説明

工場の稼働システムおよび稼働方法

【課題】圧縮空気を消費する複数の生産設備を有する工場に対して、不測の圧力低下を未然に防止し、省エネルギで安定稼働することができる工場の稼働システムを提供する。
【解決手段】工場の稼働システム100は、(a)各生産設備の消費流量の時系列データと各生産設備のタクトタイムとを記憶しているデータベース113と、(b)各生産設備の消費流量の時系列データと各生産設備のタクトタイムとを使用して総消費流量の時系列変化をシミュレートした結果から、総消費流量が閾値以下になる区間の中で最大となる最大稼働有効区間と、最大稼働有効区間において各生産設備の最初と最後のタクト開始時間とを特定する設備稼働スケジュール決定部114と、(c)生産設備105〜107のいずれかを、最初のタクト開始時間で稼働開始させ、最後のタクト開始時間で稼働停止させることを最大稼働有効区間の周期で繰り返し行う設備稼働制御部115とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気を消費する複数の生産設備を有する工場を省エネルギで安定稼働可能な工場の稼働システムおよび稼働方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場で使用される生産設備には、例えば、エアシリンダ等の駆動源として圧縮空気を用いるものやエアブローに圧縮空気を用いるものなどのように、圧縮空気を消費するものがある。ここで、圧縮空気は、空気圧縮機で生成されて空気タンクに所定量蓄積された後、配管を介して、圧縮空気を用いる生産設備に供給される。
【0003】
一般的に、空気圧縮機としては、吐出圧力の変動から消費空気量の増減を検出して吐出流量を制御する方式のものが用いられている。例えば、この方式の空気圧縮機は、生産設備に必要な圧力と流量との圧縮空気を確保するために、吐出圧力を検出し、吐出圧力が所定の範囲になるように、起動と停止を繰り返しつつ、圧縮空気を供給する。このとき、生産設備に供給された圧縮空気を生産設備が消費し、吐出圧力が低下して下限設定値に達すると、空気圧縮機は、起動し、吐出圧力が上限設定値に達するまで、吐出流量を増加しつつ、生産設備に圧縮空気を供給する。
【0004】
また、空気圧縮機としては、この方式の空気圧縮機以外にも、インバータによる駆動機の回転数制御によって容量を制御する方式のものもある。例えば、この方式の空気圧縮機は、スクリュー圧縮機から吐出される圧縮ガスの圧力を検出し、設定圧力値との圧力差が最小になるように、インバータへの出力回転数を求めるPID制御によって吐出ガスの流量を自動調整する(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
ここでは、一例として、図18に示すように、工場の稼働システム10は、空気圧縮機11、圧力計12、ドライヤ13、空気タンク14、第1の生産設備15、第2の生産設備16、第3の生産設備17を有する。
【0006】
空気圧縮機11は、所定の吐出圧力で圧縮空気を吐出する。圧力計12は、空気圧縮機11から吐出された圧縮空気の圧力を検出する。ドライヤ13は、圧縮空気の除湿を行う。空気タンク14は、所定量の圧縮空気を蓄積する。第1の生産設備15、第2の生産設備16、第3の生産設備17の各々は、例えば、エアシリンダ等の駆動源として圧縮空気を用いるものやエアブローに圧縮空気を用いるものなどのように、圧縮空気を消費するものを有する。
【0007】
これらは、配管、バルブ、継手、配管に介在する機器などによって接続されている。空気圧縮機11から吐出された圧縮空気は、ドライヤ13で除湿されて空気タンク14に蓄積され、空気タンク14に所定量蓄積された後、配管などを介して、各生産設備に供給される。
【0008】
ただし、第1の生産設備15、第2の生産設備16、第3の生産設備17の各々において、圧縮空気を消費する一連の工程を繰り返し行う際には、圧縮空気の消費流量が時間とともに変化する。また、第1の生産設備15、第2の生産設備16、第3の生産設備17が消費する圧縮空気の合計流量の変化に応じて、空気圧縮機11の吐出圧力が変動する。さらに、複数の生産設備が稼働する場合には、生産設備の種類毎に消費する圧縮空気の流量パターンが異なる。
