説明

岸壁クレーン

【課題】
大規模地震(例えばレベル2地震動)が発生した場合であっても、岸壁クレーンが転倒する事故、及び走行装置が破壊される事故等を抑制することができる岸壁クレーンを提供する。
【解決手段】
岸壁クレーン1が、クラッシャブルエリア4と、クラッシャブルエリア4の上方に上端を設置した補助脚5を有しており、クラッシャブルエリア4が、支持ピン57と、鉛直方向を長手方向とし支持ピン57を連通した長穴11と、支持ピン57を長穴11の下方に固定し且つ岸壁クレーン1の重量を支持する固定プレート10を有しており、地震発生時に、固定プレート10による固定が解除され、支持ピン57が長穴11に沿って上方に移動し、クラッシャブルエリア4が鉛直方向に短くなり、補助脚5の下端が岸壁40に接地して岸壁クレーン1を支持する構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾や内陸地のコンテナターミナルなどで、コンテナの荷役に使用される岸壁クレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾や内陸地等のコンテナターミナルでは、岸壁クレーンや門型クレーンによって、船舶、鉄道及びトレーラ間のコンテナの荷役を行っている。この岸壁クレーンの地震対策として、クレーンの脚構造物と走行装置の間に免震装置(免振装置ともいう)を設置し、脚構造物に揺脚構造を採用した免震クレーンがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図7に、コンテナターミナルに設置した岸壁クレーン1Xを示す。コンテナターミナルは、岸壁クレーン1Xと、岸壁40と、岸壁40に敷設したレール(図示しない)を有している。この岸壁クレーン(以下、クレーンという)1Xは、海側脚と陸側脚を備えた脚構造物3と、脚構造物3で支持するブーム45及びガーダ46を有している。また、脚構造物3と走行装置2Xの間に、積層ゴム等で構成した免震装置41と、脚構造物3の一部を揺脚構造とする枢支ピン44を有している。なお、43はコンテナ、47は荷役装置(トロリ)、48はコンテナ船を示す。また、xはクレーンの横行方向(海陸方向)、zは鉛直方向を示す。
【0004】
次に、このクレーン1Xによる荷役作業について説明する。クレーン1Xは、コンテナ船48に搭載したコンテナ43をトロリ47の吊り具で吊上げ、岸壁40で待機しているトレーラ(図示しない)に搭載する荷役作業を行っている。又はクレーン1Xは、コンテナ43をトレーラからコンテナ船48に積み込む荷役作業を行っている。また、この荷役作業において、クレーン1Xは、岸壁40に沿って(図7の紙面奥又は手前方向に)敷設したレール上を走行装置2Xで移動し、荷下ろしあるいは積み込みの位置を変更しながら荷役作業を行っている。
【0005】
次に、このクレーン1Xの地震発生時の動作について説明する。地震発生時には、免震装置41を固定していたせん断ピン等が破断し、免震装置41が作動する。免震装置41は、地表面の振動からクレーン1Xを絶縁する効果を有する。ここで、免震装置41及び枢支ピン44による揺脚構造は、クレーン1Xの横行方向xの振動を吸収することができる。また、クレーン1Xの走行方向y(図7の紙面奥又は手前方向)の振動は、走行装置2Xがレールに沿って移動して吸収する構成としていた。
【0006】
図8に、クレーン1Xの走行装置2X周辺の側面(yz平面)拡大図を示す。走行装置2Xは、走行輪51を備えたボギー52と、中間イコライザ53と、主イコライザ54を有している。また、主イコライザ54に、主イコライザピン(支持ピン)57を介して脚連結部材55を連結している。この脚連結部材55は、免震装置41を介して脚構造物3に連結している。また、40は岸壁40、58は中間イコライザピン(支持ピン)58、59はボギーピン(支持ピン)59、yはクレーンの走行方向yを示している。
【0007】
図9に、走行装置2X周辺の正面(xz平面)の端面概略図を示す。図9Aに通常時(荷役作業時)の走行装置2Xを示し、図9Bに地震発生時の走行装置2Xを示す。この図9は、ボギー52、中間イコライザ53、主イコライザ54、及び脚連結部材55の端面図をつなぎ合わせたものである。50はレール、Cは走行装置2X及び免震装置41の規準線Cを示している。また、図9Bに示すdXは、免震装置41が最大に変位した際の変位長さdXを示している。
