説明

平板表示装置の電極形成方法、有機電界発光表示装置及びその製造方法

【課題】有機電界発光表示装置及び彼の製造方法を提供する。
【解決手段】基板上に電極物質を形成する工程と、電極物質をパターニングして電極パターンを形成する工程と、基板上に蒸着厚さを有する絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜をエッチングして電極パターンの一部分を露出させる工程と、絶縁膜が蒸着厚さから一定厚さほどエッチングされる条件で表面処理工程を行って電極パターンの表面特性を改善する工程と、を含む平板表示装置の電極形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板表示装置に係り、さらに具体的には、画素分離膜を形成した後、有機膜層を蒸着する前に表面処理して画素電極用ITO(Indium Tin Oxide)の特性を向上させうる有機電界発光表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、アクティブマトリックス有機電界発光表示装置(AMOLED:Active Matrix Organic Light Emitting Diode)は、基板上に複数の画素が配列され、各画素は、少なくとも一つのスイッチング薄膜トランジスタ、一つの駆動薄膜トランジスタ、キャパシタ及び有機電界発光素子(OLED:Organic Light Emitting Diode)を備える。OLEDは、画素電極の下部電極と上部電極、及び上部電極と下部電極との間に介在された有機膜層を備える。
【0003】
OLEDにおいて、画素電極の下部電極は、アノード電極であって、仕事関数が高い電極物質を使用し、上部電極は、カソード電極であって、仕事関数が低い電極物質を使用する。前記アノード電極のための電極物質としては、ITOが主に使われるが、ITO膜は、透過度、電気伝導度、反射率が高くて、アノード電極に主に使われている。
【0004】
OLEDは、仕事関数が高いアノード電極と仕事関数が相対的に低いカソード電極とに所定のバイアスを外部から印加すれば、アノード電極から正孔と、カソード電極から電子とが発光層に注入され、発光層に注入された電子及び正孔の再結合によって、所定色の光を放出する。
【0005】
有機電界発光表示装置で要求される最も重要な要素のうち一つは、発光効率及び長寿命化である。OLEDの発光層から発光される光の発光効率は、アノード電極とアノード電極上に形成される有機膜層間の界面特性に大きく依存し、発光効率は、素子の寿命に影響を及ぼす。
【0006】
このようなOLEDの発光効率を向上させるための多様な方法が試みられている。発光効率を向上させる方法のうち一つは、下部電極として使われるITO膜の仕事関数を増加させて有機発光層へのキャリア注入を増加させることである。
【0007】
このとき、ITO膜の仕事関数を増加させる方法のうち一つは、表面処理を行うことである。特許文献1には、アノード電極であるITO膜の表面をSFプラズマで処理してアノード電極と有機膜層間の界面特性を向上させた有機発光素子の製造方法が開示された。一方、特許文献2には、酸素イオンまたは電子を利用してITO膜を表面処理して、アノード電極と有機膜層間の界面特性を向上させた電荷注入型発光素子が開示された。
【0008】
従来の有機電界発光表示装置を製造する方法は、基板上に薄膜トランジスタを製造した後、前記薄膜トランジスタに連結されるOLEDを製造する。OLEDを製造する方法は、画素電極を形成する工程、画素電極の一部分を露出させる開口部を備える画素分離膜を形成する工程、有機膜層を形成する工程及び上部電極のカソード電極を形成する工程を含む。
【0009】
従来においては、基板上に画素分離膜のための絶縁膜を形成し、前記画素電極の一部分が露出されるように写真エッチング工程を通じて前記絶縁膜をエッチングして開口部を形成した後、開口部内の画素電極上に有機膜層を蒸着した。
【0010】
これにより、有機物質を含む画素分離膜のエッチング工程後、基板の表面上に有機物またはパーチクルが残留し、画素分離膜の表面に残っているパーチクルは、ガラス基板の移送中または有機膜を蒸着するためのマスクとのアラインメント動作時に開口部内の画素電極の表面に移動する。表面にパーチクルが吸着された画素電極上に有機膜を蒸着すれば、素子駆動時、画素電極の表面に付着されたパーチクルが抵抗体として作用して電流が集中する。したがって、暗点のような不良が発生し、発光効率の低下及び寿命の低下を招くという問題点があった。
