説明

導電性重合体で被覆された鉛酸蓄電池用の格子

本発明は、低密度及び低融点を有する基材を用いて鉛酸蓄電池に用いる格子構造を製造する方法を提供するものであり、この方法は、基材材料を第1の金属層で被覆し、次に鉛/鉛合金の金属層で被覆する工程と、その上に導電性高分子を電着して保護層を形成する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉛酸蓄電池に関する。特に、本発明は、鉛酸蓄電池の重量を減らす方法、及び鉛酸蓄電池の製造方法に関し、それにより鉛酸蓄電池の比エネルギーを増大させるものである。
【背景技術】
【0002】
蓄電池は、要求に応じて所望の時にエネルギーを利用できるように、電気エネルギーを蓄える装置である。電池は、一般的に、電解液中に設置した、アノード(陰極板)とカソード(陽極板)との2本の電極から成る。従来技術として周知であるように、通常、作動させる電気機器を陰極板と陽極板とに接続することによって、電気エネルギーは、要求に応じて蓄電池から得られる。
【0003】
鉛酸蓄電池は、自動車、ボート、飛行機、及び、連続的に電力供給する装置用に、広く使われている。従来設計では、鉛酸蓄電池の陰極と陽極との極板/格子には、鉛を多く含有する鉛合金(純粋な鉛を含む)が使用される。これらの電極における鉛/鉛合金の主要な役割は、蓄電池の充放電の際、電気伝導を促進することである。
【0004】
鉛合金は一般的には銅のような金属ほど高導電体ではないが、鉛合金は、蓄電池の充放電の際に安定性があり、比較的低コストであるために、しばしば他の金属よりも好まれる。特に、鉛/鉛合金は、一般的には、酸性電解液により作られる高腐食性環境にかなり耐えることができる。鉛よりも高導電性の金属は、酸中で急速に腐食するか(例えばアルミニウム、銅)、商業的に利用するには高価すぎる(例えば白金)。
【0005】
鉛酸蓄電池において、活物質を支持して且つ集電体の役割を果たす、蓄電池の極板の構造は、「格子」と呼ばれる。ペーストされた格子は、一般的に極板と呼ばれる。定義上、電極は、蓄電池内で起こる電気化学反応に伴う電子の供給源又受容体の役割を果たす導電体である。
【0006】
鉛/鉛合金でできた極板/格子は鉛酸蓄電池の酸性環境においてかなり安定しているが、それでも鉛酸蓄電池が通常稼働する間に腐食し、蓄電池の寿命を制限する。従って、鉛酸蓄電池の耐久性を増すために、このような腐食に対して保護することが望ましい。
【0007】
また、鉛の質量密度(11.3g/cm)が大きいので、通常、鉛酸蓄電池は重い。蓄電池は、たいてい、高エネルギーを蓄えることが可能且つ軽量であることが望ましい。従って、蓄電池のキログラム重(kg)あたりの蓄電池に蓄えられるエネルギーのワット時(Wh)の数(Wh/kgと略される)として測定される比エネルギー呼ばれる測定基準が、しばしば蓄電池の有効性又は好ましさを測定するために用いられる。このように、通常、蓄電池は比エネルギーが高いことが望ましい。
【0008】
例えば、病院、工業団地、行楽地、住宅地域及び市街地のような近郊用途に用いる電気自動車(EVs)は、比エネルギーが高い蓄電池を必要とする。そうでなければ、重い蓄電池を牽引するだけで、蓄電池に蓄えられたエネルギーを相当消費してしまう。このような用途には、40〜50Wh/kgの比エネルギーを有する蓄電池が適していると推定される。一方、市場に出ていて現在利用できる多くの鉛酸蓄電池は、約30Wh/kgのエネルギー密度を有する。高い比エネルギーを有する蓄電池は、一般的には、例えば各々の構成要素/サブシステムの重量が主として重視される航空機搭載システムのようなポータブル電源の用途にも重要である。高い比エネルギーを有する鉛酸蓄電池は、ハイブリッド
EVsと同様に従来の内燃機関自動車においても有利であり、蓄電池が軽くなると燃料効率は良くなる。
【0009】
鉛酸蓄電池の総重量の大幅な削減を達成する試みとして、効果的な方法は、蓄電池の電極を構成する極板/格子の重量を減らすことであろう。これは、全体が鉛/鉛合金できた電極構造を、単なる物理的な支持材(基材)を蓄電池の充放電の機能を備えた比較的薄い銅及び鉛合金の金属板(又は積層体)によって被覆したものである、軽量材料を使用する構造に置き換えることによって達成される。全体が鉛合金でできた比較的薄い極板の代わりに、このような蓄電池の極板/格子用の複合材料を用いると、各極板/格子の総重量を大幅に削減することができる。鉛酸蓄電池の比エネルギーは、結果として増加する。しかしながら、鉛の比較的薄い層を使用すると、鉛酸蓄電池の強酸環境中の腐食からその層を保護する必要性が増加する。いくつかの従来技術の方法を、下記に簡潔に記載する。
【0010】
米国特許4,221,854号公報(発明の名称:Lightwight Laminated grid for lead−acid storage batteries、発明者:Hammerその他)に、格子/極板が、重合体(例えばポリビニルクロライド)に薄い鉛/鉛合金のホイルを積層した基材で構成される鉛酸蓄電池が記載されている(以後、Hammerと記載する)。この組合せにより、蓄電池の極板/格子の重量は減少し、蓄電池の比エネルギーは大きくなる。しかしながら、Hammerは、耐食被覆及び/又は基材上に耐食被覆を形成する方法を記載していないように思われる。その結果、Hammerの極板/格子は酸性電解中での腐食に弱くなり、蓄電池の耐久性が制限される。
