層を貫通するナノ構造を形成する方法
デバイスは、基板、その上に存在する層、および前記層を貫通するナノ構造を備え、ナノ構造は、分析される分子が通過可能なナノスケールの通路を規定し、ナノ構造は断面図において、実質的に三角形状を有するようにした。この形状は、ナノ構造の傾斜側壁を規定する結晶ファセットを有するエピタキシャル層の成長によって特に達成する。それは、特に表面プラズモン増強透過分光を用いた、分子構造の光学的特性評価のための使用に極めて好適である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層を貫通するナノ構造を形成する方法に関する。本発明はまた、該方法で形成されたデバイスに関する。本発明はさらに、該デバイスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ構造は、マイクロスケールでのその独特な特性のために、長年活気がある。マイクロスケールにおいて、ナノ構造ベースの電気的および光学的デバイスが、生物学、例えば単一分子検出およびDNA鑑定と統合可能である。そのような高い分解能に達するために、ナノ細孔またはナノスリットが常に必要である。
【0003】
ナノ細孔を作成する多数の方法が、電子ビーム(論文: Storm, A. J. et al. Fabrication of solid-state nanopores with single-nanometre precision. Nature Mater.2, 537-540 (2003))、イオン銃(論文: Li, J. et al. Ion-beam sculpting at nanometre length scales. Nature 412, 166-169 (2001))、および他の多くのツールを使用して説明されている。しかしながら、ナノ細孔(nanopore)の大きさおよびアスペクト比は、ナノメートルスケールの現在の技術によって制限されている。さらに、これらのナノ構造は、エッチング技術、即ち電子ビーム、FIBなどによっていつも作成される。
【0004】
いくつかの場合には、ナノ支柱およびナノワイヤを含むナノ構造は、マスク内のパターンを通じた選択領域成長によって達成可能である。いくつかの予備結果が、最近示されている(論文: Xin Wang, et al. APL 89, 233115 (2006), S. Ishizawa, et al Applied Physics Express 1, 015006 (2008), S. Hersee, Nano Lett. 6, 1808 (2006))。しかしながら、極めて高い分解能の電子ビームリソグラフィが適用されている。さらに、ナノ構造の形状は、電子ビームリソグラフィの分解能によって制限されている。
【0005】
国際公開第03/16781号は、DNAのような分子を分析する方法を開示しており、光が1つ以上の開口部を有する薄膜の金属表面に向けられる。入射光は、金属上面にある表面プラズモン(電子密度の揺動)を励起し、このエネルギーは、開口部を通じて反対側の面と結合し、開口部または開口部の周縁から光として放射する。表面プラズモンが開口部出口で表面上に誘起される範囲は制限され、発生した放射光を小さいターゲット領域に制限する。生じたスポット照明は、タンパク質、核酸分子および単細胞のような、小さい物体の特性を分析するのに使用してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、改善した信号対ノイズ比を備えた国際公開第03/016781号に開示されている種類のデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様において、基板、その上に存在する層、および前記層を貫通するナノ構造を備えるデバイスが提供され、ナノ構造は、分析される分子が通過可能なナノスケールの通路を規定し、ナノ構造は、断面図において実質的に三角形状を有する。より具体的には、該層は、前記ナノ構造に面する結晶ファセットが設けられたエピタキシャル層である。
【0008】
チャネル制限を規定するナノ構造のかかる閉じ込めは、例えば分子の特性を光学的に検出する応用に極めて好適である。閉じ込めは、分子のための通路を制限し、同時にナノ構造に向けられた電磁放射線に由来する場の増強を生じさせる。結果として、個々の分子の特性、およびDNA分子の断片、例えばそれらの個々の塩基のような、個々の分子の断片の特性であっても検出可能である。
【0009】
断面図において実質的に三角形状を有するナノ構造は、結晶材料のエッチングによって、およびエピタキシャル成長によって取得してもよい。両方の実施形態において、傾斜壁を有する所望の形状は、マスクの土台によって規定してもよい。他の配向を有するマスクのアライメントは、生じるエッチング形状または生じる成長の他の形状を生み出してもよい。
【0010】
エピタキシャル成長、および、特に横方向エピタキシャル過成長(ELOG)は極めて有利であると考えられている。転位をマスクによって阻害可能であり、横方向成長領域は、通常、合体境界(coalescence boundary)以外に転位がないからである。特に、横方向成長の間、完全なファセットが観察可能であり、優れたナノ構造を形成する。ナノ構造の寸法は、成長パラメータによってさらに制御してもよい。
【0011】
パターン化したマスクを使用するエピタキシャル成長は、ナノ構造に加えて特定の形状の形成をさらに可能にする。いくつかの例は、ナノ構造へのアクセスチャネルと、好適な方法を用いた照射の際にプラズモン共鳴を生じさせるリング形状ナノ構造と、通路に制限された体積を有するチャンバとを含む。特に流体、典型的には液体、一般的には溶液、分散系、または他の懸濁液中に存在する分子を使用する場合、流体の流れが適切に導かれる。ファセットに規定されたチャンバは適正であり、チャンバは、傾斜壁を有してもよい。
【0012】
用語「薄膜貫通ナノ構造」は、薄膜を貫通する空間を参照する。該空間は、分析される分子が通過可能なように設計される。薄膜貫通ナノ構造は、分子が通過可能なナノスケールの通路を有する構造であると理解されるべきである。ナノ構造内の分子の運動の自由度は所定の方向、好ましくは薄膜の片面から薄膜のもう一方の面への方向に制限されるように、ナノ構造は好ましくは設計される。好ましくは、運動は、1次元の運動、即ち直線運動に制限されるべきである。ナノ構造は、分子が流れる領域に限定されないが、光がナノ構造内で結合可能なようにより大きくてもよい。それゆえに、薄膜貫通ナノ構造は、これに限定されないが、ナノ細孔、ナノスリット、またはナノチャネルでもよい。
【0013】
第2の態様に従って、本発明のデバイスを備える装置が提供される。かかる装置は、光透過分光器である。それは、放射線を第1面からナノ構造に作用させる電磁放射線源、ナノ構造を通るように分子を移動させるための手段、および第1面とは反対側にある第2面から遠方へナノ構造を出射する電磁放射線を検出するための検出ユニットをさらに備える。電磁放射線のナノ構造の透過は、少なくともナノ構造内の表面プラズモンポラリトンの励起によって生じる。
【0014】
第3の態様において、使用のための方法が提供される。該方法は、基板、基板上のパターン化したエピタキシャル層、エピタキシャル層を貫通するナノ構造、およびナノ構造の下にある基板を貫通する開口部を備えるデバイスを用いる使用のためのものである。エピタキシャル層の一部の傾斜側壁は、前記貫通ナノ構造の幅に面し、該幅を制限する。この方法は、分子がナノ構造を通過するようにするステップと、分子を特性評価するステップとを含む。
【0015】
特定の実施形態において、光が結合して第1面からナノ構造内へ入り、分子は、ナノ構造内の表面プラズモン波の励起を使用して光学的に特性評価される。特性評価は、少なくとも前記励起によって、ナノ構造を通って第2面に透過した電磁放射線をベースとする。
【0016】
本発明の第4の態様において、層を貫通するナノ構造を形成する方法が開示される。該方法は、
基板を用意するステップと、
基板上に、少なくとも1つの開口部を有するパターン化層を形成し、開口部を通じて基板の表面は露出するようにしたステップと、
基板上にエピタキシャル層を、開口部から垂直に、およびパターン化層を横切って横方向に成長させるステップと、
エピタキシャル層が、基板の露出領域上に形成され、エピタキシャル層が、実質的にパターン化層を横切って合体しないように、エピタキシャル層の横方向成長を維持するステップと、
エピタキシャル層がパターン化層の上に存在しない領域で、パターン化層を少なくとも部分的に除去して、ナノ構造をエピタキシャル層内に形成するステップとを含む。
【0017】
説明目的のために、実質的にパターン化層を横切って合体しないエピタキシャル層の一部もまた、エピタキシャル層の一部を形成するナノ構造と呼ぶ。
【0018】
本発明の更なる態様において、ナノ構造を備える他のデバイスが開示される。該デバイスは、基板、その上に存在する圧電層、圧電層と動作連結した電極、前記圧電層を貫通する調整可能なナノ構造を備える。ここで、ナノ構造は、分析される分子が通過可能であるナノスケールの通路を有し、ナノ構造は、圧電層の変形のための電極に電圧を印加することによって調整可能である。
【0019】
電圧を圧電性材料に印加すると、圧電性材料は変形する。電圧を印加すると、電気誘導機械的刺激が圧電層に加わり、圧電層は変形して薄膜貫通ナノ構造の変形を生じさせる。薄膜貫通ナノ構造の変形は、これに限定されないが、薄膜貫通ナノ構造の内径の変化であってもよい。この変化は、薄膜貫通ナノ構造の少なくとも一部の内径の増加または減少であってもよい。したがって、デバイスは、調整可能な薄膜貫通ナノ構造を有してもよい。圧電性材料に所定の電圧を印加することによって、薄膜貫通ナノ構造の内径は、所定の値に設定可能である。
【0020】
調整可能なナノ構造の設置は、様々な目的のための分子分析の意味で適している。特定の分子に適合するようにナノ構造の限界寸法(critical dimension)を変化させることに使用可能である。換言すると、単一デバイスが、さまざまな応用のために調整されてもよい。ナノ構造の寸法を光学的特性が改善するよう調整することで、より巧みに使用できる。表面プラズモン共鳴を使用して、ナノ構造内での光学的特性は、ギャップ共鳴を通じて取得される。共鳴周波数は、ナノ構造の方向に向けられた光または電磁放射線の波長に依存するだろう。蛍光のような特定の分光学的テクニックを用いて、その波長は分子の蛍光挙動、典型的には分子に結合したラベルの蛍光特性と再度結合する。明らかに、共鳴は、ナノ構造の通路における分子またはその断片にさらに依存する。つまり、前記ナノ構造の寸法、および、特に最小の寸法を有する部分(通路)を調整する能力は、より優れた適応性および典型的には改善した信号対ノイズ比として表される改善した測定を生み出してもよい。
【0021】
更なる応用においてであっても、ナノ構造の寸法の調整は、分子の測定におけるステップとして適していてもよい。寸法における変化量は、励起につながるプラズモン構造の変化量をもたらす。したがって、該変化量および測定中の分子または断片へのその影響は、ナノ構造を出射する電磁放射線、特に透過における電磁放射線、および光学的に検出される電磁放射線に最後に表われる。
【0022】
更なる態様に従って、基板、基板上のパターン化したエピタキシャル層、前記エピタキシャル層を貫通するナノ構造、およびナノ構造の下にある基板を貫通する開口部を備え、エピタキシャル層は圧電性材料を備えるようにしたデバイスを用いる使用方法は、貫通ナノ構造の変形のために圧電性材料に所定の電圧を印加するステップを含む。
【0023】
更なる態様に再度従って、装置が、第1主面および第2主面を有し、第1主面と第2主面との間に薄膜貫通ナノ構造を有する薄膜であって、ナノ構造は、薄膜に渡って変化する直径を有し、断面図において実質的に三角形状を有するナノ細孔を備えるようにした薄膜を備える。それは、放射線を第1主面方向のナノ構造に作用させる電磁放射線源と、ナノ構造を通るように分子を移動させるための手段と、第2主面からナノ構造を出射する電磁放射線を検出する検出ユニットとをさらに備え、電磁放射線のナノ構造の透過は、少なくともナノ構造における表面プラズモンポラリトンの励起によって生じる。
【0024】
更なる態様に従って、第1主面および第2主面を有し、第1主面と第2主面との間に薄膜貫通ナノ構造を有する薄膜であって、ナノ構造は、薄膜に渡って変化する直径を有し、断面図において実質的に三角形状を有するナノ細孔を備えるようにした薄膜を用いる使用方法は、
電磁放射線を第1主面方向のナノ構造に向けるステップと、
ナノ構造を通るように分子を移動させるステップと、
第2主面からナノ構造を出射する電磁放射線を検出し、電磁放射線のナノ構造の透過は、少なくともナノ構造における表面プラズモンポラリトンの励起によって生じるようにしたステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】一連の概略断面図における、本発明に係る方法の第1の実施形態を示す。
【図1B】一連の概略断面図における、本発明に係る方法の第1の実施形態を示す。
【図1C】一連の概略断面図における、本発明に係る方法の第1の実施形態を示す。
【図1D】一連の概略断面図における、本発明に係る方法の第1の実施形態を示す。
【図2A】概略断面図における、本発明に係る方法の第2の実施形態を示す。
【図2B】概略断面図における、本発明に係る方法の第2の実施形態を示す。
【図3】本発明に係る方法に使用するマスクの設計を示す。
【図4】概略平面図における、パターン化したエピタキシャル層のいくつかの実施形態を示す。
【図5a】概略平面図における、パターン化したエピタキシャル層の更なる実施形態を示す。
【図5B】概略平面図における、パターン化したエピタキシャル層の更なる実施形態を示す。
【図6】概略平面図における、パターン化したエピタキシャル層の更なる実施形態を示す。
【図7A】概略平面図における、マスク上での成長にとって形成される、マスクエピタキシャル層およびパターン化したエピタキシャル層を示す。
【図7B】概略平面図における、マスク上での成長にとって形成される、マスクエピタキシャル層およびパターン化したエピタキシャル層を示す。
【図8】本発明に係るデバイスの一実施形態における、エピタキシャル層の、SEMイメージングを用いて取得される上面図を示す。
【図9】分子の光学的検出目的で使用するための本発明の装置の概略セットアップを示す。
【図10】他の実施形態におけるデバイスのSEMイメージングを用いて取得される鳥瞰図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、特定の実施形態について特定の図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されない。記載した図面は概略的なものに過ぎず、限定的でない。図面において、いくつかのエレメントの大きさは、説明目的のため、誇張し、およびスケールどおり描いていないことがある。寸法および相対寸法は、本発明の実際の実施化と対応していない。異なる図における同一の参照数字は、同一および類似の部分を参照する。
【0027】
さらに、説明での用語「第1」「第2」「第3」等は、類似のエレメントを区別するための使用しており、必ずしもシーケンスを時間的、空間的に、序列で、または他のどの様式で表したものでもない。こうして用いた用語は、好適な状況下で交換可能であり、本発明の実施形態は、ここで説明したり図示したものとは別の順番で動作可能であると理解すべきである。
【0028】
さらに、説明での用語「上(top)」、「下(bottom)」、「の上に(over)」、「の下に(under)」等は、説明目的で使用しており、必ずしも相対的な位置を記述するためのものでない。こうして用いた用語は、好適な状況下で交換可能であって、ここで説明した実施形態がここで説明または図示した以外の他の向きで動作可能であると理解すべきである。
【0029】
