説明

導電端子の溶接方法および溶接構造

【課題】導電端子同士を抵抗溶接する場合に、プロジェクションを形成することなく良好に溶接することが出来る溶接方法、および、溶接構造を提供する。
【解決手段】金属板21a,21bの長手方向と直交する方向に突出する突出部22a,22bを、金属板21a,21bの一部に形成して、リード線11a,11bを溶接する際の溶接箇所とし、金属板21a,21bの長手方向と突出部22a,22bの突出方向とが互いに直交した状態で、リード線11aと突出部22aおよびリード線11bと突出部22bを抵抗溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電端子同士を抵抗溶接で溶接するための溶接方法および溶接構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、電子機器内部(図示省略)に通常備えられる電子部品の一例を示した図である。
図中において、200は、上述した電子部品の1つであるセラミックコンデンサであり、11p,11qは、セラミックコンデンサ200のリード線である。また、21p,21qは、セラミックコンデンサ200を取り付けるための金属板である。リード線11p,11qは、例えば、直径が0.5〔mm〕の鋼線から成り、金属板21p,21qは、例えば、厚さが1.2〔mm〕の銅板を成型した板状部材から成る。
【0003】
上記セラミックコンデンサ200を金属板21p,21qに取り付ける場合、通常、取り付け箇所において、リード線11pと金属板21pとを溶接し、リード線11qと金属板21qとを溶接する。この場合の溶接方法としては、後掲の特許文献1および特許文献2に記載されている抵抗溶接が知られている。
【0004】
抵抗溶接とは、溶接を行う金属部材同士の接触部に大電流を短時間流すことによって、電気抵抗による熱(以下、「ジュール熱」と記載)を発生させ、当該ジュール熱により接触部を溶融させることで両金属部材を接合する溶接方法である。
【0005】
図5に示すセラミックコンデンサ200と金属板21p,21qとを溶接する方法の1つとしては、例えば、プロジェクション(突起部)を金属板21p,21qの溶接箇所にそれぞれ形成して溶接する抵抗溶接が知られている(特許文献1参照)。
【0006】
詳しくは、図6を参照しながら説明する。尚、図6は、図5中のP−Q断面を示した図である。
【0007】
図6において、リード線11pとリード線11q、金属板21pと金属板21q、プロジェクション23pとプロジェクション23q、電極31pと電極31q、電極31rと電極31s、電源41pと電源41qは、それぞれ同一物で構成されているため、リード線11pと金属板21pとの溶接に係る工程と、リード線11qと金属板21qとの溶接に係る工程とは同様となる。このため、以下においては、リード線11qと金属板21qとの溶接に関する説明を省略する。
【0008】
プロジェクション(突起物)を金属板21pの面上に形成して、リード線11pと金属板21pを抵抗溶接する場合、まず、上述した銅板を切り出して板状部材を成型した後、プレス成型等により、当該板状部材の一方の面(例えば、リード線を溶接しない面)から反対の面(例えば、リード線を溶接する面)に押し出す形で、プロジェクション23pを形成して、金属板21pを成型する。
【0009】
次に、リード線11pの一部をプロジェクション23pのみに接触させる。そして、電極31pと電極31rが、リード線11p,金属板21pを挟んで対向するように、電極31pをリード線11pに所定の加圧力F2で圧接させ、電極31rを金属板21pに所定の加圧力F2で圧接させる。
【0010】
尚、この場合、セラミックコンデンサ200を金属板21pに安定した状態で取り付ける必要があるため、プロジェクション23pに接触させるリード線11pの一部としては、当該リード線の端部付近よりも中央部付近の方が好ましい。
【0011】
最後に、リード線11pと金属板21pが、電極31p,31rによってそれぞれ圧接され次第、電源41pを用いて、電極31p,31r間に大電流を短時間流す。これにより、リード線11p,金属板21pのそれぞれにおいて、前述のジュール熱が発生する。
【0012】
ここで、この様な抵抗溶接においては、電気抵抗率がそれぞれ異なるリード線11pと金属板21pが、電極31p,31r間での通電時において等しく溶融されるように、電極31p,31rがそれぞれ異なる材料(例えば、電極31pはタングステン、電極31rはクロム銅)で構成されている。