【0011】
米国特許4,713,306号公報(発明の名称:Battery Element and Battery Incorporating Doped Tin Oxide Coated Substrate,発明者:Pinsky その他)に、ドープされた導電性の酸化スズで被覆された陽極板の(格子を意味すると思われる)部分には少なくとも有用な、蓄電池の構成の一部が開示されている(以後、Pinskyと記載する)。グラスファイバー製の格子がそもそも酸に対し耐食性があるので、酸化スズ被覆が、酸の腐食に対して格子を保護するようには思えない。
【0012】
米国特許5,643,696号(発明の名称:Battery Plates with lightweight cores,発明者:Rowlette)には、鉛/鉛合金で覆われた金属基材(アルミニウム又はチタン又はそれらの合金)でできた蓄電池の極板/格子が記載されている。これらの金属基材は、許容できないほど高い質量密度(例えば、アルミニウムは、約2.7グラム・cm−3の質量密度を有する)をまだ有している。したがって、さらに低い質量密度を有する材料でできた基材を使用して、蓄電池を製造することが望ましい。
【0013】
他の取り組みとして、米国特許6,232,017号(発明の名称:Grid for
Lead−acid battery,発明者:Tsuchida その他)に、ポリアミド及びグラスファイバーを、蓄電池の極板/格子を製造するために用いることが記載されている(以後、Tsuchidaと記載する)。低密度のポリアミドを用いて支持構造を形成し、且つ鉛/鉛合金の薄層で被覆されたグラスファイバーシートを用いて蓄電池の極板/格子の集電部を形成することにより、全体が鉛/鉛合金製の従来の格子と比較して、格子の重量は減少する。しかしながら、極板/格子の耐食被覆は、Hammerに記載されていないようにTsutidaにも記載されておらず、そのために酸の腐食に弱くなる。
【0014】
米国特許6,316,148号(発明の名称:Foil−encapsulated,
lightweight,high energy electrodes for lead−acid batteries,発明者:Timmons その他)には、鉛酸蓄電池の重量を減らすための他の取り組みが記載されている(以後、Timmonsと記載する)。電極は、電気を伝導する鉛/鉛合金の導電性ホイルの薄いシートに封入された非鉛基材(例えばアルミニウム)でできている。耐食性のホイルは、酸の腐食から基材を保護する。鉛の質量密度の70%以下である非鉛基材を使うことにより、蓄電池の重量は削減される。しかしながら、極板/格子の耐食被覆が無いために、TimmonsもHammerとTsuchidaと同様の欠点を有する。
【0015】
比エネルギーを高くすることに加えて、いくつかの他の要求を満たす蓄電池を製造することが望ましい。例えば、蓄電池製造にかかる全体の費用を削減するために、基材に費用効果がある材料を使用することが望ましい。全体的な製造技術として、このような費用効果があり軽量の基材材料上に、鉛合金を薄く被覆することを可能にすることが必要である。前記技術としては、鉛酸蓄電池の耐久性を強化するために、極板/格子の耐食被覆を可能にすることも必要である。
【0016】
低コスト且つ低い質量密度を有する材料を基材として使用する際の1つの問題は、このような材料の融点が低いことであり、そのために、鉛酸蓄電池の製造において使用されるいくつかの技術に互換性がない。同様の非互換性は、鉛合金層上に十分に高い導電性の耐食被覆を施す際にも存在する。
【0017】
例えば、蓄電池の極板/格子の鉛/鉛合金層上にこのような耐食被覆(例えば酸化スズの耐食被覆)の形成には、通常、鉛の融点である327°Cよりかなり高い温度を必要とする。特に、単純で便利な「浸漬被覆」方法による酸化スズ層の形成には、450〜600°Cの範囲の焼成が必要である(非特許文献1参照、以後、Kurisawaと記載する)。
(本発明の目的)
【0018】
本発明の主たる目的は、鉛酸蓄電池に使用する耐食構造(前記格子構造)を提供することである。
【特許文献1】米国特許4,221,854号公報
【特許文献2】米国特許4,713,306号公報
【特許文献3】米国特許5,643,696号公報
【特許文献4】米国特許6,232,017号公報
【特許文献5】米国特許6,316,148号公報
【非特許文献1】Development of positive electrodes with SnO2 coating by applying a sputtering technique for lead−acid batteries, Kurisawa その他,Journal of Power Sources 95(2001),第125〜129頁
【発明の開示】
【0019】
故に、本発明は、
(a)基材を第1の金属層で、次に鉛/鉛合金の金属層で被覆する工程と、
(b)保護層を形成し且つ所望の格子構造を得るために、電解液を使用して、前記(a)工程の最後で得られた層の上にオーガニックメタルを電着させる工程と、を備えた
鉛酸蓄電池に用いるための耐食格子構造の製造の電気化学的方法を提供する。
【0020】
本発明の一実施例において、前記第1の金属層は、銅又はニッケルの層である。
【0021】
本発明の他の一実施例において、(b)工程で使用する前記電解液は、シュウ酸である。
【0022】
