説明

展示ケースの両開き扉開閉装置

【課題】
閉止時には透明扉が開口部の框部周囲に設けたパッキンに圧接して気密状態に保つことが可能な展示ケースにおいて、開口部の外側上部位置に余裕空間が存在しない場合でも、透明扉を前後移動させて開閉できる展示ケースの両開き扉開閉装置を提供する。
【解決手段】
開口部3の下方位置に複数の第1摺動支持手段13にて前後移動可能に支持された水平な支持部材14を備え、支持部材の前面に複数の転動コロ15を列設し、透明扉2の下縁に沿って設けたガイド溝17内に転動コロを転動可能に係合し、開口部の上方位置に複数の第2摺動支持手段18にて前後移動可能に支持された水平なガイド部材19を備え、ガイド部材の前端に設けた下方開放のガイドレール20に透明扉の上縁部を遊挿し、第1摺動支持手段より第2摺動支持手段のストローク長を短く設定し、透明扉を開閉する際に傾斜状態で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、展示ケースの両開き扉開閉装置に係わり、更に詳しくは美術館、博物館、店舗等に設置し、透明扉が閉止時に気密状態を保つ構造の展示ケースにおいて、透明扉を左右何れの側にも開閉することが可能な両開き扉開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、美術館、博物館、店舗等に設置する展示ケースにおいて、展示ケース本体の開口部に配置する1枚の透明扉を左右何れの側にもスライド開閉可能であるとともに、閉止時には透明扉が開口部の框部周囲に設けたパッキンに圧接して展示空間を気密状態に保つことが可能な展示ケースの両開き扉開閉装置は提供されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、展示ケース本体の開口部の外側の上下空間部に、横方向に延びた案内支持手段を、展示ケース本体に対して前後移動可能となるように複数の奥行方向の摺動軸にて支持するとともに、該案内支持手段の前面側に沿って奥行方向の回転軸にて回転可能に複数の垂直転動コロを列設し、一方、前記開口部を塞ぐ透明扉の裏面上下縁に沿ってガイド溝を備えた縁部材を固定し、上下のガイド溝にそれぞれ上下の案内支持手段に突設した垂直転動コロを転動可能に係合した構造の扉開放装置が開示されている。つまり、前記透明扉を閉止状態から開放するには、上下の前記案内支持手段を前方へ移動させた後、前記ガイド溝内で垂直転動コロが転動することで前記透明扉が左右に開閉するのである。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の扉開閉装置は、上下の案内支持手段がそれぞれ同一のストロークを有する摺動軸で支持しているので、前記透明扉が展示ケース本体の開口部に対して平行移動する機構であり、原則的には好ましいと言えるが、上下の案内機構が共通部材を用いて構成されているので、開口部の外側上下位置の何れかに長ストロークの摺動軸を設けることができないような空間的制約があると、前述の扉開閉装置を設けることができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4088461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、美術館、博物館、店舗等に設置し、展示ケース本体の開口部に配置する1枚の透明扉を左右何れの側にもスライド開閉可能であるとともに、閉止時には透明扉が開口部の框部周囲に設けたパッキンに圧接して展示空間を気密状態に保つことが可能な展示ケースにおいて、開口部の外側上部位置に余裕空間が存在しない場合でも、透明扉を前後移動させて開閉することが可能な展示ケースの両開き扉開閉装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の課題解決のために、展示ケース本体の開口部に配置する1枚の透明扉を左右何れの側にもスライド開閉可能であるとともに、閉止時には透明扉が開口部の框部周囲に設けたパッキンに圧接して展示空間を気密状態に保つことが可能な展示ケースの両開き扉開閉装