説明

導電性高分子膜の製造方法及び装置

【課題】 導電性分子膜に生じる変化をリアルタイムで制御することにより、所望の導電性分子膜を作製する方法及び装置を提供する。
【解決手段】 導電性高分子膜を製造する方法であって、(1) 光照射部4からプリズム1に光を照射しながら、電源装置16から作用電極2及び対極8に通電することにより作用電極2上に導電性高分子膜Fを形成し、(2) プリズム1から出射した導電性高分子膜Fの反射光Lから受光部5により吸収スペクトルを求め、(3) 吸収スペクトルから得た導電性高分子膜Fの吸光度と導電性高分子膜Fのパラメータとの関係をコントローラ6に蓄積し、(4) 吸光度とパラメータとの関係に基づき、所望のパラメータを得るように作用電極2及び対極8への通電をコントローラ6により制御する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子膜からの反射光の吸収スペクトルを用いて所望の特性を有する導電性高分子膜を製造する方法、及びかかる導電性高分子膜の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子アクチュエータにおける導電性高分子膜の膜厚や均一性はアクチュエータの応答速度や変位率に影響するため、精確に制御することが望まれる。導電性高分子膜は、一般にモノマーの溶液に浸漬した作用電極及び対極の間に通電する電気化学的重合法により製造されている。得られた導電性高分子膜を溶液から取り出せば、原子間力顕微鏡により精確に膜厚を測定できるが、溶液から取り出して測定するのは非常に手間がかかる。
【0003】
膜厚を精確に制御するためには、膜の形成中膜厚の経時変化を測定するのが望ましい。気相反応の場合赤外線を照射しながら導電性高分子膜を形成すれば、反射型赤外線膜厚計により膜厚の経時変化を測定することができるが、電気化学的重合法により成膜する場合溶液が邪魔になるので、反射型の赤外線膜厚計により膜厚を測定することはできない。
【0004】
高分子アクチュエータ等に利用される導電性高分子膜は、安定した性能を示すように面内方向のみならず膜厚方向にも均質であることが望まれる。大きな伸縮性を示す導電性高分子膜でも膜厚方向に均質でないものは信頼性に欠けるため、実用に適しない。電気化学的重合法により形成する導電性高分子膜を膜厚方向に均質にするには、成膜速度を一定にするのが望ましい。しかし、電気化学的重合法で一般的な定電圧法又は定電流法によると、成膜速度を一定にすることができない。定電圧法の場合、膜の成長につれて電極表面と溶液との界面の電気抵抗が変化するので、印加電圧を一定にしても実際に膜に与えられる電圧は一定にならず、従って成膜速度も一定にならない。定電流法でも、膜の成長につれて膜表面の粗さが変化するために、単位面積当たりの電流が変化し、成膜速度も変化してしまう。よって、いずれの方法でも成膜速度は一定にならず、膜厚方向に均質な膜を得ることができない。
【0005】
「分析機器と解析システムに関する東京討論会講演要旨集」(非特許文献1、赤尾ら、「顕微赤外ATR法による導電性高分子膜の生成過程の分析」、57〜58頁、1995年)には、顕微赤外分光光度計のATR(Attenuated Total Reflection)プリズムを電極とし、電気化学的重合法により形成された膜の厚さを測定するシステムが記載されている。ゲルマニウムからなり、作用電極として働くATRプリズムと、対極となる金電極とをピロールを含有する溶液に浸漬し、両極間に電圧を印加すると、ATRプリズム表面にポリピロール膜が形成される。ATRプリズムを介して照射した赤外光の膜からの反射光の吸収スペクトル中には、ポリピロールに帰属するピークが確認される。しかし、均質な膜を得るために一定の速度で膜を形成する方法は知られていない。
【0006】
導電性高分子膜の酸化度は導電率に影響するので、高分子アクチュエータ以外の用途で所望の酸化度を得るという要望があるが、導電性高分子膜の酸化度を制御する方法も知られていない。「シンセティックメタルズ」(非特許文献2、第64号、A.G.ランガマニ等、91〜95頁、1994年)には、作用電極として働くケイ素プリズムと、白金電極を電解液に浸漬し、プリズムを介して導電性高分子膜に赤外光を照射することにより、酸化度を調べることが記載されているものの、導電性高分子膜の形成中にリアルタイムで酸化度を制御するには至っていない。
【0007】
【非特許文献1】「分析機器と解析システムに関する東京討論会講演要旨集」、赤尾ら、「顕微赤外ATR法による導電性高分子膜の生成過程の分析」、57〜58頁、1995年
