説明

巻き終わり糸の制御装置

【課題】 複数の給糸ボビンから大径の一個の巻取パッケージに巻き取る際に、糸継ぎの際のビリを防止すると共に、給糸ボビンの巻き終わりの糸端の糸跳ねをも防止可能とする巻き終わり糸の制御装置を提供することである。
【解決手段】 給糸ボビンの頭部から離れた待機位置1Aと、前記ボビンの頭部に近接する糸跳ね防止位置1Bと、前記ボビンの頭部に当接するビリ防止位置1Cとに移動自在とし、各ボビンの巻き終わり時に、前記糸跳ね防止位置に移動する糸跳ね防止部材(ブラシ3)を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の給糸ボビンから大径の一個の巻取パッケージに巻き取る際に、ボビンの巻き終わりの糸が跳ねることを防止する巻き終わり糸の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の給糸ボビンを大径の巻取パッケージに巻き取る巻取ユニットU(図3参照)を並列してなる自動ワインダにあっては、一般に、綿等の短繊維からなる紡績糸である糸Yを給糸ボビンBから解舒し、テンション装置10により所定糸張力を付与すると共にトラバースしながら巻取ボビンBf上に巻き付けて、大径の所定形状の巻取パッケージPを巻成している。
【0003】
それぞれの巻取ユニットUは、それぞれサイドフレーム18を備えており、巻取ボビンBfを保持するクレードル17および綾振りドラム16や後述する上糸捕捉案内手段15や中継ぎパイプ12等の装置がこのサイドフレーム18に装着されている。また、該サイドフレーム18には、前記綾振りドラム16の駆動モータや上糸捕捉案内手段15等の駆動手段が配設されていると共に、巻取運転の制御を行うための電装部19が備えられている。
【0004】
それぞれの巻取ユニット本体の下部側に配置される給糸ボビンBから解舒される糸Yを、上部側に配置する綾振りドラム16により接触回転駆動される巻取パッケージPに巻き取るまでの糸走行経路中には、給糸側から巻取側へ向かって、解舒補助装置11、テンション装置10、ヤーンクランプ12Aとサクションパイプ12Bを備える中継ぎパイプ12、糸継ぎ装置13、クリアラー(糸太さ検出器)14等の各種の糸処理装置が配設されている。
【0005】
解舒補助装置11は、給糸ボビンBの解舒と共に芯管に被さる筒体を下げることにより、給糸ボビンBからの糸Yの解舒を補助するものである。糸継ぎ装置13は、糸欠陥を検出して行う糸切断時、又は解舒中の糸切れ時に、給糸ボビンB側の下糸と、巻取パッケージP側の上糸とを糸継ぎするものである。クリアラー14は、Yの太さ欠陥を検出するためのものである。さらに、このクリアラー14には、糸欠陥を検出した時の糸切断用のカッター14aが付設されている。
【0006】
また、巻取部WAは、巻取ボビンBfを把持するクレードル17と糸Yをトラバースさせる綾振りドラム(巻取ドラム)16とを備えている。クレードル17は、綾振りドラム16に向けて揺動自在であり、それによって巻取ボビンBfに巻き形成された巻取パッケージPが綾振りドラム16に対して接触又は離反される。また、クレードル17には、糸切れ時にクレードル17を上げて、巻取パッケージPを綾振りドラム16から離反させるリフトアップ機構17aと、クレードル17を上げると同時に、クレードル17に把持された巻取パッケージPの回転を停止させるパッケージブレーキ機構17bが取り付けられている。
【0007】
糸継ぎ装置13の上下には、給糸ボビンB側の下糸を捕捉して案内する下糸捕捉案内手段である中継ぎパイプ12と、巻取パッケージP側の上糸を捕捉して案内する上糸捕捉案内手段15が設けられている。
【0008】
中継ぎパイプ12はサクションパイプ12Bと該サクションパイプ12Bの先端に装着されるヤーンクランプ12Aとを備えている。糸切断時又は糸切れ時には、中継ぎパイプ
12のヤーンクランプ12Aが図示の位置で、クリアラーのカッター14aと給糸ボビンBに連なる下糸を捕捉し下から上へと旋回して、糸継ぎ装置13に下糸を案内する。同時に、上糸捕捉案内手段15のサクションマウス15aが図示の位置から軸15bを中心にして下から上へと旋回し、逆転させられる巻取パッケージPから上糸を捕捉し、更に軸15bを中心にして上から下へと旋回し、糸継ぎ装置13に上糸を案内する。糸継ぎ装置13は、例えば旋回空気流を用いて糸継ぎするエアースプライサーであって、前記糸継ぎ装置13により、引き揃えられた下糸と上糸とが糸継ぎされる。
