説明

小型マルチスペクトル走査システム

本発明は、主ミラー(1)および副ミラー(2)を備える小型マルチスペクトル走査システムに関連し、これらのミラーは互いに向かい合い、反対方向に同じ角速度で回転されるように適合され、それらの回転軸に対して傾けられる。主ミラーは凹形であり、副ミラーは主ミラーよりも小さく、両ミラーの回転軸は位置合わせされる。この構成により、システムは先行技術のデバイスよりも小型になり、システムが動作周波数に依存することが回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光工学の分野に関し、具体的には像走査システムの分野に関する。本発明の対象走査システムは、リアルタイムと考えられるのに十分なフレームレートで、かつミリ波、テラヘルツ波、赤外波、マイクロ波およびX線を含む広い範囲の波長で動作することができる。
【背景技術】
【0002】
どんな像走査システムにおいても望ましい要件は、シーンを直線パターンによって、実現可能な最高速度で走査することである。これを実現する簡単な方法は、平面ミラーを動かすことである。様々なミラーによる解決策があり、その中には、例えば検流計型である種々の機構によって動かすフラッピングミラー(一面のみを有する)、あるいは複数のミラー面を有する回転ポリゴンが見出される。これらの技法は、赤外波および可視波などの短波長で動作するシステムに用いられる。
【0003】
赤外線では、光学的開口は通常100mm程度であり、この開口は、レンズの助けにより通常は一桁小さい走査システム有効開口にまで縮小される。ミリ波システムでは、開口は直径500mm程度、すなわち平面フラッピングミラーまたは回転ポリゴンを使用することが実用的ではなくなるサイズである。
【0004】
反対方向に同じ速度で回転し、回転軸に対して両方が同じ角度で傾いている2つの反射円板の使用によって直線走査パターンが得られることが知られている。傾けられた、回転および反射する円板は、それ自体で、360°回転するときに円錐形の走査パターンを作り出す。しかし、これら2つの円板の間で回転の軸および位相が正しく調整されている場合、放射が第2のディスクに達したときに、円錐形パターンは楕円形に変化することができる。走査パターンによって描写される楕円の短軸がシステムの解像度よりも短い場合、その走査パターンは、システムの解像度が、システムによって得られる像の中で区別できる物体平面からの点の間の最少離隔距離であることを考えると、直線と考えることができる。
【0005】
これは例えば、アランH.レティングトンの特許「Scanning Apparatus」(米国特許第7,154,650B2号)に見出される。前記特許には、独立した回転軸を有する各構造体に取り付けられた、調整されていない2つの反射円板が、どのようにして反対の方向に同じ速度で回転するかについて記載されている。放射が一方のミラーに達すると、このミラーは放射を第2のミラーへ反射し、第2のミラーは放射を第1のミラーへ反射して返す。次に、この第1のミラーは、検出器が置かれている領域へ放射を向ける。両ミラーは、シーンを走査するためにそれらの回転軸に対して傾けられる。直線走査はα=2θcosφのときに実現される。ここで、第1のミラーは角度αだけ傾けられ、第2のミラーは角度θだけ傾けられ、φは各ミラーの回転軸間の角度である。
【0006】
米国特許第7,154,650B2号の実施例には、周波数選択構成要素(直線偏光子、4分の1波長板、ファラデー回転子など)を使用する必要がないという利点があるが、そのシステムは本質的に大型になる。
【0007】
国際公開第03/009048A1号では、より小型のシステムが実現されている。このシステムは2つの本体からなり、これらは同じ軸を中心にして反対方向に同じ速度で回転する。第1の本体は偏光子および2つの4分の1波長板を収容するのに対し、第2の本体はミラーである。放射が第1の本体に返ったときにその偏光が直線偏光子の透過偏光と垂直になるように、つまり次に放射が反射されてミラー(第2の本体)へ返されるように、放射は、第2の本体で透過および反射されるべき適切な偏光で第1の本体に達する。ミラーからのこの第2の反射の後、放射は、第1の本体で透過されるべき適切な偏光を有し、最終的に検出器へ向けられる。第1の本体の傾きは、放射がそれぞれの面から反射される回数を補償し、かつ直線走査を得るために、第2の本体の2倍になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,154,650B2号
【特許文献2】国際公開第03/009048A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
