説明

小型電動車両

【課題】ステアリングハンドルの操作性やスイッチボックスの視認性の向上を図ると共に、安全性の向上を図る。
【解決手段】本発明は、車体8の前部に立設されたステアリングシャフト9と、ステアリングシャフト9の上端にステアリングシャフト9と一体に回転可能に設けられたステアリングハンドル10とを備えた小型電動車両1であって、表示装置26を備えたスイッチボックス11が車体8の前部に固定され、スイッチボックス11の下部にステアリングシャフト9の上端部が配置され、ステアリングハンドル10は、ステアリングシャフト9の上端部にブラケット15を介して支持され、スイッチボックス11の後方且つ上方であってスイッチボックス11の近傍に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や足の不自由な人が利用する小型電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高齢者や足の不自由な人が利用する小型電動車両には、車体の後部に利用者が着座するシートが設けられていると共に、車体の前部に各種スイッチ等が配置されたスイッチボックスやステアリングハンドルが設けられている。そして、この種の従来の小型電動車両に設置されるステアリングハンドル及びスイッチボックスには、ステアリングハンドルがループ状を成し、スイッチボックスと一体に構成されているものや(例えば、特許文献1参照)、ステアリングハンドルがコの字状を成し、スイッチボックスがステアリングハンドルから前方に延出するように別体に設けられているもの(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
【0003】
また、上記した小型電動車両には、シートの両側にアームレストが設けられており、このアームレストは長さが20〜30cm程度で、走行時には水平姿勢に保持される一方、乗降時には後端部を支点に上方に持ち上げられるようになっている(例えば、特許文献1又は2参照)。
【特許文献1】特開2000−237245号公報
【特許文献2】特開2003−245312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1に記載された小型電動車両では、旋回時にステアリングハンドルを操舵するとスイッチボックスも一緒に回転してしまうため、旋回時のスイッチ操作が難しいといった問題や、スイッチ等の表示が視認し難いといった問題があった。
【0005】
一方、上記した特許文献2に記載された小型電動車両では、スイッチボックスがステアリングハンドルから前方に突出するように設けられ、シートに着座した利用者から遠くなるため、スイッチ等の表示が視認し難いといった問題があった。
【0006】
さらに、この種の小型電動車両では、車両の旋回半径が小さくなるように操舵角を大きくしているため、上記した特許文献1又は2に記載された小型電動車両のようにループ形状やコの字状のステアリングハンドルでは、手首の動きが大きくなり、体が自由に動かない高齢者等にとっては操作し難いといった問題があった。
【0007】
また、上記した特許文献1又は2に記載された小型電動車両では、アームレストの長さが短いため、シートに着座している利用者を外部の衝撃から十分に保護することが難しい共に、ステアリングハンドルの操舵時に利用者の肘や上体を十分に支えることが難しく、安全性の向上を図り難いといった問題があった。
【0008】
本発明は上記した課題を解決すべくなされたものであり、ステアリングハンドルの操作性やスイッチボックスの視認性の向上を図ると共に、安全性の向上を図ることのできる小型電動車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明は、車体の前部に立設されたステアリングシャフトと、該ステアリングシャフトの上端に該ステアリングシャフトと一体に回転可能に設けられたステアリングハンドルとを備えた小型電動車両であって、表示装置を備えたスイッチボックスが前記車体の前部に固定され、該スイッチボックスの下部に前記ステアリングシャフトの上端部が配置され、前記ステアリングハンドルは、前記ステアリングシャフトの上端部にブラケットを介して支持され、前記スイッチボックスの後方且つ上方であって該スイッチボックスの近傍に配置されていることを特徴とする。
【0010】
そして、前記ステアリングハンドルは、前記ブラケットが支持する中心部から左右両側に向かって延出する水平部と、該水平部の両端部を前方斜め上方に屈曲させて形成した立ち上がり部と、該立ち上がり部の先端を膨出させて形成したグリップ部とを備えていてもよい。
【0011】
また、前記ステアリングハンドルの中心部には方向指示器用スイッチ及び警笛スイッチが設けられ、前記スイッチボックスの中央部には前記表示装置が設けられていてもよい。
さらに、前記スイッチボックスの前端部には左右に方向指示器用ランプが設けられていてもよい。
【0012】
さらに、前記車体の後部に設けられたシートの両側にアームレストが設けられ、該アームレストの前端部は、前記スイッチボックスの両側の車体に連結されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ステアリングハンドルの操作性やスイッチボックスの視認性の向上を図ることができ、安全性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1は本発明の実施の形態に係る小型電動車両を示す斜視図、図2は同小型電動車両のスイッチボックス及びステアリングハンドルを示す平面図、図3は同小型電動車両のステアリングハンドルの別の例を示す平面図、図4は同小型電動車両のスイッチボックス及びステアリングハンドルを示す平面図、図5は図4のA−A矢視図である。
