説明

巻回型電気化学デバイス

【課題】リチウムイオン電池等のより薄型化を実現することが可能な巻回型電気化学デバイスを提供する。
【解決手段】巻回型電気化学デバイス1は、セパレータ30を介して正極リード線11及び負極リード線21が互いに対向する領域では、集電体10a及び20aの表面の活物質層が除去され、開放領域10e及び20eが形成されている。この開放領域となっている領域は、仮に集電体表面に活物質層が形成されていたとしても、セパレータを介して対向する面には絶縁テープで保護されたリード線が設けられていることからキャパシタとしての機能を有しない。巻回型電気化学デバイス1は、キャパシタとしての機能を有しない位置の活物質層を除去することによりデバイスとしての容量の低減を抑制しつつさらなる薄型化が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回型電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の電気化学デバイスとして、例えば、集電体の両面に活物質が塗布された帯状の正極及び負極を帯状のセパレータを介して重ね合わせた状態で巻回し、正極及び負極に対してそれぞれリード線が取り付けられた巻回型の電気化学デバイスが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−343411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、巻回型の電気化学デバイスの小型化に対する要望が高まっており、特に断面が略楕円形状となるラミネート型の巻回型電気化学デバイスでは、薄型化に対する強い要望がある。しかしながら、上記の巻回型電気化学デバイスでは、正極及び負極に取り付けられたリード線の厚みの影響により薄型化を十分に達成できない可能性がある。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、より薄型化を実現することが可能な巻回型電気化学デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る巻回型電気化学デバイスは、集電体の両面に活物質層が形成されると共に当該活物質層が形成されず当該集電体が露出された第1の露出部に第1のリード線が接続された帯状の第1の電極と、集電体の両面に活物質層が形成されると共に当該活物質層が形成されず当該集電体が露出された第2の露出部に第2のリード線が接続された帯状の第2の電極と、が帯状のセパレータを挟むようにして巻回されて積層された巻回型電気化学デバイスであって、前記第1の露出部は、前記第1のリード線が接続される第1の接続領域と、これに隣接して前記第2のリード線の幅より広い第1の開放領域とを有し、前記第2の露出部は、前記第2のリード線が接続される第2の接続領域と、これに隣接して前記第1のリード線の幅より広い第2の開放領域とを有し、前記第1の露出部と前記第2の露出部とは前記セパレータを介して対向しており、前記第1のリード線は、前記セパレータを介して前記第2の露出部の前記第2の開放領域と対向し、前記第2のリード線は、前記セパレータを介して前記第1の露出部の前記第1の開放領域と対向していることを特徴とする巻回型電気化学デバイス。
【0007】
上記の巻回型電気化学デバイスによれば、セパレータを介して、第1のリード線と第2のリード線とが互いに対向する領域において、第1の電極及び第2の電極の集電体の表面の活物質層がそれぞれ除去され、第1の開放領域及び第2の開放領域が形成されている。そして、第1のリード線はセパレータを介して第2の開放領域と対向すると共に、第2のリード線はセパレータを介して第1の開放領域と対向している。したがって、第1の開放領域や第2の開放領域に活物質層が設けられている場合と比較して、巻回型電気化学デバイスの薄型化が実現される。
【0008】
ここで前記第1の電極において、前記第1の露出部の両側には前記活物質層が形成され、前記第2の電極において、前記第2の露出部の両側には前記活物質層が形成されている態様とすることができる。
【0009】
この場合、リード線は帯状の集電体の端部ではなく、中央側において、集電体と接続されている。したがって、集電体の端部にリード線を接続する場合と比較して、電極全体において、電流経路を最短距離化することができ、抵抗値を抑制することができる。
【0010】
