説明

平版印刷版の単一工程処理後の乾燥方法及び装置

画像形成された平版印刷版の製造方法及び装置であって、単一工程処理及び版の少なくとも印刷面から乾燥することを含み、乾燥工程が、処理された版を圧搾した直後に行われる方法及び装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版の単一工程処理後の乾燥方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷の技術分野は、油と水の不混和性に基づいており、油性材料又は印刷インクは、画像領域により受容されることが好ましく、水又は湿し水は、非画像領域により受容されることが好ましい。適切に製造された表面が水で加湿され、印刷インクが塗布される場合、背景又は非画像領域は、水を受容し、印刷インクを弾き、一方、画像領域は、印刷インクを受容し、水を弾く。次いで、画像領域内の印刷インクは、紙、布等の材料の表面に移され、それらの上で画像が形成されることになる。しかしながら、一般的に、印刷インクは、ブランケットと呼ばれる中間材料に先ず移され、次いで、ブランケットは、その上で画像が形成されることになる材料の表面上に印刷インクを移し、この技法は、オフセットリソグラフィーと呼ばれる。
【0003】
頻繁に使用されるタイプの平版印刷版原版は、アルミニウムベースの基板上に塗布される感光性コーティングを含む。コーティングは、露光部分が、現像方法中に除去されるほど可溶になるように放射に反応することができる。そのような版は、ポジ型と呼ばれる。他方、版は、コーティングの露光部分が、放射により硬化される場合、ネガ型と呼ばれる。両方の場合に、残りの画像領域は、印刷インクを受容し、すなわち、親油性であり、非画像領域(背景)は、水を受容し、すなわち、親水性である。画像領域と非画像領域の間の区別化は、露光中に起こり、そのために、フィルムは、良好な接触を保証するために真空下で印刷版原版に取り付けられる。次いで、版は、一部がUV放射からなる放射源によって露光される。ポジ型版が使用される場合、版上の画像に対応するフィルム上の領域は、光が版に達しないほど不透明であり、一方、非画像領域に対応するフィルム上の領域は、透明であり、光がコーティングを通過するのを可能にし、コーティングの溶解性は増加する。ネガ型版の場合、正反対のことが起こり、版上の画像に対応するフィルム上の領域は、透明であり、一方、非画像領域は、不透明である。透明なフィルム領域の下のコーティングは、入射光によって硬化され、一方、光により影響されない領域は、現像中に除去される。したがって、ネガ型版の光硬化された表面は、親油性であり、印刷インクを受容し、一方、現像剤により除去されるコーティングでコーティングされていた非画像領域は、減感され、したがって、親水性である。
【0004】
代替方法として、版は、フィルムなしでデジタル画像様露光することもできる。1990年代後半以来、熱感応性層を持つ原版が開発され、画像様直接加熱又は熱に変換されるIR放射による照射により、コーティングの加熱領域と非加熱領域の現像剤溶解性の差が生み出され、そのような版は、「IR版」又は「感熱版」と呼ばれることが多い。最近の開発によれば、UVレーザー(2光子励起システムを包含する)により発光される近UV放射又はVIS放射に対してそれらを画像様露光することにより画像形成することができる原版が開発されている。
【0005】
クリーンな印刷画像のために、-使用される原版のタイプとは無関係に-画像領域(すなわち、画像様に残っているコーティング)は、印刷インクを良く受容し、一方、非画像領域(すなわち、例えば、アルミニウム基板等の画像様に露出された基板)は、印刷インクを受容するべきでないことが必要である。印刷版が、プレス上に装着されるか、しばらくの間保存される場合に、指紋、酸化アルミニウムの形成、腐食及び引掻き傷等の機械的な攻撃からアルミニウム基板等の画像様に露出された基板を保護するため、すなわち、非画像領域の親水性を維持し、場合によっては改善するために、現像された印刷版は、通常、「ガミング」処理(「減感」又は「仕上げ」とも呼ばれる)を受ける。版を保存するのに先立って、又は印刷機の長い静止期間前に版をガミングすることは、非画像領域が親水性を保つことを保証する。印刷が開始される場合、ガミング溶液は、画像領域がインクを直ちに受容することができるように、湿し水で素早く版から洗い落とすことができなければならない。ガミング溶液は、以前から知られている。最初のガミング溶液は、アラビアゴムをベースとしており、現在でも、アラビアゴムは、広く使用されている。何年も前に、アラビアゴムが限りある資源であることからポリマーゴム代用品を見いだす試みが行われた。ポリマー溶液は、一部のタイプの版で目詰まり問題を引き起こすことがあることから、減感組成物からポリマーを除去し、リン酸塩のような特定の塩と、任意選択で、界面活性剤の溶液とする試みが行われた。他の試みにおいて、糖及びデキストリンタイプの材料が、リン酸塩に取って代わることが多かった。
【0006】
ガミング組成物は、例えば、独国特許出願公開第29 26 645 A1号、独国特許出願公開第20 42 217 A1号、米国特許第4,880,555 A1号、米国特許第4,033,919 A号に記載されている。
【0007】
エマルジョンの形態の仕上げ剤は、米国特許第4,162,920 A1号に記載されている。
【0008】
さらなる仕上げ剤は、欧州特許出願公開第0 397 407 A2号及び欧州特許出願公開第0 024 298 A2号に記載されている。
【0009】
独国特許出願公開第25 30 502 A1号は、ネガ型印刷版を同時に現像及びガミングするための方法、装置及び液体を開示しており、液体は、水ベースと言われており、少量の有機溶剤並びに水溶性コロイドを含有し、3と11の間のpHを有する。
【0010】
欧州特許出願公開第1 868 036 A1号は、オーバーコートでフォトポリマー印刷版を処理するための方法を扱っている。水性アルカリ処理液体は、水、少なくとも1つの界面活性剤、少なくとも1つの水溶性フィルム形成親水性ポリマー及び9.5〜14の値にpHを調整するための少なくとも1つのアルカリ試薬を含み、前記処理液体の使用により、オーバーコートの除去、現像及びガミングは、1つの単一処理工程で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許出願公開第29 26 645 A1号
【特許文献2】独国特許出願公開第20 42 217 A1号
【特許文献3】米国特許第4,880,555 A1号
【特許文献4】米国特許第4,033,919 A号
【特許文献5】米国特許第4,162,920 A1号
【特許文献6】欧州特許出願公開第0 397 407 A2号
【特許文献7】欧州特許出願公開第0 024 298 A2号
【特許文献8】独国特許出願公開第25 30 502 A1号
【特許文献9】欧州特許出願公開第1 868 036 A1号
【特許文献10】米国特許第5,713,287号
【特許文献11】欧州特許第0 752 430 Bl号
【特許文献12】独国特許第103 07 451号
【特許文献13】欧州特許第0 684 522 Bl号
【特許文献14】独国特許出願公開第199 06 823 A1号
【特許文献15】欧州特許出願公開第0 770 497 A1号
【特許文献16】欧州特許出願公開第0 514 145 A1号
【特許文献17】欧州特許出願公開第1 342 568 A1号
【特許文献18】国際公開第2004/049068 A1号
【特許文献19】国際公開第2004/074929 A2号
【特許文献20】国際公開第2004/074930 A2号
【特許文献21】国際公開第2004/11 1731 A1号
【特許文献22】国際公開第2006/053689号
【特許文献23】独国特許第10 2004 022 137 B3号
【特許文献24】国際公開第2007/090550号
【特許文献25】国際公開第03/069411 A1号
【特許文献26】米国特許第6,326,122号
【特許文献27】米国特許第4,327,169号
【特許文献28】米国特許第4,756,993号
【特許文献29】米国特許第5,156,938号
【特許文献30】国際公開第00/29214号
【特許文献31】米国特許第6,410,207号
【特許文献32】欧州特許出願公開第1 176 007 A1号
【特許文献33】米国特許第A-5,629,354号
【特許文献34】欧州特許出願公開第A1-1 035 435号
【特許文献35】米国特許第A-3,445,232号
【特許文献36】国際公開第2004/041544号
【特許文献37】国際公開第2000/48836号
【特許文献38】独国特許第10 2004 003143号
【特許文献39】独国特許第4 31 1 738 C1号
【特許文献40】独国特許出願公開第3 332 640 A1号
【特許文献41】国際公開第2005/054952号
【特許文献42】欧州特許出願公開第1 176 007 A2号
【特許文献43】独国特許第199 36 331号
【特許文献44】国際公開第2004/014652 A1号
【特許文献45】国際公開第89/06659 A1号
【特許文献46】独国特許出願公開第29 03 270 A1号
【特許文献47】国際公開第95/12147号
【特許文献48】欧州特許第410 242号
【特許文献49】米国特許第4,035,321号
【特許文献50】欧州特許出願公開第A-0 104 863号
【特許文献51】欧州特許第0 625 728 B1号
【特許文献52】欧州特許第0 938 413 B1号
【特許文献53】米国特許第5,965,319号
【特許文献54】米国特許第5,919,601号
【特許文献55】国際公開第00/17711 A1号
【特許文献56】独国特許第699 20 664 T2号
【特許文献57】独国特許第693 12 160 T2号
【特許文献58】国際公開第99/02589号
【特許文献59】米国特許出願公開第2001/0044477 A1号
【特許文献60】欧州特許第0 569 234 B1号
【特許文献61】米国特許出願公開第2005/0079352 A1号
【特許文献62】欧州特許第1 054 034 B1号
【特許文献63】欧州特許出願公開第1 101 607 A1号
【特許文献64】米国特許第6,391,524 B2号
【特許文献65】国際公開第2005/018934号
【特許文献66】米国特許第5,731,127 B号
【特許文献67】米国特許第5,141,838 B号
【特許文献68】欧州特許出願公開第0 544 264 A1号
【特許文献69】欧州特許出願公開第0 737 896 A2号
【特許文献70】米国特許第4,594,306号
【特許文献71】欧州特許第825 927 B1号
【特許文献72】国際公開第98/42507号
【特許文献73】欧州特許出願公開第A 0 823 327号
【特許文献74】国際公開第99/01795号
【特許文献75】国際公開第99/01796号
【特許文献76】国際公開第97/39894号
【特許文献77】米国特許第6,320,018 B号
【特許文献78】米国特許出願公開第2002/0,150,833 A1号
【特許文献79】米国特許第6,537,735号
【特許文献80】米国特許第7,186,482号
【特許文献81】米国特許第6,475,692号
【特許文献82】米国特許第7,144,661号
【特許文献83】米国特許出願公開第2007/0269727号
【特許文献84】米国特許第7,223,506号
【特許文献85】米国特許出願公開第2006/0257764号
【特許文献86】米国特許出願公開第2007/0172747号
【特許文献87】米国特許第6,294,311号
【特許文献88】米国特許第6,528,228号
【特許文献89】米国特許第6,352,812号
【特許文献90】米国特許第6,352,811号
【特許文献91】米国特許第6,358,669号
【特許文献92】国際公開第02/14071号
【特許文献93】米国特許第7,241,556号
【特許文献94】米国特許第5,554,719号
【特許文献95】米国特許第6,551,738号
【特許文献96】米国特許出願公開第2003/0050191号
【特許文献97】米国特許出願公開第2005/0051053号
【特許文献98】米国特許仮出願第11/474,020号
【特許文献99】欧州特許出願公開第1,669,803A号
【特許文献100】米国特許第6,218,083号
【特許文献101】米国特許第5,705,308号
【特許文献102】米国特許第5,705,322号
【特許文献103】国際公開第2005/039878号
【特許文献104】独国特許第10 239 505号
【特許文献105】国際公開第2004081662号
【特許文献106】米国特許第7,163,770号
【特許文献107】米国特許第7,160,653号
【特許文献108】国際公開第99/06890号
【特許文献109】米国特許第3,458,311号
【特許文献110】米国特許第4,072,527号
【特許文献111】米国特許第4,072,528号
【特許文献112】欧州特許出願公開第275 147 A1号
【特許文献113】欧州特許出願公開第403 096 A1号
【特許文献114】欧州特許出願公開第354 475 A1号
【特許文献115】欧州特許出願公開第465 034 A1号
【特許文献116】欧州特許出願公開第352 630 A1号
【特許文献117】国際公開第02/101469号
【特許文献118】欧州特許出願公開第2 028 548 A1号
【特許文献119】米国特許第6,383,717 B1号
【特許文献120】米国特許第6,482,578 B2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、少数の処理工程で画像形成された平版印刷版の製造を可能にし、同時に、解像度を改善し、リニアポイント露光とクリアポイント露光の間のウィンドウを拡大する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、驚くべきことに、
(a)放射感応性コーティングを含む画像様露光された平版印刷版原版を、親水性フィルム形成ポリマーを含む水性現像剤で処理する工程、
(b)過剰の現像剤を除去するために工程(a)の現像された版を圧搾する工程、
(c)工程(b)の圧搾された版を直ちに
(i)空気温度及び/又は空気流が、可変又は調整可能であり、版温度が、60℃以下である空気送風、
(ii)ローラーの温度が、可変又は調整可能であり、少なくとも30℃であるホットローラー、
(iii)放射源と版表面の間の距離及び/又は放射源により放出されるエネルギーが、可変又は調整可能である放射源、
(iv)少なくとも150℃の温度におけるクイックベーキング
のうちの少なくとも1つで、版の少なくとも印刷面から乾燥する工程
を含む画像形成された平版印刷版の製造方法により達成される。
【0014】
本発明において使用されるような「印刷版原版」という用語は、印刷版が、画像様露光及び現像により製造される、非画像形成版(すなわち、画像様露光も現像もされていない)に関する。本発明において使用されるような「印刷版」(「印刷体」とも呼ばれる)という用語は、印刷版原版から製造されるすでに画像形成された(印刷)版を指す。
【0015】
本発明内で、「ガミング組成物」、「仕上げ剤組成物」及び「減感剤組成物」は、互換的に使用される。
【0016】
本発明内で、「あるコーティング」又は「1つのコーティング」という表現は、コーティングの構造を指定するものではなく、単一層コーティング並びに多層コーティング、例えば、二層コーティングを包含する。
【0017】
本明細書の原文内で、冠詞「ある(a)」、「ある(an)」及び「その(the)」の使用は、必ずしも単一化合物のみを指すことを意味しない。
【0018】
本発明において使用されるような「現像すること」という用語は、水性アルカリ現像剤溶液による放射への露光後の放射感応性原版コーティングの非画像領域の除去に関する。
【0019】
「1工程処理」、「単一工程処理」又は「ツーインワン(2 in 1)処理」は、現像及びガミングが、適当な液体組成物を使用することにより単一工程で行われる方法を指す。
【0020】
原則として、いずれの利用可能な「ツーインワン処理組成物」(ツーインワン現像剤)も、本発明の方法において使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
下に記載されているいずれの実施形態、好ましい範囲等も、下に記載されている1つ又は複数の他の実施形態、好ましい範囲等と組み合わせることができる。すべてのそのような可能な組合せは、たとえ、それらが明確に述べられていなくても、本開示の範囲内にあると見なされる。
【0022】
基本的に、1工程処理により得られたすべてのタイプの平版印刷版を、本発明による方法において使用することができる。ポジ型原版から製造される印刷版とネガ型原版から製造される印刷版を共に使用することができ、UV/VIS放射で画像形成される印刷版及びIR放射又は直接熱で画像形成される印刷版を使用することができる。下記において、一部のタイプの原版がより詳細に説明されるが、これらのタイプに本発明を限定することは意図されていない。
【0023】
原版
印刷版原版は、ネガ型原版並びにポジ型原版であってよく、一実施形態によれば、原版は、UV/VIS放射に感応性であり、別の実施形態によれば、原版は、IR放射又は直接熱印加に感応性である。いずれのタイプの原版も、特に、下記に記載されている適当な原版の例は、下に記載されている乾燥工程のいずれの実施形態とも組み合わせることができる。本発明の一実施形態によれば、原版は、IR放射に感応性であり、そのコーティングは、多層コーティング(好ましくは、2層コーティング)であり、この実施形態内で、原版は、ポジ型であることが好ましい。
【0024】
適当な原版のそれ以上の詳細は、下記に記載されている:
【0025】
基板
原版のために使用される基板は、印刷物のための基板としてすでに使用されてきたもののような寸法的に安定なプレート状又はフォイル状材料であることが好ましい。そのような基板の例は、紙、プラスチック材料(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)でコーティングされた紙、例えば、アルミニウム(アルミニウム合金を包含する)、亜鉛及び銅プレート等の金属のプレート又はフォイル、例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、テレフタル酸ポリエチレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリ酢酸ビニルから作られたプラスチックフィルム、並びに紙又はプラスチックフィルム及び上述の金属のうちの1つから作られたラミネート加工された材料、又は蒸着により金属化された紙/プラスチックフィルムを包含する。これらの基板の中で、アルミニウムのプレート又はフォイルは、顕著な寸法安定度を示し、安価であり、更に、放射感応性コーティングに対する優れた接着を示すことから特に好ましい。更に、アルミニウムフォイルが、例えば、テレフタル酸ポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルム、若しくは紙の上にラミネート加工された複合フィルム、又はアルミニウムが蒸着によって塗布されているプラスチックフィルムを使用することができる。好ましい基板は、金属基板であり、本明細書において使用されるような「金属基板」という用語は、最上層が、金属の層又はフォイルである複合フィルムも包含する。
【0026】
金属基板、特に、アルミニウム基板は、表面処理、例えば、乾燥状態でのブラッシング若しくは研磨懸濁液によるブラッシング、又は、例えば、塩酸電解質又はHNO3による電気化学的粗面化による粗面化と、任意選択で、例えば、硫酸又はリン酸中での陽極酸化を受けることが好ましい。好ましい実施形態によれば、金属基板は、Al2O3層、ZnO層、SiO2層又はTiO2層を含み、層は、これに関して、必ずしも基板の全表面にわたって全体的に連続した層を意味しない。
【0027】
好ましくは、0.1〜0.7mm、より好ましくは、0.15〜0.5mmの厚さを有するアルミニウムフォイルは、特に好ましい基板である。フォイルは、粗面化(好ましくは、電気化学的に)され、次いで、0.2〜1μm、特に好ましくは、0.3〜0.8μmの平均粗度を示すことが好ましい。
【0028】
基板は、その上に画像形成性コーティングを有する円筒状表面であり、したがって、印刷プレスの不可欠な部分であってよい。そのような画像形成円筒の使用は、例えば、米国特許第5,713,287号に記載されている。
【0029】
特に好ましい実施形態によれば、粗面化されたアルミニウムフォイルは、更に陽極酸化された。得られた酸化アルミニウムの層重量は、好ましくは、1.5〜5g/m2、特に好ましくは、2〜4g/m2である。
【0030】
金属基板は、加えて、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩、フッ化カルシウムジルコニウム、ヘキサフルオロケイ酸、リン酸塩/フッ化物、ポリビニルホスホン酸、ビニルホスホン酸コポリマー、又はホスホン酸の水溶液による後処理(いわゆる「シーリング」)を受けることができ、それによってその表面上に親水性化層(「中間層」とも呼ばれる)を提供し、基板は、無機フッ化物を更に含有することがあるリン酸塩溶液で処理されることもある。
【0031】
基板の背面(非画像形成側)を、帯電防止剤及び/又は滑性層若しくはつや消し層でコーティングし、画像形成性要素の取り扱い及び「感触」を改善することができる。
【0032】
上述の基板処理の詳細は、当業者に良く知られている。
【0033】
ネガ型放射感応性要素
ネガ型コーティングは、多数の参考文献に記載されており、例えば、ネガ型ジアゾ樹脂をベースとするUV感応性コーティングが、例えば、欧州特許第0 752 430 B1号に記載されており、405nmに対して感応性のフォトポリマー層が、例えば、独国特許第103 07 451号に記載されており、VISに対して感応性のフォトポリマー層が、例えば、欧州特許第0 684 522 B1号に記載されており、IR感応性の重合性系が、例えば、独国特許出願公開第199 06 823 A1号に記載されている。「化学」機構の代わりに「物理」機構を持つネガ型コーティングが、例えば、欧州特許出願公開第0 770 497 A1号、欧州特許出願公開第0 514 145 A1号及び欧州特許出願公開第1 342 568 A1号に記載されており、これらの文書に記載されている(印刷)版は、ポリマー粒子の凝集により画像形成される。
【0034】
光重合(UV/VIS及びIR)
基板上に塗布されるネガ型コーティングの1つのタイプは、(a)250〜1,200nmの範囲である波長の放射を吸収し、フリーラジカル重合を開始することができる光開始剤及び増感剤/共開始剤系から選択される少なくとも1つの吸収剤成分、(b)フリーラジカル重合性のモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーと、任意選択で、(c)少なくとも1つのポリマーバインダーを含む。
【0035】
吸収剤成分
放射感応性コーティングは、光開始剤及び増感剤/共開始剤系から選択される少なくとも1つの吸収剤成分を更に含む。
【0036】
吸収剤成分は、画像形成中に追って使用されることになる放射源が発光する範囲において有意な吸収が可能であるように選択され、吸収剤は、その範囲において吸収極大を示すことが好ましい。したがって、放射感応性要素が、例えば、IRレーザーによって画像形成されようとしている場合、吸収剤は、本質的に、750〜1,200nmの範囲である放射(電磁線)を吸収するべきであり、その範囲において吸収極大を示すことが好ましい。他方、画像形成が、UV/VIS放射によって行われることになっている場合、吸収剤は、本質的に、250〜750nmの範囲である放射を吸収するべきであり、その範囲において吸収極大を示すことが好ましい。適当な光開始剤及び/又は増感剤は、当業者に知られているか、有意な吸収が、簡単な試験(例えば、吸収スペクトルを記録すること)によって望ましい波長範囲において起こるか否かを容易に判断することができる。
【0037】
本発明において、光開始剤は、露光された場合に放射を吸収し、それ自体で、すなわち、共開始剤の添加なしにフリーラジカルを形成することができる化合物である。UV又はVIS放射を吸収する適当な光開始剤の例は、1〜3個のCX3基をもつトリアジン誘導体(あらゆるXは、塩素又は臭素原子から独立して選択され、塩素原子であることが好ましい)、ヘキサアリールビスイミダゾール化合物、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、オキシムエーテル、オキシムエステル、α-ヒドロキシ-又はα-アミノ-アセトフェノン、アシルホスフィン、アシルホスフィンオキシド、アシルホスフィンスルフィド、メタロセン、過酸化物等を包含する。
【0038】
適当なトリアジン誘導体の例は、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(スチリル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、並びに2-(4-エトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン及び2-[4-(2-エトキシエチル)-ナフト-1-イル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジンを包含する。適当なオキシムエーテル及びオキシムエステルは、例えば、ベンゾインから誘導されるものである。好ましいメタロセンは、例えば、例えばシクロペンタジエニル基等の2つの5員シクロジエニル基及び少なくとも1つのオルト-フッ素原子と、任意選択で、1つのピリル基も有する1つ又は2つの6員芳香族基を持つチタノセンであり、最も好ましいメタロセンは、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス-[2,6-ジフルオロ-3-(ピル-1-イル)-フェニル]チタニウム及びジシクロペンタジエン-ビス-2,4,6-トリフルオロフェニル-チタニウム又はジルコニウムである。
【0039】
本発明において、単一の光開始剤又は2つ以上の混合物を使用することができる。
【0040】
光開始剤は、単独又は1つ又は複数の共開始剤と組み合わせて使用することができ、共開始剤の添加は、光開始の有効性を高めることができる。
【0041】
光開始剤の量は、特に制限されないが、光開始剤が存在する場合、乾燥層重量を基準として、好ましくは、0.2〜25重量%、特に好ましくは、0.5〜15重量%の範囲である。
【0042】
本発明において言及されるような増感剤は、露光された場合に放射を吸収することができるが、それ自体では、すなわち、共開始剤の添加なしではフリーラジカルを形成することができない化合物である。
【0043】
光酸化性か光還元性であり、又はそれらの励起エネルギーを受容体分子に移動することができるすべての光吸収性化合物は、本発明における使用に適している増感剤である。そのような色素の例は、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、ジアリールメタン色素、トリアリールメタン色素、キサンテン色素、クマリン誘導体、ケトクマリン色素、アクリジン色素、フェナジン色素、キノキサリン色素、ピリリウム色素又はチアピリリウム色素、アザアンヌレン色素(フタロシアニン及びポルフィリン等)、インディゴ色素、アントラキノン色素、ポリアリーレン、ポリアリールポリエン、2,5-ジフェニルイソベンゾフラン、2,5-ジアリールフラン、2,5-ジアリールチオフラン、2,5-ジアリールピロール、2,5-ジアリールシクロペンタジエン、ポリアリールフェニレン、ポリアリール-2-ピラゾリン、芳香族ケトン又はキノン等のカルボニル化合物、例えば、ベンゾフェノン誘導体、ミヒラーケトン、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体及びフルオレノン誘導体を包含する。
【0044】
国際公開第2004/049068 A1号に開示されているような式(I)のクマリン増感剤は、例えば、電磁スペクトルのUV範囲に適している:
【0045】
【化1】

