説明

少なくとも一部が反射性を呈する物体表面の光学的検査装置

少なくとも一部が反射性を呈する物体表面の光学的検査装置は,それぞれ円弧セグメント状セクション(32)を形成する第1及び少なくとも1つの第2クロスビーム(12, 14)を具える。クロスビーム(12, 14)は互いに,長手方向(17)に間隔(D)をおいて配置されている。クロスビーム(12, 14)は複数の長手方向ビーム(16)により長手方向間隔(D)で保持されている。長手方向ビーム(16)は円弧セグメント状セクション(32)に対して所定の半径方向間隔(38)をおいて配置されている。クロスビーム(12, 14)はトンネル状検査スペース(36)を形成する透光性の拡散スクリーン(34)を支持する。複数の光源(48)がトンネル状検査スペース(36)の外側で拡散スクリーン(34)の背後に配置され,これらの光源は拡散スクリーン上に可変明暗パターンを(90)を生成すべく,個別的に又は少数の群単位で制御可能とされている。トンネル状検査スペース(36)内に向けて,少なくとも1台のカメラ(74, 78)が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,少なくとも一部が反射性を呈する物体表面を対象とする光学的検査装置に関するものである。特に本発明は,工業的条件下で反射性表面をほぼ,又は完全に自動的に検査可能とした検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品の工業的製造に際して,製品品質は多年に亘って重要な役割を担っている。高い製品品質は,対応して設定された安定的な生産プロセスによって達成可能である。他方,品質欠陥を早期に認識するために,製品の品質パラメータは可及的に高い信頼性をもって完全に制御する必要がある。多くの場合には,製品表面の品質が重視される。ここに「製品表面」とは,自動車や家庭用品における塗装表面等の加飾表面や,精密加工された金属製のピストン表面及び軸受面等の工業的表面を意味している。
【0003】
鏡面を自動的に検査するために,既に各種の提案及び概念が存在している。しかしながら,既知の方法及び装置は,多くの場合には特定の使用条件にしか適用できない。何故なら,このような従来技術は,検査すべき表面についての高度の事前知識を前提としているからである。さらに,多くの使用条件に適合する既知の方法及び装置は,効率的で信頼性の高い,工業的条件下での表面検査を行うには未だ十分に成熟していない。その工業的条件には,工業的製造における生産性向上に関連するサイクル時間の遵守,製造現場において検査を行える能力,及び表面検査を製品の切換えに対する容易かつ迅速な適合可能性が含まれている。
【0004】
したがって,例えば自動車産業においては今日でも,経験豊富な熟練作業者による塗装面の視覚的な検査が通常である。反射性を有する塗装面の検査に係る自動化は,製造工程自体の自動化よりも達成度が低い。自動車における塗装面の視覚検査を行うための装置の一例は,米国特許第5636024号明細書(特許文献1)に記載されている。この装置は,検査すべき塗装面を有する自動車を通すためのトンネルを含んでいる。トンネルの内壁には,明るいストリップと暗いストリップからなる縞状パターンを発生する光源が配置されている。この縞状パターンは,自動車の塗装面により反射される。塗装面の検査は作業者が行うものであり,そのために作業者はトンネル内に立って塗装面における縞状パターンの反射を目視検査する。言うまでもなく,そのようなアプローチは観察者の技能及び経験に大きく依存するものであり,したがって信頼性には限界がある。加えて,そのようなアプローチは労働集約的であり,これに対応してコスト高である。
【0005】
独国特許出願公開第103 17 078号公報(特許文献2)は,デフレクトメトリ原理に基づく検査方法及び装置を記載している。この方法においては,輝度特性を正弦波状に変化させた縞状パターンを,検査対象面に対して斜めに配置したスクリーン上に投影する。投影されるパターンを変化させ,又は移動させることにより,これに対応して変化するパターンを表面上に入射させる。パターンの変化/移動の間,又はその後に,反射されたパターンを含めて当該表面の画像を撮影する。異なる時点で撮影された画像について数学的に関連付けを行って最終的な画像を生成し,これに基づいて欠陥を含む領域と,欠陥を含まない領域とを計算上又は視覚的に区別可能とする。これと同様な検査方法及び同様な検査装置は,次の論文:「鏡面反射面の品質検査のためのデフレクトメトリ」,ゼーレン・ケンメル著,tm-technisches Messen第4/2003号,第193 - 198頁(非特許文献1)にも記載されている。この場合には,得られた画像データを参照データとの比較に基づいて評価するので,検査対象を参照データに対して厳格に定位させる必要がある。
【0006】
少なくとも一部が反射性を呈する物体表面の光学的検査方法及び装置は,独国特許第19821059号明細書(特許文献3)及び米国特許第6100990号明細書(特許文献4)にも記載されている。ここでも,輝度特性が正弦波状に変化する縞状パターンを,検査すべき表面上において観察する。何れの場合にも縞状パターンを,検査すべき表面に対して斜めに配置した平坦スクリーン上に発生させる。したがって,この方法の欠点は,比較的小さな面積についてしか検査が行えず,しかも当該表面は縞状パターンに対して既知の確定的な位置及び方位をもって配置する必要があることである。その結果,反射性表面についての工業的条件下における,迅速性及び信頼性に優れ,しかも効率的な検査は不可能である。
【0007】
米国特許第5726706号明細書(特許文献5)及び独国特許出願公開第37 12 513号公報(特許文献6)は,それぞれ,多数のカメラを配置したブリッジ状の構造体に自動車を通す検査方法及び装置を記載している。塗装欠陥や他の表面欠陥の検出は,ストリップ状又は縞状の検査光を適用し,その反射を評価することによって行う。欠陥のない表面であれば,各カメラは明るいストリップ又は暗いストリップを撮影する。表面に凹み等の欠陥がある場合には,明るいストリップからの光が暗いストリップの画像に転位するので,暗いストリップの画像中に明るい光点が視認されることとなる。この方法は,検出の確実性が制約されている。すなわち,小さなスクラッチや光沢のない塗装部位は,周領域と対比して異なる空間方向への有意な反射を生じないので,このような装置では検出することができない。
【0008】