【非特許文献2】シンセティックメタルズ、第64号、A.G.ランガマニら、「ケイ素電極上のポリピロールの全内部反射IRスペクトル」、91〜95頁、1994年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、導電性高分子膜に生じる変化とその吸収スペクトルとの相関関係から導電性高分子膜に生じさせる変化の条件を制御し、もって所望の導電性高分子膜を得る方法、及びかかる方法に用いる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者等は、導電性高分子膜に生じた変化を反映する吸収スペクトルをモニターして吸収スペクトルと導電性高分子膜の変化との相関関係を求め、その関係に基づき導電性高分子膜に生じさせる変化の条件を制御することにより、所望の導電性高分子膜が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、導電性高分子膜を製造する本発明の第一の方法は、一面に作用電極が形成されたプリズムと、前記プリズムの両側に設けられた光照射部及び受光部と、前記作用電極に開口部が面するように前記プリズムに液密に取り付けられた容器と、前記容器内に収容された導電性高分子用モノマー及びドーパントを含有する電解液と、前記電解液内に入れられた対極と、前記作用電極及び前記対極に接続した電源装置と、前記受光部及び前記電源装置に接続したコントローラとを有する装置を使用し、(1) 前記光照射部から前記プリズムに光を照射しながら、前記電源装置から前記作用電極及び前記対極に通電することにより前記作用電極上に導電性高分子膜を形成し、(2) 前記プリズムから出射した前記導電性高分子膜の反射光から前記受光部により吸収スペクトルを求め、(3) 前記吸収スペクトルから得た前記導電性高分子膜の吸光度と前記導電性高分子膜のパラメータとの関係を前記コントローラに蓄積し、(4) 前記吸光度とパラメータとの関係に基づき、所望のパラメータを得るように前記作用電極及び前記対極への通電を前記コントローラにより制御することを特徴とする。
【0011】
上記方法において、前記パラメータは好ましくは前記導電性高分子膜の膜厚であり、前記関係は好ましくは前記導電性高分子膜の膜厚と吸光度との検量線により表される。
【0012】
導電性高分子膜の酸化還元状態を変更する本発明の方法は、前記導電性高分子膜が形成された作用電極を一面に有するプリズムと、前記プリズムの両側に設けられた光照射部及び受光部と、前記作用電極に開口部が面するように前記プリズムに液密に取り付けられた容器と、前記容器内に収容されたドーパントを含有する電解液と、前記電解液内に入れられた対極と、前記作用電極及び前記対極に接続した電源装置と、前記受光部及び前記電源装置に接続したコントローラとを有する装置を使用し、(1) 前記光照射部から前記プリズムに光を照射しながら、前記電源装置から前記作用電極及び前記対極に通電することにより前記導電性高分子膜の酸化還元状態を変化させ、(2) 前記プリズムから出射した前記導電性高分子膜の反射光から前記受光部により吸収スペクトルを求め、(3) 前記吸収スペクトルから得た前記導電性高分子膜の吸光度と前記導電性高分子膜の酸化還元状態との関係を前記コントローラに蓄積し、(4) 前記吸光度と酸化還元状態の関係に基づき、所望の酸化還元状態を得るように前記作用電極及び前記対極への通電を前記コントローラにより制御することを特徴とする。
【0013】
導電性高分子膜を製造する本発明の第二の方法は、一面に作用電極が形成されたプリズムと、前記プリズムの両側に設けられた光照射部及び受光部と、前記作用電極に開口部が面するように前記プリズムに液密に取り付けられた容器と、前記容器内に収容された導電性高分子用モノマー及びドーパントを含有する電解液と、前記電解液内に入れられた対極と、前記作用電極及び前記対極に接続した電源装置と、前記受光部及び前記電源装置に接続したコントローラとを有する装置を使用し、(1) 前記光照射部から前記プリズムに光を照射しながら、前記電源装置から前記作用電極及び前記対極に通電することにより前記作用電極上に導電性高分子膜を形成し、(2) 前記プリズムから出射した前記導電性高分子膜の反射光から前記受光部により吸収スペクトルを求め、(3) 前記吸収スペクトルから求めた吸光度の経時変化と前記導電性高分子膜の膜厚との関係から、前記導電性高分子膜の成膜時間と膜厚を複数の電流レベルで求め、(4) 各電流レベルにおける前記成膜時間と膜厚との関係から微小区間における電流と成膜速度との関係を求めて、前記コントローラに蓄積し、(5) 前記電流と成膜速度との関係から、前記導電性高分子膜の成膜速度が一定となるように電流を制御することを特徴とする。
【0014】
上記いずれの方法においても、前記プリズムはケイ素、ゲルマニウム、セレン化亜鉛、臭ヨウ化タリウム、臭塩化タリウム、石英及びガラスからなる群から選択された少なくとも一種からなるのが好ましい。前記作用電極は貴金属薄膜からなるのが好ましい。前記吸収スペクトルの測定間隔は5μ秒〜60秒であるのが好ましい。前記導電性高分子はポリピロールであるのが好ましい。
