説明

帯電性繊維及び不織布、それらを用いた不織布加工品

【課題】不織布加工工程中、カーディングやエアレイド工程において、静電気の発生によって加工性を損なわない程度に油剤が付着されており、後の工程で油剤の洗浄を行わずにエレクトレット処理が容易に行える熱可塑性樹脂繊維、それを用いた不織布およびエアフィルター等を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる繊維であって、一般式(I)で示されるソルビタン脂肪酸エステル類等を主成分として含有する非イオン性の繊維処理剤を、該繊維に対して0.01〜1.5重量%付着してなる帯電性繊維。
一般式(I)


(一般式(I)及び一般式(II)中、R,R,Rはそれぞれ独立してポリオキシエチレン基等、それらの重合度(エチレンオキシド基等の構成単位)はそれぞれ独立して0〜55、R4は炭素数16〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電性繊維に関する。さらに詳しくは、エアーフィルターやワイパー等の不織布加工品に用いられる繊維処理剤の洗浄工程を必要としない帯電性繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビルや地下街また車両やアミューズメントスペースから、研究所や工場等のクリーンルームにいたるまで、ごみ、塵、埃のない空間への関心が高まっており、これらの空間を提供する為に、繊維の帯電性を利用して塵埃を捕集するエアーフィルター等の需要が増加してきている。このようなエアーフィルターには帯電性を有する合成繊維やそれからなる不織布加工品が多く利用されている。
上記不織布加工品は、一般にステープル繊維やショートカット繊維を原綿として、カーディング法やエアレイド法等の加工方法によってウェブ化された後、熱融着や物理的な交絡によって得られた不織布に、エレクトレット処理を施して得られる。エレクトレット処理とは、不織布への加工時または、不織布化後に熱エレクトレット化やコロナ放電エレクトレット化などによって、不織布を帯電させる工程である。
【0003】
一般的に、不織布加工に用いられる繊維は、静電気の発生による不織布の加工性や操業性への悪影響を抑制するために表面に界面活性剤などの繊維処理剤が付着している。しかし、このような繊維処理剤は上記不織布加工品の場合、エレクトレット処理の妨げとなるだけでなく、経時的捕集効率の低下の要因にもなる。
その為、不織布のエレクトレット処理工程では、二次的な水洗や湯洗等の洗浄工程を導入する方法や、ウォータージェット法で交絡しながら油剤を洗浄除去する方法が用いられており、工程上の制約が生じ、工程設備の増加や製造コストの上昇等の問題が生じている。また、熱処理工程での油剤付着量の減少を利用して不織布化とエレクトレット化を可能にする方法が特許文献1に記載されている。しかし、エレクトレット加工前に必ず熱処理工程を要するという制約や、繊維処理剤の付着量を規定の量以下に制御するという高い品質管理技術が必要とされる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−339256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はカーディング工程やエアレイド工程のような乾式の不織布加工工程において、静電気の発生によって加工性を損なわない程度に油剤が付着されている熱可塑性樹脂からなる繊維であり、不織布化時/後の油剤の付着量変化や、洗浄工程の導入などの、加工法の制約を受けずにエレクトレット処理が容易に行える帯電性繊維を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、特定の非イオン性の繊維処理剤を用いることで、エレクトレット処理を容易に行える繊維及び不織布加工品が提供できることを見出し、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の構成を有する。
【0007】
〔1〕熱可塑性樹脂からなる繊維であって、下記一般式(I)もしくは下記一般式(II)で示されるソルビタン脂肪酸エステル類および下記一般式(III)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種を主成分として含有する非イオン性の繊維処理剤を、該繊維に対して0.01〜1.5重量%付着してなる帯電性繊維。
一般式(I)

一般式(II)

(一般式(I)及び一般式(II)中、R,R,Rはそれぞれ独立して水酸基、ポリオキシエチレン基またはポリオキシプロピレン基であり、それらの重合度(エチレンオキシド基またはプロピレンオキシド基の構成単位)はそれぞれ独立して0〜55であり、R4は炭素数16〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を表す。)
一般式(III)