独国特許出願公開第10 2005 038 535号公報(特許文献7)は,表面検査を工業的な製造プロセスにおけるサイクル時間に適合させる場合の問題点に着目しており,検査対象表面を有する物体を照明するための回転対称的な,好適には円筒状とした縞状パターンの投影装置を提案している。この場合,中空円筒体の内壁には蛍光フィルムを被覆し,又は積層する。蛍光フィルムにカラースケール又はグレイスケールのストリップを設け,このストリップは印刷により,又は第2のフィルムを積層して形成する。このような中空円筒体は,機械的に回転運動させ得るように,外側の第2中空体の内部に配置する。この回転運動により,検査すべき表面に対する縞状パターンの変化を生じさせる。しかしながら,中空円筒体の機械的運動は,特に検査装置を大面積表面の検査に適用する場合に欠点となるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5636024号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第103 17 078号公報
【特許文献3】独国特許第198 21 059号明細書
【特許文献4】米国特許第6100990号明細書
【特許文献5】米国特許第5726706号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第37 12 513号公報
【特許文献7】独国特許出願公開第10 2005 038 535号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「鏡面反射面の品質検査のためのデフレクトメトリ」,ゼーレン・ケンメル著,tm-technisches Messen第4/2003号,第193 - 198頁,
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した背景に鑑み,本発明の解決しようとする課題は,反射性表面を有する物体を工業的条件下でも迅速に,しかも少なくとも大幅に自動化された方法で検査可能とした装置を提案することである。その装置は,コストパフォーマンスに優れ,摩耗を生じるものでなく,原則的には大小の如何を問わずに広範な対象物体を検査できるものであることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するため,一つの観点によれば,本発明に係る検査装置は:それぞれ円弧状セグメンを形成する第1及び少なくとも1つの第2クロスビームが,互いに長手方向の間隔をおいて配置され;前記クロスビームを前記長手方向間隔で保持するための複数の長手方向ビームが,前記円弧セグメント状セクションに対して所定の半径方向間隔をおいて配置され;透光性の拡散スクリーンが,前記クロスビームにより前記円弧セグメント状セクション内で保持されてトンネル状の検査スペースを形成し;複数の光源が,トンネル状検査スペースの外側で拡散スクリーンの背後に配置され,前記拡散スクリーン上に可変の明暗パターンを生成すべく,個別的に又は少数のグループ単位で制御可能とされており;さらに,トンネル状検査スペース内における検査すべき物体を支持するための支持部材と;トンネル状検査スペース内に向けて配置された少なくとも1台のカメラと;前記光源及び前記カメラを制御することにより,前記拡散スクリーン上に異なる明暗パターンを生成すると共に,該明暗パターンに応じて前記物体からの多くの画像を記録・分析する分析・制御ユニットと;を具えるものである。
【0013】
すなわち,上述した構成に係る検査装置はトンネル状検査スペースを使用し,その検査スペース内に検査すべき表面を有する物体を導入する。トンネル状検査スペースは,その物体を少なくとも90°,好適には120°以上,更に好適には180°以上の弧長に亘って包囲する。その結果,拡散スクリーン上で生成された明暗パターンが検査すべき表面に対して多方向から入射するので,複雑な自由表面を有する物体でも,その検査が容易かつ迅速に達成される。検査すべき物体は,トンネル状検査スペース内に搬入するだけでよい。一般的に,検査スペース内における対象物体の特殊な,及び/又は厳格な位置決めは省くことができる。なお,対象物体が遮蔽された表面及び/又はバックカット部を有する場合に,これらを少なくとも1台のカメラと対向させて配置する必要があることは,言うまでもない。
【0014】
また,個別的に,又は少数の群単位で制御可能な複数の光源を設けたことにより,多数の異なる明暗パターンを生成することが可能である。したがって,上述した構成を有する検査装置は,種々の要求に対して容易かつ迅速に適合させ得るものである。さらに,トンネルの機械的移動を省くことができ,この点は,自動車や自動車部品等の大型物体の場合に特に有利である。個別的に制御可能な複数の光源が,所定の明暗パターンを対象物体に対して変位又は移動可能とするため,物体の載置手段を原則的には固定配置とすることができる。特定の実施形態においては,工場の床面等により物体載置手段を構成することができる。かかる実施形態は,検査対象物体が自走可能であり,又はパレットや搬送車両によってトンネル状検査スペース内まで搬送される場合に有利である。
【0015】
さらに,少なくとも2つのクロスビームと長手方向ビームとを含む構成により,モジュール化され,拡張性を有する構造が達成され,その結果としてコスト的に有利に検査装置を実現することができる。
【0016】
好適な実施形態において,分析・制御ユニットは,光源及びカメラを適切に制御することにより,所定の明暗パターンに対して少なくとも4つの異なる位置において,検査すべき表面を撮像する。換言すれば,検査すべき表面に対して所定の明暗パターンが少なくとも4つの異なる位置を占める状態で,当該表面について少なくとも4つの画像を取得するものである。この場合に明暗パターンは,好適には輝度特性が正弦波状に変化するものとする。分析・制御ユニットは,好適には,検査すべき表面に対する輝度変化の位相が画像から決定できるように構成する。その理由は,位相が検査すべき表面における局所的な勾配と相関するからである。局所的な勾配に基づき,反射性表面における各種の表面欠陥を,高い精度及び信頼性をもって検出することが可能である。
【0017】
総体的に言えば,本発明に係る検査装置は,種々の大型物体であっても原則として自動的に,しかも高信頼性をもって迅速に表面検査を行うことのできるコンセプトに基づくものである。モジュール化及び拡張可能性を有するコンセプトにより,本発明は,各種の用途に適合する検査装置をコスト的に有利に実現するものである。この検査装置は,光源を個別的に制御可能としたことにより,検査課題が入れ替わった場合でも非常に容易かつ迅速に対応可能である。トンネル状検査スペースが外部から区画された確定的な検査容積を形成するため,本発明に係る装置は何らの問題も生じることなく現実の製造環境に投入することができ,その結果,現場に直結した品質管理をおこなうことができる。すなわち,前述した本発明の課題を有利に解決することが可能である。
【0018】
