説明

導電膜形成用積層体、導電膜形成方法、導電膜、導電要素、タッチパネル及び集積型太陽電池

【課題】現像によるパターニング後でも透明性に優れ、導電性と膜強度が両立可能な導電膜形成用積層体及びその製造方法、該積層体を用いた耐久性と導電性に優れた導電膜、該導電膜を用いたタッチパネルディスプレイ、及び集積型太陽電池を提供する。
【解決手段】基材上に、短軸径150nm以下の導電性繊維、ポリマー、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物および光重合開始剤を含む感光性層を有し、前記感光性層に含まれる、ポリマーの質量P、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の質量M、及び、導電性繊維の質量Cが下記の関係を満たす導電膜形成用積層体。2.0≦P/C≦10.0、0.3≦M/C≦1.5

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜形成用積層体、該積層体を用いた導電膜の形成方法、該形成方法により得られた導電膜、導電要素、並びに該導電膜を備えたタッチパネル、及び集積型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリオール法により作製した金属ナノワイヤーを用いた透明導電膜が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この透明導電膜は、銀ナノワイヤー水分散液を塗布してなる導電層と、感光性化合物及び光重合開始剤等を含有する感光性組成物を塗布してなる感光層との2層塗布を行い、その後、パターン露光、及び現像液により未硬化部を除去することで得られるパターン状の導電膜である。しかしながら、この透明導電膜は、銀ナノワイヤー分散液を塗布し、その後感光性組成物を塗布してなる2層構造をとるために、塗布工程を繰り返し行わなければならず、また導電性層上部に非導電性のパターン形成層が位置するために表面導電性が損なわれやすいという問題があった。さらには、この方法では転写方式の導電性パターンを形成しにくいという問題があった。すなわち、転写性を有する仮支持体上に形成した導電性層を任意別の基材表面に転写してパターン形成を行う際、導電性層の密着性の不足による転写不良を生じる懸念がある、あるいは導電性層の上部に感光性層を転写する必要があることから、材料の構成が複雑になる、といった問題があった。
【0003】
このため、単層構造で、表面導電性に優れ、さらには転写方式にも好適に適用可能なパターン形成用の導電膜が切望されている。ところが、パターン形成性を有する導電膜材料を形成する場合、一般的には、導電性は導電性材料の含有量や分散状態に依存し、膜強度は導電性材料の分散媒体となるバインダーポリマーや重合性化合物の含有量に依存するために、両者を両立させるのが困難であり、いまだ十分な性能は得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国出願公開第2007/0074316号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、パターン形成性が良好であり、導電性と膜強度とが高い水準で維持される、転写方式にも有用な、パターン状の導電膜を形成可能な導電膜形成用積層体、導電要素、及び、該導電膜形成用積層体を用いてなる導電膜形成方法並びにその形成方法により得られた導電性と膜強度に優れた導電膜を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、該導電膜を用いた応答性と耐久性に優れるタッチパネル、及び発電効率と耐久性に優れる集積型太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは検討の結果、感光性材料としてのポリマーと導電性繊維、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と導電性繊維の含有量比を制御することで上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、前記課題を解決するための手段は、以下に示す通りである。
<1> 基材上に、短軸径150nm以下の導電性繊維(以下、適宜、単に導電性繊維と称する)、ポリマー、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(以下、適宜、重合性化合物と称する)および光重合開始剤を含む感光性層を有し、前記感光性層に含まれる、前記ポリマーの質量P、前記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の質量M、及び、前記導電性繊維の質量Cが下記の関係を満たす導電膜形成用積層体である。
2.0 ≦P/C≦ 10.0
0.3 ≦M/C≦ 1.5
【0007】
<2> 前記感光性層の膜厚が0.01〜0.3μmである<1>記載の導電膜形成用積層体。
<3> 前記感光性層中に含まれる前記導電性繊維以外の成分である分散媒の総質量B、及び、前記導電性繊維の質量Cが、下記の関係を満たす<1>又は<2>記載の導電膜形成用積層体。
2.5≦ B/C ≦15.0
<4> 前記導電性繊維が金属ナノワイヤーである<1>〜<3>のいずれか1つに記載の導電膜形成用積層体。
<5> 前記金属ナノワイヤーが、銀、又は、銀と銀以外の金属との合金からなる<4>に記載の導電膜形成用積層体。
【0008】
<6> 前記ポリマーの平均酸価が、50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の導電膜形成用積層体。
<7> 前記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物が、分子内にエチレン性不飽和二重結合を複数有するモノマー又はオリゴマーである<1>〜<6>のいずれか1つに記載の導電膜形成用積層体。
<8> 基材上に、短軸径150nm以下の導電性繊維、ポリマー、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物および光重合開始剤を、ポリマーの質量P、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の質量M、及び、導電性繊維の質量Cが下記式(1)及び式(2)の関係を満たす量で含む感光性層を形成する積層体形成工程と、得られた積層体における感光性層の少なくとも一部を露光する露光工程と、を含む導電膜形成方法。
2.0 ≦ P/C ≦ 10.0 式(1)
0.3 ≦ M/C ≦ 1.5 式(2)
【0009】
<9> 前記積層体形成工程が、短軸径150nm以下の導電性繊維、ポリマー、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物および光重合開始剤を、ポリマーの質量P、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の質量M、及び、導電性繊維の質量Cが下記式(1)及び式(2)の関係を満たす量で含む感光層形成用塗布液組成物を基材上に塗布する工程であるか、又は、短軸径150nm以下の導電性繊維、ポリマー、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物および光重合開始剤を、ポリマーの質量P、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の質量M、及び、導電性繊維の質量Cが下記式(1)及び式(2)の関係を満たす量で含む感光性層を有する導電膜形成用積層体における感光性層を基材上に転写する工程である<8>に記載の導電膜形成方法。
<10> 前記露光工程の後に、さらに、感光性層に溶媒を付与して、露光後の感光性層に含まれる分散媒を減じる溶媒付与工程を含む請求項9に記載の導電膜形成方法。
<11> 前記露光工程の後に、さらに、露光後の感光性層に溶媒を付与して非露光部を除去する現像工程を含む<9>又は<10>に記載の導電膜形成方法。
<12> 前記溶媒付与工程後の、前記導電膜形成用積層体における露光領域の感光性層の膜厚が、該溶媒付与工程前の感光性層の膜厚よりも減少する<10>又は<11>に記載の導電膜形成方法。
<13> 前記溶媒が、水及びアルカリ溶液から選ばれる溶媒である<8>〜<12>のいずれか1つに記載の導電膜形成方法。
【0010】
<14> <8>〜<13>のいずれか1つに記載の導電膜形成方法により得られた導電膜。
<15> シート抵抗が0.1〜10000Ω/□である<14>に記載の導電膜。
<16> 光透過率が70%以上である<14>又は<15>に記載の導電膜。
<17> 短軸径150nm以下の導電性繊維、ポリマー、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物および光重合開始剤を含み、前記ポリマーの質量P、前記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の質量M、及び、前記導電性繊維の質量Cが下記の関係を満たす導電要素。
2.0 ≦ P/C ≦ 10.0
0.3 ≦ M/C ≦ 1.5
<18> <14>〜<16>のずれか1つに記載の導電膜を備えたタッチパネル。
<19> <14>〜<16>のいずれか1つに記載の導電膜を備えた集積型太陽電池。
なお、本発明における導電要素とは、上記特定の関係を満たす材料を含むものであって、その用途は任意であり、導電要素からなる層を形成する場合、基材を有していても、有していなくてもよく、また、パターニングされていても、パターニングされていなくてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導電性と膜強度とが高い水準で維持されるパターン状の導電膜を形成可能な導電膜形成用積層体、導電要素、及び、該導電膜形成用積層体を用いてなる導電膜形成方法並びにその形成方法により得られた導電性と膜強度とに優れた導電膜を提供することができる。
また、本発明によれば、前記本発明の導電膜を用いた応答性と耐久性とに優れるタッチパネル、及び発電効率と耐久性とに優れる集積型太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の導電層転写材料の一例を示す概略図である。
【図2】図2(A)〜(C)は、本発明の導電層転写材料を用いた転写方法を説明するための説明図である。
【図3】図3は、タッチパネルの一例を示す概略断面図である。
【図4】図4(A)〜(D)は、CIGS系薄膜太陽電池のセルの製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の導電性組成物について詳細に説明する。
以下、本発明の代表的な実施形態に基づいて記載されるが、本発明の主旨を超えない限りにおいて、本発明は記載された実施形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
本明細書において「光」という語は、可視光線のみならず、紫外線、エックス線、ガンマ線などの電子線等を含む概念として用いる。
本明細書中、アクリル酸、メタクリル酸のいずれか或いは双方を示すため「(メタ)アクリル酸」と、アクリレート、メタクリレートのいずれか或いは双方を示すため「(メタ)アクリレート」と、それぞれ表記することがある。
また、含有量は特に断りのない限り、質量換算で示し、特に断りのない限り、質量%は、組成物の総量に対する割合を表し、「固形分」とは、組成物中の溶剤を除く成分を表す。
【0015】
<<導電膜形成用積層体>>
本発明の導電膜形成用積層体は、基材上に、(a)短軸径150nm以下の導電性繊維、(b)ポリマー、(c)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物(重合性化合物)および(d)光重合開始剤を含む感光性層を有し、前記感光性層に含まれる、前記(b)ポリマーの質量P、前記(c)重合性化合物の質量M、及び、前記(a)導電性繊維の質量Cが下記式(1)及び式(2)の関係を満たすことを特徴とする。
2.0 ≦P/C≦ 10.0 式(1)
0.3 ≦M/C≦ 1.5 式(2)
このとき、感光性層にエチレン性二重結合を有するポリマーを含む場合、その質量は平均分子量及び酸価に応じて、重量平均分子量3000以上かつ酸価が5mgKOH/g以上の場合はポリマーの質量に、重量平均分子量が3000未満の場合または重量平均分子量3000以上かつ酸価が5mgKOH/g未満の場合には重合性化合物の質量に含めることとする。
【0016】
式(1)は、P/C、即ち、(a)導電性繊維の含有量に対する(b)ポリマーの含有量の比率を示し、P/Cは2.0以上10.0以下であることを要し、好ましくは、3.0以上8.0以下である。P/Cが2.0未満であると膜強度が低下するおそれがあり、10.0を超えるとポリマーが多すぎることでヘイズ値の増大が見られることがあり、また現像時に露光部の導電性繊維が溶出してしまい、導電性の損失やパターン欠落の問題が発生することがある。
式(2)は、M/C即ち、(a)導電性繊維の含有量に対する(c)重合性化合物の含有量の比率を示し、M/Cは0.3以上1.5以下であることを要し、好ましくは、0.5以上1.2以下である。M/Cが0.3未満であると、現像時に導電性繊維が溶出してしまうことによる導電性の低下が生じるおそれがあり、1.5を超える場合には露光部の分散媒が現像時に溶出することによる導電性向上効果が得難くなり、同様に実用上十分な導電性が得られなくなるおそれがある。また、M/Cが1.5を超える場合には未露光部分の導電性層の現像時の溶出不良(パターン抜け不良)の問題が発生し易くなる恐れがある。
なお、本発明における(b)ポリマーは、感光性層形成用に用いられるポリマーのすべてを含み、例えば、バインダーポリマー及び導電性繊維の高分子分散剤として用いられるポリマーなどが包含される。
【0017】
また、上記式(1)及び式(2)の双方を満たすことが重要であり、いずれかの条件が範囲外となっても本発明の優れた効果は得がたい。なお、上記式(1)及び式(2)との関連により、同一組成物中に含まれる(b)ポリマーの含有量Pに対する(c)重合性化合物の含有量Mの比率M/Pは、0.03以上1.0以下が好ましく、0.06以上0.4以下であることがより好ましい。
前記(b)ポリマーと(c)重合性化合物との含有量を本発明の規定する範囲とすることで本発明の効果が得られる作用は明確ではないが、以下のように考えている。