また、前記第1の電極、前記第2の電極、及び前記セパレータの巻回軸に対して垂直な断面が扁平形状であり、前記断面における長手方向に延在する前記セパレータを介して、前記第1の露出部と前記第2の露出部とが対向して設けられている態様とすることができる。
【0011】
このように断面が扁平形状であるデバイスに対して本発明の構成を適用することで、薄型化をより効果的に実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より薄型化を実現することが可能な巻回型電気化学デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】巻回型電気化学デバイスの構成を示す斜視図である。
【図2】巻回型電気化学デバイスのII−II線に沿って切断した場合の模式断面図である。
【図3】図2の一部を拡大したものである。
【図4】図1に示す電気化学デバイスの製造工程の一部を示す図である。
【図5】図1に示す電気化学デバイスの製造工程の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態である巻回型電気化学デバイスの構成を示す斜視図である。また、図2は、巻回型電気化学デバイスのII−II線に沿って切断した場合の模式断面図であり、図3は、図2の一部を拡大したものである。本実施形態に係る巻回型電気化学デバイス1は、所謂コンデンサ素子であり、帯状の正極10(第1の電極)と、帯状の負極20(第2の電極)とが、帯状のセパレータ30を挟むようにして、扁平形状に巻回し、粘着テープ40により固定されたものである。
【0016】
正極10は、金属箔からなる集電体10aの両面にカソード活物質層となる活物質層10bを形成することにより構成され、さらに略平板状の正極リード線11が帯状の集電体10aの短手方向に延びるように接続されている。この正極リード線11は、集電体10aの表面に活物質層10bが形成されておらず、集電体10aが露出している露出部10cに超音波溶接や冷間圧接等により接続されている。この正極リード線11のうちセパレータ30に対向する領域は絶縁テープ12により覆われている。なお、正極10のうち、セパレータ30を介して負極20と対向しない領域(例えば、巻回体の外側となる領域)には活物質層10bが形成されていない。また、正極リード線11は、抵抗を小さくする目的から帯状の集電体10aの長手方向中央付近に設けられる。このため、正極リード線11が接続される領域の両側には、活物質層10bが形成される。
【0017】
同様に、負極20は、金属箔からなる集電体20aの両面にアノード活物質層となる活物質層20bを形成することにより構成され、さらに略平板状の負極リード21が帯状の集電体20aの短手方向に延びるように接続されている。この負極リード線21は、集電体20aの表面に活物質層20bが形成されておらず、集電体20aが露出している露出部20cに超音波溶接や冷間圧接等により接続されている。負極リード線21のうちセパレータ30に対向する領域は絶縁テープ22により覆われている。また、負極リード線21は、正極リード線11と同様に、抵抗を小さくする目的から、帯状の集電体20aの長手方向中央付近に設けられる。このため、負極リード線21が接続される領域の両側には、活物質層20bが形成される。
【0018】
正極10,20の正極リード線11及び負極リード線21に取り付けられる絶縁テープ12,22は、それぞれ正極リード線11及び負極リード線21の表面を保護すると共に、これらのリード線がセパレータ30を突き破ることで短絡が発生することを防止している。
【0019】
巻回型電気化学デバイス1のうち、正極リード線11及び負極リード線21の周辺の構成についての詳細は後述する。
【0020】
上記の巻回型電気化学素子1は、電気二重層キャパシタ等に用いられる。電気二重層キャパシタに巻回型電気化学素子1を用いる場合、活物質層10b、20bとしては、例えば、アセチレンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭等が用いられる。また、電解質溶液としては、例えば、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような4級アンモニウム塩を、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル等の有機溶媒に溶解したものが使用される。また集電体10a,10bとしては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル等を帯状に成形したものが使用される。
【0021】