(式中、R5は炭素数12〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を表す。Rは水素基又はメチル基を表し、kは5〜50の整数である。)
〔2〕熱可塑性樹脂からなる繊維が、融点差を有する少なくとも2種類の熱可塑性樹脂で構成される複合繊維であって、少なくとも1種類の熱可塑性樹脂はポリオレフィンであり、該ポリオレフィンが複合繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して露出している熱接着性複合繊維である前記〔1〕項に記載の帯電性繊維。
〔3〕熱可塑性樹脂からなる繊維が、該繊維を構成する熱可塑性樹脂の少なくとも1種が反応性官能基を有するビニルモノマーからなる重合体(以下、これらを変性剤という)を含む樹脂である前記〔1〕項または前記〔2〕項に記載の帯電性繊維
〔4〕帯電性繊維の繊維長が3〜40mmであることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕項のいずれかに記載の帯電性繊維。
〔5〕帯電性繊維の繊維長が32〜120mmであることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕項のいずれかに記載の帯電性繊維。
〔6〕前記〔4〕項に記載の帯電性繊維を用いて、エアレイド法によって得られる不織布。
〔7〕前記〔5〕項に記載の帯電性繊維を用いて、カード法によって得られる不織布。
〔8〕前記〔1〕〜〔5〕項のいずれか1項に記載の帯電性繊維と、他の繊維、不織布、フィルム、パルプシート、編み物及び織物から選ばれた少なくとも1種と混合して得られる複合化不織布。
〔9〕前記〔6〕〜〔7〕項のいずれか1項に記載の不織布と、他の繊維、不織布、フィルム、パルプシート、編み物及び織物から選ばれた少なくとも1種とを積層して得られる複合化不織布。
〔10〕前記〔6〕〜〔7〕項のいずれかに記載の不織布または前記〔8〕〜〔9〕項記載の複合化不織布を用いた不織布加工品。
〔11〕前記〔6〕〜〔7〕項のいずれかに記載の不織布または前記〔8〕〜〔9〕項記載の複合化不織布をエレクトレット処理して用いたエアーフィルター。
〔12〕前記〔6〕〜〔7〕項のいずれかに記載の不織布または前記〔8〕〜〔9〕項記載の複合化不織布をエレクトレット処理して用いたワイパー。
〔13〕前記〔6〕〜〔7〕項のいずれかに記載の不織布または前記〔8〕〜〔9〕項記載の複合化不織布をエレクトレット処理して用いたマスク。
【発明の効果】
【0008】
本発明の帯電性繊維は、ソルビタン脂肪酸エステル類または、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる非イオン性の繊維処理剤を付着させることで、繊維に適度な帯電性を付与している。従って、エアレイド機やカード機による不織布加工では静電気の発生を抑制し、不織布への熱エレクトレット加工時には、繊維処理剤の洗浄工程等の除去工程を必要としないで、不織布加工品の性能として必要十分な静電気量の帯電が可能である。しかも熱履歴による付着油脂分のコントロールも必要としない為、該繊維より得られたウェブはニードルパンチ等の様々な不織布加工条件を用いることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の帯電性繊維に用いられる繊維処理剤はソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのみからなるものでもよいが、他にも必要に応じて酸化防止剤、防腐剤、防錆剤、抗菌剤、濡れ性向上剤(親水剤)等を本発明の効果を阻害しない範囲内で配合することができる。
【0010】
ソルビタン脂肪酸エステル類は下記一般式(I)もしくは(II)で示される構造を有する化合物である。
一般式(I)

一般式(II)

(一般式(I)及び一般式(II)中、R,R,Rはそれぞれ独立して水酸基、ポリオキシエチレン基またはポリオキシプロピレン基であり、それらの重合度(エチレンオキシド基またはプロピレンオキシド基の構成単位)はそれぞれ独立して0〜55であり、R4は炭素数16〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を表す。)
該ソルビタン脂肪酸エステル類は非イオン系の界面活性剤に分類され、高い湿潤性と粘調性を有している。
【0011】
本発明の帯電性繊維に用いられるソルビタン脂肪酸エステル類の具体例としては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタンセスキステアレート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノイソステアレート、ヤシ油脂肪酸ソルビタン等が挙げられ、ソルビタン脂肪酸エステル類のポリオキシエチレン誘導体の例としては、ポリオキシエチレン(EO=4)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(EO=4)ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン(EO=4)ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン(EO=5)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(EO=6)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(EO=6)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(EO=20)モノヤシ油脂肪酸ソルビタン、ポリオキシエチレン(EO=20)ソルビタンモノパルミレート、ポリオキシエチレン(EO=5)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(EO=20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(EO=20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(EO=20)ソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレン(EO=20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(EO=20)ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン(EO=20)ソルビタントリステアレートなどが挙げられる。本発明に用いられるソルビタン脂肪酸エステル類は特にこれらに限定されるものではない。
【0012】
ソルビタン脂肪酸エステル類を繊維処理剤の主成分として含有する場合、繊維処理剤の重量に対して、50重量%以上配合され、好ましくは60〜70重量%の範囲に配合される。配合されるその他の成分としては、非イオン性の任意の界面活性剤が好ましく、これらは繊維処理剤の乳化や防腐効果を高めるために用いられることもある。また、非イオン性の界面活性剤として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有することも妨げない。
【0013】
一方、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは下記一般式(III)で示される構造を有する化合物である。
一般式(III)