【0009】
上記のようにして、給糸ボビンBから解舒される下糸と、巻取パッケージP側の上糸とを糸継ぎしながら巻上げていって、所定長で所定形状の巻取パッケージPを巻成するものである。
【0010】
つまり、多数の小径の給糸ボビンBから、一個の大径の巻取パッケージPが巻成されており、各々の給糸ボビンBの巻き終わりがその度に生じている。この解舒される巻き終わりをボビンの巻き終わり糸と称する。
【0011】
また、糸継ぎの際には、一旦停止した状態で糸継ぎを行うので、停止する際に糸にビリが入る虞がある。そのために糸にビリが入らないように、糸を押えるビリ防止装置を備える自動ワインダとし、糸継ぎの際に、一旦停止し、糸継ぎ後に巻き取り開始され走行開始する糸を押えて、所定の張力を付加しながら、糸継ぎと走行開始を行うことで、糸が弛んでビリを生じることを防止することができる。本出願人からも、自動ワインダにおけるビリ防止方法及びその装置が既に出願されている(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
一本の給糸ボビンの糸が全て巻き取られると、空となった給糸ボビン(以後、空ボビンと称する)が払い出されて、新たに満巻き状態の給糸ボビン(以後、満ボビンと称する)が取り込まれて、糸継ぎした後に、新たな巻き取りが開始される。ところが、給糸ボビンの巻き終わり時には、そのまま、全ての糸が解舒されて巻き取られている状態である。
【特許文献1】特開平11−49433号公報(第1−8頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
給糸ボビンの巻き終わりには、最後の巻き糸の糸端が自由端となって解舒され巻き取られていくので、フリーとなる糸端が大きく跳ねる現象が生じる。糸跳ねが生じると糸の張力が大きく変動するので、巻取パッケージに巻取中の糸が正常な糸道(軌道)から変位してしまい、パッケージ端部から滑落する問題を生じる。
【0014】
糸継ぎの際に、巻取パッケージ側の上糸と給糸ボビン側の下糸とを取り出して糸継ぎを行うが、この時に、上糸がパッケージ端部から滑落した状態(端面落ちと称する)でそのまま糸継ぎを行い、巻取を開始すると、端面落ちという欠点を有する巻取パッケージを巻成し、問題となる。
【0015】
端面落ちを有する不良パッケージは、このパッケージを解舒する際に、その端面落ちが前記パッケージの下側(コーンパッケージであればその大径側)にあれば、糸の解舒の際に、パッケージに引っ掛って糸切れする問題となる。また、端面落ちがパッケージの上側(コーンパッケージであればその小径側)にある場合であっても、解舒の際に端面落ち部分の糸が弛んで糸張力が大きく変動して、問題となる。
【0016】
そのために、複数の給糸ボビンから大径の一個の巻取パッケージに巻き取る際には、糸継ぎの際のビリ防止対策だけでは不十分であり、給糸ボビンの巻き終わりの糸端の糸跳ねを防止する必要がある。
【0017】
本発明の目的は、上記問題を解決するために、複数の給糸ボビンから大径の一個の巻取パッケージに巻き取る際に、糸継ぎの際のビリを防止すると共に、給糸ボビンの巻き終わりの糸端の糸跳ねをも防止可能とする巻き終わり糸の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために請求項1に係る発明は、複数の給糸ボビンから大径の一個の巻取パッケージに巻き取る際に、前記ボビンの頭部から離れた待機位置と、前記ボビンの頭部に近接する位置と、前記ボビンの頭部に当接する位置とに移動自在であると共に、各ボビンの巻き終わり時には、前記近接する位置に移動する糸跳ね防止部材を備えていることを特徴としている。
【0019】
上記の構成を有する請求項1に係る発明によれば、巻き終わりの糸端が糸跳ねしようとしても、近接した位置にある糸跳ね防止部材に接触するので、糸の動きが制限され糸跳ねを防止することができる。
【0020】
請求項2に係る発明は、前記糸跳ね防止部材が、斜め上方に先端部を向けたブラシと該ブラシを埋め込んだ基部と該基部を回転移動する回動部材とを備えており、前記回動部材を介して前記ブラシを移動自在としたことを特徴としている。
【0021】
