説明

少なくとも1つの可撓性リップ部材を有する押出成形ノズル

調整可能な材料の流路断面を有する空隙部(S)を通して押出す少なくとも1つの可撓性リップ部材(1、2)を有する押出成形ノズルであって、複数の共動するレバー(8)によって、少なくとも1つの可撓性リップ部材(2)が他のリップ部材(1)に対し可動であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路断面が可変の空隙部から押出成形用材料を送り出す少なくとも1つの可撓性リップ部材を有する押出成形ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から多様の押出成形ノズルが知られ、上市されている。例えば米国特許第5494429号明細書には、熱可塑性樹脂を押出すための押出成形ノズルが記載されている。
【0003】
欧州特許出願公開第0668143A1号明細書には、少なくとも1つの可撓性リップ部材を有する押出成形ノズルが示されている。そのノズルでは、リップ部材の出口領域を変位させるように、カムを介して曲げ枠がノズル本体の傾斜に対してずれるようになっている。
【0004】
この場合、ノズル本体に対して曲げ枠をずらすには、特に摩擦が大きいため、大きな力を必要とする。
【0005】
更に、曲げ領域又は曲げ枠並びにカムには、好ましくない遊びがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の技術による押出成形ノズルの課題を解決することにあり、上記の欠点を無くし、簡単且つ経済的な方法により、2つのリップ部材から構成される押出成形ノズルの空隙高又は空隙を正確に変更することが可能となる。
【0007】
本発明では、全幅に渉って空隙高を均一に変更することが必要である。更に、空隙高の変更に際し、リップ部材を柔軟に動かすのに僅かな力で操作できることが必要である。また、作動素子の製造・保守費用並びに生産原価を大幅に減らすことも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
少なくとも1つの可撓性リップ部材が複数の共動するレバーにより、他のリップ部材に対し可動とすることにより、上記の課題が解決できる。
【0009】
本発明において、複数のレバーをノズル本体の出口領域に回転可能に嵌合させ、出口領域及びノズル本体の間並びにその間の曲げ領域の全幅に渉って配置することが特に有効であることが判明した。向かい合ったノズル本体には互いに平行な複数のレバーが滑り台内に、場合によっては嵌合して、配置されており、滑り台はノズル本体又は個々のレバーに嵌合・支持されている。
【0010】
やや傾いた配置では、操作レバーによる滑り台の操作に応じて、出口領域がノズル本体に対して曲げられ、互いに向き合ったリップ部材間の空隙高が狭まったり、広がったりする。
【0011】
ノズルが製造すべき箔又は板の厚さに影響するので、このようにして、同一の押出成形ノズルを用いて、複数の異なった厚みの製品を製造することができる。その際、対応する操作レバーを介して、滑り台を本体又は支持部材に対して単に動かして、簡単にレバーの操作及び空隙高の変更ができる。このことも本発明の範囲内である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[実施例]
図1に示すように、本発明による押出成形金型Rは、第二の下部可撓性リップ部材2と共動する第一の上部可撓性リップ部材1を備え、二つのリップ部材の間に、全幅に渉って空隙部Sが形成されている。
【0013】
詳細には図示していないが、上部の可撓性リップ部材1の全幅に渉って、流路の断面を均一化又は調整するため、上部のリップ部材1に複数の調整部材3を互いに平行に配置し、リップ部材1の全幅に渉って当該箇所を手動によって微調整、特に均一化できるようになっている。
【0014】
通常、リップ部材1はノズル本体4.1から形成され、空隙部開口5の領域に出口領域6.1が形成され、ノズル本体4.1と出口領域6.1の間の空隙部開口5の領域又は近傍に、薄肉の曲げ領域7.1が形成されている。
【0015】
平行な流路断面を形成するため、リップ部材1に向い合せて、ノズル本体4.2でもある第二の可撓性リップ部材2を配置し、空隙部開口5の近傍に出口領域6.2を形成している。ノズル本体4.2と出口領域6.2の間に、薄肉の曲げ領域7.2を備えている。
【0016】
本発明では、可撓性リップ部材2は、曲げ領域7.2を跨いで、複数の共動操作可能なレバー8を備えている。
【0017】
出口領域6.2において、互いに僅かに隔たったレバー8は、全幅に渉ってボルト9に嵌合しており、レバー8の一端はナット10に嵌合している。
【0018】
例えば図3及び図4に示すように、レバー8の他端は滑り台11即ち、ここでは概略のみを図示した孔12に嵌合し、図3に示すように角度αの範囲において回転可能になっている。
【0019】
図1に示すように、支持部材13内の滑り台11は支持部材13に対しX方向に前後の移動可能となっている。
【0020】
支持部材13は、図1に示すようにノズル本体4.2に取り外し可能に固定されている。しかし、図2に示すように、支持部材13をノズル本体4.2に組み込んだ実施例である押出成形ノズルRも考えられ、ノズル本体4.2は滑り台11を受容する孔12を備え、該滑り台にはレバー8が嵌合している。滑り台11は、単に概略を図示した軸受14、15を介して、支持部材13中のレバー8の引っ張り又は圧縮方向に支持されるか又は嵌合している。軸受14、15としてはニードルベアリングなどを使用することが好ましい。
【0021】
リップ部材2の全幅に渉って互いに僅かに離れて配置されたレバー8の周りに滑り台11を図のX方向に前後に動かすためにノズル本体4.2に、好ましくはネジ軸として形成した作動素子16を配置した。調整軸17を円周方向に回転させて滑り台11をX方向の前後に動かす。
【0022】
調整軸17又は作動素子16は任意の駆動装置を備え、本発明の範囲内において、油圧シリンダー、サーボモータなどの駆動装置により滑り台を図のX方向の前後に動かすことができる。
【0023】
本発明の利点は、支持部材13に嵌合した軸受14、15を介して、滑り台11をX方向の前後に精密且つ正確に動かすことにより、特にレバー8を傾けて配置した際、リップ部材2とリップ部材1間の空隙部Sを変えることができることである。
【0024】
薄肉の曲げ領域7.2を通して、特に出口領域6.2をノズル本体4.2に対して曲げることにより、空隙が自動又は手動変更できる。
【0025】
個別に且つ選択的な空隙部高Sが得られるように、相接して配置した複数のレバー8により、押出成形ノズルの全幅に渉って空隙部Sを均一且つ正確に設定する。
【0026】
リップ部2の出口領域6.2を変形させるように、複数のレバー8により、リップ部2全幅に渉って大きな曲げ力を得ることができる。更に、レバー8の配置及び滑り台11を最適に嵌合させることにより、リップ部材2の出口領域6.2の正確且つ精密な設置、特に曲げを確保し、作動素子16への力を減ずることができる。
【0027】
このようにして、所望の流路断面を決める空隙高Sを設定するため、出口領域6.1の全領域に渉って出口領域6.2を精密且つ正確に変更することができる。このようにして得たノズルを用いて、手動又は自動操作が可能な作動素子16により空隙部Sを迅速に調整することにより、箔及び/又は板を中断することなく製造することができる。
【0028】
さらに、製造工程において空隙幅の変更、調整あるいは別の製品への切換えことが可能である。これも、本発明の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】部分断面図を伴う2つのリップ部材を有する押出成形ノズルの模式側面図
【図2】部分断面図を伴う2つのリップ部材を有する図1とは別の実施例の押出成形ノズルの模式側面図
【図3】可撓性リップ部材のレバー領域を示す部分摸式平面図
【図4】可撓性リップ部材のレバー領域を示す部分摸式横断面図
【符号の説明】
【0030】
1 リップ部材
2 リップ部材
3 位置調整部材
4 ノズル本体
5 空隙部開口
6 出口領域
7 曲げ領域
8 レバー
9 ボルト
10 ナット
11 滑り台
12 孔
13 支持部材
14 軸受
15 軸受
16 作動素子
17 調整軸
押出成形ノズル
押出成形ノズル
S 空隙部
空隙高