【特許文献1】特開平6−81782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、第1の生産設備15、第2の生産設備16、第3の生産設備17は、独立して稼働している。このため、それぞれのサイクルタイムが異なり、生産設備毎の圧縮空気を消費する流量のピークが重なると、瞬間的に多量の圧縮空気が消費されることになる。多量の圧縮空気が消費されると、配管の圧力損失が大きくなり、生産設備が必要とする圧縮空気の最低圧力を確保することができなくなり、生産設備の稼働にトラブルが生じるという問題がある。
【0010】
また、このトラブルを回避するために、空気圧縮機11の吐出圧力を高く設定し、生産設備が必要とする圧縮空気の最低圧力を確保する必要があり、この場合において、空気圧縮機の消費電力が増大するという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、圧縮空気を消費する生産設備を有する工場に対して、不測の圧力低下を未然に防止し、省エネルギで安定稼働することができる工場の稼働システムおよび稼働方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係わる工場の稼働システムは、下記に示す特徴を備える。
(CL1)本発明に係わる工場の稼働システムは、(a)圧縮空気を消費する複数の生産設備を有する工場の稼働システムであって、(b)各生産設備で消費された圧縮空気の流量の時系列データと、各生産設備において圧縮空気を消費する工程のタクトタイムとを記憶している記憶手段と、(c)各生産設備の消費流量の時系列データと各生産設備のタクトタイムとを使用して総消費流量の時系列変化をシミュレートし、シミュレートした結果から、総消費流量が閾値以下になる区間の中で最大となる最大稼働有効区間と、前記最大稼働有効区間において各生産設備の最初と最後のタクト開始時間とを特定する計算手段と、(d)前記複数の生産設備のいずれかを、最初のタクト開始時間で稼働開始させ、最後のタクト開始時間で稼働停止させることを前記最大稼働有効区間の周期で繰り返し行う制御手段とを備える。
【0013】
(CL2)上記(CL1)に記載の工場の稼働システムは、(a)前記制御手段が、(a1)前記複数の生産設備における第1の生産設備を、最初のタクト開始時間で稼働開始させた後、最後のタクト開始時間で稼働停止させずに継続稼働させながら、(a2)前記複数の生産設備における第2の生産設備を、最初のタクト開始時間で稼働開始させ、最後のタクト開始時間で稼働停止させることを前記最大稼働有効区間の周期で繰り返し行うとしてもよい。
【0014】
(CL3)上記(CL2)に記載の工場の稼働システムは、前記計算手段が、前記複数の生産設備の中で、総消費流量が閾値以上になるときの消費流量が一番多い生産設備を前記第2の生産設備として選択するとしてもよい。
【0015】
なお、本発明は、工場の稼働システムとして実現されるだけではなく、下記に示す工場の稼働方法として実現されるとしてもよい。
(CL4)本発明に係わる工場の稼働方法は、(a)圧縮空気を消費する複数の生産設備を有する工場の稼働方法であって、(b)各生産設備で消費された圧縮空気の流量の時系列データと、各生産設備において圧縮空気を消費する工程のタクトタイムとを記憶している記憶装置を参照し、各生産設備の消費流量の時系列データと各生産設備のタクトタイムとを使用して総消費流量の時系列変化をシミュレートし、シミュレートした結果から、総消費流量が閾値以下になる区間の中で最大となる最大稼働有効区間と、前記最大稼働有効区間において各生産設備の最初と最後のタクト開始時間とを特定する計算工程と、(c)前記複数の生産設備のいずれかを、最初のタクト開始時間で稼働開始させ、最後のタクト開始時間で稼働停止させることを前記最大稼働有効区間の周期で繰り返し行う制御工程とを含む。
【0016】
(CL5)上記(CL4)に記載の工場の稼働方法は、(a)前記制御工程において、(a1)前記複数の生産設備における第1の生産設備を、最初のタクト開始時間で稼働開始させた後、最後のタクト開始時間で稼働停止させずに継続稼働させながら、(a2)前記複数の生産設備における第2の生産設備を、最初のタクト開始時間で稼働開始させ、最後のタクト開始時間で稼働停止させることを前記最大稼働有効区間の周期で繰り返し行うとしてもよい。
【0017】
(CL6)上記(CL5)に記載の工場の稼働方法は、前記計算工程において、前記複数の生産設備の中で、総消費流量が閾値以上になるときの消費流量が一番多い生産設備を前記第2の生産設備として選択するとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、各生産設備の流量の変動による空気圧縮機の吐出圧力の変動を予測し、予測した結果に基づいて各生産設備の稼働などを調整することによって、不測の圧力低下を未然に防止し、生産設備を安定稼働することができる。これに伴い、空気圧縮機に供給する電力を下げることができ、空気圧縮機を省エネルギで安定稼働することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施の形態)
