説明

平版印刷版原版および平版印刷方法

【課題】 レーザー走査による画像記録および機上現像が可能であり、機上現像性を良好に保持しつつ、細線再現性および耐刷性が優れた平版印刷版原版、および、該平版印刷版原版を用いた平版印刷方法を提供する。
【解決手段】 支持体上に、疎水性の主鎖および親水性のセグメント、または、親水性の主鎖および疎水性のセグメントを有するグラフトポリマーを含有する画像記録層を有し、該グラフトポリマーが分子内にエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有することを特徴とする平版印刷版原版、および、該平版印刷版原版を用いた平版印刷方法。画像記録層が赤外線吸収剤を含有する態様、および、画像記録層が機上現像可能である態様がより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版およびそれを用いる平版印刷方法に関する。詳しくは、コンピュータ等のデジタル信号に基づいて、例えば300〜1200nmの波長を有するレーザーを走査することにより直接製版することができる、いわゆるダイレクト製版可能な平版印刷版原版、および、前記平版印刷版原版を、現像処理工程を経ることなく、印刷機上で直接現像して印刷する平版印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙等の被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルム等の原画を通した露光を行った後、画像部の画像記録層を残存させ、非画像部の画像記録層をアルカリ性現像液または有機溶剤によって溶解して除去することで親水性の支持体の表面を露出させる方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
【0003】
従来の平版印刷版原版の製版工程においては、露光の後、非画像部を画像記録層に応じた現像液等によって溶解除去する工程が必要であるが、このような付加的に行われる湿式処理を不要化しまたは簡易化することが課題の一つとして挙げられている。特に、近年、地球環境への配慮から湿式処理に伴って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事となっているので、上記課題の解決の要請は一層強くなってきている。
【0004】
これに対して、簡易な製版方法の一つとして、平版印刷版原版の非画像部の除去を通常の印刷工程の中で行えるような画像記録層を用い、露光後、印刷機上で非画像部を除去し、平版印刷版を得る、機上現像と呼ばれる方法が提案されている。
機上現像の具体的方法としては、例えば、湿し水、インキ溶剤または湿し水とインキとの乳化物に溶解しまたは分散することが可能な画像記録層を有する平版印刷版原版を用いる方法、印刷機のローラー類やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法、湿し水、インキ溶剤等の浸透によって画像記録層の凝集力または画像記録層と支持体との接着力を弱めた後、ローラー類やブランケット胴との接触により、画像記録層の力学的除去を行う方法が挙げられる。
なお、本発明においては、特別な説明がない限り、「現像処理工程」とは、印刷機以外の装置(通常は自動現像機)を使用し、液体(通常はアルカリ性現像液)を接触させることにより、平版印刷版原版のレーザー未露光部分を除去し、親水性支持体表面を露出させる工程を指し、「機上現像」とは、印刷機を用いて、液体(通常は印刷インキおよび/または湿し水)を接触させることにより、平版印刷版原版のレーザー未露光部分を除去し、親水性支持体表面を露出させる方法および工程を指す。
【0005】
一方、近年、画像情報をコンピュータで電子的に処理し、蓄積し、出力する、デジタル化技術が広く普及してきており、このようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。これに伴い、レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させて、その光で平版印刷版原版を走査露光し
、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート技術が注目されてきている。したがって、このような技術に適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題の一つとなっている。
【0006】
平版印刷版原版のうち走査露光可能な平版印刷版原版としては、親水性支持体上にレーザー露光によりラジカルやブレンステッド酸などの活性種を発生しうる感光性化合物を含有した親油性感光性樹脂層が提案され、既に上市されている。この平版印刷版原版をデジタル情報に基づきレーザー走査し活性種を発生せしめ、その作用によって感光層に物理的、あるいは化学的な変化を起こし不溶化させ、引き続き現像処理することによってネガ型の平版印刷版を得ることができる。特に、親水性支持体上に感光スピードに優れる光重合開始剤、付加重合可能なエチレン性不飽和化合物、およびアルカリ現像液に可溶なバインダーポリマーとを含有する光重合型の感光層、および必要に応じて酸素遮断性の保護層とを設けた平版印刷版原版は、生産性に優れ、更に現像処理が簡便であり、解像度や着肉性もよいといった利点から、望ましい印刷性能を有する刷版となりうる。
【0007】
また、機上現像可能な平版印刷版としては、例えば、特許文献1には、親水性結合剤中に疎水性熱可塑性重合体粒子を分散させた像形成層を親水性支持体上に設けた平版印刷版原版が記載されている。この特許文献1には、上記平版印刷版原版を赤外線レーザーにより露光して、疎水性熱可塑性重合体粒子を熱により合体させて画像を形成させた後、印刷機のシリンダー上に取り付け、湿し水および/またはインキにより機上現像することが可能である旨記載されている。
このように微粒子の単なる熱融着による合体で画像を形成させる方法は、良好な機上現像性を示すものの、画像強度(支持体との密着性)が極めて弱く、耐刷性が不十分であるという問題を有していた。
【0008】
また、特許文献2および3には、親水性支持体上に、重合性化合物を内包するマイクロカプセルを含む画像記録層(感熱層)を有する平版印刷版原版が記載されている。
また、特許文献4には、支持体上に、赤外線吸収剤とラジカル重合開始剤と重合性化合物とを含有する画像記録層(感光層)を設けた平版印刷版原版が記載されている。
このような重合反応を用いる方法は、重合体微粒子の熱融着により形成される画像部に比べ、画像部の化学結合密度が高いため画像強度が比較的良好であるという特徴を有するが、実用的な観点から見ると、機上現像性、細線再現性および耐刷性のいずれも未だ不十分であり、実用化には至っていない。
