説明

工作機械用の回転テーブル装置におけるシール機構

【課題】回転テーブル装置に採用してもワークの加工時において高いシール性を継続的に維持することができるシール装置を提供する。
【解決手段】 回転テーブル装置の円テーブル12とフレーム10との間に設けられるシール機構1において、円テーブル12及びフレーム10の対向する面の一方に、回転軸11の軸線を中心とし他方側に開口する環状の溝2を設け、溝2の両側面を、互いに異なる磁極が対向する永久磁石5によって形成し、溝2内に磁性流体3を充填する。前記他方には、溝2に対向する他方の端面から突出しており少なくとも先端部が溝2内の磁性流体3内に没入する仕切板4を回転軸11の軸線を中心として環状に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械用の回転テーブル装置に用いられるシール機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、工作機械用の回転テーブル装置においては、円テーブル(又は円テーブルと一体的に回転する部分)とフレーム(又はフレームに固定された部材)との間にシール部材(装置)が設けられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
その目的は、ワークの加工時において、ワークの加工に使用されるクーラント液やワークの加工に伴って発生する切屑(切粉)等が回転テーブル装置内部(特に、円テーブルを制動するクランプ部等)に入り込むのを防止するためである。
【0004】
なお、従来の一般的な回転テーブル装置では、このシール装置として、樹脂製のシール部材等を用いた接触式シール装置や、ラビリンスシール等の非接触式のシール装置を採用している。しかし、これらのシール装置の場合、以下の問題点を有する。
【0005】
すなわち、接触式シール装置の場合、接触による摩擦抵抗が摺動部に作用して、円テーブルの回転抵抗となる。また、シール部材の摩耗に伴ってシール性が低下するため、シール部材の交換等のメンテナンスが必要となる。
【0006】
また、非接触式シール装置の場合、接触式シール装置と異なり円テーブルに回転抵抗を作用させることは無く、また、摩耗によるシールの劣化も無いが、非接触ゆえに接触式シールと比べてシール性、密閉性に劣る。
【0007】
前記の各シール装置の問題点を解消し得るシール装置として、特許文献2に開示されているような磁性流体を用いたシール装置がある。
【0008】
磁性流体を用いたシール装置によれば、回転部を固体と液体との接触によってシールするから、前述の固体同士が接触する接触式シール装置と比べ、回転抵抗は非常に小さく、摩耗が生じることもない。また、磁性流体のシール膜がシール部を密閉するから、非接触式シール装置と比べ、高いシール性を得ることができる。
【0009】
なお、特許文献2に開示されたシール装置では、固定部(フレーム)における磁性流体が充填される溝の周辺、又は回転体(回転軸)に取り付けられた仕切部(セパレータ)のいずれか一方に対し、1以上の磁石を部分的に設ける構成を採用している。そして、磁石と、回転体又は仕切部との間に形成される磁気回路により、前記溝内における固定部と仕切部との間の1以上の箇所において部分的に磁性流体を保持し、シール効果を発揮する構成となっている。
【特許文献1】特開2006−35391号公報
【特許文献2】特開平02−253065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、この従来技術の磁性流体シール装置でも、回転テーブル装置においては十分なシール性が得られないという問題がある。それは以下の理由による。
【0011】
前記従来技術の磁性流体シール装置は、磁性流体を保持する磁石を磁性流体が充填される溝の周辺に部分的に設けているため、磁石のある箇所に磁性流体が偏在してしまい、溝内で磁性流体のある箇所と無い箇所が生じる。すなわち、磁性流体は、固定部(フレーム)と回転体(仕切部)との間の磁力線の集中する箇所で膜状に部分的に保持される。
【0012】
ところが、回転テーブル装置の場合、円テーブル上に載置されたワークに切削加工が施されると共に、ワークの加工に伴って工作機械上で回転テーブル装置自体をXY方向へ移動させて使用することがあり、その結果、回転テーブル装置は、ワークの加工時において激しい振動を受けるため、前記従来技術の構成のように、溝内における固定部と仕切部との間で部分的にのみ磁性流体を保持する構成では、前記振動に伴って磁性流体の膜が揺らぎ、仕切部と磁性流体との間に隙間ができてシール性が損なわれる状態が生じてしまう。
【0013】
従って、前記従来技術の構成では、継続的に高いシール性を維持することができず、回転テーブル装置に採用するシール装置としては十分ではない。