(式中、R5は炭素数12〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を表す。Rは水素基又はメチル基を表し、kは5〜50の整数である。)
5の炭素数は、繊維同士の摩擦を抑えて良好な開繊性を保つために12以上であることが好ましく、また30以下のものはポリオキシアルキレンアルキルエーテルそのものの合成が困難ではなく工業化に適している。R5の炭素数が18〜30の場合はさらに好ましい。また、式中のkの値は、10〜25である場合、さらに好ましい。
【0014】
本発明の帯電性繊維に用いられるポリオキシアルキレンアルキルエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレン(k=20)ベヘンエーテル、ポリオキシエチレン(k=14)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(k=20)テトラコサンエーテル、ポリオキシエチレン(k=18)オクタコサンエーテル、ポリオキシエチレン(k=10)トリアコンタエーテル、ポリオキシエチレン(k=5)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン(エチレンオキシドの構成単位が2、プロピレンオキシドの構成単位が6、全体でk=8)ラウリルエーテル等が挙げられるが、本発明に用いられるポリオキシアルキレンアルキルエーテルは特にこれらに限定されるものではない。
【0015】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを繊維処理剤の主成分として含有する場合、繊維処理剤の重量に対して、50重量%以上の範囲で配合され、好ましくは60〜70重量%の範囲に配合される。配合されるその他の成分としては、非イオン性の任意の界面活性剤が好ましく、これらは繊維処理剤の乳化や防腐効果を高めるために用いられることもある。また、非イオン性の界面活性剤として、ソルビタン脂肪酸エステル類を含有することも妨げない。
【0016】
本発明の帯電性繊維に用いられる繊維処理剤は上記のソルビタン脂肪酸エステル類およびポリオキシアルキレンアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種を主成分として上記の重量比で含有し、その他は任意の非イオン性の成分を含有することを妨げない。すなわち、本発明に使用される繊維処理剤は、非イオン性の成分によって構成され、イオン性の成分は含まないことが好ましい。しかし、本発明の効果を損なわない範囲であれば、目的に応じて微量のイオン性の成分を含有することを全く妨げるものではない。また、繊維処理剤は必要に応じて水に溶解して用いる。
【0017】
本発明の帯電性繊維において、ソルビタン脂肪酸エステル類、または、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを主成分とする繊維処理剤の繊維への付着量は、繊維重量に対し0.01〜1.5重量%であり、好ましくは0.15〜1.0重量%の範囲である。付着量を0.15重量%以上にすることにより、静電気の発生を適度に抑えることができ、不織布の加工性や地合いが良好となる。1.5重量%以下にすることにより、エレクトレット処理時の不織布の帯電が繊維処理剤によって阻害されることがなく、不織布のエレクトレット特性も向上する。
【0018】
本発明の帯電性繊維は、紡糸可能な熱可塑性樹脂を原料として使用した繊維を用いており、熱可塑性樹脂を単独または2種類以上の均一に混合された樹脂から溶融紡糸された単一繊維や、2種類以上の熱可塑性樹脂を用いて複合紡糸した複合繊維が用いられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、プロピレンと他のαオレフィンとの2元または3元系共重合体等のポリオレフィン類、ポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ジオールとテレフタル酸/イソフタル酸等を共重合した低融点ポリエステル、ポリエステルエラストマー等のポリエステル類、フッ素樹脂及び上記樹脂の混合物等を挙げることができる。
【0019】
本発明の帯電性繊維が、複合繊維の場合には、鞘芯型、並列型、3層以上の多層型、中空多層型、異形多層型等の複合形態を用いることができる。このとき、熱可塑性樹脂の組み合わせは、融点差が10℃以上とすることが好ましく、さらに繊維を構成する熱可塑性樹脂のうち低融点熱可塑性樹脂が繊維表面の少なくとも一部が露出し、さらに繊維の長さ方向に沿って連続している構造となることが好ましく、これにより、低融点熱可塑性樹脂の軟化点または融点以上、高融点熱可塑性樹脂の融点未満の温度で熱処理することで、複合繊維の低融点熱可塑性樹脂が溶融され、繊維の交点が熱接着された三次元網目状構造の熱接着性不織布を形成させることができる。
【0020】
本発明の帯電性繊維に用いられる複合繊維が、低融点熱可塑性樹脂と高融点熱可塑性樹脂との2種類の熱可塑性樹脂からなる場合、その組み合わせの例としては、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、線状低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、低密度ポリエチレン/プロピレン−エチレン−ブテン−1結晶性共重合体、エチレン-プロピレン共重合体/ポリプロピレン、高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6/ナイロン66、低融点ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン/ポリエチレンテレフタレート、線状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンの混合物/ポリエチレン等が例示できる。好ましくは、複合繊維がポリオレフィン系の成分からなるもので、このような低融点熱可塑性樹脂/高融点熱可塑性樹脂の組み合わせとしては、例えば、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体/ポリプロピレン等を挙げることができる。
【0021】
本発明の帯電性繊維に用いられる複合繊維を構成する低融点熱可塑性樹脂と高融点熱可塑性樹脂の重量比は、低融点熱可塑性樹脂が10〜90重量%、高融点熱可塑性樹脂が10〜90重量%であり、好ましくは低融点熱可塑性樹脂が30〜70重量%、高融点熱可塑性樹脂が70〜30重量%である。低融点熱可塑性樹脂が10重量%未満の場合、熱接着性が不充分になり不織布に加工したときの不織布強力が低下する。また、逆に低融点熱可塑性樹脂が90重量%を越えた場合、芯成分である高融点熱可塑性樹脂が繊維形態を維持できにくくなる。
【0022】
