説明

尿処理装置

【課題】 加温手段を使用すること無く、有機廃棄物処理装置内の水分を減少させるために、大便と分離された小便を処理する。
【解決手段】 上面側開放の容器2内に保水性を有する素材からなる一種又は複数種の保水材Bと、太陽熱を蓄熱可能な素材からなる蓄熱材Aと、消臭効果を有する素材からなる一種又は複数種の消臭材Cとが敷設されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿を処理する尿処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明に関する先行技術文献情報としてたとえば下記の特許文献1〜特許文献2がある。
これら特許文献1〜特許文献2に記載されている発明は、糞尿等の有機廃棄物を処理槽内でおが屑とともに、攪拌ブレードで攪拌し分解処理するものである。
【特許文献1】特開2002−35721号公報
【特許文献2】特開平11−300324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記で例示した特許文献1及び特許文献2に記載の有機廃棄物処理装置をトイレにおける処理装置として使用する際には、大便及び小便が共に処理槽において分解処理されることになるが、この糞尿の分解処理を効率よく行う条件として、処理槽内の水分を減少させて水分過多による微生物の分解処理能力の低下や攪拌時の攪拌ブレードに対する糞尿の抵抗を抑制することがある。
そして、前記水分の減少を減少させるために、ヒーターや温風等の加温手段が用いられている。
しかしながら、前記ヒーターや温風等の加温手段は、電力により作動するものであるため、電力が使用できない場所に処理装置を設置する際には、この加温手段の使用ができないため、どうしても、微生物の分解処理能力の低下が生じたり、攪拌時の攪拌ブレードに対する糞尿の抵抗が大きくなったりということがあった。
又、前記加温手段を用いずに処理槽内の水分を減少させる手段として、例えば、大便と小便を分離し、主に大便を有機廃棄物処理装置に入れ、小便は、小便器から小便を貯水する小便用容器に入れるようにすることが挙げられるが、この手段の場合、有機廃棄物処理装置内の水分は減少するものの、小便用容器に貯水された小便の処理ができず、定期的な点検及び廃棄作業が必要となってしまう。
【0004】
そこで、本発明は、加温手段を使用すること無く、有機廃棄物処理装置内の水分を減少させるために、大便と分離された小便を処理することを課題とし、この課題を解決した尿処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、下記の技術的手段を採用した。
その第1発明は、大便と分離された小便を処理する尿処理装置であって、防水機能を有する上面側開放の容器内に保水性を有する素材からなる一種又は複数種の保水材と、太陽熱を蓄熱可能な素材からなる蓄熱材と、消臭効果を有する素材からなる一種又は複数種の消臭材とが敷設されてなることを特徴とする尿処理装置にしたことである。
大便と小便の分離は、例えば、大便器と小便器とに分け、当該小便器と尿処理装置とに亘って排水管を配管することにより、小便を尿処理装置に案内することができる。
【0006】
前記保水材、蓄熱材、消臭材の敷設形態は任意であるが、第2発明のように、前記保水材と、蓄熱材と、消臭材とを層状を成すように敷設することが好ましく、より好ましくは、第3発明のように、最下層に消臭材、中間層に保水材、最上層に蓄熱材を敷設することである。していることを特徴とする請求項3に記載の尿処理装置。
【0007】
前記保水材、蓄熱材、消臭材の素材は、その機能を有するものであれば良いが、これらを交換等によって廃棄処分することを勘案すれば、好ましくは、自然素材であり、この自然素材として、例えば、第4発明のように、保水材として木炭又は/及び土、蓄熱材として砂利又は/及び砂、消臭材としておが屑又は/及び木炭が例示できる。
【0008】
前記容器は、使用場所や使用頻度に応じた体積や面積のものを夫々用意しても良いが、設置現場の状況に応じて即座に対応するという観点から、第5発明のように、容器の全長又は/及び全幅を調節可能にすることが好ましい。
【0009】
又、小便器と尿処理装置とを排水管で配管する場合、その排水管を視覚できないようにする観点から、第6発明では、小便器の排水管の下流側を容器上に沿わせるとともに、最上層の素材で埋設する手段を採用した。
この場合、排水管から排水される小便を、尿処理装置の広い範囲で排水するという観点から第7発明では、前記最上層と対面する前記排水管の周面に多数の下向の排水孔を開孔した。
【0010】
又、例えば、気温が低い時期や太陽光が期待できない時間等においても熱によって小便を蒸発させるという観点から、第8発明では、太陽光発電又は/及び風力発電により生じる電力で発熱するシーズヒーターを敷設した。