【0008】
しかしながら、上記の岸壁クレーン1Xは、大規模地震が発生した場合、横行方向xの変位を十分に吸収することができないという問題を有している。ここで、大規模地震とは、例えば、平成18年の港湾法改正により想定されている地震波であり、レベル2地震動と呼ばれるものである。このレベル2地震動とは、土木学会の第三次提言により、現在から将来にわたって当該地点で考えられる最大級の強さを持つ地震動と定義されている。
【0009】
この岸壁クレーン1Xの有する従来の免震装置41は、横行方向xに±300mm程度の変位長さdXを許容することができる。しかし、大規模地震発生時には、岸壁クレーン1Xが許容すべき変位長さは、±1000mm程度又はそれ以上となる。そのため、従来の岸壁クレーン1Xは、大規模地震に対して十分な免震効果を発揮することができないという問題を有している。ここで、クレーン1Xの最大の変位長さdXが不十分である場合は、クレーン1Xが転倒、又は走行装置2Xの破壊等の事故につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−44168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、岸壁クレーンにおいて、大規模地震(例えばレベル2地震動)が発生した場合であっても、岸壁クレーンが転倒する事故、及び走行装置が破壊される事故等を抑制することができる岸壁クレーンを提供することである。特に、±1000mm以上の変位長さを、吸収することのできる岸壁クレーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための本発明に係る岸壁クレーンは、脚構造物と、走行輪を備えた走行装置と、前記脚構造物と前記走行装置を連結する脚連結部材と、前記脚連結部材及び前記走行装置に設置した複数の支持ピンを有する岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが、前記支持ピンの周囲に形成したクラッシャブルエリアと、前記クラッシャブルエリアの上方に上端を設置した補助脚を有しており、前記クラッシャブルエリアが、前記支持ピンと、鉛直方向を長手方向とし前記支持ピンを連通した長穴と、前記支持ピンを前記長穴の下方に固定し且つ前記岸壁クレーンの重量を支持する固定プレートを有しており、地震発生時に、前記固定プレートによる固定が解除され、前記支持ピンが前記長穴に沿って上方に移動し、前記クラッシャブルエリアが鉛直方向に短くなり、前記補助脚の下端が岸壁に接地して前記岸壁クレーンを支持する構成を有することを特徴とする。
【0013】
この構成により、大規模地震(例えばレベル2地震動)が発生した場合であっても、横行方向xの振動を十分に吸収することができる。これは、岸壁クレーンが、補助脚で安定して支持され、且つ岸壁上を安定して移動できるためである。また、岸壁クレーンの転倒事故、及び走行装置の破壊事故を防止することができる。これは、クラッシャブルエリアの破壊(収縮)により、クレーンと走行装置の連結が解除されるからである。更に、地震とともに停電が発生した場合であっても、クレーンは地震動を吸収することができる。これは、クレーンが、クラッシャブルエリアの破壊により、受動的に免震効果を得られるためである。
【0014】
上記の岸壁クレーンにおいて、前記クラッシャブルエリアが、前記脚連結部材に形成した鉛直方向を長手方向とする長穴と、前記支持ピンを前記長穴の下方に固定する固定プレートを有することを特徴とする。この構成により、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0015】
上記の目的を達成するための本発明に係る岸壁クレーンは、脚構造物と、走行輪を備えた走行装置を有する岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが、前記脚構造物と前記走行輪の間に形成したクラッシャブルエリアと、前記クラッシャブルエリアの上方に上端を設置した補助脚を有しており、前記クラッシャブルエリアが、鉛直方向に収縮可能に構成し且つ前記岸壁クレーンの重量を支持するシリンダを有しており、地震発生時に、前記シリンダが収縮し、前記クラッシャブルエリアが鉛直方向に短くなり、前記補助脚の下端が岸壁に接地して前記岸壁クレーンを支持する構成を有することを特徴とする。この構成により、前述と同様の作用効果に加え、クラッシャブルエリアが破壊されるタイミングの制御を、精密に行うことができる。