【0009】
さらに、特許文献5には、支持体上に、重合性化合物と、ポリエチレンオキシド鎖を側鎖に有するグラフトポリマーまたはポリエチレンオキシドブロックを有するブロックポリマーを含有する画像記録層を設けた機上現像可能な平版印刷版原版が記載されている。
しかし、この技術は、機上現像性は良好ではあるが、細線再現性および耐刷性は未だ不十分である。
【特許文献1】特許第2938397号明細書
【特許文献2】特開2001−277740号公報
【特許文献3】特開2001−277742号公報
【特許文献4】特開2002−287334号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0064318号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術の上記欠点を改善することを目的になされたものである。すなわち、本発明の目的は、レーザー走査による画像記録および機上現像が可能であり、機上現像性を良好に保持しつつ、細線再現性および耐刷性が優れた平版印刷版原版、および、該平版印刷版原版を用いた平版印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下のとおりである。
1.支持体上に、疎水性の主鎖および親水性のセグメントまたは、親水性の主鎖および疎水性のセグメントを有するグラフトポリマーを含有する画像記録層からなり、該グラフトポリマーが分子内にエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有することを特徴とする平版印刷版原版。
【0012】
2.支持体上に、赤外線吸収剤を含有する前記1記載の平版印刷版原版。
【0013】
3.該グラフトポリマーが、エチレン性不飽和結合を下記一般式(1)〜(3)の群から選ばれる少なくとも1つの基として有することを特徴とする前記1または前記2に記載の平版印刷版原版。
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、XおよびYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子または−N−R12を表す。Zは酸素原子、硫黄原子、−N−R12またはフェニレン基を表す。R1〜R12はそれぞれ独立に、水素原子または1価の置換基を表す。)
【0016】
4.該画像記録層が、マイクロカプセルを含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【0017】
5.該画像記録層またはその他の層に少なくとも(a1)エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ含有する繰り返し単位と(a2)支持体表面と相互作用する官能基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位とを有する共重合体を含むことを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【0018】
6.該画像記録層が印刷インキおよび/または湿し水により除去可能であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の平版印刷版原版
【0019】
7.前記6に記載の平版印刷版原版を、印刷機に装着し、レーザーで画像様に露光した後、または、レーザーで画像様に露光した後、印刷機に装着し、該平版印刷版原版に油性インキと水性成分とを供給して、画像記録層の赤外線未露光部分を除去し、印刷する平版印刷方法。
【0020】
親水性基およびエチレン性不飽和結合を有するグラフトポリマーを含有する重合系の機上現像型平版印刷版原版の作用機構は、明確ではないが、該グラフトポリマーが存在することにより、画像記録層未露光部では、親水性パートが局在化して水の浸透性が上がり、機上現像性を向上させ、画像記録層露光部では、局在化した親水性パートの周囲も重合硬化するため、水の浸透性が抑制され、機上現像型の平版印刷版原版が得られると推定される。本発明では、ガラス転移温度の高い親水性基を用いることによって親水性パートの骨
格に相当する部分の機械的強度を向上させることができ、その結果、従来不十分であった細線再現性および耐刷性を、機上現像性を良好に保持しつつ良好なレベルにすることが可能になったと考えられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、レーザーによる画像記録が可能で、機上現像性を良好に保持しつつ、細線再現性および耐刷性が優れた平版印刷版原版、および該平版印刷版原版を用いる平版印刷方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の平版印刷版原版は、レーザーによる画像記録が可能であり、機上現像が可能な平版印刷版原版であって、支持体上に疎水性の主鎖および親水性のセグメントまたは、親水性の主鎖および疎水性のセグメントを有するグラフトポリマーを含有する画像記録層を有することを特徴とする。
また、本発明の平版印刷方法は、上記平版印刷版原版を、印刷機に装着し、レーザーで画像様に露光した後、または、レーザーで画像様に露光した後、印刷機に装着し、該平版印刷版原版に油性インキと湿し水を供給して、画像記録層のレーザー未露光部分を除去し、印刷するものである。
以下、本発明の平版印刷版原版の構成要素および印刷方法について詳細に説明する。
【0023】
〔画像記録層〕
本発明のグラフトポリマーは、疎水性の主鎖および親水性のセグメントまたは、親水性の主鎖および疎水性のセグメントを有するグラフトポリマーであり、該グラフトポリマーが分子内にエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有することを特徴とする。このグラフトポリマーを用いることによって、機上現像性を良好に保持しつつ、細線再現性および耐刷性が優れた平版印刷版原版を提供できる。
【0024】
グラフトポリマーの合成は基本的に、1.幹高分子から枝モノマーを重合させる、2.幹高分子に枝高分子を結合させる、3.幹高分子に枝高分子を共重合させる(マクロマー法)の3つの方法に分けられる。