置において、下部においては、前記開口部の下方位置に、展示ケース本体のフレームに装着した複数の第1摺動支持手段にて前後移動可能に支持された水平な支持部材を備え、該支持部材の前面に複数の転動コロを列設し、前記透明扉の下縁に沿って設けた縁部材の裏面側に形成した断面略C字形のガイド溝内に前記転動コロを転動可能に係合し、上部においては、前記開口部の上方位置に、展示ケース本体のフレームに装着した複数の第2摺動支持手段にて前後移動可能に支持された水平なガイド部材を備え、該ガイド部材の前端に設けた下方開放のガイドレールに前記透明扉の上縁部を遊挿し、前記第1摺動支持手段より第2摺動支持手段のストローク長を短く設定し、前記透明扉を開閉する際に傾斜状態で行うことを特徴とする展示ケースの両開き扉開閉装置を構成した(請求項1)。
【0008】
ここで、前記第1摺動支持手段と第2摺動支持手段は、前記展示ケース本体のフレームに固定するリニアブッシュと、該リニアブッシュに前後摺動可能に貫通したシャフトとからなり、該シャフトの前端に前記支持部材又はガイド部材を固定するとともに、後端にストッパーを固定してなることが好ましい(請求項2)。
【0009】
更に、前記支持部材及びガイド部材が後側移動終端に位置し、前記開口部の框部周囲に設けたパッキンに透明扉が圧接した状態で、前記フレームの上下部に取付けた回転施錠具の施錠片でそれぞれ前記支持部材とガイド部材の適所に係合して前方移動を規制するとともに、前記支持部材及びガイド部材が前側移動終端に位置し、前記透明扉が傾斜した状態で、前記回転施錠具の施錠片でそれぞれ前記支持部材とガイド部材の適所に係合して後前方移動を規制することがより好ましい(請求項3)。
【0010】
また、前記ガイド部材のガイドレールの内側壁に摺動シートを添設してなることも好ましい(請求項4)。
【発明の効果】
【0011】
以上にしてなる請求項1に係る発明の展示ケースの両開き扉開閉装置は、展示ケース本体の開口部の外側上部位置に余裕空間が存在しない場合でも、上部のガイド部材の前端に設けた下方開放のガイドレールに前記透明扉の上縁部を遊挿するとともに、下部の支持部材を前後移動案内する第1摺動支持手段より、上部のガイド部材を前後移動案内する第2摺動支持手段のストローク長を短く設定したことにより、開口部の外側上部位置に開閉機構を組み込むことができるようになり、そして開口部に配置する1枚の前記透明扉を傾斜状態で前方へ移動させて、該開口部の框部周囲に設けたパッキンから当該透明扉を離し、それにより左右何れの側にもスライド開閉することができる。更に、上部の第2摺動支持手段は、前記透明扉の上端部がパッキンから離れる程度のストローク長で良いので、狭い空間にも組み込むことができる。また、透明扉の閉止時には該透明扉が開口部の框部周囲に設けたパッキンに圧接して展示空間を気密状態に保つことができる。特に、美術館、博物館、店舗等に設置し、周囲と上面がガラス板で構成され、左右に障害物が存在しない島置きタイプの展示ケースに適用すれば、開口部の外側上部位置に余裕空間が存在しないので効果が大である。
【0012】
請求項2によれば、前記第1摺動支持手段と第2摺動支持手段は、前記展示ケース本体のフレームに固定するリニアブッシュと、該リニアブッシュに前後摺動可能に貫通したシャフトとからなり、該シャフトの前端に前記支持部材又はガイド部材を固定するとともに、後端にストッパーを固定してなるので、簡単な構成で透明扉を支持する下部の支持部材と上部のガイド部材を安定且つスムーズに前後移動可能に保持することができ、ストローク長も確実に規定できるので、動作に対して信頼性が高くなる。
【0013】
請求項3によれば、前記支持部材及びガイド部材が後側移動終端に位置し、前記開口部の框部周囲に設けたパッキンに透明扉が圧接した状態で、前記フレームの上下部に取付けた回転施錠具の施錠片でそれぞれ前記支持部材とガイド部材の適所に係合して前方移動を規制するとともに、前記支持部材及びガイド部材が前側移動終端に位置し、前記透明扉が傾斜した状態で、前記回転施錠具の施錠片でそれぞれ前記支持部材とガイド部材の適所に係合して後前方移動を規制するので、透明扉の閉止時にパッキンに圧接した状態を確実に維持することができるとともに、透明扉を左右へスライド移動時に傾斜した状態を確実に維持することができる。