本発明の帯電性繊維に用いられる複合繊維において、該繊維の表面の一部に長さ方向に沿って連続して露出する低融点成分に反応性官能基を有したビニルモノマーからなる重合体を含む樹脂(変性剤)を含有させることができる。変性剤は、反応性官能基を有する樹脂であり、該反応性官能基としては、水酸基、アミノ、ニトリル、ニトリロ、アミド、カルボニル、カルボキシル、グリシジル等の基が挙げられる。変性ポリオレフィンは、前記反応性官能基を有するビニルモノマーを用いて重合することができ、ブロック、ランダム、ラダー等の共重合体、グラフト重合体のいずれも使用することができる。反応性官能基を有するビニルモノマーとしては、無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸等から選択された不飽和カルボン酸、その誘導体、またはその無水物を少なくとも1種含むビニルモノマー、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類、または同様なアクリル酸エステル等を少なくとも1種含むビニルモノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ブテンカルボン酸エステル類、アリルグリシジルエーテル、3.4−エポキシブテン、5.6−エポキシ−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド等を少なくとも1種含むビニルモノマーを挙げることができる。
【0023】
変性剤としては、一般的に変性剤の全重量に対して前記反応性官能基を有するビニルモノマーを0.05〜2.0mol/kgの変性率で有することが好ましく、0.05〜1.0mol/kgの場合はさらに好ましい。変性剤の含有量は、コストおよび紡糸性の観点から、複合繊維の鞘成分の重量に対して80重量%以下であることが好ましく、50重量%以下の場合はより好ましく、20重量%以下であればさらにより好ましい。
【0024】
変性剤は、不織布を構成する際に他のセルロース系繊維や、無機物との接着性が高いことや、繊維処理剤と反応して本発明における帯電性繊維の帯電性を高めることから、本発明では変性剤として、不飽和カルボン酸またはその誘導体からなるビニルモノマーとポリオレフィンとからなる変性ポリオレフィンを好ましく用いることができる。
【0025】
上記の変性ポリオレフィンのうち、グラフト重合体である変性ポリオレフィンが、ポリマー強度が高く、繊維加工性が良好であることから、より好ましく利用でき、変性率に関しては、繊維加工性及び本発明の効果を妨げない範囲で可能な限り、高変性率であることが好ましい。
【0026】
変性ポリオレフィンの幹ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1等が用いられる。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレ、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンが用いられる。これらは、密度が0.90〜0.97g/cm、融点は、100〜135℃程度のポリマーである。ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、プロピレンを主成分とする、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体が用いられる。これらは、融点130〜170℃程度のポリマーである。ポリブテン−1は、融点が110〜130℃程度のポリマーである。これらのポリマーの中では、融点、共重合、グラフト重合の容易性を考慮するとポリエチレンが好ましく、不織布強度を向上させるためには、ポリマー強度が高い、高密度ポリエチレンがより好ましい。
【0027】
上記変性ポリオレフィンを含む低融点成分には、変性ポリオレフィンの単独、少なくとも2種の変性ポリオレフィンの混合物、少なくとも1種の変性ポリオレフィンと他の熱可塑性樹脂との混合物等を利用することができる。変性ポリオレフィンは、未変性のポリオレフィンと比較した場合、一般的にポリマー強度が低下する傾向であるため、繊維強度をより高く維持するためには、低融点成分として、高変性率の変性ポリオレフィンと未変性のポリオレフィンとの混合物を用いることが好ましく、相溶性の面から変性ポリオレフィンの幹ポリマーと同じポリマーを用いることが特に好ましい。
【0028】
変性剤と他の熱可塑性樹脂とを混合する場合には、0.1mol/kg程度以上の高変性率の変性剤を用いることが好ましい。変性剤を用いることにより、本発明の帯電性繊維の他のセルロース系繊維や無機物との接着性が向上し、本発明の帯電性繊維の帯電性を向上させるという効果を付加することができる。これは繊維処理剤と繊維表面に存在する変性剤の反応性官能基が反応して、帯電性を向上していると推測される。また、変性剤を構成する幹ポリマーと同じ熱可塑性樹脂と混合することが好ましい。
【0029】
本発明の帯電性繊維を構成する熱可塑性樹脂には本発明の効果を妨げない範囲内で酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、顔料、可塑剤及び他の熱可塑性樹脂等を添加することができる。
【0030】
本発明の帯電性繊維の繊度は特に限定されないが、0.2〜100デニールの範囲が好ましく用いられている。本発明の帯電性繊維を含む不織布がフィルター部材に用いられる場合には、捕集対象物や要求される通気性の点によって異なるが、0.5〜30デニールの範囲の繊度が好ましく用いられる。
【0031】
本発明の帯電性繊維は一般的には、単独もしくはたとえばナイロンのような他の繊維と混合して、カード法、エアレイド法等の既知の加工法でウェブを形成し、それをスルーエアー型熱処理機等で繊維の交点を熱融着するか、ウォータージェット法等で繊維を機械的に交絡することで不織布とされる。また、本発明の帯電性繊維は、他の不織布、フィルム、パルプシート、編物、織物等に堆積させて複合化不織布とすることもできる。
【0032】
本発明の帯電性繊維を用いた不織布や前記の複合不織布は、カード法、エアレイド法、湿式抄紙法、スパンボンド法、メルトブロー法等の他の加工法によって得られる不織布、繊維、フィルム、パルプシート、編物、織物、木質板、金属板等の他のシートと積層して複合化不織布にすることができる。
【0033】
本発明の帯電性繊維をエアレイド法により不織布加工を行う場合、繊維を篩、またはスクリーンを通して繊維が均一分散したウェブとなるよう降り積もらせることが必要である。このためには、繊維長が3〜40mmの範囲の短繊維を用いることが好ましい。繊維長が40mmを大幅に越えると均一分散が難しくなる傾向にあり、さらに不織布に地合斑ができやすくなる。逆に、繊維長が3mm未満では不織布に加工したときの不織布強力が低下するばかりでなくエアレイド法の特徴である嵩高性も失われやすい。
【0034】
エアレイド法に用いられるウェブ製造装置としては、例えば、前後、左右、上下、水平円状等のいずれかに振動し短繊維をふるいの目から分散落下させる箱形篩いタイプの装置が使用できる。また、ネット状の金属多孔板が円筒状に成形され、且つその側面に繊維の投入口を有し、繊維をそのふるいの目から分散・落下させるネット状円筒型タイプの装置も使用できる。
【0035】
本発明の帯電性繊維をカード機で流綿する場合には、繊維長が32〜120mmの繊維を用いることが好ましい。繊維長が120mmを大幅に越える繊維を流綿すると、カード機のローラーへの繊維の巻き付きが生じやすくなり、32mm未満ではウェブの形成が不充分となる。