【0015】
導電性高分子膜を製造する本発明の第一の装置は、一面に作用電極が形成されたプリズムと、前記プリズムの両側に設けられた光照射部及び受光部と、前記作用電極に開口部が面するように前記プリズムに液密に取り付けられた容器と、前記容器内に収容された導電性高分子用モノマー及びドーパントを含有する電解液と、前記電解液内に入れられた対極と、前記作用電極及び前記対極に接続した電源装置と、前記受光部及び前記電源装置に接続したコントローラとを有し、(a) 前記作用電極上に導電性高分子膜を形成するために、前記光照射部から前記プリズムに光を照射しながら、前記電源装置は前記作用電極及び前記対極に通電し、 (b) 前記受光部は前記プリズムから出射した前記導電性高分子膜の反射光から吸収スペクトルを求め、(c) 前記コントローラは前記吸収スペクトルから得た前記導電性高分子膜の吸光度と前記導電性高分子膜のパラメータとの関係を蓄積し、(d) 前記吸光度とパラメータとの関係に基づき、所望のパラメータを得るように、前記コントローラは前記作用電極及び前記対極への通電を制御することを特徴とする。
【0016】
導電性高分子膜の酸化還元状態を変更する本発明の装置は、前記導電性高分子膜が形成された作用電極を一面に有するプリズムと、前記プリズムの両側に設けられた光照射部及び受光部と、前記作用電極に開口部が面するように前記プリズムに液密に取り付けられた容器と、前記容器内に収容されたドーパントを含有する電解液と、前記電解液内に入れられた対極と、前記作用電極及び前記対極に接続した電源装置と、前記受光部及び前記電源装置に接続したコントローラとを有し、(a) 前記作用電極上に導電性高分子膜を形成するために、前記光照射部から前記プリズムに光を照射しながら、前記電源装置は前記作用電極及び前記対極に通電し、(b) 前記受光部は前記プリズムから出射した前記導電性高分子膜の反射光から吸収スペクトルを求め、(c) 前記コントローラは前記吸収スペクトルから得た前記導電性高分子膜の吸光度と前記導電性高分子膜の酸化還元状態との関係を蓄積し、(d) 前記吸光度と酸化還元状態の関係に基づき、所望の酸化還元状態を得るように前記コントローラは前記作用電極及び前記対極への通電を制御することを特徴とする。
【0017】
導電性高分子膜を製造する本発明の第二の装置は、一面に作用電極が形成されたプリズムと、前記プリズムの両側に設けられた光照射部及び受光部と、前記作用電極に開口部が面するように前記プリズムに液密に取り付けられた容器と、前記容器内に収容された導電性高分子用モノマー及びドーパントを含有する電解液と、前記電解液内に入れられた対極と、前記作用電極及び前記対極に接続した電源装置と、前記受光部及び前記電源装置に接続したコントローラとを有し、(a) 前記作用電極上に導電性高分子膜を形成するために、前記光照射部から前記プリズムに光を照射しながら、前記電源装置は前記作用電極及び前記対極に通電し、(b) 前記受光部は前記プリズムから出射した前記導電性高分子膜の反射光から吸収スペクトルを求め、(c) 前記コントローラは、前記吸収スペクトルから求めた吸光度の経時変化と前記導電性高分子膜の膜厚との関係から、前記導電性高分子膜の成膜時間と膜厚との関係を複数の電流レベルで求め、(d) 前記コントローラは、各電流レベルにおける前記成膜時間と膜厚との関係から微小区間における電流と成膜速度との関係を求めて蓄積し、(e) 前記コントローラは、前記電流と成膜速度との関係を用いて、前記導電性高分子膜の成膜速度が一定となるように電流を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明により導電性高分子膜に生じさせる変化をリアルタイムで制御することができるので、所望の特性を有する導電性高分子膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[1] 第一の導電性高分子膜の製造方法
(A) 導電性高分子膜製造装置
図1は、本発明の導電性高分子膜の製造方法に用いる装置の一例を示す。この装置は、板状台形プリズム1と、板状台形プリズム1の上面を被覆する作用電極としての貴金属薄膜2と、プリズム1の貴金属薄膜2上にシール15を介して逆さに設けられた容器3と、プリズム1の一端側に設けられた光照射部4と、プリズム1の他端側に設けられた受光部5と、貴金属薄膜2に接続された電源装置16と、受光部5及び電源装置16に接続されたコントローラ6とを有する。
【0020】
プリズム1は光照射部4から照射される光Lを透過する。貴金属薄膜2の厚さは光Lの波長より小さいので、光Lは貴金属薄膜2を透過する。貴金属薄膜2の厚さは1〜100 nmであるのが好ましく、5〜50 nmであるのがより好ましく、10〜20 nmであるのが特に好ましい。貴金属薄膜2は良好な導電性及び耐食性を有する。プリズム1内で光Lが屈折する回数は特に限定されず、1回でも良いし、図1に示すように複数回でも良い。