本発明の他の一実施例において、前記オーガニックメタルは、ポリ・アニリン又は同様のオーガニックメタルである。
【0023】
本発明の他の一実施例において、前記基材層は、プラスチックである。
【0024】
本発明の他の一実施例において、前記プラスチックは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンである。
【0025】
本発明の別の実施例では、前記電気化学的被覆工程は、所望の厚さの保護層を得る為に複数回実行される。
【0026】
本発明の他の一実施例において、2本の白金ホイル補助電極間に格子を配置して、前記格子構造の前記鉛/鉛合金層に、シュウ酸中の約0.1Nポリ・アニリン溶液から定電圧でポリ・アニリンが電着される。
【0027】
本発明は、
(a) 第1の金属層でおおわれている基材材料と、
(b) 前記第1の金属層に被覆された鉛/鉛合金層である第2の金属層と、
(c) 前記鉛/鉛合金層に電着されたオーガニックメタル層と、を備えた
鉛酸蓄電池に用いる為の耐食格子構造も提供する。
【0028】
本発明の一実施例において、前記基材材料は、プラスチックである。
【0029】
本発明の他の一実施例において、前記プラスチックは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンである。
【0030】
本発明のさらにもう一つの実施例において、前記第1の金属層は、銅又はニッケルの層である。
【0031】
本発明の他の一実施例において、前記オーガニックメタルは、ポリ・アニリン又は同様のオーガニックメタルから選択され、シュウ酸を含む電解液を用いた電着によって、前記鉛/鉛合金層上に被覆される。
【0032】
本発明の他の一実施例において、第1の金属層は、前記鉛/鉛合金層の接着をサポートする。
【0033】
本発明の他の一実施例において、前記基材は、2.5g/cm未満の質量密度及び300°C未満の融点を有する。
【0034】
本発明の他の一実施例において、前記基材は、約1.5g/cm未満の低い質量密度及び約175°C未満の低い融点を有する。
【0035】
本発明の他の一実施例において、前記第1の金属層は、10μm以下の厚さを有し、前記鉛/鉛合金層は、100μm以下の厚さを有し、前記保護層は、15μm以下の厚さを有する。
【0036】
本発明は、
(a) 陽極板と、
(b) 格子構造を含む陰極板と、を備え、
前記格子構造は、
(i)基材と、
(ii)前記基材上に被覆された第1の金属層と、
(iii)前記第1の金属層上に被覆された、鉛/鉛金層から成る第2の金属層と、
(iv)前記鉛/鉛合金層上に被覆された、導電性且つ耐食性のオーガニックメタル層と、を有する蓄電池も提供する。
【0037】
本発明の一実施例において、前記基材は、プラスチックである。
【0038】
本発明の他の一実施例において、前記基材は、約1.5g/cmの低い質量密度及び約175°C未満の低い融点を有する。
【0039】
本発明の他の一実施例において、前記プラスチックは、2.5g/cmの質量密度及び300°C未満の融点を有するアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンである。
【0040】
本発明の他の一実施例において、前記第1の金属層は、銅又はニッケルの層である。
【0041】
本発明の他の一実施例において、前記第1の金属層は、前記鉛/鉛合金層の貼着をサポートする。
【0042】
本発明のさらにもう一つの実施例において、前記オーガニックメタルは、導電性且つ耐食性であり、ポリ・アニリン又は同様の特性のオーガニックメタルから選択され、前記鉛/鉛合金層に耐食層を形成する。
【0043】
本発明のさらにもう一つの実施例において、前記蓄電池は、陰極板と、陽極板と、内部の電解液とを保持するための電槽を更に備える。
【0044】
本発明の他の一実施例において、前記電解液は、硫酸である。
【0045】
本発明の他の一実施例において、前記第1の金属層は、10μm以下の厚さを有し、前記鉛/鉛合金層は、100μm以下の厚さを有し、前記オーガニックメタル層は、15μm以下の厚さを有する。
【0046】
本発明の他の一実施例において、陰極は、前記基材、第1の金属層、鉛/鉛合金層及び前記オーガニックメタル層を含む。
【0047】
本発明の他の一実施例において、前記蓄電池のファラデー効率は、90%である。
【0048】
本発明の他の一実施例において、前記蓄電池は、C/5の速度での容量に対して、C/20の放電速度で38%容量が増加し、3Cの放電速度で50%の容量になる。
【0049】
本発明の他の一実施例において、前記蓄電池は、25°Cでの容量に対して、50°Cで25%容量が増加し、25°Cを下回る温度では、25°Cでの容量に対して38%容量が減少する。
【0050】
本発明の他の一実施例において、前記蓄電池は、高速充電では、1.5時間以内に90%の充電ができる。
【0051】
本発明の他の一実施例において、蓄電池の自己放電は、0.3%/日である。
【0052】
本発明の他の一実施例において、容量損失は、100サイクルの間、最小限である。
【0053】
<発明の詳細な説明>
本発明は、鉛酸蓄電池に用いる耐食格子構造を製造する電気化学的方法を提供する。
【0054】
この方法は、基材材料を銅又はニッケルの金属層で被覆し、次に鉛/鉛合金の層を被覆する工程と、その後シュウ酸のような電解液を用いて前記鉛/鉛合金の上にオーガニックメタルを電着する工程と、を基本的に備える。