【発明の効果】
【0011】
本発明の尿処理装置は、以上の構成により以下の優れた効果が期待できる。
第1発明によれば、尿処理装置に至る小便は、保水材に吸収されるとともに、太陽熱が蓄熱された蓄熱材の熱により保水材に吸収された小便の水分が蒸発し、且つ蒸発時に生じるアンモニア臭を消臭材が消臭する。
したがって、加温手段を使用すること無く、有機廃棄物処理装置内の水分を減少させるために、大便と分離された小便を処理する尿処理装置を提供できる。
【0012】
又、第2発明によれば、前記保水材と、蓄熱材と、消臭材とを層状を成すように敷設することにより、保水層・蓄熱層・消臭層として区切られるため、尿処理装置全体でむら無く、小便の保水・蒸発・消臭を行うことができる。
更に、第3発明によれば、最下層に消臭材、中間層に保水材、最上層に蓄熱材を敷設することにより、太陽熱が蓄熱層に直接作用するのでその熱が効率的に蓄熱され、その熱は、蓄熱層の直下の層である保水層に作用し、保水層で保水された小便を蒸発させ、更に、当該保水層の直下の層である消臭層が保水層のアンモニア臭を消臭することができる。
【0013】
又、第4発明によれば、前記保水材、蓄熱材、消臭材の素材を具体的に提供することができるとともに、自然素材であるので廃棄する際に容易である。
【0014】
又、第5発明によれば、設置現場の状況に応じて容器の大きさを大小調節することができる。
【0015】
又、第6発明によれば、小便器と尿処理装置とを配管する排水管を隠すことができ、更に、第7発明によれば、排水管から排水される小便を、尿処理装置の広い範囲で排水することができる。
【0016】
そして、第8発明によれば、太陽光発電又は/及び風力発電により生じる電力で発熱するシーズヒーターにより、気温が低い時期や太陽光が期待できない時間等においても熱によって小便を蒸発させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の尿処理装置を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図中、符号1は尿処理装置、符号2は容器、符号3は蓄熱層、符号4は保水層、符号5は消臭層、符号6は排水管である。
【0018】
容器2は、ステンレス材等の錆に強い素材を用いて上面側を開放した略箱状に形成されいて、更に、当該容器2は、長手方向に2分割され、一方の容器部材21が他方の容器部材22に重合状に、且つ長手方向に沿ってスライド可能に嵌合してなる。
前記容器部材21,22は、長手方向で対面する側部が開放され、三方のみに側壁を有してなるものであって、この容器部材21をその開放部21A側から容器部材22に対してその開放部22Aへ挿入することによって、長手方向に沿ってスライド可能な容器2を構成している。
【0019】
蓄熱層3は、最上層を構成するものであり、本例では、例えば、庭等の表面に化粧材として敷設される玉砂利を蓄熱材Aとして敷設して構成している。
この蓄熱層3に敷設される蓄熱材Aの玉砂利は、蓄熱機能に優れるものであるとともに、前記したように化粧材としても使用されるものであるので、尿処理装置1を設置した際に、一見して尿処理装置1として認識されないようにすることができる。
【0020】
保水層4は、中間層を構成するものであり、本例では、保水性に優れた黒土等の土を保水材Bとして敷設した土層41と、保水性および消臭性に優れた木炭を第2の保水材Bとして敷設した木炭層42とから構成している。
前記木炭層42に敷設される第2の保水材Bの木炭は、保水機能及び消臭機能を備えるものであり、当該木炭に保水される小便の消臭も木炭層42で行われることになる。
【0021】
前記消臭層5は、最下層を構成するものであり、本例では、おが屑を消臭材Cとして敷設して構成している。
この消臭層5に敷設される消臭材Cのおが屑は、消臭機能を備えるものであり、当該おが屑が前記保水層4に保水された小便に起因するアンモニア臭を消臭する。
【0022】
前記構成の尿処理装置1は、太陽熱を利用するため、屋外において設置されるが、その設置形態として、例えば、図1に示すように、尿処理装置1を地中に埋設する形態が挙げられる。
具体的には、尿処理装置1を、最上層である蓄熱層3の表面を地面Gと略同面として埋設し、更に、地表に露出した蓄熱層3の周りに、蓄熱層3を構成する玉砂利と同じ玉砂利を敷設することで、一見して尿処理装置1を認識されないようにしている。
【0023】
又、尿処理装置1は、地面Gに載置してもよく、この場合、例えば、保水層4を構成する土層41の量を増量して土層4の厚みを厚くし、植物を植えて花壇として利用することによって、地面Gに載置した設置形態でも一見して尿処理装置1を認識されないようにカムフラージュすることができる。(図示せず)