【0046】
更に、国際公開第2004/074929 A2号に開示されているような式(II)のビスオキサゾール誘導体及び類似体は、UV範囲に適しており
【0047】
【化2】

【0048】
国際公開第2004/074930 A2号に詳細に記載されているような式(III)のオキサゾール化合物も適している。
【0049】
【化3】

【0050】
国際公開第2004/11 1731 A1号に記載されているような式(IV)の1,4-ジヒドロピリジン化合物は、UV範囲に適している別のクラスの増感剤の例である。
【0051】
【化4】

【0052】
式(V)、国際公開第2006/053689号に開示されている式(VI)、独国特許第10 2004 022 137 B3号に開示されている式(VII)、及び国際公開第2007/090550号に開示されている式(VIII)の増感剤も、UV感応性要素に適しており、それらは、30μm(及び、より低い)FMスクリーニング(FM=周波数変調型)により画像形成される(印刷)版に特に適している:
【0053】
【化5】


【0054】
放射感応性要素が、VISレーザーダイオードで露光されることになる場合、国際公開第03/069411 A1号に記載されているシアノピリドン誘導体は、例えば、増感剤として適している。
【0055】
IR感応性要素のために、増感剤は、例えば、カーボンブラック、フタロシアニン顔料/色素及びポリチオフェン、スクアリリウム、チアゾリウム、クロコネート(croconate)、メロシアニン、シアニン、インドリジン、ピリリウム又は金属ジチオレンクラスの顔料/色素から、特に好ましくは、シアニンクラスから選択される。例えば、米国特許第6,326,122号の表1に述べられている化合物は、適当なIR吸収剤である。さらなる例は、米国特許第4,327,169号、米国特許第4,756,993号、米国特許第5,156,938号、国際公開第00/29214号、米国特許第6,410,207号及び欧州特許出願公開第1 176 007 A1号中に見いだすことができる。
【0056】
一実施形態によれば、式(IX)
【0057】
【化6】

【0058】
のシアニン色素が使用され、式中
各Z1は、独立して、S、O、NRa又はC(アルキル)2を表し、
各R'は、独立して、アルキル基、アルキルスルホン酸基又はアルキルアンモニウム基を表し、
R''は、ハロゲン原子、SRa、ORa、SO2Ra又はNRa2を表し、
各R'''は、独立して、水素原子、アルキル基、-COORa、-ORa、-SRa、-NRa2、又はハロゲン原子を表し、R'''は、ベンゾ縮合環であってもよく、
A-は、アニオンを表し、
Rb及びRcは、共に水素原子を表すか又は、それらが結合している炭素原子と一緒に、炭素環式5員又は6員環を形成し、
Raは、水素原子、アルキル又はアリール基を表し、
各bは、独立して、0、1、2又は3である。
【0059】
R'が、アルキルスルホン酸基を表す場合、アニオンA-が必要でないように内塩が形成することがある。R'が、アルキルアンモニウム基を表す場合、A-と同じかA-とは異なる第二の対イオンが必要とされる。
【0060】
式(IX)のIR色素のうち、対称構造を持つ色素が特に好ましい。特に好ましい色素の例は、
2-[2-[2-フェニルスルホニル-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムクロリド、
2-[2-[2-チオフェニル-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムクロリド、
2-[2-[2-チオフェニル-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロペンテン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウムトシレート、
2-[2-[2-クロロ-3-[2-(1,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-2H-ベンゾ[e]-インドール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-1,3,3-トリメチル-1H-ベンゾ[e]-インドリウムトシレート及び
2-[2-[2-クロロ-3-[2-エチル-(3H-ベンズチアゾール-2-イリデン)-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-3-エチル-ベンズチアゾリウムトシレート
を包含する。
【0061】
下記の化合物も、本発明に適しているIR吸収剤である:
【0062】
【化7】






【0063】
本発明において、1つの増感剤又は2つ以上の混合物を使用することができる。
【0064】
増感剤は、1つ又は複数の共開始剤と組み合わせて使用される。加えて、光開始剤を使用することができるが、これは好ましくない。
【0065】
増感剤の量は、特に制限されないが、増感剤が存在する場合、乾燥層重量を基準として、好ましくは、0.2〜15重量%、特に好ましくは、0.5〜10重量%の範囲である。光開始剤と増感剤が共にコーティング中に存在する場合、それらの総量は、乾燥層重量を基準として、好ましくは、0.5〜30重量%、特に好ましくは、1〜15重量%である。
【0066】
本発明において言及されるような共開始剤は、照射された場合に本質的に吸収することはできないが、本発明において使用される放射吸収性増感剤と一緒にフリーラジカルを形成する化合物である。共開始剤は、例えば、オニウム化合物、例えば、オニウムカチオンが、ヨードニウム(例えば、トリアリールヨードニウム塩等)、スルホニウム(トリアリールスルホニウム塩等)、ホスホニウム、オキシル-スルホキソニウム、オキシスルホニウム、スルホキソニウム、アンモニウム、ジアゾニウム、セレノニウム、アルセノニウム及びN-置換N-ヘテロ環式オニウムカチオン(Nは、任意選択で置換されているアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールで置換されている)から選択されるもの;N-アリールグリシン及びそれらの誘導体(例えば、N-フェニルグリシン);芳香族スルホニルハロゲン化物;トリハロメチルアリールスルホン;N-ベンゾイル-オキシフタルイミド等のイミド;ジアゾスルホネート;9,10-ジヒドロアントラセン誘導体;そのうちの少なくとも1つが、アリール単位の窒素、酸素又は硫黄原子と結合している少なくとも2つのカルボキシ基を持つN-アリール、S-アリール又はO-アリールポリカルボン酸(例えば、アニリン二酢酸及びその誘導体並びに米国特許第A-5,629,354号に記載されている他の共開始剤);ヘキサアリールビイミダゾール;チオール化合物(例えば、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール及びメルカプトトリアゾール);例えば、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-スチリル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン及び2-[4-(2-エトキシエチル)-ナフト-1-イル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等の1〜3個のCX3基(あらゆるXは、塩素又は臭素原子から独立して選択され、塩素原子であることが好ましい)を持つ1,3,5-トリアジン誘導体;例えば、ベンゾインから誘導されるもの等のオキシムエーテル及びオキシムエステル;メタロセン(好ましくは、チタノセン、特に好ましくは、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス-[2,6-ジフルオロ-3-(ピル-1-イル)-フェニル]チタニウム及びジシクロペンタジエン-ビス-2,4,6-トリフルオロフェニル-チタニウム又はジルコニウム等の、例えば、シクロペンタジエニル基等の2つの5員シクロジエニル基並びに少なくとも1つのオルトフッ素原子と、任意選択で、ピリル基も持つ1つ又は2つの6員芳香族基を持つもの);アシルホスフィンオキシド、ジアシルホスフィンオキシド及びペルオキシド(例えば、有機過酸化物のタイプの活性化剤として欧州特許出願公開第A1-1 035 435号に列挙されているもの)、α-ヒドロキシ又はα-アミノアセトフェノン、アシルホスフィン、アシルホスフィンスルフィド、芳香族ケトン又はキノン等のカルボニル化合物、例えば、ベンゾフェノン誘導体、ミヒラーケトン、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体及びフルオレノン誘導体から選択される。
【0067】
適当な2,2',4,4',5,5'-ヘキサアリールビイミダゾール(下記において、単にヘキサアリールビイミダゾールと呼ばれる)は、下記の式(X)により表され:
【0068】
【化8】

【0069】
式中、A1〜A6は、同一かお互いと異なる置換又は非置換のC5〜C20アリール基であり、環内で、1つ又は複数の炭素原子は、O、N及びSから選択されるヘテロ原子により任意選択で置換されていてよい。アリール基のための適当な置換基は、トリアリールイミダゾリルラジカルへの光誘起解離を阻止しないもの、例えば、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、-CN、C1〜C6アルキル(任意選択で、ハロゲン原子、-CN及びOHから選択された1つ又は複数の置換基を持つ)、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、(C1〜C6アルキル)スルホニルである。
【0070】
好ましいアリール基は、置換及び非置換のフェニル、ビフェニル、ナフチル、ピリジル、フリル及びチエニル基である。特に好ましいのは、置換及び非置換のフェニル基であり、特に好ましいのは、ハロゲン置換フェニル基である。
【0071】
例は、
2,2'-ビス(ブロモフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(p-カルボキシフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(o-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラキス(p-メトキシフェニル)ビ-イミダゾール、2,2'-ビス(p-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラキス(p-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2'-ビス(p-シアノフェニル)-4,4'5,5'-テトラキス(p-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2'-ビス(2,4-ジクロロ-フェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(2,4-ジメトキシフェニル)-4,4',5,5'-テトラ-フェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(o-エトキシフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(m-フルオロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(o-フルオロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-ビイミダゾール、2,2'-ビス(p-フルオロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(o-ヘキソキシフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(o-ヘキシルフェニル)-4,4',5,5'-テトラキス(p-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2'-ビス(3,4-メチレンジオキシフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-ビイミダゾール、2,2'-ビス(o-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラキス(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2'-ビス(o-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラキス[m-(ベータフェノキシ-エトキシフェニル)]ビイミダゾール、2,2'-ビス(2,6-ジクロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(o-メトキシフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(p-メトキシフェニル)-4,4'-ビス(o-メトキシフェニル)-5,5'-ジフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(o-ニトロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(p-フェニルスルホニルフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(p-スルファモイルフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(2,4,5-トリメチルフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ジ-4-ビフェニリル-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ジ-1-ナフチル-4,4',5,5'-テトラキス(p-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2'-ジ-9-フェナントリル-4,4',5,5'-テトラキス(p-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2'-ジフェニル-4,4',5,5'-テトラ-4-ビフェニリルビイミダゾール、2,2'-ジフェニル-4,4',5,5'-テトラ-2,4-キシリルビイミダゾール、2,2'-ジ-3-ピリジル-4,4',5,5'-テトラフェニル-ビイミダゾール、2,2'-ジ-3-チエニル-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ジ-o-トリル-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ジ-p-トリル-4,4'-ジ-o-トリル-5,5'-ジフェニルビイミダゾール、2,2'-ジ-2,4-キシリル-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2',4,4',5,5'-ヘキサキス(p-ベニルチオフェニル)ビイミダゾール、2,2',4,4',5,5'-ヘキサ-1-ナフチルビイミダゾール、2,2',4,4',5,5'-ヘキサフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(2-ニトロ-5-メトキシフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(o-ニトロフェニル)-4,4',5,5'-テトラキス(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、及び2,2'-ビス(2-クロロ-5-スルホフェニル)-4,4',5,5'-テトラ-フェニルビイミダゾール
を包含し、特に好ましいのは、
2,2'-ビス(o-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニルビイミダゾール、2,2'-ビス(o-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラ(p-フルオロフェニル)ビイミダゾール、2,2'-ビス(o-ブロモフェニル)-4,4',5,5'-テトラ(p-ヨードフェニル)ビ-イミダゾール、2,2'-ビス(o-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラ(p-クロロナフチル)ビイミダゾール、2,2'-ビス(o-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラ(p-クロロフェニル)ビイミダゾール、2,2'-ビス(o-ブロモフェニル)-4,4',5,5'-テトラ(p-クロロ-p-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2'-ビス(o-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラ(o,p-ジクロロフェニル)ビイミダゾール、2,2'-ビス(o-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラ(o,p-ジブロモフェニル)ビ-イミダゾール、2,2'-ビス(o-ブロモフェニル)-4,4',5,5'-テトラ(o,p-ジクロロフェニル)ビイミダゾール又は2,2'-ビス(o,p-ジクロロフェニル)-4,4',5,5',-テトラ(o,p-ジクロロフェニル)ビイミダゾール
であるが、本発明は、これらの化合物に制限されるものではない。
【0072】
適当なヘキサアリールビイミダゾールは、知られている方法(例えば、米国特許第A-3,445,232号を参照)に従って調製することができる。好ましい方法は、アルカリ溶液中での対応するトリアリールイミダゾールの鉄-(III)-ヘキサシアノ鉄酸塩(II)による酸化的二量化である。
【0073】
ヘキサアリールビイミダゾール異性体(又は、異性体の混合物)を使用する(例えば、1,2'-、1,1'-、1,4'-、2,2'-、2,4'-及び4,4'-異性体)ことは、それが光解離性であり、方法においてトリアリールイミダゾリルフリーラジカルを提供する限り、本発明の目的にとって無関係である。
【0074】
共開始剤として適しているトリハロゲンメチル化合物は、フリーラジカルを形成することができる。トリハロゲンメチル置換トリアジン及びトリハロゲンメチル-アリールスルホンが好ましい。下記のものを例として述べることができる(本発明をこれらの化合物に制限せずに):
2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、
2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス-(トリクロロメチル)-s-トリアジン、
2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、
2,4,6-トリス-(トリクロロメチル)-s-トリアジン、
2,4,6-トリス-(トリブロモメチル)-s-トリアジン及び
トリブロモメチルフェニルスルホン。
【0075】
別のタイプの有用な共開始剤(特に、ネガ型IR感応性原版のための)は、下記の構造(XI)により表されるホウ酸ジアリールヨードニウム化合物であり:
【0076】
【化9】