【0013】
金属板21pにプロジェクション23pを形成して抵抗溶接を行う場合、当該金属板21pの一部であるプロジェクション23pは、リード線11p,金属板21pに比べて形状が小さいため、リード線11p,金属板21pより加熱され易い。よって、プロジェクション23pは、リード線11p,金属板21pよりも早く溶融される。
【0014】
これにより、リード線11pと金属板21pとの間に、プロジェクション23pの溶融凝固部分、つまり、ナゲット(図示省略)が形成されるため、リード線11pと金属板21pとを溶接することが出来る。
【0015】
図5に示すセラミックコンデンサ200と金属板21p,21qとを溶接する他の方法としては、例えば、プロジェクション(突起部)を金属板21p,21qの溶接箇所にそれぞれ形成することなく溶接する抵抗溶接が知られている(特許文献2参照)。
【0016】
詳しくは、図7を参照しながら説明する。尚、図7は、図5中のP−Q断面を示した図である。
【0017】
図6と同様、図7においても、リード線11pとリード線11q、金属板21pと金属板21q、電極31pと電極31q、電極31rと電極31s、電源41pと電源41qは、それぞれ同一物で構成されているため、リード線11pと金属板21pとの溶接に係る工程と、リード線11qと金属板21qとの溶接に係る工程とは同様となる。このため、以下においては、リード線11qと金属板21qとの溶接に関する説明を省略する。
【0018】
プロジェクション(突起物)を金属板21pの面上に形成することなく、リード線11pと金属板21pを抵抗溶接する場合、まず、上述した銅板を切り出して板状部材を成型し、当該板状部材を金属板21pとする。
【0019】
次に、リード線11pと金属板21pを接触させ、その後、溶接箇所において、電極31pと電極31rがリード線11p,金属板21pを挟んで対向するように、電極31pをリード線11pに所定の加圧力F3で圧接させ、電極31rを金属板21pに所定の加圧力F3で圧接させる。
【0020】
尚、この場合においても、セラミックコンデンサ200を金属板21pに安定した状態で取り付ける必要があるため、リード線11p側の溶接箇所としては、当該リード線の端部付近よりも中央部付近の方が好ましい。
【0021】
最後に、リード線11pと金属板21pが、電極31p,31rによってそれぞれ圧接され次第、電源41pを用いて、電極31p,31r間に大電流を短時間流す。これにより、リード線11p,金属板21pのそれぞれにおいて、前述のジュール熱が発生する。
【0022】
ここで、この様な抵抗溶接においても、前述と同様、電気抵抗率がそれぞれ異なるリード線11pと金属板21pが、電極31p,31r間での通電時において等しく溶融されるように、電極31p,31rがそれぞれ異なる材料(例えば、電極31pはタングステン、電極31rはクロム銅)で構成されている。
【0023】
尚、この場合、リード線11pと金属板21pとの接触面において、電気抵抗による発熱が最大となるため、当該発熱によってリード線11pの一部(接触面側)と金属板21pの一部(接触面側)がそれぞれ溶融する。
これにより、リード線11pと金属板21pとの接触面に、それぞれの溶融凝固部分、つまり、ナゲット(図示省略)が形成されるため、リード線11pと金属板21pとを溶接することが出来る。
【0024】
特許文献1には、熱容量の小さな低融点金属端子と熱容量の大きな高融点金属板との何れかにプロジェクション突起を形成し、コンデンサ式抵抗溶接機を用いて該低融点金属端子と該高融点金属板とを電極間で溶接する場合に、プロジェクション突起を熱容量の小さな該低融点金属端子に形成し、溶接時の該プロジェクション突起の熱を熱容量の大きな高融点金属板側に放熱させる異種金属端子の抵抗溶接方法が記載されている。
【0025】
特許文献2には、板状リード片と断面円形のリード線との重合部に端面を対接させて溶接を行うための一対の電極板として、互いに厚さの異なる電極板を用い、当該一対の電極板の内、厚い方の電極板をリード線の延長方向側に配置して溶接するリード接続方法が記載されている。
【0026】
【特許文献1】特許第2747506号公報
【特許文献2】特許第2666988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
抵抗溶接により、直径が0.5〔mm〕のリード線を金属板に溶接する場合、良好に溶接を行うための金属板の厚さとしては、0.64〔mm〕〜0.8〔mm〕の厚さが一般的である。