【0014】
請求項4によれば、前記ガイド部材のガイドレールの内側壁に摺動シートを添設してなるので、ガイドレールに遊挿した透明扉の上端部が、該ガイドレールに沿ってスライド移動時に摺動シートに接触するので、移動動作がスムーズになるとともに、ガイドレール内で透明扉の上端部が前後に振れて摺動シートに衝突しても破損することを防止できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る両開き扉開閉装置を適用した展示ケースの全体正面図である。
【図2】同じく縦断側面図である。
【図3】透明扉の下部案内構造示す閉止状態の部分拡大縦側面図である。
【図4】透明扉の下部案内構造示す開閉操作状態の部分拡大縦側面図である。
【図5】透明扉の上部案内構造示す閉止状態の部分拡大縦側面図である。
【図6】透明扉の上部案内構造示す開閉操作状態の部分拡大縦側面図である。
【図7】透明扉の上部案内構造示す閉止状態の部分拡大縦側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。図1及び図2は本発明に係る展示ケースの両開き扉開閉装置を適用した実施形態を示し、図3及び図4は両開き扉開閉装置の下部構造、図5〜図7は両開き扉開閉装置の上部構造を示し、図中符号1は展示ケース本体、2は透明扉、3は開口部、4は下部案内構造、5は上部案内構造をそれぞれ示している。
【0017】
前記展示ケース本体1は、図1及び図2に示すように、ベース部6の上方に一体となしてフレーム7を立設し、底面を除きガラス板等の透明な側面板8,8と背面板9及び上面板10で周囲が囲まれた前面に開口部3を備えた箱形であり、更に上面板10の上位に照明装置11を付設し、上面板10を通して展示空間12を照明するようになっている。本実施形態の展示ケース本体1は、左右に障害物が存在しない島置きタイプであり、周囲の何れの側からも展示空間12内の展示物を鑑賞できるようになっている。
【0018】
また、本発明の展示ケースは、展示ケース本体1の開口部3に配置する1枚の透明扉2を左右何れの側にもスライド開閉可能であるとともに、閉止時には透明扉2が開口部3の框部周囲に設けたパッキン13Aに圧接して展示空間12を気密状態に保つことが可能な構造である。そして、前記開口部3の外側上下部において、前記透明扉2を下部案内構造4で支持するとともに、上部案内構造5で支持し、開放操作時には前記透明扉2を前方へ移動させて傾斜状態に維持し、前記パッキン13Aから離れた状態で左右にスライド案内するようになっている。
【0019】
更に詳しくは、本発明に係る両開き扉開閉装置は、図3〜図7に示すように、下部案内構造4においては、前記開口部3の下方位置に、展示ケース本体1のフレーム7に装着した複数の第1摺動支持手段13にて前後移動可能に支持された水平な支持部材14を備え、該支持部材14の前面に複数の転動コロ15を列設し、前記透明扉2の下縁に沿って設けた縁部材16の裏面側に形成した断面略C字形のガイド溝17内に前記転動コロ15を転動可能に係合し、上部案内構造5においては、前記開口部3の上方位置に、展示ケース本体1のフレーム7に装着した複数の第2摺動支持手段18にて前後移動可能に支持された水平なガイド部材19を備え、該ガイド部材19の前端に設けた下方開放のガイドレール20に前記透明扉2の上縁部を遊挿し、前記第1摺動支持手段13より第2摺動支持手段18のストローク長を短く設定し、前記透明扉2を開閉する際に傾斜状態で行うように構成している。
【0020】
ここで、前記第1摺動支持手段13は、前記展示ケース本体1のフレーム7に固定するリニアブッシュ21と、該リニアブッシュ21に前後摺動可能に貫通したシャフト22とからなり、該シャフト22の前端に前記支持部材14を固定するとともに、後端にストッパー23を固定している。同様に、前記第2摺動支持手段18は、前記展示ケース本体1のフレーム7に固定するリニアブッシュ24と、該リニアブッシュ24に前後摺動可能に貫通したシャフト25とからなり、該シャフト25の前端に前記ガイド部材19を固定するとともに、後端にストッパー26を固定している。