【0055】
使用する前記基材は、重合体、好ましくは約1.5g・cm−3未満の低い質量密度及び約175°C未満の低い融点を有するプラスチックである。基材材料には、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンが特に好ましい。前記第1の金属層は、10μm以下の厚さであり、前記鉛/鉛合金層は、100μm以下の厚さであり、前記保護層は、15μm以下の厚さである。使用する前記金属層は、鉛/鉛合金層の貼着をサポートする。
【0056】
本発明で得られた蓄電池は、
陽極板と、
格子構造を含む陰極板と、を備え、
前記格子構造は、
2.5g・cm−3未満の質量密度及び300°C未満の融点を持つアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンから作られた基材と、
前記基材に被覆した、銅又はニッケルの金属層と、
前記金属層に被覆し、前記金属層により貼着をサポートされた鉛/鉛合金層と、
前記鉛/鉛合金層に耐食保護を与える、導電性且つ耐食性のポリ・アニリン層と、
を有する。
【0057】
前記蓄電池は、陰極板と、陽極板と、内部の例えば硫酸のような電解液と、を保持するための電槽をさらに備える。陰極もまた、前記基材、第1の金属層、前記鉛/鉛合金層及びオーガニックメタル層を備える。
【0058】
前記蓄電池のファラデー効率観測したところ、90%であった。前記蓄電池は、C/5の速度での容量に対して、C/20の遅い放電速度で38%容量が増加し、3Cの速い放電速度で50%の容量になった。前記蓄電池はまた、25°Cでの容量に対して、50°Cで25%容量が増加した。25°Cを下回る温度では、前記蓄電池の容量値は、38%減少した。前記蓄電池は、高速充電では、1.5時間以内に90%の充電ができた。前記蓄電池の自己放電は、0.3%/日であった。前記蓄電池の容量損失は、100サイクルの間、最小限であった。
【0059】
2本の白金ホイル補助電極間に格子を配置して、前記蓄電池用の格子の前記鉛/鉛合金層に、シュウ酸中の約0.1Nポリ・アニリン溶液から定電圧でポリ・アニリンが電着される。
【0060】
アニリンの代わりに、ポリ・アニリンの耐食性及び導電率と同様の特性を示す他のオーガニックメタルも使用できる。
【0061】
保護層を所望の厚さにするために、電気化学的被覆工程は複数回行われる。
【0062】
Kurisawaは要約で、「・・・この方法(浸漬被覆法)をPb(鉛)基材に適用することは不可能である・・・」と述べていて、このような方法において保護用の酸化スズ層を形成するのに必要な焼成温度は、鉛/鉛合金の極板/格子には適用できないことを示唆している。Kurisawaは、低温を使用する被覆技術を試みた。例えば、Kurisawaは、鉛格子上に保護用SnO被覆を形成するために、真空薄膜技術を使用することを記載している。このような被覆プロセスにおいて、被覆される鉛格子の温度は、約120°Cを上回らない。具体的には、Kurisawaは、500μm厚の鉛極板上に15μm厚のSnO被覆を行うために、高周波(RF)スパッタリング技術を用いることを教示している。Kurisawaには、比較的薄い鉛極板上のこのようなSnOでできた保護用被覆は、鉛酸蓄電池の陽極の極板/格子の腐食を削減し、蓄電池の比エネルギーを大きくするのに効果的であることが示されている。
【0063】
しかしながら、一般的には、スパッタリングは時間のかかる工程であり(例えば、Kurisawaは、0.4μm/hの速度を示している)、鉛合金層と共に基材が、長時間、周囲温度(例えば、Kurisawaでは120°C)下に置かれてしまう。周囲温度が基材および被覆を形成している材料の融点より低い場合であっても、このような周囲温度への長時間にわたる露出は、低い融点を有する極板/格子の機械的一体性を危うくする。
【0064】
さらに、スパッタリングは、通常、直進性の被覆工程であるので、高価なスパッタリング装置を組み合わせて使用しない限り、電極(極板/格子)の両側を一工程で被覆することはできない。このようなスパッタリング工程により蓄電池の極板/格子上に耐食被覆を形成する費用は、高くなりそうであり、さまざまな用途で受け入れられない。0.5V、Pb/PbSO下で、SnOがHSO中で不安定であることは注目に値する。
【0065】
それ故、軽量且つ安価で通常低融点を持つ材料で作られた蓄電池の極板/格子の上に、耐食被覆を施すことが好ましい。このような極板/格子はその後、高い比エネルギーと従来の鉛酸蓄電池より長い寿命とを有する鉛酸蓄電池の製造に用いることができる。
【0066】
鉛酸蓄電池の格子構造の実施例は、2.5g/cm未満の質量密度と300°C未満の融点とを有する材料でできた基材を用いる。金属層は、前記基材上に被覆される。鉛/鉛合金層は、前記金属層上に被覆され、前記金属層は前記鉛/鉛合金層の貼着をサポートする。導電性且つ耐食性の層は、鉛/鉛合金層に腐食に対する保護を与える。前記基材の質量密度が小さいので、高い比エネルギーが得られる。
【0067】
前記基材は、プラスチック(重合体)でできている。実施例は、10μm以下の厚さの前記金属層と、100μm以下の厚さの前記鉛/鉛合金層と、15μm以下の厚さの前記保護層とを用いておこなう。前記導電性且つ耐食性の層は、ポリ・アニリン又は同様のオーガニックメタルを含む。
