説明

導電粒子、その製造方法及び絶縁被覆導電粒子の製造方法、並びに異方導電性接着剤フィルム

【課題】狭ピッチ化、狭面積化された回路電極の接続において、接続不良を十分防止できる異方導電性接着剤フィルム、その実現を可能とする絶縁被覆導電粒子の製造方法、並びに、そのような絶縁被覆導電粒子を得ることを可能とする導電粒子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の導電粒子は、ニッケル層上に形成された平均膜厚300Å以下の金層を最外層として有する導電粒子であって、X線光電子分光分析による導電粒子の表面におけるニッケル及び金の元素組成比(Ni/Au)が0.4以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電粒子、その製造方法及び絶縁被覆導電粒子の製造方法、並びに異方導電性接着剤フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示用ガラスパネルに液晶駆動用ICを実装する方式は、COG(Chip−on−Glass)実装とCOF(Chip−on−Flex)の2種類に大別することができる。COG実装では、導電粒子を含む異方導電性接着剤を用いて液晶用ICを直接ガラスパネル上に接合する。一方、COF実装では、金属配線を有するフレキシブルテープに液晶駆動用ICを接合し、導電粒子を含む異方導電性接着剤を用いてそれらをガラスパネルに接合する。ここでいう異方導電性とは、加圧方向には導通し、非加圧方向では絶縁性を保つという意味である。
【0003】
近年、液晶表示の高精細化に伴い、液晶駆動用ICの回路電極である金バンプは狭ピッチ化、狭面積化が進んでいる。このような状況下では、異方導電性接着剤の導電粒子が隣接する回路電極間に流出してショートを発生させることが問題となる。また、隣接する回路電極間に導電粒子が流出すると、金バンプとガラスパネルとの間に補足される異方導電性接着剤中の導電粒子数が減少し、対抗する回路電極間の接続抵抗が上昇し、接続不良を起こすことも問題となる。
【0004】
そこで、これらの問題を解決する方法として、異方導電性接着剤の少なくとも片面に絶縁性の接着剤を形成することで、COF実装又はCOF実装における接合品質の低下を防ぐ方法(特許文献1を参照)、導電粒子の全表面を絶縁性の被膜で被覆する方法(特許文献2を参照)、及び、絶縁性の子粒子を導電性粒子表面に被覆させる方法(特許文献3及び4を参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−279371号公報
【特許文献2】特許第2794009号公報
【特許文献3】特許第2748705号公報
【特許文献4】国際公開第03/02955号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように異方導電性接着層の片面に絶縁性の接着層を形成する方法では、バンプ面積が3000μm2未満の場合において、対向する回路電極間で安定した導通性を得るために十分な導電粒子を異方導電性接着剤組成物に含有させると、隣り合う電極間の絶縁性が十分ではなくなってしまう。また、特許文献2のように、導電粒子の全表面を絶縁性の被膜で被覆する方法は、隣り合う電極間の絶縁性を高くすることができるものの、対向する回路電極間の導通性が低くなりやすく、未だ改善の余地がある。
【0007】
また、絶縁性の粒子を導電性の導電粒子の表面に被覆させる方法では、絶縁性粒子と導電粒子との接着性を確保するため、絶縁性粒子としてアクリル等の樹脂製のものを用いることが必要である。このため、回路を熱圧着する際に、樹脂製の絶縁性粒子が溶融して導電粒子の全表面が被覆されてしまい、導電粒子の全表面を絶縁性の被膜で被覆する方法と同様に、対向する回路電極間の導通性が不十分となる。
【0008】
特許文献3及び4には、絶縁性の子粒子として、比較的高硬度で溶融温度が高い無機酸化物が記載されている。このような無機酸化物で導電粒子を被覆する方法として、例えば、特許文献4には、シリカ表面を3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランで処理して表面にイソシアネート基を有するシリカを作成し、その一方で、金めっき層を最外層として有する金属表面粒子を2−アミノエタンチオールで処理して金属表面に官能基であるアミノ基を形成した導電粒子を作成し、この導電粒子のアミノ基と上記シリカのイソシアネート基とを反応させて絶縁被覆導電粒子を得る方法が記載されている。このような方法においては、粒子表面を金が完全に覆っていることが望ましい。しかし、近年、コスト低減の観点から、金膜厚を低減する傾向にある。金の平均膜厚が300Å以下になると、金が金の内側(通常はニッケル)の金属を完全に被覆することは難しい。この場合、絶縁性子粒子の被覆率をコントロールするのが難しくなる。また、上記従来の絶縁被覆導電粒子では、超音波分散が施されると絶縁性子粒子の被覆率が低下し、回路電極間の絶縁性及び対向する回路電極間の導通性の双方を十分確保することが困難となり、接続不良が発生する場合のあることが本発明者らの検討により判明している。
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、狭ピッチ化、狭面積化された回路電極の接続において、接続不良を十分防止できる異方導電性接着剤の実現を可能とする絶縁被覆導電粒子の製造方法、並びに、そのような絶縁被覆導電粒子を得ることを可能とする導電粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、狭ピッチ化、狭面積化された回路電極の接続において、接続不良を十分防止できる異方導電性接着剤フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、ニッケル層上に形成された平均膜厚300Å以下の金層を最外層として有する導電粒子であって、X線光電子分光分析による導電粒子の表面におけるニッケル及び金の元素組成比(Ni/Au)が0.4以下であることを特徴とする導電粒子を提供する。
【0011】
本発明の導電粒子によれば、上記構成を有することにより、導電粒子表面に強固な官能基を十分形成することができる。このような本発明の導電粒子によれば、十分な量の絶縁性子粒子によって強固に被覆された絶縁被覆導電粒子を得ることが可能となる。そして、この絶縁被覆導電粒子によれば、超音波分散が施された場合であっても、回路電極間の絶縁性及び対向する回路電極間の導通性の双方を十分確保することができ、狭ピッチ化、狭面積化された回路電極の接続において、接続不良を十分防止できる異方導電性接着剤が有効に実現可能となる。
【0012】
本発明の導電粒子は、絶縁性維持の観点から、粒径が4.0μm以下であることが好ましい。粒径が4.0μmを超える場合、ショート不良が発生しやすくなる傾向にある。
【0013】
本発明はまた、本発明の導電粒子の製造方法であって、コア粒子の表面にニッケルめっきを施してニッケル層を形成する工程と、ニッケル層上に金めっきを施して金層を形成する工程と、形成された金層の表面に存在するニッケルを除去する工程とを備える導電粒子の製造方法を提供する。
【0014】
本発明の導電粒子の製造方法においては、シアン或いはEDTAを含む水溶液によって上記金層の表面に存在するニッケルを除去することができる。
【0015】
本発明はまた、本発明の導電粒子の最外層表面と、メルカプト基、スルフィド基及びジスルフィド基からなる群より選択される少なくとも一つの基と所定の官能基とを有する化合物とを接触させて、導電粒子の最外層表面に所定の官能基が形成された官能基含有導電粒子を得る工程と、官能基含有導電粒子と絶縁性子粒子とを接触させる工程とを備える、上記官能基含有導電粒子の表面が上記絶縁性子粒子で被覆されてなる絶縁被覆導電粒子の第1の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の絶縁被覆導電粒子の第1の製造方法によれば、本発明の導電粒子に対して上記一連の工程が施されることにより、超音波分散が施された場合であっても、回路電極間の絶縁性及び対向する回路電極間の導通性の双方を十分確保することができる絶縁被覆導電粒子を得ることができる。そして、得られる絶縁被覆導電粒子によれば、狭ピッチ化、狭面積化された回路電極の接続において、接続不良を十分防止できる異方導電性接着剤が有効に実現可能となる。