【0016】
上記の岸壁クレーンにおいて、前記補助脚が、前記脚構造物又は前記走行装置に立設した水平部材と、前記水平部材の下面側に設置した柱状部材と、前記柱状部材の下端に設置した接地部材を有していることを特徴とする。この構成により、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0017】
上記の岸壁クレーンにおいて、前記接地部材が、下面に、前記岸壁との摩擦抵抗を低減する摺動部を有しており、前記摺動部が、前記接地部材の下面に回転可能に設置した球状又は円柱状の転動体と、接地部材の下面を覆う被膜と、前記接地部材の下面と前記被膜で形成した空間内に充填した潤滑剤を有していることを特徴とする。この構成により、岸壁クレーンは、地震動を十分に吸収することができる。これは、接地部材と岸壁の間の摩擦抵抗を低減できるためである。
【0018】
上記の岸壁クレーンにおいて、前記岸壁クレーンが、減衰機構を有しており、前記減衰機構が、岸壁に敷設したレールを掴むレールクランプと、前記レールクランプに固定したケーシングと、前記ケーシングに沿って摺動するピストンロッドを有しており、前記ピストンロッドの両端部を、前記補助脚に固定したことを特徴とする。この構成により、岸壁クレーンは、地震動を減衰することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る岸壁クレーンによれば、岸壁クレーンにおいて、大規模地震(例えばレベル2地震動)が発生した場合であっても、岸壁クレーンが転倒する事故、及び走行装置が破壊される事故等を抑制することができる岸壁クレーンを提供することができる。特に、±1000mm以上の変位長さを、吸収することのできる岸壁クレーンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る実施の形態の岸壁クレーンの走行装置の側面を示した図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の岸壁クレーンの走行装置の正面を示した図である。
【図3】本発明に係る実施の形態の岸壁クレーンの走行装置の正面を示した図である。
【図4】本発明に係る異なる実施の形態の岸壁クレーンのクラッシャブルエリアを示した図である。
【図5】本発明に係る異なる実施の形態の岸壁クレーンの潤滑部を示した図である。
【図6】本発明に係る異なる実施の形態の岸壁クレーンの減衰機構を示した図である。
【図7】従来の岸壁クレーンを示した図である。
【図8】従来の岸壁クレーンの走行装置の側面を示した図である。
【図9】従来の岸壁クレーンの走行装置の正面を示した端面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態の岸壁クレーンについて、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明に係る実施の形態の岸壁クレーン1の走行装置2の側面(yz平面)の概略図を示す。岸壁クレーン(以下、クレーンという)1は、走行装置2と、脚構造物3を有している。また、クレーン1は、地震発生時に鉛直方向に潰れるクラッシャブルエリア4(長穴タイプ)と、走行装置2の側方(図1紙面手前奥方向)に設置した補助脚(以下、アウトリガという)5を有している。
【0022】
このクラッシャブルエリア4は、脚連結部材55に形成した鉛直方向を長手方向とする長穴11と、主イコライザピン57を長穴11の下方に固定する固定プレート10と、固定プレート10による固定を解除する解除構造(図示しない)を有している。また、アウトリガ5は、水平部材20と、柱状部材21と、接地部材22を有している。なお、h1は、主イコライザピン57の上端から、長穴11の上端までの長さを示している。
【0023】
