説明

平板型冷却装置及びその使用方法

【課題】沸騰冷却方式を用いた冷却装置においては、冷却性能の向上を図ると、装置が大型化してしまう。
【解決手段】本発明の平板型冷却装置は、第1の平板と、第1の平板に対向する第2の平板と、第1の平板と第2の平板を接続する枠体部とを備えた平板状容器と、平板状容器に封入された冷媒と、第1の平板と第2の平板を接続し、平板状容器内の冷媒の流路を制御する流路壁、とを有し、平板状容器は、第1の平板および第2の平板の少なくとも一方に配置される発熱体と熱的に接続する受熱領域と、第1の平板および第2の平板の少なくとも一方に配置される放熱部と熱的に接続する放熱領域、とを備え、放熱領域は、放熱領域における冷媒の流路を構成する複数の流路板を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置や電子機器などの冷却装置に関し、特に、冷媒の気化と凝縮のサイクルによって熱の輸送・放熱を行う沸騰冷却方式を用いた平板型冷却装置及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置や電子機器などの高性能化、高機能化に伴い、それらの発熱量も増大している。一方、携帯機器の普及等により半導体装置や電子機器などの小型化が進んでいる。このような背景から、高効率で小型の冷却装置が求められている。冷媒の気化と凝縮のサイクルによって熱の輸送・放熱を行う沸騰冷却方式を用いた冷却装置は、ポンプなどの駆動部を必要としない。そのため小型化に適していることから、半導体装置や電子機器などの冷却装置として期待されている。
【0003】
このような沸騰冷却方式を用いた冷却装置(以下では、「沸騰冷却装置」とも言う)の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された関連する沸騰冷却装置は、発熱体の熱を受ける液体冷媒を内部に貯留する冷媒貯留部と、冷媒貯留部に接続され、蒸発した冷媒蒸気を凝縮する凝縮部とを有する。冷媒貯留部と凝縮部はそれぞれ直方体状である金属性の筐体から構成される。関連する沸騰冷却装置は、冷媒貯留部および凝縮部の内部を複数の通路に区画する一対の通路形成板を備え、これによって冷媒貯留部に第1冷媒通路と第2冷媒通路が、凝縮部に第3冷媒通路と第4冷媒通路が形成される。さらに凝縮部は、内部を冷却流体が流通する中空板状の凝縮管を備え、凝縮管は冷媒蒸気の流れ方向に対し傾斜して配置した構成としている。
【0004】
そして関連する沸騰冷却装置によれば、凝縮管が傾斜して配置されていることから、冷媒蒸気が凝縮管の表面を円滑に流動することが可能となり、凝縮管による冷媒蒸気の凝縮能力を向上させることができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−236792号公報(段落「0025」〜「0042」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように関連する沸騰冷却装置では、通路形成板によって、液体冷媒の沸騰により生じた冷媒の気泡および冷媒蒸気が流動する第1および第3冷媒通路と、凝縮管において凝縮された冷媒が流動する第2および第4冷媒通路が形成される。そして、第1冷媒通路と第2冷媒通路、および第3冷媒通路と第4冷媒通路はそれぞれ、筐体の外壁面と平行に積層して構成される。そのため、関連する沸騰冷却装置の厚さが増大し、装置が大型化してしまう、という問題があった。
【0007】
このように、関連する沸騰冷却装置においては、冷却性能の向上を図ると、装置が大型化してしまう、という問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上述した課題である、沸騰冷却方式を用いた冷却装置においては、冷却性能の向上を図ると、装置が大型化してしまう、という課題を解決する平板型冷却装置及びその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の平板型冷却装置は、第1の平板と、第1の平板に対向する第2の平板と、第1の平板と第2の平板を接続する枠体部とを備えた平板状容器と、平板状容器に封入された冷媒と、第1の平板と第2の平板を接続し、平板状容器内の冷媒の流路を制御する流路壁、とを有し、平板状容器は、第1の平板および第2の平板の少なくとも一方に配置される発熱体と熱的に接続する受熱領域と、第1の平板および第2の平板の少なくとも一方に配置される放熱部と熱的に接続する放熱領域、とを備え、放熱領域は、放熱領域における冷媒の流路を構成する複数の流路板を有する。