【0017】
本発明はまた、本発明の導電粒子の最外層表面と、メルカプト基、スルフィド基及びジスルフィド基からなる群より選択される少なくとも一つの基と所定の官能基とを有する化合物とを接触させて、導電粒子の最外層表面に所定の官能基が形成された官能基含有導電粒子を得る工程と、官能基含有導電粒子と高分子電解質とを接触させて、官能基含有導電粒子の表面が高分子電解質で被覆されてなる高分子電解質被覆導電粒子を得る工程と、高分子電解質被覆導電粒子と絶縁性子粒子とを接触させる工程とを備える、上記官能基含有導電粒子の表面が上記高分子電解質及び上記絶縁性子粒子で被覆されてなる絶縁被覆導電粒子の第2の製造方法を提供する。
【0018】
本発明の絶縁被覆導電粒子の第2の製造方法によれば、本発明の導電粒子に対して上記一連の工程が施されることにより、超音波分散が施された場合であっても、回路電極間の絶縁性及び対向する回路電極間の導通性の双方を十分確保することができる絶縁被覆導電粒子を得ることができる。そして、得られる絶縁被覆導電粒子によれば、狭ピッチ化、狭面積化された回路電極の接続において、接続不良を十分防止できる異方導電性接着剤が有効に実現可能となる。
【0019】
本発明の絶縁被覆導電粒子の第2の製造方法において、上記高分子電解質としてポリアミン類を用いることができる。
【0020】
また、上記ポリアミン類は、高電荷密度の観点から、ポリエチレンイミンであることが好ましい。
【0021】
本発明の絶縁被覆導電粒子の第1及び2の製造方法において、上記所定の官能基が、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基及びアルコキシカルボニル基のうちのいずれかであることが好ましい。
【0022】
また、上記絶縁性子粒子が、無機酸化物であることが好ましい。更に、無機酸化物は、シリカ粒子であることが好ましい。
【0023】
本発明はまた、本発明の絶縁被覆導電粒子の第1又は第2の製造方法の製造方法により得られる絶縁被覆導電粒子と、絶縁性樹脂組成物と、を含有する異方導電性接着剤組成物をフィルム状に形成してなることを特徴とする異方導電性接着剤フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、狭ピッチ化、狭面積化された回路電極の接続において、接続不良を十分防止できる異方導電性接着剤の実現を可能とする絶縁被覆導電粒子の製造方法、並びに、そのような絶縁被覆導電粒子を得ることを可能とする導電粒子及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、狭ピッチ化、狭面積化された回路電極の接続において、接続不良を十分防止できる異方導電性接着剤フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態にかかる異方導電性接着剤フィルムの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる異方導電性接着剤フィルムを用いて接続される回路接続体の製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる異方導電性接着剤フィルムを用いて接続された回路接続体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0027】
まず、本発明の導電粒子について説明する。本発明の導電粒子は、ニッケル層上に形成された平均膜厚300Å以下の金層を最外層として有する導電粒子であって、X線光電子分光分析による導電粒子の表面におけるニッケル及び金の元素組成比(Ni/Au)が0.4以下であることを特徴とする。
【0028】
導電粒子としては、コア粒子をめっきにより金属で被覆したものが挙げられる。
【0029】
コア粒子は、金属コア粒子、有機コア粒子及び無機コア粒子のいずれかを用いることができるが、導通信頼性の点で、有機コア粒子を用いることが好ましい。
【0030】
有機コア粒子の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0031】
有機コア粒子をめっき等で被覆する場合、その金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、パラジウム、ニッケル、錫、クロム、チタン、アルミニウム、コバルト、ゲルマニウム、カドミウム等の金属やITO、はんだといった金属化合物が挙げられる。
【0032】
有機コア粒子を被覆する金属層の構造は特に限定されないが、本発明においては、最外層が金層であり、その内側にニッケル層を有する二層構造が好ましい。なお、ニッケル層の内側に銅等の金属層が更に設けられていてもよい。
【0033】
上記のニッケル/金の二層構造は、例えば、有機コア粒子の表面に無電解ニッケルめっきを行った後、置換金めっきを行う方法により形成することができる。めっき以外の形成方法としてスパッタ法や蒸着法等も挙げられるが、数百Åレベルでの膜厚制御を視野に入れた場合、めっき法が好ましい。ニッケル層の厚みは特に限定されないが、100〜2000Åの範囲が好ましく、500〜1000Åの範囲がより好ましい。
【0034】
有機コア粒子の表面にニッケルめっきによりニッケル層を形成する工程は、まずニッケルめっきを施す前にパラジウム触媒を有機コア粒子表面に付与し、その後無電解ニッケルめっきを施すことにより実施できる。
【0035】
無電解ニッケルめっき液を構成する成分としては、例えば、硫酸ニッケルや塩化ニッケル等の水溶性ニッケル塩、次亜りん酸ナトリウム、水素化ほう素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン等の還元剤、クエン酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、グリシン等のアミノ酸、エチレンジアミン、アルキルアミン等のアミン類、その他のアンモニウム、EDTA、ピロリン酸等が挙げられる。
【0036】
無電解ニッケルめっき終了後は、水洗を短時間に効率よく行うことが好ましい。水洗時間が短いほど、ニッケル表面に酸化皮膜ができにくいため、置換金めっきが有利になる。また、通常、無電解ニッケルめっき終了後、メンブレンフィルタ等を用いて濾過が行われるが、この場合もニッケルの酸化を防ぐために濾過を迅速に行うことが好ましい。
【0037】
続いて、ニッケル層上に置換金めっきにより平均膜厚300Å以下の金層を形成する。置換金めっきは、ニッケルめっき工程を経た後の粒子を置換金めっき液に浸漬することにより行うことができる。置換金めっき液の組成としては、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、クエン酸二ナトリウム及びシアン化金カリウムを含み、水酸化ナトリウムでpHが調整された無電解めっき液等が挙げられる。
【0038】
近年、コスト低減の観点から、金の膜厚を低減して原価を抑制する傾向にあるが、金層の平均膜厚を300Å以下にすることによりコスト低減の要求を達成することが容易となる。
【0039】
ところで、置換金めっきにより平均膜厚が300Å以下の金層を形成すると、金めっき表面にニッケルが露出しやすくなる傾向がある。厚み300Å以下の金めっき層を有する市販の導電粒子について、導電粒子の表面におけるニッケル及び金の元素組成比(Ni/Au)(金の比率を1としたときのニッケルの比率)をX線光電子分光分析(ESCA)により測定したところ、表2に示すようにいずれも0.4を超す値を示すことが本発明者らの検討により判明している。なお、本明細書において、導電粒子の表面におけるニッケル及び金の元素組成比(Ni/Au)は、表1に示すESCA条件により得られる値を指す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
表2に示すように、一般に市販されている金めっき粒子は表面のNi/Au比がかなり大きい。これに対して、本発明の導電粒子は、X線光電子分光分析による導電粒子の表面におけるニッケル及び金の元素組成比(Ni/Au)が0.4以下であることが必要である。
【0043】
導電粒子表面のNi/Au比を下げる方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0044】
