説明

局所適用静菌性エステル

式(V)の2−ピロリドン−5−カルボン酸フェノキシエタノールエステル(PCA)からなる静菌剤。従来の静菌剤と比較して、本発明のものは、皮膚からの反応性応答を惹起することなく微生物汚染を阻止するという利点を呈する。本発明の静菌剤は、また、高い静菌活性を呈する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所適用製剤用の、とりわけ皮膚薬および化粧品用途向けの新規静菌剤に関する。本発明はまた、この静菌剤を含有する製剤ならびに皮膚薬および化粧品分野におけるそれの使用にも及ぶものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の分野は、化粧品および皮膚薬製剤(たとえば乳剤およびクリーム剤)の微生物汚染を防止して、これらの製剤の安定性および可使用期間を増大させ、延長し、また使用の間のそれらの安全性を確保するために使用される静菌剤の分野である。
それらを含有する製剤を保存するのに適した従来の静菌剤は、皮膚の生理に対して多少とも重大な毒性的干渉を及ぼす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の主たる目的は、より有効な静菌活性に加えて、すぐれた皮膚耐容性を示すことのできる新規静菌剤を提供するというものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これらおよび他の目的は、それぞれ請求項1、7および8に従った静菌剤および製剤によって達成される。本発明の好ましい具体化態様はその他の請求項に示されている。
【発明の効果】
【0005】
従来の静菌剤と比較して、本発明に従ったものは、皮膚からの反応性応答を惹起させることなく、微生物汚染を防止するという利点を呈する。
【0006】
本発明の静菌剤のさらなる利点は、それが呈するより高い静菌活性によって示される。
【0007】
本発明の静菌剤の最後の、しかし少なからぬ利点は、それが殺菌作用をも発揮することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
これらおよびその他の利点、目的および特徴は、単なる非制限的例としてこの後に記述する本発明のいくつかの好ましい具体化態様の以下の記載から明らかである。
【0009】
本発明の静菌剤は、式
【化05】

(式中、Rは飽和または不飽和の脂肪族鎖あるいは飽和または不飽和の環式または複素環式構造であることができる)のカルボン酸と式
【化06】

(式中、Rが飽和または不飽和の脂肪族鎖である場合には、YはHであり、XはBrまたはIであり;
Rが飽和または不飽和の環式または複素環式構造である場合には、Yは−OCHCH−であり、XはHである)の静菌性アルコールとのエステル化反応の生成物からなる。
【0010】
本発明のための好ましいカルボン酸は、式
【化07】

の2−ピロリドン−5−カルボン酸(PCA)である。
【0011】
本発明の目的に使用できる他のカルボン酸は、グリコール酸、サリチル酸、ソルビン酸、アゼライン酸、酒石酸、クエン酸およびC8−10ココナツ脂肪酸である。
【0012】
やはり本発明に好ましいのは、式
【化08】

の2−フェノキシエタノールアルコールである。
【0013】
本発明の目的に使用できる他のアルコールは、静菌効果をもつアルコールである2−Br−エタノール、2−I−エタノールおよびテトラヒドロフルフリルアルコールである。
【0014】
本発明のための好ましい静菌剤は、式(IV)のフェノキシエタノールアルコールと式(III)のPCAとのエステル化反応から得られる式
【化09】

のPCAフェノキシエタノールエステルからなる。
【0015】
本発明の静菌剤は、有利なことに、殺菌活性をも発揮する。
【0016】
本発明の静菌剤の皮膚耐容性を、以下のパッチテストにより、無反応応答および一次刺激の点で試験した。
[パッチテスト]
25名の健康な志願者からなる審査団に、「フィンチェンバー」を用いての固体製品約20μgの背部への適用(パッチテスト)を受けさせた。48時間後、「フィンチェンバー」を除去し、除去から15分、1時間および24時間後の皮膚反応を臨床的に評価した。
【0017】
実施例1(比較)
比較の目的のためにここに示した本実施例では、式(IV)のフェノキシエタノールアルコールを用いた。この静菌剤は中程度に刺激性であることが判明した。
実施例2(本発明)
上記試験プロトコールを実施するために、本発明の式(V)のPCAフェノキシエタノールエステルからなる静菌剤を用いた。この静菌剤は刺激性ではないことが判明し、皮膚を感作しなかった。
【0018】
本発明の静菌剤は、化粧品製剤、たとえばクリーム、液状乳剤、ローションなどの乳剤を安定化するのに、また、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤などの皮膚薬製剤を安定化するのに、有利に使用される。
【0019】
本発明の静菌剤の静菌作用を評価することを目的として、「シュードモナス・アエルギノーザ(緑膿菌)」(Pa)および「スタフィロコッカス・アウレウス(黄色ぶどう球菌)」(Sa)からなる細菌コロニーについて、それぞれ式(IV)の純粋なフェノキシエタノールおよび式(V)の本発明のPCAフェノキシエタノールエステルを用いて、下記のMIC(最小発育阻止濃度)試験を実施した。
【0020】
これらの試験の結果を次表にまとめる:
【表01】

この表から分るように、本発明の式(V)のエステルは、より低い活性成分濃度を用いることによって、フェニキシエタノールと同じ静菌作用を発揮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステルを含有することを特徴とする局所適用製剤用静菌剤。
【請求項2】
前記エステルが、カルボン酸と式
【化01】

(式中、Rが飽和または不飽和の脂肪族鎖である場合、YはHであり、XはBrまたはIであり;
Rが飽和または不飽和の環式または複素環式構造である場合、Yは−OCHCH−であり、XはHである)のアルコールとの反応生成物からなることを特徴とする請求項1に記載の静菌剤。
【請求項3】
前記エステルが前記式(II)のアルコールと式
【化02】

の2−ピロリドン−5−カルボン酸(PCA)との反応生成物であることを特徴とする請求項2に記載の静菌剤。
【請求項4】
前記アルコールが式
【化03】

のフェノキシエタノールアルコールであり、前記静菌剤が式
【化04】

のPCAフェノキシエタノールエステルからなることを特徴とする請求項3に記載の静菌剤。
【請求項5】
前記カルボン酸がグリコール酸、サリチル酸、ソルビン酸、アゼライン酸、酒石酸、クエン酸およびC8−10ココナツ脂肪酸からなることを特徴とする請求項2に記載の静菌剤。
【請求項6】
前記アルコールが2−Br−エタノール、2−I−エタノールまたはテトラヒドロフルフリルアルコールからなることを特徴とする請求項2に記載の静菌剤。
【請求項7】
殺菌作用をも奏することを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の静菌剤。
【請求項8】
請求項1〜7の1つ以上に記載の少なくとも1種の静菌剤を含有することを特徴とする皮膚薬製剤。
【請求項9】
請求項1〜7の1つ以上に記載の少なくとも1種の静菌剤を含有することを特徴とする化粧品製剤。
【請求項10】
請求項1〜7の1つ以上に記載の静菌剤の皮膚薬製剤および化粧品製剤製造のための使用。

【公表番号】特表2007−522167(P2007−522167A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552535(P2006−552535)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001294
【国際公開番号】WO2005/079852
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506272770)
【Fターム(参考)】