【0014】
そこで、本発明の課題は、回転テーブル装置に採用してもワークの加工時において高いシール性を継続的に維持することができるシール装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の課題の下に、本発明は、工作機械に設置されるフレーム(10)と、前記フレーム(10)に対し回転軸(11)を介して回転可能に支持された円テーブル(12)とを含む回転テーブル装置に用いられるシール機構(1)であって前記円テーブル(12)と前記フレーム(10)との間に設けられるシール機構(1)において、前記シール機構(1)を、前記円テーブル(12)及び前記フレーム(10)のいずれか一方に対し他方側が開口するように形成された溝(2)であって前記回転軸(11)の軸心を中心とする環状の溝(2)と、前記溝(2)内に充填された磁性流体(3)と、前記溝(2)に対向する前記他方の端面から突出して少なくとも先端部が前記磁性流体(3)内に没入するように設けられた仕切板(4)であって前記回転軸(11)の軸線を中心とする環状の仕切板(4)とを含むように構成し、前記溝(2)の対向する内側面及び外側面の各々は、互いに異なる磁極が対向する永久磁石(5)で形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、前記した本発明において、前記溝(2)を、前記円テーブル(12)及び前記フレーム(10)の一方に穿設された凹部(8)の対向する内側面及び外側面の各々に前記永久磁石(5)を貼着して形成されたものとしてもよい。さらには、前記各永久磁石(5)をそれぞれ単一のボンド磁石(5a、5b)としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、磁性流体が充填される溝の内側面及び外側面の各々が、その全周に亘って互いに異なる磁極を対向させた永久磁石で形成されているため、溝内においては、永久磁石から発せられる磁力線は、対向する永久磁石間、すなわち、溝の幅方向(仕切板の突出方向と略直交する方向)で、溝内に充填された磁性流体の充填範囲に亘って平行に走る状態となる。それにより、磁性流体は、溝内において、深さ方向に亘って均一に保持された状態となる。その結果、激しい振動等によって磁性流体が揺らいでも、仕切板と磁性流体との間に間隙が生じてシール性が損なわれる状態が発生することは無い。よって、本発明によれば、回転テーブル装置において、ワークの加工中に高いシール性を維持することができる。
【0018】
また、前記溝を、円テーブル及びフレームの一方に穿設された凹部の対向する内側面と外側面の各々に永久磁石を貼着して形成されたものとすることにより、ワークの加工等に伴って発生する切粉等が、永久磁石の磁気作用によってシール部に吸い寄せられるのを防止することができる。すなわち、円テーブルやフレームは、一般には磁性材料で形成されているため、その構成によれば、永久磁石から発せられる磁力線は、溝の外側では、前記一方の内部を通過する状態となり、磁力線が外部空間を通過して切粉等を吸い寄せるといった状態が発生し難いものとなる。
【0019】
さらに、前記溝を形成する対向する永久磁石の各々をそれぞれ単一のボンド磁石とすれば、ボンド磁石は、変形あるいは加工成形が容易なため、複数の永久磁石を組み合わせて前記溝を形成するのと比べ、本発明の構成を容易に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明が適用される回転テーブル装置の1実施例を示している。回転テーブル装置は、工作機械に設置されるベースとなるフレーム10と、図示しないワークが直接又は取付治具を介して載置される円テーブル12と、円テーブル12をフレーム10に対し回転自在に支持する回転軸11とを備えている。なお、図示の例はあくまでも一例であって、本発明の前提装置を特定するものではない。本実施例では、テーブル面が水平な横置き型の回転テーブル装置を示しているが、テーブル面が垂直な縦置き型の回転テーブル装置にも本発明を適用できる。
【0021】
円テーブル12は、回転軸11の一方の端部に形成されており、また、円テーブル12および回転軸11の中心軸上には配線や付属品取付の用に供される貫通穴13が形成されている。回転軸11は、軸受スリーブ14によって外輪がフレーム10に固定された軸受15を介して、フレーム10に回転可能に支持されている。なお、本実施例では、円テーブル12と、回転軸11とは一体物としているが、各々を別部材として構成し、それらをボルト等により固定しても良い。
【0022】
