説明

帯電装置及び画像形成装置

【課題】帯電(放電)により発生するオゾンやオゾン生成物等の帯電生成物を帯電器の内部から効率的に除去することができる帯電装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光体20の表面に対向配置されて感光体20を帯電させる帯電器21と、帯電器21を感光体20の表面から離間させる変位機構と、帯電器21の内部に気流を発生させる気流発生器とを備え、気流発生器によって帯電器21の内部に気流を発生させる際には変位機構によって帯電器21が感光体20の表面から離間される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体の表面に対向配置されて前記像担持体を帯電させる帯電器を備えた帯電装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、ファックス並びにこれらを組み合わせた複合機等の電子写真方式による画像形成装置では、図8に示すように、像担持体としてのドラム状の感光体20の周囲に、その回転方向(図示矢印参照)に沿って、帯電器21,露光器22,現像器23,転写ローラ24,クリーニングユニット25,LED等の除電器26がこの順に設けられている。尚、図中Sは搬送シート(転写紙)である。
【0003】
帯電器21は、放電ワイヤ27、放電ワイヤ27の周囲を覆うシールドケース28、放電ワイヤ27と感光体20との間に設けられてシールドケース28と電気的に非導通なグリッド29を備え、これら放電ワイヤ27・シールドケース28・グリッド29(実際に帯電させたい電位に依存する電位)に電圧を印加することによって感光体20を帯電する。
【0004】
帯電器21によって帯電された感光体20は、露光器22によって露光が行われて感光体20の表面に静電潜像が形成され、現像器23によってその静電潜像にトナーが付着してトナー像が形成される。
【0005】
その後、現像されたトナー像は転写ローラ24の電圧印加と加圧とによって搬送シートSの表面に転写され、図示を略する定着装置により定着されたうえで排出される。また、感光体20は、クリーニングユニット25の表面に残留した残留現像剤(トナー等)を除去した後に、除電器26によって除電される。
【0006】
一方、帯電器21にコロナ放電帯電器を用いた場合、電圧を印加して感光体20に電荷を付与する(放電する)際にオゾンが発生する。このオゾンがシールドケース28内に滞留すると感光体20の表面に悪影響を及ぼして画像劣化が発生するという問題がある。
【0007】
即ち、画像劣化は、特に、高湿度環境で長時間連続して画像形成処理を行った後に長時間放置すると発生し易い。また、帯電器21と対向する付近での感光体20に画像劣化が顕著に発生することが多いが、原因は高濃度のオゾンが長時間にわたりシールドケース28の内部に滞留することで、その位置にある感光体20の表面に帯電性劣化が発生すると考えられている。
【0008】
そこで、画像形成処理後にシールドケース28の内部に滞留しているオゾンやオゾン生成物等の帯電生成物を効率的に拡散・除去して感光体20の劣化を防止する技術として、例えば、吸気ファンによって取り込んだ外気を帯電器へと導く一方、帯電器周辺の空気を排気ファンによって取り込んで外部へと排出するもの等のように、シールドケース28の内部に対して空気を吸気又は排気するものが各種提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2001−209283号公報
【特許文献2】特開2005−127172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記の如く構成された帯電器21にあっては、特に感光体20と帯電器21との僅かな隙間(1mm程度)から帯電器21の内部に滞留するオゾンやオゾン生成物等といった帯電生成物を排出することが困難で、シールドケース28内に帯電生成物が残存してしまい易いという問題が生じていた。
【0010】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、帯電(放電)により発生するオゾンやオゾン生成物等の帯電生成物を帯電器の内部から効率的に除去することができる帯電装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の帯電装置は、像担持体の表面に対向配置されて前記像担持体を帯電させる帯電器と、該帯電器を前記像担持体の表面から離間させる変位機構と、前記帯電器の内部と連通されて該内部に気流を発生させる気流発生器とを備え、該気流発生器によって前記内部に気流を発生させる際に前記変位機構によって前記帯電器が前記像担持体の表面から離間されていることを特徴とする。