感光性層における(c)重合性化合物に対する(b)ポリマーの含有量を過剰とすることで、感光性層を形成するための塗布液組成物を基材上に塗布または転写し、パターン露光して現像する際に、感光性層の未露光部(未硬化部)が除去されるとともに、硬化部からも(c)重合性化合物の硬化領域中に固定化されていない過剰の(b)ポリマーが同時に除去される。その結果、(c)重合性化合物の硬化により得られた高強度の膜中に導電性繊維が高密度で存在することになり、導電性と膜強度の両立が達成されるものと考えられる。導電性繊維の密度を高める方法としては、感光性層を形成する際に予め(b)ポリマーの添加量を減らしておく方法が一般的であると考えられるが、(b)ポリマーの添加量を予め減らしておく方法に比べ、(b)ポリマーの添加量を多めに設定しておき、現像時により多くの(b)ポリマーを除去する方法の方が、意外にも導電性と膜強度の関係が改善することが見出された。この理由は定かではないが、より多くのポリマーを添加した後により多くのポリマーを除去することにより、導電膜内の導電性繊維の配置に偏りが生じ、導電性繊維間の接触確率が増加するとともに導電性繊維を保護する(b)ポリマーがより外側に配置されやすくなり、導電性と膜強度が改善するものと考えている。この効果は、前記(b)ポリマーと(c)重合性化合物との含有量を本発明の規定する範囲にすることで得られ、このとき(b)ポリマーの含有量Pに対する(c)重合性化合物の含有量Mの比率M/Pの好ましい範囲は、0.03以上1.0以下、より好ましい範囲は0.06以上0.4以下となり、この比率は一般的な光硬化型パターニング材料よりも低い領域であるという特徴がある。
なお、現像工程において硬化領域の感光性層中に含まれる(b)ポリマーが除去されることは、現像工程(1)又は(2)前後の露光領域の感光性層の膜厚を測定し、膜厚が減少していることで確認することができる。感光性層の、現像後の膜厚は、現像前の膜厚を100としたときに、2から70の範囲であることが好ましく、5〜40の範囲であることがより好ましい。また、導電性繊維が金属等の熱的に安定な素材であり、導電性繊維以外の成分である分散媒が有機物である場合には、熱重量測定(TG)により導電性繊維と分散媒の比率を現像工程前後で測定することにより、現像工程での分散媒の減少率を求めることができる。現像後の分散媒質量は、現像前の分散媒質量を100としたとき、2〜70の範囲であることが好ましく、5〜40の範囲であることがより好ましい。
【0018】
また、本発明に係る感光性層においては、感光性層中に含まれる前記導電性繊維以外の成分である分散媒の総質量B、及び、前記導電性繊維の質量Cが、下記式(3)の関係を満たすことが好ましい。
2.5≦ B/C ≦ 15.0 式(3)
なお、ここで、分散媒の総質量とは、感光性層に含まれる(a)導電性繊維以外の成分の含有量の総量を指す。(a)導電性繊維以外の成分としては、前記(b)ポリマー、(c)重合性化合物、(d)光重合開始剤及び所望により添加される他の添加剤が挙げられる。このとき分散媒の総質量は乾燥後の感光性層の総質量であり、溶媒の質量は分散媒の総質量には含めないこととする。
B/Cは、2.5以上であることが好ましく、また、膜強度と導電性との双方が良好であるという観点からは、その上限としては15.0以下であることが好ましく、より好ましくは3.0以上8.0以下の範囲である。
【0019】
次に、本発明の導電膜形成用積層体の構成とそこに用いられる各成分について説明する。
本発明の導電膜形成用積層体は、基材表面に感光性層を備えることを要するが、必要に応じて他の層を有していてもよい。まず、感光性層について説明する。
(1)感光性層
本発明に係る感光性層には、少なくとも、(a)導電性繊維、(b)ポリマー、(c)重合性化合物、及び(d)光重合開始剤を含有するが、本発明の効果を損なわない限りにおいて、目的に応じて他の成分を含んでいてもよい。
【0020】
<(a)短軸径150nm以下の導電性繊維>
本発明の感光性層には、短軸径150nm以下の導電性繊維を含有する。導電性繊維は、中実構造、多孔質構造及び中空構造のいずれの態様をとるものであってもよいが、中実構造及び中空構造のいずれかであることが好ましい。本発明においては、中実構造の繊維をワイヤー、中空構造の繊維をチューブと、それぞれ称することがある。
前記繊維を形成する導電性材料としては、金属及びカーボンの少なくともいずれかであることが好ましく、例えば、ITOや酸化亜鉛、酸化スズのような金属酸化物、金属性カーボン、金属元素単体、複数金属元素からなるコアシェル構造、複数金属からなる合金などが挙げられる。また、繊維状とした後、表面処理されていてもよく、例えば、鍍金された金属繊維なども用いることができる。本発明における導電性繊維は、導電膜を透明にする場合、凝集物が生じにくいという観点から長さ(長軸)は1μm以下であることが好ましい。
【0021】
(金属ナノワイヤー)
透明導電膜を形成しやすいという観点からは、導電性繊維として、金属ナノワイヤーを用いることが好ましい。本発明における金属ナノワイヤーとは、例えば、アスペクト比(平均長軸長さ/平均短軸長さ)が30以上である金属微粒子であって、平均短軸長さが1nm〜150nmであって、平均長軸長さが1μm〜100μmのものが好ましい。
【0022】
前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)は、100nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましい。前記平均短軸長さが小さすぎると、耐酸化性が悪化し、耐久性が悪くなることがあるため、前記平均短軸長さは5nm以上であることが好ましい。前記平均短軸長さが150nmを超えると、導電性の低下や光散乱等による光学特性の悪化が生じるおそれがあるため、好ましくない。
【0023】
前記金属ナノワイヤーの平均長軸長さ(「平均長さ」と称することがある)としては、1μm〜40μmであることが好ましく、3μm〜35μmがより好ましく、5μm〜30μmが更に好ましい。金属ナノワイヤーの平均長軸長さが長すぎると金属ナノワイヤー製造時に凝集物が生じる懸念があり、平均長軸長さ短すぎると、十分な導電性を得ることができないことがある。
ここで、前記金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)及び平均長軸長さは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)と光学顕微鏡を用い、TEM像や光学顕微鏡像を観察することにより求めることができ、本発明においては、金属ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)及び平均長軸長さは、透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均軸長さを求めた。なお、前記金属ナノワイヤーの短軸方向断面が円形でない場合の短軸長さは、短軸方向の測定で最も長い箇所の長さを短軸長さとした。また。金属ナノワイヤーが曲がっている場合、それを弧とする円を考慮し、その半径、及び曲率から算出される値を長軸長さとした。
【0024】
本発明においては、短軸長さ(直径)が150nm以下であり、かつ長軸長さが5μm以上500μm以下である金属ナノワイヤーが、全導電性繊維中に金属量で50質量%以上含まれていることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。
前記短軸長さ(直径)が150nm以下であり、長さが5μm以上500μm以下である金属ナノワイヤーの割合が、50質量%以上含まれることで、十分な伝導性が得られるとともに、電圧集中が生じがたく、これに起因する耐久性の低下を抑制しうるため好ましい。繊維状以外の導電性粒子が感光性層に含まれると、プラズモン吸収が強い場合には透明度が低下するおそれがあり好ましくない。
【0025】
本発明に係る感光性層に用いられる金属ナノワイヤーの短軸長さ(直径)の変動係数は、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましい。
前記変動係数が40%を超えると、短軸長さ(直径)の細いワイヤーに電圧が集中してしまうためか、耐久性が悪化することがある。
前記金属ナノワイヤーの短軸長さ(直径)の変動係数は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)像から300個のナノワイヤーの短軸長さ(直径)を計測し、その標準偏差と平均値を計算することにより、求めることができる。
【0026】
前記金属ナノワイヤーの形状としては、例えば円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状など任意の形状をとることができるが、高い透明性が必要とされる用途では、円柱状や断面が5角形以上の多角形であって鋭角的な角が存在しない断面形状であるものが好ましい。
前記金属ナノワイヤーの断面形状は、基材上に金属ナノワイヤー水分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより検知することができる。
【0027】
前記金属ナノワイヤーにおける金属としては、特に制限はなく、いかなる金属であってもよく、1種の金属以外にも2種以上の金属を組み合わせて用いてもよく、合金として用いることも可能である。これらの中でも、金属又は金属化合物から形成されるものが好ましく、金属から形成されるものがより好ましい。
前記金属としては、長周期律表(IUPAC1991)の第4周期、第5周期、及び第6周期からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、第2〜14族から選ばれる少なくとも1種の金属がより好ましく、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族から選ばれる少なくとも1種の金属が更に好ましく、主成分として含むことが特に好ましい。
【0028】
前記金属としては、具体的には銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛、又はこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム又はこれらの合金が好ましく、パラジウム、銅、銀、金、白金、錫及びこれらの合金がより好ましく、銀又は銀を含有する合金が特に好ましい。
【0029】
(金属ナノワイヤーの製造方法)
前記金属ナノワイヤーは、特に制限はなく、いかなる方法で作製してもよいが、以下のようにハロゲン化合物と分散剤を溶解した溶媒中で金属イオンを還元することによって製造することが好ましい。また、金属ナノワイヤーを形成した後は、常法により脱塩処理を行うことが、分散性、感光性層の経時安定性の観点から好ましい。
また、金属ナノワイヤーの製造方法としては、特開2009−215594号公報、特開2009−242880号公報、特開2009−299162号公報、特開2010−84173号公報、特開2010−86714号公報などに記載の方法を用いることができる。
【0030】
金属ナノワイヤーの製造に用いられる溶媒としては、親水性溶媒が好ましく、例えば、水、アルコール類、エーテル類、ケトン類などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールなどが挙げられる。
エーテル類としては、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
ケトン類としては、例えば、アセトンなどが挙げられる。
加熱する場合、その加熱温度は、250℃以下が好ましく、20℃以上200℃以下がより好ましく、30℃以上180℃以下が更に好ましく、40℃以上170℃以下が特に好ましい。上記温度を20℃以上とすることで、形成される金属ナノワイヤーの長さが分散安定性を確保しうる好ましい範囲となり、且つ、250℃以下とすることで、金属ナノワイヤーの断面外周が鋭角を有しない、なめらかな形状となるため、透明性の観点から好適である。
なお、必要に応じて、粒子形成過程で温度を変更してもよく、途中での温度変更は核形成の制御や再核発生の抑制、選択成長の促進による単分散性向上の効果があることがある。
【0031】
前記加熱の際には、還元剤を添加して行うことが好ましい。
前記還元剤としては、特に制限はなく、通常使用されるものの中から適宜選択することができ、例えば、水素化ホウ素金属塩、水素化アルミニウム塩、アルカノールアミン、脂肪族アミン、ヘテロ環式アミン、芳香族アミン、アラルキルアミン、アルコール、有機酸類、還元糖類、糖アルコール類、亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン化合物、デキストリン、ハイドロキノン、ヒドロキシルアミン、エチレングリコール、グルタチオンなどが挙げられる。これらの中でも、還元糖類、その誘導体としての糖アルコール類、エチレングリコールが特に好ましい。
これらの中でも、還元糖類、その誘導体としての糖アルコール類、エチレングリコールが特に好ましい。
前記還元剤によっては、機能として分散剤や溶媒としても機能する化合物があり、同様に好ましく用いることができる。
【0032】
前記金属ナノワイヤー製造の際には分散剤と、ハロゲン化合物又はハロゲン化金属微粒子を添加して行うことが好ましい。
分散剤とハロゲン化合物の添加のタイミングは、還元剤の添加前でも添加後でもよく、金属イオンあるいはハロゲン化金属微粒子の添加前でも添加後でもよいが、単分散性のよりよいナノワイヤーを得るためには、核形成と成長を制御できるためか、ハロゲン化合物の添加を2段階以上に分けることが好ましい。
【0033】
前記分散剤を添加する段階は、粒子調製する前に添加し、分散ポリマー存在下で添加してもよいし、粒子調整後に分散状態の制御のために添加しても構わない。分散剤の添加を2段階以上に分けるときには、その量は必要とする金属ワイヤーの長さにより変更する必要がある。これは核となる金属粒子量の制御による金属ワイヤーの長さに起因しているためと考えられる。
【0034】
前記分散剤としては、例えばアミノ基含有化合物、チオール基含有化合物、スルフィド基含有化合物、アミノ酸又はその誘導体、ペプチド化合物、多糖類、多糖類由来の天然高分子、合成高分子、又はこれらに由来するゲル等の高分子類、などが挙げられる。これらのうち分散剤として用いられる各種高分子化合物類は、後述する(b)ポリマーに包含される化合物である。
【0035】
分散剤として好適に用いられるポリマーとしては、例えば保護コロイド性のあるポリマーであるゼラチン、ポリビニルアルコール(P−3)、メチルセルロース、ヒドロキシプルピルセルロース、ポリアルキレンアミン、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン構造を含む共重合体、アミノ基やチオール基を有するポリアクリル酸、等の親水性基を有するポリマーが好ましく挙げられる。
分散剤として用いるポリマーはGPC方により測定した重量平均分子量(Mw)が、3000以上300000以下であることが好ましく、5000以上
100000以下であることがより好ましい。