このため、金属板の厚みが上記の厚みを超える場合、特に、リード線の直径の2倍以上の厚みである場合は、リード線と金属板を良好に溶接することが困難となる。
【0028】
また、図6に示すように、金属板21p,21qの面上にプロジェクション23p,23qをそれぞれ形成して、リード線11pと金属板21p、リード線11qと金属板21qをそれぞれ抵抗溶接する場合は、当該金属板21p,21qにおいて、プロジェクション23p,23qの形成による歪みが生じる場合がある。特に、厚みのある金属板の面上にプロジェクションを形成する場合は、当該歪みが大きくなる。
このため、電子機器(図示省略)の組立て時において、前述の歪みに起因した部品のズレが生じる恐れがあるため、上記抵抗溶接を用いて、セラミックコンデンサ200が取り付けられた金属板21p,21qの大量生産を図ることが困難となる。
【0029】
また、上記問題に加えて、プロジェクション23p,23qを形成することにより、金属板21p,21qをそれぞれ成型する際の工数が増えるため、コストが増大するという問題も生じる。
【0030】
さらに、図7に示すように、金属板21p,21qの面上にプロジェクションを形成することなく、リード線11pと金属板21p、リード線11qと金属板21qをそれぞれ抵抗溶接する場合は、金属板21p,21qおいて生じたジュール熱が、当該金属板21p,21qの全体に拡散してしまうため、熱分布の状態が悪くなり、リード線11pと金属板21p、リード線11qと金属板21qをそれぞれ同等に溶融させることが出来ず、また、熱分布状態の悪化により、溶接箇所のみを集中して加熱させることが出来ない。
【0031】
詳しくは、熱の拡散により、金属板21p,21qの方が、リード線11p,11qよりも加熱され難くなるため、リード線11pと金属板21p、リード線11qと金属板21qのそれぞれの接触面において、リード線11p,11qが、金属板21p,21qよりも早く溶融してしまう。つまり、金属板21p,21qが溶融するまでの間に、リード線11p,11qが過度に溶融されてしまう。
【0032】
これにより、リード線11p,11qのそれぞれの溶接箇所において、図8に示すような、紙面に対して垂直方向に押し潰された扁平部12p,12qが、電極31p,31q側に面したリード線11p,11qにそれぞれ生じてしまうため、溶接強度が低下するという問題が生じる。
【0033】
また、上記問題に加えて、ジュール熱が金属板21p,21qの全体に拡散することによって、溶接不要な箇所にまで溶接が及ぶ他、リード線11p,11qが過熱されることにより、溶接箇所において爆飛が生じる場合もある。
【0034】
本発明は、上述した問題点に鑑み、導電端子同士を抵抗溶接により溶接する場合に、プロジェクションを形成することなく良好に溶接することが出来る溶接方法、および、溶接構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明に係る溶接方法は、第1の導電端子と第2の導電端子とを抵抗溶接する導電端子の溶接方法において、第2の導電端子に形成された、当該端子の長手方向と直交する方向に突出する突出部に、第1の導電端子を接触させ、第1の導電端子の長手方向と突出部の突出方向とが互いに直交した状態で、第1の導電端子に第1の電極を圧接し、突出部に第2の電極を圧接して、各電極間に電流を流すことにより、第1の導電端子と突出部とをそれらの接触面において溶着させる。
【0036】
このようにすることで、第1の電極と第2の電極間に通電した場合に、当該通電によって第2の導電端子に生じるジュール熱が、当該第2の導電端子の全体に拡散することを抑制することが出来るため、端子の厚みが厚い場合においても、プロジェクションを設けることなく、第1の導電端子と第2の導電端子を良好に溶接することが出来る。
【0037】
本発明の溶接方法においては、突出部の突出方向の長さを、当該突出部の突出方向と直交する方向の幅および第1の導電端子の幅よりも長くし、突出部の幅を、第1の導電端子の長さよりも短くすることが好ましい。
【0038】
このようにすることで、熱分布を良好にすることが出来るため、第1の導電端子が過度に溶融されることなく、つまり、第1の電極によって押し潰された扁平部を生じることなく、第1の導電端子と第2の導電端子を溶接することができ、以って、良好な溶接強度により溶接することが出来る。
【0039】