以下、本発明に係わる実施の形態について説明する。
<概要>
本実施の形態における工場の稼働システムは、下記(1)〜(3)に示す特徴を備える。
【0020】
(1)工場の稼働システムは、(a)圧縮空気を消費する複数の生産設備を有する工場の稼働システムであって、(b)各生産設備で消費された圧縮空気の流量の時系列データと、各生産設備において圧縮空気を消費する工程のタクトタイムとを記憶している記憶手段と、(c)各生産設備の消費流量の時系列データと各生産設備のタクトタイムとを使用して総消費流量の時系列変化をシミュレートし、シミュレートした結果から、総消費流量が閾値以下になる区間の中で最大となる最大稼働有効区間と、最大稼働有効区間において各生産設備の最初と最後のタクト開始時間とを特定する計算手段と、(d)複数の生産設備のいずれかを、最初のタクト開始時間で稼働開始させ、最後のタクト開始時間で稼働停止させることを最大稼働有効区間の周期で繰り返し行う制御手段とを備える。
【0021】
(2)工場の稼働システムは、(a)制御手段が、(a1)複数の生産設備における第1の生産設備を、最初のタクト開始時間で稼働開始させた後、最後のタクト開始時間で稼働停止させずに継続稼働させながら、(a2)複数の生産設備における第2の生産設備を、最初のタクト開始時間で稼働開始させ、最後のタクト開始時間で稼働停止させることを最大稼働有効区間の周期で繰り返し行う。
【0022】
(3)工場の稼働システムは、計算手段が、複数の生産設備の中で、総消費流量が閾値以上になるときの消費流量が一番多い生産設備を第2の生産設備として選択する。
以上の点を踏まえて、本実施の形態における工場の稼働システムについて説明する。
【0023】
<構成>
ここでは、一例として、図1に示すように、工場の稼働システム100は、空気圧縮機101、圧力計102、ドライヤ103、空気タンク104、第1の生産設備105、第2の生産設備106、第3の生産設備107、第1の流量計108、第2の流量計109、第3の流量計110などを有する。
【0024】
空気圧縮機101は、一定の吐出圧力で圧縮空気を吐出する。圧力計102は、空気圧縮機101から吐出された圧縮空気の圧力を検出する。ドライヤ103は、圧縮空気の除湿を行う。空気タンク104は、所定量の圧縮空気を蓄積する。
【0025】
第1の生産設備105、第2の生産設備106、第3の生産設備107の各生産設備は、例えば、エアシリンダ等の駆動源として圧縮空気を用いるものやエアブローに圧縮空気を用いるものなどのように、圧縮空気を消費するものを有する。各生産設備の稼働が開始すると、これらの圧縮空気を消費するものの稼働が開始し、圧縮空気の消費が開始する。各生産設備の稼働が停止すると、これらの圧縮空気を消費するものの稼働が停止し、圧縮空気の消費が停止する。
【0026】
第1の流量計108は、第1の生産設備105に供給される圧縮空気の流量を測定する。第2の流量計109は、第2の生産設備106に供給される圧縮空気の流量を測定する。第3の流量計110は、第3の生産設備107に供給される圧縮空気の流量を測定する。
【0027】
これらは、配管、バルブ、継手、配管に介在する機器などによって接続されている。空気圧縮機101から吐出された圧縮空気は、ドライヤ103で除湿されて空気タンク104に蓄積され、空気タンク104に所定量蓄積された後、配管などを介して、各生産設備に供給される。
【0028】
ただし、第1の生産設備105、第2の生産設備106、第3の生産設備107の各生産設備が稼働している間は、圧縮空気の消費流量が時間とともに変化する。また、第1の生産設備105、第2の生産設備106、第3の生産設備107が消費する圧縮空気の流量の変化に応じて、総消費流量が変動する。また、複数の生産設備が稼働する場合には、生産設備の種類毎に消費する圧縮空気の流量パターンが異なる。
【0029】
さらに、図2に示すように、工場の稼働システム100は、空気圧縮機制御部111、設備稼働モニタ112、データベース113、設備稼働スケジュール決定部114、設備稼働制御部115などを備える。ここで、図2において、白抜きの矢印は、配管などを介した圧縮空気の流れを示し、実線の矢印は、データ・信号の流れを示している。