前記分散剤として使用可能な化合物の構造については、例えば「顔料の事典」(伊藤征司郎編、株式会社朝倉書院発行、2000年)の記載を参照できる。
使用する分散剤の種類によって得られる金属ナノワイヤーの形状を変化させることができる。
【0036】
前記ハロゲン化合物としては、臭素、塩素、ヨウ素を含有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化カリウム等のアルカリハライドや下記の分散添加剤と併用できる化合物が好ましい。
前記ハロゲン化合物によっては、分散添加剤として機能するものがありうるが、同様に好ましく用いることができる。
【0037】
前記ハロゲン化合物の代替としてハロゲン化銀微粒子を使用してもよいし、ハロゲン化合物とハロゲン化銀微粒子を共に使用してもよい。
【0038】
また、分散剤とハロゲン化合物とは双方の機能を有する単一の物質を用いてもよい。即ち、分散剤としての機能を有するハロゲン化合物を用いることで、1つの化合物で、分散剤とハロゲン化合物の双方の機能を発現する。
分散剤としての機能を有するハロゲン化合物としては、例えば、アミノ基と臭化物イオンを含むHTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)、アミノ基と塩化物イオンを含むHTAC(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムクロライド)、アミノ基と臭化物イオン又は塩化物イオンを含むドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムブロミド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロミド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジパルミチルアンモニウムブロミド、ジメチルジパルミチルアンモニウムクロリド、などが挙げられる。
【0039】
なお、金属ナノワイヤー形成後の脱塩処理は、限外ろ過、透析、ゲルろ過、デカンテーション、遠心分離などの手法により行うことができる。
【0040】
前記金属ナノワイヤーは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲン化物イオン等の無機イオンをなるべく含まないことが好ましい。前記金属ナノワイヤーを水性分散物させたときの電気伝導度は1mS/cm以下が好ましく、0.1mS/cm以下がより好ましく、0.05mS/cm以下が更に好ましい。
前記金属ナノワイヤーを水性分散物させたときの20℃における粘度は、0.5mPa・s〜100mPa・sが好ましく、1mPa・s〜50mPa・sがより好ましい。
【0041】
金属ナノワイヤー以外の、好ましい導電性繊維としては、中空繊維である金属ナノチューブやカーボンナノチューブが挙げられる。
(金属ナノチューブ)
金属ナノチューブの材料としては、特に制限はなく、いかなる金属であってもよく、例えば、前記した金属ナノワイヤーの材料などを使用することができる。
前記金属ナノチューブの形状としては、単層であってもよく、多層であってもよいが、導電性及び熱伝導性に優れる点で単層が好ましい。
【0042】
−平均短軸長さ、平均長軸長さ、厚み−
前記金属ナノチューブの厚み(外径と内径との差)としては、3nm〜80nmが好ましく、3nm〜30nmがより好ましい。
前記厚みが、3nm以上であることで、十分な耐酸化性が得られ、80nm以下であることで、金属ナノチューブに起因する光散乱の発生が抑制される。
前記金属ナノチューブの平均短軸長さは、金属ナノワイヤーと同様に150nm以下であることを要する。好ましい短軸径は金属ナノワイヤーにおけるのと同様である。また、長軸長さは、1μm〜40μmが好ましく、3μm〜35μmがより好ましく、5μm〜30μmが更に好ましい。
【0043】
前記金属ナノチューブの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、米国出願公開2005/0056118号明細書等に記載の方法などを用いることができる。
【0044】
(カーボンナノチューブ)
カーボンナノチューブ(CNT)は、グラファイト状炭素原子面(グラフェンシート)が、単層あるいは多層の同軸管状になった物質である。単層のカーボンナノチューブはシングルウォールナノチューブ(SWNT)、多層のカーボンナノチューブはマルチウォールナノチューブ(MWNT)と呼ばれ、特に、2層のカーボンナノチューブはダブルウォールナノチューブ(DWNT)とも呼ばれる。本発明で用いられる導電性繊維において、カーボンナノチューブは、単層であってもよく、多層であってもよいが、導電性及び熱伝導性に優れる点で単層が好ましい。
【0045】
(導電性繊維のアスペクト比)
本発明に用いうる導電性繊維のアスペクト比としては、10以上であることが好ましい。アスペクト比とは、一般的には繊維状の物質の長辺と短辺との比(平均長軸長さ/平均短軸長さの比)を意味する。
アスペクト比の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子顕微鏡等により測定する方法などが挙げられる。
前記導電性繊維のアスペクト比を電子顕微鏡で測定する場合、前記導電性繊維のアスペクト比が10以上であるか否かは、電子顕微鏡の1視野で確認できればよい。また、前記導電性繊維の長軸長さと短軸長さとを各々別に測定することによって、前記導電性繊維全体のアスペクト比を見積もることができる。
なお、前記導電性繊維がチューブ状の場合には、前記アスペクト比を算出するための直径としては、該チューブの外径を用いる。
【0046】
前記導電性繊維のアスペクト比としては、10以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜1,000,000が好ましく、100〜1,000,000がより好ましい。
前記アスペクト比が、10未満であると、前記導電性繊維によるネットワーク形成がなされず導電性が十分取れないことがあり、1,000,000を超えると、導電性繊維の形成時やその後の取り扱いにおいて、成膜前に導電性繊維が絡まり凝集するため、安定な液が得られないことがある。
【0047】
本発明に係る感光性層には、導電性繊維に加え、他の導電性材料、例えば、導電性微粒子などを本発明の効果を損なわない限りにおいて併用しうるが、効果の観点からは、前記したアスペクト比が10以上の導電性繊維の比率は、感光性層形成用組成物中に体積比で、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、75%以上が特に好ましい。これらの導電性繊維の割合を、以下、「導電性繊維の比率」と呼ぶことがある。
前記導電性繊維の比率が、50%未満であると、導電性に寄与する導電性物質が減少し導電性が低下してしまうことがあり、同時に密なネットワークを形成できないために電圧集中が生じ、耐久性が低下してしまうことがある。また、導電性繊維以外の形状の粒子は、導電性に大きく寄与しない上に吸収を持つため好ましくない。特に金属の場合で、球形などのプラズモン吸収が強い場合には透明度が悪化してしまうことがある。
【0048】
ここで、前記導電性繊維の比率は、例えば、導電性繊維が銀ナノワイヤーである場合には、銀ナノワイヤー水分散液をろ過して、銀ナノワイヤーと、それ以外の粒子とを分離し、ICP発光分析装置を用いてろ紙に残っている銀の量と、ろ紙を透過した銀の量とを各々測定することで、導電性繊維の比率を求めることができる。ろ紙に残っている導電性繊維をTEMで観察し、300個の導電性繊維の短軸長さを観察し、その分布を調べることにより検知される。
導電性繊維の平均短軸長さ及び平均長軸長さの測定方法は既述の通りである。
【0049】
<バインダーポリマー>
本発明に係る感光性層は、バインダーポリマーを含有してもよい。バインダーポリマーは、本発明に係る感光性層の必須成分である(b)ポリマーの一態様である。バインダーポリマーは、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えばカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などの親水性基)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。
これらの中でも、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものが好ましく、また、酸解離性基を有し、酸の作用により酸解離性基が解離した時にアルカリ可溶となるものが特に好ましい。
ここで、前記酸解離性基とは、酸の存在下で解離することが可能な官能基を表す。
【0050】
前記バインダーの製造には、例えば公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。前記ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めることができる。
【0051】
前記線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましい。
前記側鎖にカルボン酸を有するポリマーとしては、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等であり、更に側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0052】
これらの中でも、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が特に好ましい。
更に、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体や(メタ)アクリル酸/グリシジル(メタ)アクリレート/他のモノマーからなる多元共重合体も有用なものとして挙げられる。該ポリマーは任意の量で混合して用いることができる。
【0053】
前記以外にも、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクレート/メタクリル酸共重合体、などが挙げられる。
【0054】
アルカリ可溶性樹脂における具体的な構成単位としては、(メタ)アクリル酸と、該(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体とが好適である。
(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、例えばアルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。これらは、アルキル基及びアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
アルキル(メタ)アクリレート又はアリール(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、CH=CR、CH=C(R)(COOR)〔ただし、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。〕、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記バインダーの重量平均分子量は、アルカリ溶解速度、膜物性等の点から、1,000〜500,000が好ましく、3,000〜300,000がより好ましく、5,000〜200,000が更に好ましい。
ここで、前記重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(本明細書中においては、適宜、GPC法とも称する)により測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて求めることができる。
【0057】
前記バインダーの含有量は、感光性層を構成する組成物の全固形分に対し5質量%〜90質量%であることが好ましく、10質量%〜85質量%がより好ましく、20質量%〜80質量%が更に好ましい。
なお、前記分散剤として用いられたポリマーとバインダーポリマーとの含有量の合計が、本発明における(b)ポリマーの含有量に相当する。このため、(b)ポリマーの含有量は、前記バインダーポリマーの好ましい含有量の範囲内であって、前記分散剤としてのポリマー含有量を考慮した上で、(a)導電性繊維、及び後述する(c)重合性化合物との含有量比が、前記本発明において規定されて含有比率を満たす必要があり、これにより、得られる導電性膜の導電性と耐久性との両立が図れる。
【0058】
<(c)エチレン性不飽和二重結合を有する化合物>
前記感光性層には、露光により画像を形成する機能を有する(c)エチレン性不飽和二重結合及び(d)光重合開始剤を含有する。
エチレン性不飽和基を有する化合物(以下、「重合性化合物」と称することもある)は、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ、好ましくは2つ以上有する化合物から選ばれる。なかでも、膜強度向上の観点からは、末端エチレン性不飽和結合を分子内に4以上有するものが好ましく、6以上有するものがより好ましい。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、即ち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物などの化学的形態をもつ。
【0059】
重合性化合物としては、例えばポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンやグリセリン、ビスフェノール等の多官能アルコールに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加反応した後で(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号等の各公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号等の各公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレートやメタクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
重合性化合物としては、膜強度の観点から、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0061】
(c)重合性化合物の感光性層形成用組成物における含有量は、2.6質量%以上37.5質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上20.0質量%以下であることがより好ましい。
なお、上記好ましい含有量の範囲であって、且つ、(a)導電性繊維と(b)ポリマーとの含有量の比率を本発明に規定する比率で含むことを要する。
【0062】
<(d)光重合開始剤>
本発明に係る感光性層に用いられる光重合開始剤としては、光酸発生剤及び光ラジカル発生剤などが挙げられる。
−(1)光酸発生剤−
(1)光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0063】
(1)光酸発生剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートなどが挙げられる。これらの中でも、スルホン酸を発生する化合物であるイミドスルホネート、オキシムスルホネート、o−ニトロベンジルスルホネートが特に好ましい。
【0064】
また、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物を樹脂の主鎖又は側鎖に導入した化合物、例えば、米国特許第3,849,137号明細書、独国特許第3914407号明細書、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号の各公報等に記載の化合物を用いることができる。
更に、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等の各明細書に記
載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0065】
−(2)キノンジアジド化合物−
(2)キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−キノンジアジドスルホニルクロリド類、ヒドロキシ化合物、アミノ化合物などを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。
【0066】
1,2−キノンジアジドスルホニルクロリド類としては、例えば、ベンゾキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリドなどが挙げられる。これらの中でも、感度の点ではナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホニルクロリドが特に好ましい。
【0067】
ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン,2,3,4,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10−テトラヒドロ−1,3,6,8−テトラヒドロキシ−5,10−ジメチルインデノ[2,1−a]インデン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]−エチリデン]ビスフェノール、などが挙げられる。
【0068】
アミノ化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、3,3’−ジアミノ4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、などが挙げられる。
【0069】
前記(1)光酸発生剤、及び前記(2)キノンジアジド化合物の配合量は、露光部と未露光部の溶解速度差と、感度の許容幅の点から、前記バインダーの総量100質量部に対して、1質量部〜100質量部であることが好ましく、3質量部〜80質量部がより好ましい。
なお、前記(1)光酸発生剤と、前記(2)キノンジアジド化合物とを併用してもよい。
【0070】
本発明においては、前記(1)光酸発生剤の中でもスルホン酸を発生する化合物が好ましく、下記のようなオキシムスルホネート化合物が高感度である観点から特に好ましい。
【0071】
【化1】