【特許文献1】韓国公開特許第2001−0057125号明細書
【特許文献2】特開2000−133466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記問題点を解決するためのものであって、画素電極の一部分を露出させる開口部を備える画素分離膜を形成した後、有機膜層を蒸着する前に表面処理工程を行うことによって、有機物残渣及びパーチクルを除去して画素電極の表面特性を向上させうる有機電界発光表示装置及びその製造方法を提供するのにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、基板上に電極物質を形成する工程と、前記電極物質をパターニングして電極パターンを形成する工程と、基板上に蒸着厚さを有する絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜をエッチングして前記電極パターンの一部分を露出させる工程と、前記絶縁膜が蒸着厚さから一定厚さほどエッチングされる条件で表面処理工程を行って前記電極パターンの表面特性を改善する工程と、を含む平板表示装置の電極形成方法を提供することを特徴とする。
【0013】
前記表面処理工程は、Ar、O及びNガスのうち少なくとも一つ以上を利用するプラズマ処理工程を含む。前記表面処理工程は、絶縁膜が蒸着厚さから100ないし1000Åの範囲でエッチングされる条件で行われ、望ましくは、200ないし800Åの範囲でエッチングされる条件で行われる。
【0014】
前記表面処理工程は、O、Ar、Nガスのうち少なくとも一つ以上のガスを使用し、ガス流量は、10sccmないし600sccm、処理圧力は、5mTorrないし700mTorr、パワーは、50Wないし600WのRFパワーを使用する。
【0015】
前記電極パターンは、透明導電膜であり、絶縁膜は、有機絶縁膜である。前記絶縁膜は、平坦化膜または画素分離膜を備える。前記絶縁膜は、写真エッチング工程を通じてエッチングされる。
【0016】
また、本発明は、基板上に下部電極を形成する工程と、前記下部電極上に開口部を備え、所定の蒸着厚さを有する絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜が蒸着厚さから一定厚さほどエッチングされる条件で表面処理工程を行う工程と、前記開口部内の下部電極上に有機膜層を蒸着する工程と、を含み、基板上に上部電極を形成する工程を含む有機電界発光表示装置の製造方法の提供することを特徴とする。
【0017】
前記絶縁膜は、有機絶縁膜を蒸着した後、写真エッチング工程を通じてパターニングして開口部を形成する。
【0018】
また、本発明は、基板上に下部電極を形成する工程と、前記下部電極上に開口部を備え、所定の蒸着厚さを有する絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜が蒸着厚さから一定厚さほどエッチングされる条件で表面処理工程を行う工程と、前記開口部内の下部電極上に有機膜層を蒸着する工程と、を含み、基板上に上部電極を形成する工程を含む有機電界発光表示装置の製造方法によって製造される有機電界発光表示装置を提供することを特徴とする。
【0019】
前記有機電界発光表示装置は、前記基板上に形成され、半導体層、ゲート及びソース/ドレイン電極を備え、前記ソース/ドレイン電極のうち一つが前記下部電極に連結される薄膜トランジスタをさらに備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施形態による有機電界発光表示装置の製造方法によれば、画素電極の一部分を露出させる開口部を備える画素分離膜を形成した後、画素分離膜が一定厚さほどエッチングされる条件で表面処理工程を行うことによって、画素分離膜の形成による有機膜の残存物またはパーチクルを除去することによって後続工程で蒸着される有機膜の特性を向上させうるだけでなく、寿命を延長させうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を添付された図面を参照して説明すれば、次の通りである。
図1は、本発明の実施形態による有機電界発光表示装置の断面図を示す図面である。図1には、OLEDと、前記OLEDを駆動するための薄膜トランジスタに限定して示す図面である。
【0022】