【0010】
本発明の平板型冷却装置の使用方法は、本発明の平板型冷却装置を、受熱領域と放熱領域を結ぶ直線軸が、鉛直方向と垂直である第1の配置状態と、受熱領域と放熱領域を結ぶ直線軸が、鉛直方向と平行である第2の配置状態、との間で切り換えて使用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の平板型冷却装置によれば、小型であって、冷却性能が向上した沸騰冷却方式の平板型冷却装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置の使用状態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置の構成を示す図であり、(a)は上面透視図、(b)は(a)中のB−B線断面図、(c)は(b)中のC−C線断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置の使用方法について説明するための平板型冷却装置の模式的な断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る平板型冷却装置の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る平板型冷却装置の構成を示す断面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る平板型冷却装置の構成を示す図であり、(a)は上面透視図、(b)は(a)中のB−B線断面図、(c)は(a)中のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置100の使用状態を模式的に示す斜視図である。平板型冷却装置100は冷媒が封入された平板状容器を有する。冷媒に低沸点の材料を用い、平板状容器に冷媒を注入した後に真空排気することにより、平板状容器の内部を常に冷媒の飽和蒸気圧に維持することができる。図1中の点線は、冷媒の液相と気相の界面を模式的に示したものである。
【0015】
平板型冷却装置100を構成する平板状容器の外面に、発熱体500および放熱フィンなどからなる放熱部600を熱的に接続して使用する。発熱体500からの熱量が平板状容器を介して冷媒に伝達され、冷媒が気化する。このとき、発熱体500からの熱量は気化熱として冷媒に奪われるため、発熱体500の温度上昇が抑制される。気化した冷媒は平板状容器の内部を放熱部600側に拡散し、放熱部600の放熱フィン等を用いて放熱し、凝縮する。このように、平板型冷却装置100は冷媒の気化と凝縮のサイクルによって熱の輸送・放熱を行う沸騰冷却方式を用いた構成である。
【0016】
なお、図1では、発熱体500と放熱部600がいずれも平板型冷却装置100の一方の面に配置された場合を示したが、これに限らず、対向する面にそれぞれ配置することとしてもよい。また、放熱部600を構成する放熱フィンの向きも図1に示したものに限らない。
【0017】
平板型冷却装置100の構成について、図2を用いてさらに詳細に説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置100の構成を示す図であり、(a)は上面透視図、(b)は(a)中のB−B線断面図、(c)は(b)中のC−C線断面図である。平板型冷却装置100は、第1の平板111と、第1の平板111に対向する第2の平板112と、第1の平板111と第2の平板112を接続する枠体部113とを備えた平板状容器110を有する。この平板状容器110には冷媒120が封入されている。そして、平板状容器110の内部に、第1の平板111と第2の平板112を接続し、平板状容器110内の冷媒120の流路を制御する流路壁130を備える。
【0018】
図2(b)に示すように、平板状容器110は第1の平板111および第2の平板112の少なくとも一方に配置される発熱体500と熱的に接続する受熱領域140を有する。また、平板状容器110は第1の平板111および第2の平板112の少なくとも一方に配置される放熱部600と熱的に接続する放熱領域150を有する。そして、放熱領域150は、放熱領域150における冷媒120の流路である溝状流路162を構成する複数の流路板160を備えた構成とした。これらの部材を構成する材料には、熱伝導特性に優れた金属、例えばアルミニウムなどを用いることができる。また、冷媒120としては例えば、絶縁性を有し不活性な材料であるハイドロフロロカーボンやハイドロフロロエーテルなどを用いることができる。
【0019】
