説明

層間塞ぎ装置

【課題】壁パネルと床材とを拘束的に結合することなく層間隙間を好適に塞ぎ、下層階から上層階への煙の拡散を確実に防止することができる層間塞ぎ装置を提供する。
【解決手段】本発明の層間塞ぎ装置2は、建築物の外壁を形成するカーテンウォール4の内面10と、建築物の各階層の床材8との間の層間隙間Sに配設される層間塞ぎ装置2において、層間隙間Sを塞ぐべく層間隙間S内に配置されるべき耐火繊維ブロック18であって、耐火性繊維の集合体からなり且つ弾力性を有した耐火繊維ブロック18と、耐火繊維ブロック18の下面26に配設され、加熱を受けたときに膨張する熱膨張性耐火ゴム44とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外壁となる壁パネルと各階層の床材との間に確保された層間隙間を塞ぐ層間塞ぎ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の層間隙間は、建築物の床材と、壁パネル、例えば、カーテンウォールとの間の拘束結合を避けるべき建築物の柔構造にとって不可欠であるが、建築物に火災が発生した場合、層間隙間を介して高温の煙や火炎が下層階から上層階に伝わる虞がある。このため、層間隙間をロックウールやセラミックウール等の耐火材で塞ぐことが一般的に行われている。
ところで、ロックウール等は難燃性繊維の集合体であるから、下層階から上層階への火炎の伝わりは防げるものの、通気性を有するため、上層階への煙の拡散を防ぐことができない。
【0003】
そこで、層間隙間を遮断するために、カーテンウォールと床材との間に鋼板を掛け渡して、この鋼板で層間隙間を塞いでしまうことが行われている。この場合、鋼板には遮熱性及び遮炎性が要求されるので、鋼板は、モルタル、ロックウール又はコンクリートで覆われている。
このような鋼板を備えた層間ふさぎ構造は、例えば、特許文献1に開示されている。この公知の層間ふさぎ構造はL字鋼板を備え、このL字鋼板は室内側の面に耐火ボードが積層されているカーテンウォールの内面に張り付けられ耐火ボードと床材との間に掛け渡されている。詳しくは、L字鋼板は、耐火ボードにビスで取り付けられた鉛直部と、この鉛直部から水平に延びる水平部とを有し、この水平部は床材を支持する梁材の上面に載置され、層間隙間を完全に塞いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−36479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のL字鋼板はカーテンウォールと床材との間を拘束的に結合してしまうことから、地震等による建築物のしなりを許容できず、異音の発生や、カーテンウォール若しくは床材の破損の原因となることがある。
本発明は、上記の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、壁パネルと床材とを拘束的に結合することなく層間隙間を好適に塞ぎ、下層階から上層階への煙の拡散を確実に防止することができる層間塞ぎ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の層間塞ぎ装置は、建築物の外壁を形成する壁パネルの内面と、前記建築物の各階層の床材との間の層間隙間を塞ぐ層間塞ぎ装置において、前記層間隙間を塞ぐべく前記層間隙間内に配置されるべき耐火繊維ブロックであって、耐火性繊維の集合体からなり且つ弾力性を有した耐火繊維ブロックと、前記耐火繊維ブロックの少なくとも下層側に配設され、加熱を受けたときに膨張する熱膨張性耐火材とを具備したことを特徴とする(請求項1)。
【0007】
この構成によれば、火災時の熱により、熱膨張性耐火材が膨張し、層間隙間における耐火繊維ブロックの下層側を充たす。それ故、下層階からの煙の流通を遮断するとともに、強固な断熱層を形成することができる。
好ましくは、前記熱膨張性耐火材は、前記耐火繊維ブロックの横断面でみてその下部を覆う形状をなしている構成とする(請求項2)。
【0008】
この構成によれば、火災時の熱により、耐火繊維ブロックの側面部分においても熱膨張性耐火材が膨張するので、この側面部分の僅かな間隙も充たし、より確実に煙の流通を遮断することができる。
また、前記熱膨張性耐火材は、前記耐火繊維ブロックから下方に向かって凸の形状をなしている構成とすることが好ましい(請求項3)。