【0072】
前記(2)キノンジアジド化合物として、1,2−ナフトキノンジアジド基を有する化合物を用いると高感度で現像性が良好である。
前記(2)キノンジアジド化合物の中で下記の化合物でDが独立して水素原子又は1,2−ナフトキノンジアジド基であるものが高感度である観点から好ましい。
【0073】
【化2】

【0074】
ただし、前記式中、Dは、それぞれ独立に、水素原子又は以下の置換基のいずれを表す。
【0075】
【化3】

【0076】
−(3)光ラジカル発生剤−
本発明の導電性組成物は、光を直接吸収し、又は光増感されて分解反応若しくは水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する光ラジカル発生剤を感光性化合物として用いることができる。前記光ラジカル発生剤は波長300nm〜500nmの領域に吸収を有するものであることが好ましい。
【0077】
前記光ラジカル発生剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記光ラジカル発生剤の含有量は、前記導電性組成物全固形量に対して、0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、0.5質量%〜30質量%がより好ましく、1質量%〜20質量%が更に好ましい。前記数値範囲において、良好な感度とパターン形成性が得られる。
【0078】
前記光ラジカル発生剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば特開2008−268884号公報に記載の化合物群が挙げられる。これらの中でも、トリアジン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルホスフィン(オキシド)
系化合物、オキシム系化合物、イミダゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物が露光感度の観点から特に好ましい。
【0079】
前記トリアジン系化合物としては、例えば2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)一s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−(o−ブロモ−p−N,N−(ジエトキシカルボニルアミノ)−フェニル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
前記ベンゾフェノン系化合物としては、例えばベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
前記アセトフェノン系化合物としては、例えば2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などが挙げられる。市販品の具体例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア907などが好適である。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
前記イミダゾール系化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、米国特許第4,311,783号、米国特許第4,622,286号等の各明細書に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
前記オキシム系化合物としては、例えばJ.C.S.Perkin II(1979)1653−1660)、J.C.S.Perkin II(1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報記載の化合物等が挙げられる。具体例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアOXE−01、OXE−02等が好適である。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
前記アシルホスフィン(オキシド)化合物としては、例えばチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュア819、ダロキュア4265、ダロキュアTPOなどが挙げられる。
【0085】
光ラジカル発生剤としては、露光感度と透明性の観点から、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイルオキシム)]が特に好ましい。
【0086】
本発明の導電性組成物は、露光感度向上のために、光ラジカル発生剤と連鎖移動剤を併用してもよい。
前記連鎖移動剤としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどのN,N−ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、N−フェニルメルカプトベンゾイミダゾール、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンなどの複素環を有するメルカプト化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタンなどの脂肪族多官能メルカプト化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記連鎖移動剤の含有量は、前記導電性組成物の全固形分に対し、0.01質量%〜15質量%が好ましく、0.1質量%〜10質量%がより好ましく、0.5質量%〜5質量%が更に好ましい。
【0087】
<(e)その他の成分>
前記その他の成分としては、例えば架橋剤、分散剤、溶媒、界面活性剤、酸化防止剤、硫化防止剤、金属腐食防止剤、粘度調整剤、防腐剤等の各種の添加剤などが挙げられる。
【0088】
(e−1)架橋剤
前記架橋剤は、フリーラジカル又は酸及び熱により化学結合を形成し、導電層を硬化させる化合物で、例えばメチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの基で置換されたメラミン系化合物、グアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物、ウレア系化合物、フェノール系化合物もしくはフェノールのエーテル化合物、エポキシ系化合物、オキセタン系化合物、チオエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、又はアジド系化合物、メタクリロイル基又はアクリロイル基などを含むエチレン性不飽和基を有する化合物、などが挙げられる。これらの中でも、膜物性、耐熱性、溶剤耐性の点でエポキシ系化合物、オキセタン系化合物、エチレン性不飽和基を有する化合物が特に好ましい。
また、前記オキセタン樹脂は、1種単独で又はエポキシ樹脂と混合して使用することができる。特にエポキシ樹脂との併用で用いた場合には反応性が高く、膜物性を向上させる観点から好ましい。
なお、架橋剤としてエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物を用いる場合、当該架橋剤も、また、前記(c)重合性化合物に包含され、その含有量は、本発明における(c)重合性化合物の含有量に含まれることを考慮すべきである。
【0089】
前記架橋剤の含有量は、前記バインダー総量100質量部に対して、1質量部〜250質量部が好ましく、3質量部〜200質量部がより好ましい。
【0090】
(e−2)分散剤
前記分散剤は、前記導電性繊維の凝集を防ぎ、分散させるために用いる。前記分散剤としては、前記導電性繊維を分散させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適否選択することができ、例えば、市販の低分子顔料分散剤、高分子顔料分散剤を利用でき、特に高分子分散剤で導電性繊維に吸着する性質を持つものが好ましく用いられ、例えばポリビニルピロリドン、BYKシリーズ(ビックケミー社製)、ソルスパースシリーズ(日本ルーブリゾール社製など)、アジスパーシリーズ(味の素株式会社製)などが挙げられる。
なお、分散剤として高分子分散剤を、前記導電性繊維の製造に用いたもの以外をさらに別添する場合、当該高分子分散剤も、また、前記(b)ポリマーに包含され、その含有量は、本発明における(b)ポリマーの含有量に含まれることを考慮すべきである。
前記分散剤の含有量としては、前記バインダー100質量部に対し、0.1質量部〜50質量部が好ましく、0.5質量部〜40質量部がより好ましく、1質量部〜30質量部が特に好ましい。
分散剤の含有量を0.1質量部以上とすることで、分散液中での導電性繊維の凝集が効果的に抑制され、50質量部以下とすることで、塗布工程において安定な液膜が形成され、塗布ムラの発生が抑制されるため好ましい。
【0091】
(e−3)溶媒
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシブタノール、水、1−メトキシ−2−プロパノール、イソプロピルアセテート、乳酸メチル、N−メチルピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン(GBL)、プロピレンカーボネート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0092】
(e−4)金属腐食防止剤
金属腐食防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばチオール類、アゾール類などが好適である。
金属腐食防止剤を含有することで、一段と優れた防錆効果を発揮することができる。金属腐食防止剤は感光性層形成用組成物中に、適した溶媒で溶解した状態、又は粉末で添加するか、後述する導電層用塗布液による導電膜を作製後に、これを金属腐食防止剤浴に浸すことで付与することができる。
【0093】
本発明においては、既述のように記感光性層中に含まれる分散媒の総質量、即ち、導電性繊維以外の成分の合計含有量Bと前記導電性繊維の質量Cは、下記式(3)の関係を満たすことが好ましく、2.5以上15.0以下であることがより好ましく、3.0以上8.0以下であることが最も好ましい。
2.5≦ B/C ≦ 15.0 式(3)
前記分散媒に含まれるポリマーおよび重合性化合物の比率にもよるが、前記感光性層における導電性繊維以外の成分の合計含有量Bと、前記導電性繊維の含有量Cとの質量比(B/C)が、2.5未満であると、導電層の力学強度や転写基材との密着性の劣化、特にフォトリソグラフィを用いたパターニングで得られるパターンの品質(露光パターンの忠実再現性)の劣化等の問題を生じたりすることがある。前記質量比(B/C)は大きくてもよいが、15.0を超えて大きくしても性能の向上は見られず、却って導電性繊維間の接触点数の減少による導電性の低下や、現像時の導電層の溶出による導電性の低下やパターン欠落、ヘイズ、光透過率などの光学特性の劣化を生じることがあるため、上限値は15.0であることが好ましい。
【0094】
感光性層は、後述する基材上に、前記各成分を含有する感光性層形成用組成物を塗布し、乾燥することで形成される。
【0095】
前記塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、などが挙げられる。
感光性層の乾燥後の膜厚(平均厚み)は、0.01μm〜2μmであることが好ましく、0.03μm〜1μmであることがより好ましい。前記平均厚みを0.01μm以上とすることで導電性の面内分布が均一とされ、2μm以下とすることで良好な透明性が得られる。
【0096】
<基材>
本発明の導電膜形成用積層体における基材は、前記感光性層を形成しうる表面を有する限り、特に制限はなく、パターン状の導電膜を形成しようとする基材であれば特に制限はなく使用することができる。例えば、透明ガラス基板、合成樹脂製シート(フィルム)、金属基板、セラミック板、光電変換素子を有する半導体基板などが挙げられる。前記合成樹脂製シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、ポリカーボネートシート、トリアセチルセルロース(TAC)シート、ポリエーテルスルホンシート、ポリエステルシート、アクリル樹脂シート、塩化ビニル樹脂シート、芳香族ポリアミド樹脂シート、ポリアミドイミドシート、ポリイミドシートなどが挙げられる。
また、本発明に係る感光性層を転写用基材表面に形成して導電膜形成用積層体とした場合には、任意の基板や支持体表面に、パターン形成性にすぐれた導電膜形成用の感光性層を転写により容易に形成しうるため、転写基材を用いた導電膜形成用積層体とすることも好ましい態様である。
【0097】
<転写基材>
前記転写基材の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられる。前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられる。前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0098】
前記転写基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透明ガラス基板、合成樹脂製シート(フィルム)、金属基板、セラミック板、光電変換素子を有する半導体基板などが挙げられる。前記基板には、所望により、シランカップリング剤等の薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着などの前処理を行うことができる。