次に、本実施形態による平板型冷却装置100の動作について、図2(b)を用いて説明する。同図において、冷媒120の気相と液相の界面を点線で示す。すなわち、図面の上下方向が鉛直方向である。受熱領域140に存在する冷媒は発熱体500から熱量を奪って気化し、平板状容器110の内部を流路壁130に沿って放熱領域150に向けて流動する。放熱領域150に達した気相の冷媒は、複数の流路板160の間に形成された開放端を備えた溝状流路162を通過し、溝状流路162内で冷却されて凝縮する。凝縮した冷媒は重力により溝状流路162内を降下し、液相の冷媒中に流入する。凝縮した冷媒(凝縮冷媒)は放熱領域150においてさらに冷却されて沈降し、充分冷却された状態で再び受熱領域140に還流する。これにより、冷却が不充分な凝縮冷媒と、充分に冷却された凝縮冷媒を分離することができる。
【0020】
ここで、放熱領域150における冷却性能は主として、冷媒が気相から液相に相変化する際の凝縮熱伝達により決定される。これは、相変化の際に生じる潜熱による熱移動量の方が、液相状態の冷媒の温度差により放熱する顕熱による熱移動量に比べて数倍大きいためである。したがって、放熱領域150の表面積を有効に使って気相状態の冷媒(気相冷媒)を凝縮させた方が、沸騰冷却方式を用いた平板型冷却装置(「平板型沸騰冷却装置」とも言う)の冷却性能を向上させることができる。
【0021】
上述したように、本実施形態による平板型冷却装置100には、放熱領域150に複数の流路板160によって冷媒の流路(溝状流路162)が構成されている。そのため、放熱領域150における気相冷媒に対する流通抵抗が増大するので、各溝状流路162に均一に気相冷媒を流入させることができる。さらに、気相冷媒を複数の溝状流路162に分岐することによって、各溝状流路162に流れる気相冷媒の流動速度を低下させることができる。それによって、冷媒120と放熱部600との熱交換効率を向上させることが可能となる。このように、本実施形態による平板型冷却装置100によれば、放熱領域150の表面積を有効に使って気相冷媒を凝縮させることができるので、平板型冷却装置の冷却性能を向上させることができる。
【0022】
さらに本実施形態においては、流路壁130を設けることによって、平板状容器110を構成する第1の平板111および第2の平板112と平行な面内において、冷却が不充分な凝縮冷媒と、充分に冷却された凝縮冷媒を分離する構成としている。そのため、背景技術で説明した関連する沸騰冷却装置のように、外壁面と平行に積層した流路を構成する必要がないので、平板型冷却装置100の小型化、薄型化を図ることができる。
【0023】
このように、本実施形態によれば、小型であって、冷却性能が向上した沸騰冷却方式の平板型冷却装置が得られる。
【0024】
次に、図3を用いて平板型冷却装置100の構成について、さらに詳細に説明する。図3は、本発明の第1の実施形態に係る平板型冷却装置100の構成を示す断面図であり、図2(b)と同じ断面を示す。
【0025】
図3に示すように、放熱領域150は流路板160の延伸方向の端部と枠体部113との間の領域である冷媒導入領域152を備える。ここで冷媒導入領域152は、各溝状流路162に対して、ヘッダまたはフッタとして機能する。そして、冷媒導入領域152の延伸方向に垂直な断面積が、流路板160で構成される各溝状流路162の延伸方向に垂直な断面積の合計よりも大きくなるように構成することができる。この場合、溝状流路162を流れる気相冷媒に対する流通抵抗を、冷媒導入領域152を流れる気相冷媒に対する流通抵抗よりもが増大させることができる。これにより、各溝状流路162に均一に気相冷媒を流入させ、各溝状流路162に流れる気相冷媒の流動速度を低下させる、という上述した効果を、より顕著に得ることができる。ここで、各溝状流路162の延伸方向に垂直な断面積の合計は、冷媒導入領域152の延伸方向に垂直な断面積の例えば30%以下とし、また、各溝状流路162の幅は約2mmから5mm程度とすることができる。
【0026】
また、流路壁130は、受熱領域140と放熱領域150の間に配置することが望ましい。そして、第1の平板111(または第2の平板112)と平行な平面による断面形状が、受熱領域140と放熱領域150を結びかつ第1の平板111の一辺に平行な直線(図3中の直線DD)に対して傾斜して配置した傾斜壁部132を有する構成とすることができる。これにより、受熱領域140で発生した気相冷媒を放熱領域150に向けて円滑に流動させることができる(図3中の矢印A)。すなわち、平板型沸騰冷却装置における気相冷媒の循環系において、流路断面積の急激な変化があると流通抵抗が増大する。その結果、内圧が上昇するので液相冷媒の沸点が上昇し、冷却性能の低下を引き起こすことになる。それに対して、テーパ状の傾斜壁部132を備えた流路壁130とすることにより、気相冷媒の流路における流通面積の急激な変化は生じなくなるので、冷却性能の低下を回避することができる。