【0077】
式中、X及びYは、独立して、ハロ基(例えば、フルオロ、クロロ、又はブロモ)、1〜20個の炭素原子を有する置換又は非置換のアルキル基(例えば、メチル、クロロメチル、エチル、2-メトキシエチル、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、n-ブチル、t-ブチル、すべての分枝及び線状ペンチル基、1-エチルペンチル、4-メチルペンチル、すべてのヘキシル異性体、すべてのオクチル異性体、ベンジル、4-メトキシベンジル、p-メチルベンジル、すべてのドデシル異性体、すべてのイコシル異性体、並びに置換又は非置換のモノ及びポリの、分枝及び線状ハロアルキル)、1〜20個の炭素原子を有する置換又は非置換のアルキルオキシ(例えば、置換又は非置換のメトキシ、エトキシ、iso-プロポキシ、t-ブトキシ、(2-ヒドロキシテトラデシル)オキシ、及び様々な他の線状及び分枝アルキレンオキシアルコキシ基)、炭素環式芳香族環内に6又は10個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール基(モノ及びポリハロフェニル及びナフチル基を包含する置換又は非置換フェニル及びナフチル基等)、又は環構造内に3〜8個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル基(例えば、置換又は非置換のシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、及びシクロオクチル基)である。例えば、X及びYは、独立して、1〜8個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアルキル基、1〜8個の炭素原子を有するアルキルオキシ基、又は環内に5又は6個の炭素原子を有するシクロアルキル基であり、より好ましくは、X及びYは、独立して、3〜6個の炭素原子を有する置換又は非置換のアルキル基(及び、特に、3〜6個の炭素原子を有する分枝アルキル基)である。したがって、X及びYは、同じか異なる基であってよく、様々なX基は、同じか異なる基であってよく、様々なY基は、同じか異なる基であってよい。「対称な」ホウ酸ジアリールヨードニウム化合物と「非対称な」なホウ酸ジアリールヨードニウム化合物は共に、本発明により企図されているが、「対称な」化合物が有用である(すなわち、それらは、両フェニル環上に同じ基を有する)。
【0078】
加えて、2つ以上の隣接するX又はY基を組み合わせて、それぞれのフェニル基と縮合した炭素環式又はヘテロ環式の環を形成することができる。
【0079】
X及びY基は、フェニル環上のいずれの位置にあってもよいが、それらは、2-又は4-位にあることが好ましく、どちらか又は両フェニル環上の4-位にあることがより好ましい。
【0080】
どのようなタイプのX及びY基がヨードニウムカチオン中に存在しても、X及びY置換基中の炭素原子の和は、6から、好ましくは、8から、40までである。したがって、一部の化合物において、1つ又は複数のX基は、6個からの炭素原子を含むことができ、Yは存在しない(qは、0である)。代替方法として、1つ又は複数のY基は、6個からの炭素原子を含むことができ、Xは存在しない(pは、0である)。更に、XとYの両方における炭素原子の和が、6からである限り、1つ又は複数のX基は、6個未満の炭素原子を含むことができ、1つ又は複数のY基は、6個未満の炭素原子を含むことができる。この場合にも、両フェニル環上に合計6個からの炭素原子があってよい。
【0081】
構造(XI)において、p及びqは、独立して、0又は1〜5の整数であるが、ただし、pか又はqは、1からであることとする。例えば、pとqは共に、1であってよい。したがって、X又はY基により置換されていないフェニル環内の炭素原子は、それらの環位置で水素原子を有することが理解される。
【0082】
Z-は、下記の構造(XIa)により表される有機ホウ酸アニオンであり:
【0083】
【化10】

【0084】
式中、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、フルオロアルキル基以外の1〜12個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアルキル基(メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、すべてのペンチル異性体、2-メチルペンチル、すべてのヘキシル異性体、2-エチルヘキシル、すべてのオクチル異性体、2,4,4-トリメチルペンチル、すべてのノニル異性体、すべてのデシル異性体、すべてのウンデシル異性体、すべてのドデシル異性体、メトキシメチル、及びベンジル等)、芳香族環内に6〜10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の炭素環式アリール基(フェニル、p-メチルフェニル、2,4-メトキシフェニル、ナフチル、及びペンタフルオロフェニル基等)、2〜12個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアルケニル基(エテニル、2-メチルエテニル、アリル、ビニルベンジル、アクリロイル及びクロトノイル基等)、2〜12個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアルキニル基(エチニル、2-メチルエチニル、及び2,3-プロピニル基等)、環構造内に3〜8個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、及びシクロオクチル基等)、又は5〜10個の炭素、酸素、硫黄、及び窒素原子を有する置換若しくは非置換のヘテロシクリル基(置換又は非置換のピリジル、ピリミジル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インドリル、キノリニル、オキサジアゾリル、及びベンゾオキサゾリル基等の芳香族基と非芳香族基の両方を包含する)である。代替方法として、R1、R2、R3、及びR4のうちの2つ以上は、一緒になって、ホウ素原子を持つヘテロ環式環を形成することができ、そのような環は、7個までの炭素、窒素、酸素、又は窒素原子を有する。
【0085】
例えば、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、上で定義されているような置換又は非置換のアルキル又はアリール基であるか、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも3つは、同じか異なる置換又は非置換のアリール基(置換又は非置換のフェニル基等)である。一部の実施形態において、R1、R2、R3、及びR4のすべては、同じか異なる置換又は非置換のアリール基であるか、基のすべては、同じ置換又は非置換のフェニル基である。例えば、Z-は、フェニル基が置換又は非置換であるテトラフェニルボレートである。
【0086】
代表的な有用なホウ酸ヨードニウム化合物は、テトラフェニルホウ酸4-オクチル-オキシフェニルフェニルヨードニウム、[4-[(2-ヒドロキシテトラデシル)-オキシ]フェニル]フェニル-ヨードニウムテトラフェニルボレート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフェニルボレート、4-メチルフェニル-4'-ヘキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、4-メチルフェニル-4'-シクロヘキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、ビス(t-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-ヘキシルフェニル-フェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、4-メチルフェニル-4'-シクロヘキシルフェニル-ヨードニウムn-ブチルトリフェニルボレート、4-シクロヘキシルフェニル-フェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、2-メチル-4-t-ブチルフェニル-4'-メチルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、4-メチルフェニル-4'-ペンチルフェニルヨードニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-ボレート、4-メトキシフェニル-4'-シクロヘキシルフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタ-フルオロフェニル)ボレート、4-メチルフェニル-4'-ドデシル-フェニルヨードニウムテトラキス(4-フルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタ-フルオロフェニル)-ボレート、及びビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(1-イミダゾリル)ボレートを包含するが、それらに限定されるものではない。有用な化合物は、テトラフェニルホウ酸ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム、テトラフェニルホウ酸4-メチルフェニル-4'-へキシルフェニルヨードニウム、テトラフェニルホウ酸2-メチル-4-t-ブチルフェニル-4'-メチルフェニルヨードニウム、及びテトラフェニルホウ酸4-メチルフェニル-4'-シクロヘキシルフェニルヨードニウムを包含する。これらの化合物のうちの2つ以上の混合物も使用することができる。
【0087】
多くの共開始剤は、それらの吸収帯において露光された場合に光開始剤として機能することもできる。このように、光開始剤又は増感剤は、長波長スペクトル範囲(IR及び/又は可視範囲)をカバーし、共開始剤は、短波長スペクトル範囲(例えば、UV範囲)をカバーするため、例えば、幅広いスペクトル範囲にわたって感応性である感光層を得ることができる。この効果は、消費者が、異なる放射源で同じ材料を照射したい場合に有利であることがある。この場合、共開始剤は、IR又は可視範囲について上に与えられた定義の意味において事実上の共開始剤として機能し、一方、UV範囲については光開始剤として機能する。
【0088】
本発明において、1つの共開始剤又は共開始剤の混合物を使用することができる。
【0089】
共開始剤の量は、特に制限されないが、乾燥層重量を基準として、好ましくは、0.2〜25重量%、特に好ましくは、0.5〜15重量%の範囲である
【0090】
IR感応性コーティングのための適当な増感剤及び共開始剤のさらなる例は、国際公開第2004/041544号、国際公開第2000/48836号及び独国特許第10 2004 003143号にも述べられている。
【0091】
フリーラジカル重合性成分
少なくとも1つのC-C二重結合を含むすべてのモノマー、オリゴマー及びポリマーは、フリーラジカル重合性のモノマー、オリゴマー及びポリマーとして使用することができる。C-C三重結合を持つモノマー/オリゴマー/ポリマーを使用することもできるが、それらは、好ましくない。適当な化合物は、当業者に良く知られており、いずれの特定の制限もなしに本発明において使用することができる。モノマー、オリゴマー又はプレポリマーの形態である1つ又は複数の不飽和基を持つアクリル酸及びメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸及びイソクロトン酸、マレイン酸並びにフマル酸のエステルが好ましい。それらは、固体又は液体の形態で存在することがあり、固体及び極めて高粘性形態が好ましい。モノマーとして適している化合物は、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びトリメタクリレート、ジペンタエリスリトール-モノヒドロキシペンタアクリレート及びペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びヘキサメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート及びテトラメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート又はテトラエチレングリコールジアクリレート及びジメタクリレートを包含する。適当なオリゴマー及び/又はプレポリマーは、例えば、ウレタンアクリレート及びメタクリレート、エポキシドアクリレート及びメタクリレート、ポリエステルアクリレート及びメタクリレート、ポリエーテルアクリレート及びメタクリレート又は不飽和ポリエステル樹脂である。
【0092】
モノマー及び/又はオリゴマーに加えて、主鎖又は側鎖内にフリーラジカル重合性のC-C二重結合を含むポリマーを使用することもできる。それらの例は、無水マレイン酸コポリマーとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの反応生成物(例えば、独国特許第4 31 1 738 C1号を参照);アリルアルコールで部分的又は完全にエステル化された(メタ)アクリル酸ポリマー(例えば、独国特許出願公開第3 332 640 A1号を参照);ポリマーポリアルコールとイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートの反応生成物;不飽和ポリエステル;(メタ)アクリレート末端ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド;フリーラジカル重合性の基を含むエポキシドで部分的又は完全にエステル化された(メタ)アクリル酸ポリマー;及び、例えば、アリル(メタ)アクリレートの、任意選択で、さらなるコモノマーとの重合により得ることができる、アリル側基を持つポリマーを包含する。
【0093】
本発明において使用することができるフリーラジカル重合性の化合物は、3,000以下の分子量を有し、ジイソシアネートを、(i)1つのヒドロキシ基を持つエチレン性不飽和化合物と、同時に、(ii)1つのNH基及び1つのOH基を持つ飽和有機化合物と反応させることにより得られる反応生成物である国際公開第2005/054952号に開示されている化合物も包含し、反応剤は、下記の条件:
イソシアネート基のモル数≦OH基プラスNH基のモル数
に従う量で使用される。
【0094】
追加の適当なC-C不飽和フリーラジカル重合性の化合物は、例えば、欧州特許出願公開第1 176 007 A2号に記載されている。
【0095】
異なる種類のモノマー、オリゴマー又はポリマーを混合物中で使用することは言うまでもなく可能であり、更に、モノマーとオリゴマー及び/又はポリマーの混合物、並びにオリゴマーとポリマーの混合物を、本発明において使用することができる。
【0096】
フリーラジカル重合性の成分は、好ましくは、乾燥層重量を基準として、5〜95重量%、特に好ましくは、10〜85重量%の量で使用される。
【0097】
バインダー
適当なバインダーは、例えば、ノボラック及びレゾール等のフェノール性樹脂等の水性アルカリ現像剤に可溶性か分散性のポリマー/コポリマー、並びに(メタ)アクリル酸、N-フェニルマレイミド及び(メタ)アクリルアミドのコポリマーである(独国特許第199 36 331号を参照)。
【0098】
さらなる適当なバインダーは「反応性バインダー」、すなわち、フリーラジカル重合性の基を含む側鎖を有するポリマーバインダーである。例えば、反応性側基は、アクリル、メタクリル、スチリル、アリル、及びそれらの2つ以上の混合物から選択される。ポリマー主鎖は、限定されず、例えば、アクリル主鎖、メタクリル主鎖、アセタール主鎖、ウレタン主鎖、及びスチレン主鎖から選択され、前述のコポリマーも可能である。適当な反応性バインダーは、多くの特許出願、例えば、国際公開第2004/014652 A1号、国際公開第89/06659 A1号、独国特許出願公開第29 03 270 A1号、国際公開第95/12147号、欧州特許第410 242号、及び米国特許第4,035,321号に開示されている。
【0099】
バインダーの総量は、乾燥層重量を基準として、好ましくは、5〜95重量%、特に好ましくは、10〜85重量%である。
【0100】
ネガ型ジアゾ系(UV感応性)
別のタイプのネガ型UV感応性コーティング-基板上に塗布される-は、ジアゾニウム重縮合生成物を含む。
【0101】
当業者に知られているジアゾニウム重縮合生成物は、ジアゾニウム重縮合生成物として使用することができる。そのような縮合生成物は、例えば、欧州特許出願公開第A-0 104 863号に記載されているジアゾモノマーを、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド又はベンズアルデヒド等の縮合剤と縮合することにより、知られている方法に従って調製することができる。更に、ジアゾニウム塩単位に加えて、感光性でなく、縮合性の化合物、特に、芳香族アミン、フェノール、フェノールエーテル、芳香族チオールエーテル、芳香族炭化水素、芳香族ヘテロ環及び有機酸アミドから誘導される他の単位も含む共重縮合生成物が使用される。ジアゾニウム重縮合生成物の特に有利な例は、任意選択で、ジアゾ基を運ぶフェニル基内にメトキシ基を含有するジフェニルアミン-4-ジアゾニウム塩と、ホルムアルデヒド又は4,4'-ビスメトキシメチルジフェニルエーテルの反応生成物を包含する。4-トリルスルホネート又はメシチレンスルホネート等の芳香族スルホネート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート及びヘキサフルオロアルセネートは、これらのジアゾ樹脂のアニオンとして特に適している。ジアゾニウム重縮合生成物は、感光性組成物中に3〜60重量%の量で存在することが好ましい。
【0102】
ジアゾニウム重縮合生成物と上述のUV感応性フリーラジカル重合性の系とのハイブリッド系も、ネガ型放射感応性コーティングにおいて使用することができる。
【0103】
そのような系に適しているバインダーは、例えば、ノボラック及びレゾール等のフェノール性樹脂等の水性アルカリ現像剤に可溶性か分散性のポリマー/コポリマー、並びに(メタ)アクリル酸、N-フェニルマレイミド及び(メタ)アクリルアミドのコポリマーである(独国特許第199 36 331号を参照)。バインダーの総量は、乾燥層重量を基準として、好ましくは、5〜95重量%、特に好ましくは、10〜85重量%である。
【0104】
単一層ネガ型IR感応性要素
別のタイプのネガ型単一層IR感応性要素は、基板上の放射感応性層が、IR照射で水性アルカリ現像剤に不溶にされるか水性アルカリ現像剤により不透過にされ、
(i)熱の印加で酸を形成する少なくとも1つの化合物(下記で、「潜在的ブレンステッド酸」とも呼ばれる)、及び
(ii)酸による架橋性の成分(下記で、「架橋剤」とも呼ばれる)又はそれらの混合物、及び
(iii)少なくとも1つのIR吸収剤を含む要素である。
【0105】
この原則に基づく系は、欧州特許第0 625 728 B1号及び欧州特許第0 938 413 B1号に記載されている。
【0106】
IR範囲(750超〜1,200nm)からの放射を吸収する上に記載されているすべての増感剤は、IR吸収剤として使用することができる。
【0107】
イオン性及び非イオン性ブレンステッド酸は、潜在的ブレンステッド酸として使用することができる。イオン性潜在的ブレンステッド酸の例は、オニウム塩、特に、ヨードニウム、スルホニウム、オキシスルホキソニウム、オキシスルホニウム、ホスホニウム、セレノニウム、テルロニウム、ジアゾニウム及びアルソニウム塩を包含する。具体例は、ジフェニルヨードニウム-ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム-ヘキサフルオロアンチモネート、フェニルメチル-オルト-シアノベンジルスルホニウム-トリ-フルオロメタンスルホネート及び2-メトキシ-4-アミノフェニル-ジアゾニウム-ヘキサフルオロホスフェートである。
【0108】
非イオン性潜在的ブレンステッド酸の例は、RCH2X、RCHX2、RCX3、R(CH2X) 2及びR(CH2X) 3(式中、Xは、Cl、Br、F又はCF3SO3を表し、Rは、芳香族、脂肪族又は芳香脂肪族(araliphatic)の基である)を包含する。
【0109】

【0110】
【化11】

【0111】
のイオン性潜在的ブレンステッド酸も適しており、式中、Xが、ヨウ素を表す場合、R1c及びR1dは、遊離電子対であり、R1a及びR1bは、アリール基又は置換アリール基であり、
Xが、S又はSeを表す場合、R1dは、遊離電子対であり、R1a、R1b及びR1cは、独立して、アリール基、置換アリール基、脂肪族基又は置換脂肪族基から選択され、
Xが、P又はAsを表す場合、R1dは、アリール基、置換アリール基、脂肪族基又は置換脂肪族基であってよく、
【0112】
【化12】