図2に、通常時(荷役作業時)の走行装置2の正面(xz平面)概略図を示す。クレーン1は、脚構造物3と、脚構造物3にクラッシャブルエリア4を介して連結した走行装置2と、脚構造物3に固定したアウトリガ5を有している。
【0024】
走行装置2は、レール50上を走行する走行輪51と、ボギー52と、中間イコライザ53と、主イコライザ54と、主イコライザピン57を有している。また、脚連結部材55に形成したクラッシャブルエリア4は、長穴11と、固定プレート10(10a、10b)を有している。この固定プレート10は、鉛直荷重には強いが、横行方向xの力を受けると破壊される構造(解除機構)を有している。更に、アウトリガ5は、脚構造物3に固定した水平部材20と、水平部材20に固定した柱状部材21と、柱状部材21の端部に設置した接地部材22を有している。この接地部材22は、下面に、岸壁40との摩擦抵抗を低減する摺動部23を有している。
【0025】
ここで、クレーン1の荷重(重量)は、固定プレート10(10a、10b)及び主イコライザピン57を介して、走行装置2が支持している。クレーン1は、通常4本の脚と、4つの走行装置2で支持されている。そのため、固定プレート10には、クレーン1の大きさにより異なるが、例えば1000tの岸壁クレーンであれば250tの荷重がかかる。また、アウトリガ5の接地部材22(摺動部23)は、岸壁40に接触しない高さ(h2)となるように構成している。
【0026】
図3に、地震発生時の走行装置2の正面(xz平面)概略図を示す。地震動により横行方向xの力を受けた固定プレート10は、破壊されクレーン1から脱落する。この固定プレート10の脱落により、クラッシャブルエリア4が鉛直方向に潰れ、クレーン1が落下する。クレーン1の落下により、アウトリガ5の接地部材22が、岸壁40に接地し、クレーン1を支持する。
【0027】
このとき、主イコライザピン57は、脚連結部材55の長穴11に対して上方に移動している。また、クレーン1の荷重は、主イコライザピン57には働いていない。つまり、アウトリガ5が、クレーン1の全荷重を支持している状態である。
【0028】
クレーン1は、アウトリガ5により支持された状態で、横行方向xに滑りながら、地震動を吸収する。ここで、dは、クレーン1の変位長さdを示している。また、地震発生後のクレーン1の復旧作業は、クレーン1をジャッキアップし、新たな固定プレート10を
設置して完了となる。
【0029】
ここで、固定プレート10(10a、10b)は、地震発生時に破壊されるように解除機構を有している。この解除機構は、例えば、固定プレート10aに水平方向の溝を設ける、又は固定プレート10bの断面をI型とする等により構成する。この解除機構により、固定プレート10は、地震発生時に座屈又は破壊され、クレーン1の支持を解除する。
【0030】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、大規模地震(例えばレベル2地震動)が発生した場合であっても、横行方向xの振動を十分に吸収することができる。これは、クレーン1が、アウトリガ5で安定して支持され、且つ岸壁40上を安定して移動できるためである。
【0031】
第2に、走行輪51とレール50の引っかかりにより発生するクレーンの転倒事故、及び走行装置の破壊事故を防止することができる。これは、クラッシャブルエリア4の破壊により、クレーン1と走行装置2の連結が解除されるからである。
【0032】
第3に、地震とともに停電が発生した場合であっても、クレーン1は地震動を吸収することができる。これは、クレーン1が、クラッシャブルエリア4の破壊により、受動的に免震効果を得られるためである。つまり、クラッシャブルエリア4の破壊が、クレーン1に働く地震動により行われ、大きな電力や駆動力等を不要とするためである。
【0033】
なお、クラッシャブルエリア4の形成する位置は、上記に限られない。例えば、中間イコライザピン(支持ピン)58、又はボギーピン(支持ピン)59(図8参照)を利用してクラッシャブルエリアを形成してもよい。また、接地部材22の下面の摺動部23は、例えばナイロン等の潤滑材料で形成することが望ましい。この構成により、クレーン1は、岸壁40上を自在に滑り、地震動を効果的に吸収することができる。更に、固定プレート10の解除機構は、固定プレート10とクレーン1の脚構造物3等をワイヤ等で連結する構成としてもよい。この構成により、固定プレート10は、地震発生時にワイヤ等により引き抜かれ、クレーン1の支持を解除することができる。加えて、脚構造物3の下方に免震装置41(図8参照)を設置してもよい。この構成により、クレーン1の耐震性能を向上することができる。