好適な実施形態において,本発明に係る検査装置は,互いに同一構成とした光学モジュールを更に具え,これらの光学モジュールが拡散スクリーンと長手方向ビームとの間に配置され,各光学モジュールが複数の光源を含む構成とされている。特に好適には,同一構成の光学モジュールが,それぞれ光源でほぼ完全に覆われた前側部分を有している。
【0019】
光源を拡散スクリーンと長手方向ビームとの間に配置したことにより,明暗パターンを,妨害されずに,したがって影を生じさせずに拡散スクリーン上に生成することができる。これは,ほぼ任意の明暗パターンを生成し,かつ,拡散スクリーン上で「ワンダリング」させることが可能となる点で有利である。同様の理由から,光学モジュールの前側部分を光源で完全に覆うことにより,全体としてほぼ均一な平面を形成し,その平面上で光源を互いに等間隔でマトリックス状に配置するのが望ましい。光学モジュールを互いに同一構成とすることにより,製造コスト及び保守コストを低下させることが可能である。
【0020】
好適な実施形態において,光学モジュールは,前記の長手方向間隔とほぼ等しい長さを有する金属製の支持体を含み,該支持体は,光源を配置した前側部分と,冷却フィンを形成した後側部分とを含む構成とされている。好適には,光源を,薄くて可撓性があり,剛性の低い支持フィルム上に配置し,その支持フィルムを冷却体の前側部分に直接的に接着する。
【0021】
この実施形態において,光学モジュールは金属製の支持体,好適には剛性が高くて自己支持可能であり,しかも熱伝導特性に優れた支持体を含む。この支持体における後側部分に冷却フィンを,好適には一体的に,特に好適には長手方向に延在するように形成する。その結果,全ての光学モジュールにおける冷却フィンが,半径方向外向きに配置されることとなる。これにより,複数の光学モジュールが一体的な冷却体を形成し,この冷却体が,光学モジュールに対する直接的な熱伝達と,冷却気流の生成とを促進する。薄い支持フィルム上に光源を配置し,そのフィルムを冷却体に対して直接接着することにより,良好な熱輸送を有利に実現させることができる。この実施形態の特に有利な変形例においては,光源を制御するための制御・駆動回路を含む回路基板を,1つの冷却フィン上に直接配置する。さらに好適には,光源を配置した支持フィルムがその片面に一体の(すなわち,支持フィルムに対して一体的に結合された)タブを有し,このタブが冷却体の周りで湾曲しつつ回路基板に結合された構成とされている。この変形例は,電子制御回路に対する光源の,非常にコンパクトな電気的接続構造を実現可能とするものである。さらに,光源を容易に実装可能とすると共に,冷却体に対する光源の最大限の熱的結合を達成するものである。
【0022】
この実施形態は,個別的に制御可能な多数の光源をわずかな間隔で配置し,かつ,安定的に作動させる上で,単独でも,他の実施形態と組み合わせた場合でも非常に有利である。実際に試行して判明したとおり,自由度の高いパターン生成のために最適化されたコンパクト設計における多数の光源に対して,効果的な冷却手段を組み込むことは困難である。このような観点から,上記の実施形態は,半径方向外向きの,かつ,長手方向に沿う直接放熱を促進する上で非常に有利であることを確認した。
【0023】
他の実施形態において,光学モジュールは,クロスビームに対して長手方向において浮動的に支持されている。一実施形態において,光学モジュールは第1端部で固定軸受により,これとは反対側に位置する第2端部では,ばね負荷された浮動軸受により,それぞれ支持されている。
【0024】
この実施形態においては,少なくとも2つのクロスビームが実質的に,又はもっぱら長手方向ビームの支援下で所定の長手方向間隔に維持される。確かに光学モジュールは,一方のクロスビームから他方のクロスビームにかけて延在している。しかしながら,光学モジュールは,クロスビームを長手方向間隔に機械的に固定する機能を担うものではない。光学モジュールを,ばね負荷された浮動軸受によって浮動的に支持することにより,光源の方向性を容易かつ低コストの態様で確定させることができ,しかも光学モジュールの長手方向における膨張を許容することが可能である。この膨張は,各光学モジュールの長手方向における長さがその幅よりも実質的に大きい場合に助長される。好適な実施形態では,光学モジュールの長さが,光源の配置された光学モジュールの前側部分で測った幅に対して10倍以上も大きい。このような光学モジュールの寸法比は長手方向における熱膨張を助長するものであるが,ばね負荷された浮動軸受により,ほぼ無応力状態に補償することが可能である。驚くべきことに,光源の浮動的な支持は,拡散スクリーン上のパターンを変化させることがあるけれども,容認し得るものである。この実施形態は,本発明に係る検査装置の内部で生じる熱応力を低下させる上で有利である。
【0025】
他の実施形態では,各光学モジュールにおいて光源が長手方向で互いに平行な2列のアレーとして配置されており,各アレーが個別的に制御可能である。
【0026】
原則的に,各光学モジュールはその前側部分に1列のみの光源,又は個別的に制御可能な3列以上の光源を有することができる。しかしながら,光源は2列の配置とするのが有利である。その理由は,一方では,1列のみの光源と対比してより高い集積密度が達成されるからである。また,他方において,互いに平行な2列の配置としたことにより,平行列に対して横方向にほぼ任意の半径を有する円を規定することができる。その結果,個別的に制御可能な全ての光源を,拡散スクリーンの現実の内径とは無関係に,拡散スクリーンに対して最適な半径方向間隔をおいて位置決めすることが可能となる。それ故,この実施形態は,本発明に係る検査装置を拡張する上で特に有利である。トンネル状検査スペースの内径をどのような値に設定した場合でも,この実施形態によれば光学モジュールを拡散スクリーンに対して常に最適な間隔で位置決めすることが可能である。
【0027】
他の実施形態において,光源は,それぞれ拡散スクリーンに対して等しい半径方向間隔をおいて配置されている。
【0028】
その結果,明暗パターンについて常に一定の高精細度及び精度を保障することができる。
【0029】
特に好適な実施形態においては,各光学モジュールがその前側部分に4列の光源を有し,互いに隣接する2列中の光源のうち,平方4タプルを構成する4つの光源を共通に制御する。この場合に各4タプルは,個々の光源の光学出力の4倍に相当する光学出力を有する仮想光源を構成するものである。
【0030】
この実施形態によれば,汎用的に使用可能な光学モジュールを非常に低コストで実現することができ,したがって本発明に係る検査装置を特にコスト面で有利に構成することが可能である。
【0031】
他の実施形態において,拡散スクリーンはつや消しガラス製のスクリーンで構成されている。
【0032】