【0036】
本発明の帯電性繊維の捲縮数は特に制限されないが、カード機で流綿する場合には、3〜20山/25mmの範囲がウェブの形成が良好となり好ましい。このとき、捲縮数が3山/25mm未満であると得られた不織布の強力が低下し、20山/25mmをはるかに超えると繊維間の絡みが大きくなり繊維の開繊性が低下し、均一な地合いのウェブさらには不織布が得られにくくなる。また、捲縮形状はジグザグ型の二次元捲縮やスパイラル型、オーム型等の立体三次元捲縮等、いずれの形状も用いることができる。
【0037】
本発明の帯電性繊維の捲縮数は特に制限されないが、エアレイド法でウェブ化する場合には、0〜15山/25mmの範囲がウェブの形成が良好となり好ましい。このとき、捲縮数が15山/25mmをはるかに超えると繊維間の絡みが大きくなり繊維の開繊性が低下し、均一な地合いのウェブさらには不織布が得られにくくなる。また、捲縮形状はジグザグ型の二次元捲縮やスパイラル型、オーム型等の立体三次元捲縮等、いずれの形状も用いることができる。
【0038】
本発明の帯電性繊維を用いてエアレイド法、またはカード法によって得られたウェブは繊維交点の熱処理や機械交絡によって不織布に加工される。熱処理は低融点熱可塑性樹脂の軟化点または融点以上、高融点熱可塑性樹脂の融点未満の温度に加熱して繊維の交点を融着する装置を用い、スルーエアー型熱処理機、エンボスロール型熱処理機、フラットロール型熱処理機等が使用できる。特にエアレイド法により得られたウェブはスルーエアー型熱処理機を用いることで嵩高な不織布が得られるため好適である。また、機械交絡は高圧水流やニードルによって機械的にウェブを絡ませる方法であり、柔らかい風合いの不織布を得るのに好適である。本発明の帯電性繊維は従来のような繊維処理剤の洗浄や熱履歴による成分の潜り込みを必ずしも要さない為、このようなニードルによる不織布化も可能である。
【0039】
以下に本発明の帯電性繊維に用いられる熱接着性複合繊維を製造する工程を示す。
低融点熱可塑性樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成するように並列型口金、または低融点熱可塑性樹脂を鞘成分とし高融点熱可塑性樹脂を芯成分とする鞘芯型口金、若しくは偏心鞘芯型口金を用い、通常用いられる溶融紡糸機により熱可塑性樹脂を紡出する。このとき、口金直下をクエンチにより送風し、半溶融状態の熱可塑性樹脂を冷却することによって、未延伸状態の熱接着性複合繊維を製造する。このとき、溶融した熱可塑性樹脂の吐出量及び未延伸糸の引取速度を任意に設定し、目標繊度に対して1〜5倍程度の繊維径の未延伸糸とする。なお、繊維表面を形成する低融点熱可塑性樹脂の割合は、繊維断面円周率で50%以上の場合に熱接着力が充分となり、特に50〜100%の場合には強力となり好ましいが、同時にエレクトレット特性を向上させる為には必ずしもこの限りではない。得られた未延伸糸は、通常用いられる延伸機により延伸することによって、延伸糸(捲縮加工前の熱接着性複合繊維)とすることができる。なお、通常の場合、40〜120℃に加熱したロールとロールの間を、ロール間の速度比が1:1〜1:5の範囲となるように延伸処理を施す。得られた延伸糸は、ボックス型の捲縮加工機により捲縮が付与されトウとする。
繊維処理剤の付着工程については、未延伸糸の引き取り時にキスロールにて付着する方法や、延伸時/後にタッチロール法、浸漬法、噴霧法等で付着する方法があり、これらの方法の少なくとも一種の工程にて付着される。該トウは乾燥機を用いて60〜120℃で乾燥し、押し切りカッターを用いて用途に合わせた任意の繊維長に切断し、使用される。
【0040】
本発明の帯電性繊維を用いた不織布は、繊維の低融点成分が溶融しない程度の加熱雰囲気下で電荷を与える熱エレクトレット法や、コロナ放電によって電荷を与えるコロナ放電法等のエレクトレット処理を行うことで不織布に電荷を帯電させて捕集機能等の特性を不織布に与える。エレクトレット処理法に関しては特にこの限りではない。
【0041】
本発明の帯電性繊維を用いた不織布は、前述のごとく、例えばエアレイド法やカード法によって得ることができる。該不織布の目付は特に限定されないが、ワイパー等に用いる場合は10〜500g/m2、フィルターに用いる場合には、8〜1000g/m2の範囲の目付が好ましい。
【0042】
本発明の帯電性繊維を用いた不織布加工品は、用途に応じて、繊維集合体、ウェブ、不織布、繊維トウ、紙状物、編物または織物等の様々な形態をとることができる。中でも特に前述の不織布、複合化不織布を用いて製造されたものが好ましく、様々な用途に使用することができる。例えば、該不織布にエレクトレット処理を行い、家具や床等の掃除用ワイパーや、エアコンや空調設備に用いられるエアーフィルター、マスク等に使用することができる。複合化不織布としては、例えば、ネットと積層する事で、不織布に機械強度および、剛性を持たせ、フィルター加工時のプリーツ加工が可能となり、フィルターそのものの強度も保持できる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例、比較例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例、比較例中に示された物性値の測定法または定義をまとめて以下に示す。
捲縮数 :JIS−L−1015に準じて測定した。
単糸繊度 :JIS−L−1015に準じて測定した。
目付 :不織布を50cm角に切った成形体全体の重量を秤量し、単位面積当たりの重量(g/m2)で示した。
繊維処理剤付着量(%):乾燥した繊維2gから、繊維に付着した繊維処理剤をメタノール25mlで抽出し、抽出メタノールからメタノールを蒸発させて残った残渣を秤量し、繊維に対する重量比を算出した値(%)。
捕集効率(%):パーティクル測定器(リオン株式会社製パーティクルカウンターKC−01(0.3〜5μm))にて、大気塵(0.3〜5μm)を速度5cm/minで不織布を通過させた時に、不織布に捕集された塵の量を測定し、通過させた塵の全体の量から100分率で算出した値(%)。
不織布加工性:帯電性繊維をエアレイド法及びカード法にて不織布加工を行う時の加工性を、得られた不織布の地合いや開繊性及び繊維の分散状態から官能的に比較評価した値。得られた不織布の地合いや開繊性及び繊維の分散状態が良好なものから◎(良い)、○(普通)、×(悪い)で評価した。
【0044】
実施例1〜7及び比較例1〜3で用いた繊維処理剤の成分とその配合比率を表1に示し、これらの繊維処理剤を付着して得られた複合繊維の製造条件を表2に示した。なお、繊維処理剤の付着方法は紡糸工程でのキスロール方式または、延伸工程でのタッチロール方式及び噴霧方式を用いた。また、繊維の捲縮数は10〜13山/25mmの繊維を用いた。
【0045】
実施例 1〜4、7及び比較例1〜3
表2に示した各繊維を用い、エアレイド法にて、目付100g/m2のウェブを作り、138℃のスルーエアー熱処理機を通過させて不織布とした。これに90℃雰囲気下で1分間保持した後10kVの電圧を2秒間印加することでエレクトレット不織布を作製した。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】