【0113】
は、BF4
【0114】
【化13】

【0115】
から選択される。
【0116】
C1〜C5-アルキルスルホネート、アリールスルホネート(例えば、ベンゾイントシレート、2-ヒドロキシメチルベンゾイントシレート及び2,6-ジニトロベンジルトシレート)及びN- C1〜C5-アルキル-スルホニルスルホンアミド(例えば、N-メタンスルホニル-p-トルエン-スルホンアミド及びN-メタンスルホニル-2,4-ジメチルベンゼンスルホンアミド)も適している。
【0117】
具体的な適当なオニウム化合物は、例えば、式(I)〜(III)として米国特許第5,965,319号に詳細に列挙されている。
【0118】
潜在的ブレンステッド酸は、乾燥層重量を基準として、好ましくは、0.5〜50重量%、特に好ましくは、3〜20重量%の量で使用される。
【0119】
架橋剤は、例えば、レゾール、C1〜C5-アルコキシ-メチルメラミン、C1〜C5-アルコキシメチル-グリコールウリル樹脂、ポリ(C1〜C5-アルコキシ-メチルスチレン)及びポリ(C1〜C5-アルコキシメチルアクリルアミド)、エポキシド化ノボラック樹脂及び尿素樹脂から選択される樹脂であってよい。特に、芳香族環と結合している、ヒドロキシメチル、アルコキシメチル、エポキシ及びビニルエーテル基から選択される、分子内に少なくとも2個の基を含む化合物は、架橋剤として使用することができ、これらのうち、米国特許第5,965,319号の31〜37欄に列挙されているように、ベンゼン環と結合している、ヒドロキシメチル及びアルコキシメチル基から選択される少なくとも2個の基、3〜5個のベンゼン環並びに1,200以下の分子量を持つフェノール誘導体が好ましい。
【0120】
架橋剤は、好ましくは、乾燥層重量を基準として、5〜90重量%、特に好ましくは、10〜60重量%の量で使用される。
【0121】
このタイプの放射感応性層は、例えば、ノボラック、アセトンピロガロール樹脂、ポリヒドロキシスチレン及び成分(C)として米国特許第5,965,319号に列挙されているようなヒドロキシスチレン-N-置換マレイミド-コポリマー等のアルカリ可溶性か分散性の(コ)ポリマー、バインダー樹脂として米国特許第5,919,601号に述べられているようなポリマー並びに独国特許第199 36 331号に記載されているようなコポリマーから選択されるバインダーを含有することができる。
【0122】
好ましくは、バインダーは、乾燥層重量を基準として、5〜95重量%、特に好ましくは、5〜60重量%の量で存在する。
【0123】
原則として、例えば、米国特許第5,919,601号及び国際公開第00/17711 A1号に記載されているように、単一層構造を持つ、知られているIR感応性要素は、本発明に従って処理することができる。
【0124】
IR感応性凝集要素
このタイプのネガ型IR感応性要素は、基板上のコーティングが、熱の印加で凝集することができる粒子を含む要素である。通常、IR放射を熱に変換するIR吸収剤も、粒子と同じ層か又は隣接する層の中に、コーティング中に存在する。任意選択で、バインダーも、コーティング中に存在することができる。
【0125】
IR吸収剤は、IR感応性光重合要素について上に記載されているいずれか1つであってよい。
【0126】
粒子は、親水性熱可塑性ポリマー粒子、コアシェル構造を持つ粒子及び膨張剤を含有するミクロスフェアから選択することができる。
【0127】
熱の印加で凝集することができるコーティングにおいて使用される粒子は、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルカルバゾール、コポリマー及び/又はそれらの混合物のような疎水性の熱可塑性ポリマー粒子であってよい。そのような粒子は、例えば、欧州特許出願公開第0 770 497 A1号に記載されている。疎水性の熱可塑性ポリマー粒子は、典型的には、例えば、欧州特許出願公開第0 770 497 A1号に述べられているように、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、セルロース等のような親水性バインダー中に分散される。粒子は、好ましくは、0.01〜50μm、より好ましくは、0.05〜10μm、最も好ましくは、0.05〜20μmの平均直径を有することができる。
【0128】
適当な疎水性ポリマー粒子は、欧州特許出願公開第1 342 568 A1号にも記載されている。
【0129】
別のタイプの適当な粒子は、各々が、水に不溶の熱軟化性コア成分A及び水性アルカリ媒体に可溶性か膨潤性であるシェル成分Bを含むコアシェル粒子である。成分A及びBを包含するそのようなコアシェル粒子は、例えば、欧州特許出願公開第0 514 145 A1号に記載されている。
【0130】
この実施形態内で、露光で凝集する粒子は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル安息香酸、エステル、アミド、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等のニトリル、スチレン等のビニル芳香族化合物、塩化ビニル及び酢酸ビニル等のビニルモノマー、塩化ビニル及び酢酸ビニル等のビニリデン化合物、塩化ビニリデン等のビニリデン化合物並びにイソプレン及びブタジエン等のジエンのポリマー及びコポリマーで作られたシェルを有する熱的に膨張性のミクロスフェアであってもよい。シェルは、シェルは、物理的又は化学的な膨張剤を含有する。
【0131】
適当なシェルポリマーは、例えば、独国特許第699 20 664 T2号、独国特許第693 12 160 T2号及び国際公開第99/02589号に記載されている。
【0132】
膨張剤は、揮発性の有機溶剤であってよく、又は室温において固体であってよい。適当な膨張剤は、例えば、米国特許出願公開第2001/0044477 A1号に記載されている。
【0133】
そのような熱膨張性ミクロスフェアを製造するための方法は、例えば、米国特許出願公開第2001/0044477 A1号、欧州特許第0 569 234 B1号、国際公開第99/02589 A1号、米国特許出願公開第2005/0079352 A1号及び欧州特許第1 054 034 B1号のような従来技術にしばしば記載されている。それらは市販もされている。
【0134】
膨張性ミクロスフェアは、フェノール性樹脂、水溶性のセルロース誘導体、セルロースのカルボン酸誘導体並びに(メタ)アクリレートポリマー及びコポリマーのような親水性のポリマーバインダー中に分散される。適当なフェノール性樹脂は、例えば、ノボラック及びレゾールであり、適当なセルロースのカルボン酸誘導体は、例えば、欧州特許出願公開第1 101 607 A1号の段落[0024]〜[0037]中に及び米国特許第6,391,524 B2号に記載されている。国際公開第2005/018934号に記載されているN-置換マレイミド単位を含むコポリマー、並びに米国特許第5,731,127 B号、米国特許第5,141,838 B号、欧州特許出願公開第0 544 264 A1号及び欧州特許出願公開第0 737 896 A2号に開示されているコポリマーも適当なバインダーである。
【0135】
ポジ型放射感応性要素
UV感応性
ポジ型UV感応性要素は、例えば、米国特許第4,594,306号に記載されているように、キノンジアジド(好ましくは、ナフトキノンジアジド)及びノボラックをベースとしていてよい。
【0136】
そのようなコーティングに適しているバインダーは、例えば、ノボラック及びレゾール等のフェノール性樹脂等の水性アルカリ現像剤に可溶性か分散性のポリマー/コポリマー、並びに(メタ)アクリル酸、N-フェニルマレイミド及び(メタ)アクリルアミドのコポリマーである(独国特許第199 36 331号を参照)。バインダーの総量は、乾燥層重量を基準として、好ましくは、5〜95重量%、特に好ましくは、10〜85重量%である。
【0137】
IR感応性
2つの群:1つの層のみを含む放射感応性コーティングを持つもの及び放射感応性コーティングが、少なくとも2つの層を含むものに分けることができるポジ型IR感応性要素の数多くの例がある。
【0138】
単一層版
通常、単一層ポジ型IR感応性要素は、
(a)任意選択で前処理された基板
(b)(i)例えば、ノボラック樹脂等の水性アルカリ現像剤に可溶性の少なくとも1つのポリマー、
(ii)現像剤可溶性ポリマー(例えば、ノボラック)の水性アルカリ現像剤溶解性を低減する少なくとも1つの成分(前記溶解性低減は、熱の印加で逆転される) (「不溶化剤」)、及び
(iii)任意選択で、IR吸収剤(すなわち、IR放射を吸収し、それを熱に変換する化合物)を含むポジ型熱感応性層を含み、
成分(i)及び(ii)は、別々の物質として存在する必要はないが、それ相応に官能基化されたノボラックの形態で使用することができる。不溶化剤としても作用するIR吸収剤を使用することも可能である。そのような単一層IR感応性ポジ型要素は、例えば、欧州特許第825 927 B1号に記載されている
【0139】
ヒドロキシル、カルボン酸、アミノ、アミド及びマレイミド基を持つポリマーは、例えば、水性アルカリ現像剤に可溶性のポリマーとして使用することができる。特に、これらの化合物は、フェノール性樹脂、4-ヒドロキシスチレンと3-メチル-4-ヒドロキシスチレン又は4-メトキシスチレンのコポリマー、(メタ)アクリル酸とスチレンのコポリマー、マレイミドとスチレンのコポリマー、ヒドロキシ又はカルボキシ官能基化セルロース、無水マレイン酸とスチレンのコポリマー及び無水マレイン酸の部分加水分解ポリマーを包含する。フェノール性の酸、特に、ノボラックが特に好ましい。
【0140】
適当なノボラック樹脂は、フェノール、例えば、フェノール自体、C-アルキル置換フェノール(クレゾール、キシレノール、p-tert-ブチルフェノール、p-フェニルフェノール及びノニルフェノールを包含する)及びジフェノール(例えば、ビスフェノール-A)の、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、及びフルフラルデヒド等の適当なアルデヒドとの縮合生成物である。触媒のタイプ及び反応剤のモル比は、分子構造を、したがって樹脂の物理的特性を決定する。「ノボラック」として知られ、熱可塑特性を有するフェノール性樹脂を製造するために、0.5:1〜1:1、好ましくは、0.5:1〜0.8:1のアルデヒド/フェノール比、及び酸触媒が使用される。しかしながら、本出願において使用されるように、「ノボラック樹脂」という用語は、より高いアルデヒド/フェノール比でアルカリ触媒の存在下で得られる「レゾール」として知られているフェノール性樹脂も包含するべきである。
【0141】
乾燥層重量を基準として、ノボラック樹脂は、好ましくは、少なくとも40重量%、より好ましくは、少なくとも50重量%、更により好ましくは、少なくとも70重量%、特に好ましくは、少なくとも80重量%の量で存在する。通常、量は、95重量%を、より好ましくは、85重量%を超えない。
【0142】
IR吸収剤の化学構造は、吸収された放射を熱に変換することができる限り、特に制限されない。光重合性IR感応性要素と関連して上に述べられているIR吸収剤を使用することができる。IR吸収剤は、好ましくは、乾燥層重量を基準として、少なくとも0.1重量%、より好ましくは、少なくとも1重量%、特に好ましくは、少なくとも2重量%の量で存在する。通常、IR吸収剤の量は、25重量%を、より好ましくは、20重量%を、特に好ましくは、15重量%を超えない。単一のIR吸収剤か又は2つ以上の混合物が存在することがあり、後者の場合、与えられる量は、すべてのIR吸収剤の総量を指す。
【0143】
使用されることになるIR吸収剤の量も、コーティングの乾燥層厚に照らして考慮されなければならない。好ましくは、コーティングの光学密度-例えば、透明なポリエステルフィルム上で測定される-が、好ましくは、コーティングが照射されるIR光の波長において0.4〜1.0の値を示すように選択されるべきである。
【0144】
IR感光性コーティングは、ノボラックのようなポリマーの水性アルカリ現像剤溶解性を低減する少なくとも1つ物質を更に含み、それによって、この溶解性低減は、熱の印加で逆転される。下記において、この物質は、簡潔に「不溶化剤」と呼ばれる。不溶化剤は、ポリマーと共有結合していてもしていなくてもよい。
【0145】
従来技術においてすでに記載されている不溶化剤又は異なる不溶化剤を使用することができる。
【0146】
適当な不溶化剤は、例えば、感光性ではなく、ノボラック樹脂のフェノール性OH基との水素結合内に入ることができる官能基を含む国際公開第98/42507号及び欧州特許出願公開第A 0 823 327号に記載されている化合物を包含する。国際公開第98/42507号は、適当な官能基としてスルホン、スルホキシド、チオン、ホスフィンオキシド、ニトリル、イミド、アミド、チオール、エーテル、アルコール、尿素、ニトロソ、アゾ、アゾキシ及びニトロ基、ハロゲン及び、特に、ケト基を述べている。キサントン、フラバノン、フラボン、2,3-ジフェニル-1-インデノン、ピロン、チオピロン及び1'-(2'-アセトナフトニル)ベンゾエートが、適当な化合物の例として述べられている。
【0147】
国際公開第99/01795号において、ジアジド基、酸基又は酸形成基を含まないことが好ましい具体的な官能基Qを持つポリマーが不溶化剤として使用され、好ましい実施形態によれば、Qは、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミド、モノアルキルアミド、ジアルキルアミド基、フッ素原子、塩素原子、カルボニル、スルフィニル又はスルホニル基から選択される。これらのポリマー不溶化剤も、本発明において使用することができる。
【0148】
国際公開第99/01796号に記載されている不溶化剤、この場合はジアジド単位を持つ化合物は、同様に本発明において使用することができる。
【0149】
本発明において使用するのに適している不溶化剤の別の群は、国際公開第97/39894号に記載されている。それらは、例えば、少なくとも1つの窒素原子が四級化され、ヘテロ環式環の一部を形成する窒素含有化合物であり、例は、例えば、キノリニウム化合物、ベンゾチアゾリウム化合物及びピリジニウム化合物、特に、ビクトリアブルー(CIベーシックブルー7)、クリスタルバイオレット(CIベーシックバイオレット3)及びエチルバイオレット(CIベーシックバイオレット4)等のカチオン性トリメチルメタン色素を包含する。更に、N-(4-ブロモブチル)-フタルイミド、ベンゾフェノン及びフェナントレンキノン等のカルボニル機能を持つ化合物が述べられている。式Q1-S(O)n-Q2(式中、Q1=任意選択で置換されているフェニル又はアルキル基;n=0、1又は2; Q2=ハロゲン原子又はアルコキシ基)の化合物、アクリジンオレンジベース及びフェロセニウム化合物は、同様に使用することができる。
【0150】
IR吸収剤が、国際公開第97/39894号に述べられている構造要素を含む場合、それらも、不溶化剤として機能する。
【0151】
米国特許第6,320,018 B号に記載されている官能基化ノボラックは、本発明の熱感応性要素において同様に使用することができる。これらのノボラックは、ポリマー分子間に2-又は4-中心水素結合(好ましくは、四重極水素結合QHBとも名付けられている4-中心水素結合)を可能にする置換基を含有する。これもまた、基礎となるノボラックの水性アルカリ現像剤溶解性を減少させる。そのような水素結合は、加熱することにより破壊され、ノボラックの元の溶解性が回復される。そのような官能基化ノボラックが使用される場合、対応する官能基を持たないノボラック及び/又は上に記載されているような不溶化剤の追加使用は必要でないが、どちらも排除もされないように熱感応性組成物の成分(i)及び(ii)の機能を想定している。
【0152】
官能基化ノボラックは、少なくとも1つの共有結合単位及び少なくとも1つの非共有結合単位を含み、非共有結合は、熱的に不安定であり、これらのノボラックは、本質的に非共有結合単位毎に2-又は4-中心水素結合を有する。同時不溶化機能を持つノボラックとして使用することができるそのような官能基化ノボラックの好ましい群は、下記の式(XIV)をもって記載することができ:
【0153】
【化14】