また、セパレータ30としては、例えば、電気絶縁性の多孔体から形成されたものを使用することができる。電気絶縁性の多孔体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類からなるフィルムの単層体又は積層体、樹脂の混合物の延伸膜、又は、セルロース、ポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の構成材料からなる繊維不織布等が挙げられる。
【0022】
巻回型電気化学素子1のうち、正極10、負極20及びセパレータ30により構成される巻回体の長手方向の最大長さLは16〜18mm程度であり、巻回体の短手方向の最大長さHは1.0〜1.3mm程度であり、巻回体の幅Wは、13.5〜15mm程度である。
【0023】
また、正極10及び負極20を構成する集電体10a,20aの厚さは20μm程度、活物質層10b,20bの厚さは18〜50μm程度、セパレータ30の厚さは24μm程度、リード11,21の厚さは80〜100μm程度とされる。
【0024】
次に、図3を参照しながら、巻回型電気化学素子1のうち正極リード線11及び負極リード線21近辺の構造についてさらに詳細に説明する。
【0025】
図3に示すように、正極10の集電体10aには活物質層10bが形成されていない露出部10cが形成されている。この露出部10cには、正極リード線11が接続される接続領域10dと、接続領域10dに隣接した開放領域10eとが含まれる。開放領域10eは、正極リード線11が接続される接続領域10dを挟むように、接続領域10dの両側に形成されている。同様に、負極20の集電体20aにおいても、活物質層20bが形成されていない露出部20cが形成されている。この露出部20cには、負極リード線21が接続される接続領域20dと、接続領域20dに隣接した開放領域20eとが含まれる。開放領域20eは、負極リード線21が接続される接続領域20dを挟むように、接続領域20dの両側に形成されている
【0026】
正極10の露出部10cと、負極20の露出部20cとは、セパレータ30を介して対向する位置に設けられる。この露出部10cにおける接続領域10dに正極リード線11が接続されると共に、露出部20cにおける接続領域20dに負極リード線22が接続される。その結果、正極リード線11及び負極リード線21は、巻回軸に対して垂直な断面(図2,3に示す面)で見たときに、各々が単層のセパレータ30に対して保護テープ12及び22を介して当接するように配置される。
【0027】
正極10における露出部10cのうち、開放領域10eは、巻回軸に対して垂直な断面で見たときに、単層のセパレータ30を介して負極リード線21に対して対向する位置に設けられる。開放領域10eの幅は、負極リード線21よりも広くされている。より詳細には、開放領域10eの幅は、図3において接続領域10dよりも右側において、セパレータ30の厚さの2倍と負極リード線21の幅との和よりも大きく、また接続領域10dよりも左側において、セパレータ30の厚さよりも大きくされている。そして開放領域10eに対して負極リード線21が単層のセパレータ30を介して当接している。すなわち、正極10の露出部10cの幅(接続領域10dの幅と開放領域10eの幅との和)は、正極リード線11の幅、負極リード線21の幅、及び、セパレータ30の厚さの3倍の和よりも大きい。なお、開放領域10eのうち図3において接続領域10dの左側に形成される領域(負極リード線21と対向する領域とは逆側の領域)の幅がセパレータ30の幅とほぼ同一の長さしかない場合には、接続領域10dに接続される正極リード線11と、開放領域10eの左側に形成された活物質層10bとが近接し、開放領域が実質的には存在しない場合もある。
【0028】
同様に、負極20における露出部20cのうち、開放領域20eは、巻回軸に対して垂直な断面で見たときに、単層のセパレータ30を介して正極リード線11に対して対向する位置に設けられる。開放領域20eの幅は、正極リード線11よりも広くされている。より詳細には、開放領域20eの幅は、図3において接続領域20dよりも左側において、セパレータ30の厚さの2倍と正極リード線11の幅との和よりも大きく、また接続領域20dよりも右側において、セパレータ30の厚さよりも大きくされている。そして開放領域20eに対して正極リード線11が単層のセパレータ30を介して当接している。すなわち、負極20の露出部20cの幅(接続領域20dの幅と開放領域20eの幅との和)は、正極リード線11の幅、負極リード線21の幅、及び、セパレータ30の厚さの3倍の和よりも大きい。なお、開放領域20eのうち図3において接続領域20dの右側に形成される領域(正極リード線11と対向する領域とは逆側の領域)の幅がセパレータ30の幅とほぼ同一の長さしかない場合には、接続領域20dに接続される負極リード線21と、開放領域20eの右側に形成された活物質層20bとが近接し、開放領域が実質的には存在しない場合もある。