本発明の溶接方法において、好ましくは、第1の導電端子の幅d〔mm〕を、0.5≦d≦0.75とし、第2の導電端子の厚さt〔mm〕を、1.0≦t≦1.8とする。
【0040】
本発明の溶接方法において、好ましくは、突出部の突出方向の長さx〔mm〕を、x≧3とし、突出部の突出方向と直交する方向の幅y〔mm〕を、1.5≦y≦2とする。
【0041】
本発明の溶接方法において、第1の導電端子を、断面が円形状の鋼線とし、第2の導電端子を、平板状の銅板としてもよい。
【0042】
このようにすることで、溶接される導電端子に特殊な材料を用いることなく、従来から使用されている電子部品に対して、そのまま当該溶接方法を適用することが出来る。
【0043】
本発明の溶接方法において、第1の電極をクロム銅で構成し、第2の電極をタングステンで構成してもよい。
【0044】
このようにすることで、第1の導電端子と第2の導電端子の電気抵抗率が互いに異なる場合、つまり、鋼線から成る第1の導電端子と銅板から成る第2の導電端子を溶接する場合においても、第1の導電端子と第2の導電端子を等しく溶融させることが出来るため、第1の導電端子が過度に溶融されることなく、つまり、扁平部を生じることなく、第1の導電端子と第2の導電端子を溶接することができ、以って、良好な溶接強度により溶接することが出来る。
【0045】
本発明に係る溶接構造は、第1の導電端子と第2の導電端子とを抵抗溶接した導電端子の溶接構造であって、第2の導電端子は、当該端子の長手方向と直交する方向に突出する突出部を有しており、第1の導電端子は、当該端子の長手方向と突出部の長手方向とが互いに直交した状態で、突出部に抵抗溶接されている。
【0046】
このようにすることで、第1の電極と第2の電極間に通電した場合に、当該通電によって第2の導電端子に生じるジュール熱が、当該第2の導電端子の全体に拡散することを抑制することが出来るため、端子の厚みが厚い場合においても、プロジェクションを設けることなく第1の導電端子と第2の導電端子を良好に溶接することが出来る。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、通電によって生じるジュール熱が、端子全体に拡散することを抑制することが出来るため、プロジェクションを形成することなく第1の導電端子と第2の導電端子を良好に溶接することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
尚、後述する図1〜図4において、同一部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0049】
図1は、本発明に係る溶接方法および溶接構造の一実施形態を示す図である。
図中において、100は、セラミックコンデンサであり、21a,21bは、セラミックコンデンサ100を取り付けるための金属板(リードフレーム)である。
本実施形態においては、リード線11a,11bの直径が0.5〔mm〕〜0.75〔mm〕程度であり、かつ、鋼線から成るリード線11a,11bを有するセラミックコンデンサ100が使用され、また、厚さが1.0〔mm〕〜1.8〔mm〕程度である銅板を後述する形状に成型した金属板21a,21bが使用される。
例えば、図1において、セラミックコンデンサ100のリード線11a,11bの直径dは、0.5〔mm〕であり、また、金属板21a,21bの厚さt(図2参照)は、1.2〔mm〕である。ここで、リード線11a,11bは、本発明の第1の導電端子の一実施形態であり、金属板21a,21bは、本発明の第2の導電端子の一実施形態である。
【0050】
ここで、前述したように、直径が0.5〔mm〕のリード線を抵抗溶接により金属板に溶接する場合、良好に溶接を行うための金属板の厚さとしては、0.64〔mm〕〜0.8〔mm〕の厚さが一般的である。
このため、本実施形態のように、金属板21a,21bの厚みが上記の厚みを超える場合、特に、リード線11a,11bの直径の2倍以上の厚みである場合は、リード線11aと金属板21a,リード線11bと金属板21bをそれぞれ良好に溶接出来ない場合がある。
【0051】
そこで、本実施形態においては、金属板21a,21bの厚みが厚い場合においても、リード線11aと金属板21a,リード線11bと金属板21bをそれぞれ良好に溶接するため、以下の手段を講じる。
【0052】
まず、金属板の一部が、当該金属板の面と同一面において長手方向と直交する方向に突出するように、前述した銅板を切断する等して、金属板21a,21bを成型する。