上記の構成を有する請求項2に係る発明によれば、先端が自由端であり柔軟性を有するブラシが回動して、給糸ボビンに近接したり当接するので、糸を損傷せずに糸の動きを制限することができる。
【0022】
請求項3に係る発明は、前記ボビンの頭部に当接する位置がビリ防止位置であって、糸継ぎして巻き取りを開始する際に、前記ボビンの頭部と前記ブラシとで糸を挟持して糸に張力を付与し、ビリの発生を抑制することを特徴としている。
【0023】
上記の構成を有する請求項3に係る発明によれば、柔軟性を有するブラシとボビン頭部とで糸を挟持するので、糸に適当な張力を付与しながら引き出しを許可し、ビリの発生を抑制しながら糸継ぎすることができる。
【0024】
請求項4に係る発明は、前記ボビンの頭部に近接する位置が、糸跳ね防止位置であって、各ボビンの巻き終わり時に糸跳ねする巻き終わりの糸端が前記ブラシに接する程度の位置であることを特徴としている。
【0025】
上記の構成を有する請求項4に係る発明によれば、巻き終わりの糸端が糸跳ねしても、柔軟性を有するブラシがボビン頭部に近接した状態であるので、糸端を損傷することなく抵抗を付与し、糸跳ねを効果的に防止することができる。
【0026】
請求項5に係る発明は、前記ボビンの巻き終わりを検知するセンサを配設し、該センサの検知により前記ブラシの先端を前記糸跳ね防止位置まで移動する構成としたことを特徴としている。
【0027】
上記の構成を有する請求項5に係る発明によれば、巻き終わりが近いことを検知して速やかに、糸跳ね防止部材を糸跳ね防止位置に移動させるので、糸跳ねを効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、斜め上方に先端部を向けたブラシと該ブラシを埋め込んだ基部と該基
部を回転移動する回動部材とを備えた糸跳ね防止部材の前記ブラシを、前記ボビンの頭部から離れた待機位置と、前記ボビンの頭部に近接する糸跳ね防止位置と、前記ボビンの頭部に当接するビリ防止位置とに移動自在としたので、糸継ぎ時のビリ防止と、巻き終わり時の糸跳ね防止を可能とする巻き終わり糸の制御装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る巻き終わり糸の制御装置の実施の形態について、図1から図3に基づいて説明する。
【0030】
図1は本発明に係る巻き終わり糸の制御装置が糸跳ね防止位置にある操作状態を示す概略説明図である。図2は糸継ぎ時のビリ防止位置にある操作状態を示す概略説明図である。図3は、本発明に係る巻き終わり糸の制御装置を備える自動ワインダの巻取ユニットの一例を示す全体構成図である。
【0031】
図3に示すように、本発明に係る巻き終わり糸の制御装置1が好適に適用される自動ワインダは、それぞれの巻取ユニットU本体の下部側に、トレイT上に載置した給糸ボビンBを配置し、該給糸ボビンBに巻回された糸Yを解舒しながら引き出して、テンション装置10を介して所定のテンションを付与しながら、上部側の巻取部WAに配設される綾振りドラム16により接触回転駆動される大径の巻取パッケージPに巻き取っている。
【0032】
また、多数の小径の給糸ボビンBから引き出した糸Yを、糸道に沿って、走行する糸Yに適宜処理を付与する糸処理装置を介して、大径の一個の巻取パッケージPに巻き取る構成である。また、小径の前記給糸ボビンBを順次交換するので、そのたび毎に糸処理装置の一つである糸継ぎ装置13が糸継ぎして、連続した一本の糸Yとして巻き取る構成としている。
【0033】
また前述した通り、糸Yの不良部分をクリアラー14が検知するたびに、糸Yを切断し、再度糸継ぎして巻取するので、糸継ぎ回数はさらに増加することになる。
【0034】
そのために、糸Yの巻取工程中には、糸Yの走行が頻繁に停止され、停止、糸継ぎ、走行再開、高速走行、停止を繰り返していくことになって、その度に、糸Yの糸張力が大きく変動することになる。
【0035】
糸張力が低下して糸が弛むとビリが生じる。ビリがそのまま巻取パッケージPに巻き取られると、後で解舒する際に抵抗となって、解舒不良や張力変動の原因となり、最悪糸切れすることもある。また、ビリが生じている部分で糸継ぎを行うと、糸継ぎ不良となり正常な糸継ぎと巻き取りができなくなる原因となる。
【0036】
そのために、本発明においては、複数の給糸ボビンBから大径の一個の巻取パッケージPに巻き取る際に、糸継ぎの際のビリを防止すると共に、給糸ボビンの巻き終わりの糸端の糸跳ねをも防止可能とする巻き終わり糸の制御装置を用いる構成とした。