まず、置換金めっきにおいて金の被覆率が上がらない要因のひとつとして、金めっきが施されるニッケル表面の酸化がある。そのため、ニッケルめっき後の水洗時間を短くすること(具体的には常温で120秒以内)や、濾過時間を短くすることが、Ni/Au比を下げる方法として挙げられる。また、ニッケルめっき後にEDTAやシアンを含む洗浄液でニッケル層表面を洗浄することも、上記の問題を低減する方法として有効である。
【0045】
また、置換金めっきは、既に形成されているニッケル層を溶解しながら金を析出させるため、どうしても金皮膜上にニッケル層が形成されやすい。そのため、溶出したニッケルを溶解する工程を置換金めっき後に設けることが有効である。
【0046】
上記の工程としては、例えば、シアン或いはEDTA(エチレンジアミン四酢酸、或いはその塩)を含む水溶液、好ましくは、0.01〜0.1モル/リットルのEDTAを含む水溶液や0.01〜0.1モル/リットルのシアン化物イオン(シアン化ナトリウム等)を含む水溶液で金めっき表面を洗浄する方法が挙げられる。これにより、金層上に存在するニッケルを除去することができる。
【0047】
また、プラズマや他の物理的手法により金層表面に存在するニッケルを除去する工程を設けてもよい。
【0048】
以上のような手段により、導電粒子表面におけるニッケル及び金の元素組成比(Ni/Au)を0.4以下とすることができる。
【0049】
本発明の導電粒子は、後の工程で、最外層である金層と、メルカプト基、スルフィド基及びジスルフィド基からなる群より選択される少なくとも一つの基と所定の官能基とを有する化合物とを接触させることにより、粒子上に強固な官能基を形成することが可能になる。粒子表面にニッケルが存在していると、粒子上に強固な官能基を形成することが難しくなるが、本発明の導電粒子によれば、表面におけるニッケル及び金の元素組成比(Ni/Au)が0.4以下であることにより、導電粒子表面に強固な官能基を十分な量形成することができる。なお、ニッケル及び金の元素組成比(Ni/Au)が0.4を超えると、絶縁性子粒子によって被覆された絶縁被覆導電粒子を作製したときに、絶縁性子粒子の剥離の問題が生じやすくなる。
【0050】
本発明の導電粒子の粒径は、接続する基板の電極の最小間隔よりも小さいことが好ましく、電極の高さにばらつきがある場合には、高さのばらつきよりも大きいことが好ましい。このような観点から、本発明の導電粒子の粒径は、1〜10μmの範囲が好ましく、1〜5μmの範囲がより好ましく、2.0〜4.0μmの範囲がさらにより好ましく、2.0〜3.5μmの範囲が特に好ましい。
【0051】
次に、本発明に係る絶縁被覆導電粒子及びその製造方法について説明する。
【0052】
本発明に係る絶縁被覆導電粒子は、上記本発明の導電粒子を絶縁性子粒子で被覆することにより得ることができる。
【0053】
絶縁性子粒子としては、無機酸化物微粒子が好ましい。有機微粒子を用いると、異方導電性接着剤を作製する工程で絶縁性子粒子が変形しやすいため安定した特性が得られ難くなる。
【0054】
無機酸化物微粒子としては、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニオブ、亜鉛、錫、セリウム、マグネシウムの各元素を含む酸化物が好ましい。これらは単独で又は二種類以上を混合して使用することができる。
【0055】
無機酸化物微粒子は、絶縁信頼性の観点から、分散溶液中のアルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオン濃度が100ppm以下となるものが好ましい。このような無機酸化物微粒子として、例えば、金属アルコキシドの加水分解反応、いわゆるゾルゲル法により製造されるものが好適に用いることができる。
【0056】
無機酸化物微粒子の大きさは、BET法による比表面積換算法又はX線小角散乱法で測定された粒子径が20nm〜500nmであることが好ましい。無機酸化物微粒子の粒子径が20nmよりも小さいと、導電粒子に吸着された無機酸化物微粒子が絶縁膜として作用しにくくなり、一部にショートが発生しやすくなる。一方、無機酸化物微粒子の粒子径が500nmよりも大きいと、接続回路の加圧方向の導電性が得られにくくなる。
【0057】
上記の酸化物の中でも、絶縁性に優れ、粒子径が制御されていることから、水分散コロイダルシリカ(SiO2)が好ましい。このような無機酸化物微粒子は、例えば、スノーテックス、スノーテックスUP(日産化学工業社製)、クオートロンPLシリーズ(扶桑化学工業社製)等が市販品として入手可能である。また、水分散コロイダルシリカ(SiO2)は、粒子径を揃えやすい、安価であるといった特徴以外に、表面に水酸基を有することから導電粒子との結合性に優れるという利点を有する。
【0058】
なお、無機酸化物表面の水酸基は、シランカップリング剤等でアミノ基やカルボキシル基、エポキシ基に変性することが可能であるが、無機酸化物の粒子径が500nm未満の場合、変性が困難となる傾向にある。シリカ等の酸化物は、官能基で修飾させた後に行う遠心分離や濾過の際に凝集してしまうという不具合を発生しやすい。そのため、上記の粒子径を有する無機酸化物微粒子は、官能基の変性を行わずに導電粒子に被覆することが望ましい。
【0059】
ところで、水酸基は、一般的に、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基などの官能基と強固な結合を形成することができる基として知られている。水酸基と上記の官能基との結合様式としては、脱水縮合による共有結合や水素結合が挙げられる。本発明においては、導電粒子表面にこれらの官能基を形成して官能基含有導電粒子を得た後、この官能基含有導電粒子を絶縁性子粒子で被覆して絶縁被覆導電粒子を得る方法が好ましい。
【0060】
このような絶縁被覆導電粒子の製造方法の第1実施形態として、上記本発明の導電粒子の最外層表面と、メルカプト基、スルフィド基及びジスルフィド基からなる群より選択される少なくとも一つの基と所定の官能基とを有する化合物とを接触させて、導電粒子の最外層表面に所定の官能基が形成された官能基含有導電粒子を得る工程と、官能基含有導電粒子と絶縁性子粒子とを接触させる工程とを備え、上記官能基含有導電粒子の表面が上記絶縁性子粒子で被覆されてなる絶縁被覆導電粒子を得る方法が挙げられる。
【0061】
また、別の好適な第2実施形態として、上記本発明の導電粒子の最外層表面と、メルカプト基、スルフィド基及びジスルフィド基からなる群より選択される少なくとも一つの基と所定の官能基とを有する化合物とを接触させて、導電粒子の最外層表面に所定の官能基が形成された官能基含有導電粒子を得る工程と、官能基含有導電粒子と高分子電解質とを接触させて、官能基含有導電粒子の表面が高分子電解質で被覆されてなる高分子電解質被覆導電粒子を得る工程と、高分子電解質被覆導電粒子と絶縁性子粒子とを接触させる工程とを備え、上記官能基含有導電粒子の表面が上記高分子電解質及び上記絶縁性子粒子で被覆されてなる絶縁被覆導電粒子を得る方法が挙げられる。
【0062】
本発明の導電粒子は金層を最外層として有しているため、金に対して配位結合を形成するメルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基のいずれかを有する化合物を用いて、金表面に水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基などの所定の官能基を形成することができる。このような化合物として、具体的には、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸メチル、メルカプトコハク酸、チオグリセリン、システイン等が挙げられる。
【0063】
本発明の導電粒子の表面におけるニッケル/金比は0.4以下であるため、導電粒子表面上に強固に官能基を形成することができる。
【0064】
本発明の導電粒子の最外層表面と、上記化合物とを接触させる方法としては、特に限定されないが、例えば、メタノールやエタノール等の有機溶媒中にメルカプト酢酸等の化合物を10〜100mmol/l程度分散し、その中に本発明の導電粒子を分散させる方法が挙げられる。
【0065】