国際公開第03/009048A1号に記載のデバイスでは、米国特許第7,154,650B2号に記載のものよりも小型のシステムが可能になるが、2つの欠点が呈示される。第1は、このシステムは、ある範囲の複数の検出器(可視波、赤外波、ミリ波、テラヘルツ波など)に対して使用できず、1つの周波数帯にしか使用できないことである。第2は、主として4分の1波長板内の本質的な透過損失により、信号対雑音比が悪化することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、入射放射に対して凹面を有する主ミラー、および副ミラーの2つの反射ミラーを使用すること、ならびにこれらのミラーを反対方向に同じ速度で回転させることを提案する。副ミラーは主ミラーよりも小さい。両ミラーは、シーンを走査するためにそれらの回転軸に対して傾けられ、それらの回転軸は位置合わせされる。このようにして、前述のものよりも小型の走査システムが提供され、同時に、広い領域の電磁スペクトルで動作させることが可能である。すなわち、この走査システムは、ミリ波、テラヘルツ波、赤外波、マイクロ波およびX線の検出器に適合する。主ミラーは、シーンからの放射を反射し収束させ、副ミラーは前記集められた放射を受光し、点検出器、リニア検出器またはマトリクス検出器上に集束させる。
【0011】
また、この走査システムを使用して、物体平面に放射し、同時に、物体平面から反射された放射を検出することもできる。システムは、広い領域の電磁スペクトル(すなわち、ミリ波、テラヘルツ波、赤外放射、X線、マイクロ波)のエミッタに適合する。この場合は、人工放射源の出力部が焦点面に配置され、そこから副ミラーに放射し、副ミラーは放射を主ミラーの方に反射し、主ミラーで放射が物体平面の方に反射され、両ミラーを傾斜させることによって得られる走査パターンに従って放射が分布する。この放射は、物体平面に達すると反射される。走査システムはまた、焦点面に検出器が設けられ(エミッタに近接して、さらには同じアンテナを共有して)、その結果システムは、同じ走査パターンに従って、対象平面に放射し、同時に、対象平面からの(対象物自体で反射および/または放出された)放射を検出するようになる。
【0012】
両ミラーの各回転軸は位置合わせされる。2つのミラーは、それらの回転軸に対して傾けられ、反対方向に同じ角速度で回転する。各ミラーの傾斜は設計パラメータである。各ミラーでの回転軸に対するこの傾斜が、回転と同調して、各ミラーによる円錐形走査をもたらす。2つのミラーが互いに向かい合い、これらのミラーの各回転軸が位置合わせされ、各ミラーが反対の方向に同じ速度で回転するので、これら2つの円錐形走査を組み合わせた結果が直線走査または楕円形走査になる。
【0013】
主ミラーの表面は、放射を副ミラー上に集束させる目的で、必ず凹形(球形、放物線形、双曲線形、楕円形、または非球面形)である。副ミラーの表面は、平面、凹形または凸形(球形、放物線形、双曲線形、楕円形、または非球面形)とすることができる。
【0014】
検出器の位置については、2つのミラーの間または主ミラーの後ろの、2つの実現可能性がある。第1の構成では、複数の検出器を使用することが容易になり、それによって広い視野がカバーされる。一方、検出器を主ミラー(開口が設けられている)の後ろに配置することにより、例えばレーダ送受信器、またはレーザレーダもしくはレーザ赤外線レーダシステムである、放射システムを一体化する場合のサイズ制限がなくなる。こうしてシステムは、直線走査パターンまたは楕円走査パターンでシーンに分布させる放射を放出することができ、同時に、前述のように放射を受光する。
【0015】
ミラーを回転させるために、1つまたは2つのモータを設けることができる。システムは、特に2つのモータが使用される場合に、ミラーの相対位置を制御し、ずれを調整するための位置センサを備えることができる。
【0016】
本発明により可能になるいくつかの実施形態の中に、ビーム分割構成要素を使用するものがある。これらの構成要素は、ビームを1つ以上のビームに分離し、ビームのそれぞれが次に、別の検出器(点検出器、リニア検出器またはマトリクス検出器)上に集束する。これらの実施形態は、別々の偏光状態で、および/または別々のスペクトル範囲において機能することができる。したがって本発明により、マルチスペクトル、旋光計および分光計の情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本明細書を完成させ、本発明がよりよく理解されるようにするために、一組の図面を提示する。前記図面は、本明細書の不可欠の部分を形成し、本発明の好ましい諸実施形態を示す。これらの実施形態は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではなく、本発明をどのようにして具体化できるかについての単なる一例と解釈されるべきである。
【0018】
【図1】主ミラーの後に検出器が配置されている本発明の一実施形態の側面図である。
【図2】2つのミラーの間に検出器が配置されている本発明の別の実施形態の上面図である。
【図3】ビームを2つの直交偏光ビームに分割するためのビーム分割デバイスを使用する本発明の一実施形態の側面図である。
【図4】図1および図2の実施形態の実現可能な機械アセンブリの側面図である。
【図5】同じ走査パターンに従って、物体平面に放射し、同時に物体平面からの放射を検出する、図1による本発明の一実施形態の側面図である。