これら3つの方法のうち、いずれを使用しても本発明のグラフトポリマーを合成することができるが、特に製造適性、合成の容易さという観点からは「3.マクロマー法」が優れている。マクロマーを使用したグラフトポリマーの合成は、高分子学会編「新高分子実験学2、高分子の合成・反応」共立出版(株)1995年刊行に記載されている。また山下雄也、他著「マクロモノマーの化学と工業」アイピーシー、1989年刊行にも詳しく記載されている。本発明のグラフトポリマーは、分子内にエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有し、疎水性の主鎖および親水性のセグメントまたは、親水性の主鎖および疎水性のセグメントを有するグラフトポリマーである。疎水性の主鎖および親水性のセグメントを有するグラフトポリマーは、枝部が親水性セグメントであり、親水性マクロマーと疎水性モノマーの共重合により容易に得られ、親水性の主鎖および疎水性のセグメントを有するグラフトポリマーは、枝部が疎水性セグメントであり、疎水性マクロマーと幹を構成する親水性モノマーの共重合により容易に得られる。本発明のグラフトポリマーは、さらに、分子内にエチレン性不飽和結合を導入されていることが、特徴である。以下、本発明のグラフトポリマーをより具体的に説明する。
【0025】
<疎水性の主鎖および親水性セグメントを有するグラフトポリマーの説明>
(親水性マクロマー)
本発明で使用される親水性マクロマー(マクロモノマーとも呼ばれる。)の親水性セグメントは、少なくとも1つのアミド基含有単量体、酸基含有単量体、酸基含有単量体のアルカリ金属塩、第四級アンモニウム塩含有単量体および水酸基含有単量体等の公知の親水
性単量体を有しており、上記単量体単位を50モル%以上含有する重合体であることが望ましい。
本発明で用いられる親水性マクロマーは、この親水性セグメントの末端に重合性基を結合して得られる。
【0026】
上記のアミド基含有単量体の具体例としては、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド等が挙げられる。
【0027】
酸基含有単量体の例としては、メタクリル酸、アクリル酸、スチレンスルホン酸等が挙げられる。酸基含有単量体のアルカリ金属塩としては、メタクリル酸のナトリウム塩、アクリル酸のナトリウム塩、スチレンスルホン酸ナトリウム、スルホン酸ナトリウムエトキシメタクリレート、スルホン酸ナトリウムエトキシアクリレート、モノ2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートのナトリウム塩などが挙げられる。
【0028】
第4級アンモニウム塩基含有単量体としては、メタクリル酸ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリル酸ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0029】
水酸基含有単量体としては2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレートなどが挙げられる。
【0030】
親水性セグメントの親水性度を調節するために用いられる疎水性単量体としては、アクリル酸エステル類、メタクリル酸類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知の疎水性モノマーが挙げられる。
【0031】
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−またはi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルアクリレート、クロロエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0032】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−またはi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2− (ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0033】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
【0034】
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0035】
これらの親水性マクロマーの好ましい分子量は400〜10万の範囲、より好ましい範囲は1000〜5万、特に好ましい範囲は1500〜2万である。この分子量の範囲内で、幹を形成する共重合モノマーとの重合性を損なうことなく、本発明の効果を発揮できる。
【0036】
(疎水性モノマー)
親水性マクロマーと共重合する疎水性モノマーの特に有用なものとしては、アクリル酸エステル類、メタクリル酸類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知の疎水性モノマーが挙げられる。これらのモノマーの中から適宜その1種をまたは2種以上を選択してグラフトポリマーを合成することができる。
【0037】
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−またはi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0038】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−またはi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2− (ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0039】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
【0040】
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメ
チルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0041】