【0030】
なお、データベース113が上記の記憶手段に該当する。設備稼働スケジュール決定部114が上記の計算手段に該当する。設備稼働制御部115が上記の制御手段に該当する。
【0031】
空気圧縮機制御部111は、空気圧縮機101を制御し、下限圧力設定値以上で圧縮空気が供給されるように、圧力計102で検出された圧力値に基づいて空気圧縮機101の稼働を調整する。具体的には、圧力計102で検出された圧力値が所定の下限圧力設定値になると、空気圧縮機101を起動し、上限圧力設定値に達するまで、空気圧縮機101から圧縮空気を供給させる。圧力計102で検出された圧力値が上限圧力設定値になると、空気圧縮機101を停止する。
【0032】
すなわち、総消費流量が大きくなれば、空気圧縮機101の吐出圧力を高くするために、空気圧縮機101を起動している時間が長くなり、多くの電力を消費することになる。一方、総消費流量が小さくなれば、空気圧縮機101の吐出圧力を低くすることができるので、空気圧縮機101を起動している時間が短くなり、消費電力を下げることができる。
【0033】
設備稼働モニタ112は、各生産設備を監視し、各生産設備において圧縮空気を消費する工程を繰り返し行うにあたっての時間(以下、タクトタイムと呼称する。)と開始タイミング(以下、タクト開始時間と呼称する。)を生産設備毎に検出する。検出したタクトタイムと開始タイミングとを、データベース113に登録したり、設備稼働制御部115に通知したりする。また、生産設備の追加・削除を検出すると、生産設備が追加・削除されたことを設備稼働制御部115に通知する。
【0034】
データベース113は、設備稼働モニタ112で生産設備毎に検出されたタクトタイムとタクト開始時間などに関するタクトデータと、第1の流量計108、第2の流量計109、第3の流量計110の各々で測定された各生産設備の流量に関する消費流量の時系列データを蓄積する。
【0035】
設備稼働スケジュール決定部114は、データベース113に蓄積されている各データを使用して、各生産設備の稼働スケジュールを決定する。
設備稼働制御部115は、設備稼働スケジュール決定部114で決定されたスケジュールに基づいて、下記の設備稼働制御処理を実行し、各生産設備の稼働を調整する。
【0036】
<設備稼働スケジュール決定処理>
次に、設備稼働スケジュール決定部114の動作について説明する。
図3に示すように、まず、設備稼働スケジュール決定部114は、データベース113に蓄積されている各生産設備のタクトタイムから、総消費流量の周期である各生産設備のタクトタイムの最小公倍数を算出する(S101)。データベース113に蓄積されている各生産設備における消費流量の時系列データを使用して、各生産設備を同時に稼働させた場合における時系列の総消費流量のシミュレーションを2周期まで実行する(S102)。
【0037】
次に、設備稼働スケジュール決定部114は、シミュレーションを実行して得られた結果から、予め設定されている閾値以上の流量になる時間を全て特定する(S103)。特定した全ての時間から、閾値以上の流量になる間隔が一番長い区間(以下、最大稼働有効区間と呼称する。)を特定する(S104)。
【0038】
次に、設備稼働スケジュール決定部114は、各生産設備に対して、最大稼働有効区間の最初と最後のタクト開始時間とを特定する(S105)。各生産設備の稼働開始時間と稼働停止時間とを算出する(S106)。ここで、稼働開始時間は、最初のタクト開始時間から基準時間を差し引いた時間である。稼働停止時間は、最後のタクト開始時間から基準時間を差し引いた時間である。基準時間は、最大稼働有効区間において最初に稼働する生産設備の最初のタクト開始時間である。
【0039】
次に、設備稼働スケジュール決定部114は、稼働対象の全生産設備の中で停止させる生産設備(以下、停止対象の生産設備と呼称する。)を選択する。選択した生産設備に対応付けられている停止判定フラグの値を、停止させることを示す値にする。それ以外の生産設備に対応付けられている停止判定フラグの値を、停止させないことを示す値にする(S107)。
【0040】
なお、最大稼働有効区間の時間(以下、最大稼働有効時間と呼称する。)が総消費流量の周期よりも小さい場合には、各生産設備のタクト開始時間のパターンが最大稼働有効時間の間隔で同じパターンになるとは限らない。このため、この場合においては、設備稼働スケジュール決定部114は、稼働対象の全生産設備を停止対象の生産設備として選択する。