【0154】
式中、R及びR'は、独立して、水素原子及び好ましくは1〜22個の炭素原子を持つ環状又は直線又は分枝の飽和又は不飽和の炭化水素基(好ましくは、水素及びC1〜C4アルキル)から選択され、R''は、ノボラックR''(OH)p由来のフェノール性基であり、Yは、式Y(NCO)2のジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート、トルエン-1,2-ジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-1-メチルシクロ-ヘキシルイソシアネート)由来の好ましくは1〜22個の炭素原子を持つ二価の環状又は直線又は分枝の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、mは、少なくとも1であり、pは、1又は2である。
【0155】
式(XIV)の官能基化ノボラックの調製は、例えば、米国特許出願公開第2002/0,150,833 A1号から推測することができる
【0156】
官能基化フェノール性樹脂、特に、官能基化ノボラック等の適当な官能基化樹脂の別のクラスは、米国特許第6,537,735 B号に開示されている。非官能基化樹脂は、水性アルカリ現像剤に可溶性であるが、官能基化樹脂は、現像剤に不溶性であり、しかしながら、熱の印加(例えば、IR放射により生成される)は、それを現像剤に可溶性にする。非官能基化樹脂は、官能基化樹脂中で、共有結合した官能基Qに少なくとも部分的に変換されるOH又はSH基を含むことが好ましく、官能基Qは、OH基のエステル化反応を介して形成され、好ましくは、-O-SO2-トリル、-O-ダンシル、-O-SO2-チエニル、-O-SO2-ナフチル及びO-CO-フェニルから選択されることが好ましい。官能基QのOH基に対する比は、好ましくは、1:100〜1:2、より好ましくは、1:50〜1:3である。ノボラック樹脂、レゾール、上に記載されているフェノール性側鎖及びヒドロキシスチレンを持つアクリル樹脂は、例えば、非官能基化樹脂として使用することができる。このクラスの特に好ましい官能基化樹脂は、トルエンスルホン酸又はスルホン酸塩化物で部分的に(例えば、10〜20%)エステル化されたフェノール性樹脂(好ましくはノボラック)であり、しかしながら、米国特許第6,537,735号に記載されているすべての他の官能基化樹脂は、本発明において同様に使用することができる。
【0157】
上に述べられているすべての不溶化剤は、本発明の熱感応性コーティングにおいて使用することができるが、下記の:シアニン色素、トリアリールメタン色素、キノリニウム化合物、ケト基を持つ上の不溶化剤、及びスルホン基を持つ上の不溶化剤、並びに4-中心水素結合を形成することができる置換基で官能基化されたノボラックが好ましい。シアニン色素、トリアリールメタン色素、キノリニウム化合物、ケトン及びスルホンは、低分子物質として使用するか、ポリマーに結合させることができる。
【0158】
単一の不溶化剤又は2つ以上の化合物の混合物は、本発明の熱感応性要素において使用することができる。
【0159】
不溶化剤の量は、ノボラックの水性アルカリ現像剤溶解性を低減する限り、特に制限されない。しかしながら、溶解性低減は、水性アルカリ現像剤が使用される場合に、コーティングの加熱領域が、非加熱領域よりもかなり速く除去されるような程度まで起こらなければならない。
【0160】
不溶化剤が、IR吸収剤としても機能するか否かとは無関係に、乾燥層重量を基準として、好ましくは、少なくとも0.1重量%、より好ましくは、少なくとも0.5重量%、特に好ましくは、少なくとも1重量%、特に好ましくは、少なくとも2重量%の量で存在する。好ましくは、25重量%程度、より好ましくは、15重量%以下が使用される。
【0161】
任意選択のバインダーは、例えば、ノボラック及びレゾール等のフェノール性樹脂等の水性アルカリ現像剤に可溶性か分散性のポリマー/コポリマー、並びに(メタ)アクリル酸、N-フェニルマレイミド及び(メタ)アクリルアミドのコポリマーである(独国特許第199 36 331号を参照)。バインダーの総量は、乾燥層重量を基準として、好ましくは、1〜99重量%、特に好ましくは、10〜98重量%である。
【0162】
二重層版
本発明において有用なIR感応性要素は、ポジ型二重層要素であってもよく、内層(「第1層」又は「底層」とも呼ばれる)は、水性アルカリ現像剤に可溶性である基板の親水性表面上に提供され、上層(「マスキング層」)は、第1層の上に提供される。
【0163】
内層は、現像剤により除去可能であり、典型的には、現像剤に可溶性であり、現像剤のスラッジングを低減する第1ポリマーバインダーを含む。加えて、第1ポリマーバインダーは、通常、内層を溶かすことなく内層の上に外層をコーティングすることができるように、外層をコーティングするのに使用される溶剤に不溶性である。これらの第1ポリマーバインダーの混合物は、内層において望ましい場合に使用することができる。内層のために使用することができるこの第1ポリマーバインダーは、(メタ)アクリロニトリルポリマー、カルボキシ基を含む(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール、マレイン化ウッドロジン、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、N-アルコキシアルキルメタクリルアミドから誘導されるポリマーを包含する(メタ)アクリルアミドポリマー、N-置換環状イミドから誘導されるポリマー、ペンダントの環状尿素基を有するポリマー、及びそれらの組合せを包含する。更に他の有用なポリマーバインダーは、N-置換環状イミド(特に、N-フェニル-マレイミド)、(メタ)アクリルアミド(特に、メタクリルアミド)、ペンダントの環状尿素基を有するモノマー、及び(メタ)アクリル酸(特に、メタクリル酸)から誘導されるポリマーを包含する。このタイプのポリマーバインダーは、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシル-マレイミド、N-(4-カルボキシフェニル)-マレイミド、N-ベンジルマレイミド、又はそれらの混合物から誘導される反復単位20〜75mol%、典型的には、35〜60mol%、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はそれらの混合物から誘導される反復単位10〜50mol%、及びメタクリル酸から誘導される反復単位5〜30mol%を含むコポリマーを包含する。メタクリル酸ヒドロキシエチル等の他の親水性モノマーは、メタクリルアミドの一部又はすべての代わりに使用することができる。アクリル酸又は5-メタクリルアミド-1,2,3,4-テトラゾール等の他のアルカリ可溶性モノマーは、メタクリル酸の一部又はすべての代わりに使用することができる。任意選択で、これらのポリマーは、(メタ)アクリロニトリル又はN-[2-(2-オキソ-1-イミダゾリジニル)エチル]-メタクリルアミドから誘導される反復単位も包含することができる。
【0164】
内層のための更に他の有用なポリマーバインダーは、例えば、米国特許第7,186,482号(Kitsonら)に記載されているように、重合形態で、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和の重合性のモノマー(アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、及び当技術分野において知られている他の類似モノマー等(アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい))から誘導される反復単位5 mol%〜30mol%、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、又はそれらの混合物から誘導される反復単位20 mol%〜75mol%、任意選択で、メタアクリルアミドから誘導される反復単位5 mol%〜50mol%、及び下記の構造:
CH2=C(R2)-C(=O)-NH-CH2-OR1
(式中、R1は、C1〜C12アルキル、フェニル、C1〜C12置換フェニル、C1〜C12アラルキル、又はSi(CH3)3であり、R2は、水素又はメチルである)のモノマー化合物から誘導される1つ又は複数の反復単位3 mol%〜50mol%を含むことできる。これらのポリマー材料のうちのある種の調製方法は、米国特許第6,475,692号(Jarek)に記載されている
【0165】
内層のための追加の有用なポリマーバインダーは、例えば、米国特許第7,144,661号(Rayら)、米国特許出願公開第2007/0269727号(Savariar-Hauckら)、及び米国特許第7,223,506号(Kitsonら)、及び米国特許出願公開第2006/0257764号(Rayら)及び米国特許出願公開第2007/0172747号(Rayら)に記載されている。
【0166】
追加のポリマーバインダーは、内層中に全ポリマー材料50%超及び100%まで(乾燥重量)を含むことができる。更に他の有用な追加のポリマー材料は、N-フェニルマレイミドから誘導される反復単位1〜30モル%、メタクリルアミドから誘導される反復単位1〜30モル%、アクリロニトリルから誘導される反復単位20〜75モル%、及び構造(XI):
CH2=C(R23)-CO2-CH2CH2-NH-CO-NH-p-C6H4-R22 (XI)
(式中、R22は、OH、COOH、又はSO2NH2であり、R23は、H又はメチルである)の1つ又は複数のモノマーから誘導される反復単位20〜75モル%と、任意選択で、構造(XII):
CH2=C(R25)- CO-NH-p-C6H4-R24 (XII)
(式中、R24は、OH、COOH、又はSO2NH2であり、R25は、H又はメチルである)の1つ又は複数のモノマーから誘導される反復単位1〜30モル% 3〜20モル%を含むコポリマーを包含する。
【0167】
内層は、活性化されたメチロール及び/又は活性化されたアルキル化メチロール基を有する樹脂である1つ又は複数の二次追加ポリマー材料を含むこともできる。二次追加ポリマー材料は、例えば、レゾール樹脂及びそれらのアルキル化類似体、メチロールメラミン樹脂及びそれらのアルキル化類似体(例えば、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂)、メチロールグリコールウリル樹脂及びアルキル化類似体(例えば、グリコールウリル-ホルムアルデヒド樹脂)、チオ尿素-ホルムアルデヒド樹脂、グアナミン-ホルムアルデヒド樹脂、並びにベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂を包含することができる。市販のメラミン-ホルムアルデヒド樹脂及びグルコールウリル-ホルムアルデヒド樹脂は、例えば、CYMEL(登録商標)樹脂(Dyno Cyanamid)及びNIKALAC(登録商標)樹脂(Sanwa Chemical)を包含する。活性化されたメチロール及び/又は活性化されたアルキル化メチロール基を有する樹脂は、典型的には、レゾール樹脂又はレゾール樹脂の混合物である。レゾール樹脂は、当業者に良く知られている。それらは、過剰のフェノールを使用して塩基性条件下でフェノールのアルデヒドとの反応により調製される。市販のレゾール樹脂は、例えば、GP649D99レゾール(Georgia Pacific)及びBKS-5928レゾール樹脂(Union Carbide)を包含する。有用な二次追加ポリマー材料は、N-フェニルマレイミドから誘導される反復単位25〜75モル%、メタクリルアミドから誘導される反復単位10〜50モル%、及びメタクリル酸から誘導される反復単位5〜30モル%を含むコポリマーも包含することができる。これらの二次追加コポリマーは、米国特許第6,294,311号(Shimazuら)及び米国特許第6,528,228号(Savariar-Hauckら)に開示されている。内層は、総乾燥内層重量の少なくとも10重量%、一般的には、60〜95重量%の量で一般的に存在する、ペンダントの1H-テトラゾール基を有するポリマーを含むこともできる。
【0168】
IR吸収剤(「光熱変換材料」)は、第1層、又は上層若しくは両層中に存在し、別々の「吸収剤層」中に存在することもできる。IR吸収剤は、第1層中に存在することが好ましい。
【0169】
IR吸収剤の化学構造は、吸収されたIR放射を熱に変換することができる限り、特に制限されない。光重合性IR感応性要素との関連で上に述べられているIR吸収剤を使用することができる。IR吸収剤は、好ましくは、それが存在する層の乾燥層重量を基準として、少なくとも1重量%、より好ましくは、少なくとも2重量%、特に好ましくは、少なくとも5重量%の量で存在する。通常、IR吸収剤の量は、それが存在する層の35重量%を、より好ましくは、30重量%を、特に好ましくは、25重量%を超えない。IR吸収剤が、第1層中にのみ存在する場合、前記層中のその量は、第1層の乾燥層重量を基準として、10〜20重量%であることが好ましい。単一のIR吸収剤か又は2つ以上の混合物が存在することができ、後者の場合、与えられる量は、1つの層中に存在する全てのIR吸収剤の総量を指す。
【0170】
上層は、水性アルカリ現像剤により溶かされることから第1層を保護する。したがって、上層自体は、水性アルカリ現像剤に可溶性でも分散性でもないか、水性アルカリ現像剤により透過性ではないことが必要である。「水性アルカリ現像剤に可溶性でなく、水性アルカリ現像剤に分散性でなく、又は水性アルカリ現像剤により透過性でない」という表現は、上層が、少なくとも90秒にわたって少なくとも8のpHを有する水性アルカリ現像剤の攻撃に抵抗することができることを意味する。しかしながら、IR放射への露光で、上層は、水性アルカリ現像剤により除去可能になる(所要滞留時間:60秒未満)。
【0171】
様々な二重層版は、当技術分野において知られているが、IR放射への露光に起因する溶解性/分散性/透過性の変化機構は、依然として完全には理解されていない。そのような二重層系は、例えば、米国特許第6,352,812号、米国特許第6,352,811号、米国特許第6,358,669号、米国特許出願公開第2002/0,150,833 A1号、米国特許第6,320,018号、米国特許第6,537,735号及び国際公開第02/14071号に記載されている
【0172】
一実施形態によれば、上層(下記で、「マスキング層」とも呼ばれる)は、水性アルカリ現像剤に不溶性であってよく、画像形成後に現像剤に対して透過性にされてよい。除去されるマスクは、現像剤に不溶性のままである。ニトロセルロース及びポリメタクリル酸メチル等のポリマーは、そのような場合の例であり、米国特許第6352812号に記載されている。
【0173】
別の実施形態において、マスキング層は、第1層よりも遅い現像剤中での溶解速度を示すことがあり、現像段階中に画像領域の十分な保護を可能にする。このことは、内層よりも遅い速度であるが現像剤中での溶解を可能にする、低酸価を持つ上層中のポリマーの使用により達成される。このために、上層ポリマーは、ペンダントのカルボキシル、カルボキシ無水物、スルホンアミド、スルホン酸、ホスホン酸、又はリン酸及びテトラゾール基を有することがあり、アリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキル若しくはアリール基により置換することができる(メタ)アクリルアミド、ポリエチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドの(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン若しくはスチレン誘導体、酢酸ビニル、ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、N-置換マレイミド、又は開環した無水マレイン酸の半エステル等の適当な1つ又は複数のモノマーとの反応により得ることができる。B反復単位を誘導することができる他のモノマーは、当業者には容易に明らかであろう。ペンダント酸基を持つポリマーは、米国特許第7,241,556号に記載されているような縮合反応により得ることもできる。
【0174】
フェノール性樹脂は、一般的に、pH10の低pH現像剤に不溶性である。しかしながら、カルボン酸基で官能基化されたフェノール性樹脂又は低分子量縮合物のフェノール性樹脂は、第1層よりも遅い速度であるが低pH現像剤に溶けることが判明しており、したがって、低pH現像剤中で現像可能な二重層版のための上層として使用することもできる。
【0175】
第1層よりも遅いマスキング層の現像剤中での溶解速度は、遅い加水分解を受け、次いで、現像剤に可溶性になる上層中のポリマーを使用することにより達成することもできる。そのようなポリマーの例は、スチレン無水マレイン酸コポリマーである。
【0176】
別の実施形態によれば、上層は、フェノール性樹脂の阻止を通じて現像剤攻撃に抵抗するために作製することもでき、IR放射での「脱阻止」により現像剤に可溶性にされる。
【0177】
適当なフェノール性樹脂は、例えば、ノボラック、レゾール、フェノール性側鎖を持つアクリル樹脂及びポリビニルフェノール性樹脂を包含し、そのためには、ノボラックが特に好ましい。ノボラック樹脂は、適当なフェノール、例えば、フェノール自体、C-アルキル-置換フェノール(クレゾール、キシレノール、p-tert-ブチルフェノール、p-フェニルフェノール及びノニルフェノールを包含する)の、及びジフェノール(例えば、ビスフェノール-A)の、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド及びフルフラルデヒド等の適当なアルデヒドとの縮合生成物である。触媒のタイプ、及び反応剤のモル比は、分子構造を、したがって樹脂の物理的特性を決定する。「ノボラック」として知られ、熱可塑特性を有するフェノール性樹脂を製造するために、0.5:1〜1:1、好ましくは、0.5:1〜0.8:1のアルデヒド/フェノール比、及び酸触媒が使用される。しかしながら、本出願において使用されるように、「ノボラック樹脂」という用語は、より高いアルデヒド/フェノール比でアルカリ触媒の存在下で得られる「レゾール」として知られているフェノール性樹脂も包含するべきである。
【0178】
そのような上層の1つのタイプは、例えば、それ自体が、水性アルカリ現像剤に可溶性/分散性であるノボラックのようなポリマー及び、層が、現像条件下で可溶性でも透過性でもないような高い程度まで溶解性/分散性を低減する「不溶化剤」を含む。ポリマーと阻止剤の間の相互作用は、層の照射(加熱)領域が、現像剤に可溶性/分散性にされるか、現像剤により透過性にされるような程度までIR放射により弱められると考えられる。そのような系は、例えば、米国特許第6,352,811号及び米国特許第6,358,669号に記載されている。ポリマー/不溶化剤系は、単層版について上に記載されているものと同じであってよい。
【0179】
上層中の不溶化剤の量は、ノボラックの水性アルカリ現像剤溶解性を低減する限り、特に制限されない。しかしながら、溶解性低減は、水性アルカリ現像剤が使用される場合に、コーティングの加熱領域が、非加熱領域よりもかなり速く除去されるような程度まで起こらなければならない。不溶化剤は、好ましくは、乾燥層重量を基準として、少なくとも0.1重量%、より好ましくは、少なくとも0.5重量%、特に好ましくは、少なくとも2重量%、特に好ましくは、少なくとも5重量%の量で存在する。好ましくは、40重量%以下、より好ましくは、25重量%以下が使用される。
【0180】
そのような上層の別のタイプは、水性アルカリ現像剤に可溶性/分散性であるが、水性アルカリ現像剤により可溶性/分散性/透過性ではないように化学的に修飾された(例えば、「不溶化剤」を化学的に結合することにより)ノボラックのようなポリマーを含むことができる。そのような官能基化樹脂(例えば、官能基化ノボラックのような)は、例えば、米国特許出願公開第2002/0,150,833 A1号、米国特許第6,320,018 B号及び米国特許第6,537,735 B号に記載されている。
【0181】
IR放射により弱められる上層内の何らかの相互作用があるか、微小クラック及び/又は気泡が、露光領域において現像剤による可溶性底層と併せて当初は不溶性/不透過性の上層の除去を可能にし、現像剤が、最終的に現像剤に溶ける画像形成領域を透過しかつ除去するのを可能にするIR放射(及び、それにより生み出される熱)への露光によって、上層又は第1層と上層の界面において形成されることが想定される。
【0182】
上層にとって有用な化学修飾されたポリマーは、例えば、上に述べられている式(XIV)のもののような官能基化ノボラック及び米国特許第6,537,735 B号に述べられているもののような官能基化フェノール性樹脂(例えば、トシル化ノボラック)であり、見出し「単一層版」下の上も参照されたい。修飾されたアルキルフェノール樹脂(商品名SP 1077及びHRJ 302でSchenectadyから市販されているもののような)並びにキシレノール及びクレゾールをベースとするノボラック(商品名SPN-572でAZ-Electronicsから市販されているもののような)も、上層にとって有用である。
【0183】
上層にとって他の有用なポリマーバインダーは、ポリ(ヒドロキシスチレン)及びヒドロキシスチレンの反復単位を含有するコポリマー並びに置換ヒドロキシスチレンの反復単位を含有するポリマー及びコポリマーを包含する、フェノール性ヒドロキシル基を有するポリビニル化合物を包含する。例えば、米国特許第5,554,719号(Sounik)及び米国特許第6,551,738号(Ohsawaら)、及び米国特許出願公開第2003/0050191号(Bhattら)及び第2005/0051053号(Wisnudelら)、並びに同時係属の本発明の譲受人に譲渡された米国特許仮出願第11/474,020号(Levanonらにより2006年6月23日出願)に記載されているような、4-ヒドロキシスチレンから誘導される複数の分枝ヒドロキシスチレン反復単位を有する分枝ポリ(ヒドロキシスチレン)も有用である。例えば、そのような分枝ヒドロキシスチレンポリマーは、4-ヒドロキシスチレンから等のヒドロキシスチレンから誘導される反復単位を含み、反復単位は、ヒドロキシ基に対してオルトに位置する繰り返しヒドロキシスチレン単位(4-ヒドロキシスチレン単位等)で更に置換されている。これらの分枝ポリマーは、1,000〜30,000、又は典型的には、1,000〜10,000、より典型的には、3,000〜7,000の重量平均分子量(Mw)を有することができる。加えて、それらは、2未満、好ましくは、1.5〜1.9の多分散性を有することがある。分枝ポリ(ヒドロキシスチレン)は、非分枝ヒドロキシスチレン反復単位を持つホモポリマー又はコポリマーであってよい。
【0184】
上層のための有用なポリマーバインダーの1つの群は、ポリ(ビニルフェノール)及びその誘導体を包含する。そのようなポリマーは、一般的に、ビニルフェノールモノマー、すなわち、置換又は非置換のビニルフェノールの重合により得られる。置換ビニルフェノール反復単位は、構造(A)において「a」反復単位について下に記載されているものを包含する。一部のビニルフェノールコポリマーは、欧州特許出願公開第1,669,803A号(Barclayら)に記載されている。
【0185】
上層のための他の有用なポリマーバインダーは、構造(B)により表される修飾されたノボラック又はレゾール樹脂であり
【0186】
【化15】