詳しくは、図1に示すように、金属板21a,21bの長手方向aと直交する方向bの寸法(以下、「長さ」と記載)がx〔mm〕、当該長手方向aと同一方向の寸法(以下、「幅」と記載)がy〔mm〕である突出部22a,22bが、金属板21a,21bの一部にそれぞれ形成される。
【0053】
本実施形態においては、リード線11a,11bの直径dおよび/または金属板21a,21bの厚さtに応じて、長さxと幅yとの関係がx>yであり、かつ、x≧3.0,1.5≦y≦2.0となる様に、突出部22a,22bをそれぞれ形成する。
例えば、図1において、金属板21a,21bに形成された突出部22a,22bの長さxは4.0〔mm〕であり、幅yは1.5〔mm〕である。
【0054】
次に、上記のように成型した金属板21a,21bに、セラミックコンデンサ100を取り付ける。ここで、取り付け方法に関し、図1および図2を参照しながら説明する。尚、図2は、図1中のA−Bにおける断面を示した図である。
【0055】
金属板21a,21bにセラミックコンデンサ100を取り付ける場合、図1,図2に示すように、リード線11aと金属板21aとを接触させて抵抗溶接し、リード線11bと金属板21bとを接触させて抵抗溶接する。
【0056】
詳しくは、リード線11aを金属板21aに溶接する場合、図1に示すように、リード線11aの長手方向(a方向)と、突出部22aの突出方向(b方向)が直交するように、リード線11aの一部と突出部22aを接触させる。
その後、図2に示すように、電極31aと電極31cが、リード線11a,突出部22aを挟んで対向するように、電極31aをリード線11aに所定の加圧力F1で圧接させ、電極31cを突出部22aに所定の加圧力F1で圧接させる。これにより、リード線11a,突出部22aが、電極31a,31cにより、加圧力F1で挟み込まれる。ここで、電極31aは、本発明の第1の電極の一実施形態であり、電極31cは、本発明の第2の電極の一実施形態である。
【0057】
同様に、リード線11bを金属板21bに溶接する場合、リード線11bの長手方向(a方向)と、突出部22bの突出方向(b方向)が直交するように、リード線11bの一部と突出部22bを接触させる(図1参照)。
その後、電極31bと電極31dが、リード線11b,突出部22bを挟んで対向するように、電極31bをリード線11bに所定の加圧力F1で圧接させ、電極31dを突出部22bに所定の加圧力F1で圧接させる(図2参照)。これにより、リード線11b,突出部22bが、電極31b,31dにより、加圧力F1で挟み込まれる。ここで、電極31bは、本発明の第1の電極の一実施形態であり、電極31dは、本発明の第2の電極の一実施形態である。
【0058】
そして、リード線11aと突出部22aとが、電極31a,31cによって圧接され次第、電源41aを用いて、電極31a,31c間に大電流を短時間流し、リード線11bと突出部22bとが、電極31b,31dによって圧接され次第、電源41bを用いて、電極31b,31d間に大電流を短時間流す。
【0059】
本実施形態においては、電極31a,31cおよび電極31b,31dにより負荷される加圧力F1の大きさは、120〔N〕である。
また、同じ大きさの電流を流した場合に、電気抵抗率の大きい鋼線から成るリード線11a,11bに比べて、電気抵抗率の小さい銅板から成る突出部22a,22bの方が加熱されにくいため、電極31a,31c間および電極31b,31d間での通電時において、リード線11aと突出部22a,リード線11bと突出部22bをそれぞれの接触面において等しく溶融させるべく、電極31a,31bを電気抵抗率の小さいクロム銅で構成し、電極31c,31dを電気抵抗率の大きいタングステンで構成する。
【0060】
以上のような溶接方法および溶接構造において、電極31a,31c間および電極31b,31d間に流す電流の大きさを2.4〔kA〕〜2.8〔kA〕の範囲で変化させるとともに、通電時間を20〔ms〕〜40〔ms〕で変化させて、リード線11aと突出部22aおよびリード線11bと突出部22bを抵抗溶接した場合、当該溶接による溶接強度は、図3の表51に示すような結果となった。
尚、表51の溶接強度は、溶接されたリード線11aと突出部22aおよびリード線11bと突出部22bをそれぞれ引き剥がす際に要した力を測定することで得られた測定結果である。
【0061】
図3中において、51aは、電極31a,31c間に流した電流の大きさ(以下、「通電量」と記載)を示しており、51bは、電極31a,31c間に電流を流した時間(以下、「通電時間」と記載)を示している。
