説明

尿浄化装置及びバイオトイレ装置

【課題】水や電気を一切使用せずとも、尿を効率的に、且つ確実に浄化処理することが可能な従来に無い画期的な尿浄化装置を提供する。
【解決手段】便口9aを有する便器9に前記便口9aを介して導出された尿aが自重により流下して自然導入される浄化処理部1が連設され、この浄化処理部1には吸着作用により前記尿aの尿素を吸着し該尿aを浄化水a’とする炭化物で構成された、例えばポーラス状炭化物パネル体などの吸着体2が設けられ、更に、前記浄化処理部1は、この吸着体2で浄化処理されることにより生ずる前記浄化水a’が蒸発により外部に自然導出されるように構成されている尿浄化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿浄化装置及びバイオトイレ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、山岳地,公園若しくは作業現場などで使用するための簡易トイレ装置が種々提案されているが、例えば、使用に際して水(洗浄水)や電気を必要とするタイプの簡易トイレ装置は、送水設備や送電設備といった生活インフラが十分に整備されておらず、水や電気が使用できない設置箇所(例えば、登山道や山小屋などの山岳地)では使用できないという問題を有している。
【0003】
そこで、従来から、排泄された糞尿を発酵槽に収容し、この発酵槽内で糞尿を微生物分解する簡易トイレ装置、所謂、バイオトイレ装置が種々提案されている。
【0004】
このバイオトイレ装置は、例えば特開2001−120460号公報に開示されているように、便口を介して導出された糞尿をおが屑と一緒に発酵槽に収容し、このおが屑が作り出す好気性状況により、糞尿に含まれる腸内細菌や自然界に生息する微生物を活発に活動させ、糞尿を無機廃棄物と水と二酸化炭素に分解(浄化処理)して悪臭の発生を阻止するものであり、例えば前記便口を介して導出された糞尿は洗浄水により流されるのでなく、その自重により下方の発酵槽へと落とし込まれるように構成される為、水洗式の簡易トイレ装置に必須の水(洗浄水)が一切不要であり、また、例えば糞尿は電動式の浄化装置によって浄化処理されるのではなく、単に発酵槽内で微生物による分解作用により自然に(自動的に)水と二酸化炭素とに分解(浄化処理)されるように構成される為、電動式の簡易トイレ装置に必須の電気も一切不要であり、よって、たとえ水や電気が一切使用できない設置箇所(山岳地など)であっても良好に使用できるものである。
【0005】
ところで、この種のバイオトイレ装置は、一般的に糞尿を全て発酵槽に収容する構成である為、この発酵槽に収容される糞尿、特に尿の量が増大すると、発酵槽内が水分過多の状態になってしまう。この水分過多の状態においては、おが屑が尿に浸かる為、発酵槽内が好気性状況から嫌気性状況になり、腸内細菌などの微生物の活動が阻害され糞尿の分解が円滑に行われなくなり、悪臭の発生が阻止できないどころか、嫌気性細菌の活動によってアンモニアなどの悪臭が発生してしまうなど、バイオトイレ装置としての機能が果たせなくなってしまうという問題がある。
【0006】
従って、この種のバイオトイレ装置は、発酵槽が水分過多の状態にならないように、必然的に一日の利用回数が限られてしまい、不便である。
【0007】
そこで、従来から、糞尿を糞と尿とに固液分離して、糞は前記発酵槽に収容して該発酵槽内で微生物分解により浄化処理するが、尿は前記発酵槽に収容せずに該尿を処理する為の前記発酵槽とは別の尿浄化装置が具備された、所謂固液分離タイプのバイオトイレ装置が提案されており、この固液分離タイプのバイオトイレ装置によれば、糞は発酵槽に収容されて微生物分解により浄化処理され、尿は発酵槽とは別の尿浄化装置で処理される為、前記発酵槽の水分過多の状態を可及的に阻止できるものである。
【0008】
【特許文献1】特開2001−120460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記固液分離タイプのバイオトイレ装置における固液分離部は、糞は発酵槽で浄化処理される構成の為、たとえ水や電気が一切使用できない設置箇所でも前記糞の浄化処理は確実に達成し得るものの、尿を浄化処理する為の前記発酵槽とは別の尿浄化装置は、使用に際して水や電気が必要な構成であり、よって、結局山岳地などの生活インフラが十分に整備されていない(水や電気が使用できない)設置箇所では前記尿浄化装置が使用できず尿を浄化処理できないという問題があった。
【0010】