この実施形態における拡散スクリーンは,透光性を有するも不透明で,しかも好適には拡散を制御するスクリーンである。一実施例において,拡散スクリーンは可撓性プラスチックプレートであり,特にプレクシグラス(登録商標)(PMMA)又はフルボリューム型PTFE材料で構成されている。つや消しガラス製の拡散スクリーンは,隣接する光源からの光放射を散乱特性に基づいて「混合」するものであり,緩やかな明暗変化特性を有する明暗パターンの生成にとって非常に有利である。出願人が実験したところ,このような明暗パターンは反射性表面を包括的に検査する上で特に適していることが確認された。
【0033】
他の実施形態において,拡散スクリーンは,クロスビームに浮動的に支持されている。
【0034】
この実施形態における拡散スクリーンは,その半径のみがクロスビームにより固定されるものである。ちなみに,拡散スクリーンは長手方向又は長手方向に対する接線方向において可動とされている。この実施形態は,検査装置の内部における熱応力を低下させる上で非常に有利である。これに加えて,長手方向又は接線方向における拡散スクリーンの浮動的支持により,反射性表面の検査に際して信頼性及び/又は確実性に有意な悪影響が及ぼされるものでないことが確認された。それにもかかわらず,本発明に係る検査装置の一実施例として,拡散スクリーンに位置センサを接続し,この位置センサにより拡散スクリーンの大きさや位置変化を検出する構成とすることも可能である。このような位置センサは,例えば拡散スクリーン上に配置した参照マークと組み合わせて実現可能である。この実施形態によれば,明暗パターンの熱的変化を補償するための温度補償を行うことができる。とは言え,本発明に係る検査装置の現時点で好適とされる実施形態は,特に拡散スクリーンの半径がクロスビームにより固定される場合に,そのような温度補償なしでも間に合っている。
【0035】
他の実施形態において,クロスビームは,拡散スクリーンを交換可能に固定するための保持ブラケットを含んでいる。幾つかの実施例では拡散スクリーンが可撓性プラスチック材料で構成されており,クロスビームによって所定の半径に維持されている。他の実施例において,拡散スクリーンは規定形状に曲げられている。好適には,円弧セグメント状のセクションが長手方向における少なくとも2つのクロスビームによって互いに整列しており,これにより当該セクション内への拡散スクリーンの簡単な挿入を容易なものとしている。さらに,クロスビーム及び保持ブラケットは,拡散スクリーンを一体的に円弧セグメント状のセクション内まで挿入できるように構成するのが好適である。
【0036】
本発明に係る検査装置におけるトンネル状の検査スペースは,実質的には透光性を有する拡散スクリーンによって画成されている。そのため,拡散スクリーンは汚染されやすく,実際の製造環境下で汚染を回避するには多大な労力が必要とされる。他方において,拡散スクリーンの汚染は明暗パターンの品質に悪影響を及ぼす。それ故,拡散スクリーンを容易かつ迅速に交換可能とするのが有利であり,その作業をこの実施形態では快適な方法で実行することができる。
【0037】
他の実施形態において,本発明に係る検査装置は,長手方向ビームに配置された複数のファンを含んでいる。好適には,各長手方向ビームは半径方向内向きとされた所定の気流を発生させる少なくとも1つのファンを有している。
【0038】
この実施形態は,ファンが長手方向ビームを熱的に安定化させる点で有利である。長手方向ビームは,他方において,クロスビームを所定の長手方向間隔で保持するものであるため,この実施形態は熱応力を低下させる上で有利である。この実施形態は,不動的に支持された拡散スクリーン及び/又は浮動的に支持された光学モジュールと有利に組み合わせることが可能である。何故なら,長手方向ビームの直接的な冷却により,長手方向の安定性が保証されるからである。ファンは,好適には外部から吸引した新鮮な冷却空気を光学モジュールに吹きつけた後,再び外部に排気する。好適には,新鮮な冷却空気は空気フィルタを経由して吸引し,これにより粉塵粒子が検査装置内部に吹き付けられるのを防止する。代案として,ファンにより新鮮な冷却空気を光学モジュール経由で吸引すると共に,温排気を外部に強制排出する構成とすることも可能である。新鮮な冷却空気の吸引及び排出を行わせるのが好適である。これにより検査装置内に存在する汚染粒子が外部に輩出され,検査装置が定常的に浄化される積極的な副次効果が発言されるからである。
【0039】
他の実施形態において,長手方向ビームはほぼ閉じたシェルを形成し,該シェルは拡散スクリーンに対して同軸的に配置されている。
【0040】
この実施形態も本発明に係る検査装置につき,熱的に安定化され,実質的に応力が作用しない構成を実現可能とするために非常に有利である。長手方向ビームが閉じたシェルを形成し,このシェルにより熱い光源に対して流体力学的に最適化された所定の冷却気流を生じさせることが可能である。
【0041】
他の実施形態において,クロスビームは互いに垂直となる方向に配置されている。この実施形態において,本発明に係る検査装置は,検査スペースを形成する「縦穴型トンネル」又はトンネル状コラムを含んでいる。この場合,検査スペース内への対象物体の搬入は,側面における入口経由で行う。代案として,本発明に係る検査装置は,「横穴型トンネル」や,長手方向で側部が開放したトンネルとして実現することも可能である。横穴型トンネルは,検査対象及び/又は少なくとも1台のカメラがロボットアーム上に配置され,そのロボットアームを開放したトンネルの長手方向側部に沿って移動可能とする場合に有利である。これに対して,縦穴型トンネルは,いわゆる「フットプリント」が小さくてコンパクトな検査装置を実現する上で有利である。加えて,縦穴型トンネルは,各光学モジュールが長手方向に延在する冷却フィンを有し,いわゆる煙突効果が発現される場合に効率的な冷却が達成される点で有利である。
【0042】
他の実施形態において,本発明に係る検査装置は,少なくとも1台のカメラを配置したクロスバーを具え,そのクロスバーは装置の長手方向においてトンネル状検査スペースの外側に配置されている。好適な変形例において,クロスバーはクロスビームに固定されている。好適には,クロスビームにクロスバーを組み付けるための複数の組み付け位置を事前加工しておく。この実施形態によれば,一方ではトンネル状検査スペース内における可変の視点位置をカメラに与えることができ,他方では拡散スクリーンの根が手方向における交換が容易となる利点を有している。
【0043】
他の実施形態においては,少なくとも1台のカメラが,検査装置の長手方向に対してほぼ垂直な光軸を有している。一実施例において,本発明に係る検査装置は複数のカメラを含み,そのうちの1台は長手方向軸線に対して垂直な方向から検査スペース内を観察するものとする。このカメラは,検査対象物体の支持部材が長手方向と平行な軸線周りで当該物体を回転運動させる場合には,ラインカメラで構成するのが有利である。この実施例は,カメラにより光源相互間の狭いスリットを通して検査スペース内部を撮像する場合に特に有利である。
