説明

工業用酵母の遺伝子を解析するための方法

本発明の目的は、工業用酵母の遺伝子を解析するための方法を提供することである。本発明の方法は
(a)工業用酵母のゲノム配列を解析し;そして
(c−1)サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の遺伝子にコードされるアミノ酸配列に70〜97%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする工業用酵母の遺伝子を選択するか、または
(c−2)サッカロマイセス・セレビシエの遺伝子のヌクレオチド配列に60〜94%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる工業用酵母の遺伝子を選択する
ことを含む。


Notice: Undefined index: DEJ in /mnt/www/gzt_disp.php on line 298

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業用酵母の遺伝子を解析するための方法であって
(a)工業用酵母のゲノム配列のヌクレオチド配列を解析し;そして
(c−1)サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の遺伝子にコードされるアミノ酸配列に70〜97%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする工業用酵母の遺伝子を選択するか、または
(c−2)サッカロマイセス・セレビシエの遺伝子のヌクレオチド配列に60〜94%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる工業用酵母の遺伝子を選択する
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
(b)工程(a)の後、そして工程(c−1)または(c−2)の前に、工業用酵母のゲノム配列を、サッカロマイセス・セレビシエのゲノム配列と比較する
ことを含む、請求項1記載の解析法。
【請求項3】
(d)工程(c−1)または(c−2)の後に、選択した遺伝子の機能解析を行う
ことを含む、請求項1または2記載の解析法。
【請求項4】
工程(d)の機能解析によって、アルコールまたは酒類の製造において、生産性の向上および/または香味の改善に関わる遺伝子をスクリーニングすることを含む、請求項3記載の解析法。
【請求項5】
遺伝子の破壊または遺伝子の過剰発現によって、機能解析を行う、請求項3または4記載の解析法。
【請求項6】
工業用酵母が醸造用酵母である、請求項1〜5のいずれかに記載の解析法。
【請求項7】
醸造用酵母がビール酵母である、請求項6記載の解析法。
【請求項8】
ビール酵母が下面発酵酵母である、請求項7記載の解析法。
【請求項9】
サッカロマイセス・セレビシエの遺伝子にコードされるアミノ酸配列に70〜97%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするか、またはサッカロマイセス・セレビシエの遺伝子のヌクレオチド配列に60〜94%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる、工業用酵母の遺伝子であって、請求項1〜8のいずれか1項記載の解析法によって得られる、前記遺伝子。
【請求項10】
各々が、サッカロマイセス・セレビシエの遺伝子にコードされるアミノ酸配列に70〜97%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするか、またはサッカロマイセス・セレビシエの遺伝子のヌクレオチド配列に60〜94%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる、工業用酵母の1以上の遺伝子を含む遺伝子ライブラリーであって、請求項1〜8のいずれか1項記載の解析法によって得られる、前記ライブラリー。
【請求項11】
工業用酵母の遺伝子が、配列番号33〜6236、配列番号166154〜166181、配列番号166490〜167042および配列番号173125〜174603から選択されるヌクレオチド配列いずれかに含まれるか、該配列いずれかからなるか、または該配列いずれかを有する、請求項10記載の遺伝子ライブラリー。
【請求項12】
1以上のDNAを含むDNAアレイであって、各DNAが(1)〜(4):
(1)サッカロマイセス・セレビシエの遺伝子にコードされるアミノ酸配列に70〜97%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする、工業用酵母のゲノム配列のオープンリーディングフレームのヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列から選択される連続10以上のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなるDNA;
(2)サッカロマイセス・セレビシエの遺伝子のヌクレオチド配列に60〜94%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる、オープンリーディングフレーム以外の工業用酵母のゲノム配列のヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列から選択される連続10以上のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなるDNA;
(3)配列番号166490〜167042のいずれかのヌクレオチド配列を有するDNA、または配列番号167043〜173124のいずれかのヌクレオチド配列を有するDNA;および
(4)配列番号173125〜174603のいずれかのヌクレオチド配列を有するDNA、または配列番号174604〜190810のいずれかのヌクレオチド配列を有するDNA
の少なくとも1つの群から選択される、前記DNAアレイ。
【請求項13】
(1)〜(4)のすべての群から少なくとも1つのDNAが選択されるDNAを含む、請求項12記載のDNAアレイ。
【請求項14】
(1)のDNAが、配列番号33〜6236、配列番号166154〜166181、配列番号6237〜75336、および配列番号166182〜166489から選択されるヌクレオチド配列いずれかに含まれるか、該配列いずれかからなるか、または該配列いずれかを有する、請求項12または13記載のDNAアレイ。