この場合、前記容器1の外側面に、模様や着色を施すことによって、尿処理装置1をカムフラージュをより一層確実なものとすることができる。
【0024】
図中、符号Hは、シーズヒーターであり、当該シーズヒーターHは、太陽光発電(図示せず)又は/及び風力発電(図示せず)により生じる電力で発熱し、気温が低い時期や太陽光が期待できない時間等においても熱によって小便を蒸発させるものであって、本形態では、前記木炭層42内に敷設されている。
尚、本形態ではシーズヒーターHを木炭層42内に敷設した形態を例示したが、シーズヒーターHの敷設位置は、任意である。
【0025】
排水管6は、例えば、仮設トイレ7における小便器71と尿処理装置1とに亘って配管され、小便器71からの小便を尿処理装置1に案内するものである。
具体的には、排水管6は、その尿処理装置1側を排水部61とし、当該排水部61を当該尿処理装置1の長手方向のほぼ全域に沿わせるとともに、蓄熱層3に埋設して配管している。
又、排水部61の下流端部は塞がれ、排水部61の下側面には、小便を尿処理装置1に排水する排水孔62が下向に開孔されている。
排水孔62は、図2に示すように、排水部61の左右斜め下向きに開孔され、この態様で排水部61の軸線方向の略全域に多数開孔されている。
【0026】
前記構成の尿処理装置1によれば、太陽光が蓄熱層3に直接当たることによって、当該蓄熱層3に太陽熱が効率的に蓄熱され、その熱は、蓄熱層3の直下の保水層4を暖める。
小便器71からの小便は、排水管6を経て排水部61における排水孔62から保水層4に排水される。
保水層4に排水された小便は、保水層4における土層41と木炭層42に保水され、この保水された小便が、前記蓄熱層3の保水層4に作用する熱によって蒸発し、その蒸発の過程で生じるアンモニア臭は、木炭層42の木炭が有する消臭機能及び消臭層5のおが屑が有する消臭機能によって消臭される。
【0027】
尚、本発明は、例示した実施の形態に限定するものでは無く、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る尿処理装置の断面図。
【図2】図1の(2)-(2)線拡大断面図。
【図3】図1の一部切欠平面図。
【符号の説明】
【0029】
A:蓄熱材
B:保水材
C:消臭材
1:尿処理装置
2:容器
3:蓄熱層
4:保水層
5:消臭層
6:排水管
7:仮設トイレ
21:容器部材
22:容器部材
41:土層
42:木炭層
61:排水部
62:排水孔
71:小便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大便と分離された小便を処理する尿処理装置であって、防水機能を有する上面側開放の容器内に保水性を有する素材からなる一種又は複数種の保水材と、太陽熱を蓄熱可能な素材からなる蓄熱材と、消臭効果を有する素材からなる一種又は複数種の消臭材とが敷設されてなることを特徴とする尿処理装置。
【請求項2】
前記保水材と、蓄熱材と、消臭材とが層状を成すように敷設されていることを特徴とする請求項1に記載の尿処理装置。
【請求項3】
最下層に消臭材、中間層に保水材、最上層に蓄熱材を敷設していることを特徴とする請求項3に記載の尿処理装置。
【請求項4】
前記保水材が木炭又は/及び土、蓄熱材が砂利又は/及び砂、消臭材がおが屑又は/及び木炭であることを特徴とする請求項1乃至請求項3何れか1項に記載の尿処理装置。
【請求項5】
前記容器の全長又は/及び全幅を調節可能にしていることを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれか1項に記載の尿処理装置。
【請求項6】
小便器の排水管の下流側を容器上に沿わせるとともに、最上層の素材で埋設していることを特徴とする請求項1乃至請求項5いずれか1項に記載の尿処理装置。
【請求項7】
前記最上層と対面する前記排水管の周面に多数の下向の排水孔を開孔していることを特徴とする請求項6に記載の尿処理装置。
【請求項8】
太陽光発電又は/及び風力発電により生じる電力で発熱するシーズヒーターが敷設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7いずれか1項に記載の尿処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−130547(P2007−130547A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324763(P2005−324763)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(398017758)正和電工株式会社 (4)
【Fターム(参考)】