【0021】
貴金属薄膜2の上面に対して液密な容器3内には、ピロール等のモノマー及びドーパントを含有する電解液7が入れられている。電解液7には網状の対極8と、棒状の参照電極9が浸漬されている。対極8及び参照電極9の導線は、容器3の底壁31に設けられた穴31aを通って電源装置16に接続されている。コントローラ6は貴金属薄膜2及び対極8に対する通電を制御する。コントローラ6は、受光部5で感知された吸収スペクトルから求めた吸光度に基づいて、貴金属薄膜2及び対極8への通電を停止するタイミングを決定する。
【0022】
容器3の底壁31にはガス供給管20及び排気管21が貫通しており、重合反応前及び/又は重合反応中に、容器3内の気体を窒素、アルゴン等の不活性ガスに置換する。ガス供給管20は二つに分岐され、一方は電解液7中で開口し、他方は電解液7の上で開口しており、不活性ガスの供給先を切り替えられるように分岐点には三方弁20aが設けられている。
【0023】
光照射部4は、プリズム1の斜面に所定の角度で光Lを照射する。光Lの波長は導電性高分子膜Fに吸収される限り特に限定されないが、一般的には200 nm〜25000 nm程度であり、赤外線領域内であるのが好ましい。光Lは導電性高分子膜Fで反射され、プリズム1内を透過して受光部5に入射し、吸収スペクトルが測定される。吸収スペクトルを測定する時間間隔は、短いほど導電性高分子膜の形成を精確に制御できるので、60秒以下が好ましいが、現実的な下限値は5μ秒である。
【0024】
(B) 検量線
吸光度に基づいて通電の停止を決定するには、吸光度と膜厚の関係を示す検量線が必要である。検量線の作成には、図2に示すように、まず定電流又は定電圧で貴金属薄膜2と対極8との間に通電し、電解液7中のモノマーをドーパントを取り込みながら重合させ、貴金属薄膜2の上面に導電性高分子膜Fを形成する(工程1)。次いで光照射部4からプリズム1に光Lを照射し、プリズム1の下面での屈折と導電性高分子膜Fでの反射を数回繰り返させた後、反射光を受光部5に入射させ、導電性高分子膜Fの吸収スペクトルを測定し、吸光度S1を求める(工程2)。プリズム1に光Lを照射しながら導電性高分子膜Fを形成し、吸光度の経時変化を求めても良いが、検量線の作成には必須ではない。
【0025】
導電性高分子膜Fを電解液7から取り出し、原子間力顕微鏡を用いて膜厚T1を測定する(工程3)。工程2及び3により、吸光度S1を示す導電性高分子膜Fの膜厚T1が分かる。色々な通電時間で工程1〜3を繰り返すことにより、吸光度S2、S3、S4・・・とそれに対応する膜厚T2、T3、T4・・・を測定し、膜厚と吸光度の検量線を作成する(工程4)。
【0026】
(C) 導電性高分子膜の製造
図1に示す装置を使用し、得られた検量線を用いて所望の膜厚の導電性高分子膜Fを製造するため、光照射部4からプリズム1に光Lを照射しながら、電源装置16から貴金属薄膜2と対極8との間に通電し、貴金属薄膜2上に導電性高分子膜Fを形成する。導電性高分子膜Fで反射した光Lが受光部5に入射するので、受光部5は導電性高分子膜Fの吸収スペクトルを測定することができる。
【0027】
図3は、貴金属薄膜2と対極8との間に0.8 Vの電圧を印加して製造したポリピロールからなる導電性高分子膜Fに対して、3分経過するまで15秒ごとに測定した吸収スペクトルを示す。電解液7中のピロールモノマー濃度は0.3 mol/Lであり、ドーパントとなるパラトルエンスルホン酸の濃度は0.2 mol/Lである。図3(a) は波数950〜4000 cm-1における吸収スペクトルを示し、図3(b) はその一部である950〜1950 cm-1の範囲の吸収スペクトルを示す。1550 cm-1におけるピークPPrはポリピロールに帰属し、ピークPTSはパラトルエンスルホン酸に帰属する。ピロールの重合が進むにつれてピークPPrは大きくなるが、重合時間が3分を超えると、ピークの増大化ペースは低下する傾向がある。これは、ポリピロール膜が厚くなり過ぎたために、ポリピロール膜による遮光で光Lが達し難くなるためと考えられる。
【0028】
コントローラ6は、受光部5で検知した吸収スペクトルから求めた吸光度から、膜厚と吸光度の検量線を用いて導電性高分子膜Fの膜厚を求めるとともに、成膜時間と吸光度との関係から導電性高分子膜Fが所期の膜厚になるタイミングを求め、そのタイミングで通電を停止する。膜厚を精確に制御するには、導電性高分子膜Fの表面まで光Lが十分に達する必要がある。光Lが十分に達しうる膜厚の上限は導電性高分子の種類により異なるが、ポリピロール膜の場合、概ね2μmである。
【0029】
[2] 導電性高分子膜の酸化還元状態の変更方法