また、51cは、リード線11aと突出部22aとの溶接箇所における溶接強度を示しており、通電量51aと通電時間51bをそれぞれ変化させた場合の各測定結果である。
尚、本実施形態においては、電極31b,31dによってリード線11bと突出部22bを抵抗溶接した場合も、表51と同様の結果が得られたため、以下において説明を省略する。
【0062】
図3の表51において、例えば、通電量51aを2.4〔kA〕とし、通電時間51bを20〔ms〕として、電極31a,31c間に通電した場合の溶接強度51cは、10.20〔N〕である。つまり、溶接されたリード線11aと突出部22aを引き剥がす場合、10.20〔N〕の力が必要となる。
同様に、通電量51aを2.8〔kA〕とし、通電時間51bを40〔ms〕として、電極31a,31c間に通電した場合の溶接強度51cは、46.88〔N〕である。つまり、溶接されたリード線11aと突出部22aを引き剥がす場合、46.88〔N〕の力が必要となる。
【0063】
ここで、表51における各溶接強度51cは、サンプリング数が1である場合の溶接強度であるため、本発明の発明者は、サンプリング数を更に増やす(例えば、サンプリング数を100とする)ことにより、リード線11aと突出部22aとを良好に溶接するための条件、つまり、電極31a,31c間の通電における通電量51aと通電時間51bの良好な組み合わせの検証を行った。
【0064】
種々の組み合わせを試行した結果、通電量51aを2.6〔kA〕とし、通電時間51bを30〔ms〕とした場合、リード線11aは、図4中の斜線部12aに示す状態で溶接された。詳しくは、リード線11aが、突出部22aに沈み込んだ状態で溶接されていることが確認され、これに加えて、溶接されたリード線11aと突出部22aを引き剥がした場合、突出部22a側において、筒状のナゲットが形成されていることが確認された。
【0065】
これにより、当該抵抗溶接において、電極31aによって押し潰された扁平部がリード線11aの溶接箇所に生じることなく、当該リード線11aと突出部22aとが良好に溶接されていることが実証されたため、本実施形態におけるリード線11aと突出部22aとを良好に溶接するための条件は、表51中の斜線部で囲まれる部分、つまり、通電量51aを2.6〔kA〕とし、通電時間51bを30〔ms〕とした場合である。表51では、このときの溶接強度は、41.38〔N〕となっている。
【0066】
このように、上述した実施形態においては、金属板21a,21bの一部に、当該金属板よりも小さい突出部22a,22bを形成して、リード線11a,11bを溶接する際の溶接箇所とし、リード線11a,11bの長手方向と、突出部22a,22bの突出方向がそれぞれ直交するように、リード線11aの一部と突出部22aを接触させ、リード線11bの一部と突出部22bを接触させるため、電極31a,31c間および電極31b,31d間において通電した場合に、当該通電によって突出部22a,22bに生じるジュール熱が、金属板21a,21bの全体に拡散することを抑制することが出来る。
【0067】
これにより、溶接箇所のみを集中して加熱させることが出来るため、リード線と当該リード線の直径の2倍以上の厚みがある金属板を溶接する場合においても、リード線11aと金属板21a、リード線11bと金属板21bをそれぞれ良好に溶接することが出来る。
【0068】
また、熱分布を良好にすることが出来るため、リード線11a,11bが過度に溶融されることなく、つまり、図8に示すような扁平部12p,12qが生じることなく、リード線11aと金属板21a、リード線11bと金属板21bがそれぞれ溶接される。よって、当該溶接において、ナゲットの形成を安定化することが出来るため、溶接強度が低下する恐れはない。
【0069】
さらに、溶接箇所を限定することが出来るため、溶接不要な箇所にまで溶接が及ぶことを抑制することが出来る。
【0070】
また、上述した実施形態においては、金属板21a,21bにプロジェクションの形成を必要としないため、金属板21a,21bにおいて、成型に因る歪みが生じる恐れがなく、以って、電子機器(図示省略)の組立て時において、金属板21a,21bの歪みに起因した部品のズレが生じる恐れもない。加えて、金属板21a,21bの成型において、プロジェクションを形成するための工程が含まれないため、当該金属板の成型時におけるコストを抑えることが出来る。
【0071】