この構成によれば、熱膨張性耐火材は、耐火繊維ブロックの下層階側の層間隙間にて下層階側に向かって凸の形状をなしているので、加熱された際、放射状に膨張し、層間隙間における耐火繊維ブロックの下方側部分をより確実に充たす。しかも、この構成によれば、耐火繊維ブロックの両側部に熱膨張性耐火材を配設することを省略することができる。
【0009】
また、前記耐火繊維ブロックを保持した状態で前記床材に引っ掛けるための掛止手段を更に具備した構成とすることが好ましい(請求項4)。
この構成によれば、層間塞ぎ装置を床材に掛止することができる。
より好ましくは、前記掛止手段は、掛止具を含み、前記掛止具は、前記床材の上面に引っ掛けられるアッパフックと、前記アッパフックから前記耐火繊維ブロックの側面に沿って一体に延び、前記耐火繊維ブロックに結合されたサイドカバーとを有する構成とする(請求項5)。
【0010】
この構成によれば、層間塞ぎ装置を床材側に引っ掛け、片持ちに保持することができ、層間塞ぎ装置の配設作業を簡便に行うことができる。
好ましくは、前記掛止具は、前記サイドカバーの上縁及び下縁から一体に延び、前記耐火繊維ブロックを上下から挟み付ける一方、先端に前記耐火繊維ブロックに食い込む係止爪をそれぞれ有したアッパ及びロアフックを更に含む構成とする(請求項6)。
この構成によれば、耐火繊維ブロックと掛止具との結合がより強固になる。
【0011】
より好ましくは、前記掛止具は、前記サイドカバーの下縁から下方に延び、弾性変形可能なロアカバーであって前記層間隙間に層間塞ぎ装置が配設されたとき、下方に向かって凸状の湾曲形状をなして前記耐火繊維ブロックを下方から覆うロアカバーを更に備えており、前記熱膨張性耐火材は、前記ロアカバーの下面を覆っている構成とする(請求項7)。
この構成によれば、層間塞ぎ装置を層間隙間に配設する際、ロアカバーの部分が層間隙間内に湾曲しながら入っていき、カーテンウォールに対し、その内面を押圧するように接する。このため、層間塞ぎ装置を層間隙間内により確実に保持することができる。
【0012】
また、前記ロアカバーは、前記ロアフックに着脱自在に取り付けられている構成とすることが好ましい(請求項8)。
この構成によれば、異なる長さのロアカバーを取り替え可能であり、各種幅の層間隙間に対応でき、汎用性に優れる。
また、前記熱膨張性耐火材は、更に輻射熱反射手段を備えている構成とすることが好ましい(請求項9)。
この構成によれば、火災時の炎による輻射熱を熱膨張性耐火材の部分で反射でき熱の伝わりを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る層間塞ぎ装置によれば、耐火繊維ブロックは、弾力性を有するので、層間隙間の幅が建築物のしなりにより変動しても、それに追従することができる。そして、万一、火災が発生した場合には、火炎の熱で熱膨張性耐火材が膨張するので、層間隙間における耐火繊維ブロックの下層側は、膨張した熱膨張性耐火材で充たされる。これにより、下層階から上層階への煙の拡散は有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る層間塞ぎ装置を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る層間塞ぎ装置を示す斜視図である。
【図3】第2の実施形態に係る層間塞ぎ装置を示す断面図である。
【図4】第3の実施形態に係る層間塞ぎ装置を示す断面図である。
【図5】第4の実施形態に係る層間塞ぎ装置を示す断面図である。
【図6】第5の実施形態に係る層間塞ぎ装置を示す断面図である。
【図7】第6の実施形態に係る層間塞ぎ装置を示す断面図である。
【図8】第6の実施形態に係る層間塞ぎ装置を層間隙間に配設する手順を示す概略構成図である。
【図9】第6の実施形態に係る層間塞ぎ装置を幅が広い層間隙間に配設した状態を示す断面図である。
【図10】第7の実施形態に係る層間塞ぎ装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
本発明に係る層間塞ぎ装置2について説明する前に、先ず、図1を参照しながら、層間隙間Sについて説明する。
一般に、高層建築物の外壁は、カーテンウォール4を連続的に配置することにより形成され、一方、各階層の床材8はコンクリートから形成され、例えば、H形鋼6からなる梁材に支持されている。ここで、高層建築物の柔構造を確保するために、カーテンウォール4の内面10と、この内面10と対向した床材8の端面12との間には、所定の隙間、即ち、層間隙間Sが設けられている。