導電性高分子膜Fの酸化還元状態を変更するには、図1と同じ装置を用い、貴金属薄膜2上に導電性高分子膜Fが形成されたプリズム1を、モノマーを含有せずにドーパントを含有する電解液7に浸漬する。光照射部4によりプリズム1の斜面に所定の角度で光Lを照射しながら、電源装置16により貴金属薄膜2と対極8との間に通電する。通電の方向に応じて導電性高分子膜Fは酸化又は還元され、吸収スペクトルも変化する。吸収スペクトルから吸光度を求めるとともに、導電性高分子膜Fの酸化還元電位を測定する。色々な通電時間で吸光度及び酸化還元電位を測定すると、吸光度と酸化還元電位の検量線を作成できる。コントローラ6は検量線から所望の酸化還元電位のときの吸光度を決定し、吸光度と通電時間との関係から必要な通電時間を決定する。その時間通電すると、所望の酸化還元電位を有する導電性高分子膜Fを得ることができる。導電性高分子膜Fは理想的には酸化状態と還元状態との間を可逆的に往復するので、吸光度の経時変化を参照して通電の停止のタイミングを決定することにより、最も酸化した状態の導電性高分子膜Fを得たり、中性の導電性高分子膜Fを得たり、最も還元した状態の導電性高分子膜Fを得たりすることができる。
【0030】
[3] 第二の導電性高分子膜の製造方法
図4を参照して、一定の成膜速度で貴金属薄膜2上に導電性高分子膜Fを形成する方法を説明する。図1に示す装置を用い、導電性高分子膜Fの反射光の吸収スペクトル(吸光度)を測定しながら、貴金属薄膜2と対極8との間に一定の電流A1を流し、導電性高分子膜Fを形成する(工程5)。この際、各吸光度における導電性高分子膜Fの膜厚を原子間力顕微鏡を用いて測定し、電流A1における吸光度と膜厚との関係を求める。さらに吸光度の経時変化と各吸光度における膜厚から、電流A1における成膜時間と膜厚の関係を求める(工程6)。複数の電流A2、A3・・・で工程5及び6を繰り返し、それぞれ吸光度と膜厚との関係及び成膜時間と膜厚の関係を求める(工程7)。簡単化のために、図5は電流A1、A2、A3における吸光度と膜厚との関係を示し、図6は電流A1、A2、A3における成膜時間と膜厚との関係を示す。図6から明らかなように、成膜時間に対して膜厚はS字状に変化する。
【0031】
例えば図6において点線Vで表される一定の成膜速度で導電性高分子膜Fを製造するとする。図7に拡大して示すように、時刻t1からt2に短い時間Δtが経過したとき、導電性高分子膜FはT1からT2までΔTだけ厚くなる。同じ区間Δtでは、一定の電流A1、A2、A3における導電性高分子膜Fの膜厚の増分はそれぞれΔTA1,ΔTA2,ΔTA3となる。そこで、電流と導電性高分子膜Fの膜厚の増分との関係を図8に示す。電流がA1、A2、A3と変化するにつれて、導電性高分子膜Fの膜厚の増分はΔTA1,ΔTA2,ΔTA3と非直線的に変化する。従って、膜厚の増分を電流の関数としてプログラム化しておけば、区間Δt内で膜厚増分ΔTを得るのに必要な電流AXを計算できる。区間Δtでは電流を一定と仮定しても、区間Δtは非常に短いので、上記計算を全成膜時間で行えば、実質的に一定の成膜速度を得るために時間的に変化する電流を求めることができる。なお電流を制御する代わりに電圧を制御しても良い。
【0032】
[4] 導電性高分子膜製造装置の種々の例
導電性高分子膜製造装置が具備するプリズム1は、図1に示す台形状のものに限定されない。図9は三角柱状プリズム11を示す。光Lは第一斜面11aから三角柱状プリズム11に入り、導電性高分子膜Fで反射されて第二斜面11bから出る。図10は半円柱プリズム12を示す。光Lは曲面12aの一点から半円柱プリズム12に入り、導電性高分子膜Fで反射されて、曲面12aの他の点から出る。
【0033】
プリズムを構成する材料の好ましい例としてケイ素、ゲルマニウム、セレン化亜鉛、臭ヨウ化タリウム、臭塩化タリウム、石英及びガラスが挙げられる。貴金属薄膜の好ましい材料として金及び白金が挙げられる。
【0034】
図11は導電性高分子膜製造装置の別の例を示す。この装置は、導電性高分子膜Fが形成される貴金属薄膜2を有する薄板101を有する点と、薄板101の下面に複数の半円柱プリズム12の底面が付着している点以外、図1に示す例と同じであるので、以下相違点のみ説明する。なお図の簡略化のために、光照射部4、受光部5、コントローラ6、電源装置16、ガス供給管20、及び排気管21を省略する。薄板101は円柱状プリズム12と同じ屈折率を有する。貴金属薄膜2の好ましい厚さは図1に示す例と同じである。
【0035】
図11に示す例では、2つの半円柱プリズム12,12が同軸的に設けられているが、プリズム12の形状、数及び配置はこれに限定されない。プリズム12は1つ又は3つ以上でも良いし、並列に設けられても良い。プリズム12の直径は一般的に10〜200 mmであるが、10〜50 mmが好ましい。図11に示す装置により、複数箇所で吸収スペクトルを測定しながら導電性高分子膜Fを製造することができる。