本発明では、以上述べた以外にも種々の実施形態を採用することができる。例えば、上記実施形態では、セラミックコンデンサのリード線を金属板に取り付けたが、これに限られず、その他の電子部品(例えば、半導体等)のリード線を金属板に取り付けても良い。
【0072】
また、上記実施形態では、リード線と金属板を抵抗溶接したが、これに限られず、長さおよび幅が互いに異なる導電端子同士(例えば、金属棒と金属板)を抵抗溶接しても良い。
【0073】
また、上記実施形態では、リード線に鋼線を使用し、金属板に銅板を使用したが、これに限られず、リード線と金属板を同様の材料(例えば、鉄)から構成しても良い。
【0074】
さらに、上記実施形態では、突出部を四角形状としたが、これに限られず、突出部の強度が保たれ、かつ、金属板の長手方向と直交する方向の長さが、当該長手方向の幅よりも長い形状(例えば、半楕円形)としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0075】

【図1】本発明の実施形態である溶接方法および溶接構造を示した図である。
【図2】図1のA―B断面図である。
【図3】溶接強度を示した表である。
【図4】本発明の溶接方法により溶接されたセラミックコンデンサと金属板の一例を示した図である。
【図5】従来の溶接方法および溶接構造を示した図である。
【図6】図5のP―Q断面図である。
【図7】従来の他の溶接方法および溶接構造を示した断面図である。
【図8】従来の溶接方法により溶接されたセラミックコンデンサと金属板の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0076】
11a,11b リード線
21a,21b 金属板
22a,22b 突出部
31a,31b 電極
31c,31d 電極
41a,41b 電源
100 セラミックコンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電端子と第2の導電端子とを抵抗溶接する導電端子の溶接方法において、
前記第2の導電端子に形成された、当該端子の長手方向と直交する方向に突出する突出部に、前記第1の導電端子を接触させ、
前記第1の導電端子の長手方向と前記突出部の突出方向とが互いに直交した状態で、前記第1の導電端子に第1の電極を圧接し、前記突出部に第2の電極を圧接して、各電極間に電流を流すことにより、前記第1の導電端子と前記突出部とをそれらの接触面において溶着させることを特徴とする導電端子の溶接方法。
【請求項2】
請求項1に記載の導電端子の溶接方法において、
前記突出部の突出方向の長さは、当該突出部の突出方向と直交する方向の幅および前記第1の導電端子の幅よりも長く、前記突出部の幅は、前記第1の導電端子の長さよりも短いことを特徴とする導電端子の溶接方法。
【請求項3】
請求項1に記載の導電端子の溶接方法において、
前記第1の導電端子の幅d〔mm〕は、0.5≦d≦0.75であり、前記第2の導電端子の厚さt〔mm〕は、1.0≦t≦1.8であることを特徴とする導電端子の溶接方法。
【請求項4】
請求項1に記載の導電端子の溶接方法において、
前記突出部の突出方向の長さx〔mm〕は、x≧3であり、前記突出部の突出方向と直交する方向の幅y〔mm〕は、1.5≦y≦2であることを特徴とする導電端子の溶接方法。
【請求項5】
請求項1に記載の導電端子の溶接方法において、
前記第1の導電端子は、断面が円形状の鋼線であり、前記第2の導電端子は、平板状の銅板であることを特徴とする導電端子の溶接方法。
【請求項6】
請求項5に記載の導電端子の溶接方法において、
前記第1の電極はクロム銅で構成され、前記第2の電極はタングステンで構成されることを特徴とする導電端子の溶接方法。
【請求項7】
第1の導電端子と第2の導電端子とを抵抗溶接した導電端子の溶接構造において、
前記第2の導電端子は、当該端子の長手方向と直交する方向に突出する突出部を有し、前記第1の導電端子は、当該端子の長手方向と前記突出部の長手方向とが互いに直交した状態で、前記突出部に抵抗溶接されていることを特徴とする導電端子の溶接構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−27316(P2010−27316A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185514(P2008−185514)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】