従って、上記固液分離タイプのバイオトイレ装置は、固液分離しないタイプに比して、水分過多の状態が生ぜず、よって利用回数の制限が無いものの、水や電気が使用できない設置箇所では前記尿浄化装置が使用できず、結局、山岳地などの生活インフラが十分に整備されていない設置箇所では使用できないという問題があった。
【0011】
本発明は上記問題点を解決したもので、水や電気を一切使用せずとも、尿を確実に、且つ良好に浄化処理でき、よって、例えば、上記固液分離タイプのバイオトイレ装置における尿浄化装置として本発明を採用した場合には、たとえ水や電気の一切使用できない設置箇所においても発酵槽の水分過多の状態を確実に阻止して良好に糞尿の浄化処理が行なえるなど、秀れたバイオトイレ装置を簡易に実現できることとなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0013】
便口9aを有する便器9に前記便口9aを介して導出された尿aが自重により流下して自然導入される浄化処理部1が連設され、この浄化処理部1には吸着作用により前記尿aの尿素を吸着し該尿aを浄化水a’とする炭化物で構成された吸着体2が設けられ、更に、前記浄化処理部1は、この吸着体2で浄化処理されることにより生ずる前記浄化水a’が蒸発により外部に自然導出されるように構成されていることを特徴とする尿浄化装置に係るものである。
【0014】
また、請求項1記載の尿浄化装置において、前記吸着体2は、ポーラス状の炭化物で構成されたパネル体2であることを特徴とする尿浄化装置に係るものである。
【0015】
また、請求項2記載の尿浄化装置において、前記吸着体2は、炭化物をセメント若しくは焼石膏を主体とした固化材によりポーラス状に固定したパネル体2であることを特徴とする尿浄化装置に係るものである。
【0016】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の尿浄化装置において、前記吸着体2の上部には、土壌が被覆状態に配設された土壌積層部3が設けられていることを特徴とする尿浄化装置に係るものである。
【0017】
また、請求項4記載の尿浄化装置において、前記吸着体2と土壌積層部3との間には、吸い出し防止材4が設けられていることを特徴とする尿浄化装置に係るものである。
【0018】
また、請求項1〜5いずれか1項に記載の尿浄化装置において、前記便口9aを介して導出された尿aは前記浄化処理部1の上流側から導入されると共にこの導入圧により該浄化処理部1の下流側へと自然流下されるように構成されていることを特徴とする尿浄化装置に係るものである。
【0019】
また、請求項1〜6のいずれか1項に記載の尿浄化装置において、前記浄化処理部1の下流側には開閉部5が設けられ、この開閉部5には、通水及び止水の切り替えを行う操作部5aが設けられていることを特徴とする尿浄化装置に係るものである。
【0020】
また、請求項1〜7いずれか1項に記載の尿浄化装置において、前記浄化処理部1の下流側には該浄化処理部1内の水分量が所定量以上に達した際に該所定量以上の水分が外方に自然放流され得る水量調整用放流路6が設けられていることを特徴とする尿浄化装置に係るものである。
【0021】
また、請求項1〜8いずれか1項に記載の尿浄化装置において、前記浄化処理部1には導入管7が配管され、前記尿aは、この導入管7の上流側から該導入管7内に自然導入されると共に該導入管7の周面に該導入管7の長さ方向に複数並設された導出孔7aから前記吸着体2へ自然導出されるように構成されていることを特徴とする尿浄化装置に係るものである。
【0022】
また、請求項1〜9いずれか1項に記載の尿浄化装置において、前記浄化処理部1は、上部が開口した容器体1aの底部の略全面に前記吸着体2が敷設された構成であることを特徴とする尿浄化装置に係るものである。
【0023】
また、請求項1〜10いずれか1項に記載の尿浄化装置Aと、前記便口9aを介して導出される糞bが導入される発酵槽8とから成り、この発酵槽8に導入された糞bは該発酵槽8内で微生物分解されるように構成したことを特徴とするバイオトイレ装置に係るものである。
【0024】