【図6】図1および図2による本発明の別の実現可能な機械アセンブリの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、主ミラーの後に検出器が配置されている本発明の一実施形態を示す。主ミラー(1)は凹形であり、副ミラー(2)は凸形である。放射は、主ミラーの後ろの軸上の、検出器が置かれている焦点(3)に集束する。この実施形態は、本発明を限定するものとみなされることなく、単一画素検出器および/またはレーダ送受信機、またはレーザレーダもしくはレーザ赤外線レーダシステムの一体化を容易にするように設計されている。
【0020】
図2は、2つのミラーの間に検出器が配置されている本発明の一実施形態を示す。この場合では、主ミラー(1)は凹形であり、副ミラー(2)は平面形である。この実現可能な別の実施形態は、一連の検出器およびそれに対応するアンテナを使用するシステム用に設計されている。一連の検出器を焦点面に配置することによって、図面では中央のアンテナおよび列の両端の2つのアンテナに対応する光線追跡だけを表しているが、このシステムは、一連の検出器の長さに比例した(同じ方向の)視野をカバーする。同時に存在する、代替の、または連続する検出チャネルを使用することができる。
【0021】
図3は、ビームを2つの直交偏光ビームに分割するためのビーム分割デバイスを使用する本発明の一実施形態を示す。この事例は、図1に描写された実施形態の一例であるが、図2に描写された実施形態に適用することもできる。主ミラーは(1)であり、副ミラーは(2)である。放射がビームスプリッタ(例えば、直線偏光子5)に達すると、このビームスプリッタは、一方の電界成分(エネルギーの約50%を占める)を選択的に通し、その直交成分を阻止する。2つの直交偏波アンテナ(4)および(6)を配置することによって、走査シーンの各点から最大量のエネルギーが統合され、その結果、像内の熱感度が改善される。本発明を限定することのない別の例は、別々のビームそれぞれを別々の検出器に後で向け直し、そうしてマルチスペクトル像を形成するために、特定の波長(例えばミリ波)の放射を選択的に通し、別の波長に対応する放射(例えば赤外線)は反射することによってビームを分離する1つまたはいくつかのデバイスを使用することである。
【0022】
図4は、本発明を限定するものとみなされることなく、図1および図2に示された光学部品の実現可能な機械アセンブリを示す。主ミラー(1)は回転軸(13)と、その面に対する垂線(15)とを有する。副ミラー(2)もまた、垂線(14)と、主ミラーの軸(13)と位置合わせされた回転軸とを有する。この場合では、両ミラー(1および2)は、1組の伝動歯車(9)を介して機械的に隷属している。モータ(17)との連結は直接に、またはモータ軸に対して90°の伝動装置の第1段を介して行うことができる。次段でクラウン歯車(10)が回転され、その回転が、歯車(10)に垂直な別の2つのクラウン歯車(11および12)に伝達される。これらの歯車それぞれが1つの軸に固定され、別のクラウン歯車がもう一方の端部に取り付けられ、それぞれの回転ミラーに回転を伝達する。したがって、必要なモータは1つだけである。1つの重要な利点は、この実施形態により、中央開口がミラーに機械加工されている限り、1つ以上の検出器を2つのミラーの間にも主ミラー(1)の後ろにも配置できることである。
【0023】
図5は、図1の構成を組み込む本発明の一実施形態を示す。この実施形態は、同じ走査パターンに従って、物体平面に放射し、同時に物体平面からの(放出および反射された)放射を検出するように設計されている。
【0024】
この場合は、人工放射源(22)の出力部が焦点面に配置され、そこから副ミラー(2)に放射し、副ミラーは放射を主ミラー(1)の方に反射し、主ミラーで放射が物体平面(20)の方に反射され、両ミラーを傾斜させることによって得られる走査パターンに従って分布する。この放射は、物体平面(20)の対象物(21)に達すると反射される。この走査システムはまた、検出器(23)を焦点面に、人工放射源に近接して備える。
【0025】
本発明の好ましい一実施形態の説明
好ましい一実施形態が図6に示されている。主ミラー(1)は回転軸(13)と、その面に対する垂線(15)とを有する。副ミラー(2)もまた、垂線(14)と、主ミラーの軸(13)と位置合わせされた回転軸とを有する。両ミラー(1および2)は、両ミラーを回転させ位置決めセンサを有するモータ(6および5)にそれぞれが連結されるので、電子的に同期される。すなわち、モータの動きを制御するデバイスは、起こりうる同期のずれを検出し補正することができる。主ミラー(1)は、ベアリング(26)を包含する構造体に取り付けられる。この構造体(19)は、シャーシ(16)に接続され、検出器および/またはエミッタを光軸に沿ってどこにでも配置できるように、ベアリングおよび主ミラーの孔と位置合わせされた孔を含む。モータ(6)の回転は、伝達ベルト(25)を介してミラー(1)に伝達される。副ミラー(2)は、ベアリングによって支持され、モータ(5)に直接連結される。このモータは金属構造体(27)によって保持され、非金属構造体(18)が構造体(27)をシャーシ(16)と接続する。