【0036】
以上導電性高分子膜Fの膜厚や酸化還元状態を制御するために作用電極である貴金属薄膜2と対極8との間に与える電流又は電圧を停止したり調整したりする方法を説明したが、コントローラ6による制御はこれらに限らない。モノマー及びドーパントの供給管を容器3に設け、モノマー及び/又はドーパントの濃度を変化させるために、モノマー及び/又はドーパントの供給を制御しても良い。またコントローラ6により電解液7の温度を変えると、モノマーとドーパントの反応速度を変化させることができる。
【0037】
本発明による制御対象は、導電性高分子膜Fの膜厚、成膜速度及び酸化還元状態の他、分子集合構造(例えば導電性高分子とドーパントとの結合状態)等が挙げられる。導電性高分子とドーパントとの結合状態を制御するには、これらの結合状態に起因する吸収スペクトルのピークの高さと、X線光電子分光法(XPS)により測定した結合状態から検量線を作成し、それを参照して、ピークの測定高さに基づいて電流又は電圧を制御すればよい。
【0038】
溶媒にモノマー及びドーパントを滴下して導電性高分子膜を形成する場合、吸収スペクトルから求めた吸光度から、吸光度と膜厚の関係を示す検量線を利用して膜厚を求め、その膜厚をモニターする。例えば膜厚の増大速度(成膜速度)が一定となるように、モノマー及びドーパントの滴下速度を制御する。
【0039】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0040】
実施例1
(a) 検量線の作成
プリズム1が半円柱状である以外図1と同じ装置を用い、プリズム1上の貴金属薄膜2の上に導電性高分子膜Fを形成し、吸収スペクトルを測定した。導電性高分子の合成条件、及び吸収スペクトルの測定条件は下記のとおりとした。

電解液 ピロールモノマー:0.3 mol/L
パラトルエンスルホン酸ナトリウム:0.2 mol/L
溶媒:水
液量:20 mL
プリズム 半円柱状ケイ素結晶プリズム(φ25 mm×25 mm)
作用電極 厚さ20 nmの金薄膜
対極 白金板(20 mm×40 mm×0.5 mm)
参照電極 銀/塩化銀電極(直径4.6 mm、長さ11.5 mm)
赤外線分光装置 パーキンエルマー社製の「スペクトラムワン」
電流 0.1 A
【0041】
金薄膜2を正極とし、白金板を負極として、0.1 Aの定電流を15秒供給した後、ポリピロール膜Fが形成したプリズム1を電解液7から取り出し、原子間力顕微鏡(日本電子株式会社製、JSPM-4200)で膜厚を測定した。また通電時間を30秒、60秒、90秒及び180秒とした以外は同じ条件でポリピロール膜Fを形成し、それぞれ膜厚を測定した。吸収スペクトルから求めた吸光度と膜厚の測定結果から検量線を作成した。検量線を図12に示す。図12から、約90秒まで検量線は増分(傾斜)が次第に増大する曲線状であり、ポリピロール膜Fの成膜速度は成膜時間とともに増大していることが分かる。図12から、0.1 Aにおける成膜時間と膜厚との関係が分かる。
【0042】
(b) 成膜時間と膜厚のグラフを作成
吸収スペクトルを測定しながら、0.05 A及び0.15 Aの定電流でポリピロール膜Fを形成した。ポリピロール膜Fの製造条件、及び吸収スペクトルの測定条件は工程(a) と同じにした。0.05 A及び0.15 Aにおける吸光度と膜厚の関係を図12に併せて示す。0.05 A、0.1 A及び0.15 Aにおける成膜時間と膜厚の関係は、図6に示すようになった。
【0043】
(c) ポリピロール膜Fの製造
工程(b) で得られた各電流における成膜時間と膜厚の関係に基づき、図8に示す電流と膜厚の増分との関係を求めた。電流と膜厚の増分との関係に基づき、成膜速度が一定の10 nm/sとなるように、電流をコントローラ6により制御した。工程(a) と同じ条件で、制御した電流で金薄膜2上にポリピロール膜Fを形成した。10秒、20秒、30秒・・・60秒の成膜時間におけるポリピロール膜の膜厚を原子間力顕微鏡で測定した。ポリピロール膜Fの成膜時間と膜厚の関係を図13に示す。図13から明らかなように、電流を制御することによりほぼ一定の成膜速度が得られた。60秒の成膜時間で得られたポリピロール膜F の厚さは600 nmであった。
【0044】
比較例1
金薄膜2と対極8との間に0.8 Vの定電圧を印加した以外実施例1の工程(c) と同様にしてポリピロール膜Fを製造した。成膜時間と膜厚を図13に併せて示す。図13から明らかなように、成膜速度は一定でなかった。60秒の成膜時間で得られたポリピロール膜の膜厚は700 nmであった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の導電性高分子膜製造装置の一例を示す断面図である。