また、請求項11記載のバイオトイレ装置において、前記発酵槽8には、前記便口9aを介して導出される尿aを受ける尿受け部10が設けられ、この尿受け部10は前記尿浄化装置Aと連設され、この尿受け部10に受けられた前記尿aが自重により流下して前記尿浄化装置Aに自然導入されるように構成されていることを特徴とするバイオトイレ装置に係るものである。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の発明は上述のように、尿が自然導入される浄化処理部に、炭化物で構成された吸着体を設けた構成としたから、この浄化処理部に自然導入された尿を、前記吸着体の炭化物の吸着作用により尿素を吸着して自然に(自動的に)浄化水へとかえることができ、よって、浄化処理部に導入された尿は前記吸着体により確実に浄化される。
【0026】
また、尿は浄化処理部に自然導入され、この浄化処理部で生じた浄化水は該浄化処理部の外部に自然導出される構成としたから、この浄化処理部に尿を導入したり浄化水を外部に導出したりする為の特別な構成が一切不要で、それだけ簡易構成で、しかも確実に浄化処理部への尿の導入、及び浄化水の導出が達成され、この浄化処理部での尿の浄化処理が良好に行なわれる。
【0027】
よって、請求項1記載の発明は、便口を介して浄化処理部に導入された尿を吸着体の炭化物の吸着作用により浄化水に簡易且つ確実に浄化処理できることは勿論、この浄化処理部への尿の導入及びこの浄化処理部からの浄化水の導出も全て、水や電気などを一切使用せずに自然に(自動的に)行うことができ、よって、例えば山岳地などのような水や電気が一切使用できない設置箇所においても良好且つ確実に尿の浄化処理を達成できる極めて画期的で実用性に秀れた尿浄化装置となる。
【0028】
また、請求項11記載の発明は上述のように、糞は発酵槽に導入して微生物分解し、尿は発酵槽とは別の尿浄化装置により浄化処理する構成としたから、前記発酵槽の水分過多の状態が確実に阻止され、それだけ良好に微生物分解が行われる。
【0029】
また、糞を浄化処理する発酵槽は、水や電気を一切使用せずとも糞の浄化処理を確実に達成でき、尿を浄化処理する尿浄化装置も、水や電気を一切使用せずに尿の浄化処理を確実に達成できる。
【0030】
よって、請求項11記載の発明は、たとえ水や電気の一切使用できない設置箇所においても発酵槽の水分過多の状態を確実に阻止して良好に糞尿の浄化処理が行なえる秀れたバイオトイレ装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0032】
請求項1記載の発明においては、便器9の便口9aを介して導出された尿aは、自重により流下して前記便器9に連設された浄化処理部1に自然導入される。
【0033】
この浄化処理部1に自然導入された尿aは、炭化物で構成された吸着体2の前記炭化物による吸着作用で尿素が吸着され、浄化水a’に浄化処理されることとなる。
【0034】
また、この浄化処理部1の吸着体2による浄化処理によって生ずる前記浄化水a’は、蒸発により該浄化処理部1の外部へと自然導出されることとなる。
【0035】
また、請求項11記載の発明においては、前記便口9aを介して導出される糞bは発酵槽8に導入されて該発酵槽8内で微生物分解により浄化処理され、前記便口9aを介して導出される尿aは前記発酵槽8とは別の尿浄化装置Aにより浄化処理されることとなる。
【実施例】
【0036】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0037】
本実施例は、便口9aを有する便器9に前記便口9aを介して導出された尿aが自重により流下して自然導入される浄化処理部1が連設され、この浄化処理部1には吸着作用により前記尿aの尿素を吸着し該尿aを浄化水a’とする炭化物で構成された吸着体2が設けられ、更に、前記浄化処理部1は、この吸着体2で浄化処理されることにより生ずる前記浄化水a’が蒸発により外部に自然導出されるように構成されている尿浄化装置Aと、前記便口9aを介して導出される糞bが導入され該糞bが微生物分解される発酵槽8とから成るバイオトイレ装置である。
【0038】
また、本実施例に係るバイオトイレ装置は、例えば登山道や山小屋などの山岳地に設置されるものである。
【0039】
尿浄化装置Aの浄化処理部1は、図5に図示したように、上部が開口した容器体1aの底部の略全面に亘って前記吸着体2が敷設された構成である。
【0040】
この吸着体2は、図5に図示したように、ポーラス状(微孔状にして浸透性に秀れた形状)の炭化物で構成されたパネル体2である。
【0041】
従って、浄化処理部1の容器体1aに自然導入された前記尿aは、このポーラス状の炭化物で構成したパネル体2に効率良く浸透し、炭化物の吸着作用により、尿aの尿素が該炭化物に吸着・消臭・分解され、該尿aが浄化水a’に浄化処理される。
【0042】