【0016】
層間塞ぎ装置2は層間隙間Sに配設され、火災が発生した際、火炎や煙が層間隙間Sを介して下層階14から上層階16に伝わるのを防ぐ働きをなす。
このような層間塞ぎ装置2は、層間隙間Sを塞ぐ耐火繊維ブロック18を備えており、この耐火繊維ブロック18は、層間塞ぎ装置2の芯材として機能する。詳しくは、図2に示すように、耐火繊維ブロック18は長尺な直方体形状をなし、耐火性繊維を積層した集合体20を被覆材22で全体的に覆ったものである。なお、耐火性繊維としてはロックウールが一般的であるが、セラミックファイバ、グラスウール等を用いることもできる。
【0017】
この耐火繊維ブロック18は、上層階16側の上面24、下層階14側の下面26、床材8側の内側面30、カーテンウォール4側の外側面32及びその長手方向Lに離間した両端面34を有している。ここで、内側面30と外側面32との間の幅は、層間隙間Sの幅よりも僅かに大きく、上面24と下面26との間の高さは、床材8の高さのほぼ半分である。そして、耐火繊維ブロック18は、特に、幅方向Wの伸縮性に優れた特性を有する。それ故、層間隙間S内に耐火繊維ブロック18が配設されたとき、耐火繊維ブロック18は幅方向Wに圧縮された状態にある。
【0018】
耐火繊維ブロック18にはその内側面30側に掛止具36が設けられている。この掛止具36は、耐火繊維ブロック18を片持ちで床材8に掛止させ、層間隙間Sに対する耐火繊維ブロック18の上下方向の位置決めを容易にする。
より詳しくは、掛止具36は、一般的な建築資材に用いられるポリプロピレン等の合成樹脂製の薄い板材からなり、図1に示すように略S字形をなし、上下方向に延びるサイドカバー38と、このサイドカバー38の下縁及び上縁から互いに逆向きに延びるロア及びアッパフック40,42とを有する。サイドカバー38は耐火繊維ブロック18の内側面30全体を覆い、内側面30に接着されている。そして、ロアフック40は、耐火繊維ブロック18の下面26に沿って、カーテンウォール4側へ途中まで延び、その先端に上方を向いた係合爪48を有する。ロアフック40はその係合爪48を耐火繊維ブロック18の下面26に食い込ませた状態で、耐火繊維ブロック18を下側から支えている。
【0019】
一方、アッパフック42は、床材8の上面28に沿って延び、この上面28に掛止されている。即ち、耐火繊維ブロック18は掛止具36のアッパフック42により、床材8に引っ掛けられている。なお、アッパフック42を床材8に接着して、固定すれば、長手方向Lへの耐火繊維ブロック18の位置ずれを防止することができる。
更に、層間塞ぎ装置2は、耐火繊維ブロック18の下面26に熱膨張性耐火材44を備えている。この熱膨張性耐火材44は、約200℃以上に加熱されると熱膨張を開始し、強固な断熱層を形成する。熱膨張性耐火材44の膨張率は、約5倍〜40倍である。具体的には、熱膨張性耐火材44としてシート状の熱膨張性耐火ゴム(以下、単に、熱膨張ゴムという)44が用いられる。この熱膨張ゴム44は、一方の面に接着層を有しており、この接着層を介して耐火繊維ブロック18の下面26に接着され、この下面26の全体を覆っている。
【0020】
ここで、層間塞ぎ装置2の設置及びその機能につき、以下に詳述する。
作業者は、耐火繊維ブロック18及び熱膨脹ゴム44を幅方向に圧縮させながら層間塞ぎ装置2を上方から層間隙間S内へ押し込む。この押し込み過程にて、掛止具36のアッパフック42が床材8の上面28に掛止されると、それ以上の押し込みが規制されることから、層間隙間Sの所定位置に層間塞ぎ装置2を設置することができる。このようにして層間塞ぎ装置2の設置が完了すると、耐火繊維ブロック18はその上面24が床材8の上面28とほぼ面一に位置付けられる一方、その幅方向に熱膨脹ゴム44とともに圧縮された状態となっている。それ故、層間隙間S内の耐火繊維ブロック18はその復元力によりカーテンウォール4の内面10を押し、一方、掛止具36を介して床材8の端面12をも押す。つまり、耐火繊維ブロック18は、カーテンウォール4及び床材8を互いに離間させる方向への付勢力を発生し、層間隙間S内にてその幅方向両側に向け突っ張った状態にある。
【0021】
なお、図1から明らかなように、層間塞ぎ装置2の設置後、層間隙間Sは、その上側のほぼ半分が層間塞ぎ装置2で塞がれ、その下側半分は空間のまま残された状態にある。