官能基含有導電粒子が、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基を有する導電粒子の場合、表面電位(ゼータ電位)は通常(pHが中性領域であれば)マイナスである。一方、絶縁性子粒子として水酸基を有する無機酸化物を用いる場合、その表面電位も通常マイナスである。このような場合、表面電位がマイナスの粒子の周囲に表面電位がマイナスの粒子を被覆するのは難しいため、上記第2実施形態の方法により絶縁被覆導電粒子を製造することが好ましい。
より具体的な製造方法としては、官能基を有する導電粒子(官能基含有導電粒子)を、(1)高分子電解質溶液に分散し、導電粒子の表面に高分子電解質を吸着させた後、リンスする工程、(2)(1)の工程で得られた高分子電解質被覆導電粒子を無機酸化物微粒子などの絶縁性子粒子の分散溶液に分散し、高分子電解質被覆導電粒子の表面に絶縁性子粒子を吸着させた後、リンスする工程を行うことで、高分子電解質と絶縁性子粒子とが積層された絶縁性被覆膜で皮膜された絶縁被覆導電粒子を製造できる。このような方法は、交互積層法(Layer−by−Layer assembly)と呼ばれる。交互積層法は、G.Decherらによって1992年に発表された有機薄膜を形成する方法である(Thin Solid Films, 210/211, p831(1992))。この方法では、正電荷を有するポリマー電解質(ポリカチオン)と負電荷を有するポリマー電解質(ポリアニオン)の水溶液に、基材を交互に浸漬することで基板上に静電的引力によって吸着したポリカチオンとポリアニオンの組が積層されて複合膜(交互積層膜)を得ることができる。
【0066】
交互積層法では、静電的な引力によって、基材上に形成された材料の電荷と、溶液中の反対電荷を有する材料が引き合うことにより膜成長するので、吸着が進行して電荷の中和が起こるとそれ以上の吸着が起こらなくなる。したがって、ある飽和点までに至れば、それ以上膜厚が増加することはない。また、Lvovらは交互積層法を、微粒子に応用し、シリカやチタニア、セリアの各微粒子分散液を用いて、微粒子の表面電荷と反対電荷を有する高分子電解質を交互積層法で積層する方法を報告している(Langmuir、Vol.13、(1997)p6195−6203)。この方法を用いると、負の表面電荷を有するシリカの微粒子とその反対電荷を持つポリカチオンであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)またはポリエチレンイミン(PEI)などとを交互に積層することで、シリカ微粒子と高分子電解質が交互に積層された微粒子積層薄膜を形成することが可能である。
【0067】
上記(1)及び(2)の工程に示されるように、被処理粒子を高分子電解質溶液又は無機酸化物微粒子などの絶縁性子粒子の分散液に浸漬後、反対電荷を有する絶縁性子粒子の分散液又は高分子電解質溶液に浸漬する前に、溶媒のみのリンスによって余剰の高分子電解質溶液又は絶縁性子粒子の分散液を洗い流すことが好ましい。
【0068】
このようなリンスに用いる溶媒としては、水、アルコール、アセトンなどが挙げられる。過剰な高分子電解質溶液又は絶縁性子粒子の分散液除去の点から、比抵抗値が18MΩ・cm以上のイオン交換水(いわゆる超純水)を用いることが好ましい。なお、被処理粒子に吸着した高分子電解質及び絶縁性子粒子は、このリンスの工程で剥離することはない。
【0069】
また、上記のリンスを行うことによって、高分子電解質が無機酸化物微粒子などの絶縁性子粒子の分散液に持ち込まれること、及び、無機酸化物微粒子などの絶縁性子粒子が高分子電解質溶液に持ち込まれることを防止することができる。なお、持ち込みによって溶液内でカチオン及びアニオンが混ざると、高分子電解質と無機酸化物微粒子などの絶縁性子粒子の凝集や沈殿が発生する場合がある。
【0070】
本実施形態において使用される高分子電解質溶液としては、高分子電解質を、水又は水と水溶性の有機溶媒の混合溶媒に溶解したものが挙げられる。水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0071】
高分子電解質としては、水溶性又は水と有機溶媒との混合液に可溶なものであり、水溶液中で電離し、荷電を有する官能基を主鎖または側鎖に持つ高分子を用いることができる。このような高分子としてはポリカチオンが好ましい。また、ポリカチオンとしては、ポリアミン類等のように正荷電を帯びることのできる官能基を有するもの、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジン、ポリアクリルアミド、並びに、これらのモノマー単位を少なくとも1種以上を含む共重合体などが挙げられる。
【0072】
上記のポリカチオンのうちポリエチレンイミンは、電荷密度が高く、官能基含有導電粒子との結合力が強いことから好ましく用いることができる。
【0073】
高分子電解質の分子量は、用いる高分子電解質の種類により一概には定めることができないが、一般に、500〜200,000程度のものが好ましい。
【0074】
また、高分子電解質は、エレクトロマイグレーションや腐食を避けるために、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)イオン、及びアルカリ土類金属(Ca、Sr、Ba、Ra)イオン、ハロゲン化物イオン(フッ素イオン、クロライドイオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)を含まないものが好ましい。
【0075】
高分子電解質溶液中の高分子電解質の濃度は、0.01〜10質量%程度が好ましい。高分子電解質溶液のpHは、特に限定されない。
【0076】
上記の高分子電解質溶液を用いることにより、官能基を形成した本発明の導電粒子の表面に欠陥なく均一に絶縁性子粒子を被覆することができ、狭ピッチの回路電極間の絶縁性と対向する回路電極間の導通性の双方を十分確保することができる絶縁被覆導電粒子をより有効に実現できる。
【0077】
本実施形態においては、官能基含有導電粒子の表面に吸着される高分子電解質の種類や分子量、濃度を調整することによって、官能基含有導電粒子が絶縁性子粒子によって被覆されている表面の割合、すなわち被覆率をコントロールすることができる。
【0078】
具体的にはポリエチレンイミン等、電荷密度の高い高分子電解質を用いた場合、絶縁性子粒子の被覆率が高くなる傾向があり、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド等、電荷密度の低い高分子電解質を用いた場合、上記被覆率が低くなる傾向がある。また、高分子電解質の分子量が大きい場合、上記被覆率が高くなる傾向があり、高分子電解質の分子量が小さい場合、上記被覆率が低くなる傾向がある。なお、結合力という観点で見た場合、高分子電解質の分子量は10,000以上が好ましい。さらに、高分子電解質を高濃度で用いた場合、上記被覆率が高くなる傾向があり、高分子電解質4を低濃度で用いた場合、上記被覆率が低くなる傾向がある。
【0079】
上記被覆率が高い場合は、同一基板上で隣り合う回路電極間の絶縁性が高くなり、対向する回路電極間の導通性が低下する傾向があり、上記被覆率が低い場合は、上記導通性が高くなり、上記絶縁性が低下する傾向がある。
【0080】
絶縁性子粒子は、官能基含有導電粒子又は高分子電解質被覆導電粒子の表面を一層で被覆していることが好ましい。官能基含有導電粒子又は高分子電解質被覆導電粒子の表面に絶縁性子粒子を複数層積層すると、絶縁性子粒子の積層量のコントロールが困難になる傾向がある。絶縁性子粒子による官能基含有導電粒子又は高分子電解質被覆導電粒子の表面の被覆率は20〜100%の範囲であることが好ましく、30%〜60%の範囲であることがより好ましい。
【0081】
以上のようにして作製された絶縁被覆導電粒子を、加熱乾燥することにより絶縁性子粒子と官能基含有導電粒子又は高分子電解質被覆導電粒子との結合力を一層強化することができる。また加熱を真空で行なうことが、金属のさび防止の観点から好ましい。結合力が増す理由としては、官能基含有導電粒子の表面のカルボキシル基等の官能基と絶縁性粒子の表面の水酸基との化学結合が新たに形成されることによるものや、官能基含有導電粒子の表面のカルボキシル基等の官能基と高分子電解質被覆導電粒子のアミノ基等の官能基との脱水縮合によるものなどが考えられる。絶縁被覆導電粒子の加熱乾燥は60℃〜200℃、10〜180分の範囲で行うことが好ましい。温度が60℃より低い場合、または加熱時間が10分より短い場合は、絶縁性子粒子が剥離し易い傾向があり、温度が200℃より高い場合、または加熱時間が180分より長い場合は、絶縁被覆導電粒子が変形する傾向がある。