【図2】検量線の作成方法を示す工程図である。
【図3】導電性高分子膜の吸収スペクトルの経時変化を示すグラフであり、(a) は波数950 cm-1〜4000 cm-1の範囲の吸収スペクトルを示し、(b) は(a) の一部を拡大したもので、波数950 cm-1〜1950 cm-1の範囲の吸収スペクトルを示す。
【図4】導電性高分子膜の成膜時間と膜厚の関係を求める方法を示す工程図である。
【図5】各電流における吸光度と導電性高分子膜の膜厚との関係を概略的に示すグラフである。
【図6】各電流における成膜時間と導電性高分子膜の膜厚との関係を概略的に示すグラフである。
【図7】図6の一部を拡大して示すグラフである。
【図8】電流と導電性高分子膜の膜厚の増分との関係を概略的に示すグラフである。
【図9】容器が被せられたプリズムの別の例を示す断面図である。
【図10】容器が被せられたプリズムのさらに別の例を示す断面図である。
【図11】導電性高分子膜製造装置の別の例を示す図であり、(a) は縦断面図であり、(b) は(a) のX-X断面図である。
【図12】実施例1で求めた各電流における導電性高分子膜の成膜時間と吸光度の関係を示すグラフである。
【図13】実施例1及び比較例1で得られたポリピロール膜の成膜時間と膜厚との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0046】
1・・・プリズム
2・・・貴金属薄膜
3・・・容器
4・・・光照射部
5・・・受光部
6・・・コントローラ
7・・・電解液
8・・・対極
9・・・参照電極
15・・・シール
16・・・電源装置
20・・・ガス供給管
21・・・排気管
F・・・導電性高分子膜
L・・・光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性高分子膜を製造する方法であって、一面に作用電極が形成されたプリズムと、前記プリズムの両側に設けられた光照射部及び受光部と、前記作用電極に開口部が面するように前記プリズムに液密に取り付けられた容器と、前記容器内に収容された導電性高分子用モノマー及びドーパントを含有する電解液と、前記電解液内に入れられた対極と、前記作用電極及び前記対極に接続した電源装置と、前記受光部及び前記電源装置に接続したコントローラとを有する装置を使用し、(1) 前記光照射部から前記プリズムに光を照射しながら、前記電源装置から前記作用電極及び前記対極に通電することにより前記作用電極上に導電性高分子膜を形成し、(2) 前記プリズムから出射した前記導電性高分子膜の反射光から前記受光部により吸収スペクトルを求め、(3) 前記吸収スペクトルから得た前記導電性高分子膜の吸光度と前記導電性高分子膜のパラメータとの関係を前記コントローラに蓄積し、(4) 前記吸光度とパラメータとの関係に基づき、所望のパラメータを得るように前記作用電極及び前記対極への通電を前記コントローラにより制御することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性高分子膜の製造方法において、前記パラメータが前記導電性高分子膜の膜厚であり、前記関係が前記導電性高分子膜の膜厚と吸光度との検量線により表されることを特徴とする方法。
【請求項3】
導電性高分子膜の酸化還元状態を変更する方法であって、前記導電性高分子膜が形成された作用電極を一面に有するプリズムと、前記プリズムの両側に設けられた光照射部及び受光部と、前記作用電極に開口部が面するように前記プリズムに液密に取り付けられた容器と、前記容器内に収容されたドーパントを含有する電解液と、前記電解液内に入れられた対極と、前記作用電極及び前記対極に接続した電源装置と、前記受光部及び前記電源装置に接続したコントローラとを有する装置を使用し、(1) 前記光照射部から前記プリズムに光を照射しながら、前記電源装置から前記作用電極及び前記対極に通電することにより前記導電性高分子膜の酸化還元状態を変化させ、(2) 前記プリズムから出射した前記導電性高分子膜の反射光から前記受光部により吸収スペクトルを求め、(3) 前記吸収スペクトルから得た前記導電性高分子膜の吸光度と前記導電性高分子膜の酸化還元状態との関係を前記コントローラに蓄積し、(4) 前記吸光度と酸化還元状態の関係に基づき、所望の酸化還元状態を得るように前記作用電極及び前記対極への通電を前記コントローラにより制御することを特徴とする方法。
【請求項4】