層間塞ぎ装置2、即ち、耐火繊維ブロック18及び熱膨脹ゴム44は、上述のように、その幅方向に伸縮性を有しているので、建築物のしなりに伴う層間隙間Sの幅の変動を許容し、カーテンウォール4と床材8との間を拘束的に結合するものではない。この結果、層間塞ぎ装置2からの異音の発生や、カーテンウォール4若しくは床材8の破損は有効に防止される。
【0022】
一方、万一、火災が発生し、層間塞ぎ装置2の熱膨張ゴム44に熱が加われば、この熱膨張ゴム44は膨張して層間隙間Sの下側半分に残された空間を瞬時に充たし、下層階14から上層階16に向かう煙の流れを有効に防止する。しかも、耐火繊維ブロック18及び熱膨張ゴム44ともに優れた遮熱性、遮炎性を有するので、層間塞ぎ装置2の耐火性は、十分に確保されている。
次に、第2〜第7の実施形態について説明するにあたり、既に説明した構成部材及び部位と同一の機能を発揮するものについては同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0023】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態の層間塞ぎ装置50を示す。この層間塞ぎ装置50は、掛止具36の形状及び熱膨張ゴム44の形態が変更された点のみで第1の実施形態と相違する。
第2の実施形態の掛止具52は、その横断面形状がT字状をなしている。より詳しくは、掛止具52のサイドカバー38は耐火繊維ブロック18の内側面30全体を覆っておらず、その上縁から内側面30の高さの約半分まで下方向に延びている。そして、サイドカバー38の上縁にはアッパフック42とは逆向きのアッパフック56が付加され、このアッパフック56は耐火繊維ブロック18の上面24に沿い、その幅方向中央に向けて延びている。なお、ロアフック40は省略されている。ここで、サイドカバー38及びアッパフック56は耐火繊維ブロック18に接着され、アッパフック42は床材8に接着されている。
【0024】
熱膨張ゴム54は、耐火繊維ブロック18の下部を覆う断面U字形をなし、耐火繊維ブロック18の下面26全体のみならず、耐火繊維ブロック18の内側面30及び外側面32を部分的に覆っている。なお、U字形とは、耐火繊維ブロック18の下面26、内側面30及び外側面32の3面を覆うコ字形状も含む。
このように、熱膨張ゴム54は、カーテンウォール4の内面10及び床材8の端面12に接する部分を有しているので、万一の火災時には、耐火繊維ブロック18の幅方向両側にも熱膨張ゴム54が膨張する。それ故、耐火繊維ブロック18の幅方向両側にてカーテンウォール4及び床材8との間に僅かな隙間が存在していても、これら隙間は熱膨張ゴム54によって塞がれ、より確実に煙の拡散を抑えることができる。
なお、熱膨張ゴム54は、耐火繊維ブロック18の下面26、内側面30及び外側面32の全体を覆っていてもよい。
【0025】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態の層間塞ぎ装置58を示す。この層間塞ぎ装置58は、掛止具52に代え、床材8に耐火繊維ブロック18を固定する粘着剤60を備えた点のみで第2の実施形態と相違する。
このような、第3の実施形態の層間塞ぎ装置58は、部品点数が減り、経済的である。
【0026】
(第4の実施形態)
図5は、第4の実施形態の層間塞ぎ装置62を示す。この層間塞ぎ装置62は、掛止具36の形態及び熱膨張ゴム44の形態を変更した点のみで第1の実施形態と相違する。
第4の実施形態の掛止具64は、掛止具36にアッパフック68が追加されたものに相当する。詳しくは、アッパフック68は耐火繊維ブロック18の上面24に沿い、その幅方向中央に向けて延び、その先端に下向きの係合爪70を一体に有する。アッパフック68はその係合爪70が耐火繊維ブロック18の上面24に食い込んだ状態で、耐火繊維ブロック18の上面24に重ね合わされ、ロアフック40と協働して耐火繊維ブロック18を上下から挟み込んで保持する。このように掛止具64は係合爪48,70が耐火繊維ブロック18にそれぞれ食い込むので、耐火繊維ブロック18の保持性に優れている。
【0027】
更に、層間塞ぎ装置62は、耐火繊維ブロック18に掛止具64を固定する粘着テープ72を含むことができる。具体的には、粘着テープ72はアッパフック42,68を含む耐火繊維ブロック18の上面24の全域に貼られている。ここで、この粘着テープ72としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、耐火性に優れ、輻射熱反射率が高いアルミガラスクロステープ(以下、単に、アルミテープという)72が用いられる。