用語「備える、含む(comprising)」は、それ以降に列挙された手段に限定されるものと解釈すべきでなく、他のエレメントまたはステップを除外していない。記述した特徴、整数、ステップまたはコンポーネントの存在を、参照したように特定するように解釈する必要があるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップまたはコンポーネント、あるいはこれらのグループの存在または追加を除外していない。したがって、「手段A、Bを備えるデバイス」という表現の範囲は、コンポーネントA、Bだけからなるデバイスに限定すべきでない。本発明に関して、デバイスの関連したコンポーネントだけがA、Bであることを意味する。
【0030】
本発明は、その態様の一つに従って、分子の光学的検出方法に関する。要するに、該方法は、分子がナノ構造を通過するようにするステップと、分子を個々に特性評価するステップとを含む。ここでナノ構造は、より具体的にはナノスケールの通路であり、分析する分子が該通路を通過可能である。特に、特性評価は、個々の分子がナノ構造を通過する間に生じる。好都合な実施形態において、この特性評価は光学的に実行される。該特性評価を光学的に実行する一つの好都合な方法は、ナノ構造内に一分子が存在する間の、ナノ構造を透過した放射線の検出を含む。
【0031】
かかる透過は、特に表面プラズモンポラリトンの励起を通じて達成してもよい。さらに、貫通ナノ構造を通じた光の透過および再放射があってもよい。表面プラズモンは、ナノ構造に作用する自由空間電磁放射線に関する。この放射線は、ナノ構造において表面プラズモンポラリトンに変換される。ナノ構造におけるダイポール励起は、放射的に減衰し、増強透過を生じる。ゆえに、電磁放射線のナノ構造の透過(または増強透過)は、少なくともナノ構造における表面プラズモンポラリトンの励起によって生じる。
【0032】
本発明に従って、ナノ構造は、基板および基板上のパターン化したエピタキシャル層を備えるデバイス内に規定される。ここで、該ナノ構造は、エピタキシャル層を貫通する。開口部が、ナノ構造の下にある基板に及ぶ。エピタキシャル層の一部の傾斜側壁は、前記貫通ナノ構造の幅に面し、該幅を制限する。
【0033】
傾斜側壁を有し、エピタキシャル層を貫通するナノ構造の使用によって、検出した光信号の信号対ノイズ比が高くなることが観察されている。ナノ構造の傾斜側壁は、特に横方向エピタキシャル過成長を使用してエピタキシャル層を成長させる場合、エピタキシャル層の結晶ファセットに規定されてもよい。これらの結晶ファセットは、実質的に完全結晶であり、ナノ構造の寸法を正確に規定する。特に、結晶格子を有するシリコンやサファイアのような典型的な基板材料上で成長可能なエピタキシャル層は、傾斜側壁としてレンズ14および機能するように適切に方向付けられた結晶ファセットを用いて取得してもよい。好適な材料は、例えばIII−V半導体材料である。傾斜側壁の実質的に完全な形状に起因して、検出した光信号におけるノイズが減少する。結晶ファセットは、1以上の層でさらに被覆してもよい。該層は、誘電体層、接着層、導電体層、ナノ粒子を備える層、またはラマン分光のような特定の形態の分子分光を最大限利用するために好ましい同様の層を備えてもよい。
【0034】
さらに、傾斜方向は、同時に分析される、限られた数の分子のための通路を取得することに極めて好適である。好ましくは、ナノ構造は、ナノ構造を通過して同時に分析される分子の数が10個またはそれ以下、より好ましくは、5個またはそれ以下、そして最も好ましいのは1個または2個のみであるように設計される。さらに、傾斜側壁を有する形状は、最小の直径を有する通路が、制限体積内に設置されるようにする。この制限体積は、均一の直径を有する細孔を使用する場合よりも明らかに制限される。これもまた、検出信号の信号対ノイズ比の改善を増加させる。
【0035】
パターン化したエピタキシャル層は、第1主面および第2主面を有する薄膜の一例である。傾斜側壁を有するナノ構造は、薄膜に渡って変化する半径を有するナノ細孔であってもよいし、該ナノ細孔を備えてもよい。それゆえに、透過放射線の検出の実施形態における方法を、次のステップを含む方法のように適切に表現してもよい。
電磁放射線を第1主面方向のナノ構造へ方向付けるステップと、
ナノ構造を通るように分子を移動させるステップと、
第2主面からナノ構造を出射する電磁放射線を検出し、電磁放射線のナノ構造の透過は、少なくともナノ構造における表面プラズモンポラリトンの励起によって生じるようにしたステップ。
【0036】
一実施形態において、先の実施形態のいずれかで述べた方法が開示されており、その中でナノ構造は、ナノ構造を通過するサンプル材料の通路を、一度に単一分子に制限するように構成されている。
【0037】
一実施形態において、先の実施形態のいずれかで述べた方法が開示されており、その中で単一分子は、二本鎖の核酸分子であってもよい。他の実施形態において、単一分子は、一本鎖の核酸分子であってもよい。他の実施形態において、単一分子は、ポリペプチド分子であってもよい。他の実施形態において、単一分子は、単一リボソームでもよい。他の実施形態において、単一分子は、ウイルス粒子でもよい。
【0038】
更なる実施形態において、放射線の検出は、分子分光、そしてより具体的には、ラマン分光、分子蛍光分光または表面増強赤外吸収分光によって生じる。本発明のある実施形態は、ナノ粒子の使用を含み、ヌクレオチドから取得されるラマン信号を増強する。表面増強ラマン分光(SERS)、表面増強共鳴ラマン分光(SERRS)、および/またはコヒーレント反ストークスラマン分光(CARS)の信号を提供可能な任意のナノ粒子、例えばAg、Au、Cu、Al、Ni、Pt、Pd、特に貴金属が使用されるが、ナノ粒子は、銀または金のナノ粒子でもよい。粒子とラベルに対する有益なリファレンスが、論文(K. Kneipp, M. Moskovits, H. Kneipp (Eds.): Surface-Enhanced Raman Scattering - Physics and Applications, Topics Appl. Phys. 103, 1-18 (2006))である。直径が1nm〜2nmの間のナノ粒子を使用してもよい。平均直径10〜50nm、50〜100nmまたは約100nmが、特定の応用のために考慮される。任意の形状のナノ粒子、または一様でない形状のナノ粒子を使用してもよいが、ナノ粒子は、近似的に球形であってもよい。
【0039】
入射放射線の回集される割合を増加させ、貫通ナノ構造内で、より強い場の強度を達成するために、デバイスの放射線入口側にアンテナ構造が付加可能である。放射線放出側でアンテナを使用して、自由空間伝搬放射線に変換される放射線部分を増加させ、および/または放出ビームを成形することが可能である。
【0040】
プラズモンナノアンテナは、光学活性分子の振る舞いに、様々な方法で影響を与えることができる。第1に、電磁放射線をナノ体積に集光することに起因して、分子をより効率的に励起可能である。第2に、プラズモン共鳴は、局所電磁モード密度に摂動を付与し、局所ダイポールエミッタの減衰速度を修正する。かかるナノアンテナは、ラマン分光、分子蛍光または表面増強赤外吸収分光が使用される場合に特に好適である。
【0041】
例えばラマン分光の場合、この二重効果は、局所電場におけるラマン散乱強度の周知のE4依存につながる。それは、光学的励起を使用する振動遷移の探査をさらに可能にする。さらなる増強が、共鳴ラマン(ターゲット分子の電子遷移を用いた共鳴における照明)、またはコヒーレント反ストークスラマン散乱(CARS)(非線形の、4波混合プロセス)を使用して達成可能である。ラマン分光は、より大きい分子、例えばDNA分子の断片を検出することに特に好適である。
【0042】
分子蛍光の実施形態においては、ナノ構造への場の閉じ込めによる場の増幅と、ナノ構造を出射可能な放射線との間に基本的なトレードオフの関係があるが、ラマンの場合はない。細孔の形状は、特に分解能に関連し、蛍光に寄与する分子の数を制限する。放出側に位置するナノアンテナもまた、蛍光から生じた放射線のより効率的な外部結合(outcoupling)をもたらす。
【0043】
表面増強赤外吸収分光の実施形態において、赤外放射線は、ナノ構造と直接結合する。アンテナには、蛍光またはラマンの場合におけるピッチより大きい相互ピッチを有する構造が設けられる。この放射線も、励起によってナノ構造を透過した放射線に変換される。
【0044】
図9は、本発明の実施形態に係る装置の概略図を示す。(図面は、限定的でなく、スケールどおり描いていない。図面のいくつかのコンポーネントは常に要求されているとは限らない。)2つのチャンバ2、4は、流体貯留層として機能し、薄膜5によって分離している。薄膜5において、ナノ細孔6のような薄膜貫通ナノ構造が加工されている。核酸を有するような直鎖状分子、DNA、RNA、一本鎖、二本鎖、または三本鎖、およびそれらの化学修飾、DNA螺旋が、任意の好適な駆動力、例えば電気泳動によって、固体のナノ細孔6を通って移動する。この目的のために、少なくとも1つの電極3、5が、各貯留層2、4にそれぞれ据えつけられ、電圧が、(好ましくはフィードバック結合した)電圧レギュレータ10を用いて供給される。装置は、光源8(例えばLED、レーザー白熱灯、または他の任意のタイプの光源が可能である。)のような電磁放射線源と、任意にレンズシステム13とをさらに備える。光源は、上側の貯留層内に配置してもよく、または上側の貯留層の外側に配置し、窓部を通じてナノ細孔6を照射してもよい。いくつかの例(例えばCARS分光)において、1個より多い光源が使用される。光は、上部、即ち上側の貯留層2から、下側の貯留層4へ供給される。図1の装置では、直交する光励起が想定されるが、細孔6での他の入射角も選択可能である。光は、ナノ細孔6の内部の分子と相互作用するが、この相互作用は、生体分子分析の基礎である。したがって、ナノ細孔は、光閉じ込めでもよい。(反射光だけでなく)ナノ細孔6内を通過する透過光のような電磁放射線が測定に使用されるという事実は、本発明にとって重要である。下側の貯留層において、光検出器12、および透過した光を回集するレンズシステム14のような光捕集システムが据えつけられる。検出器12は、下側の貯留層の外側に設置してもよく、下側の貯留層の窓部を通じてナノ細孔6を観察してもよい。検出器12の出力は、前置増幅器のような増幅器7に供給されてもよく、増幅器の出力は、読み出し電子回路に接続してもよい。読み出し電子回路は、計算ユニット9を備えてもよい。
【0045】
薄膜貫通ナノ構造は、分子が通過可能なナノスケールの通路を有する構造であると理解するべきである。ナノ構造は、該ナノ構造内の分子運動の自由度が、予め規定した方向、好ましくは薄膜の一方から薄膜の他方へ向かう方向に制限されるように好ましくは設計される。好ましくは、運動は、1次元の運動、即ち直線運動に限定するべきである。細孔は、円形、球形、長方形でもよく、またはいずれの形状をとることも可能であり、薄膜の厚さに渡って変化する直径を有することも可能である。細孔は、分子が通過する領域に限定されず、光がナノ構造内で結合可能であるように、より大きくてもよい。それゆえに、薄膜貫通ナノ構造は、ナノ細孔、ナノスリット、またはナノチャネルでもよい。
【0046】
流体チャネルおよび分子のための通路以外に、ナノ細孔6のような薄膜貫通ナノ構造は、光透過のためのチャネルとして機能する。サブ波長ホールを通じた光透過を達成するために、表面プラズモンポラリトンの特性が使用される。貫通ナノ構造を通る電磁放射線の
遷移は、最大3つの効果、即ち、表面プラズモン、光の透過、および再放射の組み合わせである。表面プラズモンは、結合した細孔/中空システム内で表面プラズモンポラリトンに変換される自由空間電磁放射線(作用する放射線)に関する。細孔におけるダイポール励起は放射性減衰し、増強透過を生じる。よって、電磁放射線のナノ構造の透過(または増強透過)は、少なくともナノ構造での表面プラズモンポラリトンの励起によって生じる。
【0047】
さらに、上部にある薄膜をナノ構造化して光捕集プロセスを最大化し、裏側をナノ構造化して再放射プロセスを最大化することによって、透過率が改善し、および/または、さらに最大化できる。この光チャネルを通じた光の透過は、2つの原理、即ち、チャネル内の伝搬モード導波経由、またはチャネルを通って出射側のモードと結合するエバネセント非伝搬モード経由をベースとして生じうる。
【0048】
好ましくは、傾斜側壁を有するナノ構造は、例えば電磁ホットスポットを作成するために作成される。ホットスポットは、光学的相互作用が最も強く、構造的情報または化学的情報が取得される場所である。それは、既在のレンズ構造またはフォトニック部品を用いて達成可能な領域より小さい検出領域を提供する。場閉じ込め構造は、ホットスポットにおいて、ギャップモード共鳴をベースとする局在化へと導くプラズモン場の閉じ込めを提供する。結果として、電磁場は、ホットスポットに集中する。それとともに、ホットスポットは、効率的に光信号を増幅する。電磁場は、電磁放射線と存在する物質との相互作用により生じる。場の強度を増強するための手段、およびホットスポットを作成するための手段は、プラズモン伝搬金属構造、特にナノアンテナ、および内部でキャビティ効果が生じ、特に変化する直径を有するナノ構造を含む。後者の場合、ナノ構造は、好ましくは内径が最小である位置でホットスポットが存在するように設計される。しかしながら、制限体積内で共鳴を生じさせるナノ構造の代替の形状も、排除されない。
【0049】
アンテナ構造は、光の入射側に追加可能であり、回集される入射光の割合を増加させ、ナノ細孔6において、より強い場の強度を達成する。光の出射側では、アンテナを使用して、自由空間伝搬光に変換される光部分を増加させること、および/または放出ビームを形成することが可能である。薄膜を出射する光の放射パターンは、設計を通じて制御可能である。例えばダイポール放射パターンが達成可能であり、または、より高機能の実装例において、出射側にアンテナ構造を設けて、光を案内できる。この特徴は、信号対ノイズを改善し、さらには背景信号を減少させるために重要である。下側の貯留層における回集システムは、ナノ開口部から放射する光を回集するように最適化でき、指向性の出力信号が、より良好な効率で検出可能であり、より優れた信号対ノイズが得られる。さらに、不要な光回集が抑制される。これは、図1の例において、レンズ14および共役面内に設置されたピンホール16を用いて達成可能である。アンテナ構造の例は、回折格子および一連の金属ストライプである。金属ストライプは、ナノ構造の入口として機能するスリットに平行な方向に好適に配向される。しかしながら、金属ストライプは、代替として、ナノ構造によって規定される中央部周りの放射パターンで配向可能である。
【0050】
さらなる実施形態において、アンテナは、その非線形特性を使用して低エネルギー電磁放射線を閉じ込めることに使用可能である。場の閉じ込めの範囲を増加させるために、非線形効果がより重要になる。これらの効果は、波動混合を含み、意図したエネルギーを有する局所的電磁波が励起可能であることを意味する。波動混合は、第2高調波発生、和周波発生、差周波発生(これらすべては3波混合である)、および4波混合を含む。例えば差周波発生を使用して、局所的低エネルギー電磁波が励起可能である。グートヤー・ルーザー(Gutjahr-Loser)らは、高エネルギー放射線(THz)を低エネルギー放射線(GHz)に変換するために走査電子トンネル顕微鏡の非線形特性を用い、THz光放射を使用してフェリ磁性材料内で局所的フェリ磁性共鳴を励起することに成功した。同様に、本発明の態様に従って、プラズモンナノアンテナを使用して、磁気共鳴が局所(ナノ)スケールで励起可能である。これにより、強磁性共鳴(FMR)、電子スピン共鳴(ESR)、および核磁気共鳴(NMR)の局所的励起が可能になる。その化学選択性に起因して、特にNMRが魅力的である。通常、NMRは、磁場を局所化する困難に起因して、マクロスケールのサンプルに使用される。
【0051】