【0082】
次に、本発明の異方導電性接着剤フィルムについて説明する。
【0083】
図1は、本発明の一実施形態にかかる異方導電性接着剤フィルムの断面図である。本実施形態の異方導電性接着剤フィルム50は、上述の通り作製した本発明に係る絶縁被覆導電粒子10が接着剤としても機能する絶縁性の樹脂組成物12の中に分散している異方導電性接着剤組成物をフィルム状に形成したものである。なお、図1において、絶縁被覆導電粒子10は、官能基含有導電粒子8の表面が高分子電解質及び絶縁性子粒子6で被覆されてなるものであるが、高分子電解質は便宜上図示していない。
【0084】
本実施形態にかかる異方導電性接着剤組成物に用いられる樹脂組成物12としては、熱反応性樹脂と硬化剤との混合物を用いることができる。このうち、エポキシ樹脂と潜在性硬化剤との混合物を用いることが好ましい。潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、及びジシアンジアミド等を用いることができる。本発明の別の実施形態として、樹脂組成物12には、ラジカル反応性樹脂と有機過酸化物との混合物や紫外線などのエネルギー線硬化性樹脂を用いることができる。
【0085】
エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールA、ビスフェノールF、又はビスフェノールAD等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラック又はクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂、ナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのエポキシ樹脂は、エレクトロマイグレーション防止の観点から、不純物イオン(Na、Cl等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが好ましい。
【0086】
樹脂組成物12には、回路接着後の応力を低減するため、又は接着性を向上するために、上述の成分に加えてブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等を混合することができる。
【0087】
異方導電性接着剤組成物は、フィルム形成性の観点から樹脂組成物12にフェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂(フィルム形成性高分子)を配合することが好ましい。これらのフィルム形成性高分子を配合することは、反応性樹脂の硬化時の応力を緩和できる観点からも好ましい。また、接着性向上の観点から、フィルム形成性高分子が水酸基等の官能基を有することがより好ましい。なお、異方導電性接着剤組成物はペースト状にしてもよい。
【0088】
フィルム形成は、エポキシ樹脂、アクリルゴム、潜在性硬化剤を含む樹脂組成物12を有機溶剤に溶解又は分散して液状化し、絶縁被覆導電粒子10を加えて分散させ、剥離性基材上に塗布して硬化剤の活性温度以下で溶剤を除去することにより行われる。有機溶剤としては、樹脂組成物12の溶解性向上の観点から、芳香族炭化水素系と含酸素系との混合溶剤が好ましい。
【0089】
異方導電性接着剤組成物中の絶縁被覆導電粒子10の割合は、隣り合う電極間の絶縁性及び対向する電極間の導通性を良好にする観点から、異方導電性接着剤組成物全体を基準として、0.1〜30体積%が好ましく、1〜25体積%がより好ましい。
【0090】
異方導電性接着剤フィルム50の厚みは、絶縁被覆導電粒子10の粒径及び異方導電性接着剤組成物の特性を考慮して相対的に決定されるが、1〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましい。異方導電性接着剤フィルム50の厚みが1μm以下では充分な接着性が得られない傾向があり、100μm以上では対向する回路電極間の導通性を得るために多量の絶縁被覆導電粒子10を必要とする傾向があり現実的ではない。
【0091】
図2は、本発明の一実施形態にかかる異方導電性接着剤フィルムを用いて接続される回路接続体の製造方法を示す断面図である。なお、図2において官能基含有導電粒子8の表面に吸着されている高分子電解質は便宜上図示していない。
【0092】
第一の回路部材は第一の基板21の表面21a上に第一の電極22を備える。第二の回路部材は第二の基板31の表面31a上に第二の電極32を備える。ここでいう基板とは、ガラス基板やポリイミド等のテープ基板、ドライバーIC等のベアチップ、リジット型のパッケージ基板等が挙げられる。
【0093】
第一の回路部材20と第二の回路部材30との間に、上述した異方導電性接着剤フィルム50を介在させる。このとき、第一の回路電極22及び第二の回路電極32が相互に対向するように、第一の回路部材20及び第二の回路部材30を配置する。
【0094】
次に、回路部材20及び回路部材30を介して異方導電性接着剤フィルム50を加熱しながら図2の矢印A及び矢印Bの方向に加圧して回路接続体を形成する。硬化処理は、紫外線照射や加熱など一般的な方法により行うことが可能であり、その方法は樹脂組成物12により適宜選択される。
【0095】
図3は、本発明の一実施形態にかかる異方導電性接着剤フィルムを用いて接続された回路接続体の断面図である。このようにして接続された回路接続体は、対向する回路電極22と回路電極32との間の導通性と、同一基板上で隣り合う回路電極22同士及び回路電極32同士の間の絶縁性とに優れる。なお、図3において官能基含有導電粒子8の表面に吸着されている高分子電解質は便宜上図示していない。
【実施例】
【0096】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0097】
<導電粒子の作製>
(導電粒子1)
平均粒径3.8μmの架橋ポリスチレン粒子1gを、パラジウム触媒であるアトテックネネオガント834(アトテックジャパン株式会社製:商品名)を8質量%含有するパラジウム触媒化液100mLに添加し、これを30℃で30分攪拌した後、φ3μmのメンブレンフィルタで濾過し、水洗を行うことにより、パラジウム触媒が付与された樹脂微粒子を得た。次に、この樹脂微粒子を、pH6.0に調整された0.5質量%ジメチルアミンボラン液に添加し、表面が活性化された樹脂微粒子を得た。
【0098】
次に、表面が活性化された樹脂微粒子を蒸留水に浸漬し、超音波分散した。その後、懸濁液を50℃で攪拌しながら、硫酸ニッケル6水和物50g/L、次亜リン酸ナトリウム一水和物20g/L、ジメチルアミンボラン2.5g/L、及びクエン酸50g/LからなるpHを7.5に調整した無電解めっき液Aを徐々に添加し、樹脂微粒子の無電解ニッケルめっきを行った。このとき、サンプリングと原子吸光分析によって、ニッケルの膜厚を確認し、ニッケル膜厚が700Åになった時点で無電解めっき液Aの添加を中止した。濾過後、100mLの純水による洗浄を60秒間行い、表面に700Åのニッケル膜を有する樹脂微粒子Aを作製した。
【0099】
続いて、0.03モル/リットルのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、0.04モル/リットルのクエン酸三ナトリウム及び0.01モル/リットルのシアン化金カリウムを含み、水酸化ナトリウムでpH6に調整されためっき液を作製し、このめっき液で樹脂微粒子Aを、液温60℃の条件で、金めっきの平均膜厚が200Åとなるまで処理した。処理後の樹脂微粒子Aを濾過し、100mLの純水による洗浄を60秒間行い、ニッケル膜上に平均膜厚が200Åの金膜が形成された最外層を有する樹脂微粒子Bを作製した。次に、樹脂微粒子Bを、0.03モル/リットルのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、0.04モル/リットルのクエン酸三ナトリウム及び0.01モル/リットルのシアン化ナトリウムを含み、水酸化ナトリウムでpH6に調整された液で、60℃1分の条件で処理し、表面のニッケル除去を行った。その後、表面のニッケル除去を行った粒子をイソプロピルアルコールに浸漬し、真空乾燥機にて乾燥処理して、導電粒子1を作製した。
【0100】
