説明

小型モータ

【課題】 本発明は、軸受けアライメントの安定化を図る一方、モータ外部に絶縁性を確保して、電気素子を取り付けるに際して絶縁のための特別の手段を必要としない小型モータを提供することを目的としている。
【解決手段】 小型モータは、合成樹脂により一体に成形することにより構成された絶縁ホルダー16が備えられ、かつ、ケース蓋5を外側から覆うカバー部13と、該カバー部13からケース蓋5に設けられた切り欠きを通してモータ内部に突出する一対のブラシホルダー12とを備えている。ブラシホルダー12は、ブラシ18を支持したブラシアーム17及びそれに接続された入力端子11を支持している。ケースの底部中央とケース蓋の中央においてそれぞれ回転子シャフトのための軸受け3,6が支持される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、小型モータに関し、特に、金属製のケース蓋を使用して軸受けアライメントの安定化を維持したまま、ケース蓋外部の絶縁性を確保して、コンデンサー等の電気素子を直接取り付けることのできる小型モータに関する。
【0002】
【従来の技術】ドライヤー等の送風用小型モータには、モータ外部にコンデンサー、ダイオード、チョークコイル等の電気素子を直接取り付けることが必要になる。しかし、従来の小型モータのエンドベルは、モータ外部に金属製のケース蓋が配置されているため、絶縁しなければ電気素子を取り付けることはできない。
【0003】図4は、このような金属製のケース蓋が配置されている従来構成の小型モータの全体を上半分断面図で最左側に示し、また、その右の方には、ケース2から取り外した状態の合成樹脂製のエンドベル、そして最右側に、ケース蓋を示している。金属材料により有底中空筒状に形成されたケース2の内周面に、マグネット1が取り付けられている。このケース2の開口部は、ケース蓋5が嵌着されてそれによって閉じられている。ケース蓋5の中央部には、シャフト7のための軸受け6が収容される。シャフト7の他端は、有底中空筒状のケース2の底部中央に設けられた軸受け3によって支持されている。
【0004】このシャフト7には、積層コア8と、該積層コア8上に巻いた巻線9と、整流子10とが備えられて、小型モータの回転子を構成している。そして、この整流子10に接触するブラシは、エンドベル4に支持されると共に、ブラシに接続された入力端子11が電気的接続のためにケース蓋5を貫通して外部に突出している。
【0005】このように、従来の小型モータは、金属製のケース蓋5が、最も外側に位置し、その内側にブラシ、入力端子11などを取り付けた合成樹脂製のエンドベル4が配置されてケース2の開口部に嵌着されている。ケース蓋5を金属製にして、その中央部に軸受け6を収容したために、軸受けアライメントの安定化を図ることができるものの、金属製のケース蓋5の外部に電気素子を取り付けるためにはケース蓋5と絶縁する合成樹脂、紙等のカバーが必要となる。これは、明らかにコストアップの要因となる。
【0006】ケース蓋5を金属製ではなく、エンドベルと一体に合成樹脂製にして、射出成形することにより絶縁性を確保することはできるが、プレス、切削加工された金属製ケース蓋よりも明らかに精度は劣る。それ故、モータの両側にある軸受けの同軸精度が劣り、シャフトと軸受けのクリアランスを大きくする必要がある。しかし、クリアランスを大きくするとモータの磁気力等でシャフトが軸受けを叩くことによってクリアランス音が発生する。これを解決する一般的な手段として軸受けを球状にして自動調心機構を持たせてクリアランス音を小さくすることができるが、これには軸受け保持部品が必要となることからコストアップとなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、金属製ケース蓋が有する有利な特徴を生かして軸受けアライメントの安定化を図る一方、モータ外部に絶縁性を確保して、電気素子を取り付けるに際して絶縁のための特別の手段を必要としない小型モータを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の小型モータは、マグネット1を内周面に取り付けた金属製の有底中空筒状のケース2と、該ケース2の開口部を閉じるように嵌着された金属製のケース蓋5と、シャフト7上に積層コア8、該積層コア8に巻いた巻線9、及び整流子10を取り付けた回転子とから構成される。合成樹脂により一体に成形することにより構成された絶縁ホルダー16が備えられ、かつこれは、ケース蓋5を外側から覆うカバー部13と、該カバー部13からケース蓋5に設けられた切り欠きを通してモータ内部に突出する一対のブラシホルダー12とを備えている。このブラシホルダー12は、カーボンブラシ18を支持したブラシアーム17及びそれに接続された入力端子11を支持している。ケースの底部中央とケース蓋の中央においてそれぞれ回転子シャフトのための軸受け3,6が支持される。このように構成することにより、軸受けアライメントの安定化を図る一方、モータ外部に絶縁性を確保することができる。
【0009】また、絶縁ホルダー16は、ケース蓋5に設けられた切り欠きを通してモータ内部に突出して、マグネット1を軸方向に位置決めする一対のマグネット押さえ14を一体に成形することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の小型モータの全体を、上半分断面で示す縦断面図である。本発明は、ケース蓋及びそれと一体に嵌合するよう取り付けられている絶縁ホルダーの構成を除いて、図4を参照して前述した従来構成の小型モータと格別の相違はない。図示したように、金属材料により有底中空筒状に形成されたケース2の内周面にマグネット1が取り付けられている。このケース2の開口部は、金属製のケース蓋5が嵌着されてそれによって閉じられている。ケース蓋5の中央部には、シャフト7のための軸受け6が収容される。このように、ケース蓋5を金属製にしたために、プレス、切削加工により精度よく構成することが可能となるため、軸受けアライメントの安定化を図ることができる。