【0044】
この実施形態によれば,明暗パターンを使用して検査すべき表面の画像を,非常に迅速に,しかも高い自由度をもって撮像可能とするものである。
【0045】
他の実施形態において,本発明に係る検査装置は,その長手方向においてトンネル状検査スペースを閉鎖するすくなくとも1つの閉塞プレートを具え,この閉塞プレートは,トンネル状検査スペース側に位置する内側部を有し,その内側部は明暗領域を有する更なるパターンを生成できる構成とされている。この場合,閉塞プレートにおける内側部には鏡を設けておくことができ,この鏡は光源により生成された明暗パターンを検査すべき表面上に反射させる構成とすることができる。代案として,又は追加的構成として,内側部に更なる光源を設けておき,これらの光源を個別的に,」又は少数の郡単位で制御可能とすることができる。原則的に,内側部に所定の明暗パターンを印刷しておき,この明暗パターンを既存の光源により照明する構成とすることができる。この実施形態は,検査スペースの長手方向に対して横方向に,又はほぼ平行に配置される表面の検査に有利である。閉塞プレートは,任意形状の物体を迅速かつ総体的に検査可能とするものである。
【0046】
言うまでもなく,上述した特徴,並びに以下に詳述する特徴は,明記された組み合わせに止まらず,本発明の範囲を逸脱することなく,単独でも,他の特徴との組み合わせとしても適用可能である。
【0047】
以下,本発明を図示の実施形態について更に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る装置の好適な実施形態の斜視図である。
【図2】明確化のために一部を省いて図1の装置を示す,背面側からの斜視図である。
【図3】図1及び2の装置の拡大詳細図である。
【図4】図1の装置に使用される光学モジュールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1〜3において,本発明に係る検査装置の好適な実施形態は,その全体が参照数字10で表わされている。この実施形態に係る検査装置10は,垂直トンネル状の検査スペースを有する「縦穴型トンネル」又はコラムとして構成されている。これとは異なり,他の実施形態に係る検査装置10は,「横穴型トンネル」として構成されており,水平方向に延在する検査スペースを有している。更に,トンネル状の検査スペースに2つ以上のトング状部分を設け,これらのトング状部分を開閉可能とした構成も想定可能である。このような実施形態は,トンネル状検査スペースを全面的に閉じておく必要がある場合に有利である。ただし,図1〜3の実施形態における「縦穴型トンネル」は,上下の端部が開放している。さらに,検査装置10は検査スペース内にアクセスするための入口を側部に有している。
【0050】
検査装置10は,上側クロスビーム12と,下側クロスビーム14とを有する。本実施形態におけるクロスビーム12, 14は,180°以上の弧長を有するC字形状部材である。クロスビーム12, 14は,複数の長手方向ビーム16により,長手方向17において所定の長手方向間隔Dに保持されている。
【0051】
本実施形態における長手方向ビーム16は,矩形の金属プレートである。これら金属プレートの大部分は,上側開口18,中央開口20及び下側開口22を有している。中央開口20は円形であり,ファン24の取り付けに供するものである。上側及び下側の開口18, 22は,ほぼ矩形である。ファン24は,外部の新鮮な冷気を,好適にはファン24上に配置した空気フィルタ(図示せず。)を経て吸引し,中央開口20を通して検査装置10内まで,冷却空気として吹き込む。上側及び下側の開口18, 22は,検査装置10内で暖められた排気を外部まで排出するための排気口を構成している。したがって,ファン24は,以下に詳述する光源を効率的に冷却するための確定的な気流を発生する。この効率的な冷却は,長手方向ビーム16をプレート状に形成することによって促進される。長手方向ビーム16における閉じたプレート領域が,トンネル状検査スペースに対してほぼ同心的に配置される,ほぼ閉じたシェル26を形成するからである(図3参照)。
【0052】
特に好適な実施形態において,各長手方向ビーム16は,上側開口18の下方と,下側開口22の上方で,それぞれ取り付けブラケット28が設けられている。好適な実施例では,取り付けブラケット28にそれぞれ上側バッフル(図示せず。)及び下側バフル30が取り付けられており,これらのバッフルにより冷えた吸気と暖められた排気とを相互に分離している。したがって,この実施形態では長手方向ビーム16が二重の機能を担っている。すなわち,一方では,長手方向ビーム16がクロスビーム12, 14と機械的に結合されて,クロスビーム12, 14を所定の長手方向間隔Dに保持している。クロスビーム12, 14及び長手方向ビーム16は,互いに溶接することができ,また,本例におけるように,互いにねじ結合することもできる。さらに,プレート状に形成した長手方向ビーム16は,冷気及び排気のための流路チャンネルを限定するものでもある。
【0053】
クロスビーム12, 14は,それぞれ円弧セグメント状のセクション32を有している。好適例では,C字形状としたクロスビーム12, 14は厳密な円環状に形成されており,したがって円環のセグメントを構成している。これに対応して,クロスビーム12, 14の外周は,円弧セグメント状セクション32に対して同心状となっている。円弧セグメント状セクション32は,参照数字34で表わした透光性の拡散スクリーンを,所定の方向性をもって保持する上で有利である。この拡散スクリーン34は,トンネル状検査スペース36を形成するものである。しかしながら,原則として,厳密な円形又は円弧セグメントとは異なる断面形状を有するトンネル状検査スペース36も想定可能である。たとえば,トンネル状検査スペース36を多角形断面や楕円形断面とすることも可能である。
【0054】
図1から明らかなとおり,図示の実施形態におけるプレート状の長手方向ビーム16は,トンネル状検査スペース36に対してほぼ同心的に配置されている。換言すれば,長手方向ビーム16はトンネル状検査スペース36に対してほぼ一定の半径方向間隔で配置されており,その半径方向間隔は参照数字38で表わされている。その半径方向間隔は,本実施形態では,円弧セグメント状セクション32の中心点を通過する長手方向中心軸線40に対して関連付けられている。図示の実施形態において,円弧セグメント状セクション32は長手方向中心軸線40に沿って整列している。
【0055】