【請求項15】
(1)〜(4)から選択されるDNAの少なくとも1つの群に加えて、以下の(5)および/または(6)のDNA:
(5)サッカロマイセス・セレビシエの遺伝子にコードされるアミノ酸配列に、97%より高い同一性を有するアミノ酸配列をコードする、工業用酵母のゲノム配列のオープンリーディングフレームのヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列から選択される連続10以上のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなるDNA;および
(6)サッカロマイセス・セレビシエの遺伝子のヌクレオチド配列に、94%より高い同一性を有するヌクレオチド配列からなる、オープンリーディングフレーム以外の工業用酵母のゲノム配列のヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列から選択される連続10以上のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなるDNA
をさらに含み、そして所望によって、以下の(5’)および/または(6’)のDNA:
(5’)(5)のDNAに対して1以上の塩基(単数または複数)のミスマッチを含有するヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるDNA;および
(6’)(6)のDNAに対して1以上の塩基(単数または複数)のミスマッチを含有するヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるDNA
を含む、請求項12〜14のいずれか1項記載のDNAアレイ。
【請求項16】
(5)のDNAが、配列番号75337〜82784、または配列番号82785〜166153のいずれか1つのヌクレオチド配列を有する、請求項15記載のDNAアレイ。
【請求項17】
(1)〜(4)から選択されるDNAの少なくとも1つの群に加えて、以下の(7)〜(10)の少なくとも1つから選択されるDNA:
(7)(1)のDNAに対して1以上の塩基(単数または複数)のミスマッチを含有するヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるDNA;
(8)(2)のDNAに対して1以上の塩基(単数または複数)のミスマッチを含有するヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるDNA;
(9)(3)のDNAに対して1以上の塩基(単数または複数)のミスマッチを含有するヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるDNA;および
(10)(4)のDNAに対して1以上の塩基(単数または複数)のミスマッチを含有するヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるDNA
を含む、請求項12〜16のいずれか1項記載のDNAアレイ。
【請求項18】
(1)〜(4)から選択されるDNAの少なくとも1つの群に加えて、以下の(7−1)〜(10−1)の少なくとも1つから選択されるDNA:
(7−1)(1)のDNAに対して1塩基のミスマッチを含有するヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるDNA;
(8−1)(2)のDNAに対して1塩基のミスマッチを含有するヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるDNA;
(9−1)(3)のDNAに対して1塩基のミスマッチを含有するヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるDNA;および
(10−1)(4)のDNAに対して1塩基のミスマッチを含有するヌクレオチド配列、または上記ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列からなるDNA
を含む、請求項17記載のDNAアレイ。
【請求項19】
(1)〜(4)から選択されるDNAの少なくとも1つの群、(7)〜(10)から選択されるDNAの少なくとも1つの群、(5)および/または(6)のDNAならびに(5’)および/または(6’)のDNAを含む、請求項12〜18のいずれか1項記載のDNAアレイ。
【請求項20】
DNAが10〜30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドである、請求項12〜19のいずれか1項記載のDNAアレイ。
【請求項21】
工業用酵母の遺伝子の解析法のための、請求項12〜20のいずれか1項記載のDNAアレイの使用。
【請求項22】
工業用酵母を分類するための方法であって
(a)工業用酵母から調製したゲノムDNAを、請求項15〜20のいずれか1項のDNAアレイにハイブリダイズさせ;そして
(b)(1)〜(4)のいずれかへのハイブリダイゼーション比、ならびに(5)および/または(6)へのハイブリダイゼーション比を計算する
ことを含む、前記方法。
【請求項23】
請求項22記載の分類法であって、請求項19のDNAアレイを用い、そして
(1)および/または(2)のDNAにハイブリダイズするが、(7)および/または(8)のDNAにハイブリダイズしない遺伝子の割合を、(1)〜(4)のいずれかへのハイブリダイゼーション比として決定し、そして
(5)および/または(6)のDNAにハイブリダイズするが、(5’)および/または(6’)のDNAにハイブリダイズしない遺伝子の割合を、(5)および/または(6)のいずれかへのハイブリダイゼーション比として決定する、前記方法。
【請求項24】
工業用酵母のゲノムにおけるヌクレオチド多型を検出するための方法であって
(a)工業用酵母から調製したゲノムDNAを、請求項17〜20のいずれか1項のDNAアレイにハイブリダイズさせ;そして
(b)(7)〜(10)のいずれかのDNAへのハイブリダイゼーション強度が、(1)〜(4)のいずれかのDNAへのハイブリダイゼーション強度より高い遺伝子を選択する
ことを含む、前記方法。
【請求項25】
工業用酵母の有用な株をスクリーニングするための方法であって
(a)工業用酵母株から調製したゲノムDNAを、請求項12〜20のいずれか1項のDNAアレイにハイブリダイズさせ;そして