【0028】
一方、第4の実施形態の複合熱膨脹シート76は2層構造をなし、下方を向いた表面を形成する熱膨張ゴム層66と、熱膨張ゴム層66の裏面に張り付けられたウレタン層74とを有し、このウレタン層74は、熱膨張ゴムシート層66が薄くても、複合熱膨脹シート76を一定の形状を保持するための芯材として機能する。
【0029】
即ち、複合熱膨脹シート76は、下方に向けて凸となる半円筒形状に湾曲させた状態で耐火繊維ブロック18の下面26に取り付けられ、この下面26の全域を覆っている。このように複合熱膨脹シート76が湾曲されても、ウレタン層74の存在により、複合熱膨脹シート76は、その湾曲状態を安定して維持することができる。
【0030】
より詳しくは、複合熱膨脹シート76は平坦な状態にあるとき、耐火繊維ブロック18の幅Wよりも広い幅を有する。それ故、複合熱膨脹シート76の両側縁78,80が耐火繊維ブロック18の下面26の両側縁に直接又はロアフック40を介して当接した状態で、耐火繊維ブロック18に固定されると、複合熱膨脹シート76は下方に向けて凸の半円筒形に湾曲される。なお、複合熱膨脹シート76の両側縁78,80は、耐火繊維ブロック18の上面24の全域に貼られたアルミテープ72と同様なアルミテープ72で耐火繊維ブロック18側に固定されている。なお、参照符号88は下面26と複合熱膨脹シート76の裏面との間にて確保された内部空間を示す。
【0031】
以上のような第4の実施形態の層間塞ぎ装置62によれば、火災の際、複合熱膨脹シート76、即ち、その熱膨張ゴム層66が加熱されると、熱膨張ゴム層66は図4中の複数の矢印で示すように、放射状に膨張し、層間隙間Sにおける耐火繊維ブロック18の下方に確保された空間を充たすことができる。この場合、耐火繊維ブロック18の両側面を熱膨張ゴムで覆わずとも、膨張する熱膨張ゴム層66により層間隙間Sを密に塞ぐことができ、より簡便に且つ確実に煙の拡散を防止することができる。
【0032】
なお、本実施形態においては、複合熱膨脹シート76は、下方に向けて凸となる半円筒形状に湾曲させた状態で耐火繊維ブロック18の下面26に取り付けられているが、本発明は、この態様に限定されるものではなく、複合熱膨脹シート76は、下方に向けて凸の形状となるコ字状又はU字状としてもよい。
【0033】
(第5の実施形態)
図6は、第5の実施形態の層間塞ぎ装置63を示す。この層間塞ぎ装置63は、複合熱膨張シート76の形態を変更した点のみで第4の実施形態と相違する。
第5の実施形態の複合熱膨張シート86は、熱膨張ゴム層66の表面全体を覆うアルミテープ73を更に含んでいる。
【0034】
本実施形態によれば、火災が起きた場合、アルミテープ73は下層階からの炎による輻射熱を反射することができ、熱膨張ゴム層66への熱の伝達を遅延させることができる。その後、熱膨張ゴム層66の温度が所定温度に達すると熱膨張ゴム層66が膨張する。
なお、アルミテープ73はその両側縁を延長させることで、前述した粘着テープ(アルミテープ)72を兼用することもできる。
【0035】
(第6の実施形態)
図7は、第6の実施形態の層間塞ぎ装置90を示す。この層間塞ぎ装置90は、掛止具64の形態及び熱膨張ゴム層66の配置を変更した点のみで第4の実施形態と相違する。
【0036】
第6の実施形態の掛止具92は、掛止具64にフレキシブルなロアカバー96が追加されたものに相当する。このロアカバー96は、弾性を有する薄板からなり、基端部98がロアフック40の下面に一体的に結合され、その先端100が自由端となっている。より詳しくは、ロアカバー96の基端部98はサイドカバー38の下縁との間に所定の間隔を存して位置付けられている。このロアカバー96は、自由状態にあるとき、ロアフック40から湾曲しながら下方且つ耐火繊維ブロック18の外側面32側に向けて延び、下向きに凸の湾曲形状を有する。そして、ロアカバー96の先端100には、折り返し片104が一体に形成され、この折り返し片104は耐火繊維ブロック18側に向けて突出し、その突出端はロアカバー96の内面に向けて更に折り返されている。ロアカバー96の基端部98から先端100までの離間距離は、層間隙間Sの幅よりも或る程度長い。それ故、折返し片104が耐火繊維ブロック18の下面26に当接した状態で、ロアカバー96が層間隙間S内に配置されたとき、ロアカバー96の先端100とカーテンウォール4との間、また、ロアカバー96の基端部98と床材8との間に所定の間隔を確保した状態で、ロアカバー96はほぼ下向きに凸の半円筒形に湾曲される。