本発明の他の態様に従って、基板、その上に存在する層、および前記層を貫通するナノ構造を備えるデバイスが設けられ、ナノ構造は、分析される分子が通過可能なナノスケールの通路を規定し、ナノ構造は、断面図において実質的に三角形状を有する。
【0052】
発明者達は、光学的分析、生体分子、および半導体プロセスの領域からの進んだノウハウを結合し、光学的検出の改善した信号対ノイズ比は、基板上で成長したエピタキシャル層の成長パラメータを利用することで達成可能である、という驚くべき特性を有するデバイスに最終的に至っている。
【0053】
ある実施形態において、ナノ構造は3次元構造であり、例えば、それに限定されないが、細孔、空洞、またはチャネルである。形状は、円形、三角形、正方形(quadratic)、楕円形、またはスリットでもよい。細孔は、円形、球形、長方形でもよく、いずれの形状をとることも可能であり、薄膜の厚さに渡って変化する直径を有することも可能である。ナノ構造という用語は、(2次元に相当する)ナノスリットまたはナノチャネルを含むよう広く解釈するべきである。特定の実施形態において、分子が例えばスリットを横切る距離を通過するか、それとも空洞の直径を通過するかを決定する寸法は、1μmより小さく、100nmより小さく、50nmより小さく、好ましくは10nmより小さく、例えば5nmより小さく、2nmより小さく、例えば1nmである必要がある。
【0054】
最も好適には、断面図において実質的に三角形状を有するナノ構造には、ナノ構造の傾斜側壁を規定する選択的側面を有するエピタキシャル層を実装する。エピタキシャル層を使用することは、ナノ構造に正確な寸法、および極めて少数の転位を提供する。さらに、ナノ構造は、半導体技術に従って達成可能である。一実施形態は、ウェットエッチングである。これは、シリコンベースの材料に好適である。他の実施形態は、横方向エピタキシャル過成長である。これは、III−V半導体材料、より具体的にはIII族の窒化物材料に特に好適である。横方向エピタキシャル過成長は、基板上に結晶ファセットを生じる。
【0055】
基板は特に、III族窒化物デバイスのエピタキシャル成長を可能にする基板である。基板は、Si、SiC、サファイア、AlN、GaN、AlGaN、LiNbO3、ZnO、MgOまたは多孔質のSiでもよい。基板は、上述した層の組み合わせによって形成してもよい。代替の実施形態において、基板は、先の実施形態において述べたように、III族の窒化物層によって被覆される基板でもよい。好ましい実施形態において、基板はAlGaNで被覆されるシリコン基板でもよい。
【0056】
本発明の特定の実施形態において、エピタキシャル層は、圧電性材料を含む層(圧電層とも呼ばれる)である。圧電性材料は、圧電効果を示す材料である。圧電性材料は、III族窒化物材料である。圧電性材料はまた、ベルリナイト(AlPO4)、甘蔗糖、石英、ロシェル塩、トパーズ、トルマリン族鉱石、オルトリン酸ガリウム(GaPO4)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、ジルコンチタン酸鉛(Pb[ZrxTi1−x]O3 0<x<1)、より一般的に知られているPZT、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、タングステン酸ナトリウム(Na2WO3)、Ba2NaNb5O5、Pb2KNb5O15、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)、およびビスマスフェライト(BiFeO3)から成るグループから選択してもよい。
【0057】
好適には、圧電層と動作連結した少なくとも1つの電極が存在する。該電極は、圧電層上に電圧を印加するためのものである。該電極は、圧電性材料上に電極を印加するためのものであり、該電極は、圧電性材料を変形させ、それゆえに圧電層を貫通するナノ構造を変形させる。ナノ構造の寸法は、調整可能である。電圧を圧電性材料に印加する場合、圧電性材料は変形する。電圧が印加される場合、電気的に誘導された機械的刺激が圧電層に加わり、薄膜貫通ナノ構造の変形を生じうる。薄膜貫通ナノ構造の変形は、これに限定されないが、薄膜貫通ナノ構造の内径の変化でもよい。その変化は、少なくとも薄膜貫通ナノ構造の一部の内径の増加または減少でもよい。したがって、該デバイスは、調整可能な薄膜貫通ナノ構造を有してもよい。所定の電圧を圧電性材料に印加することによって、薄膜貫通ナノ構造の内径が、所定の値に設定可能である。
【0058】
より好適には、第1電極および第2電極が、圧電層の反対側に存在してもよい。印加される場は、圧電層を通る平面に垂直な方向に印加される。特定の電極設計は、圧電層を通る平面に実質的に平行な方向への圧電層の変形を刺激するように適用してもよい。これに関する例が、国際公開第2005/064634号によって知られている。圧電層は、ナノ構造の反対側に配置される、独立した部分に適切に分割される。ナノ構造の両側の部分に、変形するように電極が設けられることは必要ではない。即ち、圧電層が、ナノ構造の第1面に第1部分を備え、第1面とは反対側のナノ構造の第2面に第2部分を備える場合、少なくとも1つの電極が、第1面上に存在してもよく(好適には、圧電層を挟持する1組の電極のように)、一方、圧電層の第2部分は変形可能にはしない。即ち、第2部分には電極がない。
【0059】
好適な実装例において、圧電層はバッファ層の上に存在する。バッファ層は、構造的に圧電層と類似または同一の材料で適切に構成される。バッファ層の上部に下電極が適切に設けられる。更なる実装例において、圧電層は、少なくとも部分的に中空部を横方向に突出する。中空部の側壁は、バッファ層によって規定してもよい。この実装例は、所望の方向での圧電層の変形を大きくする。
【0060】
ナノ構造を調整するように機能する圧電層の特徴は、変化する直径を有しないナノ構造と組み合わせても有益であろう。本発明の他の態様に従って、基板、その上に存在する圧電層、圧電層と動作連結した電極を備えるデバイスが設けられる。該デバイスは、前記圧電層を貫通する調整可能なナノ構造をさらに備え、ナノ構造は、分析される分子が通過可能であるナノスケールの通路を有し、ナノ構造は、圧電層の変形のための電極に電圧を印加することによって調整可能である。
【0061】
本発明に係るデバイスは、特定の方法で基板上にエピタキシャル層を成長させることによって最も適切に製造される。好適には、特にプロセスの見地から、基板は半導体基板である。半導体材料、特にIII−V材料、およびより好ましくはIII族窒化物タイプの材料を含むエピタキシャル層を用いて良好な結果が得られる。最も好適には、それ自体横方向エピタキシャル過成長(ELO、ELOG)として知られるテクニックが使用される。平松は、ELOテクニックを詳細に論文(J.Phys.Condens.Matter, 13 (2001), 6961-6975)において説明しており、この開示は参照によりここに組み込まれる。一実施形態に従って、ELOテクニックは、分子を特性評価するという新領域を開拓する、より改善したデバイスを取得するために上手に使用される。本発明に従って、前記エピタキシャル層を貫通するナノ構造が形成される。他の実施形態において、パターニング層は、基板をパターニングすることによって形成可能であるが、パターン化層は、AlInGaN、AlInGaP、AlInGaNP、AlInGaAs、SiC、Si、SiGe、Ge、アンチモン化物、(Mg)ZnO、またはZnSe(Te)でもよい。
【0062】
図1A−図1Dは、本発明に係るデバイスの製造の4つの段階を概略断面図で示している。明確化のため、図1A−図1Dの断面図は、傾斜側壁を示していないように観察される。以降明らかになるように、かかる傾斜側壁は、成長パラメータを制御すること、および/またはエピタキシャル層のパターン化した成長に使用されるマスクの適正な境界設定によって取得してもよい。
【0063】
図1Aは、第1段階を示しており、基板11が用意される。該基板は、キャリア層およびバッファ層12を備える。バッファ層は、特にIII−V族材料、より好適にはIII族窒化物材料の層である。バッファ層に適した材料の例は、AlGaNであるが、AlおよびGaの相対含量は変化してもよい。AlN層から開始し、Ga含有率を段階的にまたは徐々に増加させるのが好都合であると考えられている。バッファ層は、典型的には、MOCVD炉内で、核生成層の上部に成長する。キャリア層は、半導体基板を好適に備える。半導体基板のいくつかの選択肢が、III族窒化物材料の成長のために試みられている。現在使用されている典型的な材料は、サファイア、シリコン(001)およびシリコン(111)を含み、後者は、特に埋め込み絶縁層およびハンドリングウエハを有するシリコン・オン・インシュレータ基板のシリコン(111)上層形態である。
【0064】
図1Bは、製造の第2段階を示している。この段階で、パターン化層13は、バッファ層12の上に堆積する。マスク層は、シリコン窒化物またはシリコン酸化物のような誘電体層を好適に備えるが、金属のような他の材料が排除されるわけではない。パターン化層13は、開口部14およびマスク15を規定するためにパターン化される。パターン化層13の特定の設計が、以下で説明される。
【0065】
図1Cは、製造の第3段階を示している。この段階で、エピタキシャル層16が成長している。成長は、開口部14から垂直に生じて、開口部14から始まり、マスク15を横切って横方向に生じる。過成長ステップは、横方向成長対垂直成長の比が1/20〜20の範囲にあるように選択される。III−V族材料、より具体的にはSiO2およびSixNyの上にあるIII族窒化物層の選択度に起因して、GaNが、露出した窓領域を通じて成長可能である。III−V族層は、GaN、AlGaN、AlN、AlInGaN、AlInGaP、AlInGaNP、AlInGaAs、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される。エピタキシャル層は、相互に異なる組成を有する複数の層として設けてもよい。成長プロセスは、層部分の合体が起こる前に終わる。この終了は、終点検出をベースとしている。結果として、ナノ構造17がエピタキシャル層16を貫いて形成される。ナノ構造の設計は、成長温度、成長圧力、マスク15の幅、材料の特定結晶配向に関連したマスク15の配向、エピタキシャル層の材料を含む種々の成長パラメータ、および設計パラメータに依存する。ここでは図示していないが、成長は、ナノ構造17の傾斜側壁、事実上はエピタキシャル層部分16の側面が得られるように規定される。図示していないが、上部保護層が、エピタキシャル層16の上部に好適に付加される。かかる上部保護層が、例えばシリコン窒化物の誘電体層である。上部保護層は、元の場所、即ち同じCVD炉内で成長させてもよく、続いて炉のガスの組成、ならびに可能であれば温度および圧力を変化させることでエピタキシャル層を成長させてもよい。エピタキシャル層または上部保護層の上部で、導電性材料層が堆積してもよい。特に好適な導電性材料の例はPtやAuのような貴金属である。しかしながら、TiN、TiWN、TiW、TaN、Ta、Wのような導電性材料、それらの組み合わせまたは合金は有益である。かかる層は、エピタキシャル層および/または上部保護層と、貴金属との間の接着層として使用される。アンテナ構造は、例えば導電性材料をパターニングすることによって導電性材料内に規定されてもよい。
【0066】
導電性材料を設ける際、ナノ構造17は犠牲層の堆積によって一時的に密閉される。有利な犠牲層の一種は、加熱によってガス成分に分解可能な材料を備える。ここで更なる情報が、国際公開第2007/054867号に見られる。しかしながら、ナノ構造を一次的に密閉することが必要であると考えられない。その代わりに、ナノ構造17の側壁は、導電性材料によって被覆してもよい。かかる被覆は、好適に、例えばCVD、MOCVD、ALDなどによって気相からの導電性材料の堆積によって取得される。ナノ構造17の側壁のこうした被覆は、最も好適には、パターン化層13を取り除いた後に実行される。
【0067】
図1Dは、製造の第4段階を示している。この段階で、パターン化層13は取り除かれ、貫通孔18は基板11を貫いて作られる。パターン化層13の除去は、ウェットエッチングまたはドライエッチングを用いて好適に実行してもよい。パターン化層13を完全に除去することは最も有益であると考えられるが、開口部を、ナノ構造17の位置に対応する位置で、パターン化層内に作成することは除外されない。貫通孔18は、基板11の裏側からのウェットエッチングにより適切に作成される。裏側からの加工は、典型的に、加工における最後のステップの1つである。エピタキシャル層16の上部での、被覆および/または一時的なキャリアの供給が先行してもよい。かかる被覆が、分析される分子を含む流体が提供されるチャンバの囲いとして同時に機能してもよい。ナノ構造の方向に向けられた電磁放射線が該被覆を通過しうるように、光学的に透明な被覆が好ましい。
【0068】
図1Aから図1Dから明らかなように、合体しない層はナノスリットを形成し、横方向構造において、マイクロ流体のためのチャネルとして使用可能である。さらに、基板をナノ細孔またはナノスリット(18参照)の下の領域内で除去する場合、ナノスリットまたはナノ細孔は垂直構造に一体化可能である。基板(図1B参照)を除去するための可能な方法がいくつか存在する。例えば、サファイア基板の場合、レーザーリフトオフを使用してもよい。シリコン基板を使用する場合、KOHでの単純なウェットケミカルエッチング、ドライエッチングまたは粉砕(grinding)などによりシリコンを取り除くことができる。
【0069】
選択エリア成長において、成長方向は、垂直方向または横方向である。横方向成長を促進することによって、ナノ構造の大きさは、リソグラフィ制限の下で調整可能である。さらに、横方向成長の間、完全なファセットが観察可能である。参照される少しのファセット、例えば{11−20}、{11−22}および{1−101}が、GaNの横方向成長において報告されており、成長温度、V/III比、および成長圧力を含む成長パラメータに依存する。成長温度は、500℃〜1200℃の範囲にできる。成長圧力は、10〜1000Torrに調整される。V/III比は、V族の全流量のIII族の全流量に対する比であり、100〜10000の間にできる。これらのファセットは、優れたナノ構造を形成することになる。ナノ構造の例は、ナノ細孔、ナノスリットである。ナノ構造の断面は、成長パラメータによっても制御可能である。
【0070】
図2Aおよび図2Bは、製造の2つの段階を断面図で示す。図2Aは、Si(111)基板、バッファ層、および第1GaN層を備える基板構造を示す。パターン化層13は、その上に設けられ、エピタキシャル層16とともに過成長する。ここで見るように、エピタキシャル層16は、基板平面に対して傾いた角度の傾斜側面を有する各部分に分割される。
【0071】
図2Bは、裏側から基板をエッチングした後のデバイスを示す。パターン化層13は、ここでエッチストップ層として使用される。それはその後除去可能である。
【0072】
ある実施形態において、パターン化層は、表面の一部を露出する開口部のパターンを有する。ナノ構造は所定の位置に形成されるように、開口部のパターンは設計される。パターニング層における開口部の寸法は、10nm〜100μmの間、10nm〜10μmの間、10nm〜1μmの間にある。エピタキシャル層は、5nm〜5μmの間、5nm〜2μmの間、または5nm〜1μmの間の厚さで好適に形成される。厚さがマイクロメータの範囲にあることは、寸法を極小サイズまで減少させること、および光を好適に案内することに適している傾斜側壁を有するために適していると考えられている。
【0073】