【0187】
式中、Yは、
【0188】
【化16】

【0189】
であり、aは、全ポリマーを基準として90〜99mol%であり(典型的には、92〜98mol%)、bは、1〜10mol%(典型的には、2〜8mol%)であり、R1及びR3は、独立して、水素若しくはヒドロキシ、アルキル、又はアルコキシ基であり、R2は、水素又はアルキル基であり、Xは、アルキレン、オキシ、チオ、-OC(=O)Ar-、-OC(=O)CH=CH-、又はOCO(CH2)n4-基(式中、Arは、アリール基である)であり、m及びpは、独立して、1又は2であり、n3は、0又は5までの整数(例えば、0、1、2又は3)であり、n2は、0又は5までの整数(例えば、0、1又は2)であり、n3は、0又は1(典型的には、0)であり、n4は、少なくとも1(例えば、8まで)であり、Zは、-C(=O)OH、-S(=O)2OH、-P(=O)(OH)2、又はOP(=O)(OH)2である。
【0190】
ポリマーバインダー中に存在するアルキル及びアルコキシ基(R1、R2及びR3について)は、置換されていないか、1つ又は複数のハロ、ニトロ、又はアルコキシ基で置換されていてよく、1〜3個の炭素原子を有することができる。そのような基は、線状、分枝又は環状であってよい(すなわち、「アルキル」は、本発明のための「シクロアルキル」も包含する)。
【0191】
Xが、アルキレンである場合、1〜4個の炭素原子を有することができ、アルキル及びアルコキシ基で同様に更に置換されていてよい。加えて、アルキレン基は、環及び鎖内に少なくとも5個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキレン基であってよい。Arは、置換又は非置換のフェニル及びナフチル基等の置換又は非置換の、6又は10員の炭素環式芳香族基である。典型的には、Arは、非置換フェニル基である。
【0192】
一部の実施形態において、上層のポリマーバインダーは、aが、92〜98mol%であり、bが、2〜8mol%であり、Zが、-C(=O)OHであり、層の総乾燥重量を基準として15〜100重量%の乾燥被覆率で存在する構造(B)により表される反復単位を含む。
【0193】
上層中にあってよい他のポリマーバインダーは、1つ又は複数のペンダントのジアゾ、カルボン酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、スルフィン酸エステル、又はエーテル基を包含するノボラック及びレゾール樹脂等のフェノール性樹脂を包含する。フェノール性樹脂のヒドロキシ基は、例えば、米国特許第6,218,083号(McCulloughら)及び国際公開第99/001795号(McCulloughら)に記載されているような、Tが、極性基を表し、Zが、非ジアジド官能基を表す-T-Z基に変換することができる。ヒドロキシ基は、例えば、米国特許第5,705,308号(Westら)及び米国特許第5,705,322号(Westら)に記載されているようなo-ナフトキノンジアジド部分を含有するジアゾ基で誘導体化することもできる。他の有用なポリマーバインダーは、例えば、欧州特許出願公開第737 896 A号(Ishizukaら)に記載されているようなアクリレートコポリマー、例えば、国際公開第2005/039878号(Savariar-Hauckら)、独国特許第10 239 505号(Timpeら)及び国際公開第2004081662号(Memeteaら)に記載されているようなポリ(ビニルアセタール)並びに米国特許第6,391,524号(Yatesら)に記載されているセルロースエステルを包含する。
【0194】
上層のための更に他の有用なポリマーバインダーは、例えば、米国特許第7,163,770号(Saraiyaら)及び米国特許第7,160,653号(Huangら)に記載されている。
【0195】
ポリマーバインダーは、好ましくは、不溶化剤が上層中に存在しないこれらの場合に、総乾燥上層重量を基準として、15〜100重量%(より好ましくは、30〜95重量%)の乾燥被覆率で上層中に存在することができ、不溶化剤が、上層中に存在する場合、ポリマーバインダーは、好ましくは、99.9重量%まで、より好ましくは、99.5重量%まで、特に、98重量%まで、最も好ましくは、95重量%まで存在することができる。
【0196】
任意選択の成分
要素が、UV/VIS感応性かIR感応性であるどうかとは無関係に、放射感応性コーティングは、必須成分に加えて、下記の任意選択の成分のうちの1つ又は複数を含むことができる。コーティングが、いくつかの層からなる場合、任意選択の成分は、層のうちの1つ、いくつか又はすべての中に存在することができる。
【0197】
可視スペクトル範囲において高吸収を有する色素又は顔料は、コントラストを高めるために存在することができる(「コントラスト色素及び顔料」)。特に、適当な色素及び顔料は、コーティングのために使用される溶剤又は溶剤混合物中に良く溶けるか、顔料の分散形態中に容易に導入されるものである。適当なコントラスト色素は、とりわけ、ローダミン色素、ビクトリアブルーR及びビクトリアブルーBO、クリスタルバイオレット及びメチルバイオレット等のトリアリールメタン色素、アントラキノン顔料、アゾ顔料及びフタロシアニン色素及び/又は顔料を包含する。着色剤は、好ましくは、乾燥層重量を基準として、0〜15重量%、より好ましくは、0.5〜10重量%、特に好ましくは、1.5〜7重量%の量で存在する。
【0198】
更に、層は、界面活性剤(例えば、アニオン性、カチオン性、両性又は非イオン性テンシド又はそれらの混合物)を含むことができる。適当な例は、フッ素含有ポリマー、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド基を持つポリマー、ソルビトール-トリ-ステアレート及びアルキル-ジ-(アミノエチル)-グリシンを包含する。それらは、好ましくは、乾燥層重量を基準として、0〜10重量%、特に好ましくは、0.2〜5重量%の量で存在する。
【0199】
層は、クリスタルバイオレットラクトン又はフォトクロミック色素(例えば、スピロピラン等)等のプリントアウト色素を更に含むことができる。それらは、好ましくは、乾燥層重量を基準として、0〜15重量%、特に好ましくは、0.5〜5重量%の量で存在する。
【0200】
また、ポリ(グリコール)エーテル修飾シロキサン等の流動性向上剤は、層中に存在することができ、それらは、好ましくは、乾燥層重量を基準として、0〜1重量%の量で存在する。
【0201】
層は、メルカプト化合物(2-メルカプト-ベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール及び3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール)、及びトリフェニルホスフェート等の抗酸化剤を更に含むことができる。それらは、好ましくは、乾燥層重量を基準として、0〜15重量%、特に好ましくは、0.5〜5重量%の量で使用される。
【0202】
オーバーコート
オーバーコートは、保存中、露光中、特に、露光とさらなる処理の間の時間中に、大気中の酸素からコーティングを保護するためにネガ型原版の光重合性コーティング上に塗布することができる。その時間中、オーバーコートは、層の裂断なしに安全な取り扱い(製造、包装、輸送、露光等)が保証されるのに十分な光感応性コーティングとの接着を示さなければならない。酸素バリヤ層としてのその機能に加えて、オーバーコートは、指紋及び引掻き傷のような機械的損傷から光重合性コーティングも保護する。
【0203】
多くの水溶性ポリマーが、そのようなオーバーコートに適しているとして文献中に記載されている。適当な例は、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル及びビニルアセタール単位も含有することができる部分的に鹸化されたポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン並びに酢酸ビニル及びビニルエーテルとのそのコポリマー、ヒドロキシアルキルセルロース、ゼラチン、ポリアクリル酸、アラビアゴム、ポリアクリルアミド、デキストリン、シクロデキストリン、アルキルビニルエーテルと無水マレイン酸のコポリマーであり、5,000超の分子量を有するエチレンオキシドの水溶性高分子ポリマーが特に適している。ポリビニルアルコールは、好ましいオーバーコートポリマーである。ポリ(1-ビニルイミダゾール)又は1-ビニル-イミダゾールと国際公開第99/06890号に記載されているような少なくとも1つのさらなるモノマーのコポリマーと組み合わせたポリビニルアルコールも使用することができる。
【0204】
ポリビニルアルコールは、接着剤としてポリビニルピロリドンと組み合わせて使用することもできる。
【0205】
オーバーコートは、米国特許第3,458,311号、米国特許第4,072,527号、米国特許第4,072,528号、欧州特許出願公開第275 147 A1号、欧州特許出願公開第403 096 A1号、欧州特許出願公開第354 475 A1号、欧州特許出願公開第465 034 A1号及び欧州特許出願公開第352 630 A1号にも記載されている。
【0206】
好ましい実施形態において、オーバーコートは、ポリビニルアルコール又はポリ(1-ビニルイミダゾール)と組み合わせたポリビニルアルコール(又は、そのコポリマー)を含む。
【0207】
適当なポリビニルアルコールは、低廉な価格で市販されている。それらは、通常、0.1〜30重量%の範囲でアセテート基の残留含量を有する。特に好ましいのは、1.5〜22重量%の残留アセテート含量を持つポリ酢酸ビニルから得られるポリビニルアルコールである。使用されるポリビニルアルコールの分子量によって、オーバーコートの接着及び水溶性を制御することができる。より低い分子量は、水溶液によるオーバーコートの除去を促進する。
【0208】
水溶性オーバーコートは、ドクターブレードコーティング、ローラーコーティング、スロットコーティング、カーテンコーティング、噴霧又は浸漬方法等の当業者に知られている表面コーティング方法によって塗布することができる。0.05〜10g/m2から、より好ましくは、0.2〜3g/m2、最も好ましくは、0.3〜1g/m2の乾燥層重量が適している。
【0209】
多くの場合、水溶液で水溶性オーバーコートを塗布することが好ましい。このことは、環境及び人体に対する最小の有害効果を有する。
【0210】
しかしながら、一部の塗布については、有機溶剤を使用することが好ましいこともある。一部の基板において、水性コーティング溶液への有機溶剤0.5〜60重量%の添加は、接着を改善する。オーバーコートされることになる表面のわずかな溶剤和によって、本発明によるオーバーコートのポリマーの接着効果は、更に高められる。溶剤に対するそのような添加剤は、例えば、アルコール又はケトンであってよい。
【0211】
コーティングされることになる表面の均一かつ迅速な湿潤のために、アニオン性、カチオン性又は非イオン性湿潤剤を、コーティング溶液に添加することができる。オーバーコートは、安定剤、保存剤、染色剤、泡沫分離剤及びレオロジー添加剤を更に含むことができる。
【0212】
画像形成
画像様露光
放射感応性コーティングにおいて使用される吸収剤成分が、UV/VIS放射を吸収する場合、原版は、250〜750nmの波長のUV/VIS放射で、当業者に知られているように画像様露光される。このために、炭素アークランプ、水銀ランプ、キセノンランプ及び金属ハロゲン化物ランプ、又はレーザー若しくはレーザーダイオード等の一般的なランプを使用することができる。405nm(例えば、405±10nm)の範囲でUV放射を発光するUVレーザーダイオード、可視範囲(488nm又は514nm)で発光するアルゴンイオンレーザー及び約532nmで発光する周波数倍増fd:Nd:YAGレーザーは、放射源として特に興味深い。レーザー放射は、コンピューターを介してデジタル制御することができ、すなわち、コンピューター内の保存されたデジタル化情報を介して版の画像様露光を行うことができるように、オン又はオフすることができ、こうして、いわゆるコンピュータートゥプレート(ctp)印刷版を得ることができる。
【0213】
吸収剤成分が、IR放射を吸収する、すなわち、750超〜1,200nmの範囲で波長の放射を顕著に吸収し、好ましくは、その吸収スペクトルのこの範囲において吸収極大を示す場合、画像様露光は、IR放射源で行うことができる。適当な放射源は、例えば、750〜1,200nmの範囲で発光する半導体レーザー又はレーザーダイオード、例えばNd:YAGレーザー(1,064nm)、790と990nmの間で発光するレーザーダイオード、及びTi:サファイヤレーザーである。レーザー放射は、コンピューターを介してデジタル制御することができ、すなわち、コンピューター内に保存されたデジタル化情報を介して版画像様露光を行うことができるように、オン又はオフすることができ、こうして、いわゆるコンピュータートゥプレート(ctp)印刷版を得ることができる。当業者に知られているIRレーザーを備えたいずれのイメージセッターも使用することができる。
【0214】
「サーマルプレート」は、通常、光熱変換材料(ある種の波長の放射を吸収し、それを熱に変換する)を含有し、ほとんどの場合、IR放射に感応性である。しかしながら、画像様のように熱を直接印加することも可能である(例えば、熱印刷ヘッドを使用することにより)。
【0215】
画像様露光された原版は、コーティングの露光領域と非露光領域を含む。原版が、ポジ型かネガ型であったかどうかに応じて、露光領域は、非画像領域又は画像領域に対応する。
【0216】
画像様露光に関して記載されたいずれの実施形態も、本発明の他の態様に関して上又は下に記載されている本発明のいずれの適当な実施形態とも組み合わせることができる。
【0217】
露光原版の処理
露光後、原版は、非画像領域内のコーティングを除去し、それによって、前記領域内の基板を露出し、ガミングを提供するために、ツーインワン処理組成物(以降、「現像剤」とも)で処理され、原版が、ポジ型原版であった場合、非画像領域は、露光領域に対応し、一方、ネガ型原版については、非画像領域は、非露光領域に対応する。一実施形態によれば、露光と、現像剤による処理との間に予熱工程を行うことができる。
【0218】
原版が、放射感応性コーティングを保護するオーバーコートを含む場合、オーバーコートは、現像剤を塗布する前に水で洗浄/すすぐことにより除去することができる。
【0219】
典型的には、露光原版を、この液体を含有する塗布器で画像形成性層を擦るか拭うことにより現像剤と接触させる。代替方法として、露光原版を、現像剤でブラッシングするか、現像剤を、噴霧することにより原版に塗布してもよい。現像剤による処理は、現像剤浴中に露光された原版を浸すことにより行うこともできる。一実施形態によれば、処理は、浸漬タイプの現像浴、及び乾燥部を備えた市販の処理機内で行うことができる。加えて、導電率測定ユニットを、現像剤の現像剤活性を制御するために、処理機内に組み入れることができる。
【0220】
露光原版は、典型的には、5秒〜60秒間にわたって、18℃〜28℃の温度において現像剤で処理される。
【0221】
ある数の露光原版が処理された後、現像剤浴の現像活性(例えば、滴定又は導電率測定により測定される)は、所定のレベルを下回る。その場合、新鮮な現像剤を、浴に添加する(「トップアップ」方法とも呼ばれる)。処理される原版1m2当たり通常20mL〜200mL、典型的には、30〜120mLの新鮮な現像剤が、現像剤の容積とその活性/導電率値の両方を一定に保つために必要である。処理された平版印刷版は、画像形成性層が除去されて親水性基板の基礎をなす表面を露出する領域及び画像形成性層が除去されなかった相補的領域を含む。画像形成性層が除去されなかった領域は、インク受容性である。
【0222】
現像剤浴の活性を一定に保つために新鮮な現像剤を添加する代わりに、いわゆる補充液を添加することができる。補充液は、適当には、アルカリ試薬(例えば、ジエチルアミンのような有機アミンばかりでなく、EDTAの四ナトリウム塩のような水酸化物生成成分)の濃度が、使用される新鮮な現像剤中のアルカリ試薬の濃度と比較して高いこと、他の成分(特に、溶剤、例えば、ベンジルアルコールのような現像剤の活性に寄与するもの)の濃度が、新鮮な現像剤中と同じであるか高くてよい点で、新鮮な現像剤とは異なる。
【0223】
原版を現像剤と接触させた後、原版上に残っているいずれの過剰な前記現像剤も、例えば、圧搾ローラー又は空気ナイフによって圧搾することにより除去することができる。
【0224】
本発明において使用される現像剤は、特に限定されないが、非画像領域を除去し画像形成された版をガミングすることができるいずれのツーインワン現像剤も使用することができる。
【0225】
現像に関して記載されているいずれの実施形態も、上又は下に記載されている本発明のいずれの適当な実施形態とも組み合わせることができる
【0226】
ツーインワン現像剤
本発明の方法において使用される現像剤は、>6のpH値、好ましくは、7.5〜13.5のpH、より好ましくは、10〜13.5のpHを有することが好ましい水溶液である。
【0227】