【0037】
第6の実施形態の熱膨張ゴム層94は、ロアカバー96の下面に全体に形成され、上述の間隔を塞ぐのに十分な厚さを有する。
このような熱膨張ゴム層94を備えたロアカバー96が層間隙間Sに嵌め込まれると、熱膨張ゴム層94とサイドカバー38との段差がなくなり、サイドカバー38とロアカバー96とが滑らかに繋がれる。このため、層間塞ぎ装置90を層間隙間S内に配設する際、ロアカバー96の基端部98付近が床材8の角に引っ掛かることを防ぐことができる。
【0038】
次に、図8を参照しながら、第6の実施形態の層間塞ぎ装置材90の設置手順を以下に詳述する。
作業者は、図8(a)に示すように、層間塞ぎ装置90を層間隙間Sの近傍に運び、その耐火繊維ブロック18を矢印A,Bで示すように、その幅方向両側から圧縮変形させる。この状態にて、図8(b)に示すように、ロアカバー96の先端100をカーテンウォール4の内面10に熱膨張ゴム層94を介して当接させた後、基端部98側の部位を床材8の角に熱膨張ゴム層94を介して当接させながら、層間塞ぎ装置90を層間隙間S内へ押し込んでいく。この押し込み過程にて、ロアカバー96はその弾性変形を伴いながら、徐々に半円筒形状に曲げられていく。そして、図8(c)に示すように、アッパフック42が床材8の上面28に当接すると、層間塞ぎ装置90における耐火繊維ブロック18の上面24は床材8の上面28と面一の状態となり、一方、耐火繊維ブロック18の下面26に、ロアカバー96の折返し片104が当接し、ロアカバー96とともに熱膨張ゴム層94が半円筒形状にして下方の下層階側に向け膨出した状態となる。
【0039】
本実施形態においては、ロアカバー96が弾性を有しており、その先端100がカーテンウォール4を押圧する方向に付勢力を発揮するので、より確実に層間塞ぎ装置90を層間隙間S内に保持することができる。
【0040】
ここで、図9に示されるように、層間隙間Sの幅が設計値よりも広くなっていることがある。この場合、耐火繊維ブロック18の外側面32とカーテンウォール4の内面10との間に僅かな隙間101が生じてしまう。しかしながら、本実施形態の層間塞ぎ装置90によれば、ロアカバー96は弾性を有し、その先端100にてカーテンウォール4に常に接触でき、しかも、その折返し片104はある程度の長さを有していれば、その先端100から耐火繊維ブロック18の下面26との間に確実に架け渡され、ロアカバー96の先端100が隙間101に進入することはなく、ロアカバー96、即ち、熱膨張ゴム層94は良好な半円筒形状となって、層間隙間Sを塞ぐことができる。
なお、第6の実施形態でも、掛止具92と耐火繊維ブロック18とはアルミテープ(図示しない)で固定されていることは勿論、熱膨張ゴム層94の外表面全体をアルミテープ73で覆うようにしてもよい。
【0041】
(第7の実施形態)
図10は、第7の実施形態の層間塞ぎ装置112を示す。この層間塞ぎ装置112は、掛止具92の形態を変更した点のみで第6の実施形態と相違する。
第7の実施形態における掛止具114は、着脱可能なロアカバー96を備えている。詳しくは、掛止具114において、そのロアフック40の基部にはレール120が下方に向けて一体に突設され、このレール120は耐火繊維ブロック18の長手方向に沿って延びるレール溝115を形成する。具体的には、レール120は2本のレール半体116からなり、これらレール半体116は、耐火繊維ブロック18の幅方向に互いに平行に離間してレール溝115の溝幅を決定し、それら下端は互いに接近する方向に折曲されることで、レール溝115のレール底122をそれぞれ形成している。ここで、これらレール底122間には、所定間隔の間隙123が確保され、この間隙123はロアカバー96の厚さよりも若干広い。
【0042】
一方、ロアカバー96の基端部98は横断面でみてT字形状をなし、ロアカバー96の表裏両面から突出した一対のガイド突起124,124を有している。
それ故、ロアカバー96の一対のガイド突起124,124が間隙123を通じて、レール溝115に挿通されることにより、ロアカバー96はロアフック40に装着されている。この態様によれば、ロアカバー96及び熱膨張ゴム層94の交換を容易に行うことができる。