【0048】
実施例4
表2の「実施例4」に示した鞘側の熱可塑性樹脂(HDPE)に変性PEをブレンドした帯電性繊維を用い、実施例1と同じエアレイド法の条件で不織布を作製した。これに90℃雰囲気下で1分間保持した後10kVの電圧を2秒間印加することでエレクトレット不織布を作製した。
【0049】
実施例5
表2の「実施例5」に示すように、鞘側の熱可塑性樹脂に密度0.9222g/cm2のエチレン-プロピレン共重合体(エチレン成分3.5重量%)を用いて作成したトウを繊維長51mmにカットし、カード法により目標目付100g/m2のウェブとし、138℃のスルーエアー熱処理機を通過させて不織布を作製した。これに90℃雰囲気下で1分間保持した後10kVの電圧を2秒間印加することでエレクトレット不織布を作製した。
【0050】
実施例6
表2の「実施例6」に示した繊維(トウを繊維長51mmにカットしたもの)を用い、カード法により目標目付100g/m2のウェブを作り、ニードルパンチ処理機に通過させることで不織布を作製した。これに90℃雰囲気下で1分間保持した後10kVの電圧を2秒間印加することでエレクトレット不織布を作製した。
【0051】
実施例7
表2の「実施例7」に示すように、繊維処理剤4を用い繊維長を3mmとした以外は、実施例1と同じ熱可塑性樹脂と加工条件で不織布を作製した。これに90℃雰囲気下で1分間保持した後10kVの電圧を2秒間印加することでエレクトレット不織布を作製した。
【0052】
比較例1
実施例1と同じ条件で作製した不織布を湯洗して繊維処理剤を洗浄した後に、エレクトレット加工をして不織布を作製した。
【0053】
比較例2〜3
繊維処理剤にソルビタン脂肪酸エステル類またはポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いたが、他にカチオン性の成分を加えた繊維処理剤を用いた以外は、実施例1と同じ条件で不織布を作製した。
【0054】
実施例1〜7及び比較例1〜3のエレクトレット不織布の捕集効率を測定した。捕集効率と付着油脂分の結果を表3に示す。
捕集効率は大気塵が不織布を通過するときの塵の捕集率であるが、不織布の静電気効果によって捕集された塵の捕集率を反映していると考えられるため、これを用いて不織布の帯電性の指標として用いた。捕集効率の高い繊維は帯電性に優れていることを表している。
【0055】
【表3】