このパネル体2は、平面視略方形状に形成され、前記容器体1aの底部の略全面を覆うように該容器体1aの底部に複数敷設されるものである。
【0043】
また、このパネル体2は、炭化物をセメント若しくは焼石膏を主体とした固化材によりポーラス状に固定したものである。具体的には、このパネル体2は、粒状の炭化物と無機系固化材(焼石膏)と水とから成り、多数の粒状の炭化物を無機系固化材としての焼石膏により結合することでポーラス状に形成したものである。尚、焼石膏(所謂、半水石膏(CaSO・1/2HO))とは、石膏(CaSO・2HO)を一部脱水したものである。
【0044】
この炭化物で構成されたパネル体2(吸着体2)は、微細なゴミによりポーラス状の炭化物の目が徐々に詰まってしまうことから、3〜5年に一度の頻度で該パネル体2の交換を実施することが望ましい。
【0045】
また、このパネル体2は本実施例のものに限られるものではなく、本実施例と同様の特性を発揮するものであれば良い。
【0046】
また、容器体1aのパネル体2(吸着体2)の上部には、図5に図示したように、土壌が被覆状態に配設された土壌積層部3が設けられている。尚、この土壌積層部3は、本実施例が設置される山岳地などの設置箇所の現地土壌を採取して使用する。
【0047】
この容器体1aの土壌積層部3には、図5に図示したように、植物11が植生されており、また、この土壌積層部3と前記パネル体2との間には吸い出し防止材4が設けられている。
【0048】
この吸い出し防止材4は、土砂は通さず水を通す性質を有する繊維性の材料であり、土木工事などに使用される一般的な構成のものを採用している(尚、土壌積層部3に植生した植物11の根もこの吸い出し防止材4を通過できる。)。
【0049】
従って、浄化処理部1の容器体1aに敷設したパネル体2は、この吸い出し防止材4により上部の土砂積層部3と分離され、この土砂積層部3の土砂がパネル体2に混入することは阻止される。
【0050】
前記パネル体2及び土壌積層部3が設けられる容器体1aは、ステンレス製部材を容器状に形成して構成されている。尚、この容器体1aは水分をこの容器体1a内に貯留できる構成であればどのような構成としても良く、例えば、鉄製部材,プラスチック製部材若しくはコンクリート製部材などの他の部材により構成しても良い。また、例えば、山岳地などの設置箇所の現地土壌で容器状に形成し底部に止水シートを敷設して、現地土壌により容器体1aを形成した構成としても良い。
【0051】
また、本実施例においては、図1及び図2に図示したように、この容器体1aが設置箇所に複数並設状態に敷設され、これらを連設することによって浄化処理部1が構成されている。
【0052】
また、この複数の容器体1aから成る浄化処理部1の、隣り合う容器体1a同志の対向当接面15には、図6に図示したように、この各容器体1aの底部寄り位置にして互いに連通合致する位置に夫々、導水部12が設けられている。
【0053】
また、隣り合う容器体1a同志の対向当接面15には、互いに連通合致する複数の位置に夫々、締結具挿通孔13が設けられている。
【0054】
従って、この各容器体1aの対向当接面15に設けられた各締結具挿通孔13を連通合致させたうえで締結具14(ボルトとナットなど)で螺着して隣り合う容器体1a同志を連結固定する。
【0055】
以上の構成から成る浄化処理部1は、上流側(図2中、左側)の容器体1a内の水分(主に浄化水a’)が、前記導水部12を介して下流側(図2中、右側)の容器体1a内に流入可能である。
【0056】
尚、この導水部12を通じて隣り合う容器体1a同志の対向当接面15の隙間から液漏れが生じないように何らかの止水処理(例えば、導水部12の開口周縁部にゴムパッキンを配設するなど)を施すのが望ましい。
【0057】
尚、図6中、符号16は、後述の導入管7が挿通配設される管通孔16である。
【0058】
また、この浄化処理部1には、導入管7が配管されている。具体的には、図6に図示したように、浄化処理部1の複数の容器体1aの各貫通孔16に前記導入管7が挿通配設され、各容器体1aのパネル体2の上面部に沿設状態に、且つ該浄化処理部1の上流側から下流側に亘って該導入管7が配管されている。
【0059】
また、この導入管7の下部周面には該導入管7から下方側のパネル体2へ尿aを導出する導出孔7aが該導入管7の長さ方向に複数形成されている。
【0060】
また、この導入管7の上流側は、後述の発酵槽8に設けた尿受け部10の管部10bと連通されている。
【0061】