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路断面が可変の空隙部(S)から押出される材料を送出する少なくとも1つの可撓性リップ部材(1、2)を有する押出成形ノズルであって、
少なくとも1つのリップ部材(2)は、複数の共動するレバー(8)により、他のリップ部材(1)対して可動であることを特徴とする押出成形ノズル。
【請求項2】
可撓性リップ部材(2)は出口領域(6.2)とノズル本体(4.2)の間に曲げ領域(7)を備え、複数の共動するレバー(8)が出口領域(6.2)とノズル本体(4.2)の間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の押出成形ノズル。
【請求項3】
複数のレバー(8)は一端が出口領域(6.2)のナット(10)と嵌合し、他端がノズル本体(4.2)又は支持部材(13)の滑り台(11)に回転可能に嵌合しており、滑り台(11)はノズル本体(4)及び/又は支持部材(13)に支えられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の押出成形ノズル。
【請求項4】
滑り台(11)はX方向を前後に可動であることを特徴とする請求項3に記載の押出成形ノズル。
【請求項5】
滑り台(11)は作動素子(16)によりX方向を前後に可動であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の押出成形ノズル。
【請求項6】
作動素子(16)は手動操作可能な駆動装置、特にネジ又は軸として形成されていることを特徴とする請求項5に記載の押出成形ノズル。
【請求項7】
作動素子(16)は伝動素子、サーボモータ、電気機械式駆動装置又は油圧シリンダーとして形成されていることを特徴とする請求項5に記載の押出成形ノズル。
【請求項8】
滑り台(11)はノズル本体(4.2)の孔(12)又は支持部材(13)に嵌合していることを特徴とする請求項3ないし請求項7のいずれか1項に記載の押出成形ノズル。
【請求項9】
滑り台(11)は複数の軸受(14、15)、特にニードルベアリングを介して孔(12)に嵌合していることを特徴とする請求項8に記載の押出成形ノズル。
【請求項10】
滑り台(11)は直線状に可動であり、複数の軸受(14、15)を介して引っ張り及び/又は圧縮負荷が掛かっていることを特徴とする請求項3ないし請求項9のいずれか1項に記載の押出成形ノズル。
【請求項11】
レバー(8)が角度(α)回転することにより滑り台(11)がX方向を直線運動し、リップ部材(1、2)間の流路断面の空隙高(S)を可変にしたことを特徴とする請求項4ないし請求項10のいずれか1項記載の押出成形ノズル。
【請求項12】
複数の互いに平行に配列したレバー(8)の一端は可撓性リップ部材(2)に回転可能に嵌合し、他端は等間隔を隔てて滑り台(11)に嵌合し、滑り台(11)はX方向に可動にノズル本体(4.2)又は支持部材(13)に支持され且つ嵌合していることを特徴とする請求項4ないし請求項11のいずれか1項記載の押出成形ノズル。
【請求項13】
他方の可撓性リップ部材(1)は全幅に渉って複数の調整部材(3)を備え、出口領域(6.1)、曲げ領域(7.1)及びノズル本体(4.1)間を全幅に渉って平行な均一の空隙部(S)に調整できるようにしたことを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1項記載の押出成形ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−506571(P2007−506571A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515744(P2006−515744)
【出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002782
【国際公開番号】WO2004/113051
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(505465405)ブレヤー ゲーエムベーハー マシーネンファブリク (4)
【Fターム(参考)】