【0056】
従来の湯洗処理を行った比較例1と同等の捕集効率が実施例1〜6で得られることから、本発明の帯電性繊維は繊維処理剤の洗浄の必要がない。また必ずしも不織布加工時/後に熱履歴を要さないで、エレクトレット加工において良好な帯電性を示すことがとからわかった。即ち、本発明の帯電性繊維を用いることで、多段階の加工工程を経ることなく、ニードルパンチ法やスルーエアー法等多様な不織布加工工程に適したエレクトレット繊維を得ることを可能としている。しかし、比較例2、3のイオン性を有する繊維処理剤ではエレクトレット加工による帯電性が殆ど見られなかった。これは、該繊維に帯電した電気量が繊維処理剤中に存在するイオン性成分を媒介して放電される為と考えられる。また、実施例7と同じ繊維処理剤を用いた実施例4及び5において、エレクトレット加工による帯電性(捕集効率)が格段に優れた結果であったのは、繊維を構成する熱可塑性樹脂が異なる為と考えられ、熱可塑性樹脂の選択によって本発明の効果をさらに高めることができる。すなわち、エレクトレット加工による帯電後の静電気保持率は繊維構成樹脂に大きく依存しており、変性剤を含んだ熱可塑性樹脂を用いることは、本発明の好ましい態様の一つであるといえる。
なお、繊維処理剤4はエレクトレット加工における帯電性においても、不織布の加工性においても良好な結果が得られていることから、繊維処理剤の成分比率が好ましい範囲にある繊維処理剤と考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の帯電性繊維は、エアレイド機やカード機を用いて不織布に加工する工程では静電気の発生を抑えて効率よく加工することができ、エレクトレット処理に際しては繊維処理剤の洗浄工程を経ずに十分に帯電させることができるので、集塵効果を要求されるエアーフィルターやワイパー等の不織布加工品に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる繊維であって、下記一般式(I)もしくは下記一般式(II)で示されるソルビタン脂肪酸エステル類および下記一般式(III)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種を主成分として含有する非イオン性の繊維処理剤を、該繊維に対して0.01〜1.5重量%付着してなる帯電性繊維。
一般式(I)