【0026】
本明細書では、「備える、含む」という語は、排他的な意味で理解されるべきではない。つまり、これらの語は、説明および定義されているものが別の要素、ステップなどを含みうる可能性を排除すると解釈されるべきではない。
【0027】
一方、本発明は明白に、本明細書で説明されている特定の実施形態(1つ以上)に限定されないが、当業者が考えることができるあらゆる変形物(例えば、材料、寸法、構成要素、構成、機械設計などの選択に関して)は、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の全体の範囲内で包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ミラー(1)および副ミラー(2)を備える小型マルチスペクトル走査システムであって、前記ミラーが互いに向かい合い、反対方向に同じ角速度で回転されるように適合され、それらの回転軸(13)に対して傾けられ、前記主ミラーが凹形であり、前記副ミラーが前記主ミラーよりも小さく、両ミラーの回転軸が位置合わせされることを特徴とする小型マルチスペクトル走査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の走査システムであって、少なくとも1つの検出器を備え、前記主ミラー(1)がシーンからの放射を反射し、前記放射を収束するように適合され、前記副ミラー(2)が、前記収束された放射を受光し前記検出器に向かって送るように適合されていることを特徴とする小型マルチスペクトル走査システム。
【請求項3】
請求項2に記載の走査システムであって、前記主ミラーが球形、放物線形、双曲線形、楕円形、または非球面形であることを特徴とする小型マルチスペクトル走査システム。
【請求項4】
請求項2〜3のいずれかに記載の走査システムであって、前記副ミラーが平面、凹形、または凸形であることを特徴とする小型マルチスペクトル走査システム。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の走査システムであって、前記1つ以上の検出器が、点検出器、マトリクス検出器、またはリニア検出器であることを特徴とする小型マルチスペクトル走査システム。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれかに記載の走査システムであって、前記1つ以上の検出器が、前記主ミラーと前記副ミラーの間に配置されることを特徴とする小型マルチスペクトル走査システム。
【請求項7】
請求項2〜4のいずれかに記載の走査システムであって、前記検出器が、前記主ミラーの後ろの、光軸および焦点面と一致する位置に配置され、前記ミラーに中央開口が設けられることを特徴とする小型マルチスペクトル走査システム。
【請求項8】
請求項7に記載の走査システムであって、シーンに直線放射パターンまたは楕円形放射パターンで放射できるように前記検出器(23)に近接して配置された人工放射源(22)をさらに備えることを特徴とする小型マルチスペクトル走査システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の走査システムであって、伝動歯車を介して両ミラーに連結されたモータをさらに備えることを特徴とする小型マルチスペクトル走査システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の走査システムであって、前記ミラー(1、2)の一方にそれぞれが対応する2つのモータ(6、5)、電子同期システム、および位置センサをさらに備えることを特徴とする小型マルチスペクトル走査システム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の走査システムであって、ビーム分割デバイス(5)、および別々のビームを受光する複数の検出器をさらに備えることを特徴とする小型マルチスペクトル走査システム。
【請求項12】
請求項11に記載の走査システムであって、前記ビーム分割デバイスが偏光子であり、前記検出器が異なる偏光状態を感知することを特徴とする小型マルチスペクトル走査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−507662(P2013−507662A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533533(P2012−533533)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053558
【国際公開番号】WO2011/045087
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(512099954)アルファ イメージング ソシエダッド アノニマ (1)
【Fターム(参考)】