【0034】
図4に、本発明に係る異なる実施の形態の岸壁クレーン1のクラッシャブルエリア4a(シリンダタイプ)の概略を示す。図4Aに、通常時のクラッシャブルエリア4aの状態を示す。図4Bに、地震発生時のクラッシャブルエリア4aの状態を示す。クラッシャブルエリア4aは、伸張したシリンダ12(例えば油圧シリンダ)と、シリンダ12の上端に設置した天板13と、シリンダ12の下端に設置した底板14と、せん断ピン15を有している。このクラッシャブルエリア4aは、天板13と脚構造物3をせん断ピン15で連結し、底板14を脚連結部材55に固定している。なお、天板13を脚構造物3に固定し、底板14と脚連結部材55をせん断ピン15で連結してもよい。また、天板13又は底板14を設置しない構成としてもよい。
【0035】
次に、クラッシャブルエリア4aの動作について説明する。地震が発生した際に、シリンダ12内の圧力を開放する。このシリンダ12は、クレーン1の荷重により収縮する。同時に、地震動により横行方向xの力により、せん断ピン15が破壊され、脚構造物3と走行装置2(脚連結部材55)の連結が解除される。
【0036】
ここで、シリンダ12の圧力の開放(油圧シリンダの油圧の開放)は、例えばソレノイドバルブ等で行うことができる。このソレノイドバルブは、通電している際に閉とし、電気が流れないときに開とするように構成することが望ましい。つまり、ソレノイドバルブ
は、緊急地震速報又は地震計等からの信号を入力信号として開とすることができ、且つ、停電の発生等により入力信号を受信できない場合も開とすることができる。
【0037】
また、せん断ピン15は、通常時には破断せず、予め定めた大きさの力(地震動)を受けたときのみ破断するように構成することが望ましい。なお、クラッシャブルエリア4aの解除機構は、シリンダ12の圧力を開放する構造及びせん断ピン15で構成している。
【0038】
上記の構成により、クラッシャブルエリア4aが破壊されるタイミングの制御を、精密に行うことができる。
【0039】
図5に、本発明に係る異なる実施の形態の岸壁クレーン1のアウトリガ5bの概略を示す。図5Aに、通常時のアウトリガ5bの接地部材22bの状態を示す。接地部材22bは、下面に摺動部23bを有している。摺動部23bは、接地部材22bの下面に回転可能に設置した球状又は円柱状の転動体25と、接地部材22bの下面を覆う被膜26と、接地部材22bの下面と被膜26で形成した空間内に充填した潤滑剤27を有している。被膜26は、例えばゴム製の膜など、潤滑剤27を保持できるものであればよい。また、潤滑剤27は、例えば油などを使用することができる。
【0040】
次に、摺動部23bの動作について説明する。地震が発生すると、クラッシャブルエリア4(図示しない)が破壊され、接地部材22bが岸壁40に接地する。このとき、摺動部23bの被膜26が破れる(図5B参照)。潤滑剤27で潤滑された転動体25が回転する。クレーンは、岸壁40上を自在に滑り、地震動を吸収する。
【0041】
この構成により、クレーンは、地震動を十分に吸収することができる。これは、接地部材22bと岸壁40の間の摩擦抵抗を低減できるためである。
【0042】
図6に、本発明に係る異なる実施の形態の岸壁クレーン1の減衰機構30の概略を示す。図6Aに、通常時の減衰機構30の状態を示す。減衰機構30は、レール50を掴むレールクランプ31と、レールクランプ31に固定したケーシング32と、ケーシング32に沿って摺動するピストンロッド33を有している。このピストンロッド33は、例えば、アウトリガ5(図示しない)の接地部材22cに固定している。
【0043】
次に、減衰機構30の動作について説明する。地震が発生すると、クラッシャブルエリア4(図示しない)が破壊され、接地部材22c(特に摺動部23c)が岸壁40に接地する(図6B参照)。クレーンが横行方向xに移動すると、ピストンロッド33がケーシング32に対して、抵抗を受けながら摺動する。つまり、減衰機構30は、クレーンの横行方向xの移動を減衰することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 岸壁クレーン(クレーン)