(b)そのハイブリダイゼーション強度が、(1)〜(4)のいずれかのDNAへの平均ハイブリダイゼーション強度に比較して、1.5倍高いか、または2/3以下である、1以上の遺伝子を、該工業用酵母株が含有する場合、該株を有用と決定する
ことを含む、前記方法。
【請求項26】
工業用酵母の遺伝子をスクリーニングするための方法であって
(a)工業用酵母株から調製したゲノムDNAを、請求項12〜20のいずれか1項のDNAアレイにハイブリダイズさせ;そして
(b)そのハイブリダイゼーション強度が、(1)〜(4)のいずれかのDNAへの平均ハイブリダイゼーション強度に比較して、1.5倍高いか、または2/3以下である、遺伝子を選択する
ことを含む、前記方法。
【請求項27】
工業用酵母の遺伝子をスクリーニングするための方法であって
(a−1)工業用酵母から調製したゲノムDNA、cDNAまたはcRNAを、請求項12〜20のいずれか1項のDNAアレイにハイブリダイズさせ;
(a−2)工程(a−1)とは独立に、別の工業用酵母から調製したゲノムDNA、cDNAまたはcRNAを、請求項12〜20のいずれか1項のDNAアレイにハイブリダイズさせ;そして
(b)工程(a−1)での、(1)〜(4)のいずれかのDNAへのハイブリダイゼーション強度が、工程(a−2)でのハイブリダイゼーション強度と有意に異なる遺伝子を選択する
ことを含む、前記方法。
【請求項28】
工業用酵母の遺伝子をスクリーニングするための方法であって
(a−1)工業用酵母から調製したcDNAまたはcRNAを、請求項12〜20のいずれか1項のDNAアレイにハイブリダイズさせ;
(a−2)工程(a−1)とは独立に、該工業用酵母から調製したcDNAまたはcRNAを、請求項12〜20のいずれか1項のDNAアレイにハイブリダイズさせ、ここで(a−2)の工業用酵母は、(a−1)の工業用酵母のための培養条件とは異なる条件で培養されている;そして
(b)工程(a−1)での、(1)〜(4)のいずれかのDNAへのハイブリダイゼーション強度が、工程(a−2)でのハイブリダイゼーション強度と有意に異なる遺伝子を選択する
ことを含む、前記方法。
【請求項29】
請求項26〜28のいずれか1項のスクリーニング法によって得られる遺伝子。
【請求項30】
請求項9または29記載の遺伝子を工業用酵母で発現させた場合、該酵母の培地中の亜硫酸濃度が上昇することを特徴とする、前記遺伝子。
【請求項31】
以下のi)およびii):
i)配列番号3に示すアミノ酸配列を有するポリペプチド、および
ii)1以上のアミノ酸残基(単数または複数)が、配列番号3に示すアミノ酸配列から欠失し、該配列を置換し、そして/または該配列に付加されているアミノ酸配列を有し、そして該遺伝子を工業用酵母で発現させた場合、該酵母の培地中の亜硫酸濃度を上昇させる活性を有する、ポリペプチド
のいずれか1つのポリペプチドをコードする核酸。
【請求項32】
以下のa)およびb):
(a)配列番号1に示すヌクレオチド配列を有する核酸;および
(b)ストリンジェントな条件下で、配列番号1に示すヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列にハイブリダイズし、そして該遺伝子を工業用酵母で発現させた場合、該酵母の培地中の亜硫酸濃度を上昇させる活性を有するポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列を有する、核酸
から選択される、請求項31記載の核酸。
【請求項33】
請求項9または請求項29〜30の遺伝子、あるいは請求項31〜32の核酸を含有する、組換えベクター。
【請求項34】
請求項33の組換えベクターを含む、形質転換体。
【請求項35】
サッカロマイセス属の酵母である、請求項34記載の形質転換体。
【請求項36】
以下のi)およびii):
i)配列番号3に示すアミノ酸配列を有するポリペプチド;および
ii)1以上のアミノ酸残基(単数または複数)が、配列番号3に示すアミノ酸配列から欠失し、該配列を置換し、そして/または該配列に付加されているアミノ酸配列を有し、そして該遺伝子を工業用酵母で発現させた場合、該酵母の培地中の亜硫酸濃度を上昇させる活性を有する、ポリペプチド
のいずれか1つのポリペプチド。
【請求項37】
以下のa)およびb):
(a)配列番号1に示すヌクレオチド配列を有する核酸;および
(b)ストリンジェントな条件下で、配列番号1に示すヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列にハイブリダイズし、そして該遺伝子を工業用酵母で発現させた場合、該酵母の培地中の亜硫酸濃度を上昇させる活性を有するポリペプチドをコードする、ヌクレオチド配列を有する、核酸
から選択される核酸にコードされる、請求項36記載のポリペプチド。
【請求項38】
請求項34または35の形質転換体を用いて、アルコールまたは酒類を製造するための方法。
【請求項39】
請求項9または請求項29〜30の遺伝子、あるいは請求項31〜32の核酸の発現が調節されていることを特徴とする、アルコールまたは酒類の製造に適した酵母の育種法。
【請求項40】
酵母がサッカロマイセス属に属する、請求項39記載の育種法。
【請求項41】
請求項39または40の育種法によって得られる酵母。
【請求項42】
請求項41に言及する酵母を用いて、アルコールまたは酒類を製造するための方法。
【請求項43】
請求項42の製造法によって製造される、アルコールまたは酒類。
【請求項44】
工業用酵母の遺伝子を解析するための方法であって
(c−1)サッカロマイセス・セレビシエの遺伝子にコードされるアミノ酸配列に70〜97%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする工業用酵母の遺伝子を選択するか、または
(c−2)サッカロマイセス・セレビシエの遺伝子のヌクレオチド配列に60〜94%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる工業用酵母の遺伝子を選択する
ことを含む、前記方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−511305(P2008−511305A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529038(P2007−529038)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002908
【国際公開番号】WO2006/024951
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】