拡散スクリーン34と長手方向ビーム16との間には,多数の光学モジュール42が配置されている。図4から明らかなとおり,本実施形態において各光学モジュール42は,固有剛性と自己支持能力とを有する金属製の支持体44を具える。支持体44の前側部46には,複数の光源48が配置されている。好適な実施形態において,光源48は可撓性のある支持フィルム47上に配置され,このような可撓性フィルムは,例えば折り畳み式のノートブック型ディスプレイにおける電気接続用としての可撓性導電路に慣用されているものである。支持フィルム47は,本例では伝熱性接着剤により支持体44の前側部46に接着されている。したがって,光源は先ず,固有剛性を有する支持体により所要の方位に維持される。好適例において,各光学モジュール42の前側部46はその全面が光源48により均一に覆われ,これらの光源は均一な側方間隔で配置されている。本例では光源48がマトリックス状に配置され,このマトリックスは長手方向に4行,横方向に64列を有している。現時点で好適と考えられている実施例では,光源48を,支持フィルム47に固定された白色LEDで構成している。四角形の頂点を構成する各4個のLED48は,4タプル49として統合されている。各4タプル49におけるLED48は電気的に直列接続され,共通に制御可能とされているので,4倍の光強度を有する単一の仮想光源として作用する。直列接続は,同様に想定可能な並列接続よりも好適である。4タプル49における全てのLED48に同一の電流が流れ,その結果として均一な輝度で照明を行うからである。4タプル49は互いに平行な2つのアレー50, 51として配置されている。各アレーは光学モジュールの長さL-L'を超えて延在している。両アレー50, 51における各4タプル49は,個別的に制御可能とされている。同様に,異なるアレー50, 51における4タプル49は個別的に制御可能とされている。好適には,LED48は,単にオンオフ切り替えできるのみならず,その輝度が0%から100%まで変更可能とされている。
【0056】
好適例においては,各光学モジュールが2つの独立した電圧源52を有している。各アレー50, 51における4タプル49は一方の電圧源と他方の電圧源とに交互に接続され,しかも隣接する2つの4タプル49は互いに異なる電圧源に接続される構成とされている。換言すれば,両アレー50, 51における4タプル49は,互いに交番する2つのジグザグ・アレーとして接続されている。このような構成は,特定の表面検査に特に適したチェス盤状の明暗パターンを生成する必要がある場合に有利である。
【0057】
支持体44の背面側53には複数の冷却フィン54, 56が形成されており,これらの冷却フィンは本例では光学モジュール42の全長L-L'を超えて延在している。図示の実施例では,各光学モジュール42に3つの冷却フィンが設けられ,外側(下側)に位置する冷却フィン56はその両側で隣接する冷却フィン54よりも大面積を有している。この冷却フィン56は両側の冷却フィン54を越えて半径方向後方に突出している。冷却フィン56上には,好適には伝熱性ペーストを介して,通常の回路基板58が配置されている。回路基板58には,光源48の制御回路が含まれている。この制御回路は,特に,2つの独立した電圧源52と,マイクロプロセッサ60及び関連するメモリ61とを含んでいる。本例におけるメモリ61は,予め設定した多くのパターン・フラグメントを記憶可能な不揮発性メモリである。全ての光学モジュール42のパターン・フラグメントは,その組み合わせに基づき,光源42が拡散スクリーン34上に生成可能な全体パターンを構成するものである。換言すれば,メモリ61に記憶されているパターン・フラグメントは,光源48を適切に制御することにより所定の全体パターンを拡散スクリーン34上に生成させるために各光学モジュール42が必要とする制御情報を代表するものである。好適には,各光学モジュール42には,パターン・フラグメントをメモリ61にローディングするためのバス接続が設けられている。さらに,各光学モジュールに独立した制御ケーブル63を付加し,この制御ケーブルを,メモリ61に記憶した各種のパターン・フラグメントを順次に切り替えるためのトリガ信号を発生するように構成するのが有利である。独立した制御ケーブル63を付加した場合には,全ての光学モジュール42におけるパターン・フラグメントを同時に切り替えるための,統合的に同期した「ハードウェア・トリガ」が可能となり,これはアック種のパターン相互間での切り替えを非常に迅速に行う上で有利である。好適には,全ての光学モジュール42における制御ケーブル63が相互に電気的に接続された構成とする。
【0058】
不揮発性メモリには,各光学モジュール42のための個別的キャリブレーション・データを記憶しておくのが有利である。このようなキャリブレーション・データによれば,全ての光学モジュール42の放射強度を相互に容易に適合させることができ,パターンの均質性を担保することが可能である。また,好適には,支持フィルム47の前側部46に光源48の相互間で少なくとも1つの温度センサ65が配置されている。温度センサ65は,光学モジュールの熱的な過負荷を防止するためのものである。さらに,温度センサ65は,光学モジュール42のためのオンライン・キャリブレーションを行う上で有利である。
【0059】
本例において,支持フィルム47は2つの一体的なタブ66を有し,これらのタブが上側の冷却フィン54を超えて回路基板58まで導かれている構成とする。一体的なタブ66は,光源48を制御回路に接続するための導体路(図示せず。)が設けられている。
【0060】
各光学モジュール42は,上端部62及び下端部64を有している。これらの端部62, 64には,それぞれ光学モジュール42をクロスビーム12, 14に取り付けるためのねじ部67が配置されている。好適実施例において光学モジュール42をねじ部67により固定する態様は,図3に拡大表示したとおりである。好適実施例において光学モジュール42は,クロスビーム12, 14に対して長手方向に浮動的に支持されている。すなわち,光学モジュール42は,検査装置10内に機械的な応力を生じることなく,長手方向に伸縮することが可能である。好適には,このような浮動的支持は固定軸受及び浮動軸受によって達成する。
【0061】
図3から明らかなとおり,冷却フィン54, 56は,長手方向17と平行に延在し,かつ,半径方向内方から外方に向けて拡大する冷却チャンネルを形成する。この冷却チャンネルは半径方向外方においてシェル26により覆われており,ファン24を作動させることにより開口18, 20, 22を通過する気流を発生するものである。好適実施例においては,クロスビーム12, 14内に冷気出口68が配置されている。冷気出口68は,冷却フィン54, 56の真上に配置するのが有利である。
【0062】