【0037】
次に図1および図2より、本発明に係る巻き終わり糸の制御装置について詳細に説明する。
【0038】
本発明に係る巻き終わり糸の制御装置1は、ブラシ3と該ブラシ3を埋め込む基部2と該基部3を回転移動する回動部材4とを備えた糸跳ね防止部材を備えており、図1に示す糸跳ね防止位置と、図2に示すビリ防止位置とに変位自在な構成とされている。糸跳ね防止位置とは、巻き終わりの糸端が跳ねるのを防止する状態の位置にあることを意味し、ビリ防止位置とは、糸継ぎ時に生じやすいビリの発生を防止する状態の位置にあることを意
味する。そのために、前記回動部材4を介して、前記ブラシ3が前記ボビンから離れた待機位置1Aと、ボビン頭部に近接した糸跳ね防止位置1Bと、ボビン頭部に当接するビリ防止位置1Cとに移動自在な構成としている。
【0039】
糸跳ねを防止する状態とは、前記ブラシ3がボビン頭部から少し離れた位置に待機した状態である。また、ビリを防止する状態とは、前記ブラシ3がボビン頭部に当接した状態である。これは、糸継ぎ時には、糸を引き出しながら糸継ぎを行い、糸継ぎ終了後に巻き取りを再開するので、糸をボビン頭部とブラシ3で挟持して、張力を付与しながら糸を引き出すことで、ビリの発生を防止するためである。
【0040】
糸跳ねを防止する操作状態とは、巻取中に生じる各給糸ボビンの巻き終わりの糸端がフリーとなって、跳ねながら巻き取られる際の、その糸跳ねを抑制する状態であって、ボビン頭部にブラシ3を近接して配設するようにしている。そのために、ブラシ3をボビンから距離Eだけ離れた位置に近接している。
【0041】
この状態であれば、巻取中の残糸Y1の巻取操作が妨害されることはない。また、巻き終わりの糸端が跳ねようとしても、糸端がブラシ3に接触して抵抗を受けるので、糸跳ねが停止して、そのまま巻き取られることとなり、糸跳ねを抑制した状態で糸端をパッケージに巻き取ることができる。
【0042】
前記距離Eは、給糸ボビンBから解舒される糸Yが抵抗なく挿通可能であることが好ましく、また、糸跳ねした時に、糸端が接する程度に近接していることが好ましい。
【0043】
ブラシ3は、樹脂または合成繊維製のブラシ毛を、基部2に起毛、植毛、または、嵌め込んで、斜め上方に先端部を向けた形状に形成されており、そのまま水平方向に回動してボビンに接近させると、その自由端(フリー)である上向きの先端部がボビン外周に当接し、根元の下側の基部側は当接しない構成とされている。また、給糸ボビンBの頂部付近の頭部に当接するようにされており、満巻き状態の満ボビンであっても、巻糸部糸層には当接せず、ボビン頭部に直接当接する構成である。
【0044】
この状態であれば、弾性と柔軟性を備えるブラシ3の毛先がボビン頭部に当接して糸を押えるので、巻取中の糸Yに張力を付与するだけで、糸Yの走行は妨害しない。
【0045】
前述した糸跳ね防止部材としては、ブラシの他に、ワイヤや布などの弾性や柔軟性を備える各種の部材が適用可能である。ただし、本実施の形態に係るブラシ3を用いる構成であれば、糸Yの巻取方向に毛先を揃えて配置することで、糸Yの巻取抵抗を最小限に抑制することができ、さらに、変位自在な毛先をボビン頭部に接触させても、糸Yを過剰に押圧し過ぎることがなく好適である。
【0046】
給糸ボビンBが、残糸が残り僅かとなった状態の残糸ボビンB1であることを検知するために、本実施の形態においては、ボビン地と糸層部を識別して残糸ボビンB1であることを検知するセンサS1を設ける構成としている。また、前記センサS1を用いなくても、給糸ボビンBの巻糸量を予め記憶しておいて、所定の巻取時間経過後に、そろそろ巻取が終了し残糸ボビンB1となる頃合を推定することも可能であり、特にその方法を限定するものではない。
【0047】
前記センサS1が給糸ボビンBから糸Yが解舒されて、残糸ボビンB1となったことを検知すると、図示しない本体側の制御装置からの指令により、回動部材4が駆動され、待機位置1Aにあるブラシ3が、糸跳ね防止位置1Bまで回動移動される。
【0048】
前述したように、ブラシ3が糸跳ね防止位置1Bにあっても、巻取り中の糸Yの走行を妨害しない。ただ、巻き終わりの糸端Y1の終端がフリーとなると、糸跳ねした糸端が前記ブラシ3に接触して糸跳ねを抑止することができる。
【0049】