図1を参照すれば、基板100上にバッファ層105が形成され、前記バッファ層105上に半導体層110が形成される。このとき、前記基板100は、ガラス基板、プラスチック基板または金属基板を備える。前記半導体層110は、多結晶シリコン膜を備える。
【0023】
前記半導体層110は、所定導電型の不純物、例えば、p型不純物がドーピングされたソース/ドレイン領域111,115及び、ソース領域111とドレイン領域115との間の不純物がドーピングされていないチャンネル領域117を備える。
【0024】
前記半導体層110上にゲート絶縁膜120を形成する。前記ゲート絶縁膜120は、単一膜または多層膜を備える。また、前記ゲート絶縁膜120は、窒化膜または酸化膜のような無機絶縁膜を備えるか、またはポリイミド、BCB、パリレン、PVPのような有機絶縁膜を備えても良い。
【0025】
前記ゲート絶縁膜120上にゲート125が形成される。前記ゲート125及びゲート絶縁膜120上に層間絶縁膜130が形成される。前記層間絶縁膜130は、単一膜または多層膜を備えるか、または無機絶縁膜または有機絶縁膜を備えても良い。
【0026】
前記層間絶縁膜130上に前記半導体層110のソース/ドレイン領域111,115及びコンタクトホール131,135を通じてそれぞれ連結されるソース/ドレイン電極141,145が形成される。
【0027】
前記ソース/ドレイン電極141,145及び層間絶縁膜130上に保護膜150が形成される。前記保護膜150は、前記ソース/ドレイン電極141,145のうち一つ、例えば、ドレイン電極145を露出させるビアホール155を備える。前記保護膜150は、単一層または多層膜を備える。
【0028】
前記保護膜150は、酸化膜または窒化膜のような無機絶縁膜を備えるか、またはベンゾシクロブタン(BCB:BenzoCycloButene)、アクリル系有機化合物、フルオロポリアリールエーテル(FPAE:FluoroPolyArrylEther)、サイトップ及びパーフルオロシクロブタン(PFCB:PerFluoroCycloButane)のような有機絶縁膜を備えても良い。また、前記保護膜150は、有機絶縁膜及び無機絶縁膜の積層膜を備えてもよい。
【0029】
前記保護膜150上に前記ビアホール155を通じて前記薄膜トランジスタのドレイン電極145に連結される下部電極のアノード電極160が形成される。前記アノード電極160は、本発明の実施形態による有機電界発光表示装置が前面発光構造を有するので、反射電極を備える。
【0030】
したがって、前記アノード電極160は、図2Aに示したように、AlNdのように高い反射率を有する反射膜161とITO膜のような透明導電膜165とを備える。
【0031】
本発明の実施形態では、アノード電極が反射膜161及び透明導電膜165の2層構造を有することを例示したが、これに必ずしも限定されるものではなく、前記アノード電極160は、透明導電膜からなる単一の透過電極を備え、前記アノード電極のうち少なくとも有機発光層から光が発光する発光領域に対応する部分に対応する基板上に反射膜を形成してもよい。
【0032】
前記アノード電極160及び保護膜150上に0.6μmないし1.2μmの厚さを有する画素分離膜170が形成される。前記画素分離膜170は、ポリイミド系有機膜、アクリル系有機膜またはBCBのような有機絶縁膜を備える。前記画素分離膜170は、前記アノード電極160の一部分を露出させる開口部175を備える。
【0033】
本発明の実施形態では、前記画素分離膜170は、表面蒸着時の厚さより約100ないし1000Åの範囲で薄くなった厚さを有する。
【0034】
前記開口部175内のアノード電極160上に有機膜層180を形成し、基板上に上部電極としてカソード電極190を形成する。前記カソード電極190は、透過電極を備える。前記有機膜層180は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層及び正孔抑制層から選択される少なくとも一つ以上の有機膜を備える。
【0035】
前述したような構造を有する本発明の有機電界発光表示装置を製造する方法を、図2Aないし図2Dを参照すれば、次の通りである。本発明の実施形態による有機電界発光表示装置を製造する方法は、画素電極であるアノード電極を形成する前までの工程は、通常的な有機電界発光表示装置の製造方法と同一であるので、ここでは、省略する。したがって、図2Aないし図2Dは、有機電界発光表示装置のうちOLEDの断面構造に限定して示す。
【0036】