【0012】
この際、前記気流発生器は、前記内部に外気を供給することによって気流を発生させるのが好ましい。
また、前記変位機構は、画像形成処理終了後の所定タイミングで前記帯電器を前記像担持体の表面から離間させ、前記気流発生器によって前記帯電器の内部に外気を供給した後に前記帯電器を前記像担持体の表面に接近させるのが好ましい。
【0013】
また、本発明は上記帯電装置を備えた画像形成装置とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の帯電装置は、帯電(放電)により発生するオゾンやオゾン生成物等の帯電生成物を帯電器の内部から効率的に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の一実施形態に係る帯電装置を画像形成装置としての複合機に適用し、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る帯電装置を備えた画像形成装置としての複合機の説明図、図2は本発明の一実施形態に係る帯電装置の帯電器と感光体との関係を示す要部の断面図、図3は本発明の一実施形態に係る帯電装置の帯電器と感光体との関係を示す帯電器接近状態の要部の斜視図、図4は本発明の一実施形態に係る帯電装置の帯電器と感光体との関係を示す帯電器離間状態の要部の斜視図、図5は本発明の一実施形態に係る一部を破断した帯電装置の斜視図、図6は本発明の一実施形態に係る帯電装置の帯電器と感光体との関係を示す帯電器接近状態の要部の断面図、図7は本発明の一実施形態に係る帯電装置の帯電器と感光体との関係を示す帯電器離間状態の要部の断面図である。
【0017】
(複合機の全体構成)
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としての複合機1は、装置本体2の前面から引き出し可能な複数段の搬送シート収納装置3,4,5と、装置本体2の一方の側面に開閉可能に設けられた手差トレイ6と、複写機・ファクシミリ・スキャナの各種機能として原稿を読み取る際に使用する自動原稿送り装置(ADF)7と、表示画面8を有すると共に各種機能等の設定・選択操作を行う操作部9とを備えている。
【0018】
尚、この複合機1の形状や構成・機能等は図示例のものに限定されるものではない。また、例えば、ソーター等のオプション機器等の設置を妨げるものではない。
【0019】
(複合機1の内部構成)
また、装置本体2は、その内部に、搬送シート収納装置3,4,5又は手差しトレイ6に収納された搬送シート(図示せず)を取り出して装置本体2の他方の側面に配置された排紙トレイ10に向けて搬送する搬送経路11と、搬送経路11のシート搬送方向上流側に配置されて搬送シートを検出するレジストセンサ12と、レジストセンサ12よりも搬送経路11のシート搬送方向下流側に配置されたレジストローラ対13と、レジストセンサ12よりも搬送経路11のシート搬送方向下流側に配置された画像形成部14と、画像形成部14によって搬送シートの表面に転写されたトナー像を搬送シートの表面に定着させる定着部15と、定着部15よりも搬送経路11のシート搬送方向下流側に配置された分岐路16と、分岐路16に導かれた搬送シートをスイッチバック経路17を経由して表裏反転した状態でレジストセンサ12よりもシート搬送方向上流側の搬送経路11に戻す反転経路18と、ADF7にセットされた原稿が複数である場合に片面印刷処理後の搬送シートの排出面を原稿順序に合わせた状態で排紙トレイ10に排出する反転排出路19とを備えている。
【0020】
レジストセンサ12は、搬送シートを検出することにより搬送シートの先端位置と感光体20の表面に形成されたトナー像位置との同期を計るもので、このレジストセンサ12が搬送シートの先端を検出してから所定時間経過後にレジストローラ対13と感光体20の回転駆動を開始させ、レジストセンサ12が搬送シートの後端を検出してから所定時間経過後にレジストローラ対13と感光体20の回転駆動を停止する。また、レジストセンサ12は、搬送シート収納装置3,4,5から搬送経路11へと送り出された搬送シートのシート搬送方向に沿うシート長を検出するもので、搬送シートの先端を検出してから後端を検出するまでの時間によって搬送シートの長さ(シート搬送方向に沿う方向)を検出する。
【0021】
レジストローラ対13は、モータ等の駆動源(図示せず)に連繋されている。そして、このレジストローラ対13は、静止状態において、搬送シートの先端がニップされたときに瞬間的に搬送シートの搬送を停止することで搬送シートの斜め送りを矯正する。