(導電粒子2)
0.03モル/リットルのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、0.04モル/リットルのクエン酸三ナトリウム及び0.01モル/リットルのシアン化金カリウムを含み、水酸化ナトリウムでpH6に調整されためっき液の代わりにシアン化金カリウム含有の市販置換金めっき液(IM−GoldST:日本高純度化学製)を用いて金めっきの平均膜厚が280Åとなるまで樹脂微粒子Aを処理したこと以外は、導電粒子1と同様にして導電粒子2を作製した。
【0101】
(導電粒子3)
金めっき後、0.03モル/リットルのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム及び0.04モル/リットルのクエン酸三ナトリウムを含み、水酸化ナトリウムでpH6に調整された液を用い、60℃1分の条件で表面のニッケル除去を行ったこと以外は、導電粒子2と同様にして導電粒子3を作製した。
【0102】
(導電粒子4)
金めっき後、0.04モル/リットルのクエン酸三ナトリウム及び0.01モル/リットルのシアン化ナトリウムを含み、水酸化ナトリウムでpH6に調整された液を用い、60℃1分の条件で表面のニッケル除去を行ったこと以外は、導電粒子2と同様にして導電粒子4を作製した。
【0103】
(導電粒子5)
平均粒径3.8μmの架橋ポリスチレン粒子1gの代わりに、平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子1gを用いたこと以外は、導電粒子1と同様にして導電粒子5を作製した。
【0104】
(導電粒子6)
平均粒径3.8μmの架橋ポリスチレン粒子1gの代わりに、平均粒径3.0μmの架橋ポリスチレン粒子1gを用いたこと以外は、導電粒子1と同様にして導電粒子6を作製した。
【0105】
(導電粒子7)
平均粒径3.8μmの架橋ポリスチレン粒子1gの代わりに、平均粒径2.5μmの架橋ポリスチレン粒子1gを用い、φ3μmのメンブレンフィルタに代えて、φ1μmのメンブレンフィルタを用いたこと以外は、導電粒子1と同様にして導電粒子7を作製した。
【0106】
(導電粒子8)
置換金めっきの浸漬時間を調整して、金めっきの平均膜厚を150Åとしたこと以外は、導電粒子1と同様にして導電粒子8を作製した。
【0107】
(導電粒子9)
0.03モル/リットルのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、0.04モル/リットルのクエン酸三ナトリウム及び0.01モル/リットルのシアン化ナトリウムを含み、水酸化ナトリウムでpH6に調整された液にて、60℃1分の条件で表面のニッケル除去を行う工程を省略したこと以外は、導電粒子1と同様にして導電粒子9を作製した。
【0108】
(導電粒子10)
無電解ニッケルめっきを施した樹脂微粒子を濾過した後、100mLの純水による洗浄を600秒行ったこと以外は、導電粒子1と同様にして導電粒子10を作製した。
【0109】
(導電粒子11)
平均粒径3.75μmのプラスチックに、ニッケルめっきと平均膜厚280Åの金めっきが施された市販の導電粒子(AUEL00375AS:積水化学工業株式会社製)を導電粒子11とした。
【0110】
(導電粒子12)
平均粒径3μmのプラスチックに、ニッケルめっきと平均膜厚280Åの金めっきが施された市販の導電粒子(AU203A:積水化学工業株式会社製)を導電粒子12とした。
【0111】
(導電粒子13)
平均粒径3μmのプラスチックに、ニッケルめっきと平均膜厚280Åの金めっきが施された市販の導電粒子(AU203AF:積水化学工業株式会社製)を導電粒子13とした。
【0112】
上記で得られた導電粒子1〜13について、下記に示す方法に従って、X線光電子分光分析(ESCA)による導電粒子表面のニッケル及び金の元素組成比(Ni/Au)を求めた。
【0113】
(ESCAによる導電粒子表面のNi/Auの比)
導電粒子1〜13をそれぞれ平面状導電テープ上に散布して敷き詰め、測定試料とした。この試料のΦ1.1mmの円内の導電粒子表面について、表3に示す測定条件にてESCAにより成分比観察を行った。なお、測定粒子数は1万個以上とした。
【0114】
【表3】

【0115】
ところで、ESCAで導電粒子を測定した場合、ニッケルや金以外にも炭素や酸素といった成分が検出される。CやOは空気中での有機物汚染であるため、これらの成分は無視して、Ni/Au比を求めた。なお、参考のため、導電粒子11及び12についての成分観察結果(原子%)を表4に示す。この場合、導電粒子11のNi/Au比は0.62、導電粒子12のNi/Au比は0.77と計算される。
【0116】
【表4】

【0117】
得られた結果を表5に示す。表5には、コア粒子の粒径、導電粒子作製時の履歴として、ニッケルめっき後の水洗時間、金めっきの平均膜厚及び金めっき後の洗浄方法も合わせて示す。なお、金めっきの平均膜厚については、下記の方法により算出した。
【0118】
(金めっきの平均膜厚)
導電粒子を50vol%王水に浸漬して金めっきを溶解させた後、樹脂粒子をφ3μmのメンブレンフィルタで濾別して取り除き、原子吸光分析により金元素の含有量を測定した。得られた値とコア粒子の粒径から金めっきの厚みを換算し、これを金めっきの平均膜厚とした。
【0119】
【表5】

【0120】
<絶縁被覆導電粒子の作製>
上記で得られた導電粒子1〜13を用い、下記の手順で絶縁被覆導電粒子1〜16を作製した。
【0121】
(絶縁被覆導電粒子1)
まず、メルカプト酢酸8mmolをメタノール200mlに溶解させた反応液を作製した。次に、導電粒子1を1g、上記反応液に加え、スリーワンモーターと直径45mmの攪拌羽を用いて室温で2時間攪拌した。反応後の導電粒子をメタノールで洗浄後、φ3μmのメンブレンフィルタで濾過して、表面にカルボキシル基を有する官能基含有導電粒子1gを得た。
【0122】
次に、重量平均分子量70000の30質量%ポリエチレンイミン水溶液(和光純薬工業株式会社製、商品名:30%ポリエチレンイミン P−70溶液)を超純水で希釈して0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液を得た。この0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液に上記の官能基含有導電粒子1gを加えて室温(25℃)で15分間攪拌し、φ3μmのメンブレンフィルタで濾過して、高分子電解質が表面に吸着した粒子(母粒子)を得た。この母粒子を、超純水200gに混合して室温(25℃)で5分攪拌し、φ3μmのメンブレンフィルタで濾過し、濾過して得られた粒子を該メンブレンフィルタ上で200gの超純水で2回洗浄して、母粒子に吸着していないポリエチレンイミンを除去した。
【0123】
ポリエチレンイミンを除去後、母粒子1gを、コロイダルシリカ分散液(濃度20質量%、扶桑化学工業社製、商品名:クオートロンPL−13、平均粒子径130nm)を超純水で希釈して得られた0.1質量%シリカ分散液に混合して室温(25℃)で15分間攪拌し、φ3μmのメンブレンフィルタで濾過した。濾過後、母粒子を超純水200gに入れて室温(25℃)で5分攪拌してφ3μmのメンブレンフィルタで濾過し、該メンブレンフィルタ上で母粒子を200gの超純水で2回洗浄して、余剰のシリカを除去した。その後、この母粒子を80℃、30分間の条件で乾燥、次いで120℃、1時間の条件で加熱乾燥して、絶縁被覆導電粒子1を得た。
【0124】
(絶縁被覆導電粒子2)
導電粒子1の代わりに導電粒子2を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして絶縁被覆導電粒子2を作製した。
【0125】
(絶縁被覆導電粒子3)
導電粒子1の代わりに導電粒子3を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして絶縁被覆導電粒子3を作製した。
【0126】
(絶縁被覆導電粒子4)
導電粒子1の代わりに導電粒子4を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして絶縁被覆導電粒子4を作製した。
【0127】
(絶縁被覆導電粒子5)