図2Aを参照すれば、保護膜(図1の150)を備える基板100上にAlNdのような高い反射率を有する反射物質とITOのような透明導電物質とを順次に蒸着した後にパターニングして、反射膜161及び透明導電膜165からなるアノード電極160を形成する。
【0037】
図2Bを参照すれば、アノード電極160上に絶縁膜171を形成する。前記絶縁膜171は、アクリル系有機膜、ポリイミド系有機膜またはBCBのような有機絶縁膜を備える。
【0038】
図2Cを参照すれば、前記絶縁膜171を写真エッチング工程を利用してパターニングして前記アノード電極160の一部分を露出させる開口部175を形成する。
【0039】
図2Dを参照すれば、開口部175を形成した後、画素分離膜170として使われた有機物の残存物及びパーチクルを除去するために表面処理工程を行う。これにより、有機物残渣及びパーチクルが除去された画素分離膜170を形成する。
【0040】
前記表面処理工程は、プラズマを利用した表面処理工程を行い、前記絶縁膜171が一定厚さほど、例えば100ないし1000の厚さにエッチングされる条件で行われる。このとき、前記絶縁膜171が100ないし1000の厚さにエッチングされる表面処理工程条件は、次の通りである。
【0041】
使用ガスは、O、Ar、Nガスのうち少なくとも一つ以上を使用する。すなわち、Oガス、Arガス、Nガス、O/Arの混合ガス、O/Nの混合ガス、Ar/Nの混合ガス及びO/N/Arの混合ガスのうち一つを使用する。ガス流量は、10sccmないし600sccm、処理圧力は、5mTorrないし700mTorr、パワーは、50Wないし600WのRFパワーを使用する。
【0042】
したがって、本発明の実施形態による有機電界発光表示装置では、画素分離膜170に開口部175を形成した後、有機物残渣及びパーチクルを除去するための表面処理工程を行えば、最終的に形成される画素分離膜170は、蒸着厚さ(図2Dの点線表示)から100ないし1000の厚さの範囲で薄くなった厚さを有する。
【0043】
表1は、赤色(R)の表面処理工程条件による駆動電圧と発光効率との関係を表すものである。表1で、“工程条件”は、表面処理工程を行う条件を意味するものであって、“条件A”は、画素分離膜が100未満の厚さほどエッチングされる条件で表面処理工程を行うことを表し、“条件B”は、画素分離膜が100ないし1000Åの厚さの範囲でエッチングされる条件で表面処理工程を行うことを表す。このとき、“条件B”は、望ましくは、800Åの厚さほどエッチングされる条件で表面処理工程を行う。
【0044】
【表1】

【0045】
表1から輝度800Cd/cmを得るために、画素分離膜170が蒸着厚さから100Åの未満の厚さほどエッチングされた場合には、6.1Vの駆動電圧が必要であり、発光効率が4.15Cd/Aである。一方、画素分離膜170が蒸着厚さから100ないし1000Åの範囲でエッチングされる場合には、5.5Vの駆動電圧が必要であり、発光効率が4.90Cd/Aであるということが分かる。
【0046】
これから、本発明のように、画素分離膜170を蒸着厚さから100ないし1000Åの範囲でエッチングされる条件である“条件B”でプラズマ表面処理工程を行う場合に、画素分離膜として使われた有機物残存物及びパーチクルが除去されてアノード電極の表面特性が改善され、これにより、赤色(R)の発光効率が向上することが分かる。
【0047】
表2は、赤色(R)の表面処理工程条件による輝度と発光効率との関係を表すものである。表2で、“工程条件”は、表面処理工程を行う条件を意味するものであって、“条件A”は、画素分離膜が100Å未満の厚さほどエッチングされる条件で表面処理工程を行うことを表し、“条件B”は、画素分離膜が100ないし1000Åの範囲でエッチングされる条件で表面処理工程を行うことを表す。このとき、“条件B”は、望ましくは、800Åほどエッチングされる条件で表面処理工程を行う。
【0048】
【表2】

【0049】
表2から同じ5.5Vの駆動電圧で、画素分離膜170が蒸着厚さから100Åの未満の厚さほどエッチングされた場合には、輝度が472Cd/mであり、発光効率が4.22Cd/Aである。一方、画素分離膜170が蒸着厚さから100ないし1000Åの範囲でエッチングされる場合には、輝度が765Cd/mであり、発光効率が4.90Cd/Aであるということが分かる。
【0050】
これにから本発明と同じように、画素分離膜170を蒸着厚さから100ないし1000Åの範囲でエッチングされる条件の“条件B”でプラズマ表面処理工程を行う場合に、パーチクルが除去されてアノード電極の表面特性が改善され、これにより、同一電圧で赤色(R)の輝度及び発光効率が増大することが分かる。