【0041】
なお、最大稼働有効時間が総消費流量の周期と同じ場合には、各生産設備のタクト開始時間のパターンが最大稼働有効時間の間隔で同じパターンになる。このため、この場合においては、停止させる生産設備の数を可能な限り少なくしつつ、停止対象の生産設備を除いた生産設備の総消費流量が閾値を超えない条件(以下、選択条件と呼称する。)を満たす範囲で、設備稼働スケジュール決定部114は、稼働対象の全生産設備の中から停止対象の生産設備を1以上選択する。例えば、最大稼働有効区間の最後(ピーク時)における消費流量が多い順から停止対象の生産設備を選択するとしてもよいし、タクトタイムの短い順から停止対象の生産設備を選択するとしてもよい。また、ラウンドロビン方式で停止対象の生産設備を選択するとしてもよいし、事前に設備稼働スケジュール決定部114に停止対象の生産設備として設定されたものを選択するとしてもよい。
【0042】
そして、設備稼働スケジュール決定部114は、最大稼働有効区間の時間(以下、最大稼働有効時間と呼称する。)と、各生産設備の稼働開始時間と稼働停止時間と停止判定フラグとのデータを設備制御部115に設定する(S108)。
【0043】
<設備稼働制御処理>
次に、設備稼働制御部115の動作について説明する。
なお、設備稼働制御部115は、各生産設備に設定された停止判定フラグに基づいて、停止対象の生産設備であるか否かを判定することができる。
【0044】
なお、ユーザ(不図示)は、生産設備を追加・削除すると、追加・削除された生産設備に関するデータを、入力デバイスや端末などを介して、設備稼働モニタ112、設備稼働制御部115に設定する。また、生産設備が削除された場合は、削除された生産設備に関するデータを、データベース113から削除するか、または設備稼働スケジュール決定部114に参照されない状態にしているとする。
【0045】
図4〜図7に示すように、まず、設備稼働制御部115は、時間を0に設定し(S111)、各生産設備に設定された稼働開始時間で各生産設備の稼働を開始させる(S113:Yes,S114)。さらに、停止対象の生産設備に設定された稼働停止時間で停止対象の生産設備の稼働を停止させる(S115:Yes,S116:Yes,S117)。
【0046】
次に、設備稼働制御部115は、最大稼働有効時間が経過すると(S118:Yes)、停止対象の生産設備以外を稼働させたまま、時間を0に再設定し(S119)、停止対象の生産設備に設定された稼働開始時間で停止対象の生産設備の稼働を再開させる(S121:Yes,S122:Yes,S123)。さらに、停止対象の生産設備に設定された稼働停止時間で停止対象の生産設備の稼働を停止させる(S124:Yes,S125:Yes,S126)。最大稼働有効時間が経過すると(S127:Yes)、停止対象の生産設備の稼働の開始と停止とを繰り返す。
【0047】
なお、例えば、生産設備が追加・削除されるなどして、途中で生産設備の構成が変更されると(S112:YesまたはS120:Yes)、設備稼働制御部115は、追加・削除された生産設備以外を、その生産設備に設定された稼動停止時間で停止させる(S128:Yes,S129:Yes,S130)。最大連続有効時間が経過した後に(S131:Yes)、最大稼働有効時間と、各生産設備の稼働開始時間と稼働停止時間とのデータを更新させる。
【0048】
このとき、生産設備が追加された場合は(S132:追加)、時間を0に再設定し(S133)、追加された生産設備を単独で試験稼働する(S134)。試験稼働時間が経過した後に(S135:Yes)、追加された生産設備のタクト開始時間で、追加された生産設備の稼働を停止させる(S136:Yes,S137)。設備稼働スケジュール決定部114に設備稼働スケジュール決定処理を実行させる(S138)。ステップ(S111)から再度実行する。
【0049】
また、生産設備が削除された場合は(S132:削除)、設備稼働スケジュール決定部114に設備稼働スケジュール決定処理を実行させる(S138)。ステップ(S111)から再度実行する。
【0050】
なお、生産設備が更新された場合は、一度、生産設備が削除された場合の処理を経てから、生産設備が追加された場合の処理を実行することによって実現されるので、ここでは、省略している。
【0051】
<動作例>
ここでは、一例として、図8に示すように、第1の流量計108で測定した結果、第1の生産設備105が消費する圧縮空気の最大流量が12820dm/minである。設備稼働モニタ112で検出した結果、第1の生産設備105のタクトタイムが30secであるとする。