【0027】
次に、本実施形態による平板型冷却装置100の使用方法について説明する。図4は、本実施形態による平板型冷却装置100の使用方法を説明するための平板型冷却装置100の模式的な断面図である。これまでの説明では図4(a)に示すように、受熱領域140と放熱領域150を結ぶ直線軸DDが、鉛直方向と垂直である配置状態(第1の配置状態)で平板型冷却装置100を使用する場合について示した。しかし、本実施形態の平板型冷却装置100では、図4(b)に示すように、受熱領域140と放熱領域150を結ぶ直線軸DDが、鉛直方向と平行である配置状態(第2の配置状態)においても使用することができる。すなわち、本実施形態の平板型冷却装置100は、第1の配置状態と第2の配置状態との間で切り換えて使用することが可能である。また、図4(c)に示すように、図4(a)に示した場合と180度回転した配置状態においても使用することができる。
【0028】
これは第2の配置状態(図4(b))および図4(c)の配置状態においても、流路壁130と流路板160が配置されることにより冷媒が循環する流路170が形成されるからである。すなわち、この場合においても受熱領域140には常に、凝縮後に充分冷却された冷媒が供給されるので、平板型冷却装置100の冷却性能を向上させることができる。
【0029】
このとき、流路板160は、受熱領域140と放熱領域150を結びかつ第1の平板111の一辺に平行な直線と垂直な方向に対して傾斜して配置されることが望ましい。また、流路壁130は、第1の平板111と平行な平面による断面形状が、受熱領域140と放熱領域150を結びかつ第1の平板111の一辺に平行な直線に対して非対称な構造を有することが望ましい。このような構成とすることにより、流路板160に沿って液相冷媒が降下し、流路壁130の長さの相違により冷媒の流通抵抗に差が生じるため、冷媒の循環を促進することができ、平板型冷却装置100の冷却性能をさらに向上させることができる。
【0030】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図5は、本発明の第2の実施形態に係る平板型冷却装置200の構成を示す断面図であり、図2(b)と同じ断面を示す。平板型冷却装置200は、第1の平板111と、第1の平板111に対向する第2の平板112と、第1の平板111と第2の平板112を接続する枠体部113とを備えた平板状容器110を有する。この平板状容器110には冷媒120が封入されている。そして、平板状容器110の内部に、第1の平板111と第2の平板112を接続し、平板状容器110内の冷媒120の流路を制御する流路壁130を備える。
【0031】
平板状容器110は第1の平板111および第2の平板112の少なくとも一方に配置される発熱体500と熱的に接続する受熱領域140を有する。また、平板状容器110は第1の平板111および第2の平板112の少なくとも一方に配置される放熱部600と熱的に接続する放熱領域150を有する。そして、放熱領域150は、放熱領域150における冷媒120の流路である溝状流路162を構成する複数の流路板160を備えた構成とした。
【0032】
これまでの構成は第1の実施形態による平板型冷却装置100と同じである。本実施形態の平板型冷却装置200は、受熱領域140または放熱領域150に凹凸構造を有する粗面領域240(250)を備える構成とした点が第1の実施形態による平板型冷却装置100と異なる。
【0033】
ここで粗面領域240(250)は、平板状容器110の内面に形成された凹凸構造を有し、この凹凸構造が受熱領域140では冷媒の気泡の発生核となり、放熱領域150においては気泡の凝縮核となる。そのため、冷媒の相変化が活発化し、冷却性能をさらに増大させることができる。
【0034】
この凹凸構造の大きさは、冷媒の表面張力などの物性値と発熱体の発熱量によって最適な値が定められる。例えば、絶縁性を有し不活性な材料であるハイドロフロロカーボンやハイドロフロロエーテルなどを冷媒として用いる場合、最適な気泡核の大きさは中心線平均粗さでサブミクロンから約100μm程度の範囲になる。そのため、砥粒やサンドブラストなどを用いた機械加工や、めっきなどの化学処理を行うことにより同程度の大きさの凹凸構造を形成することができる。
【0035】