導電粒子1の代わりに導電粒子5を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして絶縁被覆導電粒子5を作製した。
【0128】
(絶縁被覆導電粒子6)
導電粒子1の代わりに導電粒子6を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして絶縁被覆導電粒子6を作製した。
【0129】
(絶縁被覆導電粒子7)
導電粒子1の代わりに導電粒子7を用い、φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)の代わりにφ1μmのメンブレンフィルタを用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして絶縁被覆導電粒子7を作製した。
【0130】
(絶縁被覆導電粒子8)
導電粒子1の代わりに導電粒子8を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして絶縁被覆導電粒子8を作製した。
【0131】
(絶縁被覆導電粒子9)
導電粒子1の代わりに導電粒子9を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして絶縁被覆導電粒子9を作製した。
【0132】
(絶縁被覆導電粒子10)
導電粒子1の代わりに導電粒子10を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして絶縁被覆導電粒子10を作製した。
【0133】
(絶縁被覆導電粒子11)
導電粒子1の代わりに導電粒子11を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして絶縁被覆導電粒子11を作製した。
【0134】
(絶縁被覆導電粒子12)
導電粒子1の代わりに導電粒子12を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして絶縁被覆導電粒子12を作製した。
【0135】
(絶縁被覆導電粒子13)
導電粒子1の代わりに導電粒子13を用いたこと以外は、絶縁被覆導電粒子1と同様にして絶縁被覆導電粒子13を作製した。
【0136】
(絶縁被覆導電粒子14)
平均粒径3.75μmのプラスチックに、ニッケルめっきと平均膜厚280Åの金めっきが施された後、アクリルナノ粒子によって絶縁被覆された市販の絶縁被覆導電粒子(AUEL00375AS−GD:積水化学工業株式会社製)を絶縁被覆導電粒子14とした。
【0137】
(絶縁被覆導電粒子15)
平均粒径3μmのプラスチックに、ニッケルめっきと平均膜厚280Åの金めっきが施された後、アクリルナノ粒子によって絶縁被覆された市販の絶縁被覆導電粒子(AU203A−GD:積水化学工業株式会社製)を絶縁被覆導電粒子15とした。
【0138】
(絶縁被覆導電粒子16)
平均粒径3μmのプラスチックに、ニッケルめっきと平均膜厚280Åの金めっきが施された後、アクリルナノ粒子によって絶縁被覆された市販の絶縁被覆導電粒子(AU203AF−GD:積水化学工業株式会社製)を絶縁被覆導電粒子16とした。
【0139】
<異方導電性接着剤フィルムの作製>
(実施例1)
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名:PKHC)100gと、アクリルゴム(ブチルアクリレート40質量部、エチルアクリレート30質量部、アクリロニトリル30質量部、グリシジルメタクリレート3質量部の共重合体、重量平均分子量:85万)75gとを、酢酸エチル300gに溶解し、樹脂濃度30質量%の溶液を得た。この溶液に、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エボキシ当量185、旭化成エポキシ株式会社製、商品名:ノバキュアHX−3941)300gを加えて撹拌し、樹脂組成物溶液を作製した。
【0140】
4gの絶縁被覆導電粒子1を、酢酸エチル10gに混合し、超音波分散した。なお、超音波分散は、20Lのビーカーに混合物を入れ、「US107」(藤本科学社製、商品名)を用いて、38kHz、400Wの条件で1分間行った。得られた分散液を上記樹脂組成物溶液に分散して異方導電性接着剤組成物を得た。なお、分散液は、絶縁被覆導電粒子が異方導電性接着剤組成物全量に対して21体積%となるように調製した。
【0141】
上記で得られた異方導電性接着剤組成物を、シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフイルムであるセパレータ(厚み40μm)上にロールコータで塗布し、90℃で10分間乾燥して厚み25μmの異方導電性接着剤フィルムを作製した。
【0142】
(実施例2)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして異方導電性接着剤フィルムを作製した。
【0143】
(実施例3)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子3を用いた以外は、実施例1と同様にして異方導電性接着剤フィルムを作製した。
【0144】
(実施例4)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子4を用いた以外は、実施例1と同様にして異方導電性接着剤フィルムを作製した。
【0145】
(実施例5)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子5を用いた以外は、実施例1と同様にして異方導電性接着剤フィルムを作製した。
【0146】
(実施例6)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子6を用いた以外は、実施例1と同様にして異方導電性接着剤フィルムを作製した。
【0147】
(実施例7)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子7を用いた以外は、実施例1と同様にして異方導電性接着剤フィルムを作製した。
【0148】
(実施例8)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子8を用いた以外は、実施例1と同様にして異方導電性接着剤フィルムを作製した。
【0149】
(比較例1)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子9を用いた以外は、実施例1と同様にして異方導電性接着剤フィルムを作製した。
【0150】
(比較例2)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子10を用いた以外は、実施例1と同様にして異方導電性接着剤フィルムを作製した。
【0151】
(比較例3)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子11を用いた以外は、実施例1と同様にして異方導電性接着剤フィルムを作製した。
【0152】
(比較例4)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子12を用いた以外は、実施例1と同様にして異方導電性接着剤フィルムを作製した。
【0153】
(比較例5)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子13を用いた以外は、実施例1と同様にして異方導電性接着剤フィルムを作製した。
【0154】
(比較例6)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子14を用いた以外は、実施例1と同様にして異方導電性接着剤フィルムを作製した。
【0155】
(比較例7)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子15を用いた以外は、実施例1と同様にして異方導電性接着剤フィルムを作製した。
【0156】
(比較例8)
絶縁被覆導電粒子1の代わりに絶縁被覆導電粒子16を用いた以外は、実施例1と同様にして異方導電性接着剤フィルムを作製した。
【0157】
[子粒子被覆率]