図3は、第1実験で使用されるマスクの設計を示す。様々な幅の窓部および様々なマスク材料を有するマスクが用意されている。マスクは、縞状のマスクであり、即ち、パターンは、互いに平行な、いくつかの縞を有する。図3(a)は、マスク層の幅は2μmで、開口部の幅は4μmであるマスクを示す。図3(b)は、マスク層の幅は4μmで、開口部の幅は2μmであるマスクを示す。図3(c)は、マスク層の幅は3μmで、開口部の幅は7μmであるマスクを示す。図3(d)は、マスク層の幅は5μmで、開口部の幅は5μmであるマスクを示す。パターンは、1μmの分解能を有する普通の光学的リソグラフィを使用することによって形成される。リソグラフィの後、サンプルをMOCVD炉に再投入すると、特定の厚さのGaNに成長する。マスク幅の違いに起因して、横方向成長領域は異なる結晶形態を示す。2μmのマスク幅を有する、四区画のうちの一区画において、層は完全に合体している。3μmマスク幅、4μmマスク幅、5μmマスク幅の三区画において、いくつかのナノスリットが形成される。異なる成長条件を規定すること、および/または成長をより早く終わらせることによって、2μm幅のマスクを有するいくつかのナノスリットを取得してもよいことが明確に観察される。これは、しかしながら第1実験の内容の中でなされたものではない。
【0074】
結晶ファセットを取得するために、マスクの延長部を好適な結晶方向に配列してもよい。シリコン(111)基板を使用する場合、縞状マスクは<11−2>方向に平行な方向に配列可能である。形成されたファセットは、{11−20}または{11−22}である。縞は、<1−10>方向に配列可能であり、好ましいファセットは{1−101}である。基板平面との角度は、{11−20}、{11−22}および{1−101}ファセットによって各々異なる。
【0075】
サンプルは、1000度以上の温度で成長させた。成長圧力は100Torrであり、V/III比は、約2000である。縦方向における成長速度は、約40nm/minである。横方向成長速度は、2〜200nm/minの範囲で変化しえるが、ファセットの方向に依存する。成長時間は、1000s〜2000sに調整される。成長時間、成長速度、および成長温度を含む成長パラメータを微調整することで、ナノスリットが、40nm未満の幅を有するよう形成される。この幅は、電子ビームリソグラフィによって達成する幅よりも優れている。
【0076】
マスクの境界設定に加えて、側壁の形状は、成長パラメータ、即ち成長温度および成長圧力を用いて制御してもよい。GaNの横方向エピタキシャル過成長の体系的実験において、4つの異なる領域が存在することがわかった。925℃未満の成長温度を有する領域Iにおいて、結晶形態は貧弱である。上部および傾斜した{1−101}面において、大きい窪み(pit)がある。領域IIは、40Tоrrの圧力下で925℃から950℃の成長温度を有する領域として、および500Tоrrの圧力下で、最大1000℃の成長温度を有する領域として規定される。この領域IIにおいて、側壁は領域Iのような{11−22}面から成り、一方{0001}面は滑らかになる。領域IIIは、40Tоrrの圧力下で950℃〜1010℃の成長温度を有する領域として、および500Tоrrの圧力下で、1000℃〜1060℃の成長温度を有する領域として規定される。この領域において、側壁は傾斜{11−22}側面から垂直{11−20}側面へと変化する。領域IIIの上に位置する領域IVにおいて、{0001}面は粗くなる。明らかに、正確な成長条件は、マスク方向、およびエピタキシャル層の材料にもさらに依存する。
【0077】
図7Aおよび図7Bは、マスクの概略平面図、および得られる結晶ファセットを有するエピタキシャル層である。図7Aにおいて、GaNは下にある基板、例えばバッファ層12を参照し、一方SiO2またはSixNyは、マスク、例えばパターン化層13を参照する。図7Bにおいて、GaNはエピタキシャル層16を参照し、SiO2またはSixNyは、パターン化層13を依然参照する。
【0078】
図7Aは、スリット形状の開口部を除いて基板を大きく覆うマスク13を示す。互いに平行な2つのスリット列が示され、スリット列の各々が、マスク13の壁形状部分によって相互に分離した第1スリットおよび第2スリットを備える。ナノ構造17は、実際に、この壁形状部分で形成されるであろう。その寸法は、したがって、ナノ構造を規定するための関連パラメータである。
【0079】
図7Bは、得られるエピタキシャル層16を示す。上面図から明らかであるが、少なくとも2つの結晶ファセットが形成される。該形状は、スリット形状のナノ構造と、隣接し、加えて制限される体積とを規定する。第1列および第2列のエピタキシャル層の一部は、相互に一定距離隔てる。この距離をアクセスチャネルとして利用してもよい。その形状は、図7Aに示すマスクの設計を調整することによってさらに利用してもよい。
【0080】
図8は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって作成した画像中の、エピタキシャル層の一部の上面図である。上面図はまた、エピタキシャル層の第1部分と第2部分との間のナノ構造を示す。該画像は、図7Bの一部に事実上対応する。この画像から明らかなことは、ナノ構造17には、結晶ファセットによって規定される傾斜側壁が設けられる。この方法において、ナノ構造の幅は、54nmから、最大1.27μmに変化する。ここで、エピタキシャル層16は、異なる配向を有する結晶ファセットを有する。この方法において、スリット形状のナノ構造に隣接した制限体積が生成される。これらの制限体積は、乱流などを生じさせないで、ナノ構造に流体を供給することに極めて好適である。
【0081】
図10は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって作成した画像中の、エピタキシャル層の一部の鳥瞰図である。ここで示されるデバイスは、シリコンのエピタキシャル層を備える。該デバイスは、断面図において三角形状を有するナノ構造を備える。ここで、エピタキシャル層の側面は、ナノ構造の傾斜側壁である。このナノ構造は、エピタキシャル層のウェットエッチングによって作成してもよい。この図でさらに示すように、ナノ構造は金(Au)層で被覆される。
【0082】
図4、図5および図6は、パターン化したエピタキシャル層の更なる実施形態の概略平面図である。ここで、灰色領域は、エピタキシャル層を規定し、一方、開口部は、ナノ構造を規定する。図4Aの設計は、6つのナノ構造を効率的に提供する。光は、これらの各スリットに個々に集光され、その結果、6つの測定を同時に実行してもよい。検出サイトの数は、この方法でさらに拡大してもよいことは明らかである。図5Bの設計は、リング形状ナノ構造である。かかるリング形状、特に高度な内部対称性を有するリング形状は、プラズモン共鳴装置として有効である。換言すると、この構造は、ナノ構造内の表面プラズモンの共鳴を増進する。それゆえに、更なる改善した信号対ノイズ比を生じることが期待される。図6の設計は、アクセスチャネルとナノ構造との組み合わせを示す。該設計は、異なる幅を有するナノ構造をさらに含む。明らかなことだが、最小の幅を有するナノ構造は、個々の分子またはその断片を検出することに極めて有益だと考えられている。
【図1A−1C】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層を貫通するナノ構造を形成する方法に関する。本発明はまた、該方法で形成されたデバイスに関する。本発明はさらに、該デバイスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ構造は、マイクロスケールでのその独特な特性のために、長年活気がある。マイクロスケールにおいて、ナノ構造ベースの電気的および光学的デバイスが、生物学、例えば単一分子検出およびDNA鑑定と統合可能である。そのような高い分解能に達するために、ナノ細孔またはナノスリットが常に必要である。
【0003】
ナノ細孔を作成する多数の方法が、電子ビーム(論文: Storm, A. J. et al. Fabrication of solid-state nanopores with single-nanometre precision. Nature Mater.2, 537-540 (2003))、イオン銃(論文: Li, J. et al. Ion-beam sculpting at nanometre length scales. Nature 412, 166-169 (2001))、および他の多くのツールを使用して説明されている。しかしながら、ナノ細孔(nanopore)の大きさおよびアスペクト比は、ナノメートルスケールの現在の技術によって制限されている。さらに、これらのナノ構造は、エッチング技術、即ち電子ビーム、FIBなどによっていつも作成される。
【0004】
いくつかの場合には、ナノ支柱およびナノワイヤを含むナノ構造は、マスク内のパターンを通じた選択領域成長によって達成可能である。いくつかの予備結果が、最近示されている(論文: Xin Wang, et al. APL 89, 233115 (2006), S. Ishizawa, et al Applied Physics Express 1, 015006 (2008), S. Hersee, Nano Lett. 6, 1808 (2006))。しかしながら、極めて高い分解能の電子ビームリソグラフィが適用されている。さらに、ナノ構造の形状は、電子ビームリソグラフィの分解能によって制限されている。
【0005】
国際公開第03/16781号は、DNAのような分子を分析する方法を開示しており、光が1つ以上の開口部を有する薄膜の金属表面に向けられる。入射光は、金属上面にある表面プラズモン(電子密度の揺動)を励起し、このエネルギーは、開口部を通じて反対側の面と結合し、開口部または開口部の周縁から光として放射する。表面プラズモンが開口部出口で表面上に誘起される範囲は制限され、発生した放射光を小さいターゲット領域に制限する。生じたスポット照明は、タンパク質、核酸分子および単細胞のような、小さい物体の特性を分析するのに使用してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、改善した信号対ノイズ比を備えた国際公開第03/016781号に開示されている種類のデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様において、基板、その上に存在する層、および前記層を貫通するナノ構造を備えるデバイスが提供され、ナノ構造は、分析される分子が通過可能なナノスケールの通路を規定し、ナノ構造は、断面図において実質的に三角形状を有する。より具体的には、該層は、前記ナノ構造に面する結晶ファセットが設けられたエピタキシャル層である。
【0008】
チャネル制限を規定するナノ構造のかかる閉じ込めは、例えば分子の特性を光学的に検出する応用に極めて好適である。閉じ込めは、分子のための通路を制限し、同時にナノ構造に向けられた電磁放射線に由来する場の増強を生じさせる。結果として、個々の分子の特性、およびDNA分子の断片、例えばそれらの個々の塩基のような、個々の分子の断片の特性であっても検出可能である。
【0009】
断面図において実質的に三角形状を有するナノ構造は、結晶材料のエッチングによって、およびエピタキシャル成長によって取得してもよい。両方の実施形態において、傾斜壁を有する所望の形状は、マスクの土台によって規定してもよい。他の配向を有するマスクのアライメントは、生じるエッチング形状または生じる成長の他の形状を生み出してもよい。
【0010】
エピタキシャル成長、および、特に横方向エピタキシャル過成長(ELOG)は極めて有利であると考えられている。転位をマスクによって阻害可能であり、横方向成長領域は、通常、合体境界(coalescence boundary)以外に転位がないからである。特に、横方向成長の間、完全なファセットが観察可能であり、優れたナノ構造を形成する。ナノ構造の寸法は、成長パラメータによってさらに制御してもよい。
【0011】
パターン化したマスクを使用するエピタキシャル成長は、ナノ構造に加えて特定の形状の形成をさらに可能にする。いくつかの例は、ナノ構造へのアクセスチャネルと、好適な方法を用いた照射の際にプラズモン共鳴を生じさせるリング形状ナノ構造と、通路に制限された体積を有するチャンバとを含む。特に流体、典型的には液体、一般的には溶液、分散系、または他の懸濁液中に存在する分子を使用する場合、流体の流れが適切に導かれる。ファセットに規定されたチャンバは適正であり、チャンバは、傾斜壁を有してもよい。
【0012】
用語「薄膜貫通ナノ構造」は、薄膜を貫通する空間を参照する。該空間は、分析される分子が通過可能なように設計される。薄膜貫通ナノ構造は、分子が通過可能なナノスケールの通路を有する構造であると理解されるべきである。ナノ構造内の分子の運動の自由度は所定の方向、好ましくは薄膜の片面から薄膜のもう一方の面への方向に制限されるように、ナノ構造は好ましくは設計される。好ましくは、運動は、1次元の運動、即ち直線運動に制限されるべきである。ナノ構造は、分子が流れる領域に限定されないが、光がナノ構造内で結合可能なようにより大きくてもよい。それゆえに、薄膜貫通ナノ構造は、これに限定されないが、ナノ細孔、ナノスリット、またはナノチャネルでもよい。
【0013】
第2の態様に従って、本発明のデバイスを備える装置が提供される。かかる装置は、光透過分光器である。それは、放射線を第1面からナノ構造に作用させる電磁放射線源、ナノ構造を通るように分子を移動させるための手段、および第1面とは反対側にある第2面から遠方へナノ構造を出射する電磁放射線を検出するための検出ユニットをさらに備える。電磁放射線のナノ構造の透過は、少なくともナノ構造内の表面プラズモンポラリトンの励起によって生じる。
【0014】
第3の態様において、使用のための方法が提供される。該方法は、基板、基板上のパターン化したエピタキシャル層、エピタキシャル層を貫通するナノ構造、およびナノ構造の下にある基板を貫通する開口部を備えるデバイスを用いる使用のためのものである。エピタキシャル層の一部の傾斜側壁は、前記貫通ナノ構造の幅に面し、該幅を制限する。この方法は、分子がナノ構造を通過するようにするステップと、分子を特性評価するステップとを含む。
【0015】
特定の実施形態において、光が結合して第1面からナノ構造内へ入り、分子は、ナノ構造内の表面プラズモン波の励起を使用して光学的に特性評価される。特性評価は、少なくとも前記励起によって、ナノ構造を通って第2面に透過した電磁放射線をベースとする。
【0016】
本発明の第4の態様において、層を貫通するナノ構造を形成する方法が開示される。該方法は、
基板を用意するステップと、
基板上に、少なくとも1つの開口部を有するパターン化層を形成し、開口部を通じて基板の表面は露出するようにしたステップと、
基板上にエピタキシャル層を、開口部から垂直に、およびパターン化層を横切って横方向に成長させるステップと、
エピタキシャル層が、基板の露出領域上に形成され、エピタキシャル層が、実質的にパターン化層を横切って合体しないように、エピタキシャル層の横方向成長を維持するステップと、
エピタキシャル層がパターン化層の上に存在しない領域で、パターン化層を少なくとも部分的に除去して、ナノ構造をエピタキシャル層内に形成するステップとを含む。
【0017】
説明目的のために、実質的にパターン化層を横切って合体しないエピタキシャル層の一部もまた、エピタキシャル層の一部を形成するナノ構造と呼ぶ。
【0018】
本発明の更なる態様において、ナノ構造を備える他のデバイスが開示される。該デバイスは、基板、その上に存在する圧電層、圧電層と動作連結した電極、前記圧電層を貫通する調整可能なナノ構造を備える。ここで、ナノ構造は、分析される分子が通過可能であるナノスケールの通路を有し、ナノ構造は、圧電層の変形のための電極に電圧を印加することによって調整可能である。
【0019】
電圧を圧電性材料に印加すると、圧電性材料は変形する。電圧を印加すると、電気誘導機械的刺激が圧電層に加わり、圧電層は変形して薄膜貫通ナノ構造の変形を生じさせる。薄膜貫通ナノ構造の変形は、これに限定されないが、薄膜貫通ナノ構造の内径の変化であってもよい。この変化は、薄膜貫通ナノ構造の少なくとも一部の内径の増加または減少であってもよい。したがって、デバイスは、調整可能な薄膜貫通ナノ構造を有してもよい。圧電性材料に所定の電圧を印加することによって、薄膜貫通ナノ構造の内径は、所定の値に設定可能である。