2 走行装置
3 脚構造物
4、4a クラッシャブルエリア
5、5a、5b 補助脚(アウトリガ)
10、10a、10b 固定プレート
11 長穴
12 シリンダ(油圧シリンダ)
13 天板
14 底板
15 せん断ピン
20 水平部材
21 柱状部材
22 接地部材
23 摺動部
25 転動体
26 被膜
27 潤滑剤
30 減衰機構
31 レールクランプ
32 ケーシング
33 ピストンロッド
50 レール
51 走行輪
55 脚連結部材
57 支持ピン(主イコライザピン)
58 支持ピン(中間イコライザピン)
59 支持ピン(ボギーピン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚構造物と、走行輪を備えた走行装置と、前記脚構造物と前記走行装置を連結する脚連結部材と、前記脚連結部材及び前記走行装置に設置した複数の支持ピンを有する岸壁クレーンにおいて、
前記岸壁クレーンが、前記支持ピンの周囲に形成したクラッシャブルエリアと、前記クラッシャブルエリアの上方に上端を設置した補助脚を有しており、
前記クラッシャブルエリアが、前記支持ピンと、鉛直方向を長手方向とし前記支持ピンを連通した長穴と、前記支持ピンを前記長穴の下方に固定し且つ前記岸壁クレーンの重量を支持する固定プレートを有しており、
地震発生時に、前記固定プレートによる固定が解除され、前記支持ピンが前記長穴に沿って上方に移動し、前記クラッシャブルエリアが鉛直方向に短くなり、前記補助脚の下端が岸壁に接地して前記岸壁クレーンを支持する構成を有することを特徴とする岸壁クレーン。
【請求項2】
前記クラッシャブルエリアが、前記脚連結部材に形成した鉛直方向を長手方向とする長穴と、前記支持ピンを前記長穴の下方に固定する固定プレートを有することを特徴とする請求項1に記載の岸壁クレーン。
【請求項3】
脚構造物と、走行輪を備えた走行装置を有する岸壁クレーンにおいて、
前記岸壁クレーンが、前記脚構造物と前記走行輪の間に形成したクラッシャブルエリアと、前記クラッシャブルエリアの上方に上端を設置した補助脚を有しており、
前記クラッシャブルエリアが、鉛直方向に収縮可能に構成し且つ前記岸壁クレーンの重量を支持するシリンダを有しており、
地震発生時に、前記シリンダが収縮し、前記クラッシャブルエリアが鉛直方向に短くなり、前記補助脚の下端が岸壁に接地して前記岸壁クレーンを支持する構成を有することを特徴とする岸壁クレーン。
【請求項4】
前記補助脚が、前記脚構造物又は前記走行装置に立設した水平部材と、前記水平部材の下面側に設置した柱状部材と、前記柱状部材の下端に設置した接地部材を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の岸壁クレーン。
【請求項5】
前記接地部材が、下面に、前記岸壁との摩擦抵抗を低減する摺動部を有しており、
前記摺動部が、前記接地部材の下面に回転可能に設置した球状又は円柱状の転動体と、接地部材の下面を覆う被膜と、前記接地部材の下面と前記被膜で形成した空間内に充填した潤滑剤を有していることを特徴とする請求項4に記載の岸壁クレーン。
【請求項6】
前記岸壁クレーンが、減衰機構を有しており、
前記減衰機構が、岸壁に敷設したレールを掴むレールクランプと、前記レールクランプに固定したケーシングと、前記ケーシングに沿って摺動するピストンロッドを有しており、
前記ピストンロッドの両端部を、前記補助脚に固定したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の岸壁クレーン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−206830(P2012−206830A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74018(P2011−74018)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】