図5では、受熱領域140およびその周辺領域および放熱領域150に粗面領域240(250)を備えた構成を示したが、少なくとも受熱領域140を含む領域に粗面領域240を形成することにより、冷却性能が増大する効果が得られる。なお、受熱領域140と放熱領域150の間の流路壁130が形成された領域には、粗面領域を形成しない構成とすることが望ましい。その理由は、流路壁130が形成された領域に粗面領域が存在すると、気相の冷媒が放熱領域150に到達する前に凝縮液化してしまう可能性が生じ、放熱領域150における効率的な放熱を妨げる恐れがあるからである。
【0036】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図6は、本発明の第3の実施形態に係る平板型冷却装置300の構成を示す断面図であり、図2(b)と同じ断面を示す。平板型冷却装置300は、第1の平板111と、第1の平板111に対向する第2の平板112と、第1の平板111と第2の平板112を接続する枠体部113とを備えた平板状容器110を有する。この平板状容器110には冷媒120が封入されている。そして、平板状容器110の内部に、第1の平板111と第2の平板112を接続し、平板状容器110内の冷媒120の流路を制御する流路壁130を備える。
【0037】
平板状容器110は第1の平板111および第2の平板112の少なくとも一方に配置される発熱体500と熱的に接続する受熱領域140を有する。また、平板状容器110は第1の平板111および第2の平板112の少なくとも一方に配置される放熱部600と熱的に接続する放熱領域150を有する。そして、放熱領域150は、放熱領域150における冷媒120の流路である溝状流路162を構成する複数の流路板160を備えた構成とした。
【0038】
これまでの構成は第1の実施形態による平板型冷却装置100と同じである。本実施形態の平板型冷却装置300は、受熱領域140に、受熱領域140における冷媒120の循環を促進する複数の板状部340を備えた構成とした点が第1の実施形態による平板型冷却装置100と異なる。
【0039】
板状部340は例えばフィン形状とすることができ、受熱領域140において発生した冷媒の気泡が浮力により放熱領域150に移動する際に、対流熱伝達を促進する効果を有する。さらに、板状部340により冷媒の気液二相流が発生しやすくなるため、体積あたりの熱輸送量を増加させることができる。ここで気液二相流とは、気相と液相の二相が混在した状態で流れることを言う。このように、本実施形態の平板型冷却装置300によれば、冷却性能をさらに向上させることができる。
【0040】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図7は、本発明の第4の実施形態に係る平板型冷却装置400の構成を示す図であり、(a)は上面透視図、(b)は(a)中のB−B線断面図、(c)は(a)中のC−C線断面図である。平板型冷却装置400は、平板状容器110を構成する第1の平板111および第2の平板112の少なくとも一方に配置された放熱容器450をさらに有する構成とした点において、第1の実施形態による平板型冷却装置100と異なる。
【0041】
放熱容器450は、冷媒の流路を構成する放熱部流路460と、放熱部流路460に冷媒を導入する放熱部導入領域452を備える。ここで放熱部導入領域452は、放熱部流路460に対して、ヘッダまたはフッタとして機能する。また、図7(c)に示すように、放熱部流路460の間に放熱フィン部462を配置することとしてもよい。放熱フィン部462により放熱部流路460を流動する冷媒の放熱をさらに促進することができる。
【0042】
平板型冷却装置400においては、放熱部導入領域452が平板状容器110ではなく放熱容器450に設けられている。そのため、平板状容器110の内容積を増加させることができる。その結果、平板状容器110内の飽和蒸気圧は減少するので、冷媒の沸点を下げることができ、平板型沸騰冷却装置の冷却性能をさらに向上させることができる。
【0043】
なお、ヘッダおよびフッタとして機能する二個の放熱部導入領域452を、図7(b)に示すように、受熱領域140と放熱領域150を結ぶ直線(図7(b)中の直線DD)に対して非対称となる位置にそれぞれ配置することとしてもよい。この場合は、放熱部導入領域452間の放熱部流路460と流路壁130とにより冷媒が循環する流路が形成される。その結果、受熱領域140と放熱領域150を結ぶ直線DDが、鉛直方向と垂直である配置状態(第1の配置状態)、鉛直方向と平行である配置状態(第2の配置状態)、および第1の配置状態と180度回転した配置状態においても使用することができる。