【0020】
調整可能なナノ構造の設置は、様々な目的のための分子分析の意味で適している。特定の分子に適合するようにナノ構造の限界寸法(critical dimension)を変化させることに使用可能である。換言すると、単一デバイスが、さまざまな応用のために調整されてもよい。ナノ構造の寸法を光学的特性が改善するよう調整することで、より巧みに使用できる。表面プラズモン共鳴を使用して、ナノ構造内での光学的特性は、ギャップ共鳴を通じて取得される。共鳴周波数は、ナノ構造の方向に向けられた光または電磁放射線の波長に依存するだろう。蛍光のような特定の分光学的テクニックを用いて、その波長は分子の蛍光挙動、典型的には分子に結合したラベルの蛍光特性と再度結合する。明らかに、共鳴は、ナノ構造の通路における分子またはその断片にさらに依存する。つまり、前記ナノ構造の寸法、および、特に最小の寸法を有する部分(通路)を調整する能力は、より優れた適応性および典型的には改善した信号対ノイズ比として表される改善した測定を生み出してもよい。
【0021】
更なる応用においてであっても、ナノ構造の寸法の調整は、分子の測定におけるステップとして適していてもよい。寸法における変化量は、励起につながるプラズモン構造の変化量をもたらす。したがって、該変化量および測定中の分子または断片へのその影響は、ナノ構造を出射する電磁放射線、特に透過における電磁放射線、および光学的に検出される電磁放射線に最後に表われる。
【0022】
更なる態様に従って、基板、基板上のパターン化したエピタキシャル層、前記エピタキシャル層を貫通するナノ構造、およびナノ構造の下にある基板を貫通する開口部を備え、エピタキシャル層は圧電性材料を備えるようにしたデバイスを用いる使用方法は、貫通ナノ構造の変形のために圧電性材料に所定の電圧を印加するステップを含む。
【0023】
更なる態様に再度従って、装置が、第1主面および第2主面を有し、第1主面と第2主面との間に薄膜貫通ナノ構造を有する薄膜であって、ナノ構造は、薄膜に渡って変化する直径を有し、断面図において実質的に三角形状を有するナノ細孔を備えるようにした薄膜を備える。それは、放射線を第1主面方向のナノ構造に作用させる電磁放射線源と、ナノ構造を通るように分子を移動させるための手段と、第2主面からナノ構造を出射する電磁放射線を検出する検出ユニットとをさらに備え、電磁放射線のナノ構造の透過は、少なくともナノ構造における表面プラズモンポラリトンの励起によって生じる。
【0024】
更なる態様に従って、第1主面および第2主面を有し、第1主面と第2主面との間に薄膜貫通ナノ構造を有する薄膜であって、ナノ構造は、薄膜に渡って変化する直径を有し、断面図において実質的に三角形状を有するナノ細孔を備えるようにした薄膜を用いる使用方法は、
電磁放射線を第1主面方向のナノ構造に向けるステップと、
ナノ構造を通るように分子を移動させるステップと、
第2主面からナノ構造を出射する電磁放射線を検出し、電磁放射線のナノ構造の透過は、少なくともナノ構造における表面プラズモンポラリトンの励起によって生じるようにしたステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】一連の概略断面図における、本発明に係る方法の第1の実施形態を示す。
【図1B】一連の概略断面図における、本発明に係る方法の第1の実施形態を示す。
【図1C】一連の概略断面図における、本発明に係る方法の第1の実施形態を示す。
【図1D】一連の概略断面図における、本発明に係る方法の第1の実施形態を示す。
【図2A】概略断面図における、本発明に係る方法の第2の実施形態を示す。
【図2B】概略断面図における、本発明に係る方法の第2の実施形態を示す。
【図3】本発明に係る方法に使用するマスクの設計を示す。
【図4】概略平面図における、パターン化したエピタキシャル層のいくつかの実施形態を示す。
【図5a】概略平面図における、パターン化したエピタキシャル層の更なる実施形態を示す。
【図5B】概略平面図における、パターン化したエピタキシャル層の更なる実施形態を示す。
【図6】概略平面図における、パターン化したエピタキシャル層の更なる実施形態を示す。
【図7A】概略平面図における、マスク上での成長にとって形成される、マスクエピタキシャル層およびパターン化したエピタキシャル層を示す。
【図7B】概略平面図における、マスク上での成長にとって形成される、マスクエピタキシャル層およびパターン化したエピタキシャル層を示す。
【図8】本発明に係るデバイスの一実施形態における、エピタキシャル層の、SEMイメージングを用いて取得される上面図を示す。
【図9】分子の光学的検出目的で使用するための本発明の装置の概略セットアップを示す。
【図10】他の実施形態におけるデバイスのSEMイメージングを用いて取得される鳥瞰図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、特定の実施形態について特定の図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されない。記載した図面は概略的なものに過ぎず、限定的でない。図面において、いくつかのエレメントの大きさは、説明目的のため、誇張し、およびスケールどおり描いていないことがある。寸法および相対寸法は、本発明の実際の実施化と対応していない。異なる図における同一の参照数字は、同一および類似の部分を参照する。
【0027】
さらに、説明での用語「第1」「第2」「第3」等は、類似のエレメントを区別するための使用しており、必ずしもシーケンスを時間的、空間的に、序列で、または他のどの様式で表したものでもない。こうして用いた用語は、好適な状況下で交換可能であり、本発明の実施形態は、ここで説明したり図示したものとは別の順番で動作可能であると理解すべきである。
【0028】
さらに、説明での用語「上(top)」、「下(bottom)」、「の上に(over)」、「の下に(under)」等は、説明目的で使用しており、必ずしも相対的な位置を記述するためのものでない。こうして用いた用語は、好適な状況下で交換可能であって、ここで説明した実施形態がここで説明または図示した以外の他の向きで動作可能であると理解すべきである。
【0029】
用語「備える、含む(comprising)」は、それ以降に列挙された手段に限定されるものと解釈すべきでなく、他のエレメントまたはステップを除外していない。記述した特徴、整数、ステップまたはコンポーネントの存在を、参照したように特定するように解釈する必要があるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップまたはコンポーネント、あるいはこれらのグループの存在または追加を除外していない。したがって、「手段A、Bを備えるデバイス」という表現の範囲は、コンポーネントA、Bだけからなるデバイスに限定すべきでない。本発明に関して、デバイスの関連したコンポーネントだけがA、Bであることを意味する。
【0030】
本発明は、その態様の一つに従って、分子の光学的検出方法に関する。要するに、該方法は、分子がナノ構造を通過するようにするステップと、分子を個々に特性評価するステップとを含む。ここでナノ構造は、より具体的にはナノスケールの通路であり、分析する分子が該通路を通過可能である。特に、特性評価は、個々の分子がナノ構造を通過する間に生じる。好都合な実施形態において、この特性評価は光学的に実行される。該特性評価を光学的に実行する一つの好都合な方法は、ナノ構造内に一分子が存在する間の、ナノ構造を透過した放射線の検出を含む。
【0031】
かかる透過は、特に表面プラズモンポラリトンの励起を通じて達成してもよい。さらに、貫通ナノ構造を通じた光の透過および再放射があってもよい。表面プラズモンは、ナノ構造に作用する自由空間電磁放射線に関する。この放射線は、ナノ構造において表面プラズモンポラリトンに変換される。ナノ構造におけるダイポール励起は、放射的に減衰し、増強透過を生じる。ゆえに、電磁放射線のナノ構造の透過(または増強透過)は、少なくともナノ構造における表面プラズモンポラリトンの励起によって生じる。
【0032】
本発明に従って、ナノ構造は、基板および基板上のパターン化したエピタキシャル層を備えるデバイス内に規定される。ここで、該ナノ構造は、エピタキシャル層を貫通する。開口部が、ナノ構造の下にある基板に及ぶ。エピタキシャル層の一部の傾斜側壁は、前記貫通ナノ構造の幅に面し、該幅を制限する。
【0033】
傾斜側壁を有し、エピタキシャル層を貫通するナノ構造の使用によって、検出した光信号の信号対ノイズ比が高くなることが観察されている。ナノ構造の傾斜側壁は、特に横方向エピタキシャル過成長を使用してエピタキシャル層を成長させる場合、エピタキシャル層の結晶ファセットに規定されてもよい。これらの結晶ファセットは、実質的に完全結晶であり、ナノ構造の寸法を正確に規定する。特に、結晶格子を有するシリコンやサファイアのような典型的な基板材料上で成長可能なエピタキシャル層は、傾斜側壁としてレンズ14および機能するように適切に方向付けられた結晶ファセットを用いて取得してもよい。好適な材料は、例えばIII−V半導体材料である。傾斜側壁の実質的に完全な形状に起因して、検出した光信号におけるノイズが減少する。結晶ファセットは、1以上の層でさらに被覆してもよい。該層は、誘電体層、接着層、導電体層、ナノ粒子を備える層、またはラマン分光のような特定の形態の分子分光を最大限利用するために好ましい同様の層を備えてもよい。
【0034】
さらに、傾斜方向は、同時に分析される、限られた数の分子のための通路を取得することに極めて好適である。好ましくは、ナノ構造は、ナノ構造を通過して同時に分析される分子の数が10個またはそれ以下、より好ましくは、5個またはそれ以下、そして最も好ましいのは1個または2個のみであるように設計される。さらに、傾斜側壁を有する形状は、最小の直径を有する通路が、制限体積内に設置されるようにする。この制限体積は、均一の直径を有する細孔を使用する場合よりも明らかに制限される。これもまた、検出信号の信号対ノイズ比の改善を増加させる。
【0035】
パターン化したエピタキシャル層は、第1主面および第2主面を有する薄膜の一例である。傾斜側壁を有するナノ構造は、薄膜に渡って変化する半径を有するナノ細孔であってもよいし、該ナノ細孔を備えてもよい。それゆえに、透過放射線の検出の実施形態における方法を、次のステップを含む方法のように適切に表現してもよい。
電磁放射線を第1主面方向のナノ構造へ方向付けるステップと、
ナノ構造を通るように分子を移動させるステップと、
第2主面からナノ構造を出射する電磁放射線を検出し、電磁放射線のナノ構造の透過は、少なくともナノ構造における表面プラズモンポラリトンの励起によって生じるようにしたステップ。
【0036】
一実施形態において、先の実施形態のいずれかで述べた方法が開示されており、その中でナノ構造は、ナノ構造を通過するサンプル材料の通路を、一度に単一分子に制限するように構成されている。
【0037】
一実施形態において、先の実施形態のいずれかで述べた方法が開示されており、その中で単一分子は、二本鎖の核酸分子であってもよい。他の実施形態において、単一分子は、一本鎖の核酸分子であってもよい。他の実施形態において、単一分子は、ポリペプチド分子であってもよい。他の実施形態において、単一分子は、単一リボソームでもよい。他の実施形態において、単一分子は、ウイルス粒子でもよい。
【0038】
更なる実施形態において、放射線の検出は、分子分光、そしてより具体的には、ラマン分光、分子蛍光分光または表面増強赤外吸収分光によって生じる。本発明のある実施形態は、ナノ粒子の使用を含み、ヌクレオチドから取得されるラマン信号を増強する。表面増強ラマン分光(SERS)、表面増強共鳴ラマン分光(SERRS)、および/またはコヒーレント反ストークスラマン分光(CARS)の信号を提供可能な任意のナノ粒子、例えばAg、Au、Cu、Al、Ni、Pt、Pd、特に貴金属が使用されるが、ナノ粒子は、銀または金のナノ粒子でもよい。粒子とラベルに対する有益なリファレンスが、論文(K. Kneipp, M. Moskovits, H. Kneipp (Eds.): Surface-Enhanced Raman Scattering - Physics and Applications, Topics Appl. Phys. 103, 1-18 (2006))である。直径が1nm〜2nmの間のナノ粒子を使用してもよい。平均直径10〜50nm、50〜100nmまたは約100nmが、特定の応用のために考慮される。任意の形状のナノ粒子、または一様でない形状のナノ粒子を使用してもよいが、ナノ粒子は、近似的に球形であってもよい。
【0039】
入射放射線の回集される割合を増加させ、貫通ナノ構造内で、より強い場の強度を達成するために、デバイスの放射線入口側にアンテナ構造が付加可能である。放射線放出側でアンテナを使用して、自由空間伝搬放射線に変換される放射線部分を増加させ、および/または放出ビームを成形することが可能である。
【0040】
プラズモンナノアンテナは、光学活性分子の振る舞いに、様々な方法で影響を与えることができる。第1に、電磁放射線をナノ体積に集光することに起因して、分子をより効率的に励起可能である。第2に、プラズモン共鳴は、局所電磁モード密度に摂動を付与し、局所ダイポールエミッタの減衰速度を修正する。かかるナノアンテナは、ラマン分光、分子蛍光または表面増強赤外吸収分光が使用される場合に特に好適である。
【0041】
例えばラマン分光の場合、この二重効果は、局所電場におけるラマン散乱強度の周知のE4依存につながる。それは、光学的励起を使用する振動遷移の探査をさらに可能にする。さらなる増強が、共鳴ラマン(ターゲット分子の電子遷移を用いた共鳴における照明)、またはコヒーレント反ストークスラマン散乱(CARS)(非線形の、4波混合プロセス)を使用して達成可能である。ラマン分光は、より大きい分子、例えばDNA分子の断片を検出することに特に好適である。
【0042】
分子蛍光の実施形態においては、ナノ構造への場の閉じ込めによる場の増幅と、ナノ構造を出射可能な放射線との間に基本的なトレードオフの関係があるが、ラマンの場合はない。細孔の形状は、特に分解能に関連し、蛍光に寄与する分子の数を制限する。放出側に位置するナノアンテナもまた、蛍光から生じた放射線のより効率的な外部結合(outcoupling)をもたらす。
【0043】
表面増強赤外吸収分光の実施形態において、赤外放射線は、ナノ構造と直接結合する。アンテナには、蛍光またはラマンの場合におけるピッチより大きい相互ピッチを有する構造が設けられる。この放射線も、励起によってナノ構造を透過した放射線に変換される。
【0044】
図9は、本発明の実施形態に係る装置の概略図を示す。(図面は、限定的でなく、スケールどおり描いていない。図面のいくつかのコンポーネントは常に要求されているとは限らない。)2つのチャンバ2、4は、流体貯留層として機能し、薄膜5によって分離している。薄膜5において、ナノ細孔6のような薄膜貫通ナノ構造が加工されている。核酸を有するような直鎖状分子、DNA、RNA、一本鎖、二本鎖、または三本鎖、およびそれらの化学修飾、DNA螺旋が、任意の好適な駆動力、例えば電気泳動によって、固体のナノ細孔6を通って移動する。この目的のために、少なくとも1つの電極3、5が、各貯留層2、4にそれぞれ据えつけられ、電圧が、(好ましくはフィードバック結合した)電圧レギュレータ10を用いて供給される。装置は、光源8(例えばLED、レーザー白熱灯、または他の任意のタイプの光源が可能である。)のような電磁放射線源と、任意にレンズシステム13とをさらに備える。光源は、上側の貯留層内に配置してもよく、または上側の貯留層の外側に配置し、窓部を通じてナノ細孔6を照射してもよい。いくつかの例(例えばCARS分光)において、1個より多い光源が使用される。光は、上部、即ち上側の貯留層2から、下側の貯留層4へ供給される。図1の装置では、直交する光励起が想定されるが、細孔6での他の入射角も選択可能である。光は、ナノ細孔6の内部の分子と相互作用するが、この相互作用は、生体分子分析の基礎である。したがって、ナノ細孔は、光閉じ込めでもよい。(反射光だけでなく)ナノ細孔6内を通過する透過光のような電磁放射線が測定に使用されるという事実は、本発明にとって重要である。下側の貯留層において、光検出器12、および透過した光を回集するレンズシステム14のような光捕集システムが据えつけられる。検出器12は、下側の貯留層の外側に設置してもよく、下側の貯留層の窓部を通じてナノ細孔6を観察してもよい。検出器12の出力は、前置増幅器のような増幅器7に供給されてもよく、増幅器の出力は、読み出し電子回路に接続してもよい。読み出し電子回路は、計算ユニット9を備えてもよい。