【0022】
画像形成部14は、感光体20と、感光体20の周囲に配置された帯電器21、露光器22、現像器23、転写器24、クリーニング器25、除電器26等を備えている。
【0023】
これにより、画像形成部14は、感光体20が図示しない駆動手段によって所定のプロセススピード(周速度)で回転駆動され、その表面が帯電器21によって所定の極性・電位に均一に帯電される。
【0024】
即ち、帯電器21は、図2に示すように、放電ワイヤ27、放電ワイヤ27の周囲を覆うシールドケース28、放電ワイヤ27と感光体20との間に設けられてシールドケース28と電気的に非導通なグリッド29を備え、これら放電ワイヤ27・シールドケース28・グリッド29(実際に帯電させたい電位に依存する電位)に電圧を印加することによって感光体20を帯電する。
【0025】
帯電後の感光体20は、その表面に露光器22によって静電潜像が形成される。ここで、露光器22は、例えば、複写機機能によりADF7を利用してスキャナー部で読み取った印刷データ、ファクシミリ機能により電話回線を通じて受信した印刷データ、プリンタ機能によりネットワーク等の通信回線によって接続されたパーソナルコンピュータ等から出力された印刷データに基づいて、感光体20の表面にレーザー光を照射し、感光体20の表面のレーザー光照射部分の電荷を除去して画像情報に応じた静電潜像を形成する。
【0026】
そして、感光体20の表面に形成された静電潜像は、現像器23によって電荷を有するトナーが静電的に付着されてトナー像として現像される。さらに、そのトナー像は、転写器24によって搬送シートに転写像として転写される。
【0027】
この際、搬送シートにトナー像を転写した感光体20は、クリーニング器25によって残留トナー等が除去されると共に次の画像形成時の帯電のために除電器26によって除電される。
【0028】
シールドケース28は、図3,4に示すように、感光体20の幅よりも幅広とされ、放電ワイヤ27の下方側から放電に伴って発生するシリカを除去するためのクリーニングパッド30(図2参照)を一端寄りに設けたワイヤクリーニング装置31を長手方向にスライド変位可能に保持している。
【0029】
ワイヤクリーニング装置31は、本実施の形態では、シールドケース28のセット位置(図3,4の状態)にあるときには、感光体20の略全幅に跨っており、シールドケース28内に連通する開口31aが形成されている。また、放電ワイヤ27を清掃する際には、クリーニングパッド30が位置する側とは反対側の端部からワイヤクリーニング装置31をシールドケース28から引き出す(図4の矢印イ参照)ことによって放電ワイヤ27にクリーニングパッド30が摺接して放電ワイヤ27に付着したシリカやシリカ生成物等を除去することができる。
【0030】
また、帯電器21は、シールドケース28の感光体20の両端から外れた位置で帯電器21の全体を感光体20の表面から離間させる変位機構32と、図5乃至図7に示すように、ワイヤクリーニング装置31の開口31aを介してシールドケース28の内部と連通する気流発生器33とで帯電装置を構成している。
【0031】
変位機構32は、シールドケース28の両端付近と当接する偏心カム34と、この偏心カム34を回転させる駆動手段(図示せず)と連携されたギヤ35とを備え、常時は感光体20と帯電器21とを接近状態(図2,図3,図6参照)として感光体20の表面への帯電を可能とし、画像形成処理終了後の所定タイミング(例えば、画像形成処理枚数や放電ワイヤ27のクリーニング時等を基準)によって偏心カム34を回転させて感光体20と帯電器21とを離間状態(図4,図7参照)とする。尚、変位機構32は、例えば、偏心カム34に変えてラック・ピニオン方式で昇降可能としたり、ソレノイドの伸縮によって昇降可能とするなど、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0032】
気流発生器33は、一端が装置本体2の外壁に形成された吸気孔(図示せず)に連通され且つ他端が開口31aと連通する吸気ダクト36と、吸気ダクト36に形成された吸気孔37の近傍に配置された吸気ファン38とを備えている。
【0033】
これにより、例えば、高湿度環境で長時間連続して画像形成処理を行った後等、オゾンやオゾン生成物といった帯電生成物がシールドケース28内に滞留している場合には、変位機構32によって帯電器21を感光体20から離間させた後に、吸気ファン38を駆動して外気を吸気し、その外気を吸気ダクト36を介してシールドケース28の内部に供給することによって、シールドケース28の内部に滞留する帯電生成物を放出することができる。