【0051】
図3Aは、赤色(R)に対する表面処理工程条件による駆動電圧と輝度との関係を示す図面である。図3Aから、画素分離膜が100未満にエッチングされる条件(条件A)でプラズマ表面処理工程を行う場合と、100ないし1000Åの範囲でエッチングされる条件(条件B)でプラズマ表面処理工程を行う場合とを比較すれば、同じ駆動電圧の印加時、“条件B”で表面処理工程を行った場合に、赤色(R)の輝度特性が優秀であるということが分かる。
【0052】
また、図3Bは、赤色(R)に対する表面処理工程条件による発光効率と輝度との関係を示す図面である。図3Bから、画素分離膜が100Å未満の厚さほどエッチングされる条件(条件A)でプラズマ表面処理工程を行う場合と、100ないし1000Åの範囲でエッチングされる条件(条件B)でプラズマ表面処理工程を行う場合とを比較すれば、同じ輝度で“条件B”で表面処理工程を行った場合に、赤色(R)の発光効率が優秀であるということが分かる。
【0053】
表3は、緑色(G)に対する表面処理工程条件による駆動電圧と発光効率との関係を表すものである。表3で、“工程条件”は、表面処理工程を行う条件を意味するものであって、“条件A”は、画素分離膜が100Å未満の厚さほどエッチングされる条件で表面処理工程を行うものを表し、“条件B”は、画素分離膜が100ないし1000Åの範囲でエッチングされる条件で表面処理工程を行うことを表す。このとき、“条件B”は、望ましくは、800Åほどエッチングされる条件で表面処理工程を行う。
【0054】
【表3】

【0055】
表3から輝度800Cd/cmを得るために画素分離膜170が蒸着厚さから100Åの未満の厚さほどエッチングされた場合には、5.4Vの駆動電圧が必要であり、発光効率が33.13Cd/Aである。一方、画素分離膜170が蒸着厚さから100ないし1000Åの範囲でエッチングされる場合には、5.2Vの駆動電圧が必要であり、緑色(G)の発光効率が35.17Cd/Aであるということが分かる。
【0056】
これから、本発明のように、画素分離膜170を蒸着厚さから100ないし1000Åの範囲でエッチングされる条件である“条件B”でプラズマ表面処理工程を行う場合に、画素分離膜として使われる有機物の残存物及びパーチクルが除去されてアノード電極の表面特性が改善され、これにより、発光効率が向上することが分かる。
【0057】
表4は、緑色(G)に対する表面処理工程条件による輝度と発光効率との関係を表すものである。表4で、“工程条件”は、表面処理工程を行う条件を意味するものであって、“条件A”は、画素分離膜が100Å未満の厚さほどエッチングされる条件で表面処理工程を行うものを表し、“条件B”は、画素分離膜が100ないし1000Åの範囲でエッチングされる条件で表面処理工程を行うことを表す。このとき、“条件B”は、望ましくは、800Åほどエッチングされる条件で表面処理工程を行う。
【0058】
【表4】

【0059】
表4から同じ5.5Vの駆動電圧で、画素分離膜170が蒸着厚さから100Åの未満の厚さほどエッチングされた場合には、輝度が875.9Cd/mであり、発光効率が33.11Cd/Aである。一方、画素分離膜170が蒸着厚さから100ないし1000Åの範囲でエッチングされる場合には、輝度が1132Cd/mであり、発光効率が35.10Cd/Aであるということが分かる。
【0060】
これから、本発明のように、画素分離膜170を蒸着厚さから100ないし1000Åの範囲でエッチングされる条件である“条件B”でプラズマ表面処理工程を行う場合に、画素分離膜を構成する有機物の残存物及びパーチクルが除去されてアノード電極の表面特性が改善され、これにより、同一電圧で緑色(G)の輝度及び発光効率が向上するということが分かる。
【0061】
図4Aは、緑色(G)に対する表面処理工程条件による駆動電圧と輝度との関係を示す図面である。図4Aから、画素分離膜が100Å未満の厚さほどエッチングされる条件(条件A)でプラズマ表面処理工程を行う場合と、100ないし1000Åの範囲でエッチングされる条件(条件B)でプラズマ表面処理工程を行う場合とを比較すれば、同じ駆動電圧の印加時、“条件B”で表面処理工程を行った場合に、緑色(G)の輝度特性が優秀であるということが分かる。
【0062】