従って、この浄化処理部1の導入管7内に上流側から自然導入された尿aはこの導入圧により該導入管7内を下流側へと自然流下しながら、この導入管7の下部周面に形成された複数の導出孔7aを介してパネル体2へと自然導出される。
【0062】
また、浄化処理部1の下流側には開閉部5が設けられ、この開閉部5は、通水及び止水の切り替えを行う操作部5aが設けられている。
【0063】
また、浄化処理部1には、該浄化処理部1内の水分量が所定量以上に達した際に該所定量以上の水分が外方に自然放流され得る水量調整用放流路6が設けられている。
【0064】
この開閉部5及び水量調整用放流路6は、図2及び図4に図示したように、浄化処理部1の下流側の容器体1aの角部位に仕切壁18によって形成された空間部17に設けられている。
【0065】
前記間隙部17内には排水路5bが設けられ、この排水路5bの上流側は前記容器体1aの下流側にして底部寄り位置と連通され、下流側は外部と連通され、この排水路5bを介して前記浄化処理部1と外部とが連通される構成である。また、前記排水路5bの途中位置には前記操作部5aが設けられる。
【0066】
従って、この操作部5aの開閉操作により、前記排水路5bの通水及び止水の切り替え操作が可能で、例えば、この開閉部5aを開き操作することで、蒸発による導出が間に合わず浄化処理部1内に溜まってしまった浄化水a’を排水路5bから外部に排出したりできるものである。
【0067】
また、水量調整用放流路6は、上流側が前記浄化処理部1の容器体1a内に連通され、下流側が前記開閉部5の排水路5bの操作部5aより下流側所定位置に連通されている。尚、この水量調整用放流路6の上流側は、図3に図示したように、前記開閉部5の排水路5bよりも高い位置で前記浄化処理部1の容器体1内に連通されている。
【0068】
従って、この水量調整用放流路6は、前記操作部5aによる通水及び止水の切り替えが不能で常に通水可能な状態に保持され、例えば、雨水が浄化処理部1に入り、この浄化処理部1内の雨水の量が所定量以上となると、自動的にこの浄化処理部1内の水分(雨水など)が前記水量調整用放流路6から外部へ放流されることとなり、よって、仮にこの浄化処理部1内に雨水などが大量に導入されることとなっても、前記土壌積層部3の土壌がこの雨水と共に浄化処理部1から溢れ出て土壌流出を招くことが阻止される。
【0069】
以上の構成から成る尿浄化装置Aは、図1に図示したように、便器9の下方に連設されており、よってこの便器9の便口9aから導出された尿aが、後述の尿受け部10の管部10bを流下して、尿浄化装置Aの浄化処理部1に自然導入される。
【0070】
発酵槽8は、図7に図示したように、上部の一部が開口した箱状体で、この発酵槽8内にはおが屑が収容されている。
【0071】
尚、本実施例においては、発酵槽8内に収容されたおが屑,糞b,トイレットペーパーを攪拌する攪拌装置19が設けられている。
【0072】
従って、電気を使用できる場合には、この攪拌装置19を駆動して前記発酵槽8内の収容物を良好に攪拌できる。
【0073】
また、例えば、発酵槽8内を適温(微生物の活動が活発化する温度)に維持する温度維持装置などを設けた構成としても良い。
【0074】
また、この発酵槽8は、該発酵槽3に収容されたおが屑を取り出したり補充したりする為の取出口(図示省略)が設けられている。
【0075】
また、この発酵槽8の上部開口部8aと連通合致する位置に前記便器9の便口9aが設けら得れている。
【0076】
また、この発酵槽8には尿受け部10が設けられている。
【0077】
この尿受け部10は、図7に図示したように、便口9aの直下前方寄り位置に開口した構成であり、具体的には、便口9に向かって拡開する漏斗部10aが上部に設けられ、この漏斗部10aの下部には前記尿浄化装置Aと連通する管部10bが連設されている。尚、この尿受け部10の開口位置は、便器9に着座した使用者の尿aだけを効率良く受けられることを考慮して決定される。
【0078】
従って、便器9の便口9aを介して導出された糞bは発酵槽8内に落下して該発酵槽8に自然導入され、尿aは漏斗部10aに受けられ管部10bを流下して該便器9の下方側の尿浄化装置Aの浄化処理部1へと自然導入される。
【0079】
本実施例は、上述のように構成したから、図7に図示したように、便器9の便口9aを介して排便すると、便口9aを介して導出される糞bは落下により前記便口9aの下方の発酵槽8に自然導入されて該発酵槽8内で微生物分解により浄化処理される。
【0080】