水道水、脱イオン水又は蒸留水を使用することができる。水の量は、好ましくは、現像剤の総重量を基準として、45〜98重量%、特に好ましくは、50〜95重量%、特に好ましくは、80〜95重量%の範囲である。
【0228】
アルカリ成分
本発明において使用される現像剤は、任意選択で、アルカリ成分を含む。
【0229】
アルカリ成分は、例えば、アルカリケイ酸塩、アルカリ水酸化物、Na3PO4、K3PO4、NR4OHから選択することができ、各Rは、独立して、C1〜C4アルキル基及びC1〜C4ヒドロキシアルキル基、アミン及び上記のうちの2つ以上の混合物から選択される。
【0230】
アルカリ成分の量、又は混合物の場合のアルカリ成分の総量は、現像剤のpH値が、>6〜14であるように、好ましくは、pHが、7.5〜13.5の範囲、より好ましくは、10〜13.5の範囲であるように選択される。
【0231】
本発明において使用されるように、「アルカリケイ酸塩」という用語は、メタケイ酸塩及び水ガラスも包含する。ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムが好ましいケイ酸塩である。アルカリケイ酸塩が使用される場合、ケイ酸塩の量は、好ましくは、現像剤を基準として、少なくとも1重量%(SiO2として計算される)である。
【0232】
アルカリ水酸化物のうち、NaOH及びKOHが特に好ましい。
【0233】
通常、アルカリメタケイ酸塩の使用は、アルカリ水酸化物等のさらなるアルカリ添加物なしに12超のpH値を容易に提供する。水ガラスが使用される場合、アルカリ水酸化物は、12超のpH値が望まれる場合に加えて使用される。
【0234】
好ましい水酸化四級アンモニウムNR4OHは、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化トリメチルエタノールアンモニウム、水酸化メチルトリエタノールアンモニウム及びそれらの混合物を包含し、特に好ましい水酸化アンモニウムは、水酸化テトラメチルアンモニウムである。
【0235】
適当なアミンは、一級、二級及び三級アミンである。例は、モノエタノールアミン及びジエタノールアミンのようなモノアルカノールアミン及びジアルカノールアミンである。
【0236】
界面活性剤
本発明において使用される現像剤のさらなる任意選択の成分は、界面活性剤である。
【0237】
界面活性剤は、現像剤の他の成分と適合性であり、>6のpHを持つ水性アルカリ溶液に可溶性である限り、特に限定されない。界面活性剤は、カチオン性、アニオン性、両性又は非イオン性界面活性剤であってよい。
【0238】
アニオン性界面活性剤の例は、ヒドロキシアルカンスルホネート、アルキルスルホネート、ジアルキルスルホスクシネート、直鎖アルキルベンゼンスルホネート、分枝アルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテルの塩、ナトリウムN-メチル-N-オレイルタウレート、モノアミド二ナトリウムN-アルキルスルホスクシネート、石油スルホネート、硫酸化ヒマシ油、硫酸化タロー油、脂肪族アルキルエステルの硫酸エステルの塩、アルキル硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル、脂肪族モノグリセリドの硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルの硫酸エステルの塩、アルキルリン酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのリン酸エステルの塩、無水スチレンマレイン酸コポリマーの部分的に鹸化された化合物、オレフィン-無水マレイン酸コポリマーの部分的に鹸化された化合物、ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物、ナトリウムドデシルフェノキシベンゼンジスルホネート、アルキル化ナフタレンスルホネートのナトリウム塩、二ナトリウムメチレン-ジナフタレン-ジスルホネート、ナトリウムドデシル-ベンゼンスルホネート、(ジ)スルホン化アルキルジフェニルオキシド、アンモニウム又はカリウムペルフルオロアルキルスルホネート及びナトリウムジオクチル-スルホスクシネートを包含する。
【0239】
これらのアニオン性界面活性剤の中で特に好ましいのは、アルキルナフタレンスルホネート、ジスルホン化アルキルジフェニルオキシド、及びアルキルスルホネートである。
【0240】
非イオン性界面活性剤の適当な例は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレン2-ナフチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、グリセリン脂肪酸の部分エステル、ソルビタン脂肪酸の部分エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸の部分エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸の部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸の部分エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸の部分エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリ-グリセリン脂肪酸の部分エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸の部分エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、N,N-ビス-2-ヒドロキシアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、及びトリアルキルアミンオキシドを包含する。これらの非イオン性界面活性剤の中で特に好ましいのは、ポリオキシエチレンフェニルエーテル及びポリオキシエチレン-2-ナフチルエーテルである。
【0241】
更に、フッ素含有並びにシリコーンアニオン性及び非イオン性界面活性剤を同様に使用することができる。
【0242】
両性界面活性剤は、例えば、N-アルキルアミノ酸トリエタノールアンモニウム塩、コカミドプロピルベタイン、コカミドアルキルグリシネート、短鎖アルキルアミノカルボキシレートのナトリウム塩、N-2-ヒドロキシエチル-N-2-カルボキシエチル脂肪酸アミドエチルアミンナトリウム塩、及びカルボン酸アミドエーテルプロピオネートであり、好ましくは、コカミドプロピルベタインである。
【0243】
カチオン性界面活性剤の例は、塩化テトラブチルアンモニウム及び塩化テトラメチルアンモニウムのような塩化テトラアルキルアンモニウム、及びポリプロポキシル化塩化四級アンモニウムである。
【0244】
非イオン性、アニオン性及び両性界面活性剤並びにそれらの混合物が好ましい。
【0245】
本発明において使用される現像剤は、界面活性剤及びアルカリ成分から選択される少なくとも1つのメンバーを含むことが好ましい。
【0246】
上の界面活性剤のうちの2つ以上を、組み合わせて使用することができる。界面活性剤の量(又は、2つ以上を使用する場合には界面活性剤の総量)は、具体的に限定されないが、現像剤の総量を基準として、好ましくは、0.01〜20重量%、より好ましくは、2〜8重量%である。
【0247】
フィルム形成親水性ポリマー
本発明にとって有用なツーインワン現像剤は、水溶性であることが好ましいフィルム形成親水性ポリマーを含有する。
【0248】
適当なポリマーの例は、アラビアゴム、プルラン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース又はメチルセルロース等のセルロース誘導体、(シクロ)デキストリンのようなデンプン誘導体、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、多糖のようなポリヒドロキシ化合物、アクリル酸のホモポリマー及びコポリマー、メタクリル酸又はアクリルアミド、ビニルメチルエーテルと無水マレイン酸のコポリマー、酢酸ビニルと無水マレイン酸のコポリマー又はスチレンと無水マレイン酸のコポリマーである。好ましいポリマーは、カルボン酸、スルホン酸又はホスホン酸基又はそれらの塩を含有するモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸及びアクリルアミドプロパンスルホン酸、ポリヒドロキシ化合物及びデンプン誘導体のホモポリマー又はコポリマーである。
【0249】
ポリヒドロキシ化合物及びデンプン誘導体が特に好ましい。デンプン誘導体は、水溶性、好ましくは、冷水可溶性であるべきであり、デキストリン及びシクロデキストリン等のデンプン加水分解生成物、リン酸エステル及びカルバミン酸エステル等のデンプンエステル、カチオン性デンプンエーテル及びヒドロキシプロピルエーテル等のデンプンエーテル、カルボキシメチルデンプン及びアセチル化デンプンから選択され、上の誘導体から、デキストリン(四ホウ酸ナトリウムを含みEmsl and Starke GmbHからホウ砂デキストリンとして入手可能なデキストリンを包含する)が好ましい。
【0250】
デンプン誘導体のための出発生成物として使用されるデンプンは、様々な起源であってよく、例えば、トウモロコシ、ジャガイモ、ライ麦、小麦、米、マニオカ、タピオカ、クリ又はドングリから得ることができ、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンが好ましい。
【0251】
適当な水溶性ポリヒドロキシ化合物は、例えば、下記の構造:
R1(CHOH)nR2
により表すことができ、
式中、nは、4〜7の整数であり、
(i)R1は、水素、アリール、又はCH2OHであり;R2は、水素、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、CH2OR3(式中、R3は、水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である)、CH2N(R4R5)(式中、R4及びR5は、各々独立して、水素又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である)、又はCO2Hであるか又は
(ii)R1及びR2は、一緒に炭素-炭素単結合を形成し;
これらのツーインワン現像剤は、国際公開第02/101469号に記載されている。
【0252】
これらのポリヒドロキシ化合物の1つの群において、R1は、水素又はCH2OHであり、R2は、水素である。これらのポリヒドロキシ化合物の好ましい群において、nは、5又は6である。この群は、遊離のアルデヒド基もケトン基も運ばず、還元特性を示さない糖アルコール、構造H(CHOH)nHの化合物を包含する。糖アルコールは、自然源から得るか、還元糖の水素化により調製することができる。好ましい糖アルコールは、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、及びアラビトールを包含する。他の糖アルコールは、例えば、タリトール、ズルシトール、及びアロズルシトールを包含する。
【0253】
これらのポリヒドロキシ化合物の別の群において、R1及びR2は、一緒に炭素-炭素単結合を形成する。構造(CHOH)n(式中、nは、4〜7である)の炭素環式化合物が包含される。これらのポリヒドロキシ化合物の好ましい群において、nは、5又は6、より好ましくは、6である。
【0254】
1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロキシシクロヘキサンの9個の可能な立体異性体があり、それらのうちのいくつかは、天然に存在する。好ましいポリヒドロキシ化合物は、メソ-イノシット(シス-1,2,3,5-トランス-4,6-ヘキサヒドロキシシクロヘキサン)である。メソ-イノシットは、コーンスティープリカーから単離することができる。
【0255】
これらのポリヒドロキシ化合物の別の群において、R1は、水素、アリール、又はCH2OHであり、R2は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、CH2OR3(式中、R3は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である)、CH2N(R4R5)(式中、R4及びR5は、各々独立して、H又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である)、又はCO2Hである。
【0256】
これらのポリヒドロキシ化合物の別の群において、R1は、水素又はCH2OHであり、R2は、CO2Hである。R1は、Hであり、nは、4又は5であることがより好ましい。この基は、構造H(CHOH)nCO2H(式中、nは、4又は5である)のポリヒドロキシ化合物を包含する。概念的には、これらのポリヒドロキシ化合物は、対応するヘキソース又はペントース糖の酸化、すなわち、グルコース、ガラクトース、アロース、マンノース等のヘキソース糖のアルデヒド基の酸化、又はアラビノース、リボース、キシロース等のペントース糖のアルデヒドの酸化により製造することができる。
【0257】
ツーインワン現像剤において使用することができる別のタイプの親水性ポリマーは、
(m1)一級、二級及び/又は三級アミノ基、及び
(m2)-COOH、-SO3H、-PO2H2及びPO3H2(COOHが好ましい)から選択される酸基、及び
(m3)任意選択で、アルキレンオキシド単位-(CHR1-CH2-O)p-(式中、各R1は、独立して、H又はCH3を表し、pは、1〜50の整数である)を含み、
それは、欧州特許出願公開第2 028 548 A1号に詳細に記載されている。
【0258】
この種の親水性ポリマー中に存在する酸性官能基は、すべて遊離酸の形態であってよいか、前記基のすべては、塩の形態であるか、それらの一部は、遊離酸の形態であり、残りの部分は、塩の形態である。親水性ポリマーとの関連で酸性官能基に言及する場合、このことは、別段の規定がない限り、遊離酸性基、塩及びそれらの混合物を包含するべきである。
【0259】
一実施形態によれば、アミノ基は、直接か又はスペーサーを介してポリマー主鎖と結合しており、適当なスペーサーは、例えば、C1〜C4アルキレン基である。この実施形態内で、アミノ基は、ポリマー主鎖の炭素原子と直接結合していることが好ましい。
【0260】
別の実施形態によれば、アミノ基の窒素原子は、側鎖の一部ではないが、ポリマー主鎖の一部である。この実施形態の親水性ポリマーは、例えば、主鎖内に下記の構造単位(A1)を含むことができ:
【0261】
【化17】

【0262】
式中、Zは、直鎖又は分枝のC1〜C3(好ましくは、C1〜C2)アルキレン基であり、各R2は、独立して、H、C1〜C4アルキル、フェニル又はX-AGを表し、各Xは、独立して、二価の直鎖又は分枝の飽和又は不飽和炭化水素(例えば、C2〜C6アルキレン及びアリーレン)、ポリアルキレンオキシドを包含するアルキレンオキシド、及びポリエチレンイミンを包含するエチレンイミンから選択され、(Xは、ポリ(アルキレン)オキシド又はポリ(エチレン)イミンであることが好ましい)、各-AGは、独立して、上で定義されているような酸基を表す。(A1)におけるアミノ基が、末端アミノ基である場合、上で定義されているような第2のR2が存在し、追加の第3のR2が結合して、四級化窒素原子をもたらすことも可能である。
【0263】
一実施形態によれば、酸基は、直接か又はスペーサーを介してポリマー主鎖の炭素原子と結合しており、適当なスペーサーは、例えば、C1〜C4アルキレン基である。例えば、酸基を含むポリマーの構造単位は、下記の式により表され:
【0264】
【化18】

【0265】
式中、R1は、H又はCH3であり、Yは、単結合又はスペーサー(好ましくは、アルキレンオキシド、ポリ(アルキレン)オキシド、ポリ(エチレン)イミン、開環したラクトン、開環したラクタム、開環した無水物及びカルボン酸、並びにCxH2x (x=1〜6);特に好ましいのは、ポリ(アルキレン)オキシドスペーサーである)であり、AGは、-COOH、-SO3H、-PO2H2及びPO3H2から選択される酸基であり、好ましくは、-COOHである。
【0266】
別の実施形態によれば、酸基は、スペーサーを介してアミノ基の窒素原子と結合している。この場合、窒素原子は、上の単位(A1)で示され、単位(A1'):
【0267】
【化19】

【0268】
で更に例示されるようなポリマー主鎖の一部であることが特に好ましく、
Z、X及びAGは、上で定義されている通りである。
【0269】
フィルム形成ポリマーの量は、具体的に限定されず、現像剤の総量を基準として、好ましくは、1〜30重量%、より好ましくは、5〜20重量%である。
【0270】
現像剤のさらなる任意選択の成分
必須成分及び上に列挙されている任意選択の成分の他に、本発明において使用される現像剤は、有機溶剤、殺生物剤、錯化剤、緩衝物質、色素、消泡剤、着臭剤、防蝕剤及びラジカル阻止剤のようなさらなる添加剤を含有することができる。
【0271】
消泡剤:
適当な消泡剤は、例えば、市販のSilicone Antifoam Emulsion SE57 (Wacker)、TRITON(登録商標)CF32 (Rohm & Haas)、AKYPO(登録商標)LF (エーテルカルボン酸Chem Y)、Agitan 190 (Munzing Chemie)、TEGO(登録商標)Foamese 825 (修飾ポリシロキサン、TEGO Chemie Service GmbH、Germany)を包含する。シリコーンベースの消泡剤が好ましい。それらは、水に分散性か又は可溶性である。現像剤中の消泡剤の量は、現像剤の重量を基準として、好ましくは0〜1重量%、特に好ましくは、0.01〜0.5重量%である。1つの消泡剤又は2つ以上の混合物を使用することができる。
【0272】
緩衝剤:
適当な緩衝物質は、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン(TRIS)、リン酸水素塩、グリシン、3-(シクロヘキシルアミノ)-プロパンスルホン酸(CAPS)、炭酸水素塩、ホウ砂を包含するホウ酸塩、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパン-スルホン酸(CAPSO)、及び2-(N-シクロヘキシルアミノ)エタン-スルホン酸(CHES)を包含する。
【0273】
殺生物剤:
殺生物剤は、細菌、真菌及び/又は酵母に対して有効であるべきである。適当な殺生物剤は、例えば、N-メチロール-クロロアセトアミド、安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸エステル、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンのようなイソチアゾリノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、アミジン、グアニジン誘導体、四級アンモニウム塩、ピリジン、キノリン誘導体、ジアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール及びオキサジン誘導体並びにそれらの混合物を包含する。それらの量は、特に制限されず、溶液の総重量を基準として、好ましくは、0〜10重量%、特に好ましくは、0.1〜1重量%を占める。1つの殺生物剤又は2つ以上の混合物を使用することができる。
【0274】
錯化剤:
適当な錯化剤の例は:エチレンジアミン四酢酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、トリエチレンテトラアミン六酢酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、ニトリロ三酢酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、1,2-ジアミノシクロヘキサン-四酢酸及びそのカリウム又はナトリウム塩及び1,3-ジアミノ-2-プロパノール-四酢酸及びそのカリウム又はナトリウム塩等のアミノポリカルボン酸及びその塩、並びに2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、ホスホノエタン-2,2,2-トリカルボン酸及びそのカリウム又はナトリウム塩、アミノトリス-(メチレン-ホスホン酸)及びそのカリウム又はナトリウム塩等の有機ホスホン酸、ホスホノアルカン三カルボン酸又はその塩、及びグルコン酸ナトリウムを包含する。錯化剤は個別に、又は2つ以上の組合せとして使用することができる。上述の錯化剤の有機アミン塩を、それらのカリウム又はナトリウム塩の代わりに使用することができる。錯化剤の量は、溶液の総重量を基準として、好ましくは、現像剤中で0〜5重量%、特に好ましくは、0.01〜1重量%を占める。
【0275】
溶剤:
現像剤は、有機溶剤又は有機溶剤の混合物を含むこともできる。現像剤は、単一相液体である。結果として、有機溶剤は、相分離が起きないように、水と混和性であるか、現像剤に添加される程度まで現像剤に少なくとも可溶性でなければならない。下記の溶剤及びこれらの溶剤の混合物は、現像剤中で使用するのに適している:エチレングリコールフェニルエーテル等のフェノールのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドとの反応生成物;ベンジルアルコール;エチレングリコール及びプロピレングリコールの6個以下の炭素原子を有する酸とのエステル、並びに2-エチルエタノール及び2-ブトキシエタノール等のエチレングリコール、ジエチレングリコール、及びプロピレングリコールの6個以下の炭素原子を有するアルキル基とのエーテル。単一の有機溶剤又は有機溶剤の混合物を使用することができる。有機溶剤は、典型的には、現像剤の重量を基準として、0重量%〜約15重量%、好ましくは、現像剤の重量を基準として、3重量%〜5重量%の濃度で現像剤中に存在する。
【0276】
「スラッジ阻止剤」:
米国特許第6,383,717 B1号及び米国特許第6,482,578 B2号に詳細に記載されているように、スラッジは、画像形成が、原版のコーティング内のフリーラジカル重合に基づいているネガ型原版の場合に、フリーラジカル重合性材料の蓄積によって現像剤浴中に形成されることがある。スラッジ形成は、現像剤中のフィルター色素及びフリーラジカル阻止剤から選択される少なくとも1つの材料の存在により防止することができる。フィルター色素は、周囲の紫外及び可視放射を吸収し、ロードされた現像剤中に存在する放射感応性開始剤系により吸収される量を低減する。フリーラジカル阻止剤は、ロードされた現像剤中のモノマーのフリーラジカル重合を阻止する。
【0277】
フィルター色素の吸収は、放射感応性開始剤系の吸収に調和しており、更に、フィルター色素は、現像剤中で安定であるべきであり、現像剤の成分、又は放射感応性層とのいずれの化学反応も相互作用も受けるべきではない。
【0278】
日光又は同様な条件下で安定化効果を生み出すために必要とされるフィルター色素の濃度は、要因の数に左右されるであろうが、フィルター色素の濃度は、好ましくは、現像剤の重量を基準として、0〜2重量%、好ましくは、現像剤の重量を基準として、0.4〜2重量%である。
【0279】
フィルター色素は、十分なフィルター色素を現像剤に溶かし、領域350nm〜650nmのスペクトル領域において放射を吸収することができるように、現像剤に十分に可溶性でなければならない。1つ又は複数のスルホン酸基で置換された色素は、典型的には、現像剤に十分な溶解性を有するであろう。好ましい色素は、スルホン酸基で置換された黄色がかった、黄色の、オレンジ色の及び赤色の色素を包含する。特に好ましいのは、スルホン化アゾ色素である。適当な色素は、例えば、メタニルイエロー(C.I. 13065)及びメチルオレンジ(C.I. 13025)、トロペオリンO(C.I. 14270)、トロペオリンOO(C.I. 13080)、タルトラジン(C.I. 19140)等の他の同様の水溶性アゾ色素;オキソノールイエローK (Riedel-de-Haen); C.I. 13900、C.I. 14170、C.I. 18835、C.I. 18965、C.I. 18890、C.I. 18900、C.I. 18950 (polar yellow)、C.I. 22910、及びC.I. 25135等のアシッドイエロータイプの色素;並びにC.I. 14710、C.I. 14900、C.I. 17045、C.I. 18050、C.I. 1 8070、及びC.I. 22890等のアシッドレッドタイプの色素を包含する。他の適当な色素は、当業者には容易に明らかであろう。単一のフィルター色素又はフィルター色素の混合物を使用することができる。
【0280】
ポリマー安定剤又はフリーラジカルトラップとしても知られている適当なフリーラジカル阻止剤は、モノマー及びポリマーの安定化の当技術分野において良く知られている。
【0281】
モノマーの重合を開始しない生成物を形成するためにフリーラジカルと反応することができ、現像剤中で必要な溶解性及び安定性を有し、現像剤か又は印刷版の特性に悪影響を及ぼすことのないいずれの材料も、潜在的に使用することができる。それらは、例えば:キノン又はヒドロキノン部分を含有する化合物、特に、ベンゾキノン及び置換ベンゾキノン、並びにヒドロキノン及びヒドロキノンモノメチルエーテル(4-メトキシフェノール)、t-ブチルヒドロキノン(4-t-ブチルフェノール、TBHQ)、及びt-ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等の置換ヒドロキノン;レゾルシノール、ピロガロール、リン酸エステル;並びに2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、及び2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール等のヒンダードフェノール及びビスフェノール;ジ-t-ブチルニトロキシド及び2,2,6,6-テトラメチル-4-ピリドンニトロキシド等の安定なフリーラジカル;ニトロ置換芳香族化合物;アミノフェノール;フェノチアジン;並びに置換ジフェニルアミン、N,N'-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、及びN-フェニル-ナフチルアミン等の二級ジアリールアミンを包含する。好ましいラジカル阻止剤は、キノン、ヒドロキノン、ヒドロキノンのエーテル、及びヒンダードフェノールである。より好ましいのは、ヒドロキノンのエーテル、特に、ヒドロキノン及びヒンダードフェノールのエーテルである。好ましい化合物は、ヒドロキノンモノメチルエーテル(4-メトキシフェノール)、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、及び2,4,6-トリ-t-ブチルフェノールである。単一のフリーラジカル阻止剤又はフリーラジカル阻止剤の混合物を使用することができる。フリーラジカル阻止剤又はフリーラジカル阻止剤の混合物は、典型的には、現像剤の重量を基準として、0重量%〜3.0重量%、好ましくは、現像剤の重量を基準として、0..5重量%〜1.5重量%の濃度で現像剤中に存在する。
【0282】
防蝕剤:
防蝕剤の例は、ヒドロキシエチルホスホン酸及びその塩、アミノトリスメチレンホスホン酸及びその塩、並びにジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸及びその塩のようなホスホン酸及びそれらの塩;リン酸三ナトリウムのようなリン酸塩;ホウ砂のようなホウ酸塩;並びにグリセロール及び式
【0283】
【化20】