【0068】
本発明の別の態様による方法は、格子構造の製造を可能にする。その方法は、前もって金属層と鉛/鉛合金層とが被覆された基材に、基材を金属合成物で被覆する工程を含む。
【0069】
その後、前記鉛/鉛合金層の上に、導電性且つ耐食性のオーガニックメタル層を形成するために、この基材にポリ・アニリン又は類似の金属の膜を電気化学的に被覆する。2つの競合する陽極反応、すなわち、陽極の付近の金属酸化物の形成とアニリン・モノマーの酸化重合とのために、例えば鉛のような、酸化金属面の上にポリ・アニリンの電着には、難しい課題がある。
【0070】
本発明の新規性は、還元作用により前記鉛/鉛合金上に酸化被膜が形成されるのを防止
するために、前記鉛/鉛合金層の上にポリ・アニリンの陽極の被膜を形成する為の電解液としてシュウ酸のような還元酸を用いることにある。
【0071】
本願の方法は、ChenとKwokによる米国特許公報6,617,071 B2号公報と、その対応出願であるEP126,049 A1号公報とに記載された方法とは完全に異なることは注目に値する。これらの公報には、好ましくはポリ・アニリンやその誘導体の導電性重合体のマトリクスで被覆した、高出力の鉛酸プレートの請求項が記載されていて、それはその後、硫酸鉛や塩基性硫酸鉛錯体のような活物質の粒子で被覆される。
【0072】
本発明の新規性は、鉛が、鉛/鉛合金への被覆を妨げる二酸化鉛に酸化されない環境で、鉛/鉛合金の上にポリ・アニリンの被覆を行う電気化学的方法にある。
【0073】
本発明の特徴を、さらに、添付の図面を参照して以下に詳細に記載する。
【0074】
<1.発明の概要及び論考>
本発明の一態様における鉛酸蓄電池は、基材、金属層、鉛層、導電性且つ耐食性の第4の層の4つの層を含む極板/格子構造を用いる。前記基材は、低密度の材料で形成されていて、他の層が被覆されるベースになる。前記金属層(銅またはニッケル)は、次の層である鉛層の被覆のためのシード層として機能して、鉛層の貼着をサポートと共に伝導率を改善するものが選ばれる。純鉛又は鉛合金から成る鉛層は、蓄電池の充放電のための電気経路を提供する。導電性の第4の層は、鉛/鉛合金層の腐食に対する保護層とも機能する。
【0075】
低密度の原料を基材に使用することにより、各極板/格子の重量は減少し、鉛酸蓄電池の比エネルギーは大きくなる。例えばプラスチック重合体のような、基材用に低融点且つ低密度の材料を選択することにより、コストを削減でき、蓄電池をより安価にするが可能になる。極板/格子が低重量になるにつれて、それらを収容し支持する電槽も軽くなり、鉛酸蓄電池の比エネルギーもさらに大きくなる。
【0076】
本発明の別の態様においては、低価格且つ短期間に、このような構造を製造することが可能になる。最初の3つの層(基材、金属および導電層)を有する構造は、従来の方法で形成できる。例えばポリ・アニリンのような導電性且つ耐食性の層であり、金属層と鉛/鉛合金層とを腐食から保護する第4の層は、例えばポリ・アニリンのような適切なオーガニックメタルを前記3つの層に付加することで形成される。鉛で被覆されたアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)格子の両側に設置した2つの白金カウンター電極を用いて、前記格子及び前記カウンター電極に1.5Vの電圧を印可して、シュウ酸中の0.1Nポリ・アニリン溶液から、鉛で被覆されたABS格子にポリ・アニリンを定電圧で被覆する。被覆後、前記格子は、純水でよく洗浄され、熱風炉中で60°Cで乾かされる。
【0077】
図面を参照しながら、いくつかの本発明の態様を以下に記載する。本発明の完全な理解のために、多くの詳細、関連、方法を説明する。しかしながら、関連技術の熟練者は、他の詳細、方法等が無くても、本発明を容易実施できることを容易に認識するだろう。また、簡潔にするため且つ発明が不明瞭になるのを避けるために、周知の構造や動作の詳細は記載していない。
【0078】
<2.格子/極板構造>
図1A及び1Bは、本発明の実施例の格子/極板構造100の詳細を示す図である。図1Aは、極板/格子構造100の詳細を示す正面図である。低質量密度の前記極板/格子を形成する他の層は、図1Bを参照して、後述する。格子/極板構造100は、基材11
0、金属層120、鉛層130及び耐食保護層140を含む。各層の詳細は後述する。
【0079】
低質量密度且つ低融点の材料で形成された基材110は、他の層が被覆される極板/格子の芯を構成する。上述したように、低質量密度且つ低融点にすることで、高い比エネルギーの鉛酸蓄電池を低コストで提供することが可能になる。実施例では、基材110には、ABS高分子(プラスチック)を使用する。他の種類の重合体も、基材110に用いることができる。プラスチックは大抵曲がりやすい性質を有するので、基材110は、機械的応力に耐えることが可能になる。加えて、ABSのような高分子プラスチックは鉛酸蓄電池に存在する濃硫酸による腐食の影響を受けないので、基材110は鉛酸蓄電池に適している。
【0080】
金属層120は、必要であれば金のような高価な金属を用いてもよいが、銅又はニッケルのような低価格の金属によって形成できる。金属層120は、所望の厚さ(一般的には10μm未満)になるように被覆される。また、金属層120は、鉛/鉛合金層130の被覆のためのシード層として機能し、さらに鉛/鉛合金層130の貼着をサポートする。
【0081】