図3から更に明らかなとおり,クロスビーム12, 14には複数の保持ブラケット70が配置されており,これらのブラケットは本例では各円弧セグメント状セクション32の周方向に分散している。本例において保持ブラケット70は,拡散スクリーンを交換可能に固定するためのU字形状部材である。図示例において,拡散スクリーン34は検査スペース36の側方開口部から接線方向に移動させて保持ブラケット内まで挿入する。好適には,拡散スクリーン34はプレクシグラス製の可撓性プラスチックプレートである。他の実施例において,拡散スクリーンは,透光性を有するも不透明な,フルボリューム型PTFE材料で構成されている。他のプラスチック材料,例えばつや消しガラス状のプラスチック材料を使用することも可能である。プラスチックプレートは保持ブラケット70内への挿入により,セクション32の円弧形状に変形される。プラスチックプレートの内部材料応力により拡散スクリーン34は半径方向外向きに押圧されるので,拡散スクリーン34はクロスビーム12, 14及び保持ブラケット70により半径方向における所定位置に保持される。拡散スクリーン34は半径方向に伸縮可能である。さらに,保持ブラケット70が長手方向17における一定の遊びを与えるため,本例では拡散スクリーン34が長手方向にも浮動的に支持されるものである。
【0063】
図3において参照数字72は,カメラ74を配置するためのクロスバーを表わしている。更なるカメラ74'を更なるクロスバー76上に配置することもできる。好適実施例において,カメラ74, 74'はエリアスキャンカメラ,すなわちピクセルがマトリックス状に配置された面状イメージセンサを有するカメラである。好適実施例において,検査装置10は更なるカメラ78を含み,このカメラは検査装置10の背面側におけるハウジング内に収められている。このカメラ78はセル状のイメージセンサを有するラインカメラである。ラインカメラ78の光軸80は検査装置10の長手方向中心軸線40に対して厳密に直交している。カメラ74'の光軸80も横向きとされているが,長手方向中心軸線40に対して必ずしも直交させる必要はない。これに対して,カメラ74は長手方向中心軸線40に対してほぼ平行にトンネル状検査スペース36内を撮像するものである。カメラ74, 74'は,検査スペース36内を異なる方向から撮像するために旋回可能とするのが好適である。
【0064】
図3から更に明らかなとおり,クロスバー72は検査スペース36の外側でクロスビーム12に固定されている。図示例において,クロスビーム12はクロスバー72のための予め設定されている取付け位置を有し,カメラ74はクロスバー72に沿って変位可能とされている。クロスバー72のために予め設定されている,割り出された取付け位置により,例えば拡散スクリーンの交換などに際してカメラ74の取り付け及び取り外しを容易に可能である。また,取付け位置が割り出されているため,カメラ74を再び元の位置まで迅速に戻すことが可能である。カメラ74, 74'の位置及び撮像方向を,カメラ74, 74'が搭載されたロボットアームにより変更することも想定可能である。
【0065】
図3において参照数字82は,好適にはクロスビーム12におけるセクション32内に固定された閉塞プレートを表わしており,この閉塞プレートはトンネル状検査スペース36を上側に向けて閉塞するものである。対応する閉塞プレート82を検査スペース36の下端部に配置することも可能である。一実施例において,検査スペース36の下端部における閉塞プレート82を,検査すべき物体を載置するための載置手段(図示せず。)により構成することもできる。この載置手段は,好適には,検査すべき物体を下方から検査スペース内まで半休するためのリフト84上に配置されている。
【0066】
検査スペース36の上端部における閉塞プレート82は,本例においては開口部86を有している。この開口部は,閉塞プレート82がクロスビーム12に固定されているときにカメラ74により検査スーエース36内を撮像可能とするものである。好適な実施例において,閉塞プレート82の内面88は鏡面処理が施され,又は光源48が設けられている。
【0067】
図1に示したとおり,検査装置10は光源48により拡散スクリーン34上に明暗パターン90を生成するものである。パターン90は,明確性の観点から図1では一部のみが表わされている。光源48及びカメラ74, 78を制御する分析・制御ユニットは,図1において参照数字92により表わされている。分析・制御ユニット92は,クロスビーム12, 14及び長手方向ビーム16から独立した機械的手段として構成することができる。特に,分析・制御ユニット92は,光源48及びカメラ74, 78を制御するための,そして場合によってはリフト84を制御するためのインターフェースハードウェアを有するパーソナルコンピュータで構成することもできる。
【0068】
好適な実施例において,分析・制御ユニット92は,光源48が拡散スクリーン34上に,正弦波状に変化する輝度特性を有する明暗パターン90を生成するように構成されている。さらに,分析・制御ユニット92は,正弦波状に変化する輝度特性を有する明暗パターン90を,検査すべき表面に対して変位させ得るように構成されている。そのために,例えば光源48を電子的に制御し,又は検査すべき表面に対して機械的に変位させることができる。後者の場合,詳細な図示は省くが,物体載置手段を長手方向軸線40周りで回動可能とするのが有利である。
【0069】
好適な実施例において,明暗パターン90は縞状パターンであり,縞模様の横断方向に移動可能とされている。分析・制御ユニット92は,このように移動させた縞状パターン90も含めて,検査すべき表面について複数のイメージを分析できるように構成されている。これらイメージにおける位相構造に基づき,検査すべき表面上の局所的は勾配を決定することが可能である。特に好適なイメージ分析方法は,独国特許出願第10 2007 063 530.5号明細書に記載されており,同出願の開示を本願に取り込むものである。さらに,国際出願PCT/EP 2008/005683において開示されているように,複数の縞状パターンを同時に重ね合わせて生成するように分析・制御ユニット92を構成するのが有利であるし,同国際出願の開示も本願に取り込むものである。
【0070】
図1〜3から明らかなとおり,図示例におけるクロスビーム12, 14は,ほぼ同一の構成を有するも,互いに鏡面対称的にフレーム94上に配置されている。フレーム94は検査すべき物体を下方からリフト84により検査スペース36内まで容易に搬入可能とするものである。好適例において,リフト84は,検査すべき物体を自動的に搬送するためのコンベヤベルト(図示せず。)に接続されている。原則的に,検査装置10は,検査すべき物体毎,又は検査すべき物体の形式毎に,個別的な拡散スクリーン34を手動で,又は自動的にセクション32まで搬送できるように構成することができる。その際,明暗パターン90は,使用される拡散スクリーン上に印刷等により恒久的に設けておくことができる。明暗パターン90は,光源48により均一に照明することにより「アクティブ」とされる。