【0043】
ここで、長さの異なるロアカバー96を数種類用意しておけば、層間隙間Sの幅が異なっていても、その層間隙間S内に層間塞ぎ装置を配設可能となる。
なお、上述した実施形態においては、カーテンウォールと床材との間の層間隙間Sに用いられる層間塞ぎ装置について説明してきたが、本発明はこの態様に限定されるものではなく、本発明の層間塞ぎ装置は、カーテンウォールのほか、プレキャストコンクリート壁等の他の壁パネルを用いて形成された層間隙間Sに適用することもできる。
【符号の説明】
【0044】
2 層間塞ぎ装置
4 カーテンウォール
8 床材
10 内面
12 端面
14 下層階
16 上層階
18 耐火繊維ブロック
20 耐火繊維の集合体
22 被覆材
24 上面
26 下面
30 内側面
32 外側面
36 掛止具
38 サイドカバー
40 ロアフック
42 アッパフック
44 熱膨張性耐火ゴム
66 熱膨張ゴム層
72,73 アルミガラスクロステープ(アルミテープ)
76 複合熱膨張シート
96 ロアカバー
115 レール溝
120 レール
124 ガイド突起
S 層間隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の外壁を形成する壁パネルの内面と、前記建築物の各階層の床材との間の層間隙間を塞ぐ層間塞ぎ装置において、
前記層間隙間を塞ぐべく前記層間隙間内に配置されるべき耐火繊維ブロックであって、耐火性繊維の集合体からなり且つ弾力性を有した耐火繊維ブロックと、
前記耐火繊維ブロックの少なくとも下層側に配設され、加熱を受けたときに膨張する熱膨張性耐火材と
を具備したことを特徴とする層間塞ぎ装置。
【請求項2】
前記熱膨張性耐火材は、
前記耐火繊維ブロックの横断面でみてその下部を覆う形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の層間塞ぎ装置。
【請求項3】
前記熱膨張性耐火材は、
前記耐火繊維ブロックから下方に向かって凸の形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の層間塞ぎ装置。
【請求項4】
前記耐火繊維ブロックを保持した状態で前記床材に引っ掛けるための掛止手段を更に具備したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の層間塞ぎ装置。
【請求項5】
前記掛止手段は、掛止具を含み、
前記掛止具は、
前記床材の上面に引っ掛けられるアッパフックと、
前記アッパフックから前記耐火繊維ブロックの側面に沿って一体に延び、前記耐火繊維ブロックに結合されたサイドカバーと
を有することを特徴とする請求項4に記載の層間塞ぎ装置。
【請求項6】
前記掛止具は、
前記サイドカバーの上縁及び下縁から一体に延び、前記耐火繊維ブロックを上下から挟み付ける一方、先端に前記耐火繊維ブロックに食い込む係止爪をそれぞれ有したアッパ及びロアフックを更に含むことを特徴とする請求項5に記載の層間塞ぎ装置。
【請求項7】
前記掛止具は、
前記サイドカバーの下縁から下方に延び、弾性変形可能なロアカバーであって前記層間隙間に層間塞ぎ装置が配設されたとき、下方に向かって凸状の湾曲形状をなして前記耐火繊維ブロックを下方から覆うロアカバーを更に備えており、
前記熱膨張性耐火材は、前記ロアカバーの下面を覆っていることを特徴とする請求項6に記載の層間塞ぎ装置。
【請求項8】
前記ロアカバーは、前記ロアフックに着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項7に記載の層間塞ぎ装置。
【請求項9】
前記熱膨張性耐火材は、更に輻射熱反射手段を備えていることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の層間塞ぎ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−196093(P2011−196093A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64071(P2010−64071)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(398036863)株式会社東京パイロン販売 (2)
【Fターム(参考)】