【0021】
具体的には、図3に示すように、前記ベース部6の前横補強材27に前記リニアブッシュ21が固定されている。前記前横補強材27は、スチール板を断面略コ字形に折曲した形成した部材であり、前方へ開放状態で設け、上方へ支柱28を立設して前記フレーム7を構成している。前記前横補強材27の立壁29には、開口30を形成し、該開口30に前方からリニアブッシュ21の本体を挿入し、リニアブッシュ21のフランジ部31を立壁29にネジ止めしている。そして、前記前横補強材27の内部位置に、断面四角形の前記支持部材14を配設し、前記リニアブッシュ21を貫通させたシャフト22の先端に固定している。尚、前記第1摺動支持手段13は、開口部3の間口幅に応じて複数設けている。また、前記支持部材14の前面には、水平な奥行方向を向いた支軸を有する転動コロ15を突設し、該転動コロ15の個数も開口部3の間口幅に応じて決定されるが、最低でも両側部と中央部で3個は必要である。本実施形態では、前記透明扉2は厚さが10mmの飛散防止シールを貼ったガラス板であり、重量が重いので3個より多く列設している。
【0022】
前記縁部材16は、アルミ押出し型材で構成し、下部に透明扉2の下縁を受ける受片32を突設し、背面側には断面略C字形のガイド溝17を形成している。そして、前記透明扉2の下部に両面粘着テープによって貼着しているが、固定手段は任意である。更に、前記前横補強材27の上端部の前方へ張り出した下框部33には、パッキン13Aを添設している。また、前記支持部材14の下端には、水平に当止板34を固定し、前記ベース部6の内部下方のベース杆35の上面に回転施錠具36を取付け、該回転施錠具36の施錠杆37が前記当止板34の前縁又は後縁を当止するようになっている。つまり、図3に示すように、前記透明扉2を閉じて前記パッキン13Aを背面に圧接している状態で、前記当止板34の前縁を回転施錠具36の施錠杆37で当止してその状態を維持し、また図4に示すように、前記第1摺動支持手段13,…で案内されて前側移動終端まで移動したときに、前記当止板34の後縁を回転施錠具36の施錠杆37で当止してその状態を維持するようになっている。勿論、前記支持部材14の前方移動は、前記ストッパー23がリニアブッシュ21の後端に当接することにより規制される。
【0023】
また、前記ベース部6の前部には、下端を水平な回動軸38で支持され、前後に回動する下カバー39が設けられ、該下カバー39の上端に後方へ屈曲して延びた当止部40を形成し、該下カバー39を閉じた際に前記当止部40の先端の緩衝部材41が前記透明扉2の下部前面を当止するようになっている。ここで、前記下カバー39を閉じた際に、該下カバー39に設けた回転施錠具42の施錠杆43がベース部6の下部に設けた係止板44に係止し、下カバー39を閉じた状態を維持するようになっている。本実施形態では、前記下框部33のパッキン13Aと緩衝部材41の高さを略一致させ、前記透明扉2を前後から挟んで保持する。また、前記ベース部6のベース杆35には、キャスター49やアジャスター50を設けている。
【0024】
次に、図5〜図7に基づいて、上部案内構造5を具体的に説明する。前記フレーム7を構成する支柱28の上端には、水平杆51が固定され、該水平杆51の上面に緩衝材を介してガラス板からなる上面板10が載置されている。そして、前記上面板10に設けた開口52を通して前記水平杆51の上に前記照明装置11のボックス体53を構成する上部フレーム54の前水平杆55が連結されている。前記前水平杆55は、スチール製の断面四角形の管体であり、その前面側には前記ボックス体53を構成する化粧板56の下部を固定し、前記前水平杆55の前面と化粧板56を貫通する開口57を形成し、該開口57に前記リニアブッシュ24の本体を前方から挿入し、該リニアブッシュ24のフランジ部58を前水平杆55にネジ止めしている。更に、前記前水平杆55の後面に形成した開口59から前記リニアブッシュ24を貫通させてシャフト25を配設し、該シャフト25の前端に前記ガイド部材19を固定するとともに、後端にストッパー26を取付けている。