【0034】
尚、シールドケース28の内部に供給された外気は、結果的に感光体20の表面を吹き付けることとなることから、帯電器21の温度変化による感光体20の温度変化を減少させる冷却効果を相乗的に発揮することができる。
【0035】
また、シールドケース28の内部に供給された外気は、放電ワイヤ27やシールドケース28の内壁面に付着したシリカやシリカ生成物を放出することができる。この際、変位機構32は、ワイヤクリーニング装置31を利用した放電ワイヤ27の清掃時に同期して又はその前後に帯電器21を感光体20から離間させた後、気流発生器33の駆動による気流発生後、再び帯電器21を感光体20に接近させるのが好ましい。さらに、シールドケース28の偏心カム34とは反対側に帯電器21が感光体20に接近方向に付勢するスプリング39を設けても良い。
【0036】
ところで、上記実施の形態では、本発明の帯電装置を複合機1に適用して説明したが、例えば、プリンタ専用機や複写専用機ように、コロナ放電方式等を採用した画像形成装置全般に適用することができることは勿論である。
【0037】
また、上記実施の形態では、吸気ファン38によって外気を取り入れる構成を開示したが、この吸気ファン38を排気ファンとし、シールドケース28の内部の空気をオゾン生成物並びにシリカ生成物等と一緒に放出するように構成することも可能である。この際、吸気孔37にはフィルター等を設けるのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る帯電装置を備えた画像形成装置としての複合機の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る帯電装置の帯電器と感光体との関係を示す要部の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る帯電装置の帯電器と感光体との関係を示す帯電器接近状態の要部の斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る帯電装置の帯電器と感光体との関係を示す帯電器離間状態の要部の斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る一部を破断した帯電装置の斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る帯電装置の帯電器と感光体との関係を示す帯電器接近状態の要部の断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る帯電装置の帯電器と感光体との関係を示す帯電器離間状態の要部の断面図である。
【図8】従来の画像形成部の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1…複合機(画像形成装置)
20…感光体(像担持体)
21…帯電器(帯電装置)
32…変位機構(帯電装置)
33…気流発生器(帯電装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体の表面に対向配置されて前記像担持体を帯電させる帯電器と、該帯電器を前記像担持体の表面から離間させる変位機構と、前記帯電器の内部と連通されて該内部に気流を発生させる気流発生器とを備え、該気流発生器によって前記内部に気流を発生させる際に前記変位機構によって前記帯電器が前記像担持体の表面から離間されていることを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
前記気流発生器は、前記内部に外気を供給することによって気流を発生させることを特徴とする請求項1に記載の帯電装置。
【請求項3】
前記変位機構は、画像形成処理終了後の所定タイミングで前記帯電器を前記像担持体の表面から離間させ、前記気流発生器によって前記帯電器の内部に外気を供給した後に前記帯電器を前記像担持体の表面に接近させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の帯電装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の帯電装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−185881(P2008−185881A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20694(P2007−20694)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】