm、最大径がφ14.07mmで、クラウン量が70μmの導電性ゴムローラを得た。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の帯電部材が適用された電子写真装置の一例を示す模式断面図である。
【図2】本実施例1で、芯材に関する図である。
【図3】本実施例1で得られた導電性ゴムローラの断面図である。
【図4】本実施例2で、芯材に関する図である。
【図5】従来の導電性ゴムローラに関する図である。
【符号の説明】
【0051】
10 電子写真感光体
11 帯電器
12 電源
13 画像入力器
14 現像器
15 転写器(転写部材)
16 クリーニング器
17 除電器
18 定着器
20 被転写体
100、150、200 芯材
110 導電性弾性体層
120 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外径が両端部から中央部に向かって漸次増大するクラウン形状の導電性芯材の外周に、導電性弾性体層を有する導電性部材であって、該芯材の外周に沿うよう略均厚の導電性弾性体層を形成したことを特徴とする導電性部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−250027(P2008−250027A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91841(P2007−91841)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
【Fターム(参考)】