鉛/鉛合金層130は、金属層120の上に、鉛や鉛合金(例えば、鉛スズ合金)の薄い層を被覆することで形成できる。鉛は高密度材料であるので、得られる鉛酸蓄電池の比エネルギーを高くするために、鉛(又は鉛合金)層を適切に薄く保つことが好ましい。関連技術で周知のように、鉛/鉛合金層は、蓄電池の充放電の電気伝導経路を提供する。
【0082】
保護層140は、極板/格子を化学的腐食から保護するために鉛/鉛合金層上へ電気化学的に被覆された、導電性且つ耐食性の層(例えば、ポリ・アニリン)の例を示している。
【0083】
上術の背景セクションにて強調したように、1つ又は複数の酸化被膜が層/基材に存在する場合、これらの保護層の被覆は困難になる。この種の懸念に対処する方法は、製造方法を例にして後述する。
【0084】
<3.製造方法>
図2は、本発明の一態様による極板/格子の製造方法示すフローチャートである。図1A及び1Bを参照しながらこの方法を記載する。しかしながら、関連技術の熟練者にとって明らかなように、本願明細書の開示に基づいて、他の方法でも本発明を実施することができる。
【0085】
この方法は、ステップ201で開始し、ステップ210に続く。
【0086】
ステップ210において、基材は、低質量密度且つ低融点の材料から形成される。いくつかの周知の方法を、基材の形成に用いることができる。例えば、射出成形を、ABSプラスチックから基材110を形成するために用いてもよい。あるいは、スタンピング工程を、ガラス繊維強化プラスチックから基材110を形成するために用いてもよい。
【0087】
ステップ220において、鉛/鉛合金層をサポートし且つ鉛/鉛合金層を次に被覆できるようにするために、薄い金属層は、基材110上へ被覆される。例えば、銅は、安価であるので、この薄い金属層の形成に用いることができる。いくつかの周知の方法のうちの1つは、基材110上に銅層を形成するために用いることができる。例えば、無電解メッ
キ法は、基材110上に銅層を被覆するために用いることができる。図1Bの金属層120に対応する薄い金属層は、鉛層を基材に確実に貼着させる。
【0088】
ステップ230において、薄い鉛/鉛合金層は、鉛酸蓄電池に必要な電気伝導経路を形
成するために、薄い金属層上に被覆される。薄い鉛/鉛合金層は、電気メッキ法で形成することができる。ステップ250及び270では、下層120及び130の腐食を防止するために、保護層を被覆する。
【0089】
ステップ250において、ポリ・アニリン層が、シュウ酸中の0.1Nポリ・アニリン溶液から、格子上に電気化学的に被覆される。各格子は、2本の白金補助電極間に対称的に配置される。
【0090】
ステップ250では、耐食性且つ導電性のポリ・アニリンの被膜が得られる。得られた格子の腐食率は、鉛酸蓄電池に使用する従来の鉛の格子と比較してわずか4分の1であった。
【0091】
一般に、鉛酸蓄電池の負極の極板/格子は化学的腐食に弱くないので、ステップ250は、負の極板/格子の製造において必ずしも必要ではない。しかしながら、製造が簡易になるので、負の格子の製造に、上述した陽極の格子と同一の方法を用いてもよい。
【0092】
ステップ250は、安価な器材を使用して簡易な方法で行うことができる。
ステップ250では、軽量プラスチック基材と薄い鉛層130(図1B)とを用いることが可能になり、極板/格子の重量及び鉛酸蓄電池の重量は大幅に削減される。ステップ299でこの方法は終了する。
【0093】
このように製造された軽量の極板/格子を組み立てて、鉛酸蓄電池を提供する方法を、図3を参照しながら後述する。
【0094】
<鉛酸蓄電池>
図3は、本発明の一態様による鉛酸蓄電池の詳細を示す図である。蓄電池300は、極板/格子310,320と、吸着ガラスマット330、ラグ(lug)340及び電槽350を含む。以下、各構成要素について説明する。
【0095】
各極板/格子310及び320は、所望の蓄電池電圧が蓄えられ且つ出力されるエネルギーの量により、図2で説明した方法で製造された極板/格子のユニットを複数備えてもよい。極板310及び320は、例えば酸化鉛ペーストを硬化させるような、周知の方法で形成できる。2つの極板/格子310及び320のうちの1つは、陽極板に、他方は陰極板に、(極板/格子100のユニットに基づき)周知の方法で実装できる。電解液および活性ペーストも、複数の極板/格子310及び320の間に、周知の方法で配置できる。セパレータ吸着ガラスマット330は、極板/格子310と320とを互いに隔てる。ラグ(lug)340は極板のストラップを接続するものである。また、ラグ(lug)340は軽量の極板/格子を単に支持するものであるので、ラグ(lug)340には軽量の材料を用いることができる。
【0096】
電槽350は、一般に、強くて、機密を保つことができ、耐食性の原料で作る必要がある。また、電槽350は、電池300の重量をさらに減らすために、低質量密度の材料で作ってもよい。このように、さまざまな本発明の態様により、高い比エネルギー及び長寿命を有する鉛酸電池を低コストで提供することが可能になる。
【0097】
図4は、上述した本発明の軽量の格子を用いて組み立てられた6V/3.5AhのVRLA蓄電池の、25°C且つ5時間の速度(C/5速度)で得られた標準的な定電流充放電データを示す。このデータから、蓄電池のファラデー効率が90%であることが分かる。
【0098】