前記透明ガラス基板としては、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラスなどが挙げられる。また近年開発された厚みが10μm〜数百μmの薄層ガラス基材でもよい。
前記合成樹脂製シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、ポリカーボネートシート、トリアセチルセルロース(TAC)シート、ポリエーテルスルホンシート、ポリエステルシート、アクリル樹脂シート、塩化ビニル樹脂シート、芳香族ポリアミド樹脂シート、ポリアミドイミドシート、ポリイミドシートなどが挙げられる。
前記金属基板としては、例えば、アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板などが挙げられる。
【0099】
前記転写基材の全可視光透過率としては、70%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。前記全可視光透過率が、70%未満であると、透過率が低く実用上問題となることがある。
なお、本発明では、転写基材として本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0100】
前記転写基材の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜500μmが好ましく、3μm〜400μmがより好ましく、5μm〜300μmが更に好ましい。
前記平均厚みが、上記範囲において、ハンドリングが良好であり、可撓性に優れることから、転写均一性が良好となる。
【0101】
<クッション層>
本発明の導電膜形成用積層体では、基材と感光性層との間に、転写性向上のためクッション層を有していてもよい。クッション層の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状なとすることができる。
構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられ、大きさ及び厚みは、用途等に応じて適宜選択することができる。
前記クッション層は、被転写体との転写性を向上させる役割を果たす層であり、少なくともポリマーを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0102】
クッション層に用いられるポリマーとしては、加熱時に軟化する熱可塑性樹脂であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリ塩化ビニルゼラチン;セルロースナイトレート、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル;塩化ビニリデン、塩化ビニル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アルキル(炭素数1〜4)アクリレート、ビニルピロリドン等を含むホモポリマー又は共重合体、可溶性ポリエステル、ポリカーボネート、可溶性ポリアミドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記クッション層に用いるポリマーは、加熱により軟化する熱可塑性樹脂が好ましい。クッション層のガラス転移温度は40℃から150℃であることが好ましい。40℃より低いと室温で軟らかすぎてハンドリング性に劣ることがあり、150℃より高いと熱ラミネート方式でクッション層が軟化せず導電層の転写性が劣ることがある。また可塑剤等の添加により、ガラス転移温度を調整してもよい。
【0103】
前記その他の成分として、特開平5−72724号公報の段落[0007]以降に記載されている有機高分子物質、前記転写基材との接着力を調節するための各種可塑剤、過冷却物質、密着改良剤、界面活性剤、離型剤、熱重合禁止剤、溶剤などが挙げられる。
【0104】
前記クッション層は、前記ポリマー、及び必要に応じて前記その他の成分を含有するクッション層用途布液を転写基材上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
【0105】
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィラー、界面活性剤、酸化防止剤、硫化防止剤、金属腐食防止剤、粘度調整剤、防腐剤等の各種添加剤などが挙げられる。
【0106】
クッション層は、前記ポリマー、及び必要に応じて前記その他の成分を含有するクッション層用途布液を基材上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
【0107】
クッション層の平均厚みは、1μm〜50μmであることが好ましく、1μm〜30μmであることがより好ましく、5μm〜20μmであることがより好ましい。平均厚みを前記範囲とすることで、均一な転写性が得られ、転写材料のカールバランスも良好となる。
基材と感光性層との間に、さらにクッション層を有する場合、感光性層とクッション層の合計平均厚みSと、該基材の平均厚みNとが、下記式(4)を満たすことが好ましい。
S/N=0.01〜0.7 式(4)
S/Nは0.02〜0.6の範囲であることがより好ましい。S/Nを、0.01以上とすることで被転写体への転写均一性が良好となり、0.7以下とすることでカールバランスに優れる。
【0108】
図1は、本発明の導電膜形成用積層体10一例を示す概略断面図である。本実施形態では、導電膜形成用積層体は転写材料として用いられる。導電膜形成用積層体10は、転写基材12表面にクッション層14及び感光性層16をこの順に有している。感光性層16を保護するため、感光性層16表面には、表面保護フィルムを設けてもよい。
保護フィルムとしては、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの厚さ10μm程度の透明フィルムを使用すればよい。
【0109】
<<導電要素>>
本発明の導電要素は、短軸径150nm以下の導電性繊維、ポリマー、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物および光重合開始剤を含み、前記ポリマーの質量P、前記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の質量M、及び、前記導電性繊維の質量Cが下記の関係を満たすことを特徴とする。
2.0 ≦ P/C ≦ 10.0
0.3 ≦ M/C ≦ 1.5
本発明における導電要素とは、上記特定の関係を満たす材料を含むものであって、その用途には特に制限はない。
【0110】
<<導電膜形成方法>>
次に、前記本発明の導電膜形成用積層体を用いた導電膜形成方法について説明する。
本発明の導電膜形成方法は、前記本発明の導電膜形成用積層体を得る積層体形成工程と、得られた導電膜形成用積層体における感光性層の少なくとも一部を露光する露光工程と、露光後の感光性層の分散媒を溶媒を付与して減じる工程(現像工程(1))と、を含むか、或いは、前記積層体形成工程と、露光工程と、の後に、現像工程(1)に換えて、露光後の感光性層に溶媒を付与して非露光部を除去する工程(現像工程(2))を有することを特徴とする。
導電膜形成用積層体の製造工程は既述の通りである。
なお、本発明の導電膜形成用積層体を転写材料とする場合には、前記露光工程に先立って、感光性層を適切な基板上に転写する転写工程を行う。
【0111】
転写工程を、図面を参照して説明する。
図2(A)〜図2(C)は、本発明の導電膜形成用積層体10を用いた転写工程の一例を示す概略図である。
図2(A)は、転写基材12表面にクッション層14と感光性層16とをこの順に有する導電膜形成用積層体10を示す。まず、図2(B)に示すように、導電膜形成用積層体10のクッション層14及び感光性層16を被転写体としてのガラス基板18にラミネーターを用いて加圧、加熱して貼り合わせる。導電膜形成用積層体10の感光性層16表面に保護フィルムを有する場合には、まず保護フィルムを剥離して、ラミネートを行えばよい。
貼り合わせには、従来公知のラミネーター、真空ラミネーターが使用でき、より生産性を高めるためには、オートカットラミネーターの使用も可能である。
【0112】
次に、図2(C)に示すように、転写基材12を剥離することにより、クッション層14及び感光性層16がガラス基板18に転写される。
被転写基板としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透明ガラス基板、合成樹脂製シート(フィルム)、金属基板、セラミック板、光電変換素子を有する半導体基板などが挙げられる。前記被転写基板としては、所望により、シランカップリング剤等の薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着などの表面処理を行ったものを用いてもよい。
【0113】
(露光工程)
本発明の導電膜形成方法においては、基材上に備えられた感光性層あるいは、導電膜形成用積層体より所望の基板上に転写された感光性層をパターン露光する露光工程を有する。
露光に用いる光源は、導電膜の用途、必要とされる解像度に応じて適宜選択される。露光光源は、感光性層に含まれる光重合開始剤との関連で選択してもよいが、一般的にはg線、h線、i線、j線等の紫外線が好ましく用いられる。また、青色LEDを用いてもよい。
パターン露光の方法にも特に制限はなく、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービーム等による走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティー露光、縮小投影露光、反射投影露光などの露光方式を用いることができる。
【0114】
(現像工程)
現像工程は、露光後の感光性層の分散媒を、溶媒を付与して減じる工程(現像工程(1))或いは、露光後の感光性層に溶媒を付与して非露光部を除去する工程(現像工程(2))である。
前記溶媒としては、アルカリ溶液が好ましい。
前記アルカリ溶液に含まれるアルカリとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
前記露光後に現像する場合の現像液としては、アルカリ溶液が好ましい。前記アルカリ溶液に含まれるアルカリとしては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。また、現像液としては、これらのアルカリの水溶液が好適に用いられる。
更に具体的には、現像液としては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の有機アルカリ類;炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類などの水溶液を挙げることができる。
【0115】
前記現像液には現像残渣の低減やパターン形状の適性化を目的として、メタノール、エタノールや界面活性剤を添加してもよい。前記界面活性剤としては、例えばアニオン系、カチオン系、ノニオン系から選択して使用することができる。これらの中でも、ノニオン系のポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加すると、解像度が高くなるので特に好ましい。
【0116】
前記アルカリ溶液による付与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば塗布、浸漬、噴霧などが挙げられる。具体的には、アルカリ溶液中に露光後の感光性層を有する基材あるいは基板を浸漬するディップ現像、浸漬中に現像液を攪拌するパドル現像、シャワーやスプレーを用いて現像液をかけ流すシャワー現像、また、アルカリ溶液を含浸させたスポンジや繊維塊状体等で感光性層表面を擦る現像方法などが挙げられる。これらの中でも、アルカリ溶液中に浸漬する方法が特に好ましい。
前記アルカリ溶液の浸漬時間は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10秒間〜5分間であることが好ましい。
【0117】
<<導電膜>>
本発明の方法で得られる導電膜は、パターニングの際の解像度が比較的高い感光性層を有する導電膜形成用積層体を用いるため、高解像度のパターン状導電膜が形成される。ここで、導電膜とは、例えば、層状に配置される素子間を導通するために設ける膜(層間導電膜)等を意味する。
【0118】
本発明の導電層は、導電性及び耐久性にすぐれた高解像度のパターン状導電膜であるので、例えばタッチパネル、ディスプレイ用電極、電磁波シールド、有機ELディスプレイ用電極、無機ELディスプレイ用電極、電子パーパー、フレキシブルディスプレイ用電極、集積型太陽電池、液晶表示装置、タッチパネル機能付表示装置、その他の各種デバイスなどに幅広く適用される。これらの中でも、タッチパネル、液晶表示装置、タッチパネル機能付表示装置が特に好ましい。
【0119】
<<タッチパネル>>
本発明のタッチパネルは、前記本発明の導電膜を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面型静電容量方式タッチパネル、投射型静電容量方式タッチパネル、抵抗膜式タッチパネルなどが挙げられる。なお、タッチパネルとは、いわゆるタッチセンサ及びタッチパッドを含むものとする。
前記タッチパネルにおけるタッチパネルセンサー電極部の層構成が、2枚の透明電極を貼合する貼合方式、1枚の基材の両面に透明電極を具備する方式、片面ジャンパーあるいはスルーホール方式あるいは片面積層方式のいずれかであることが好ましい。
【0120】
ここで、前記表面型静電容量方式タッチパネルの一例について、図3を参照して説明する。この図3において、タッチパネル20は、透明基板21の表面を一様に覆うように透明導電体22(本発明の前記導電層転写材料により転写された導電層に相当)を配してなり、透明基板21の端部の透明導電体22上に、図示しない外部検知回路との電気接続のための電極端子30が形成されている。