【0284】
(式中、zは、0、1又は2であり、R20及びR21は、独立して、水素又はC1〜C3アルキルである)を有するグリコールである。
【0285】
防蝕剤又はそのような作用剤の混合物は、典型的には、現像剤の重量を基準として、0〜10重量%、好ましくは、0.1〜5重量%、グリセロール又はグリコールの場合には、5〜10重量%の濃度で現像剤中に存在する。
【0286】
さらなる添加剤:
望ましい場合、現像剤中に着臭剤及び色素も存在することができる。色素は、現像剤及び補充液のような異なる処理用化学物質が、同じ使用者において並行して使用される場合に、使用者における混乱を防ぐために添加される。使用することができる色素のクラスについての例は、アゾ色素、トリアリールメタン色素又はフタロシアニンである。現像剤中の色素の濃度は、典型的には、0.0005〜0.5重量%である。
【0287】
着臭剤は、現像剤中の他の成分の不快な臭いを相殺するために使用される。着臭剤の典型的な濃度は、0.001〜1重量%以内である。
【0288】
乾燥
現像された版を圧搾した直後に、それを乾燥する。
【0289】
本発明は、露光された平版印刷版原版を現像するための処理機も提供する。処理機は、機械の中に(印刷)版を導くための1対の搬送ローラー、版の両面をこすり洗いする、搬送ローラーの何倍もの速度を持つ1対の回転するブラシ(又は、プラッシュ、いわゆるモルトン)、及び過剰のゴムを取り去る最後の1対の圧搾ローラーを包含する。1対の圧搾ローラーは、版を受けとり、版から過剰の溶液を除去するためのニップを形成するために上下に配置される。この構成は、そのような印刷版処理機にとって一般的である。例は、Agfa-GevaertのC85 Cleaning Unitである。
【0290】
本発明によれば、乾燥機は、「圧搾器」(例えば、圧搾ローラー又は空気ナイフであってよい)の直後に提供され、すなわち、現像剤による処理と乾燥工程の間のすすぎ工程はない。乾燥機は、(印刷)版の少なくとも印刷面から版を乾燥するために提供する。
【0291】
本発明内で、「直ちに乾燥すること」とは、乾燥が、圧搾後1分未満、より好ましくは、30秒未満、更により好ましくは、15秒未満、最も好ましくは、10秒未満の時間内に始まることを意味することが好ましい。
【0292】
乾燥は、下記の可能性のうちの少なくとも1つにより行うことができる:
(i)空気送風
(ii)ホットローラー
(iii)放射源
(iv)クイックベーキング。
【0293】
一実施形態によれば、乾燥は、空気送風機により行われる。この実施形態については、乾燥機の温度及び/又は空気流は、最適かつ効率的な乾燥が、温度及び/又は空気流を個別に調整することにより得ることができるように可変又は調整可能である。本発明は、特に、乾燥が、強制空気流で行われ、増加した処理速度、例えば、1.5m/分以上を提供することを包含する。本明細書では、強制的な暖気又は冷気さえ使用することができる。しかしながら、現像済版を乾燥するために、本発明によれば、乾燥機のヒーターは、版を60℃超に加熱せず、好ましくは、空気温度は、18〜100℃である。乾燥パラメーター温度及び/又は空気流の調整機能が重要であるのは、高すぎる温度は、より早く乾燥できる-基本的に望ましい-が、同時に、現像剤は、溶剤が蒸発する前に温まり、したがって、より攻撃的になるためである。このことは、微細ドットの欠損及びより低い解像度をもたらす。
【0294】
また、空気流乾燥機と版表面の間の距離は、可変又は調整可能であってよい。一実施形態によれば、それは、0.5cm〜20cm、より好ましくは、1〜15cmである。一実施形態によれば、空気流は、版の印刷面のみに向けられ、一方、別の実施形態によれば、第1の空気流は、版の印刷面に向けられ、第2の空気流は、版の裏面に向けられる。
【0295】
空気流乾燥機が使用される場合、空気流は、層流から乱流まで変更可能であってよい。60℃以下までの版温度の制限のため、乾燥後に冷却工程は必要とされない。
【0296】
空気流は、例えば、5〜20秒にわたって版に向けることができる。空気温度は、18〜100℃であることが好ましい。
【0297】
空気流乾燥機の代替案として、放射乾燥機を使用することができる。そのような放射乾燥機で、放射源と版の間の距離及び/又は放射源により放出されるエネルギーは、可変又は調整可能である。放射源の例は、赤外(IR)ビーマー又は白色光電球である。放射は、(印刷)版の印刷面に向けられるか、2つの放射源があり、1つは、印刷面に向けられ、1つは、版の裏面に向けられる。
【0298】
放射源と版の間の距離は、IR放射については1〜50cm、白色光電球については2〜40cmの可変/調整可能である。IR放射が使用される場合、800〜5000nmの波長を有することが好ましい。
【0299】
放射は、例えば、IRセラミックラジエーターにより提供することができ、各々は、例えば、0.5〜1.5kWの可変電力消費量を有し、言うまでもなく、電力消費量は、異なる数のラジエーターを使用することにより可変/調整可能であってもよい。例えば、各々が1〜1.5kWの電力消費量を有する3つまでのラジエーターを使用することができる。
【0300】
代替方法として、乾燥機は、最大3分にわたって少なくとも150℃の温度におけるクイックベーキング方法を行うことができ、この代替方法については、温度は、300℃以下の値に調整できることが好ましい。好ましい条件は、2分にわたって200℃である。版の適切な冷却は、クイックベーキング後に行われることが好ましい。
【0301】
別の代替方法によれば、乾燥は、ホットローラーで行われ、ローラーの温度は、可変又は調整可能であり、少なくとも30℃、好ましくは、30〜100℃である。ローラーは、ゴム又は金属(例えば、クロム)のような様々な材料で作られていてよい。
【0302】
「圧搾」直後に位置する乾燥機を有し、版の印刷面又は版の印刷面及び裏面からの乾燥を提供すると、優れたハイライトドットが得られ、版は、線形画像形成についてのより高い自由度を有する。
【0303】
上に記載されている乾燥方法のうちの2つ以上を組み合わせて使用することができる。乾燥のための2つ以上の方法を組み合わせる場合、それらは、後で又は同時にといずれの順序でも組み合わせることができる。
【0304】
本発明は、下記の実施例でより詳細に記載されるが、それらは、決して本発明を制限することは意図されていない。
【実施例】
【0305】
エチルバイオレット コントラスト色素、C.I. 42600 (CAS 2390-59-2、λmax=596nm)、(p-(CH3CH2)2NC6H4)3C+Cl-
IR色素A Trump色素は、下記の式により表され、Eastman Kodak Company (Rochester、NY)から入手することができる
【0306】
【化21】

【0307】
DEK ジエチルケトン
Dawanol(登録商標)PM PGMEとしても知られる、Dow Chemical (Midland、MI)から入手されたプロピレングリコールメチルエーテル
PMA 酢酸1-メトキシ-2-プロピル
BLO γ-ブチロラクトン
Byk(登録商標)307 25重量%キシレン/-酢酸メトキシプロピル溶液中のByk Chemie (Wallingford、CT)から入手可能な、ポリエトキシル化ジメチルポリシロキサンコポリマー
D11 エタナミニウム、N-[4-[[4-(ジエチルアミノ)フェニル][4-(エチルアミノ)-1-ナフタレニル]メチレン]-2,5-シクロヘキサジエン-1-イリデン]-N-エチル-、5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシベンゼン-スルホン酸との塩(1:1);PCAS、Longjumeau、Franceから入手可能な着色剤色素
【0308】
【化22】

【0309】
コポリマーAC534 52の酸価を持つN-フェニルマレイミド(37モル%)、メタクリルアミド(20モル%)、メタクリル酸(14モル%)及びN-(2-メタクリロイルオキシエチル)エチレン尿素(29モル%)のコポリマー
現像剤980 アルカノールアミン、界面活性剤、フェノキシアルカノール及び錯化剤を含む、主にネガティブな従来の及び熱フォトポリマー版のために使用されるKodakからの低pH現像剤
基板A 電解粗面化され、陽極酸化され、ポリ(ビニルホスホン酸)処理を受けた0.3mmゲージのアルミニウムシート
RX-04 Gifu Shellac、Japanから入手可能なスチレン無水マレイン酸コポリマー
S32処理機 NES Worldwide Inc、Massachusettes USAから入手可能なスプレーバーを備えた簡易処理機
【0310】
平版印刷版Aの調製
底層1を持つ版が、1,3-ジオキソラン:メタノール:BLO:H2O 60/20/10/10 w%の溶剤混合物にコポリマーAC534 2.06g、IR色素A 0.38g、色素D11 0.038g及びByk307 0.038gを溶かし、得られた組成物を基板A上にコーティングし、45秒にわたって135℃においてコーティングされた基板を乾燥して1.35g/m2の乾燥コーティング重量を提供することにより得られた。
【0311】
上層製剤は、ジエチルケトンとPMAの溶剤混合物(92:8) 40gにRX-04 2.38g、エチルバイオレット0.032g、Byk307 0.030gを溶かすことにより作製した。
【0312】
二重層版は、上に示されている底層の上に上層製剤をコーティングし、0.65g/m2の上層のコーティング重量を得ることにより得られた。このようにして形成された熱的に画像形成可能な要素を、45秒にわたって135℃において乾燥し、版Aを得た。
【0313】
(実施例1)
(比較例)
1つのそのような版Aを、固体を画像形成する内部テストパターン「プロット5」及び8×8ピクセルパターンを包含する「プロット115」を使用してCreo Trensetter Quantum IIで360rpmのドラム速度において0.5ワットステップで8ワットから始めて15ワットまでの電力シリーズで画像形成した。次いで、版を、20秒の滞留時間で26℃において、現像剤980を満たしたS32処理機中で現像した。現像した版を、裏面から版を乾燥する、処理機中に提供される暖気乾燥機で乾燥する(版温度:60℃;乾燥時間:10秒)。
【0314】
(実施例2)
別の版Aを、実施例1と同様に画像形成及び処理したが、版が、現像セクションの後に両面から乾燥されるように、現像後の版を、暖気送風機で上から加えて乾燥したことを除く。(空気温度:100℃;乾燥時間:10秒;送風機と版の間の距離:15cm;すべての値は、版の両面にあてはまる)。
【0315】
この最小露光における8×8ピクセル領域のクリアポイント(クリーンな背景を得るのに必要とされる最小電力と定義される)及び階調値(所与のラスターのドットサイズを表す) (SpectroPlateカメラ装置を使用して測定される)は、Table 1 (表1)に与えられる。クリアポイント(9.5W)と通常露光(13W)の間の階調値の差は、Table 1 (表1)に与えられる。
【0316】
【表1】

【0317】
両版のクリアポイントは、9.5ワットであった。しかしながら、ドットサイズ/階調値は、上から加えて乾燥された版では増加するエネルギーで低下した(実施例2)。通常露光(13W)において、両面から乾燥された版 (実施例2)は、より良い線形性(すなわち、50%に近い)を示した。
【0318】
(実施例3)
(比較例)
別の版Aを、Creo Trensetter Quantum IIを使用して2400dpiにおいて150lpi、200lpi、300lpi及び20μStaccatoのスクリーン線数におけるステップウェッジで画像形成した。版を、上の実施例1に記載されている条件下で処理した。
【0319】
(実施例4)
別の版を、上の実施例3に記載されているように画像形成し、上の実施例2に記載されている条件下で処理した。
【0320】
10%ドットサイズ間隔での10%〜90%におけるドットサイズ及び5%及び95%ドットは、SpectroPlateを使用して測定される。理想的には550%である全階調値は、Table 2 (表2)に示される。
【0321】
【表2】

【0322】
実施例3及び4における両版のハイライトも、100×拡大Lupeによる目視検査を使用して評価した。結果は、Table 3 (表3)に与えられる。この場合も、上から効率的に乾燥された版 (実施例4)は、特に、より高い解像度においてより良いドットサイズを示した。
【0323】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成された平版印刷版の製造方法であって、
(a)放射感応性コーティングを含む画像様露光された平版印刷版原版を、親水性フィルム形成ポリマーを含む水性現像剤で処理する工程、
(b)過剰の現像剤を除去するために工程(a)の現像された版を圧搾する工程、
(c)工程(b)の版を直ちに
(i)空気温度及び/又は空気流が、可変又は調整可能であり、版温度が、60℃以下である空気送風、
(ii)ローラーの温度が、可変又は調整可能であり、少なくとも30℃であるホットローラー、
(iii)放射源と版表面の間の距離及び/又は放射源により放出されるエネルギーが、可変又は調整可能である放射源、
(iv)少なくとも150℃の温度におけるクイックベーキング
のうちの少なくとも1つで、版の少なくとも印刷面から乾燥する工程
を含む方法。
【請求項2】
工程(c)において、乾燥が空気送風により行われ、空気流が、版の印刷面のみに向けられるか、第1の空気流が、版の印刷面に向けられ、第2の空気流が、版の裏面に向けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各空気流乾燥機と版表面の間の距離が、独立して、0.5〜20cmの範囲から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各空気流乾燥機の空気温度が、独立して、18〜100℃の範囲内で可変又は調整可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(c)において、乾燥が空気送風により行われ、空気流が、5〜20秒にわたって印加される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
放射感応性コーティングが、250〜750nmの範囲から選択される波長の放射に感応性であり、画像様露光が、250〜750nmの範囲から選択される波長の放射で行われるか又は放射感応性コーティングが、750超〜1,200nmの範囲から選択される波長の放射に感応性であり、画像様露光が、750超〜1,200nmの範囲から選択される波長の放射で行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記原版が、露光後ではあるが工程(a)の前に、任意選択で除去されるオーバーコートを任意選択で含むネガ型原版である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記原版が、750超〜1,200nmの範囲から選択される波長の放射に感応性である放射感応性コーティングを持つポジ型原版であり、画像様露光が、750超〜1,200nmの範囲から選択される波長の放射で行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
放射感応性コーティングが2層コーティングであり、内層が第1のポリマーバインダーを含み、外層がインク受容性であり、第1のポリマーバインダーと異なる第2のポリマーバインダーを含み、層のうちの少なくとも1つが、IR吸収材料を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1のポリマーバインダーが、N-置換環状イミド、(メタ)アクリルアミド、ペンダント環状尿素基を持つモノマー及び(メタ)アクリル酸から誘導されるコポリマーを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
露光後ではあるが工程(a)の前に、予熱工程を更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
水性現像剤が、ベンジルアルコール及び/又はジエタノールアミンを更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
現像剤の親水性フィルム形成ポリマーが、アラビアゴム;プルラン;セルロース誘導体;デンプン誘導体;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;多糖; nが、4〜7の整数であり、R1が、H、アリール又はCH2OHから選択され、R2が、H、C1〜C4アルキル、CH2OR3、CH2N(R4R5)及びCO2Hから選択され、R3、R4及びR5が、独立して、H及びC1〜C4アルキルから選択されるか、又は、R1及びR2が、C-C単結合を形成するポリヒドロキシ化合物R1(CHOH)nR2;並びに一級、二級及び/又は三級アミノ基並びに、同時に、COOH、SO3H、PO2H2及びPO3H2から選択される酸基を含むポリマーから選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記原版の放射感応性コーティングが、画像様露光中の熱又はIR放射の印加で凝集するポリマー粒子を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法を行うための装置。

【公表番号】特表2013−504084(P2013−504084A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527322(P2012−527322)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062886
【国際公開番号】WO2011/026907
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】