【0045】
薄膜貫通ナノ構造は、分子が通過可能なナノスケールの通路を有する構造であると理解するべきである。ナノ構造は、該ナノ構造内の分子運動の自由度が、予め規定した方向、好ましくは薄膜の一方から薄膜の他方へ向かう方向に制限されるように好ましくは設計される。好ましくは、運動は、1次元の運動、即ち直線運動に限定するべきである。細孔は、円形、球形、長方形でもよく、またはいずれの形状をとることも可能であり、薄膜の厚さに渡って変化する直径を有することも可能である。細孔は、分子が通過する領域に限定されず、光がナノ構造内で結合可能であるように、より大きくてもよい。それゆえに、薄膜貫通ナノ構造は、ナノ細孔、ナノスリット、またはナノチャネルでもよい。
【0046】
流体チャネルおよび分子のための通路以外に、ナノ細孔6のような薄膜貫通ナノ構造は、光透過のためのチャネルとして機能する。サブ波長ホールを通じた光透過を達成するために、表面プラズモンポラリトンの特性が使用される。貫通ナノ構造を通る電磁放射線の
遷移は、最大3つの効果、即ち、表面プラズモン、光の透過、および再放射の組み合わせである。表面プラズモンは、結合した細孔/中空システム内で表面プラズモンポラリトンに変換される自由空間電磁放射線(作用する放射線)に関する。細孔におけるダイポール励起は放射性減衰し、増強透過を生じる。よって、電磁放射線のナノ構造の透過(または増強透過)は、少なくともナノ構造での表面プラズモンポラリトンの励起によって生じる。
【0047】
さらに、上部にある薄膜をナノ構造化して光捕集プロセスを最大化し、裏側をナノ構造化して再放射プロセスを最大化することによって、透過率が改善し、および/または、さらに最大化できる。この光チャネルを通じた光の透過は、2つの原理、即ち、チャネル内の伝搬モード導波経由、またはチャネルを通って出射側のモードと結合するエバネセント非伝搬モード経由をベースとして生じうる。
【0048】
好ましくは、傾斜側壁を有するナノ構造は、例えば電磁ホットスポットを作成するために作成される。ホットスポットは、光学的相互作用が最も強く、構造的情報または化学的情報が取得される場所である。それは、既在のレンズ構造またはフォトニック部品を用いて達成可能な領域より小さい検出領域を提供する。場閉じ込め構造は、ホットスポットにおいて、ギャップモード共鳴をベースとする局在化へと導くプラズモン場の閉じ込めを提供する。結果として、電磁場は、ホットスポットに集中する。それとともに、ホットスポットは、効率的に光信号を増幅する。電磁場は、電磁放射線と存在する物質との相互作用により生じる。場の強度を増強するための手段、およびホットスポットを作成するための手段は、プラズモン伝搬金属構造、特にナノアンテナ、および内部でキャビティ効果が生じ、特に変化する直径を有するナノ構造を含む。後者の場合、ナノ構造は、好ましくは内径が最小である位置でホットスポットが存在するように設計される。しかしながら、制限体積内で共鳴を生じさせるナノ構造の代替の形状も、排除されない。
【0049】
アンテナ構造は、光の入射側に追加可能であり、回集される入射光の割合を増加させ、ナノ細孔6において、より強い場の強度を達成する。光の出射側では、アンテナを使用して、自由空間伝搬光に変換される光部分を増加させること、および/または放出ビームを形成することが可能である。薄膜を出射する光の放射パターンは、設計を通じて制御可能である。例えばダイポール放射パターンが達成可能であり、または、より高機能の実装例において、出射側にアンテナ構造を設けて、光を案内できる。この特徴は、信号対ノイズを改善し、さらには背景信号を減少させるために重要である。下側の貯留層における回集システムは、ナノ開口部から放射する光を回集するように最適化でき、指向性の出力信号が、より良好な効率で検出可能であり、より優れた信号対ノイズが得られる。さらに、不要な光回集が抑制される。これは、図1の例において、レンズ14および共役面内に設置されたピンホール16を用いて達成可能である。アンテナ構造の例は、回折格子および一連の金属ストライプである。金属ストライプは、ナノ構造の入口として機能するスリットに平行な方向に好適に配向される。しかしながら、金属ストライプは、代替として、ナノ構造によって規定される中央部周りの放射パターンで配向可能である。
【0050】
さらなる実施形態において、アンテナは、その非線形特性を使用して低エネルギー電磁放射線を閉じ込めることに使用可能である。場の閉じ込めの範囲を増加させるために、非線形効果がより重要になる。これらの効果は、波動混合を含み、意図したエネルギーを有する局所的電磁波が励起可能であることを意味する。波動混合は、第2高調波発生、和周波発生、差周波発生(これらすべては3波混合である)、および4波混合を含む。例えば差周波発生を使用して、局所的低エネルギー電磁波が励起可能である。グートヤー・ルーザー(Gutjahr-Loser)らは、高エネルギー放射線(THz)を低エネルギー放射線(GHz)に変換するために走査電子トンネル顕微鏡の非線形特性を用い、THz光放射を使用してフェリ磁性材料内で局所的フェリ磁性共鳴を励起することに成功した。同様に、本発明の態様に従って、プラズモンナノアンテナを使用して、磁気共鳴が局所(ナノ)スケールで励起可能である。これにより、強磁性共鳴(FMR)、電子スピン共鳴(ESR)、および核磁気共鳴(NMR)の局所的励起が可能になる。その化学選択性に起因して、特にNMRが魅力的である。通常、NMRは、磁場を局所化する困難に起因して、マクロスケールのサンプルに使用される。
【0051】
本発明の他の態様に従って、基板、その上に存在する層、および前記層を貫通するナノ構造を備えるデバイスが設けられ、ナノ構造は、分析される分子が通過可能なナノスケールの通路を規定し、ナノ構造は、断面図において実質的に三角形状を有する。
【0052】
発明者達は、光学的分析、生体分子、および半導体プロセスの領域からの進んだノウハウを結合し、光学的検出の改善した信号対ノイズ比は、基板上で成長したエピタキシャル層の成長パラメータを利用することで達成可能である、という驚くべき特性を有するデバイスに最終的に至っている。
【0053】
ある実施形態において、ナノ構造は3次元構造であり、例えば、それに限定されないが、細孔、空洞、またはチャネルである。形状は、円形、三角形、正方形(quadratic)、楕円形、またはスリットでもよい。細孔は、円形、球形、長方形でもよく、いずれの形状をとることも可能であり、薄膜の厚さに渡って変化する直径を有することも可能である。ナノ構造という用語は、(2次元に相当する)ナノスリットまたはナノチャネルを含むよう広く解釈するべきである。特定の実施形態において、分子が例えばスリットを横切る距離を通過するか、それとも空洞の直径を通過するかを決定する寸法は、1μmより小さく、100nmより小さく、50nmより小さく、好ましくは10nmより小さく、例えば5nmより小さく、2nmより小さく、例えば1nmである必要がある。
【0054】
最も好適には、断面図において実質的に三角形状を有するナノ構造には、ナノ構造の傾斜側壁を規定する選択的側面を有するエピタキシャル層を実装する。エピタキシャル層を使用することは、ナノ構造に正確な寸法、および極めて少数の転位を提供する。さらに、ナノ構造は、半導体技術に従って達成可能である。一実施形態は、ウェットエッチングである。これは、シリコンベースの材料に好適である。他の実施形態は、横方向エピタキシャル過成長である。これは、III−V半導体材料、より具体的にはIII族の窒化物材料に特に好適である。横方向エピタキシャル過成長は、基板上に結晶ファセットを生じる。
【0055】
基板は特に、III族窒化物デバイスのエピタキシャル成長を可能にする基板である。基板は、Si、SiC、サファイア、AlN、GaN、AlGaN、LiNbO3、ZnO、MgOまたは多孔質のSiでもよい。基板は、上述した層の組み合わせによって形成してもよい。代替の実施形態において、基板は、先の実施形態において述べたように、III族の窒化物層によって被覆される基板でもよい。好ましい実施形態において、基板はAlGaNで被覆されるシリコン基板でもよい。
【0056】
本発明の特定の実施形態において、エピタキシャル層は、圧電性材料を含む層(圧電層とも呼ばれる)である。圧電性材料は、圧電効果を示す材料である。圧電性材料は、III族窒化物材料である。圧電性材料はまた、ベルリナイト(AlPO4)、甘蔗糖、石英、ロシェル塩、トパーズ、トルマリン族鉱石、オルトリン酸ガリウム(GaPO4)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、ジルコンチタン酸鉛(Pb[ZrxTi1−x]O3 0<x<1)、より一般的に知られているPZT、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、タングステン酸ナトリウム(Na2WO3)、Ba2NaNb5O5、Pb2KNb5O15、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)、およびビスマスフェライト(BiFeO3)から成るグループから選択してもよい。
【0057】
好適には、圧電層と動作連結した少なくとも1つの電極が存在する。該電極は、圧電層上に電圧を印加するためのものである。該電極は、圧電性材料上に電極を印加するためのものであり、該電極は、圧電性材料を変形させ、それゆえに圧電層を貫通するナノ構造を変形させる。ナノ構造の寸法は、調整可能である。電圧を圧電性材料に印加する場合、圧電性材料は変形する。電圧が印加される場合、電気的に誘導された機械的刺激が圧電層に加わり、薄膜貫通ナノ構造の変形を生じうる。薄膜貫通ナノ構造の変形は、これに限定されないが、薄膜貫通ナノ構造の内径の変化でもよい。その変化は、少なくとも薄膜貫通ナノ構造の一部の内径の増加または減少でもよい。したがって、該デバイスは、調整可能な薄膜貫通ナノ構造を有してもよい。所定の電圧を圧電性材料に印加することによって、薄膜貫通ナノ構造の内径が、所定の値に設定可能である。
【0058】
より好適には、第1電極および第2電極が、圧電層の反対側に存在してもよい。印加される場は、圧電層を通る平面に垂直な方向に印加される。特定の電極設計は、圧電層を通る平面に実質的に平行な方向への圧電層の変形を刺激するように適用してもよい。これに関する例が、国際公開第2005/064634号によって知られている。圧電層は、ナノ構造の反対側に配置される、独立した部分に適切に分割される。ナノ構造の両側の部分に、変形するように電極が設けられることは必要ではない。即ち、圧電層が、ナノ構造の第1面に第1部分を備え、第1面とは反対側のナノ構造の第2面に第2部分を備える場合、少なくとも1つの電極が、第1面上に存在してもよく(好適には、圧電層を挟持する1組の電極のように)、一方、圧電層の第2部分は変形可能にはしない。即ち、第2部分には電極がない。
【0059】
好適な実装例において、圧電層はバッファ層の上に存在する。バッファ層は、構造的に圧電層と類似または同一の材料で適切に構成される。バッファ層の上部に下電極が適切に設けられる。更なる実装例において、圧電層は、少なくとも部分的に中空部を横方向に突出する。中空部の側壁は、バッファ層によって規定してもよい。この実装例は、所望の方向での圧電層の変形を大きくする。
【0060】
ナノ構造を調整するように機能する圧電層の特徴は、変化する直径を有しないナノ構造と組み合わせても有益であろう。本発明の他の態様に従って、基板、その上に存在する圧電層、圧電層と動作連結した電極を備えるデバイスが設けられる。該デバイスは、前記圧電層を貫通する調整可能なナノ構造をさらに備え、ナノ構造は、分析される分子が通過可能であるナノスケールの通路を有し、ナノ構造は、圧電層の変形のための電極に電圧を印加することによって調整可能である。
【0061】
本発明に係るデバイスは、特定の方法で基板上にエピタキシャル層を成長させることによって最も適切に製造される。好適には、特にプロセスの見地から、基板は半導体基板である。半導体材料、特にIII−V材料、およびより好ましくはIII族窒化物タイプの材料を含むエピタキシャル層を用いて良好な結果が得られる。最も好適には、それ自体横方向エピタキシャル過成長(ELO、ELOG)として知られるテクニックが使用される。平松は、ELOテクニックを詳細に論文(J.Phys.Condens.Matter, 13 (2001), 6961-6975)において説明しており、この開示は参照によりここに組み込まれる。一実施形態に従って、ELOテクニックは、分子を特性評価するという新領域を開拓する、より改善したデバイスを取得するために上手に使用される。本発明に従って、前記エピタキシャル層を貫通するナノ構造が形成される。他の実施形態において、パターニング層は、基板をパターニングすることによって形成可能であるが、パターン化層は、AlInGaN、AlInGaP、AlInGaNP、AlInGaAs、SiC、Si、SiGe、Ge、アンチモン化物、(Mg)ZnO、またはZnSe(Te)でもよい。
【0062】
図1A−図1Dは、本発明に係るデバイスの製造の4つの段階を概略断面図で示している。明確化のため、図1A−図1Dの断面図は、傾斜側壁を示していないように観察される。以降明らかになるように、かかる傾斜側壁は、成長パラメータを制御すること、および/またはエピタキシャル層のパターン化した成長に使用されるマスクの適正な境界設定によって取得してもよい。
【0063】
図1Aは、第1段階を示しており、基板11が用意される。該基板は、キャリア層およびバッファ層12を備える。バッファ層は、特にIII−V族材料、より好適にはIII族窒化物材料の層である。バッファ層に適した材料の例は、AlGaNであるが、AlおよびGaの相対含量は変化してもよい。AlN層から開始し、Ga含有率を段階的にまたは徐々に増加させるのが好都合であると考えられている。バッファ層は、典型的には、MOCVD炉内で、核生成層の上部に成長する。キャリア層は、半導体基板を好適に備える。半導体基板のいくつかの選択肢が、III族窒化物材料の成長のために試みられている。現在使用されている典型的な材料は、サファイア、シリコン(001)およびシリコン(111)を含み、後者は、特に埋め込み絶縁層およびハンドリングウエハを有するシリコン・オン・インシュレータ基板のシリコン(111)上層形態である。
【0064】
図1Bは、製造の第2段階を示している。この段階で、パターン化層13は、バッファ層12の上に堆積する。マスク層は、シリコン窒化物またはシリコン酸化物のような誘電体層を好適に備えるが、金属のような他の材料が排除されるわけではない。パターン化層13は、開口部14およびマスク15を規定するためにパターン化される。パターン化層13の特定の設計が、以下で説明される。
【0065】