【0015】
本実施の形態に係る小型電動車両1には、左右一対の前輪2と後輪3を支持する車体フレーム(図示省略)が設けられており、この車体フレームの全体を、前部カバー4、レッグシールド5、フロア6、後部カバー7等から成るプラスチック製の車体カバーにより覆うことにより車体8が形成されている。
【0016】
車体8の前部には、盾状のレッグシールド5が上方に突出して設けられており、レッグシールド5内には、前輪2を操舵する縦長のステアリングシャフト9(図4及び図5参照)が立設した状態で収容されており、このステアリングシャフト9の上端には、ステアリングシャフト9と一体に回転するようにステアリングハンドル10が設けられている。また、車体8の前部の上端には、ステアリングハンドル10とは別体にスイッチボックス11が固定されており、ステアリングシャフト9の上端部は、このスイッチボックス11の後端側下部に配置されている。
【0017】
また、ステアリングハンドル10は、図4及び図5に示すように、ステアリングシャフト9の上端部にブラケット15を介して支持されており、このブラケット15は、前端がステアリングシャフト9の上端に締結される後方延出部16と、後方延出部16の後端から上方に延出する上方延出部17とから構成され、上方延出部17の上端にステアリングハンドル10の中心部が締結され、支持されている。これにより、ステアリングハンドル10は、スイッチボックス11の後方且つ上方であってスイッチボックス11の近傍に配置され、スイッチボックス11の周囲上方を円周状の軌跡で回転するようになっている。なお、ステアリングハンドル10及びスイッチボックス11の詳細については後述する。
【0018】
一方、車体8の後部には、箱状の後部カバー7が上方に突出して設けられており、後部カバー7内には、後輪3を駆動する電動モータや燃料電池等の動力装置(図示せず)が収容されている。そして、後部カバー7の上側には、利用者が着座するシート12が配置されており、シート12の前方の車体8の中間部にフロア6が設けられている。
【0019】
また、シート12の両側には、後部カバー7とレッグシールド5との間にアームレスト13が水平に渡設されている。アームレスト13は、後端部14を支点に上下又は左右に回動可能或いは前後にスライド可能に設けられており、走行時には前端部31がスイッチボックス11の両側のレッグシールド5に連結されてシート12の側面を閉塞する一方、乗降時には後端部14を支点に上方又は外側に回動或いは後方にスライドしてシート12の側面を開放するようになっている。
【0020】
次に、ステアリングハンドル10及びスイッチボックス11について詳細に説明する。
【0021】
ステアリングハンドル10は、図2に示されているように、この中心部から左右両側に向かって延出するバー状の水平部18と、水平部18の両端部を前方斜め上方に屈曲し、互いに離間する方向に延出させた左右の立ち上がり部19と、各立ち上がり部19の先端を球状に膨出させて形成したグリップ部20とから構成されている。また、平面視でステアリングハンドル10の水平部18とスイッチボックス11の間には、ステアリングハンドル10の中心部から水平部18に沿って左右両側にアクセルレバー21がクランク状に屈曲して形成されており、アクセルレバー21の両端には、グリップ部20の近傍に他の部分より太径の操作部22が形成されている。
【0022】
なお、ステアリングハンドル10は、上記した形状や構造に限定されるものではなく、例えば、図3に示すように、左右の立ち上がり部19’を互い近接する方向に延出させ、各把持部20’を先細り形状に形成してもよい。また、図3に示すように、ステアリングハンドル10の中心部に警笛スイッチ23や方向指示器用スイッチ24を設けてもよく、この場合には、運転時に操作頻度の高いスイッチ類がステアリングハンドル10の中心部に集約されるため、操作性の向上を図ることができると共に、ステアリングハンドル10から手を放さずにスイッチ類を操作することができるようになるため、安全性の向上を図ることができる。
【0023】
スイッチボックス11は、略矩形箱状に形成されたケース本体25の内部中央に液晶表示装置26が収容されて構成され、この液晶表示装置26の表示画面27はスイッチボックス11の上面側に露出している。なお、図2において、液晶表示装置26の上面側には、表示画面27の後方に警笛スイッチ23及び方向指示器用スイッチ24が並列に配置されているが、これらのスイッチ類は、上記した図3の場合のように、ステアリングハンドル10の中心部に集約して配置されていてもよい。また、スイッチボックス11は、ステアリングハンドル10と別体に設けられているため、上記した略矩形箱状以外の形状とすることもでき、設計の自由度を高めることができる。
【0024】
また、スイッチボックス11の上面側には、ステアリングハンドル10の回転軌跡の外側に位置するように、表示画面27の左右にそれぞれ、速度調整ダイヤル28と前後進切換スイッチ29が配置されており、さらに、スイッチボックス11の前端部には、左右にそれぞれ、方向指示器用ランプ30が配置されている。このように、スイッチや方向指示器用ランプ等の電装部品をスイッチボックス11に集約することにより、コンパクト化を図ることができる。