なお、図3中、22は、シールド電極となる透明導電体を示し、26は絶縁カバー層を示し、27は、保護膜を示し、28は、中間保護膜を示し、29は、グレア防止膜を示す。
透明導電体22上の任意の点を指でタッチ等すると、前記透明導電体22は、タッチされた点で人体を介して接地され、各電極端子30と接地ラインとの間の抵抗値に変化が生じる。この抵抗値の変化を前記外部検知回路によって検知し、タッチした点の座標が特定される。
【0121】
(本発明のタッチパネルを備える表示機能付表示装置)
本発明のタッチパネルは、これを表示機能付表示装置に用いることができる。表示装置は、本発明に係る導電膜形成用積層体を転写材料として用いて転写された導電膜を有するガラス基板又は液晶セルを備えている以外は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記表示装置としては、液晶表示装置が好ましく、該液晶表示装置としては、本発明の前記液晶表示装置と同様である。
前記タッチパネル機能としては、前記したものから適宜選択して採用することができる。
【0122】
本発明のタッチパネルを備えた表示装置は、優れた導電性、及び透明性を有する高強度の導電膜を有しており、部品点数が少なくなり、軽量化と薄型化が可能であると共に、高視野角、高コントラスト、高画質な表示特性を備えたものである。
【0123】
<<集積型太陽電池>>
本発明の集積型太陽電池(以下、太陽電池デバイスと称することもある)としては、特に制限はなく、太陽電池デバイスとして一般的に用いられるものを使用することができる。例えば、単結晶シリコン系太陽電池デバイス、多結晶シリコン系太陽電池デバイス、シングル接合型、又はタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池デバイス、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイス、色素増感型太陽電池デバイス、有機太陽電池デバイスなどが挙げられる。これらの中でも、本発明においては、前記太陽電池デバイスが、タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイス、及び銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池デバイスであることが好ましい。
【0124】
タンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池デバイスの場合、アモルファスシリコン、微結晶シリコン薄膜層、また、これらにGeを含んだ薄膜、更に、これらの2層以上のタンデム構造が光電変換層として用いられる。成膜はプラズマCVD等を用いる。
【0125】
〔透明導電層の製造方法〕
本発明の太陽電池に用いられる前記透明導電層は、前記全ての太陽電池デバイスに関して適用できる。前記透明導電層は、太陽電池デバイスのどの部分に含まれてもよいが、光電変換層に隣接していることが好ましい。光電変換層との位置関係に関しては下記の構成が好ましいが、これに限定されるものではない。また、下記に記した構成は太陽電池デバイスを構成する全ての部分を記載しておらず、前記透明導電層の位置関係が分かる範囲の記載としている。
(A)基板−透明導電膜(本発明の導電膜)−光電変換層
(B)基板−透明導電膜(本発明の導電膜)−光電変換層−透明導電膜(本発明の導電膜)
(C)基板−電極−光電変換層−透明導電膜(本発明の導電膜)
(D)裏面電極−光電変換層−透明導電膜(本発明の導電膜)
【0126】
前記導電膜の形成方法は、既述の通りであり、本発明の導電膜形成用積層体における感光性層を、基板上へ転写し、その後、露光、現像を行って導電膜を形成する。
感光性層を転写した後、加熱によるアニールを行ってもよい。この際、加熱温度は、50℃以上300℃以下が好ましく、70℃以上200℃以下がより好ましい。
また、基板上に前記感光性層を塗設して形成したものを用いてもよい。
【0127】
太陽電池に用いられる基板としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(1)石英ガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、サファイア等のガラス
(2)ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、PET、PEN、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ナイロン、スチレン系樹脂、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂
(3)エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂
【0128】
前記基板の表面は親水化処理を施してもよい。また、前記基板表面に親水性ポリマーを塗設したものが好ましい。これら前処理により感光性層との密着性が良化する。
【0129】
前記親水化処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば薬品処理、機械的粗面化処理、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理などが挙げられる。これらの親水化処理により表面の表面張力を30dyne/cm以上にすることが好ましい。
【0130】
前記基板表面に塗設する親水性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばゼラチン、ゼラチン誘導体、カゼイン、寒天、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デキストラン、などが挙げられる。
前記親水性ポリマー層の層厚(乾燥時)は、0.001μm〜100μmが好ましく、0.01μm〜20μmがより好ましい。
前記親水性ポリマー層は、硬膜剤を添加して膜強度を高めることが好ましい。
更に、基板と前記親水性ポリマー層の間に、密着性の改善を目的として必要により下引き層を形成してもよい。
【0131】
<CIGS系の太陽電池>
以下に、CIGS系の太陽電池について詳細に説明する。
〔光電変換層の構成〕
Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる、カルコパイライト構造の半導体薄膜であるCuInSe2(CIS系薄膜)、あるいは、これにGaを固溶したCu(In,Ga)Se2(CIGS系薄膜)を光吸収層に用いた薄膜太陽電池は、高いエネルギー変換効率を示し、光照射等による効率の劣化が少ないという利点を有している。図4(A)〜(D)は、CIGS系薄膜太陽電池のセルの一般的な製造方法を説明するためのデバイスの断面図である。
図4(A)に示すように、まず、基板31上にプラス側の下部電極となるMo(モリブデン)電極層32が形成される。次に、図4(B)に示すように、Mo電極層32上に、組成制御により、p−型を示す、CIGS系薄膜からなる光吸収層33が形成される。次に、図4(C)に示すように、その光吸収層33上に、CdSなどのバッファ層34を形成し、そのバッファ層34上に、不純物がドーピングされてn+型を示す、マイナス側の上部電極となるZnO(酸化亜鉛)からなる透光性電極層3を形成する。次に、図2Dに示すように、メカニカルスクライブ装置によって、ZnOからなる透光性電極層35からMo電極層32までを、一括してスクライブ加工する。これによって、薄膜太陽電池の各セルが電気的に分離(即ち、各セルが個別化)される。
【0132】
〔タンデム型〕
スペクトルの範囲別にバンドギャップの異なる半導体を複数使うと、光子エネルギーとバンドギャップの乖離による熱損失を小さくし、発電効率を向上することができる。このようなこのような複数の光電変換層を重ねて用いるものをタンデム型という。2層タンデムの場合には、例えば1.1eVと1.7eVの組合せを用いることにより発電効率を向上させることができる。
【0133】
〔光電変換層以外の構成〕
I−III−VI族化合物半導体と接合を形成するn形半導体には、例えば、CdSやZnO、ZnS、Zn(O,S,OH)などのII−VI族の化合物を用いることができる。これらの化合物は、光電変換層とキャリアの再結合のない接合界面を形成することができ、好ましい(特開2002−343987号公報参照)。
【0134】
〔基板〕
前記基板としては、例えば、ソーダライムガラス等のガラス板;ポリイミド系、ポリエチレンナフタレート系、ポリエーテルサルフォン系、ポリエチレンテレフタレート系、アラミド系等のフィルム;ステンレス、チタン、アルミニウム、銅等の金属板;特開2005−317728号公報記載の集成マイカ基板などを用いることができる。これらの中でも、前記素子用基板としては、フィルム状、又は箔状が好ましい。
【0135】
〔裏面電極〕
前記裏面電極としては、例えばモリブデン、クロム、タングステンなどの金属を用いることができる。これらの金属材料は熱処理を行っても他の層と混じりにくく好ましい。I−III−VI族化合物半導体からなる半導体層(光吸収層)を含む光起電力層を用いる
場合、モリブデン層を用いることが好ましい。また、裏面電極において、光吸収層CIGSと裏面電極との境界面には再結合中心が存在する。したがって、裏面電極と光吸収層との接続面積は電気伝導に必要となる以上の面積があると、発電効率が低下する。接触面積を少なくするために、例えば、電極層を絶縁材料と金属がストライプ状に並んだ構造を用いるとよい(特開平9−219530号公報参照)。
層構造としては、スーパーストレート型、サブストレート型が挙げられる。I−III−VI族化合物半導体からなる半導体層(光吸収層)を含む光起電力層を用いる場合、サブストレート型構造を用いるほうが、変換効率が高く好ましい。
【0136】
〔バッファ層〕
前記バッファ層としては、例えばCdS、ZnS、ZnS(O,OH)、ZnMgOなどを使うことができる。例えば、CIGSのGa濃度を上げて光吸収層のバンドギャップを広くすると、伝導帯がZnOの伝導帯より大きくなり過ぎるため、バッファ層には伝導帯のエネルギーが大きいZnMgOが好ましい。
【0137】
〔透明導電層〕
前記バッファ層を形成後、本発明の太陽電池で用いられる透明導電層は、前記金属ナノワイヤー含有水性分散物を用いて塗設されることが好ましいが、バッファ層形成後にZnO層を形成した後前記金属ナノワイヤー含有水性分散物を塗設してもよい。
前記透明導電膜の製造方法としては、好ましくは、前記本発明の導電膜形成用積層体を転写材料として用い、転写法により基板上に感光性層を形成した後、は、乾燥することにより得られる。前記感光性層の形成後に加熱によるアニールを行ってもよい。この際、加熱温度は、50℃以上300℃以下が好ましく、70℃以上200℃以下がより好ましい。
【0138】
前記透明導電膜は、あらゆる太陽電池の透明電極に使用することができる。また、集電用電極としては透明電極を用いない結晶系(単結晶、多結晶など)シリコン太陽電池に対しても適用できる。結晶系シリコン太陽電池は、集電電極としては、一般的に銀蒸着電線、又は銀ペーストによる電線が用いられるが、本発明で用いられる透明導電層を適用することでこれらに対しても高い光電変換効率が得られる。
また、本発明の太陽電池に用いられる透明導電層は、赤外波長の透過率が高く、かつシート抵抗が小さいため、赤外波長に対する吸収の大きな太陽電池、例えばタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池などに好適に用いられる。
【実施例】
【0139】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の例において、金属ナノワイヤーの平均直径(平均短軸長さ)及び平均長軸長さは、以下のようにして測定した。
【0140】
<金属ナノワイヤーの平均直径(平均短軸長さ)及び平均長軸長さ>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の金属ナノワイヤーを観察し、その平均値から金属ナノワイヤーの平均直径(平均短軸長さ)及び平均長軸長さ求めた。
【0141】
[合成例の略記号]
以下の合成例で用いている成分の略記号の意味は、次のとおりである。
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
MMA:メチルメタクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
St:スチレン
GMA:グリシジルメタクリレート
DCM:ジシクロペンタニルメタクリレート
BzMA:ベンジルメタクリレート
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
MFG:1−メトキシ−2−プロパノール
THF:テトラヒドロフラン
【0142】
(合成例1)
<バインダー(A−1)の合成>
共重合体を構成するモノマー成分として、AA(9.64g)、BzMA(35.36g)を使用し、ラジカル重合開始剤としてAIBN(0.5g)を使用し、これらを溶剤PGMEA(55.00g)中において重合反応させることによりバインダー(A−1)のPGMEA溶液(固形分濃度:45質量%)を得た。なお、重合温度は、温度60℃乃至100℃に調整した。
分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC)を用いて測定した結果、ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)は11000、分子量分布(Mw/Mn)は1.72、酸価は155mgKOH/gであった。
【0143】
【化4】