また、図4Bは、緑色(G)に対する表面処理工程条件による駆動電圧と輝度との関係を示す図面である。図4Bから、画素分離膜が100Å未満の厚さほどエッチングされる条件(条件A)でプラズマ表面処理工程を行う場合と、100ないし1000Å未満にエッチングされる条件(条件B)でプラズマ表面処理工程を行う場合とを比較すれば、同じ輝度で“条件B”で表面処理工程を行った場合に、緑色(G)の発光効率が優秀であるということが分かる。
【0063】
このとき、前記表1ないし表4から表面処理工程に関係なく、赤色(R)及び緑色(G)の色座標は、ほぼ一定であるということが分かる。
表5は、表面処理工程条件による仕事関数を表すものである。表5で、“工程条件”は、表面処理工程を行う条件を意味するものであって、“条件A”は、画素分離膜が100Å未満の厚さほどエッチングされる条件で表面処理工程を行うことを表し、“条件B”は、画素分離膜が100ないし1000Åの範囲でエッチングされる条件で表面処理工程を行うことを表す。このとき、条件Bは、望ましくは、200ないし800Åの範囲でエッチングされる条件で表面処理工程を行う。また、“条件C”は、画素分離膜が1000Åより厚くエッチングされる条件で表面処理工程を行うことを表す。
【0064】
【表5】

【0065】
表5における、画素分離膜として使われる有機物の残存物及びパーチクルを除去するための表面処理工程時、画素分離膜が100Åより薄くエッチングされる条件(条件A)と1000Åより厚くエッチングされる条件(条件C)とで表面処理工程が進められる場合及び100ないし1000Åの範囲でエッチングされる条件(条件B)での仕事関数を比較すれば、次の通りである。
【0066】
表面処理工程時、画素分離膜を100Åより薄くエッチングする場合に比べて、画素分離膜を100ないし1000Åにエッチングする場合に、仕事関数が増加するということが分かる。また、画素分離膜を1000Åより厚くエッチングする場合には、かえって仕事関数が減少するということが分かる。
【0067】
表6は、表面処理工程条件による不良率を表すものである。表6で、“工程条件”は、表面処理工程を行う条件を意味するものであって、“条件A”は、画素分離膜が100Å未満の厚さほどエッチングされる条件で表面処理工程を行うことを表し、“条件B”は、画素分離膜が100ないし1000Åの範囲でエッチングされる条件で表面処理工程を行うことを表す。このとき、条件Bは、望ましくは、200ないし800Åの範囲でエッチングされる条件で表面処理工程を行う。また、“条件C”は、画素分離膜が1000Åより厚くエッチングされる条件で表面処理工程を行うことを表す。
【0068】
【表6】

【0069】
表6からパーチクルを除去するための表面処理工程時、画素分離膜が100Åより薄くエッチングされる条件(条件A)と1000Åより厚くエッチングされる条件(条件C)とで表面処理工程が進められる場合、及び100ないし1000Åの範囲にエッチングされる条件(条件B)での不良発生数を比較すれば、次の通りである。
【0070】
表面処理工程時、画素分離膜を100Åより薄くエッチングする場合と画素分離膜を100ないし1000Åの厚さにエッチングする場合とでは10より小さいということが分かる。しかし、画素分離膜を1000Åより厚くエッチングする場合には、不良発生数が50より大きくて不良発生率が大きく上昇するということが分かる。このとき、不良発生数に対するテストは、2.2インチのデバイスガラス基板(370mm×400mm)を基準としたことである。
【0071】
前記表1ないし表6、図3A及び図3B、そして図4A及び図4Bを参照すれば、パーチクルを除去するためのプラズマ表面処理工程を行うとき、画素分離膜が蒸着厚さから100ないし1000Åの範囲でエッチングされる条件、望ましくは、200ないし800Åの範囲でエッチングされる条件で表面処理工程を行えば、アノード電極の表面特性を改善して輝度及び発光効率を向上させうるということが分かる。また、アノード電極の仕事関数を増加させ、不良発生率を減少させうるということが分かる。
【0072】
本発明の実施形態では、有機電界発光素子を駆動するための薄膜トランジスタとして、前記半導体層110として多結晶シリコン膜を含むポリシリコン薄膜トランジスタを例示したが、これに必ずしも限定されるものではなく、半導体層が非晶質シリコンからなる非晶質シリコン薄膜トランジスタまたは半導体層がペンタセン、テトラセン、アントラセン、ナフタレン、α−6−チオフェン、ペリレンのような有機半導体物質からなる有機薄膜トランジスタを備えてもよい。
【0073】