図1Cは、製造の第3段階を示している。この段階で、エピタキシャル層16が成長している。成長は、開口部14から垂直に生じて、開口部14から始まり、マスク15を横切って横方向に生じる。過成長ステップは、横方向成長対垂直成長の比が1/20〜20の範囲にあるように選択される。III−V族材料、より具体的にはSiO2およびSixNyの上にあるIII族窒化物層の選択度に起因して、GaNが、露出した窓領域を通じて成長可能である。III−V族層は、GaN、AlGaN、AlN、AlInGaN、AlInGaP、AlInGaNP、AlInGaAs、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される。エピタキシャル層は、相互に異なる組成を有する複数の層として設けてもよい。成長プロセスは、層部分の合体が起こる前に終わる。この終了は、終点検出をベースとしている。結果として、ナノ構造17がエピタキシャル層16を貫いて形成される。ナノ構造の設計は、成長温度、成長圧力、マスク15の幅、材料の特定結晶配向に関連したマスク15の配向、エピタキシャル層の材料を含む種々の成長パラメータ、および設計パラメータに依存する。ここでは図示していないが、成長は、ナノ構造17の傾斜側壁、事実上はエピタキシャル層部分16の側面が得られるように規定される。図示していないが、上部保護層が、エピタキシャル層16の上部に好適に付加される。かかる上部保護層が、例えばシリコン窒化物の誘電体層である。上部保護層は、元の場所、即ち同じCVD炉内で成長させてもよく、続いて炉のガスの組成、ならびに可能であれば温度および圧力を変化させることでエピタキシャル層を成長させてもよい。エピタキシャル層または上部保護層の上部で、導電性材料層が堆積してもよい。特に好適な導電性材料の例はPtやAuのような貴金属である。しかしながら、TiN、TiWN、TiW、TaN、Ta、Wのような導電性材料、それらの組み合わせまたは合金は有益である。かかる層は、エピタキシャル層および/または上部保護層と、貴金属との間の接着層として使用される。アンテナ構造は、例えば導電性材料をパターニングすることによって導電性材料内に規定されてもよい。
【0066】
導電性材料を設ける際、ナノ構造17は犠牲層の堆積によって一時的に密閉される。有利な犠牲層の一種は、加熱によってガス成分に分解可能な材料を備える。ここで更なる情報が、国際公開第2007/054867号に見られる。しかしながら、ナノ構造を一次的に密閉することが必要であると考えられない。その代わりに、ナノ構造17の側壁は、導電性材料によって被覆してもよい。かかる被覆は、好適に、例えばCVD、MOCVD、ALDなどによって気相からの導電性材料の堆積によって取得される。ナノ構造17の側壁のこうした被覆は、最も好適には、パターン化層13を取り除いた後に実行される。
【0067】
図1Dは、製造の第4段階を示している。この段階で、パターン化層13は取り除かれ、貫通孔18は基板11を貫いて作られる。パターン化層13の除去は、ウェットエッチングまたはドライエッチングを用いて好適に実行してもよい。パターン化層13を完全に除去することは最も有益であると考えられるが、開口部を、ナノ構造17の位置に対応する位置で、パターン化層内に作成することは除外されない。貫通孔18は、基板11の裏側からのウェットエッチングにより適切に作成される。裏側からの加工は、典型的に、加工における最後のステップの1つである。エピタキシャル層16の上部での、被覆および/または一時的なキャリアの供給が先行してもよい。かかる被覆が、分析される分子を含む流体が提供されるチャンバの囲いとして同時に機能してもよい。ナノ構造の方向に向けられた電磁放射線が該被覆を通過しうるように、光学的に透明な被覆が好ましい。
【0068】
図1Aから図1Dから明らかなように、合体しない層はナノスリットを形成し、横方向構造において、マイクロ流体のためのチャネルとして使用可能である。さらに、基板をナノ細孔またはナノスリット(18参照)の下の領域内で除去する場合、ナノスリットまたはナノ細孔は垂直構造に一体化可能である。基板(図1B参照)を除去するための可能な方法がいくつか存在する。例えば、サファイア基板の場合、レーザーリフトオフを使用してもよい。シリコン基板を使用する場合、KOHでの単純なウェットケミカルエッチング、ドライエッチングまたは粉砕(grinding)などによりシリコンを取り除くことができる。
【0069】
選択エリア成長において、成長方向は、垂直方向または横方向である。横方向成長を促進することによって、ナノ構造の大きさは、リソグラフィ制限の下で調整可能である。さらに、横方向成長の間、完全なファセットが観察可能である。参照される少しのファセット、例えば{11−20}、{11−22}および{1−101}が、GaNの横方向成長において報告されており、成長温度、V/III比、および成長圧力を含む成長パラメータに依存する。成長温度は、500℃〜1200℃の範囲にできる。成長圧力は、10〜1000Torrに調整される。V/III比は、V族の全流量のIII族の全流量に対する比であり、100〜10000の間にできる。これらのファセットは、優れたナノ構造を形成することになる。ナノ構造の例は、ナノ細孔、ナノスリットである。ナノ構造の断面は、成長パラメータによっても制御可能である。
【0070】
図2Aおよび図2Bは、製造の2つの段階を断面図で示す。図2Aは、Si(111)基板、バッファ層、および第1GaN層を備える基板構造を示す。パターン化層13は、その上に設けられ、エピタキシャル層16とともに過成長する。ここで見るように、エピタキシャル層16は、基板平面に対して傾いた角度の傾斜側面を有する各部分に分割される。
【0071】
図2Bは、裏側から基板をエッチングした後のデバイスを示す。パターン化層13は、ここでエッチストップ層として使用される。それはその後除去可能である。
【0072】
ある実施形態において、パターン化層は、表面の一部を露出する開口部のパターンを有する。ナノ構造は所定の位置に形成されるように、開口部のパターンは設計される。パターニング層における開口部の寸法は、10nm〜100μmの間、10nm〜10μmの間、10nm〜1μmの間にある。エピタキシャル層は、5nm〜5μmの間、5nm〜2μmの間、または5nm〜1μmの間の厚さで好適に形成される。厚さがマイクロメータの範囲にあることは、寸法を極小サイズまで減少させること、および光を好適に案内することに適している傾斜側壁を有するために適していると考えられている。
【0073】
図3は、第1実験で使用されるマスクの設計を示す。様々な幅の窓部および様々なマスク材料を有するマスクが用意されている。マスクは、縞状のマスクであり、即ち、パターンは、互いに平行な、いくつかの縞を有する。図3(a)は、マスク層の幅は2μmで、開口部の幅は4μmであるマスクを示す。図3(b)は、マスク層の幅は4μmで、開口部の幅は2μmであるマスクを示す。図3(c)は、マスク層の幅は3μmで、開口部の幅は7μmであるマスクを示す。図3(d)は、マスク層の幅は5μmで、開口部の幅は5μmであるマスクを示す。パターンは、1μmの分解能を有する普通の光学的リソグラフィを使用することによって形成される。リソグラフィの後、サンプルをMOCVD炉に再投入すると、特定の厚さのGaNに成長する。マスク幅の違いに起因して、横方向成長領域は異なる結晶形態を示す。2μmのマスク幅を有する、四区画のうちの一区画において、層は完全に合体している。3μmマスク幅、4μmマスク幅、5μmマスク幅の三区画において、いくつかのナノスリットが形成される。異なる成長条件を規定すること、および/または成長をより早く終わらせることによって、2μm幅のマスクを有するいくつかのナノスリットを取得してもよいことが明確に観察される。これは、しかしながら第1実験の内容の中でなされたものではない。
【0074】
結晶ファセットを取得するために、マスクの延長部を好適な結晶方向に配列してもよい。シリコン(111)基板を使用する場合、縞状マスクは<11−2>方向に平行な方向に配列可能である。形成されたファセットは、{11−20}または{11−22}である。縞は、<1−10>方向に配列可能であり、好ましいファセットは{1−101}である。基板平面との角度は、{11−20}、{11−22}および{1−101}ファセットによって各々異なる。
【0075】
サンプルは、1000度以上の温度で成長させた。成長圧力は100Torrであり、V/III比は、約2000である。縦方向における成長速度は、約40nm/minである。横方向成長速度は、2〜200nm/minの範囲で変化しえるが、ファセットの方向に依存する。成長時間は、1000s〜2000sに調整される。成長時間、成長速度、および成長温度を含む成長パラメータを微調整することで、ナノスリットが、40nm未満の幅を有するよう形成される。この幅は、電子ビームリソグラフィによって達成する幅よりも優れている。
【0076】
マスクの境界設定に加えて、側壁の形状は、成長パラメータ、即ち成長温度および成長圧力を用いて制御してもよい。GaNの横方向エピタキシャル過成長の体系的実験において、4つの異なる領域が存在することがわかった。925℃未満の成長温度を有する領域Iにおいて、結晶形態は貧弱である。上部および傾斜した{1−101}面において、大きい窪み(pit)がある。領域IIは、40Tоrrの圧力下で925℃から950℃の成長温度を有する領域として、および500Tоrrの圧力下で、最大1000℃の成長温度を有する領域として規定される。この領域IIにおいて、側壁は領域Iのような{11−22}面から成り、一方{0001}面は滑らかになる。領域IIIは、40Tоrrの圧力下で950℃〜1010℃の成長温度を有する領域として、および500Tоrrの圧力下で、1000℃〜1060℃の成長温度を有する領域として規定される。この領域において、側壁は傾斜{11−22}側面から垂直{11−20}側面へと変化する。領域IIIの上に位置する領域IVにおいて、{0001}面は粗くなる。明らかに、正確な成長条件は、マスク方向、およびエピタキシャル層の材料にもさらに依存する。
【0077】
図7Aおよび図7Bは、マスクの概略平面図、および得られる結晶ファセットを有するエピタキシャル層である。図7Aにおいて、GaNは下にある基板、例えばバッファ層12を参照し、一方SiO2またはSixNyは、マスク、例えばパターン化層13を参照する。図7Bにおいて、GaNはエピタキシャル層16を参照し、SiO2またはSixNyは、パターン化層13を依然参照する。
【0078】
図7Aは、スリット形状の開口部を除いて基板を大きく覆うマスク13を示す。互いに平行な2つのスリット列が示され、スリット列の各々が、マスク13の壁形状部分によって相互に分離した第1スリットおよび第2スリットを備える。ナノ構造17は、実際に、この壁形状部分で形成されるであろう。その寸法は、したがって、ナノ構造を規定するための関連パラメータである。
【0079】
図7Bは、得られるエピタキシャル層16を示す。上面図から明らかであるが、少なくとも2つの結晶ファセットが形成される。該形状は、スリット形状のナノ構造と、隣接し、加えて制限される体積とを規定する。第1列および第2列のエピタキシャル層の一部は、相互に一定距離隔てる。この距離をアクセスチャネルとして利用してもよい。その形状は、図7Aに示すマスクの設計を調整することによってさらに利用してもよい。
【0080】
図8は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって作成した画像中の、エピタキシャル層の一部の上面図である。上面図はまた、エピタキシャル層の第1部分と第2部分との間のナノ構造を示す。該画像は、図7Bの一部に事実上対応する。この画像から明らかなことは、ナノ構造17には、結晶ファセットによって規定される傾斜側壁が設けられる。この方法において、ナノ構造の幅は、54nmから、最大1.27μmに変化する。ここで、エピタキシャル層16は、異なる配向を有する結晶ファセットを有する。この方法において、スリット形状のナノ構造に隣接した制限体積が生成される。これらの制限体積は、乱流などを生じさせないで、ナノ構造に流体を供給することに極めて好適である。
【0081】
図10は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって作成した画像中の、エピタキシャル層の一部の鳥瞰図である。ここで示されるデバイスは、シリコンのエピタキシャル層を備える。該デバイスは、断面図において三角形状を有するナノ構造を備える。ここで、エピタキシャル層の側面は、ナノ構造の傾斜側壁である。このナノ構造は、エピタキシャル層のウェットエッチングによって作成してもよい。この図でさらに示すように、ナノ構造は金(Au)層で被覆される。
【0082】
図4、図5および図6は、パターン化したエピタキシャル層の更なる実施形態の概略平面図である。ここで、灰色領域は、エピタキシャル層を規定し、一方、開口部は、ナノ構造を規定する。図4Aの設計は、6つのナノ構造を効率的に提供する。光は、これらの各スリットに個々に集光され、その結果、6つの測定を同時に実行してもよい。検出サイトの数は、この方法でさらに拡大してもよいことは明らかである。図5Bの設計は、リング形状ナノ構造である。かかるリング形状、特に高度な内部対称性を有するリング形状は、プラズモン共鳴装置として有効である。換言すると、この構造は、ナノ構造内の表面プラズモンの共鳴を増進する。それゆえに、更なる改善した信号対ノイズ比を生じることが期待される。図6の設計は、アクセスチャネルとナノ構造との組み合わせを示す。該設計は、異なる幅を有するナノ構造をさらに含む。明らかなことだが、最小の幅を有するナノ構造は、個々の分子またはその断片を検出することに極めて有益だと考えられている。
【図1A−1C】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、その上に存在する層と、前記層を貫通するナノ構造とを備えるデバイスであって、
ナノ構造は、分析される分子が通過可能なナノスケールの通路を規定し、
ナノ構造は、断面図において実質的に三角形状を有するデバイス。
【請求項2】
該層は、前記ナノ構造に向き合う結晶ファセットが設けられたエピタキシャル層である請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
基板は、前記ナノ構造と整列した貫通孔を備える請求項1または2記載のデバイス。
【請求項4】
第1結晶ファセットおよび第2結晶ファセットが、ナノ構造の反対側に存在し、傾斜壁を有するナノ構造を規定するようにした請求項2記載のデバイス。
【請求項5】
更なる結晶ファセットが、第1ファセットおよび第2ファセットに隣接して存在し、第1ファセットおよび第2ファセットに隣接した1組の更なる結晶ファセットが、ナノ構造に隣接した制限体積を規定するようにした請求項4記載のデバイス。
【請求項6】
ナノ構造は、第1制限体積および第2制限体積内で横方向に存在し、該体積は、ナノ構造周りで対称である形状を有する請求項5記載のデバイス。
【請求項7】
エピタキシャル層の第1結晶部分と第2結晶部分との間に存在するアクセスチャネルをさらに備え、アクセスチャネルはナノ構造まで延びている請求項2〜4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
ナノ構造は、エピタキシャル層の第1結晶部分周りに延びており、プラズモン共鳴装置として機能するリング形状ナノ構造を提供するようにした請求項2〜4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
場閉じ込め構造が、ナノ構造内に電磁ホットスポットを作成する前記形状によって規定される請求項1〜8のいずれかに記載のデバイス。
【請求項10】
デバイスの第1面および/または反対側の第2面上に、少なくとも1つのナノアンテナをさらに備え、前記面は基板を通る面に平行であり、前記ナノアンテナは表面プラズモン波をナノ構造へ誘導する働き、および/またはナノ構造から出射した光を検出器へ伝送する働きをするようにした請求項1〜9のいずれかに記載のデバイス。
【請求項11】
貫通ナノ構造は、調整可能な貫通ナノ構造である請求項1〜10のいずれかに記載のデバイス。
【請求項12】
エピタキシャル層は、圧電性材料を備えた層であり、
圧電層の変形およびそれに伴うナノ構造の変形のために、圧電層と動作連結した少なくとも1つの電極を備えた請求項11記載のデバイス。