一方、便口9aを介して導出される尿aは前記発酵槽8に導入されず、前記便口9aの直下前方寄り位置に開口する尿受け部10で受けられて、尿受け部10の管部10b内を流下して前記便器9の下方に連設された尿浄化処理部Aの浄化処理部1に自然導入される。
【0081】
この浄化処理部1に導入された尿aは、ポーラス状の炭化物で構成されたパネル体2の前記炭化物による吸着作用で尿素が吸着され、浄化水a’に浄化処理されることとなる。
【0082】
また、この浄化処理部1の吸着体2による浄化処理によって生ずる前記浄化水a’は、蒸発により該浄化処理部1の外部へと自然導出されることとなる。
【0083】
即ち、糞bは発酵槽8に導入して微生物分解される構成としたから、従来のバイオトイレ装置と同様に水、電気を一切使用せずとも確実に前記糞bを発酵槽8内で微生物分解により浄化処理できることは勿論、発酵槽8とは別の尿aを浄化処理する為の尿浄化装置Aも、水や電気を一切使用せずとも尿aを確実に浄化処理できることとなる。
【0084】
よって、本実施例においては、便口9aを介して浄化処理部1に導入された尿aをパネル体2の炭化物の吸着作用により浄化水a’に浄化処理できることは勿論、この浄化処理部1への尿aの導入及びこの浄化処理部1からの浄化水a’の導出も全て、水や電気などを一切使用せずに自然に(自動的に)行うことができ、よって、たとえ本実施例品の設置箇所である山岳地が水や電気の一切使用できない設置状況であっても本実施例の尿浄化装置Aによれば確実に、且つ良好に尿aの浄化処理を達成でき、これにより、従来においては、水や電気が使用できない山岳地などの設置箇所では尿aだけを良好に処理できるものが無い為、このような山岳地などの設置箇所では水や電気を使用せずとも糞尿b,aを浄化処理できる発酵槽8で糞bも尿aも処理しており、該発酵槽8が直ぐに水分過多の状態(微生物分解が阻害される状態)となってしまう為に使用制限などがあって不便であったところを、本実施例においては、水や電気を一切使用せずとも尿aを確実に浄化処理できる前記尿浄化装置Aによって尿aを浄化処理して、発酵槽8には尿aを導入しない構成としたから、たとえ水や電気の一切使用できない山岳地などの設置箇所においても、発酵槽8の水分過多の状態を確実に阻止して良好に糞尿b,aの浄化処理が行なえる画期的で極めて実用性に秀れたバイオトイレ装置となる。
【0085】
また、本実施例においては、尿浄化装置Aの浄化処理部1の前記パネル体2が、ポーラス状(微孔状)の炭化物で構成されている為、浄化処理部1に自然導入された前記尿aが、パネル体2のポーラス状の炭化物に極めて良好に浸透することとなり、よって、この炭化物の吸着作用による尿aの浄化処理もそれだけ効率的に行なわれ、よって、浄化処理部1に導入された尿aを確実に、且つ効率的に浄化水a’に浄化処理でき、尿浄化装置Aの尿aの処理能力が一層秀れたバイオトイレ装置となる。
【0086】
また、本実施例においては、尿浄化装置Aの浄化処理部1の容器体1aの底部に敷設したパネル体2の上部に被覆状態に土壌積層部3が設けられている構成であり、この浄化処理部1に自然導入された尿aは、前記パネル体2に浸透して該パネル体2の炭化物の吸着作用により尿素を吸着・消臭・分解されるだけでなく、前記土壌積層部3によっても悪臭が該浄化処理部1の外部に漏れ出ることが阻止される為、尿浄化装置Aの尿aの消臭能力が一層秀れたバイオトイレ装置となる。
【0087】
また、この土壌積層部3には植物11を植生することもでき、本実施例のように山岳地に設置した場合に該土壌積層部3に植物11を植生しておくことで、設置箇所の外観を損ねず体裁が良いなど、この点においても実用性に秀れる。
【0088】
また、この土壌積層部3と、パネル体2との間には吸い出し防止材4が設けられており、この吸い出し防止材4により土砂積層部3の土砂がパネル体2に混入することが阻止される構成の為、前記パネル体2のポーラス状の炭化物が土壌積層部3の土砂により目詰まりして該パネル2の秀れた浸透性が損なわれる心配が無く、それだけ該パネル体2による尿aの浄化処理が確実に、しかも効率的に達成され、また、この吸い出し防止材4は通水性に秀れる為、前記パネル体2の浄化処理により生じた浄化水a’が蒸発によって外部に自然導出される際にはこの吸い出し防止材4が邪魔とならず、良好に浄化水a’の自然導出が達成されるなど、尿浄化装置Aによる秀れた尿aの処理能力が一層確実となる。
【0089】