【0052】
また、図9に示すように、第2の流量計109で測定した結果、第2の生産設備106が消費する圧縮空気の最大流量が13340dm/minである。設備稼働モニタ112で検出した結果、第2の生産設備106のタクトタイムが28secであるとする。
【0053】
また、図10に示すように、第3の流量計110で測定した結果、第3の生産設備107が消費する圧縮空気の最大流量が4170dm/minである。設備稼働モニタ112で検出した結果、第3の生産設備107のタクトタイムが24secであるとする。
【0054】
また、226secと1066secとにおける各生産設備の消費流量が、12820dm/min(第1の生産設備105)、13340dm/min(第2の生産設備106)、3750dm/min(第3の生産設備107)であるとする。
【0055】
また、設備稼働スケジュール決定部114は、最大稼働有効時間が総消費流量の周期と同じ場合には、選択条件を満たす範囲で、最大稼働有効区間の最後(ピーク時)における消費流量が多い順から停止対象の生産設備を選択するとする。
【0056】
この場合において、設備稼働スケジュール決定部114でシミュレーションした結果、図11〜図13に示すように、30000dm/minまで急激に増加するピークが226secと1066secとに現れたとする。ここで、閾値として28000dm/minの値を設備稼働スケジュール決定部114に設定しておくと、設備稼働スケジュール決定部114は、226secから1066secまでの区間を最大稼働有効区間として特定する。
【0057】
また、この場合において、図14、図15に示すように、第1の生産設備105、第2の生産設備106、第3の生産設備107を同時に実行させている。
ここで、図14、図15において、実線の矢印で示す区間は、生産設備が稼働状態であることを示している。矢筈がタクト開始時間を示している。矢の長さがタクトタイムを示している。
【0058】
このとき、設備稼働スケジュール決定部114は、最大稼働有効区間(226secから1066secまでの区間)において、第1の生産設備105に対する最初のタクト開始時間(240sec)、第2の生産設備106に対する最初のタクト開始時間(252sec)、第3の生産設備107に対する最初のタクト開始時間(240sec)を特定する。同様に、設備稼働スケジュール決定部114は、最大稼働有効区間(226secから1066secまでの区間)において、第1の生産設備105に対する最後のタクト開始時間(1050sec)、第2の生産設備106に対する最後のタクト開始時間(1064sec)、第3の生産設備107に対する最後のタクト開始時間(1056sec)を特定する。
【0059】
図16、図17に示すように、設備稼働スケジュール決定部114は、第1の生産設備105の稼働開始時間(0sec)と稼働停止時間(810sec)、第2の生産設備106の稼働開始時間(12sec)と稼働停止時間(824sec)、第3の生産設備107の稼働開始時間(0sec)と稼働停止時間(816sec)を算出する。
【0060】
ここで、図16、図17において、実線の矢印で示す区間は、生産設備が稼働状態であることを示している。破線の矢印で示す区間は、生産設備が稼働状態および停止状態のいずれかであり、停止判定フラグに応じて、稼働状態および停止状態のいずれかが選択されることを示している。矢筈がタクト開始時間を示している。矢の長さがタクトタイムを示している。
【0061】
また、設備稼働スケジュール決定部114は、最大稼働有効時間(840sec)が総消費流量の周期(840sec)と同じであると判定し、最大稼働有効区間の最後(ピーク時)における消費流量が一番多い生産設備として第2の生産設備106を特定する。第2の生産設備106を除いた、第1の生産設備105と第3の生産設備107との総消費流量(16570dm/min)が閾値(28000dm/min)を超えないことから、第2の生産設備106だけを停止させれば、選択条件を満たすと判定し、第2の生産設備106だけを停止対象の生産設備として選択する。
【0062】
そして、設備稼働スケジュール決定部114は、最大稼働有効時間(840sec)、第1の生産設備105の稼働開始時間(0sec)と稼働停止時間(810sec)と停止判定フラグ(停止させないことを示す値)、第2の生産設備106の稼働開始時間(12sec)と稼働停止時間(824sec)と停止判定フラグ(停止させることを示す値)、第3の生産設備107の稼働開始時間(0sec)と稼働停止時間(816sec)と停止判定フラグ(停止させないことを示す値)の各データを設備制御部115に設定する。