一般式(II)

(一般式(I)及び一般式(II)中、R,R,Rはそれぞれ独立して水酸基、ポリオキシエチレン基またはポリオキシプロピレン基であり、それらの重合度(エチレンオキシド基またはプロピレンオキシド基の構成単位)はそれぞれ独立して0〜55であり、R4は炭素数16〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を表す。)
一般式(III)

(式中、R5は炭素数12〜30の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素基を表す。Rは水素基又はメチル基を表し、kは5〜50の整数である。)
【請求項2】
熱可塑性樹脂からなる繊維が、融点差を有する少なくとも2種類の熱可塑性樹脂で構成される複合繊維であって、少なくとも1種類の熱可塑性樹脂はポリオレフィンであり、該ポリオレフィンが複合繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して露出している熱接着性複合繊維である請求項1に記載の帯電性繊維。
【請求項3】
熱可塑性樹脂からなる繊維が、該繊維を構成する熱可塑性樹脂の少なくとも1種が反応性官能基を有するビニルモノマーからなる重合体(以下、これらを変性剤という)を含む樹脂である請求項1または2に記載の帯電性繊維
【請求項4】
帯電性繊維の繊維長が3〜40mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電性繊維。
【請求項5】
帯電性繊維の繊維長が32〜120mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電性繊維。
【請求項6】
請求項4に記載の帯電性繊維を用いて、エアレイド法によって得られる不織布。
【請求項7】
請求項5に記載の帯電性繊維を用いて、カード法によって得られる不織布。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電性繊維と、他の繊維、不織布、フィルム、パルプシート、編み物及び織物から選ばれた少なくとも1種とを混合して得られる複合化不織布。
【請求項9】
請求項6〜7のいずれか1項に記載の不織布と、他の不織布、繊維、フィルム、パルプシート、編み物及び織物から選ばれた少なくとも1種とを積層して得られる複合化不織布。
【請求項10】
請求項6〜7のいずれか1項に記載の不織布または請求項8〜9記載の複合化不織布を用いた不織布加工品。
【請求項11】
請求項6〜7のいずれか1項に記載の不織布または請求項8〜9記載の複合化不織布をエレクトレット処理して用いたエアーフィルター。
【請求項12】
請求項6〜7のいずれか1項に記載の不織布または請求項8〜9記載の複合化不織布をエレクトレット処理して用いたワイパー。
【請求項13】
請求項6〜7のいずれか1項に記載の不織布または請求項8〜9記載の複合化不織布をエレクトレット処理して用いたマスク。



【公開番号】特開2006−2329(P2006−2329A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144313(P2005−144313)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(399120660)チッソポリプロ繊維株式会社 (41)
【Fターム(参考)】