図5に、C/20〜3Cの速度の範囲の各速度における蓄電池の性能特性を示す。C/5速度での蓄電池の容量に対して、C/20の遅い放電速度では38%容量が増加している。2C及び3Cの速い放電速度では、C/5速度での容量に対して、容量はそれぞれ58%、50%になった。
【0099】
図6に、50〜−20°Cの範囲の各温度における放電データを示す。25°Cでの蓄電池の容量に対して、50°Cでは容量が25%増加した。25°Cを下回る温度では、25°Cでの蓄電池容量より、38%低くなった。
【0100】
図7に、本発明の軽量の格子を用いて組み立てられた、6V/3.5AhのVRLA蓄電池の高速充電データを示す。このデータは、1.5時間以内の充電で90%の充電が可能であることを示している。3.5時間以内では、110%の充電が可能であった。高速充電した場合の容量が、定電圧や定電流の標準的な充電を行った場合と同様であることが分かる。
【0101】
図8に、蓄電池を放電条件で5日間置いて、その後高速充電した場合のデータを示す。C/10の充電速度の場合と、2Cの充電速度の場合とでは、充電可能な容量にほとんど差はない。
【0102】
図9(i)に、図8のスケジュールで充電した後の、C/5速度での放電データを示す。蓄電池は、その後5日間の放出条件に置かれ、その後図8のスケジュールで充電され、その後C/5速度で放電された(図9(b))。図9(a)及び(b)のデータには殆ど差はない。
【0103】
図10に、100サイクルの充放電の間容量損失が最小限であることを表す蓄電池のサイクル寿命データを示す。
【0104】
本発明の各種実施例を上述したが、上記実施例は一例を示す物であり、本発明は上記実施例に制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1A】本発明の実施例の格子/極板構造の詳細を示す図である。
【図1B】本発明の実施例の格子/極板構造の詳細を示す図である。
【図2】本発明の一態様による格子の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例の鉛酸蓄電池の詳細を示す図である。
【図4】本発明の実施例の鉛酸蓄電池の充放電を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例の25°Cにおける(i)C/20、(ii)C/15、(iii)C/10、(iv)C/5、(v)C/3、(vi)C/2、(vii)C、(viii)2C及び(ix)3Cの速度での鉛酸蓄電池の放電容量を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例のC/5の速度における(i)−20°C、(ii)0°C、(iii)25°C、及び(iv)50°Cでの鉛酸蓄電池の放電容量を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例の25°Cにおける(i)2C、(ii)C、(iii)C/2、(iv)C/3、(v)C/5、(vi)C/10、(vii)C/20及び(viii)定電圧充電での鉛酸蓄電池の高速充電データを示すグラフである。
【図8】本発明の実施例の、放電条件で5日間保管した後の25°Cにおける、(i)2C、(ii)C、(iii)C/2、(iv)C/3、(v)C/5、(vi)C/10、(vii)C/20及び(viii)定電圧充電での鉛酸蓄電池の高速充電データを示すグラフである。
【図9】本発明の実施例の、図8に示すスケジュール通りに充電した後、(a)保管前、及び(b)放電状態で5日間後保管後における25°C、C/5速度での鉛酸蓄電池の放電を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例の25°Cにおける100サイクルの後の鉛酸蓄電池のサイクル寿命データを示すグラフである。
【符号の説明】
【0106】
100 極板/格子構造
110 基材
120 金属層
130 鉛層
140 耐食保護層
300 蓄電池
310 極板/格子
320 極板/格子
330 吸着ガラスマット
340 ラグ(lug)
350 電槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基材材料を第1の金属層で被覆し、次に鉛/鉛合金の金属層で被覆する工程と、
(b)その上に保護層を形成して所望の格子構造を得るために、電解液を用いて、前記(a)工程の最後で得られた層の上に、オーガニックメタルを電着する工程と、
を備えた鉛酸蓄電池に用いられる耐食格子構造を製造するための電気化学的方法。
【請求項2】
前記第1の金属層が、銅またはニッケルの層である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(b)工程で用いる電解液がシュウ酸である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記オーガニックメタルが、ポリ・アニリン又は同様のオーガニックメタルを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基材の層が、プラスチックである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プラスチックが、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