【0025】
前記ガイド部材19は、スチール板を折曲形成した表部材60と裏部材61を溶接して接合した部材である。前記表部材60は、前記シャフト25の前端に固定する垂直板62と該垂直板62の下縁から前方へ直角に延びた水平板63と、該水平板63の前端縁から下方へ直角に延びた前側壁64を形成し、更に前記垂直板62の上端縁から後方へ直角に延びた補強板65を形成した形状である。また、前記裏部材61は、前記上面板10に平行な基板66の前端縁に上方へ直角に後側壁67を形成し、該後側壁67の上端縁から前方へ直角に固定板68を形成し、更に前記基板66の後端縁から上方へ直角に係止板69を形成した形状である。そして、前記表部材60の水平板63の先端部下面に前記裏部材61の固定板68を面接合し、互いにスポット溶接して一体化し、前記前側壁64、後側壁67及び固定板68とで下方開放した断面略コ字形の前記ガイドレール20を形成している。
【0026】
そして、前記前水平杆55の前面位置で、前記化粧板56の前面側に回転施錠具70を取付け、前記透明扉2の背面が前記パッキン13Aに圧接した閉止状態で、該回転施錠具70の施錠杆71で前記係止板69の前側を当止し、その状態を維持し(図5及び図7参照)、また前記第2摺動支持手段18,…で案内されてガイド部材19が前側移動終端まで移動した際に、前記回転施錠具70の施錠杆71で前記係止板69の後側を当止し、その状態を維持するようになっている(図6参照)。勿論、前記ガイド部材19の前方移動は、前記ストッパー26が前記前水平杆55の後面に当接することにより規制される。ここで、前記上面板10の前端の上框部72に前記パッキン13Aが添設されている。また、前記ガイド部材19のガイドレール20の内側壁、つまり前記前側壁64と後側壁67に摺動シート73,73を添設し、前記透明扉2の上端部をスムーズに摺動案内できるようにしている。また、前記ガイド部材19の基板66と前記上面板10との間にも摺動シート74を添設している。
【0027】
前記第2摺動支持手段18を構成するリニアブッシュ24とシャフト25は、前記上部フレーム54の内部に略納まり、またフレーム7の支柱28の奥行幅と略同じ奥行寸法であるので、上部に余裕空間が存在しない場合でも、第2摺動支持手段18を狭い空間に設けることができる。また、前記回転施錠具70の前記ガイド部材19の背後と上部フレーム54との間の空間に内蔵できるので、外部から全く見えないのである。前記リニアブッシュ24とシャフト25による摺動案内のストローク長は、前記透明扉2がパッキン13Aから離れる程度で良いので、可及的に短くすることが可能である。
【0028】
このように、前記透明扉2を閉止した場合には、前記支持部材14及びガイド部材19が後側移動終端に位置し、前記開口部3の框部周囲に設けたパッキン13Aに透明扉2が圧接した状態で、前記フレーム7の上下部に取付けた回転施錠具36,70の施錠片37,71でそれぞれ前記支持部材14とガイド部材19の適所に係合して前方移動を規制することができ、透明扉2の閉止状態を確実に維持することができる。一方、前記透明扉2を開放する際には、該透明扉2の前面に吸着ハンドル(図示せず)を吸着させて手前に引くと、前記第1摺動支持手段13と第2摺動支持手段18で案内されて前記支持部材14及びガイド部材19が前側移動終端に位置し、前記透明扉2が傾斜した状態で、前記回転施錠具36,70の施錠片37,71でそれぞれ前記支持部材14とガイド部材19の適所に係合して後前方移動を規制し、その傾斜状体を維持できるのである。その状態で、吸着ハンドルを持って左右何れかの側に引くと、前記転動コロ15,…に対して透明扉2の下縁のガイド溝17が移動するとともに、前記ガイド部材19のガイドレール20で透明扉2の上端部がスライド案内される。図1には、前記透明扉2を左右に最大開放した位置を想像線で示しているが、前記透明扉2の支持強度と展示ケース本体1との重量バランスを考慮して開口部3を開放できる割合(開口率)を60%に制限している。