異方導電性接着剤組成物の作成において、酢酸エチル中に絶縁被覆導電粒子を超音波分散するときに絶縁性子粒子が導電粒子から剥離する場合がある。この絶縁性子粒子剥離の度合いを調べるために、超音波分散前後の絶縁被覆導電粒子の子粒子被覆率をSEMの画像解析により求めた。なお、子粒子被覆率は、絶縁被覆導電粒子の直径の半分の大きさを直径とする円をSEM画像に描き、この円内における絶縁性子粒子の数に基づいて下記式より算出した。
子粒子の被覆率(%)=([絶縁性子粒子の投影面積]×[測定範囲の絶縁性子粒子の数]/[測定範囲の絶縁被覆導電粒子の表面積])×100
【0158】
[実装試験]
上記で得られた実施例1〜8及び比較例1〜8の異方導電性接着剤フィルムを用いて接続サンプルを作製し、これらの接続サンプルについて下記の絶縁抵抗測定及び導通抵抗測定を行った。
【0159】
(接続サンプルの作製)
作製した異方導電性接着剤フィルムを用いて、金バンプ(面積:30μm×90μm、スペース10μm、高さ:15μm、バンプ数:362)付きチップ(1.7mm×17mm、厚み:0.5mm)とAl回路付きガラス基板(ジオマテック製、厚み:0.7mm)との接続を、以下の通り行った。
【0160】
所定のサイズ(2mm×19mm)に切断した異方導電性接着剤フィルムを、そのセパレータが設けられた面とは反対側の面をAl回路付きガラス基板(厚み:0.7mm)のA1回路が形成された面に向けて、Al回路付きガラス基板の表面上に80℃、0.98MPa(10kgf/cm)で貼り付けた。その後、Al回路付きガラス基板に貼り付けた異方導電性接着剤フィルムからセパレータを剥離し、異方導電性接着剤フィルムを介して、チップの金バンプとAl回路付きガラス基板との位置合わせを行った。次いで、チップの金バンプが設けられた面を異方導電性接着剤フィルムのAl回路付きガラス基板が貼り付けられた面とは反対側の面に向けて、190℃、40g/バンプ、10秒の条件で加熱及び加圧を行って本接続を行い、接続サンプルを得た。
【0161】
(絶縁抵抗測定)
異方導電性接着剤フィルムは互いに隣接するチップ電極間の絶縁抵抗が高く、対向するチップ電極/ガラス電極間の導通抵抗が低いことが重要である。そこで、まず、各実施例及び各比較例の異方導電性接着剤フィルムを用いて作製した各接続サンプルの絶縁抵抗測定を行った。20個の接続サンプルを用意し、互いに隣接するチップ電極間の絶縁抵抗を測定した。絶縁抵抗の最小値と、絶縁抵抗が109(Ω)以上のものを良品と判定した場合の歩留まり(良品の割合)とを調べた。
【0162】
[導通抵抗測定]
次に、接続体サンプルの導通抵抗測定を行った。14個の接続サンプルを用意し、対向する、チップ電極とガラス電極との間の導通抵抗を測定し、その平均値を算出して初期の導通抵抗を求めた。次に、各接続体サンプルを、気温85℃、湿度85%の吸湿条件で1000時間保管した後、対向する、チップ電極とガラス電極との間の導通抵抗を測定し、その平均値を算出して吸湿条件に保管した後(吸湿試験後)の導通抵抗を求めた。
【表6】

【0163】
実施例1〜8で用いた絶縁被覆導電粒子は、超音波分散の前後で殆ど子粒子剥離が発生しないことが確認された。なお、この理由として、絶縁被覆導電粒子の作製に用いた導電粒子表面のAuの比率が高いため、粒子表面にチオールが化学吸着しやすく、絶縁子粒子が強固に結合できることが考えられる。また、実施例1〜8の異方導電性接着剤フィルムによれば、狭ピッチの電極間の絶縁性を十分確保でき回路電極を歩留まりよく接続することができるともに、接続された電極間は吸湿試験後も十分に低い導通抵抗を維持できることが確認された。
【0164】
これに対して、比較例1〜8の異方導電性接着剤フィルムは、絶縁不良が発生しやすいことが分かった。なお、比較例1〜8の異方導電性接着剤フィルムに含まれる絶縁被覆導電粒子は、表面のニッケル/金比が0.4を超える導電粒子を用いて作製されたものであり、超音波分散によりシリカが導電粒子から剥離しやすいことが分かった。また、異方導電性接着剤フィルムに配合後の絶縁被覆導電粒子をメチルエチルケトンで溶出し、SEM観察したところ子粒子が剥離していることも確認された。
【0165】
以上のように、本発明によれば、狭ピッチ化、狭面積化された回路電極の接続において、接続不良を十分防止できる異方導電性接着剤フィルム、その実現を可能とする絶縁被覆導電粒子及びその製造方法、並びに、そのような絶縁被覆導電粒子を得ることを可能とする導電粒子及びその製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0166】
6…絶縁性粒子、8…官能基含有導電粒子、10…絶縁被覆導電粒子、12…樹脂組成物、20…第一の回路部材、21…第一の基板、21a…第一の基板表面、22…第一の回路電極、30…第二の回路部材、31…第二の基板、31a…第二の基板表面、32…第二の回路電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル層上に形成された平均膜厚300Å以下の金層を最外層として有する導電粒子であって、
X線光電子分光分析による前記導電粒子の表面におけるニッケル及び金の元素組成比(Ni/Au)が0.4以下であることを特徴とする導電粒子。
【請求項2】
前記導電粒子の粒径が4.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導電粒子の最外層表面と、メルカプト基、スルフィド基及びジスルフィド基からなる群より選択される少なくとも一つの基と所定の官能基とを有する化合物とを接触させて、導電粒子の最外層表面に前記所定の官能基が形成された官能基含有導電粒子を得る工程と、
前記官能基含有導電粒子と絶縁性子粒子とを接触させる工程と、
を備える、前記官能基含有導電粒子の表面が前記絶縁性子粒子で被覆されてなる絶縁被覆導電粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の導電粒子の最外層表面と、メルカプト基、スルフィド基及びジスルフィド基からなる群より選択される少なくとも一つの基と所定の官能基とを有する化合物とを接触させて、導電粒子の最外層表面に前記所定の官能基が形成された官能基含有導電粒子を得る工程と、
前記官能基含有導電粒子と高分子電解質とを接触させて、前記官能基含有導電粒子の表面が前記高分子電解質で被覆されてなる高分子電解質被覆導電粒子を得る工程と、
前記高分子電解質被覆導電粒子と絶縁性子粒子とを接触させる工程と、
を備える、前記官能基含有導電粒子の表面が前記高分子電解質及び前記絶縁性子粒子で被覆されてなる絶縁被覆導電粒子の製造方法。
【請求項5】
前記高分子電解質がポリアミン類であることを特徴とする請求項4に記載の絶縁被覆導電粒子の製造方法。
【請求項6】
前記ポリアミン類がポリエチレンイミンであることを特徴とする請求項5に記載の絶縁被覆導電粒子の製造方法。
【請求項7】
前記所定の官能基が、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基及びアルコキシカルボニル基のうちのいずれかであることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁性子粒子が、無機酸化物であることを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子の製造方法。
【請求項9】
前記無機酸化物が、シリカ粒子であることを特徴とする請求項8に記載の絶縁被覆導電粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項3〜9のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子の製造方法により得られる絶縁被覆導電粒子と、絶縁性樹脂組成物と、を含有する異方導電性接着剤組成物、
をフィルム状に形成してなることを特徴とする異方導電性接着剤フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−119326(P2012−119326A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−9199(P2012−9199)
【出願日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【分割の表示】特願2008−256443(P2008−256443)の分割
【原出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】