所望の厚さの保護層を得るために、前記電気化学的被覆工程を複数回実行する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
2本の白金ホイル補助電極間に格子を配置して、シュウ酸中の約0.1Nポリ・アニリン溶液からポリ・アニリンの定電圧被覆を行うことにより、前記ポリ・アニリンの層が被覆される請求項4に記載の方法。
【請求項9】
(a)第1の金属層で被覆された基材材料と、
(b)前記第1の金属層上に被覆された、鉛/鉛合金層の第2の金属層と、
(c)前記鉛/鉛合金層上に電着されたオーガニックメタル層と、
を備えた鉛酸蓄電池用の耐食格子構造。
【請求項10】
前記基材材料が、プラスチックである請求項9に記載の格子構造。
【請求項11】
前記プラスチックが、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンである請求項10に記載の格子構造。
【請求項12】
前記第1の金属層が、銅またはニッケルの層である請求項9に記載の格子構造。
【請求項13】
前記オーガニックメタルは、シュウ酸を含む溶液を用いた電着により前記鉛/鉛合金上に被覆されたものであり、ポリ・アニリン又は同様のオーガニックメタルから選択される請求項9に記載の格子構造。
【請求項14】
前記第1の金属層が、前記鉛/鉛合金層の貼着をサポートする請求項9に記載の格子構造。
【請求項15】
前記基材が、2.5g/cm未満の質量密度と、300°C未満の融点と、を有する請求項9に記載の格子構造。
【請求項16】
前記基材が、約1.5g/cm未満の低い質量密度と、約175°C未満の低い融点と、を有する請求項9に記載の格子構造。
【請求項17】
前記第1の金属層が、10μm以下の厚さであり、
前記鉛/鉛合金層が、100μm以下の厚さであり、
前記保護層が15μm以下の厚さである請求項9に記載の格子構造。
【請求項18】
(a)陽極板と、
(b)格子構造を含む陰極板と、を備え、
前記格子構造は、
(i)基材と、
(ii)前記基材上に被覆された第1の金属層と、
(iii)前記第1の金属層上に被覆された、鉛/鉛金層から成る第2の金属層と、
(iv)前記鉛/鉛合金層上に被覆された、導電性且つ耐食性のオーガニックメタル層と、を有する蓄電池。
【請求項19】
前記基材が、プラスチックである請求項18に記載の蓄電池。
【請求項20】
前記基材が、約1.5g/cm未満の低い質量密度と、約175°C未満の低い融点と、を有する請求項18に記載の蓄電池。
【請求項21】
前記プラスチックが、2.5g/cm未満の質量密度と、300°C未満の融点とを有するアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンである請求項19に記載の蓄電池。
【請求項22】
前記第1の金属層が、銅またはニッケルの層である請求項18に記載の蓄電池。
【請求項23】
前記第1の金属層が、前記鉛/鉛合金層の貼着をサポートする請求項18に記載の蓄電池。
【請求項24】
前記オーガニックメタルは、導電性且つ耐食性であり、且つポリ・アニリン又はオーガニックメタル同等のものから選択され、前記鉛/鉛合金層に腐食から保護する層を形成する請求項18に記載の蓄電池。
【請求項25】
前記陰極板と、前記陽極板と、内部の電解液とを保持するための電槽を更に備えた請求項18に記載の蓄電池。
【請求項26】
前記電解液が、硫酸である請求項25に記載の蓄電池。
【請求項27】
前記第1の金属層が、10μm以下の厚さであり、
前記鉛/鉛合金層が、100μm以下の厚さであり、
前記オーガニックメタル層が、15μm以下の厚さである請求項18に記載の蓄電池。
【請求項28】
前記陰極は、前記基材、第1の金属層、鉛/鉛合金層及び前記オーガニックメタル層を含む請求項18に記載の蓄電池。
【請求項29】
前記蓄電池のファラデー効率が、90%である請求項18に記載の蓄電池。
【請求項30】
C/5の速度での容量に対して、C/20の放電速度で38%容量が増加し、3Cの放電速度で50%の容量になる請求項18に記載の蓄電池。
【請求項31】
25°Cでの容量に対して、50°Cで25%容量が増加し、
25°Cを下回る温度では、25°Cでの容量値に対して38%容量が減少する請求項
18に記載の蓄電池。
【請求項32】
高速充電では、1.5時間以内に90%の充電が可能である請求項18に記載の蓄電池。
【請求項33】
前記蓄電池の自己放電は、0.3%/日である請求項18に記載の蓄電池。
【請求項34】
容量損失は、100サイクルの間最小限である請求項18に記載の蓄電池。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−527624(P2008−527624A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548975(P2007−548975)
【出願日】平成16年12月31日(2004.12.31)
【国際出願番号】PCT/IN2004/000444
【国際公開番号】WO2006/070405
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(505185709)カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (35)
【Fターム(参考)】