【0011】シャフト7の他端は、有底中空筒状のケース2の底部中央に設けられた軸受け3によって支持されている。このシャフト7には、積層コア8と、該積層コア8上に巻いた巻線9と、整流子10とが通常に備えられて、小型モータの回転子を構成している。そして、この整流子10に接触する一対のカーボンブラシは、そのブラシアーム17が合成樹脂製のブラシホルダー12に支持されると共に、ブラシアーム17に接続された入力端子11が電気的接続のためにブラシホルダー12を貫通してケース蓋5の外部に突出している。
【0012】図2は、図1に示した小型モータのケース蓋及び絶縁ホルダーを取り出して示す図であり、その右側に断面図で示し、かつ、左側にモータ内部からケース蓋の方向に見た図を示している。図3は、ケース蓋と絶縁ホルダーの相互の関係を明確にするために構成の細部の図示を省略して、ケース蓋と絶縁ホルダーを分解して示す概略分解図である。金属製のケース蓋5は、その外周側に、図中で上下2つのブラシホルダー12及び左右の2つのマグネット押さえ14が嵌合するための切り欠き、シャフト軸受け用の中央の穴、及び冷却用の複数の通気口15等の開口を有するものの、全体的には有底中空筒状のケース2の開口部に嵌着されるように円板形状に構成されている。
【0013】この金属製のケース蓋5と一体に嵌合取り付けされる合成樹脂製の絶縁ホルダー16は、ケース蓋5と対応する形状を有する全体的に円板状のカバー部13と、図中で上下2つのブラシホルダー12と、好ましくは図中で左右2つのマグネット押さえ14とが、合成樹脂により一体に成型されることにより構成されている。カバー部13は、ケース蓋5の外側からケース蓋5を覆うように構成され、金属ケースの通気口15及び軸受け用の穴に一致してあけられる同様な通気口及び開口を有している。一対のブラシホルダー12は、ケース蓋5の外周の切り欠きを通してモータ内部に突出していて、ブラシアーム17及びそれと接続された入力端子11を支持している。一対のマグネット押さえ14は、マグネット1を軸方向に押さえて位置決めするために備えることが望ましく、同様にケース蓋5の外周の切り欠きを通してモータ内部に突出させることができる。なお、図中19は、絶縁ホルダーと一体に成型された円柱状突起であり、ケース蓋5に設けられた対応する穴に嵌合して、両者をより確実に一体に組み合わせることができる。
【0014】このような構成の絶縁ホルダー16は、合成樹脂製の弾性力を利用して、ケース蓋5の外側からケース蓋5外周部の切り欠きにブラシホルダー12及びマグネット押さえ14等を嵌合することにより一体に組み合わせ、さらに、この一体に組み合わせたケース蓋5と絶縁ホルダー16を、既に回転子を挿入した状態のケース2の開口部に嵌合させることにより、モータの組立が完成する。このように、金属製のケース蓋5の外側は、合成樹脂製の絶縁ホルダー16のカバー部13によって覆われているので、特別の絶縁手段を用いることなく、ケース蓋5の外側に電気素子を取り付けることが可能になる。
【0015】
【発明の効果】本発明は、合成樹脂により一体に成形することにより構成された絶縁ホルダー16を備え、かつこの絶縁ホルダー16に、ケース蓋5を外側から覆うカバー部13と、該カバー部13からケース蓋5に設けられた切り欠きを通してモータ内部に突出する一対のブラシホルダー12とを備えることにより、金属製ケース蓋が有する有利な特徴を生かして軸受けアライメントの安定化を図る一方、モータ外部に絶縁性を確保して、電気素子を取り付けるに際して絶縁のための特別の手段を必要としないという効果を生じる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の小型モータの全体を、上半分断面で示す縦断面図である。
【図2】図1に示されたケース蓋及び絶縁ホルダーを取り出して示す図であり、その右側に断面図で示し、かつ、左側にモータ内部からケース蓋の方向に見た図を示している。
【図3】構成の細部の図示を省略して、ケース蓋と絶縁ホルダーを分解して示す概略分解図である。
【図4】従来構成の小型モータの全体を上半分断面図で最左側に示し、また、その右の方には、ケースから取り外した状態の合成樹脂製のエンドベル、そして最右側に、ケース蓋を示している。
【符号の説明】
1 マグネット
2 ケース
3 軸受け
5 ケース蓋
6 軸受け
7 シャフト
8 積層コア
9 巻線
10 整流子
11 入力端子
12 ブラシホルダー
13 カバー部
14 マグネット押さえ
15 通気口
16 絶縁ホルダー
17 ブラシアーム
18 カーボンブラシ
19 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】マグネットを内周面に取り付けた金属製の有底中空筒状のケースと、該ケースの開口部を閉じるように嵌着された金属製のケース蓋と、シャフト上に積層コア、該積層コアに巻いた巻線、及び整流子を取り付けた回転子とから成る小型モータにおいて、前記ケース蓋を外側から覆うカバー部と、該カバー部からケース蓋に設けられた切り欠きを通してモータ内部に突出する一対のブラシホルダーとを合成樹脂により一体に成形することにより構成した絶縁ホルダーを備え、前記一対のブラシホルダーはそれぞれ、ブラシを支持したブラシアーム及びそれに接続された入力端子を支持し、前記ケースの底部中央とケース蓋の中央においてそれぞれ回転子シャフトのための軸受けを支持する、ことを特徴とする小型モータ。
【請求項2】前記絶縁ホルダーは、ケース蓋に設けられた切り欠きを通してモータ内部に突出して、マグネットを軸方向に位置決めする一対のマグネット押さえを一体に成形したことを特徴とする請求項1に記載の小型モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2000−224795(P2000−224795A)
【公開日】平成12年8月11日(2000.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−21213
【出願日】平成11年1月29日(1999.1.29)
【出願人】(000113791)マブチモーター株式会社 (69)
【Fターム(参考)】