【0063】
これに伴い、設備稼働制御部115は、時間を0に設定し、0secで第1の生産設備105と第3の生産設備107との稼働を開始させる。12secで第2の生産設備106の稼働を開始させる。さらに、824secで第2の生産設備106(停止対象の生産設備)の稼働を停止させる。
【0064】
次に、設備稼働制御部115は、最大稼働有効時間(840sec)が経過すると、
第1の生産設備105、第3の生産設備107の稼働開始時間を稼働させたまま、時間を0に再設定し、12sec(通算で852sec)で第2の生産設備106の稼働を再開させる。さらに、824sec(通算で1664sec)で第2の生産設備106(停止対象の生産設備)の稼働を停止させる。最大稼働有効時間(840sec)が経過すると、第2の生産設備106の稼働の再開と停止とを繰り返す。
【0065】
これによって、第1の生産設備105、第2の生産設備106、第3の生産設備107の総消費流量が閾値(28000dm/min)以上になることを抑制することができる。すなわち、総消費流量を下げることができるので、空気圧縮機101に供給する電力を下げても、各生産設備を安定稼働することができる。
【0066】
<まとめ>
以上、本実施の形態によれば、設備稼働モニタ112、データベース113、設備稼働スケジュール決定部114などによって、各生産設備の流量の変動を予測した上で、各生産設備の稼働スケジュールを決定することができる。そして、設備稼働制御部115などによって、予測した結果に基づいて各生産設備の稼働などを調整して、不測の総消費流量の増加を未然に防止し、生産設備を安定稼働することができる。これに伴い、空気圧縮機101に供給する電力を下げることができ、空気圧縮機101を省エネルギで安定稼働することができる。
【0067】
なお、設備稼働スケジュール決定部114は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、ネットワークアダプタなどを備えるとしてもよい。さらに、HDDなどに、設備稼働スケジュール決定部114を制御するプログラム(以下、設備稼働スケジュール決定プログラムと呼称する。)がインストールされており、設備稼働スケジュール決定プログラムが実行されることによって、設備稼働スケジュール決定部114の各機能が実現されるとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、圧縮空気を消費する生産設備を有する工場を省エネルギで安定稼働可能な工場の稼働方法などとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施の形態における工場の全体構成を示す図である。
【図2】実施の形態における工場の全体構成における信号の授受を示す図である。
【図3】実施の形態における設備稼働スケジュール決定処理を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態における設備稼働制御処理を示す第1のフローチャートである。
【図5】実施の形態における設備稼働制御処理を示す第2のフローチャートである。
【図6】実施の形態における設備稼働制御処理を示す第3のフローチャートである。
【図7】実施の形態における設備稼働制御処理を示す第4のフローチャートである。
【図8】実施の形態における第1の生産設備が消費する圧縮空気の流量を示すグラフである。
【図9】実施の形態における第2の生産設備が消費する圧縮空気の流量を示すグラフである。
【図10】実施の形態における第3の生産設備が消費する圧縮空気の流量を示すグラフである。
【図11】実施の形態における各生産設備の総消費流量を示す第1のグラフである。
【図12】実施の形態における各生産設備の総消費流量を示す第2のグラフである。
【図13】実施の形態における各生産設備の総消費流量を示す第3のグラフである。
【図14】実施の形態における設備稼働スケジュール決定部でシミュレートしたときの各生産設備のタクト開始時間を示す第1のタイミングチャートである。
【図15】実施の形態における設備稼働スケジュール決定部でシミュレートしたときの各生産設備のタクト開始時間を示す第2のタイミングチャートである。
【図16】実施の形態における設備稼働制御部で制御されながら稼働しているときの各生産設備のタクト開始時間を示す第1のタイミングチャートである。