【符号の説明】
【0029】
1 展示ケース本体、 2 透明扉、
3 開口部、 4 下部案内構造、
5 上部案内構造、 6 ベース部、
7 フレーム、 8 側面板、
9 背面板、 10 上面板、
11 照明装置、 12 展示空間、
13A パッキン、 13 第1摺動支持手段、
14 支持部材、 15 転動コロ、
16 縁部材、 17 ガイド溝、
18 第2摺動支持手段、 19 ガイド部材、
20 ガイドレール、 21 リニアブッシュ、
22 シャフト、 23 ストッパー、
24 リニアブッシュ、 25 シャフト、
26 ストッパー、 27 前横補強材、
28 支柱、 29 立壁、
30 開口、 31 フランジ部、
32 受片、 33 下框部、
34 当止板、 35 ベース杆、
36 回転施錠具、 37 施錠杆、
38 回動軸、 39 下カバー、
40 当止部、 41 緩衝部材、
42 回転施錠具、 43 施錠杆、
44 係止板、 49 キャスター、
50 アジャスター、 51 水平杆、
52 開口、 53 ボックス体、
54 上部フレーム、 55 前水平杆、
56 化粧板、 57 開口、
58 フランジ部、 59 開口、
60 表部材、 61 裏部材、
62 垂直板、 63 水平板、
64 前側壁、 65 補強板、
66 基板、 67 後側壁、
68 固定板、 69 係止板、
70 回転施錠具、 71 施錠杆、
72 上框部、 73 摺動シート、
74 摺動シート。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
展示ケース本体の開口部に配置する1枚の透明扉を左右何れの側にもスライド開閉可能であるとともに、閉止時には透明扉が開口部の框部周囲に設けたパッキンに圧接して展示空間を気密状態に保つことが可能な展示ケースの両開き扉開閉装置において、下部においては、前記開口部の下方位置に、展示ケース本体のフレームに装着した複数の第1摺動支持手段にて前後移動可能に支持された水平な支持部材を備え、該支持部材の前面に複数の転動コロを列設し、前記透明扉の下縁に沿って設けた縁部材の裏面側に形成した断面略C字形のガイド溝内に前記転動コロを転動可能に係合し、上部においては、前記開口部の上方位置に、展示ケース本体のフレームに装着した複数の第2摺動支持手段にて前後移動可能に支持された水平なガイド部材を備え、該ガイド部材の前端に設けた下方開放のガイドレールに前記透明扉の上縁部を遊挿し、前記第1摺動支持手段より第2摺動支持手段のストローク長を短く設定し、前記透明扉を開閉する際に傾斜状態で行うことを特徴とする展示ケースの両開き扉開閉装置。
【請求項2】
前記第1摺動支持手段と第2摺動支持手段は、前記展示ケース本体のフレームに固定するリニアブッシュと、該リニアブッシュに前後摺動可能に貫通したシャフトとからなり、該シャフトの前端に前記支持部材又はガイド部材を固定するとともに、後端にストッパーを固定してなる請求項1記載の展示ケースの両開き扉開閉装置。
【請求項3】
前記支持部材及びガイド部材が後側移動終端に位置し、前記開口部の框部周囲に設けたパッキンに透明扉が圧接した状態で、前記フレームの上下部に取付けた回転施錠具の施錠片でそれぞれ前記支持部材とガイド部材の適所に係合して前方移動を規制するとともに、前記支持部材及びガイド部材が前側移動終端に位置し、前記透明扉が傾斜した状態で、前記回転施錠具の施錠片でそれぞれ前記支持部材とガイド部材の適所に係合して後前方移動を規制する請求項1又は2記載の展示ケースを両開き扉開閉装置。
【請求項4】
前記ガイド部材のガイドレールの内側壁に摺動シートを添設してなる請求項1〜3何れかに記載の展示ケースの両開き扉開閉装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−246771(P2010−246771A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100304(P2009−100304)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】