本発明の実施形態は、基板上に薄膜トランジスタが形成され、薄膜トランジスタを含む基板上に保護膜が形成され、保護膜上にビアホールを通じて薄膜トランジスタに画素電極が連結される有機電界発光表示装置において、前記画素電極の一部分を露出させる開口部を備える画素分離膜を形成した後、画素分離膜が一定厚さほどエッチングされる条件で表面処理工程を行う方法について説明したが、これに必ずしも限定されるものではなく、多様な断面構造を有する有機電界発光表示装置において、画素電極の一部分を露出させる開口部を備える画素分離膜を形成した後、画素分離膜が一定厚さほどエッチングされる条件で表面処理工程を行う方法には、何れも適用可能である。
【0074】
本発明の実施形態では、画素電極の一部分を露出させる画素分離膜を形成した後、前処理工程を行うことを例示したが、これに必ずしも限定されるものではなく、画素電極の一部分を露出させる開口部が有機絶縁膜からなる平坦化膜または有機絶縁膜からなる保護膜に形成される有機電界発光表示装置の製造方法にも適用可能である。
【0075】
また、本発明の実施形態は、前面発光構造を有する有機電界発光表示装置において、画素電極の一部分を露出させる開口部を備えた画素分離膜を形成した後、有機膜を蒸着する前に前処理工程を実施することを例示したが、これに必ずしも限定されるものではなく、背面発光構造を有する有機電界発光表示装置または両面発光型の有機電界発光表示装置において、画素電極の一部分を露出させる開口部を備える絶縁膜として有機絶縁膜を使用する場合にも適用可能である。
【0076】
以上、本発明の望ましい実施形態を参照して説明したが、当業者は、特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更させうるということが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、有機電界発光表示装置だけでなく、液晶表示素子(LCD)のような平板表示装置関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施形態による有機電界発光表示装置の断面図である。
【図2A】本発明の実施形態による有機電界発光表示装置において、画素電極用ITO膜を表面処理する方法を説明するための工程断面図である。
【図2B】本発明の実施形態による有機電界発光表示装置において、画素電極用ITO膜を表面処理する方法を説明するための工程断面図である。
【図2C】本発明の実施形態による有機電界発光表示装置において、画素電極用ITO膜を表面処理する方法を説明するための工程断面図である。
【図2D】本発明の実施形態による有機電界発光表示装置において、画素電極用ITO膜を表面処理する方法を説明するための工程断面図である。
【図3A】本発明の実施形態による有機電界発光表示装置において、表面処理工程条件による赤色の電圧−輝度特性を示す図面である。
【図3B】本発明の実施形態による有機電界発光表示装置において、表面処理工程条件による赤色の輝度−効率特性を示す図面である。
【図4A】本発明の実施形態による有機電界発光表示装置において、表面処理工程条件による緑色の電圧−輝度特性を示す図面である。
【図4B】本発明の実施形態による有機電界発光表示装置において、表面処理工程条件による緑色の輝度−効率特性を示す図面である。
【符号の説明】
【0079】
100 基板
105 バッファ層
110 半導体層
111 ソース領域
115 ドレイン領域
117 チャンネル領域
120 ゲート絶縁膜
125 ゲート
130 層間絶縁膜
131,135 コンタクトホール
141 ソース電極
145 ドレイン電極
150 保護膜
155 ビアホール
160 アノード電極
170 画素分離膜
175 開口部
180 有機膜層
190 カソード電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に電極物質を形成する工程と、
前記電極物質をパターニングして電極パターンを形成する工程と、
基板上に蒸着厚さを有する絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜をエッチングして前記電極パターンの一部分を露出させる工程と、
前記絶縁膜が蒸着厚さから一定厚さほどエッチングされる条件で表面処理工程を行って前記電極パターンの表面特性を改善する工程と、を含むことを特徴とする平板表示装置の電極形成方法。
【請求項2】