また、回転テーブル装置は、回転軸11(円テーブル12)の駆動手段として、回転軸11に固定されたウォームホイール16と、フレーム10に回転可能に支持されウォームホイール16と噛み合うウォーム17と、ウォーム17を回転駆動する図示しないモータとを有している。なお、本実施例では、回転軸11の駆動手段としてウォームギヤ機構を採用しているが、ギヤ等の駆動伝達機構を介さずに、回転軸11に設けられるロータとフレーム10に設けられるステータとで内蔵モータ、いわゆるDDモータを構成し、回転軸11の駆動手段とするものであってもよい。
【0023】
さらに、回転テーブル装置は、回転する円テーブル12の制動装置として、クランプ装置18を有している。クランプ装置18は、複数のボルト21により回転軸11に固定されたクランプディスク19と、クランプディスク19のディスク面と対向する位置に組み込まれた環状のクランプピストン20とを備えている。クランプピストン20は、軸受スリーブ14と、フレーム10とが形成する環状の溝に嵌め込まれ、その溝内を回転軸11の軸方向に油圧によりスライド可能となっており、クランプディスク19を後述するカバー部材6に押し付けることにより、円テーブル12を回転不能に制動し、所望の割出角度で固定する。
【0024】
そして、フレーム10と、円テーブル12との間には、本発明のシール機構1が設けられている。シール機構1は、本実施例では、主体となるフレーム10の上面に複数の取付ボルト7により取り付けられた環状(ドーナッツ状)のカバー部材6と、円テーブル12との間の対向面(図面の上下方向に対向する面)間に設けられている。シール機構1は、概説すれば、フレーム10側のカバー部材6の溝2に充填・保持した磁性流体3中に、円テーブル12側から突出させた仕切板4を没入させた構成を有している。
【0025】
図2は、シール機構1周辺の拡大断面図である。カバー部材6は、フレーム10を構成する部材の一部として、クランプ装置18や軸受15が収納されているフレーム10の開口部を覆うようにフレーム10の上面に取り付けられている。また、カバー部材6は、クランプピストン20と協働でクランプディスク19を挟持するクランプ装置18の一部としての機能も有している。そして、カバー部材6の円テーブル12と対向する面(図面の上面)には、円テーブル12側に開口する凹部8が、回転軸11の軸心を中心として環状に形成されている。
【0026】
環状の凹部8の内側面と外側面の各々には、各側面に合せた形状に形成された永久磁石5としてのボンド磁石5a、5bがそれぞれ添着されており、各ボンド磁石5a、5bの対向する面と凹部8の底面とで溝2が形成されている。なお、図示の例では、各ボンド磁石5a、5bの幅(溝2の深さ方向の寸法)は、凹部8の深さと同じ寸法を有している。従って、この例では、溝2は、凹部8の深さ方向の全範囲に亘って存在している。さらに、溝2の各側面を形成している各ボンド磁石5a、5bは、互いに異なる磁極(S極−N極)を対向させた状態で設けられている。そして、前記溝2内におけるボンド磁石間5a、5bの間隙には、磁性流体3が充填されている。なお、本発明でいう充填とは、磁性流体3が溝2内いっぱいに満たされている状態の他、溝2の任意の深さまで満たされている状態をも含む意味である。
【0027】
因みに、本実施例で、永久磁石5としてボンド磁石5a、5bを用いたのは、ボンド磁石は容易に変形させることができ、また容易に任意形状に成形することができるからである。ボンド磁石5a、5bの例としては、バインダーとしてゴムを用いたものや、プラスチックを用いたものが挙げられるが、前者を採用した場合、板状のボンド磁石を凹部8の内側面と外側面に沿って変形させて添着すればよいし、後者であれば、リング状に射出成型等したボンド磁石を凹部8の内側面と外側面に嵌め込めばよい。図示の例では、凹部8の内側面と外側面の各々にそれぞれ単一の板状のボンド磁石5a、5bを添着して溝2を形成している。もちろん、二以上のボンド磁石を凹部8の内側面および外側面の各々に貼り付けて溝2を形成してもよい。
【0028】
前記溝2と対向する円テーブル12の面(ワーク載置面と反対側の面)には、仕切板4としての環状のセパレータ4aが取り付けられている。セパレータ4aは、回転軸11の軸心を中心とする環状の磁性体の部材であって、円テーブル12の前記面から突出してフレーム10側へ延在し、前記溝2に入り込むような寸法(径、突出長さ)で形成されている。そして、前記溝2に磁性流体3が充填された状態で、セパレータ4aは、その先端部側が磁性流体3に没入している。図示の例では、4/5近くが磁性流体3内に没入している。なお、セパレータ4aをどの程度磁性流体3内に没入させるかは、回転テーブル装置が使用される環境や加工する材料の種類等によって適宜定められる。
【0029】