【図17】実施の形態における設備稼働制御部で制御されながら稼働しているときの各生産設備のタクト開始時間を示す第2のタイミングチャートである。
【図18】従来の工場の全体構成を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
10 工場の稼働システム
11 空気圧縮機
12 圧力計
13 ドライヤ
14 空気タンク
15 第1の生産設備
16 第2の生産設備
17 第3の生産設備
100 工場の稼働システム
101 空気圧縮機
102 圧力計
103 ドライヤ
104 空気タンク
105 第1の生産設備
106 第2の生産設備
107 第3の生産設備
108 第1の流量計
109 第2の流量計
110 第3の流量計
111 空気圧縮機制御部
112 設備稼働モニタ
113 データベース
114 設備稼働スケジュール決定部
115 設備稼働制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を消費する複数の生産設備を有する工場の稼働システムであって、
各生産設備で消費された圧縮空気の流量の時系列データと、各生産設備において圧縮空気を消費する工程のタクトタイムとを記憶している記憶手段と、
各生産設備の消費流量の時系列データと各生産設備のタクトタイムとを使用して総消費流量の時系列変化をシミュレートし、シミュレートした結果から、総消費流量が閾値以下になる区間の中で最大となる最大稼働有効区間と、前記最大稼働有効区間において各生産設備の最初と最後のタクト開始時間とを特定する計算手段と、
前記複数の生産設備のいずれかを、最初のタクト開始時間で稼働開始させ、最後のタクト開始時間で稼働停止させることを前記最大稼働有効区間の周期で繰り返し行う制御手段とを備える
ことを特徴とする工場の稼働システム。
【請求項2】
前記制御手段が、
前記複数の生産設備における第1の生産設備を、最初のタクト開始時間で稼働開始させた後、最後のタクト開始時間で稼働停止させずに継続稼働させながら、
前記複数の生産設備における第2の生産設備を、最初のタクト開始時間で稼働開始させ、最後のタクト開始時間で稼働停止させることを前記最大稼働有効区間の周期で繰り返し行う
ことを特徴とする請求項1に記載の工場の稼働システム。
【請求項3】
前記計算手段が、前記複数の生産設備の中で、総消費流量が閾値以上になるときの消費流量が一番多い生産設備を前記第2の生産設備として選択する
ことを特徴とする請求項2に記載の工場の稼働システム。
【請求項4】
圧縮空気を消費する複数の生産設備を有する工場の稼働方法であって、
各生産設備で消費された圧縮空気の流量の時系列データと、各生産設備において圧縮空気を消費する工程のタクトタイムとを記憶している記憶装置を参照し、各生産設備の消費流量の時系列データと各生産設備のタクトタイムとを使用して総消費流量の時系列変化をシミュレートし、シミュレートした結果から、総消費流量が閾値以下になる区間の中で最大となる最大稼働有効区間と、前記最大稼働有効区間において各生産設備の最初と最後のタクト開始時間とを特定する計算工程と、
前記複数の生産設備のいずれかを、最初のタクト開始時間で稼働開始させ、最後のタクト開始時間で稼働停止させることを前記最大稼働有効区間の周期で繰り返し行う制御工程とを含む
ことを特徴とする工場の稼働方法。
【請求項5】
前記制御工程において、
前記複数の生産設備における第1の生産設備を、最初のタクト開始時間で稼働開始させた後、最後のタクト開始時間で稼働停止させずに継続稼働させながら、
前記複数の生産設備における第2の生産設備を、最初のタクト開始時間で稼働開始させ、最後のタクト開始時間で稼働停止させることを前記最大稼働有効区間の周期で繰り返し行う
ことを特徴とする請求項4に記載の工場の稼働方法。
【請求項6】
前記計算工程において、前記複数の生産設備の中で、総消費流量が閾値以上になるときの消費流量が一番多い生産設備を前記第2の生産設備として選択する
ことを特徴とする請求項5に記載の工場の稼働方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−128625(P2010−128625A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300264(P2008−300264)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】