前記表面処理工程は、Ar、O及びNガスのうち少なくとも一つ以上を利用するプラズマ処理工程であることを特徴とする請求項1に記載の平板表示装置の電極形成方法。
【請求項3】
前記表面処理工程は、絶縁膜が蒸着厚さから100ないし1000Åの範囲でエッチングされる条件で行われることを特徴とする請求項1に記載の平板表示装置の電極形成方法。
【請求項4】
前記表面処理工程は、絶縁膜が蒸着厚さから200ないし800Åの範囲でエッチングされる条件で行われることを特徴とする請求項3に記載の平板表示装置の電極形成方法。
【請求項5】
前記表面処理工程は、O、Ar、Nガスのうち少なくとも一つ以上のガスを使用し、ガス流量は、10sccmないし600sccm、処理圧力は、5mTorrないし700mTorr、パワーは、50Wないし600WのRFパワーを使用することを特徴とする請求項3に記載の平板表示装置の電極形成方法。
【請求項6】
前記電極パターンは、ITOを含む透明導電膜であり、絶縁膜は、有機絶縁膜であることを特徴とする請求項1に記載の平板表示装置の電極形成方法。
【請求項7】
前記絶縁膜は、平坦化膜または画素分離膜を備えることを特徴とする請求項6に記載の平板表示装置の電極形成方法。
【請求項8】
前記絶縁膜は、写真エッチング工程を通じてエッチングされることを特徴とする請求項7に記載の平板表示装置の電極形成方法。
【請求項9】
基板上に下部電極を形成する工程と、
前記下部電極上に開口部を備え、所定の蒸着厚さを有する絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜が蒸着厚さから一定厚さでエッチングされる条件で表面処理工程を行う工程と、
前記開口部内の下部電極上に有機膜層を蒸着する工程と、を含み、
基板上に上部電極を形成する工程を含むことを特徴とする有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記表面処理工程は、Ar、O及びNガスのうち少なくとも一つ以上を利用するプラズマ処理工程であることを特徴とする請求項9に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記表面処理工程は、絶縁膜が蒸着厚さから100ないし1000Åの範囲でエッチングされる条件で行われることを特徴とする請求項9に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記表面処理工程は、絶縁膜が蒸着厚さから200ないし800Åの範囲でエッチングされる条件で行われることを特徴とする請求項11に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記表面処理工程は、O、Ar、Nガスのうち少なくとも一つ以上のガスを使用し、ガス流量は、10sccmないし600sccm、処理圧力は、5mTorrないし700mTorr、パワーは、50Wないし600WのRFパワーを使用することを特徴とする請求項12に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記下部電極は、ITO膜を含む透明導電膜であり、絶縁膜は、有機絶縁膜であることを特徴とする請求項9に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記絶縁膜は、平坦化膜または画素分離膜を備えることを特徴とする請求項14に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記絶縁膜は、有機絶縁膜を蒸着した後、写真エッチング工程を通じてパターニングして開口部を形成することを特徴とする請求項15に記載の有機電界発光表示装置の製造方法。
【請求項17】
請求項9に記載の製造方法によって製造されることを特徴とする有機電界発光表示装置。
【請求項18】
前記基板上に形成され、半導体層、ゲート及びソース/ドレイン電極を備え、前記ソース/ドレイン電極のうち一つが前記下部電極に連結される薄膜トランジスタをさらに備えることを特徴とする請求項17に記載の有機電界発光表示装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2006−216539(P2006−216539A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10249(P2006−10249)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】