図3は、永久磁石5(ボンド磁石5a、5b)が形成する磁気回路を示している。永久磁石5から発せられる磁力線は、前記溝2内において、各側面に設けられた対向するボンド磁石5a、5b間で、一方のボンド磁石のN極から対向するボンド磁石のS極へ向けて走る。すなわち、磁性流体3が充填されているボンド磁石間5a、5bの間隙においては、一方のボンド磁石5aから発せられる磁力線が、他方のボンド磁石5bの対向面へ向けて、溝の深さ方向における磁性流体3の充填範囲に亘って略平行に走る状態となる。その結果、磁性流体3は、対向するボンド磁石5a、5bの間の間隙全体に亘って均一に保持された状態となる。
【0030】
そして、セパレータ4aは磁力線の通過を許容するため、磁性体で形成されたセパレータ4aを磁性流体3に没入させた状態でも、セパレータ4aが無い場合と同様に、磁性流体3は、対向するボンド磁石間5a、5bの間隙全体に亘って均一に保持される。これにより、磁性流体3とセパレータ4aとの協働でシール効果(フレーム10内部と外部との隔離効果)が発揮されると共に、振動等の影響を受けてもシール性が損なわれない高いシール性が得られる。
【0031】
なお、回転テーブル装置では、フレーム10や円テーブル12を構成する部材は、一般的には磁性材料、例えば鋼材等で形成される。従って、前記他方のボンド磁石5bのN極から発せられる磁力線は、溝2の外側においては、図示のようにフレーム10(カバー部材6)内を通過して一方のボンド磁石5aのS極へ向かう。このように、図示の例による回転テーブル装置のシール機構1では、磁気回路は、フレーム10(カバー部材6)内と磁性流体3内とを通過する閉磁路として形成され、外部には漏れない。そのため、ワークの加工に伴って発生する切屑(切粉)等がシール部分に吸引されてシール部に吸着される心配が無い。
【0032】
また、本発明のシール機構1は、回転体(円テーブル12)又は固定部(フレーム10)の一方にのみに磁気回路を形成する。すなわち、一方に設けられた永久磁石5は、他方を介さずに磁気回路を形成し、一方のみで磁性流体3を保持している。したがって、他方例えば円テーブル12が非磁性材料であっても、他方に仕切板4を取り付けることによりシール効果を得ることができる。
【0033】
以上の実施例において、シール機構1は、フレーム10とは別部材のカバー部材6に溝2を形成して磁性流体3を充填しているが、フレーム10又は円テーブル12そのものに溝2を形成して磁性流体3を充填してもよい。ただし、前記の実施例のごとく、シール機構1をカバー部材6(シール本体)と、仕切板4とからなるシールユニットとして構成すれば、シール機構1に汎用性をもたせることができ、さらに回転テーブル装置の分解組立も容易となる。また、磁気回路をシールユニット内で閉じるように形成し、磁気がシールユニットの外部へ漏れないようにすれば、シールユニットが取り付けられる回転テーブル装置本体に対する磁気の影響を抑えることができる。
【0034】
また、前記の実施例では、永久磁石としてボンド磁石を採用した例を述べたが、本発明における永久磁石はこれに限らず、変形不能な板状の永久磁石、例えば焼結磁石等を用いてもよい。この場合は、凹部の各側面の円周方向及び/又は深さ方向に複数枚の永久磁石を並べて取り付け、本発明における溝を形成すればよい。なお、この構成の場合においては、必ずしも各永久磁石を隙間無く配設する必要はなく、磁性流体の保持に影響を及ぼさない範囲であれば、各永久磁石間に若干の隙間が存在してもよい。
【0035】
さらに、前記の実施例では、仕切板4としてのセパレータ4aを磁性材料で形成されたものとしたが、本発明はこれに限らず、磁力線の通過を許容する非磁性材料例えば、銅材、ステンレス材(SUS316等)などの金属や、プラスチックなどの樹脂で形成してもよい。
【0036】
ところで、前記の実施例では、フレーム10および円テーブル12の水平方向に延在して上下方向(重力方向)に対向する対向面の間で、溝2が上向きに開口する(仕切板4が重力方向へ向けて延在する)ようにしてシール機構1を形成する構成としたが、本発明のシール機構1の構成はこれに限定されない。例えば、本発明のシール機構1を、前述の実施例とは逆の構成、すなわち、下側に開口する溝2を円テーブル12側に形成し、フレーム10側から仕切板4が突出する構成とすることも可能である。この場合、溝2が下向きに開口することとなるが、溝2内の磁性流体3は、永久磁石5による磁気作用(対向する永久磁石間に形成される磁場)によって保持されるため、溝2が上下反転するような状態となっても溝2から磁性流体3が流出することはない。
【0037】