【0144】
(合成例2)
<バインダー(A−2)の合成>
反応容器中に、MFG(日本乳化剤株式会社製)7.48gをあらかじめ加え、90℃に昇温し、モノマー成分としてMAA(14.65g)、MMA(0.54g)、CHMA(17.55g)、ラジカル重合開始剤としてAIBN(0.50g)、及びMFG(55.2g)からなる混合溶液を窒素ガス雰囲気下、90℃の反応容器中に2時間かけて滴下した。滴下後、4時間反応させて、アクリル樹脂溶液を得た。
次に、得られたアクリル樹脂溶液に、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.15g、及びテトラエチルアンモニウムブロマイド0.34gを加えた後、GMA 12.26gを2時間かけて滴下した。滴下後、空気を吹き込みながら90℃で4時間反応させた後、固形分濃度が45質量%になるようにPGMEAを添加することにより調製し、バインダー(A−2)の溶液(固形分濃度:45質量%)を得た。
分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC)を用いて測定した結果、ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)は31,300、分子量分布(Mw/Mn)は2.32、酸価は74.5mgKOH/gであった。
【0145】
【化5】



バインダー(A−2)
【0146】
(調製例1)
−銀ナノワイヤー水分散液の調製−
予め、下記の添加液A、G、及びHを調製した。
〔添加液A〕
硝酸銀粉末0.51gを純水50mLに溶解した。その後、1Nのアンモニア水を透明になるまで添加した。そして、全量が100mLになるように純水を添加した。
〔添加液G〕
グルコース粉末0.5gを140mLの純水で溶解して、添加液Gを調製した。
〔添加液H〕
HTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)粉末0.5gを27.5mLの純水で溶解して、添加液Hを調製した。
【0147】
次に、以下のようにして、銀ナノワイヤー水分散液を調製した。
純水410mLを三口フラスコ内に入れ、20℃にて攪拌しながら、添加液H 82.5mL、及び添加液G 206mLをロートにて添加した(一段目)。この液に、添加液A 206mLを流量2.0mL/min、攪拌回転数800rpmで添加した(二段目)。その10分間後、添加液Hを82.5mL添加した(三段目)。その後、3℃/分で内温73℃まで昇温した。その後、攪拌回転数を200rpmに落とし、5.5時間加熱した。
得られた水分散液を冷却した後、限外濾過モジュールSIP1013(旭化成株式会社製、分画分子量6,000)、マグネットポンプ、及びステンレスカップをシリコーン製チューブで接続し、限外濾過装置とした。
銀ナノワイヤー分散液(水溶液)をステンレスカップに入れ、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。モジュールからの濾液が50mLになった時点で、ステンレスカップに950mLの蒸留水を加え、洗浄を行った。前記の洗浄を伝導度が50μS/cm以下になるまで繰り返した後、濃縮を行い、銀ナノワイヤー水分散液を得た。
得られた調製例1の銀ナノワイヤーについて、以下のようにして平均短軸長さ、平均長軸長さ、アスペクト比が10以上の銀ナノワイヤーの比率、及び銀ナノワイヤー短軸長さの変動係数を測定した。結果を表1に示す。
【0148】
<銀ナノワイヤーの平均短軸長さ(平均直径)及び平均長軸長さ>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、300個の銀ナノワイヤーを観察し、銀ナノワイヤーの平均短軸長さ及び平均長軸長さを求めた。
【0149】
<銀ナノワイヤーの短軸長さの変動係数>
透過型電子顕微鏡(TEM;日本電子株式会社製、JEM−2000FX)を用い、銀ナノワイヤーの短軸長さを300個観察し、ろ紙を透過した銀の量を各々測定し、短軸長さが50nm以下であり、かつ長軸長さが5μm以上である銀ナノワイヤーをアスペクト比が10以上の銀ナノワイヤーの比率(%)として求めた。
なお、銀ナノワイヤーの比率を求める際の銀ナノワイヤーの分離は、メンブレンフィルター(Millipore社製、FALP 02500、孔径1.0μm)を用いて行った。
【0150】
その結果、平均短軸長さ17.2μm、平均長軸長さ34.2μm、変動係数が17.8%の銀ナノワイヤーを得た。得られた銀ナノワイヤーのうち、アスペクト比が10以上の銀ナノワイヤーの占める比率は81.8%であった。
【0151】
(実施例1)
<転写性を有する基材Aの作製>
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体(PET仮支持体)上に、下記処方A1からなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布し、100℃で2分間乾燥させた後さらに120℃で1分間乾燥させ、乾燥層厚16.5μmの熱可塑性樹脂層から成るクッション層を形成した。ここで、乾燥条件における温度「100℃」及び「120℃」は、いずれも基板温度である。以下の乾燥条件における温度も同様である。
【0152】
<熱可塑性樹脂層用塗布液の処方A1>
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(=55/11.7/4.5/28.8[モル比]、質量平均分子量90,000) … 58.4部
・スチレン/アクリル酸共重合体(=63/37[モル比]、質量平均分子量8,000) … 136部
・2,2−ビス〔4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン
… 90.7部
・界面活性剤 メガファックF−780−F
(大日本インキ化学工業株式会社製) … 5.4部
・メタノール … 111部
・1−メトキシ−2−プロパノール … 63.4部
・メチルエチルケトン … 534部
【0153】
次に、形成したクッション層上に、下記処方Bからなる中間層用塗布液をし、80℃で1分間乾燥させた後さらに120℃1分乾燥させて、乾燥層厚1.6μmの中間層を積層した。
【0154】
<中間層用塗布液の処方B>
・ポリビニルアルコール(PVA−205、鹸化率88%、(株)クラレ製)
… 3.22部
・ポリビニルピロリドン(PVP K−30、アイエスピー・
ジャパン株式会社製) … 1.49部
・メタノール … 42.9部
・蒸留水 … 52.4部
【0155】
<<導電層の作製>>
−銀ナノワイヤーのPGMEA分散液(Ag−1)の調製−
調製例1で調製した(a)銀ナノワイヤー水分散液(1)100質量部に、ポリビニルピロリドン(K−30、東京化成工業株式会社製)1質量部と、n−プロパノール100質量部を添加し、セラミックフィルターを用いたクロスフローろ過機(株)日本ガイシ製)にて質量が10質量部となるまで濃縮した。次いでn−プロパノール100質量部およびイオン交換水100質量部を加え、再度クロスフローろ過機にて質量が10質量部となるまで濃縮する操作を3回繰り返した。さらに前記バインダー(A−1)を1質量部およびn−プロパノールを10質量部加え、遠心分離の後、デカンテーションにて上澄みの溶媒を除去しPGMEAを添加し、再分散を行い、遠心分離から再分散までの操作を3回繰り返し、最後にPGMEAを加え、銀ナノワイヤーのPGMEA分散液(Ag−1)を得た。最後のPGMEAの添加量は銀の含有量が、銀2質量%となるように調節した。分散剤として用いられたポリマーの含有量は0.05質量%であった。
【0156】
<感光性層形成用組成物の作製>
以下の組成を有する光硬化組成物を調製し、得られた光硬化性組成物Aとした。
〔光硬化性組成物A〕
(b)ポリマー:(前記合成例で得られたバインダー(A−1)、
固形分45質量%PGMEA溶液) 37.55質量部
(b)ポリマー:(前記合成例で得られたバインダー(A−2)、
固形分45質量%PGMEA、MFG混合溶液) 37.55質量部
(c)重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
15.02質量部
(d)光重合開始剤:2,4−ビス−(トリクロロメチル)−6−
[4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチルアミノ)−3−ブロモ
フェニル]−s−トリアジン 1.481質量部
重合禁止剤:フェノチアジン 0.116質量部
界面活性剤:メガファックF784F(DIC株式会社製)
0.152質量部
界面活性剤:ソルスパース20000(日本ルーブリゾール株式会社製)
1.88質量部
溶媒(PGMEA) 283.2質量部
【0157】
光硬化性組成物Aは、(c)光重合性化合物の質量Mと、(b)バインダーの質量Pとの比率M/Pの値が0.2であった。また、全質量に占める溶媒PGMEAおよび溶媒MFGを除いた成分の占める質量の割合は20%であった。
【0158】
前記光硬化組成物A、前記銀ナノワイヤーの分散液(Ag−1)、溶媒PGMEA、溶媒MEKを攪拌、混合することによって、感光性層形成用組成物(1)を得た。
ここで各成分の混合比は、銀以外の成分である分散媒の質量Bと導電性繊維である銀の質量Cの比B/Cの値が5.0、感光性層形成用組成物中の銀濃度が0.635質量%になるように行った。また、溶媒の添加は、PGMEAおよびMFGの質量の合計とMEKの質量の比が1:1になるように添加した。感光性組成物A−1における、(a)導電性繊維の質量に対する(b)ポリマーの質量の比P/Cの値および、(c)重合性化合物結の質量の比M/Cの値は、下記表1に示す通りである。
【0159】
上記の感光性層形成用組成物(1)を、前述の転写性を有する基材Aに塗布、乾燥することによって、導電膜形成用積層体(1)(感光性転写材料)を作製した。ここで平均塗布銀量は0.038g/m、平均膜厚は0.14μmであった。
得られた導電膜形成用積層体(感光性転写材料)を積層体(1−A)とした。積層体(1−A)において、導電膜形成用感光性層とクッション層の合計層厚の平均値Sと、該基材の厚みの平均値Nの比S/Nの値は0.22であった。
【0160】
<<評価>>
得られた導電膜形成用積層体(1−A)について、以下に示すように評価用試料を作成し、導電性、光学特性、膜強度、パターニング性(露光パターン忠実再現性)の評価を行った。
<評価用試料作製>
積層体(1−A)を用いて、下記の転写工程、露光工程、現像工程、ポストベイク工程を減ることによってガラス基材上に導電膜を有する導電材料を作製し、得られた導電材料を導電材料(1−B)とした。得られた導電性材料(1−B)に対して、後述の方法で導電性、透明性、膜強度、膜厚減少率を評価した。
【0161】
(転写工程)
後述の前処理を施した厚み0.7μmの無アルカリガラス基板表面と、試料1−1の感光性層の表面とが接するように重ね合わせてラミネートし、PET仮支持体/クッション層/中間層/感光性層/ガラス基板の積層構造を有する積層体を形成した。
次に、上記積層体から仮支持体を剥離した。
ここでガラス基板の前処理は次のように行った。
まず、水酸化ナトリウム1%水溶液に浸漬したガラス基板を超音波洗浄機によって30分超音波照射し、ついでイオン交換水で60秒間水洗した後200℃で60分間加熱処理を行った。その後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3質量%水溶液、商品名:KBM603、信越化学工業(株)製)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板をラミネート直前に基板予備加熱装置で105℃の基板温度で2分加熱した。
【0162】
(露光工程)
仮支持体剥離後の試料に対し、超高圧水銀灯i線(365nm)を用いて、露光量40mJ/cm2で露光した。ここで感光性層の露光はクッション層側から、マスクを介して行い、マスクは導電性、光学特性、膜強度評価用の均一露光部およびパターニング性評価用のストライプパターン(ライン/スペース=50μm/50μm)を有していた。
【0163】
(現像工程・工程)
露光後の試料に、1% トリエタノールアミン水溶液を付与して熱可塑性樹脂層(クッション層)および中間層を溶解除去した。これらの層を完全に除去できる最短除去時間は30秒であった。
次に、炭酸Na系現像液(0.06モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、同濃度の炭酸ナトリウム、1%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン性界面活性剤、消泡剤、安定剤含有、商品名:T−CD1、富士フイルム(株)製)を用い、20℃30秒、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し感光性樹脂層を現像し、室温乾燥させた。次いで、100℃、15分熱処理を施した。
【0164】
<導電性(表面抵抗)>
得られた後の導電膜の矩形ベタ露光領域の表面抵抗を、三菱化学株式会社製Loresta−GP MCP−T600を用いて測定し、下記のランク付けを行った。

5:表面抵抗値 30Ω/□未満で、極めて優秀なレベル
4:表面抵抗値 30Ω/□以上、45Ω/□未満で、優秀なレベル
3:表面抵抗値 45Ω/□以上、60Ω/□未満で、許容レベル
2:表面抵抗値 60Ω/□以上、100Ω/□未満で、やや問題なレベル。
1:表面抵抗値 100Ω/□以上で、問題なレベル。
【0165】
<光学特性(全光透過率)>
得られた後の導電膜の矩形ベタ露光領域の全光透過率(%)および、導電層積層体転写前のガラスの全光透過率(%)をガードナー社製のヘイズガードプラスを用いて測定し、その比から透明導電膜の透過率を換算し、下記のランク付けを行った。測定はC光源下のCIE視感度関数yについて、測定角0°で測定し、下記のランク付けを行った。

A:透過率90%以上で、良好なレベル
B:透過率85%以上90%未満で、やや問題なレベル
【0166】
<光学特性(ヘイズ)>
得られた後の導電膜の矩形ベタ露光領域のヘイズ値をガードナー社製のヘイズガードプラスを用いて測定し、下記のランク付けを行った。