【0044】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0045】
100、200、300、400 平板型冷却装置
110 平板状容器
111 第1の平板
112 第2の平板
113 枠体部
120 冷媒
130 流路壁
132 傾斜壁部
140 受熱領域
150 放熱領域
152 冷媒導入領域
160 流路板
162 溝状流路
170 流路
240、250 粗面領域
340 板状部
450 放熱容器
452 放熱部導入領域
460 放熱部流路
462 放熱フィン部
500 発熱体
600 放熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の平板と、前記第1の平板に対向する第2の平板と、前記第1の平板と前記第2の平板を接続する枠体部とを備えた平板状容器と、
前記平板状容器に封入された冷媒と、
前記第1の平板と前記第2の平板を接続し、前記平板状容器内の前記冷媒の流路を制御する流路壁、とを有し、
前記平板状容器は、前記第1の平板および前記第2の平板の少なくとも一方に配置される発熱体と熱的に接続する受熱領域と、前記第1の平板および前記第2の平板の少なくとも一方に配置される放熱部と熱的に接続する放熱領域、とを備え、
前記放熱領域は、前記放熱領域における前記冷媒の流路を構成する複数の流路板を有する
平板型冷却装置。
【請求項2】
前記放熱領域は、前記流路板の延伸方向の端部と前記枠体部との間の領域である冷媒導入領域を備え、
前記冷媒導入領域の延伸方向に垂直な断面積が、前記流路板で構成される各流路の延伸方向に垂直な断面積の合計よりも大きい
請求項1に記載した平板型冷却装置。
【請求項3】
前記流路板は、前記受熱領域と前記放熱領域を結びかつ前記第1の平板の一辺に平行な直線と垂直な方向に対して傾斜して配置される
請求項1または2に記載した平板型冷却装置。
【請求項4】
前記流路壁は、前記受熱領域と前記放熱領域の間に配置され、
前記第1の平板と平行な平面による断面形状が、前記受熱領域と前記放熱領域を結びかつ前記第1の平板の一辺に平行な直線に対して傾斜して配置した傾斜壁部を有する
請求項1から3のいずれか一項に記載した平板型冷却装置。
【請求項5】
前記流路壁は、前記第1の平板と平行な平面による断面形状が、前記受熱領域と前記放熱領域を結びかつ前記第1の平板の一辺に平行な直線に対して非対称な構造を有する
請求項1から4のいずれか一項に記載した平板型冷却装置。
【請求項6】
前記平板状容器は、前記受熱領域に、凹凸構造を有する粗面領域を備える
請求項1から5のいずれか一項に記載した平板型冷却装置。
【請求項7】
前記平板状容器は、前記放熱領域に、凹凸構造を有する粗面領域を備える
請求項1から6のいずれか一項に記載した平板型冷却装置。
【請求項8】
前記受熱領域は、前記受熱領域における前記冷媒の循環を促進する複数の板状部を有する
請求項1から7のいずれか一項に記載した平板型冷却装置。
【請求項9】
前記第1の平板および前記第2の平板の少なくとも一方に配置された放熱容器をさらに有し、
前記放熱容器は、前記冷媒の流路を構成する放熱部流路と、
前記放熱部流路に前記冷媒を導入する放熱部導入領域を備える
請求項1から8のいずれか一項に記載した平板型冷却装置。
【請求項10】
請求項1から9に記載した平板型冷却装置を、
前記受熱領域と前記放熱領域を結ぶ直線軸が、鉛直方向と垂直である第1の配置状態と、
前記受熱領域と前記放熱領域を結ぶ直線軸が、鉛直方向と平行である第2の配置状態、との間で切り換えて使用する
平板型冷却装置の使用方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−69740(P2013−69740A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205518(P2011−205518)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の共同研究の成果に係る特許出願(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンネットワーク・システム技術研究開発プロジェクト(グリーンITプロジェクト)/エネルギー利用最適化データセンタ基盤技術の研究開発/最適抜熱方式の検討とシステム構成の開発/集熱沸騰冷却システムの開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】