また、図4に示すように、フレーム10および円テーブル12の重力方向に延在して水平方向で対向する対向面の間に本発明のシール機構1を設けることも可能である。このようにシール機構1をレイアウトしても、溝2内の磁性流体3は、永久磁石5による磁気作用によって保持されているから、磁性流体3が溝2から流出することはない。なお、本図では、溝2をフレーム10側に形成し、仕切板4を円テーブル12側から突出するように構成しているが、逆の構成、すなわち溝2を円テーブル12側に形成し、仕切板4をフレーム10側から突出するように構成することも可能である。また、図1に示した例と同様に、主体となるフレーム10又は円テーブル12とは別部材に溝2を設け、この別部材をフレーム10又は円テーブル12に一体に取り付けてもよい。
【0038】
さらに、以上で述べたシール機構1の例では、いずれもフレーム10または円テーブル12に凹部8を穿設し、その凹部8の深さ方向の範囲内で、凹部8の内側面及び外側面の各々に永久磁石5を貼着して溝2を形成するものとしたが、本発明はこれに限らず、永久磁石5をフレーム10または円テーブル12の外部に露出させて溝2を形成することも可能である。例えば、前記の実施例において、各永久磁石5(ボンド磁石5a、5b)の幅を凹部8の深さ寸法よりも大きくし、凹部8よりも深さ寸法が大きい溝2を形成する構成としてもよい(図5a)。また、凹部8を省略し、前記の実施例におけるボンド磁石5a、5bのような径の異なる2つの環状の永久磁石5をフレーム10または円テーブル12の外側面に立設し、フレーム10または円テーブル12の外側面上に溝2を形成することも可能である(図5b)。但し、これらの構成の場合、フレーム10または円テーブル12の外部に露出する各永久磁石5の部分に前述の切粉等が吸着して堆積するおそれがある。そこで、そのような露出部分については、非磁性材料等で作製したカバー22でコーティングするのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のシール機構が適用される回転テーブル装置の全体断面図である。
【図2】本発明のシール機構の一実施例を示す拡大断面図である。
【図3】本発明のシール機構が形成する磁気回路を示す拡大断面図である。
【図4】本発明のシール機構の他の実施例を示す拡大断面図である。
【図5】本発明のシール機構の他の実施例を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 シール機構
2 溝
3 磁性流体
4 仕切板
4a セパレータ
5 永久磁石
5a ボンド磁石
5b ボンド磁石
6 カバー部材
7 取付ボルト
8 凹部
10 フレーム
11 回転軸
12 円テーブル
13 貫通穴
14 軸受スリーブ
15 軸受
16 ウォームホイール
17 ウォーム
18 クランプ装置
19 クランプディスク
20 クランプピストン
21 ボルト
22 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に設置されるフレーム(10)と、前記フレーム(10)に対し回転軸(11)を介して回転可能に支持された円テーブル(12)とを含む回転テーブル装置に用いられるシール機構(1)であって前記円テーブル(12)と前記フレーム(10)との間に設けられるシール機構(1)において、
前記円テーブル(12)及び前記フレーム(10)の一方に対し他方側に開口するように形成された溝(2)であって前記回転軸(11)の軸心を中心とする環状の溝(2)と、前記溝(2)内に充填された磁性流体(3)と、前記溝(2)に対向する前記他方の端面から突出して少なくとも先端部が前記磁性流体(3)内に没入するように設けられた仕切板(4)であって前記回転軸(11)の軸線を中心とする環状の仕切板(4)とを含み、
前記溝(2)の対向する内側面及び外側面の各々は、互いに異なる磁極が対向する永久磁石(5)で形成されていることを特徴とする工作機械用の回転テーブル装置におけるシール機構(1)。
【請求項2】
前記溝(2)は、前記円テーブル(12)及び前記フレーム(10)の一方に穿設された凹部(8)の対向する内側面及び外側面の各々に前記永久磁石(5)を貼着して形成されていることを特徴とする請求項1記載の工作機械用の回転テーブル装置におけるシール機構(1)。
【請求項3】
前記各永久磁石(5)は、それぞれ単一のボンド磁石(5a、5b)であることを特徴とする請求項2記載の工作機械用の回転テーブル装置におけるシール機構(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−58254(P2010−58254A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229534(P2008−229534)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000215109)津田駒工業株式会社 (226)
【Fターム(参考)】