さらに、ブラシ3は、そのブラシ毛の先端部を斜め上方に向けたフリーな状態に形成されているので、上方に引き上げられながら巻き取られる糸Yの走行を阻害せず、巻き取りの妨害とはならず、糸に抵抗を付与するだけである。また、斜め上方にある長さを有するブラシ毛としているので、給糸ボビンの大きさや巻き糸の巻取位置に対してある程度の許容範囲があり、柔軟に対応可能とされている。さらに、巻き終わり糸の制御装置1全体を一体的に上下に昇降自在な構成としておくと、給糸ボビンのサイズの変化に容易に対応可能であることは明らかである。
【0050】
基部2は、樹脂製の丸みを帯びた滑らかな形状であって、糸Yが接触しても糸を損傷しない部材である。また、糸継ぎして巻き取りを開始する際には、前記ブラシの先端部を前記ボビンの頭部に当接させるが、柔軟なブラシ先端のみがボビンに当接するので、ボビンを傷めることもなく、挟持する糸Yを損傷することもない。
【0051】
上記したように本発明によれば、複数の給糸ボビンから大径の一個の巻取パッケージに巻き取る際に、斜め上方に先端部を向けたブラシと該ブラシを埋め込んだ基部と該基部を回転移動する回動部材とを備えた糸跳ね防止部材の前記ブラシを、前記ボビンの頭部から離れた待機位置と、前記ボビンの頭部に近接する糸跳ね防止位置と、前記ボビンの頭部に当接するビリ防止位置とに移動自在としたので、糸継ぎ時には前記ブラシをボビン頭部に当接してビリ防止を可能とし、各ボビンの巻き終わり時には前記ブラシをボビン頭部に近接して糸跳ね防止を可能とする巻き終わり糸の制御装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る巻き終わり糸の制御装置が糸跳ね防止位置にある操作状態を示す概略説明図である。
【図2】糸継ぎ時のビリ防止位置にある操作状態を示す概略説明図である。
【図3】本発明に係る巻き終わり糸の制御装置を備える自動ワインダの巻取ユニットの一例を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0053】
1 巻き終わり糸の制御装置
1A 待機位置
1B 糸跳ね防止位置
1C ビリ防止位置
2 基部
3 ブラシ(糸跳ね防止部材)
4 回動部材
B 給糸ボビン
B1 残糸ボビン
E 隙間
U 巻取ユニット
Y 糸
Y1 糸端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の給糸ボビンから大径の一個の巻取パッケージに巻き取る際に、
前記ボビンの頭部から離れた待機位置と、前記ボビンの頭部に近接する位置と、前記ボビンの頭部に当接する位置とに移動自在であると共に、各ボビンの巻き終わり時には、前記近接する位置に移動する糸跳ね防止部材を備えていることを特徴とする巻き終わり糸の制御装置。
【請求項2】
前記糸跳ね防止部材が、斜め上方に先端部を向けたブラシと該ブラシを埋め込んだ基部と該基部を回転移動する回動部材とを備えており、前記回動部材を介して前記ブラシを移動自在としたことを特徴とする請求項1に記載の巻き終わり糸の制御装置。
【請求項3】
前記ボビンの頭部に当接する位置がビリ防止位置であって、糸継ぎして巻き取りを開始する際に、前記ボビンの頭部と前記ブラシとで糸を挟持して糸に張力を付与し、ビリの発生を抑制することを特徴とする請求項1または2に記載の巻き終わり糸の制御装置。
【請求項4】
前記ボビンの頭部に近接する位置が、糸跳ね防止位置であって、各ボビンの巻き終わり時に糸跳ねする巻き終わりの糸端が前記ブラシに接する程度の位置であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の巻き終わり糸の制御装置。
【請求項5】
前記ボビンの巻き終わりを検知するセンサを配設し、該センサの検知により前記ブラシの先端を前記糸跳ね防止位置まで移動する構成としたことを特徴とする請求項4に記載の巻き終わり糸の制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−290839(P2007−290839A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122769(P2006−122769)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】