【請求項13】
基板と、その上に存在する圧電層と、圧電層と動作連結する電極と、前記圧電層を貫通する調整可能なナノ構造とを備えるデバイスであって、
ナノ構造は、分析される分子が通過可能なナノスケールの通路を有し、
ナノ構造は、圧電層の変形のために、電極への電圧の印加によって調節可能であるようにしたデバイス。
【請求項14】
放射線を第1面からナノ構造に作用させる電磁放射線源と、
ナノ構造を通るように分子を移動させるための手段と、
第1面とは反対側にある第2面から遠方へナノ構造を出射する電磁放射線を検出するための検出ユニットとをさらに備え、
電磁放射線のナノ構造の透過は、少なくともナノ構造における表面プラズモンポラリトンの励起によって生じるようにした請求項1〜13のいずれかに記載のデバイスを備える装置。
【請求項15】
基板と、基板上のパターン化したエピタキシャル層と、前記エピタキシャル層を貫通するナノ構造と、ナノ構造の下にある基板を貫通した開口部とを備え、
エピタキシャル層の一部の傾斜側壁は、前記貫通ナノ構造の幅に面し、該幅を制限するようにしたデバイスの使用方法であって、
分子がナノ構造を通過するようにするステップと、
分子を特性評価するステップとを含む方法。
【請求項16】
光が結合して第1面からナノ構造内へ入り、分子は、ナノ構造内の表面プラズモン波の励起を使用して光学的に特性評価されるようにした請求項15記載の方法。
【請求項17】
特性評価は、少なくとも前記励起によって生じた、ナノ構造を透過して第2面に至る電磁放射線をベースとする請求項15記載の方法。
【請求項18】
ナノ構造は、ナノ構造を通過するサンプル材料の通路を、一度に単一分子に制限するように構成された請求項15または16記載の方法。
【請求項19】
エピタキシャル層は圧電性材料を備え、貫通ナノ構造の内径を所定の値へ調整するために、所定の電圧が圧電性材料に印加されるようにした請求項15記載の方法。
【請求項20】
基板、基板上のパターン化したエピタキシャル層、前記エピタキシャル層を貫通するナノ構造、およびナノ構造の下にある基板を貫通する開口部を備え、エピタキシャル層は圧電性材料を備えるようにしたデバイスの使用方法であって、貫通ナノ構造の変形のために圧電性材料に所定の電圧を印加するステップを含む方法。
【請求項21】
変形は、貫通ナノ構造の内径を所定の値に調整することである請求項20記載の方法。
【請求項22】
層を貫通するナノ構造を形成する方法であって、
基板を用意するステップと、
基板上に、少なくとも1つの開口部を有するパターン化層を形成し、開口部を通じて基板の表面は露出するようにしたステップと、
基板上にエピタキシャル層を、開口部から垂直に、およびパターン化層を横切って横方向に成長させるステップと、
エピタキシャル層が、基板の露出領域上に形成され、エピタキシャル層が、実質的にパターン化層を横切って合体しないように、エピタキシャル層の横方向成長を維持するステップと、
エピタキシャル層がパターン化層の上に存在しない領域で、パターン化層を少なくとも部分的に除去して、ナノ構造をエピタキシャル層内に形成するステップと、
エピタキシャル層の一部を形成するナノ構造の下にある基板を取り除くステップとを含む方法。
【請求項23】
ナノ構造は、ナノ構造を通過するサンプル材料の通路を、一度に単一分子に制限するように構成された請求項22記載の方法。
【請求項24】
パターン化層は、基板の一部を露出する開口部のパターンを有する請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
エピタキシャル層は、横方向過成長により成長する請求項22記載の方法。
【請求項26】
過成長ステップは、横方向成長対垂直成長の比が、1/20〜20の範囲にあるように選択された請求項22記載の方法。
【請求項27】
エピタキシャル層は、圧電性材料を備える層であり、
圧電層と動作連結した少なくとも1つの電極を設けるステップをさらに含む請求項22記載の方法。
【請求項28】
パターン化層は、形成されるエピタキシャル層の材料の結晶方向に平行に整列する縞状開口部を備え、エピタキシャル層は、エピタキシャル層内で結晶ファセットと一緒に形成され、結晶ファセットは、前記結晶方向に平行な平面に現れるようにした請求項22記載の方法。
【請求項29】
第1縞状開口部および第2縞状開口部は列状に存在し、パターン化層の壁形状部分によって相互に分離しており、前記壁形状部分は、ナノ構造のための位置を規定するようにした請求項22記載の方法。
【請求項30】
第1主面および第2主面を有し、第1主面と第2主面との間に薄膜貫通ナノ構造を有する薄膜であって、該ナノ構造は、薄膜に渡って変化する直径を有し、断面図において実質的に三角形状を有するナノ細孔を備えるようにした薄膜と、
放射線を第1主面方向のナノ構造に作用させる電磁放射線源と、
ナノ構造を通るように分子を移動させるための手段と、
第2主面からナノ構造を出射する電磁放射線を検出する検出ユニットとをさらに備え、電磁放射線のナノ構造の透過は、少なくともナノ構造における表面プラズモンポラリトンの励起によって生じるようにした装置。
【請求項31】
第1主面および第2主面を有し、第1主面と第2主面との間に薄膜貫通ナノ構造を有する薄膜であって、該ナノ構造は、薄膜に渡って変化する直径を有し、断面図において実質的に三角形状を有するナノ細孔を備えるようにした薄膜の使用方法であって、
電磁放射線を第1主面方向のナノ構造に向けるステップと、
ナノ構造を通るように分子を移動させるステップと、
第2主面から遠方へナノ構造を出射する電磁放射線を検出し、電磁放射線のナノ構造の透過は、少なくともナノ構造における表面プラズモンポラリトンの励起によって生じるようにしたステップとを含む方法。
【請求項1】
基板と、その上に存在する層と、前記層を貫通するナノ構造とを備えるデバイスであって、
ナノ構造は、分析される分子が通過可能なナノスケールの通路を規定し、
ナノ構造は、断面図において実質的に三角形状を有するデバイス。
【請求項2】
該層は、前記ナノ構造に向き合う結晶ファセットが設けられたエピタキシャル層である請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
基板は、前記ナノ構造と整列した貫通孔を備える請求項1または2記載のデバイス。
【請求項4】
第1結晶ファセットおよび第2結晶ファセットが、ナノ構造の反対側に存在し、傾斜壁を有するナノ構造を規定するようにした請求項2記載のデバイス。
【請求項5】
更なる結晶ファセットが、第1ファセットおよび第2ファセットに隣接して存在し、第1ファセットおよび第2ファセットに隣接した1組の更なる結晶ファセットが、ナノ構造に隣接した制限体積を規定するようにした請求項4記載のデバイス。
【請求項6】
ナノ構造は、第1制限体積および第2制限体積内で横方向に存在し、該体積は、ナノ構造周りで対称である形状を有する請求項5記載のデバイス。
【請求項7】
エピタキシャル層の第1結晶部分と第2結晶部分との間に存在するアクセスチャネルをさらに備え、アクセスチャネルはナノ構造まで延びている請求項2〜4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項8】
ナノ構造は、エピタキシャル層の第1結晶部分周りに延びており、プラズモン共鳴装置として機能するリング形状ナノ構造を提供するようにした請求項2〜4のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
場閉じ込め構造が、ナノ構造内に電磁ホットスポットを作成する前記形状によって規定される請求項1〜8のいずれかに記載のデバイス。
【請求項10】
デバイスの第1面および/または反対側の第2面上に、少なくとも1つのナノアンテナをさらに備え、前記面は基板を通る面に平行であり、前記ナノアンテナは表面プラズモン波をナノ構造へ誘導する働き、および/またはナノ構造から出射した光を検出器へ伝送する働きをするようにした請求項1〜9のいずれかに記載のデバイス。
【請求項11】
貫通ナノ構造は、調整可能な貫通ナノ構造である請求項1〜10のいずれかに記載のデバイス。
【請求項12】
エピタキシャル層は、圧電性材料を備えた層であり、
圧電層の変形およびそれに伴うナノ構造の変形のために、圧電層と動作連結した少なくとも1つの電極を備えた請求項11記載のデバイス。
【請求項13】
基板と、その上に存在する圧電層と、圧電層と動作連結する電極と、前記圧電層を貫通する調整可能なナノ構造とを備えるデバイスであって、
ナノ構造は、分析される分子が通過可能なナノスケールの通路を有し、
ナノ構造は、圧電層の変形のために、電極への電圧の印加によって調節可能であるようにしたデバイス。
【請求項14】
放射線を第1面からナノ構造に作用させる電磁放射線源と、
ナノ構造を通るように分子を移動させるための手段と、
第1面とは反対側にある第2面から遠方へナノ構造を出射する電磁放射線を検出するための検出ユニットとをさらに備え、
電磁放射線のナノ構造の透過は、少なくともナノ構造における表面プラズモンポラリトンの励起によって生じるようにした請求項1〜13のいずれかに記載のデバイスを備える装置。
【請求項15】
基板と、基板上のパターン化したエピタキシャル層と、前記エピタキシャル層を貫通するナノ構造と、ナノ構造の下にある基板を貫通した開口部とを備え、
エピタキシャル層の一部の傾斜側壁は、前記貫通ナノ構造の幅に面し、該幅を制限するようにしたデバイスの使用方法であって、
分子がナノ構造を通過するようにするステップと、
分子を特性評価するステップとを含む方法。
【請求項16】
光が結合して第1面からナノ構造内へ入り、分子は、ナノ構造内の表面プラズモン波の励起を使用して光学的に特性評価されるようにした請求項15記載の方法。
【請求項17】
特性評価は、少なくとも前記励起によって生じた、ナノ構造を透過して第2面に至る電磁放射線をベースとする請求項15記載の方法。
【請求項18】
ナノ構造は、ナノ構造を通過するサンプル材料の通路を、一度に単一分子に制限するように構成された請求項15または16記載の方法。
【請求項19】
エピタキシャル層は圧電性材料を備え、貫通ナノ構造の内径を所定の値へ調整するために、所定の電圧が圧電性材料に印加されるようにした請求項15記載の方法。
【請求項20】
基板、基板上のパターン化したエピタキシャル層、前記エピタキシャル層を貫通するナノ構造、およびナノ構造の下にある基板を貫通する開口部を備え、エピタキシャル層は圧電性材料を備えるようにしたデバイスの使用方法であって、貫通ナノ構造の変形のために圧電性材料に所定の電圧を印加するステップを含む方法。
【請求項21】
変形は、貫通ナノ構造の内径を所定の値に調整することである請求項20記載の方法。
【請求項22】
層を貫通するナノ構造を形成する方法であって、
基板を用意するステップと、
基板上に、少なくとも1つの開口部を有するパターン化層を形成し、開口部を通じて基板の表面は露出するようにしたステップと、
基板上にエピタキシャル層を、開口部から垂直に、およびパターン化層を横切って横方向に成長させるステップと、
エピタキシャル層が、基板の露出領域上に形成され、エピタキシャル層が、実質的にパターン化層を横切って合体しないように、エピタキシャル層の横方向成長を維持するステップと、
エピタキシャル層がパターン化層の上に存在しない領域で、パターン化層を少なくとも部分的に除去して、ナノ構造をエピタキシャル層内に形成するステップと、
エピタキシャル層の一部を形成するナノ構造の下にある基板を取り除くステップとを含む方法。
【請求項23】
ナノ構造は、ナノ構造を通過するサンプル材料の通路を、一度に単一分子に制限するように構成された請求項22記載の方法。
【請求項24】
パターン化層は、基板の一部を露出する開口部のパターンを有する請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
エピタキシャル層は、横方向過成長により成長する請求項22記載の方法。
【請求項26】
過成長ステップは、横方向成長対垂直成長の比が、1/20〜20の範囲にあるように選択された請求項22記載の方法。
【請求項27】
エピタキシャル層は、圧電性材料を備える層であり、
圧電層と動作連結した少なくとも1つの電極を設けるステップをさらに含む請求項22記載の方法。
【請求項28】
パターン化層は、形成されるエピタキシャル層の材料の結晶方向に平行に整列する縞状開口部を備え、エピタキシャル層は、エピタキシャル層内で結晶ファセットと一緒に形成され、結晶ファセットは、前記結晶方向に平行な平面に現れるようにした請求項22記載の方法。
【請求項29】
第1縞状開口部および第2縞状開口部は列状に存在し、パターン化層の壁形状部分によって相互に分離しており、前記壁形状部分は、ナノ構造のための位置を規定するようにした請求項22記載の方法。
【請求項30】
第1主面および第2主面を有し、第1主面と第2主面との間に薄膜貫通ナノ構造を有する薄膜であって、該ナノ構造は、薄膜に渡って変化する直径を有し、断面図において実質的に三角形状を有するナノ細孔を備えるようにした薄膜と、
放射線を第1主面方向のナノ構造に作用させる電磁放射線源と、
ナノ構造を通るように分子を移動させるための手段と、
第2主面からナノ構造を出射する電磁放射線を検出する検出ユニットとをさらに備え、電磁放射線のナノ構造の透過は、少なくともナノ構造における表面プラズモンポラリトンの励起によって生じるようにした装置。
【請求項31】
第1主面および第2主面を有し、第1主面と第2主面との間に薄膜貫通ナノ構造を有する薄膜であって、該ナノ構造は、薄膜に渡って変化する直径を有し、断面図において実質的に三角形状を有するナノ細孔を備えるようにした薄膜の使用方法であって、
電磁放射線を第1主面方向のナノ構造に向けるステップと、
ナノ構造を通るように分子を移動させるステップと、
第2主面から遠方へナノ構造を出射する電磁放射線を検出し、電磁放射線のナノ構造の透過は、少なくともナノ構造における表面プラズモンポラリトンの励起によって生じるようにしたステップとを含む方法。
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図5a】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図5a】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2012−511705(P2012−511705A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540077(P2011−540077)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066739
【国際公開番号】WO2010/066795
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(599098493)カトリーケ・ウニフェルジテイト・ルーベン・カー・イュー・ルーベン・アール・アンド・ディ (83)
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven,K.U.Leuven R&D
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066739
【国際公開番号】WO2010/066795
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(599098493)カトリーケ・ウニフェルジテイト・ルーベン・カー・イュー・ルーベン・アール・アンド・ディ (83)
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven,K.U.Leuven R&D
【Fターム(参考)】
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