また、本実施例に係る尿浄化装置Aは、図1及び図2に図示したように、容器体1aが設置箇所に複数並設状態に敷設され、これらを連設して浄化処理部1が構成されている為、この浄化処理部1を設置スペースや、必要な尿a処理能力などの設置条件に応じてこの容器体1aを適宜な数量だけ連設して浄化処理部1を構成でき、しかも、一体の浄化処理部1を複数体の容器体1aに分割できる為、例えば山岳地などの運搬の困難な設置箇所へも良好に該浄化処理部1を運搬・設置でき、従って、所望の大きさや所望の処理能力の浄化処理部1を簡易に設置・使用できるなど、この点においても一層実用性に秀れる。
【0090】
また、本実施例においては、浄化処理装置Aの浄化処理部1の一端側(上流側)から他端側(下流側)に亘って導入管7が配管され、この導入管7に上流側から自然導入された尿aがこの導入管7の長さ方向に複数設けた導出孔7aを介して浄化処理部1内に導入される構成とした為、この浄化処理部1に上流側から自然導入された尿aを、効率的に該浄化処理部1に敷設されたパネル体2全体に浸透させることができ、このパネル体2全体に無駄なく効率的に尿a浄化処理能力を発揮させることができ、一層尿aの処理能力に秀れたバイオトイレ装置となる。
【0091】
また、この浄化処理部1の複数並設状態の容器体1aの対向当接面15には、互いに連通合致する位置に導水部12が設けられている為、この隣り合う容器体1a内の水分(主に浄化水a’)は前記導水部12を介して該隣り合う容器体1a間を流通可能な構成とし、且つ、図2に図示したように、浄化処理部1の下流側には開閉部5が設けられた構成とした為、例えば、通常使用時にはこの開閉部5の操作部5aを閉めておき排水路5bを止水(浄化処理部1から外部に浄化水a’或いは尿aが垂れ流れることがない)状態に保持しておき、浄化水a’が、蒸発による外部への導出では間に合わずに浄化処理部1内に溜まってしまった際には前記操作部5aを開き操作して排水路5bから浄化水a’を外部に排出したり、例えば、この浄化処理部1を清掃したい時にはこの開閉部5の操作部5aを開いて、この浄化処理部1に水を導入して前記開閉部5からこの清掃用の水を排水して、浄化処理部1の水洗い清掃を簡易に行えるなどメンテナンス作業も良好に行え、一層実用性に秀れる。
【0092】
また、この浄化処理部1の下流側には水量調整用放流部6が設けられ、この水量調整用放流部6の上流側は、図3に図示したように前記開閉部5の排水路5bの上流側よりも高い位置で前記浄化処理部1の容器体1a内と連通された構成とした為、該浄化処理部1の容器体1a内の水分量が増して水嵩が高くなり、この水量調整用放流部6の上部にまで該容器体1a内の水嵩が達するとこの容器体1a内の水分が該水量調整用放流部6を介して外部に放流される。即ち、浄化処理部1の容器体1a内の水分量が所定量以上(水嵩が所定高さ以上)となると、この所定量以上の水分が水量調整用放流路6を介して浄化処理部1から自動的に外部に放流されることとなる。
【0093】
よって、例えば雨季などで浄化処理部1に尿aだけでなく雨が大量に導入され、該浄化処理部1から外部に蒸発する水分量に比して該浄化処理部1に導入される水分量の方が多くなった場合には、この浄化処理部1内の尿aが雨と一緒の前記水量調整用放流路から外部に自然放流される。この際、尿aは雨により十分に希薄化されて自然放流されるので、環境への負担が生ぜず、また、このような雨季の時期には登山者も殆ど訪れないのが通例であり、この水量調整放流路から雨と一緒に尿aを自然放流しても問題は生じ得ない。
【0094】
つまり、本実施例に係るバイオトイレ装置の前記尿浄化装置Aの浄化処理部1を室外に設置した際に、この浄化処理部1に大量の雨が導入されたとしてもこの浄化処理部1内の水分量を常に所定量以下に保持でき、よって、例えばこの浄化処理部1から雨水などと一緒に土壌積層部3の土壌や植物11が流れ出たりする心配が一切無く、この点においても、登山道や山小屋などの山岳地に設置して使用するバイオトイレ装置としての極めて高い実用価値を有するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施例に係るバイオトイレ装置の使用状態を示す正面説明図である。
【図2】本実施例に係る尿浄化装置Aの説明平面図である。
【図3】本実施例に係る尿浄化装置Aの開閉部5及び水量調整用放流路6を示す正面断面図である。
【図4】本実施例に係る尿浄化装置Aの開閉部5及び水量調整用放流路6を示す平面説明図である。
【図5】本実施例に係る尿浄化装置Aの浄化処理部1の説明側断面図である。
【図6】本実施例に係る尿浄化装置Aの浄化処理部1の容器体1aの対向当接面15を示す側断面図である。
【図7】本実施例に係るバイオトイレ装置の便器9の説明正面図である。