【0029】
巻回型電気化学デバイス1では、上記のように、正極リード線11がセパレータ30を介して負極20の開放領域20eに対向すると共に、正極リード線11、セパレータ30、及び集電体20aが当接している。また、負極リード線21がセパレータ30を介して正極10の開放領域10eに対向すると共に、負極リード線21、セパレータ30、及び集電体10aが当接している。この結果、セパレータ30は、図3に示すように、略S字形状に湾曲しながら、集電体10a,20a、正極リード線11及び負極リード線21に挟まれた構造となる。巻回型電気化学デバイス1では、正極リード線11と負極リード線21との間に設けられるセパレータ30が十分な柔軟性を有し、正極リード線11及び負極リード線21の形状に応じて変形可能となっている。本実施形態の巻回型電気化学デバイス1のように、正極リード線11と負極リード線21とに挟まれるセパレータ30が単層であることが柔軟性の観点から好ましい。ただし、正極リード線11と負極リード線21とに挟まれるセパレータが、正極リード線11及び負極リード線21の形状に応じて変形可能な柔軟性を有していれば、単層に限定されない。
【0030】
ここで、本実施形態の巻回型電気化学デバイス1では、正極10側の露出部10cと負極20側の露出部20cとは、同一の形状とされている。また、正極リード線11及び負極リード線21の断面が同一形状である。この結果、図3の上下方向で見たときに(巻回型電気化学デバイス1の厚さ方向で見たときに)露出部10cと露出部20cとがちょうど重なるように配置されるとともに、一方露出部の接続領域に接続されたリード線に対して他方の露出部の開放領域が対向して設けられ、これらが、図3に示すように上下方向で密着するような構成となっている。本実施形態に係る巻回型電気化学デバイス1は、このような構成を備えることにより、活物質層10b、20bが形成されている領域をデバイスの容量確保のために効率よく利用することができ、デバイスの容量の低下を抑制することができる。
【0031】
さらに、負極20においては、露出部20cの開放領域20eの裏面の活物質層20bについてもその一部が除去されている。具体的には、集電体20aを介して負極リード線21に対向する領域の活物質層20bが除去されていて集電体20aが露出しているが当該領域には絶縁テープ22が貼付されている。負極リード線21の裏面側の活物質層20bについては除去されていなくてもよい。
【0032】
次に上記の巻回型電気化学デバイス1の製造方法について、図4,5を用いて説明する。巻回型電気化学デバイス1は、帯状の正極10、帯状の負極20、及び帯状のセパレータ30を1つずつ用いて巻回することにより形成される。
【0033】
まず、帯状の正極10、負極20を構成する集電体の両面を活物質層となる活物質により被覆し、さらにリード線を取り付ける。図4(A)では、負極20となる集電体20aの両面に活物質層20bを形成したものと、負極リード線21及び絶縁テープ22を分解斜視図で示している。集電体20aは、両面が全て活物質層20bにより覆われるのではなく、接続領域20d及び開放領域20eからなる露出部20cとなる領域と、負極リード線21が取り付けられる領域の裏面側と、が外部に露出するように活物質層20bにより被覆される。その後、負極リード線21が超音波溶接により取り付けられ、さらにこの負極リード線21を覆うように絶縁テープ22が貼付される。また、負極リード線21の裏面側の集電体20aが露出している領域にも絶縁テープが貼付される。これにより負極リード線21が接続された帯状の負極20が得られる。なお、正極リード線11が接続された帯状の正極10についても負極20と同様に方法により製造される。ただし、正極10では、正極リード線11が取り付けられる面とは逆側の面において、活物質層10bが最外層となる領域には活物質層20bは形成しないため、負極20の集電体20aと比較して集電体10aが露出する領域が大きくなる。
【0034】