【0025】
このような構成を備えた小型電動車両において、シート12に着座した利用者がステアリングハンドル10のグリップ部20を把持し、アクセルレバー21の操作部22を引くことにより、前記動力装置が後輪3を駆動し、車体8は前進又は後進する。この時、ステアリングハンドル10のグリップ部20の近傍にアクセルレバー21の操作部22が配置されているため、利用者はグリップ部20を把持した状態でアクセルレバー21を容易且つ円滑に操作することができる。
【0026】
また、前記利用者がグリップ部20を把持し、ステアリングハンドル10を所望な方向に回転させると、ステアリングハンドル10の回転に伴ってステアリングシャフト9が一体に回転し、前輪2を操舵し、車体8は前記利用者の所望な方向に旋回する。この時、ステアリングハンドル10はスイッチボックス11の周囲上方を円周状の軌跡で回転するが、スイッチボックス11が回転しないため、速度調整ダイヤル28や前後進切換スイッチ29等のスイッチ類を操作し易くなると共に、表示画面27に表示される燃料電池の発電状態や燃料残量等の車両に関する情報を視認し易くなる。また、操舵の際に必要なステアリングハンドル10の回動領域がコンパクトになると共に、グリップ部20,20’を把持してステアリングハンドル10を操作することにより手首や腕を大きく動かす必要がなくなるため、体が不自由な高齢者等であっても容易に操作することができる。
【0027】
さらに、走行時、アームレスト13の前端部31がスイッチボックス11の両側のレッグシールド5に連結されることによりシート12の両側がガードされるため、ステアリングハンドル10の操舵時に利用者の肘や上体を十分に支えることができ、安全性の向上を図ることができると共に、利用者に安心感を付与することができる。また、アームレスト13が長くなり、アームレスト13上に腕を伸ばした状態で置くことができるので、走行時の快適性を高めることができる。
【0028】
なお、上記した実施の形態では、本発明を四輪の小型電動車両に適用した場合について説明したが、本発明は三輪の小型電動車両にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る小型電動車両を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る小型電動車両のスイッチボックス及びステアリングハンドルを示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る小型電動車両のステアリングハンドルの別の例を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る小型電動車両のスイッチボックス及びステアリングハンドルを示す平面図である。
【図5】図4のA−A矢視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 小型電動車両
8 車体
9 ステアリングシャフト
10 ステアリングハンドル
11 スイッチボックス
13 アームレスト
15 ブラケット
18 水平部
19 立ち上がり部
20 グリップ部
23 警笛スイッチ
24 方向指示器用スイッチ
26 液晶表示装置
30 方向指示器用ランプ
31 前端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前部に立設されたステアリングシャフトと、該ステアリングシャフトの上端に該ステアリングシャフトと一体に回転可能に設けられたステアリングハンドルとを備えた小型電動車両であって、
表示装置を備えたスイッチボックスが前記車体の前部に固定され、該スイッチボックスの下部に前記ステアリングシャフトの上端部が配置され、前記ステアリングハンドルは、前記ステアリングシャフトの上端部にブラケットを介して支持され、前記スイッチボックスの後方且つ上方であって該スイッチボックスの近傍に配置されていることを特徴とする小型電動車両。
【請求項2】
前記ステアリングハンドルは、前記ブラケットが支持する中心部から左右両側に向かって延出する水平部と、該水平部の両端部を前方斜め上方に屈曲させて形成した立ち上がり部と、該立ち上がり部の先端を膨出させて形成したグリップ部とを備えている請求項1に記載の小型電動車両。
【請求項3】
前記ステアリングハンドルの中心部には方向指示器用スイッチ及び警笛スイッチが設けられ、前記スイッチボックスの中央部には前記表示装置が設けられている請求項1又は2に記載の小型電動車両。
【請求項4】
前記スイッチボックスの前端部には左右に方向指示器用ランプが設けられている請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の小型電動車両。
【請求項5】
前記車体の後部に設けられたシートの両側にアームレストが設けられ、該アームレストの前端部は、前記スイッチボックスの両側の車体に連結されている請求項1〜4のいずれか1の請求項に記載の小型電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−68660(P2008−68660A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246882(P2006−246882)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】