【符号の説明】
【0096】
1 浄化処理部
1a 容器体
2 吸着体,パネル体
3 土壌積層部
4 吸い出し防止材
5 開閉部
5a 操作部
6 水量調整用放流路
7 導入管
7a 導入孔
8 発酵槽
9 便器
9a 便口
10 尿受け部
A 尿浄化装置
a 尿
a’ 浄化水
b 糞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便口を有する便器に前記便口を介して導出された尿が自重により流下して自然導入される浄化処理部が連設され、この浄化処理部には吸着作用により前記尿の尿素を吸着し該尿を浄化水とする炭化物で構成された吸着体が設けられ、更に、前記浄化処理部は、この吸着体で浄化処理されることにより生ずる前記浄化水が蒸発により外部に自然導出されるように構成されていることを特徴とする尿浄化装置。
【請求項2】
請求項1記載の尿浄化装置において、前記吸着体は、ポーラス状の炭化物で構成されたパネル体であることを特徴とする尿浄化装置。
【請求項3】
請求項2記載の尿浄化装置において、前記吸着体は、炭化物をセメント若しくは焼石膏を主体とした固化材によりポーラス状に固定したパネル体であることを特徴とする尿浄化装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の尿浄化装置において、前記吸着体の上部には、土壌が被覆状態に配設された土壌積層部が設けられていることを特徴とする尿浄化装置。
【請求項5】
請求項4記載の尿浄化装置において、前記吸着体と土壌積層部との間には、吸い出し防止材が設けられていることを特徴とする尿浄化装置。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項に記載の尿浄化装置において、前記便口を介して導出された尿は前記浄化処理部の上流側から導入されると共にこの導入圧により該浄化処理部の下流側へと自然流下されるように構成されていることを特徴とする尿浄化装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の尿浄化装置において、前記浄化処理部の下流側には開閉部が設けられ、この開閉部には、通水及び止水の切り替えを行う操作部が設けられていることを特徴とする尿浄化装置。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項に記載の尿浄化装置において、前記浄化処理部の下流側には該浄化処理部内の水分量が所定量以上に達した際に該所定量以上の水分が外方に自然放流され得る水量調整用放流路が設けられていることを特徴とする尿浄化装置。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか1項に記載の尿浄化装置において、前記浄化処理部には導入管が配管され、前記尿は、この導入管の上流側から該導入管内に自然導入されると共に該導入管の周面に該導入管の長さ方向に複数並設された導出孔から前記吸着体へ自然導出されるように構成されていることを特徴とする尿浄化装置。
【請求項10】
請求項1〜9いずれか1項に記載の尿浄化装置において、前記浄化処理部は、上部が開口した容器体の底部の略全面に前記吸着体が敷設された構成であることを特徴とする尿浄化装置。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか1項に記載の尿浄化装置と、前記便口を介して導出される糞が導入される発酵槽とから成り、この発酵槽に導入された糞は該発酵槽内で微生物分解されるように構成したことを特徴とするバイオトイレ装置。
【請求項12】
請求項11記載のバイオトイレ装置において、前記発酵槽には、前記便口を介して導出される尿を受ける尿受け部が設けられ、この尿受け部は前記尿浄化装置と連設され、この尿受け部に受けられた前記尿が自重により流下して前記尿浄化装置に自然導入されるように構成されていることを特徴とするバイオトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−105166(P2007−105166A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297930(P2005−297930)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(505005290)株式会社 環境シーエスワン (2)
【Fターム(参考)】