次に、図4(B)に示すように、帯状の正極10及び負極20によりセパレータ30を挟み込む。このとき、図4(B)に示すように、セパレータ30を介して開放領域10e、20e(図示せず)が対向するように、正極10及び負極20を配置する。図4(B)では、負極20のうち、負極リード線21が接続された面の裏面側が示されている。これにより、集電体10aと集電体20aとにより挟まれた領域に、正極リード線11及び開放領域10e、セパレータ30、負極リード線21及び開放領域20eが、集電体10aから集電体20aに向けてこの順となるように配置される。なお図4(B)中、図示上下方向に延びる破線は、正極10、負極20及びセパレータ30を扁平形状に巻回する際の折り目となる位置である。そして、図4(C)に示すように、正極10、負極20及びセパレータ30を重ね合わせられる。
【0035】
次に、図5(A)に示すように、図4(C)の折り目Bに沿って、折り目Bより左側のセパレータ30を右側へ折り返す。これにより、折り目Cと折り目Aが重なるようにセパレータ30が折り畳まれ、図示折り目Bより右側において、負極20の両面がセパレータ30により挟まれる。
【0036】
次に、図5(B)に示すように、折り目Bに沿って、折り目Bより正極10を右側へ折り返す。これにより、折り目Bと折り目Cとの間で、セパレータ30より手前側に正極10が積層された状態となる。
【0037】
さらに、図5(C)に示すように、折り目C(及び折り目A)に沿って、折り目C(A)より右側にある積層部分(手前から、セパレータ30、負極20、セパレータ30及び正極10の順となっている)を全て左側に折り返す。これにより、図5(C)に示すように、折り目Bと折り目Cとの間で、図示奥側から手前側へ、セパレータ30、負極20、セパレータ30、正極10がこの順序となるように積層される。そして、正極10、セパレータ30及び負極20の端部が図示左端(折り目B側端部)に位置するので、これを粘着テープ40により固定する。
【0038】
以上の方法により、図1及び図2に示す巻回型電気化学デバイス1が製造される。上記のように、本実施形態に係る巻回型電気化学デバイスの製造方法では、巻芯等を必要とせず、巻芯の抜き取り等に伴う巻回体の変形等は発生しない。
【0039】
なお、上記の巻回型電気化学デバイス1を例えば電気二重層キャパシタとして使用する場合には、巻回型電気化学デバイス1及び電解質溶液を、正極リード線11及び負極リード線21が外部に露出した状態で外装ケース(図示せず)に封入して用いられる。また必要に応じて、複数の巻回型電気化学デバイスを積層した状態で使用することもできる。
【0040】
以上のように、本実施形態の巻回型電気化学デバイス1によれば、セパレータ30を介して正極リード線11及び負極リード線21が互いに対向する領域では、集電体10a及び20bの表面の活物質層が除去され、開放領域10e、20eが形成されている。この開放領域となっている領域は、元来、仮に集電体表面に活物質層が形成されていたとしても、セパレータを介して対向する面には絶縁テープで保護されたリード線が設けられていることからキャパシタとしての機能を有しない領域である。したがって、本実施形態の巻回型電気化学デバイス1では、キャパシタとしての機能を有しない位置の活物質層を除去することによりデバイスとしての容量の低減を抑制しつつさらなる薄型化が達成される。
【0041】
また、本実施形態の巻回型電気化学デバイス1では、帯状の正極及び負極のリード線の両側に活物質層が形成されている。すなわち、リード線は帯状の集電体の端部ではなく、中央側において、集電体と接続されている。したがって、集電体の端部にリード線を接続する場合と比較して、電極全体において、電流経路を最短距離化することができ、抵抗値を抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態の巻回型電気化学デバイス1では、セパレータ30の巻回軸に対して垂直な断面、すなわち図2に示す断面が扁平形状であり、この断面における長手方向に延在する単層のセパレータ30を介して、正極10の露出部10cと負極20の露出部20cとが対向して設けられている。これにより、露出部10c及び露出部20cにそれぞれ接続された正極リード線11及び負極リード線21の形状に応じて、両者に挟まれたセパレータ30の形状の変化が容易となるため、巻回型電気化学デバイス1の厚さ(図2に示す断面において短手方向となる上下方向の長さ)をより薄くすることが可能となる。
【0043】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0044】