A:ヘイズ値1.5%未満で、優秀なレベル
B:へイズ値1.5%以上2.0%未満で、良好なレベル。
C:へイズ値2.0%以上2.5%未満で、やや問題なレベル。
D:へイズ値2.0%以上2.5%未満で、問題なレベル。
【0167】
<パターニング性>
ストライプパターン露光部における現像後のパターン形状を、デジタルマイクロスコープ(VHX−600、キーエンス株式会社製、倍率2,000倍)で観察し、下記のランク付けを行った。

A:ストライプパターン再現性良好(パターン欠けおよび抜け不良が認められない)
B1:ストライプパターンの形成不良(パターン欠けが認められる)
B2:ストライプパターンの形成不良(パターン抜け不良が認められる)
【0168】
<膜強度>
日本塗料検査協会検定鉛筆引っかき用鉛筆(硬度HB及び硬度B)をJIS K5600−5−4に準じてセットした鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(株式会社東洋精機製作所製、型式NP)にて荷重500gの条件で長さ10mmにわたり引っ掻いた後、下記条件にて露光及び現像を施し、引っ掻いた部分をデジタルマイクロスコープ(VHX−600、キーエンス株式会社製、倍率2,000倍)で観察し、下記のランク付けを行った。なお、ランク3以上では実用上導電膜の断線が見られず、導電性の確保が可能な問題の無いレベルである。
〔評価基準〕
5:硬度2Hの鉛筆引っ掻きで引っ掻き跡が認められず、極めて優秀なレベル。
4:硬度2Hの鉛筆引っ掻きで導電性繊維が削られ、引っ掻き跡が認められるものの、導電性繊維が残存し、基材表面の露出が観察されない、優秀なレベル。
3:硬度2Hの鉛筆引っ掻きで基材表面の露出が観察されるものの、硬度HBの鉛筆引っ掻きで導電性繊維が残存し、基材表面の露出が観察されない、良好なレベル。
2:硬度HBの鉛筆で導電膜が削られ、基材表面の露出が部分的に観察される、問題なレベル。
1:硬度HBの鉛筆で導電膜が削られ、基材表面の殆どが露出している、極めて問題なレベル。
【0169】
<膜厚変化率>
現像後の試料の膜厚の断面をSEM(走査型表面電子顕微鏡)によって求め、現像前の膜厚と比較して膜厚変化率を求めた。
【0170】
(実施例2〜10、比較例1〜12)
積層体(1−A)の作製方法に対し、光硬化性組成物Aと銀ナノワイヤ分散液Ag−1の混合比を変更し、分散媒の質量Bと導電性繊維である銀の質量Cの比率B/C値、及び、感光性層の膜厚を、下記表1に示すように変更し、積層体(2−A)〜積層体(6−A)を得た。
また、光硬化性組成物Aに対し、ポリマーおよびモノマーの配合比率を変更し、これらの質量比を表1に示す如く変更したことのみ異なる方法によって光硬化組成物を作成し、光硬化性組成物B,C,D,Eを得た。ここでポリマーであるバインダー(A−1)およびバインダー(A−2)の質量比は常に1:1とした。
これら光硬化性組成物を用いて、導電性繊維の質量、バインダーの質量の比率、及び、形成する感光性層の厚みを、表1に示す如く変更した以外は積層体(1−A)と同様にして試料を作製し、、積層体(1−B)〜(4−B)、積層体(1−C)〜(4−C)、積層体(1−D)〜(6−D)及び積層体(1−E)〜(3−E)を得た。
【0171】
得られた試料に対し、積層体(1−A)と同様の評価を行った結果を表1および表2に示した。表1から、導電性繊維に対する重合性化合物およびポリマーの比率を本発明の範囲にした場合に、感光性層の膜厚に拘わらず、膜質、導電性、透明性、ヘイズ、パターニング性の全てが好ましいレベルに維持できていることが分かる。表2には、積層体(1−A)、積層体(2−B)、積層体(5−D)、及び、積層体(3−E)について膜厚変化率を測定した値を示した。
【0172】
【表1】

【0173】
【表2】

【0174】
溶媒付与工程後の膜厚は、付与工程前を100とした場合に20〜55程度になることが好ましい。溶媒付与工程により、感光性層内の不要な物質が除去されて導電性が向上する。なお、除去量が多すぎると、膜強度が弱くなるので、下限値は20程度が好ましい。
【0175】
(実施例11)
<集積型太陽電池の作製>
−アモルファス太陽電池(スーパーストレート型)の作製−
ガラス基板上に、実施例1の積層体(1−A)を、ラミネーターを用いて転写して感光性層を形成し、実施例1と同条件で露光、現像、を施すことにより、ガラス基板上に透明導電膜を形成した。但し、露光はマスクを介さず全面均一露光とした。その上部にプラズマCVD法により膜厚約15nmのp型、膜厚約350nmのi型、膜厚約30nmのn型アモルファスシリコンを形成し、裏面反射電極としてガリウム添加酸化亜鉛層20nm、銀層200nmを形成し、光電変換素子101を作製した。
【0176】
(実施例12)
−CIGS太陽電池(サブストレート型)の作製−
ソーダライムガラス基板上に、直流マグネトロンスパッタ法により膜厚500nm程度のモリブデン電極、真空蒸着法により膜厚約2.5μmのカルコパイライト系半導体材料であるCu(In0.6Ga0.4)Se2薄膜、溶液析出法により膜厚約50nmの硫化カドミニウム薄膜、を形成した。
その上に実施例1の積層体(1−A)を、ラミネーターを用いて転写し、実施例1と同条件で露光、現像、を施すことにより、ガラス基板上に透明導電膜を形成し、光電変換素子201を作製した。
【0177】
次に、作製した各太陽電池において、以下のようにして変換効率を評価した。結果を表3に示す。
【0178】
<太陽電池特性(変換効率)の評価>
各太陽電池について、AM1.5、100mW/cmの疑似太陽光を照射することで効率)を測定した。
【0179】
【表3】

【0180】
表3の結果から、本発明の導電膜形成用積層体を透明導電膜の形成に用いることで、いずれの集積型太陽電池方式においても高い変換効率が得られることが分かった。
【0181】
(実施例13)
−タッチパネルの作製−
実施例1の試料1−1を、実施例1同様ガラス基板上に転写後、露光、現像、を施して、透明導電膜を形成した。得られた透明導電膜を用いて、『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日発行、株式会社テクノタイムズ)、三谷雄二監修、“タッチパネルの技術と開発”、シーエムシー出版(2004年12月発行)、「FPD International 2009 Forum T−11講演テキストブック」、「Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292」等に記載の方法により、タッチパネルを作製した。
作製したタッチパネルを使用した場合、光透過率の向上により視認性に優れ、かつ導電性の向上により素手、手袋を嵌めた手、指示具のうち少なくとも一つによる文字等の入力又は画面操作に対し応答性に優れるタッチパネルを製作できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明の導電膜形成用積層体は、そのまま使用しても、転写材料として用いても、現像によるパターニング性に優れ、透明性、導電性及び耐久性(膜強度)に優れるため、例えばパターン状透明導電膜、タッチパネル、ディスプレイ用帯電防止材、電磁波シールド、有機ELディスプレイ用電極、無機ELディスプレイ用電極、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ用電極、フレキシブルディスプレイ用帯電防止膜、表示素子、集積型太陽電池の作製に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0183】
10 導電膜形成用積層体(転写材料)
12 転写基材(基材)
14 クッション層
16 感光性層
18 被転写体(ガラス基板)
20 タッチパネル
21 透明基板
22 透明導電体
27 保護膜
28 中間保護膜
29 グレア防止膜
30 電極端子
32 Mo電極層
33 光吸収層
34 バッファ層
35 透光性電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、短軸径150nm以下の導電性繊維、ポリマー、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物および光重合開始剤を含む感光性層を有し、
前記感光性層に含まれる、前記ポリマーの質量P、前記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の質量M、及び、前記導電性繊維の質量Cが下記の関係を満たす導電膜形成用積層体。
2.0 ≦ P/C ≦ 10.0
0.3 ≦ M/C ≦ 1.5
【請求項2】
前記感光性層の膜厚が0.01〜0.3μmである請求項1記載の導電膜形成用積層体。
【請求項3】
前記感光性層中に含まれる前記導電性繊維以外の成分である分散媒の総質量B、及び、前記導電性繊維の質量Cが、下記の関係を満たす請求項1又は請求項2記載の導電膜形成用積層体。
2.5≦ B/C ≦15.0
【請求項4】
前記導電性繊維が金属ナノワイヤーである請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の導電膜形成用積層体。
【請求項5】
前記金属ナノワイヤーが、銀、又は、銀と銀以外の金属との合金からなる請求項4に記載の導電膜形成用積層体。
【請求項6】
前記ポリマーの平均酸価が、50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の導電膜形成用積層体。
【請求項7】
前記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物が、分子内にエチレン性不飽和二重結合を複数有するモノマー又はオリゴマーである請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の導電膜形成用積層体。
【請求項8】
基材上に、短軸径150nm以下の導電性繊維、ポリマー、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物および光重合開始剤を、ポリマーの質量P、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の質量M、及び、導電性繊維の質量Cが下記式(1)及び式(2)の関係を満たす量で含む感光性層を形成する積層体形成工程と、
得られた積層体における感光性層の少なくとも一部を露光する露光工程と、
を含む導電膜形成方法。
2.0 ≦ P/C ≦ 10.0 式(1)
0.3 ≦ M/C ≦ 1.5 式(2)
【請求項9】
前記積層体形成工程が、
短軸径150nm以下の導電性繊維、ポリマー、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物および光重合開始剤を、ポリマーの質量P、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の質量M、及び、導電性繊維の質量Cが下記式(1)及び式(2)の関係を満たす量で含む感光性層形成用塗布液組成物を基材上に塗布する工程であるか、又は、
短軸径150nm以下の導電性繊維、ポリマー、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物および光重合開始剤を、ポリマーの質量P、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の質量M、及び、導電性繊維の質量Cが下記式(1)及び式(2)の関係を満たす量で含む感光性層を有する導電膜形成用積層体における感光性層を基材上に転写する工程である、
請求項8に記載の導電膜形成方法。
【請求項10】
前記露光工程の後に、さらに、感光性層に溶媒を付与して、露光後の感光性層に含まれる分散媒を減じる溶媒付与工程を含む請求項9に記載の導電膜形成方法。
【請求項11】
前記露光工程の後に、さらに、露光後の感光性層に溶媒を付与して非露光部を除去する現像工程を含む請求項9又は請求項10に記載の導電膜形成方法。
【請求項12】
前記溶媒付与工程後の、前記導電膜形成用積層体における露光領域の感光性層の膜厚が、該溶媒付与工程前の感光性層の膜厚よりも減少する請求項10又は請求項11に記載の導電膜形成方法。
【請求項13】
前記溶媒が、水及びアルカリ溶液から選ばれる溶媒である請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の導電膜形成方法。
【請求項14】
請求項8から請求項13のいずれか1項に記載の導電膜形成方法により得られた導電膜。
【請求項15】
シート抵抗が0.1〜10000Ω/□である請求項14に記載の導電膜。
【請求項16】
光透過率が70%以上である請求項14又は請求項15に記載の導電膜。
【請求項17】
短軸径150nm以下の導電性繊維、ポリマー、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物および光重合開始剤を含み、
前記ポリマーの質量P、前記エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の質量M、及び、前記導電性繊維の質量Cが下記の関係を満たす導電要素。
2.0 ≦ P/C ≦ 10.0
0.3 ≦ M/C ≦ 1.5
【請求項18】
請求項14から請求項16のいずれか1項に記載の導電膜を備えたタッチパネル。
【請求項19】
請求項14から請求項16のいずれか1項に記載の導電膜を備えた集積型太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−169072(P2012−169072A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27436(P2011−27436)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】