導電性高分子膜を一定の成膜速度で製造する方法であって、一面に作用電極が形成されたプリズムと、前記プリズムの両側に設けられた光照射部及び受光部と、前記作用電極に開口部が面するように前記プリズムに液密に取り付けられた容器と、前記容器内に収容された導電性高分子用モノマー及びドーパントを含有する電解液と、前記電解液内に入れられた対極と、前記作用電極及び前記対極に接続した電源装置と、前記受光部及び前記電源装置に接続したコントローラとを有する装置を使用し、(1) 前記光照射部から前記プリズムに光を照射しながら、前記電源装置から前記作用電極及び前記対極に通電することにより前記作用電極上に導電性高分子膜を形成し、(2) 前記プリズムから出射した前記導電性高分子膜の反射光から前記受光部により吸収スペクトルを求め、(3) 前記吸収スペクトルから求めた吸光度の経時変化と前記導電性高分子膜の膜厚との関係から、前記導電性高分子膜の成膜時間と膜厚との関係を複数の電流レベルで求め、(4) 各電流レベルにおける前記成膜時間と膜厚との関係から微小区間における電流と成膜速度との関係を求めて、前記コントローラに蓄積し、(5) 前記電流と成膜速度との関係から、前記導電性高分子膜の成膜速度が一定となるように電流を制御することを特徴とする方法。
【請求項5】
導電性高分子膜の製造装置であって、一面に作用電極が形成されたプリズムと、前記プリズムの両側に設けられた光照射部及び受光部と、前記作用電極に開口部が面するように前記プリズムに液密に取り付けられた容器と、前記容器内に収容された導電性高分子用モノマー及びドーパントを含有する電解液と、前記電解液内に入れられた対極と、前記作用電極及び前記対極に接続した電源装置と、前記受光部及び前記電源装置に接続したコントローラとを有し、(a) 前記作用電極上に導電性高分子膜を形成するために、前記光照射部から前記プリズムに光を照射しながら、前記電源装置は前記作用電極及び前記対極に通電し、(b) 前記受光部は前記プリズムから出射した前記導電性高分子膜の反射光から吸収スペクトルを求め、(c) 前記コントローラは前記吸収スペクトルから得た前記導電性高分子膜の吸光度と前記導電性高分子膜のパラメータとの関係を蓄積し、(d) 前記吸光度とパラメータとの関係に基づき所望のパラメータを得るように、前記コントローラは前記作用電極及び前記対極への通電を制御することを特徴とする装置。
【請求項6】
導電性高分子膜の酸化還元状態を変更する装置であって、前記導電性高分子膜が形成された作用電極を一面に有するプリズムと、前記プリズムの両側に設けられた光照射部及び受光部と、前記作用電極に開口部が面するように前記プリズムに液密に取り付けられた容器と、前記容器内に収容されたドーパントを含有する電解液と、前記電解液内に入れられた対極と、前記作用電極及び前記対極に接続した電源装置と、前記受光部及び前記電源装置に接続したコントローラとを有し、(a) 前記光照射部から前記プリズムに光を照射しながら、前記電源装置は前記作用電極及び前記対極に通電し、(b) 前記受光部は前記プリズムから出射した前記導電性高分子膜の反射光から吸収スペクトルを求め、(c) 前記コントローラは前記吸収スペクトルから得た前記導電性高分子膜の吸光度と前記導電性高分子膜の酸化還元状態との関係を蓄積し、(d) 前記吸光度と酸化還元状態の関係に基づき、所望の酸化還元状態を得るように前記コントローラは前記作用電極及び前記対極への通電を制御することを特徴とする装置。
【請求項7】
導電性高分子膜を一定の成膜速度で製造する装置であって、一面に作用電極が形成されたプリズムと、前記プリズムの両側に設けられた光照射部及び受光部と、前記作用電極に開口部が面するように前記プリズムに液密に取り付けられた容器と、前記容器内に収容された導電性高分子用モノマー及びドーパントを含有する電解液と、前記電解液内に入れられた対極と、前記作用電極及び前記対極に接続した電源装置と、前記受光部及び前記電源装置に接続したコントローラとを有し、(a) 前記作用電極上に導電性高分子膜を形成するために、前記光照射部から前記プリズムに光を照射しながら、前記電源装置は前記作用電極及び前記対極に通電し、(b) 前記受光部は前記プリズムから出射した前記導電性高分子膜の反射光から吸収スペクトルを求め、(c) 前記コントローラは、前記吸収スペクトルから求めた吸光度の経時変化と前記導電性高分子膜の膜厚との関係から、前記導電性高分子膜の成膜時間と膜厚との関係を複数の電流レベルで求め、(d) 前記コントローラは、各電流レベルにおける前記成膜時間と膜厚との関係から微小区間における電流と成膜速度との関係を求めて蓄積し、(e) 前記コントローラは、前記電流と成膜速度との関係を用いて、前記導電性高分子膜の成膜速度が一定となるように電流を制御することを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−10407(P2008−10407A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140617(P2007−140617)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】