例えば、上記実施形態では、断面が扁平形状である巻回型電気化学デバイスについて説明したが、断面形状が扁平ではないデバイス、例えば、断面が略円形であるデバイスにも適用することができる。
【0045】
また、上記実施形態では、巻回型電気化学デバイスが電気二重層キャパシタとして用いられる場合について主に説明したが、本実施形態に係る巻回型電気化学デバイスは、他の用途、例えば、リチウムイオン或いはその他の二次電池、リチウムキャパシタ等に用いることができる。また、電解質溶液を固体電解質に換えた全固体電池に用いることも可能であり、さらに、マグネシウムイオン電池やカルシウムイオン電池に用いることもできる。また、その場合、用途に応じて活物質層に用いられる活物質等の材料は適宜選択される。
【0046】
また、巻回型電気化学デバイスの製造方法は上記実施形態で説明した方法に限定されない。特に、正極、負極及びセパレータの巻回方法は上記の方法に限定されず他の方法を用いることも出来る。このとき、巻回方法によっては、セパレータ(及び正極、負極)の端部が巻回体の最外部の複数個所に設けられる場合がある。その場合には、粘着テープを複数個所に貼付することにより、セパレータ及び正極、負極を固定することができる。また、正極リード線及び負極リード線は、帯状の集電体の短手方向において、全面が接続する場合について説明したが、短手方向において集電体の一部のみがリード線と接続する構成であってもよい。また、集電体表面のうち活物質層が設けられる位置についても、巻回型電気化学デバイスの使用方法及び製造方法(巻回方法)により適宜変更することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、巻回した状態での最外層に正極が設けられる場合について説明したが、正極と負極とを入れ替えた場合であっても上記実施形態と同様の効果が奏される。
【符号の説明】
【0048】
1…巻回型電気化学デバイス、10…正極、10a…集電体、10b…活物質層、10c…露出部、10d…接続領域、10e…開放領域、11…正極リード線、12…絶縁テープ、20…負極、20a…集電体、20b…活物質層、20c…露出部、20d…接続領域、20e…開放領域、21…負極リード線、22…絶縁テープ、30…セパレータ、40…粘着テープ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の両面に活物質層が形成されると共に当該活物質層が形成されず当該集電体が露出された第1の露出部に第1のリード線が接続された帯状の第1の電極と、集電体の両面に活物質層が形成されると共に当該活物質層が形成されず当該集電体が露出された第2の露出部に第2のリード線が接続された帯状の第2の電極と、が帯状のセパレータを挟むようにして巻回されて積層された巻回型電気化学デバイスであって、
前記第1の露出部は、前記第1のリード線が接続される第1の接続領域と、これに隣接して前記第2のリード線の幅より広い第1の開放領域とを有し、
前記第2の露出部は、前記第2のリード線が接続される第2の接続領域と、これに隣接して前記第1のリード線の幅より広い第2の開放領域とを有し、
前記第1の露出部と前記第2の露出部とは前記セパレータを介して対向しており、
前記第1のリード線は、前記セパレータを介して前記第2の露出部の前記第2の開放領域と対向し、
前記第2のリード線は、前記セパレータを介して前記第1の露出部の前記第1の開放領域と対向している
ことを特徴とする巻回型電気化学デバイス。
【請求項2】
前記第1の電極において、前記第1の露出部の両側には前記活物質層が形成され、
前記第2の電極において、前記第2の露出部の両側には前記活物質層が形成されていることを特徴とする請求項1記載の巻回型電気化学デバイス。
【請求項3】
前記第1の電極、前記第2の電極、及び前記セパレータの巻回軸に対して垂直な断面が扁平形状であり、前記断面における長手方向に延在する前記セパレータを介して、前記第1の露出部と前記第2の露出部とが対向して設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の巻回型電気化学デバイス。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−48176(P2013−48176A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186230(P2011−186230)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】