【0071】
光源48は有機LED,いわゆるOLEDで構成することができる。また,検査スペース36の内部又は底部に鏡を配置し,検査すべき物体をカメラ74, 78により背後から撮像できる構成とすることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が反射性を呈する物体表面の光学的検査装置であって,該検査装置は,
・それぞれ円弧セグメント状セクション(32)を形成する第1及び少なくとも1つの第2クロスビーム(12, 14)が,互いに長手方向(17)で間隔(D)をおいて配置され,
・前記クロスビーム(12, 14)を前記長手方向間隔(D)で保持するための複数の長手方向ビーム(16)が,前記円弧セグメント状セクション(32)に対して所定の半径方向間隔(38)をおいて配置され,
・透光性の拡散スクリーン(34)が,前記クロスビーム(12, 14)により前記円弧セグメント状セクション(32)内で保持されてトンネル状検査スペース(36)を形成し,
・複数の光源(48)が,トンネル状検査スペース(36)の外側で拡散スクリーン(34)の背後に配置され,前記拡散スクリーン上に可変の明暗パターン(90)を生成すべく,個別的に又は少数の群単位で制御可能とされており,さらに,
・トンネル状検査スペース(36)内における検査すべき物体を支持するための支持部材(84)と,
・トンネル状検査スペース(36)内に向けて配置された少なくとも1台のカメラ(74, 78)と,
・前記光源(48)及び前記カメラ(74, 78)を制御することにより,前記拡散スクリーン(34)上に異なる明暗パターン(90)を生成すると共に,該明暗パターン(90)に応じて前記物体からの多くの画像を記録・分析する分析・制御ユニット(92)とを具える検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の検査装置であって,互いに同一構成とした光学モジュール(42)を更に具え,該光学モジュールが前記拡散スクリーン(34)と前記長手方向ビーム(16)との間に配置され,各光学モジュール(42)が複数の前記光源(48)を含む検査装置。
【請求項3】
請求項2記載の検査装置であって,前記光学モジュールが,前記長手方向間隔(D)とほぼ等しい長さ(L-L')を有する金属製の支持体(44)を含み,該支持体(44)は,前記光源(48)を配置した前側部分(46)と,冷却フィン(54)を形成した後側部分(53)とを含む検査装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の検査装置であって,光学モジュール(42)が,前記クロスビーム(12, 14)に対して長手方向において浮動的に支持されている検査装置。
【請求項5】
請求項2〜4の何れか一項に記載の検査装置であって,各光学モジュール(42)において前記光源(48)が長手方向で互いに平行な2列のアレー(50, 51)として配置されており,各アレーが個別的に制御可能である検査装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の検査装置であって,前記光源(48)が,それぞれ前記拡散スクリーン(34)に対して等しい半径方向間隔をおいて配置されている検査装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の検査装置であって,前記拡散スクリーン(34)が,つや消しガラス製のスクリーンで構成されている検査装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の検査装置であって,前記拡散スクリーン(34)が,前記クロスビーム(12, 14)に浮動的に支持されている検査装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の検査装置であって,前記クロスビーム(12, 14)が,前記拡散スクリーン(34)を交換可能に固定するための保持ブラケット(70)を含む検査装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載の検査装置であって,前記長手方向ビーム(16)に配置された複数のファン(24)を更に具える検査装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の検査装置であって,前記長手方向ビーム(16)はほぼ閉じたシェル(26)を形成し,該シェルは前記拡散スクリーンに対して同軸的に配置される検査装置。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の検査装置であって,前記クロスビーム(12, 14)が互いに垂直方向に配置されている検査装置。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか一項に記載の検査装置であって,少なくとも1台のカメラ(74)を配置したクロスバー(72)を更に具え,該クロスバー(72)は前記長手方向(17)においてトンネル状検査スペース(36)の外側に配置されている検査装置。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載の検査装置であって,少なくとも1台のカメラ(78)が,前記長手方向(17)に対してほぼ垂直な光軸(80)を有する検査装置。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか一項に記載の検査装置であって,前記長手方向(17)においてトンネル状検査スペース(36)を閉鎖する少なくとも1つの閉塞プレート(82)を更に具え,該閉塞プレート(82)はトンネル状検査スペース(36)側の内側部(88)を有し,該内側部は明暗領域を有する更なるパターンを生成できる構成とされている検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−514186(P2012−514186A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542674(P2011−542674)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/DE2009/001812
【国際公開番号】WO2010/075846
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(510044084)カール ツァイス オーアイエム ゲーエムベーハー (6)
【Fターム(参考)】