上記疎水性モノマーは、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N'−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキルウレイド基、N'−アリールウレイド基、N',N'−ジアリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N',N'−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N'−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N'−アリール−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基(−PO32)およびその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−PO3H(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−PO3H(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO32)およびその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3H(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPO3H(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0042】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。これらのなかでも、効果および入手容易性の観点から、水素原子、メチル基およびエチル基がより好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル2基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0043】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0044】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12まての分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチルと、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチルル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、
カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0045】
<親水性の主鎖および疎水性セグメントを有するグラフトポリマーの説明>
(疎水性マクロマー)
本発明で使用される疎水性マクロマー(マクロモノマーともいう)の疎水性セグメントとしては、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知の疎水性モノマーから選ばれた1種を重合したもの、または2種以上を共重合したものが挙げられる。本発明の疎水性マクロマーは、この疎水性セグメントの末端に重合性基を結合して得られる。
【0046】
上記疎水性モノマーおよび有することのできる置換基の具体例としては、本明細書の上記(疎水性モノマー)の説明において記載の単量体を挙げることができる。
【0047】
これらの疎水性マクロマーの好ましい分子量は400〜10万の範囲、より好ましい範囲は1000〜5万、特に好ましい範囲は1500〜2万である。この分子量の範囲内で、主鎖を形成する共重合モノマーとの重合性を損なうことなく、本発明の効果を発揮できる。
【0048】
(親水性モノマー)
疎水性マクロマーと共重合する親水性モノマーとしては、アミド基含有単量体、酸基含有単量体、酸基含有単量体のアルカリ金属塩、第四級アンモニウム塩含有単量体、水酸基含有単量体等の公知の親水性モノマーが挙げられる。これらの親水性モノマーの中から適宜選択した1種以上を上記疎水性モノマー1種以上と共重合してグラフトポリマーを合成することができる。
【0049】
アミド基含有単量体の具体例としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
【0050】
酸基含有単量体、第四級アンモニウム塩基含有単量体および水酸基含有単量体の具体例としては、本明細書の上記(親水性マクロマー)の説明における酸基含有単量体、第四級アンモニウム塩基含有単量体および水酸基含有単量体の具体例と同じものを挙げることができる。
【0051】
本発明においては、グラフトポリマーの主鎖に上記親水性モノマーの他に疎水性モノマーを共重合して、主鎖の親水性度を適宜調節することもできる。疎水性モノマーの具体例としては、本明細書の上記(疎水性モノマー)の説明に記載のモノマーを挙げることができる。主鎖中の疎水性モノマーの導入量は、0〜50モル%が好ましく、0〜30モル%がより好ましい。
【0052】
<エチレン性不飽和結合の導入>
本発明では、画像記録層の皮膜特性や機上現像性の向上のため、前記グラフトポリマー中にエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有することを必須要件としている。エチレン性不飽和結合として、下記一般式(1)〜(3)の群から選ばれる少なくとも一つの基を有することが好ましい。
【0053】
【化2】

【0054】
(式中、X、Yはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子または−N−R12を表す。Zは酸素原子、硫黄原子、−N−R12またはフェニレン基を表す。R1〜R12はそれぞれ独立に、水素原子または1価の置換基を表す。)
【0055】
前記一般式(1)において、R1〜R3はそれぞれ独立して1価の置換基を表し、例えばR1としては、水素原子、1価の有機基例えば置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基、メチルアルコキシ基、メチルエステル基が好ましい。また、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有しても良いアルコキシ基、置換基を有しても良いアリールオキシ基、置換基を有しても良いアルキルアミノ基、置換基を有しても良いアリールアミノ基、置換基を有しても良いアルキルスルホニル基、置換基を有しても良いアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアリール基が好ましい。ここで、導入しうる置換基としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロピオキシカルボニル基、メチル基、エチル基、フェニル基等が挙げられる。Xは、酸素原子、硫黄原子、または、-N-R12を表し、R12としては、置換基を有しても良いアルキル基などが挙げられる。
【0056】
前記一般式(2)において、R4〜R8は、それぞれ独立して1価の置換基を表し、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。導入しうる置換基としては、一般式(1)において挙げたものが例示される。
Yは、酸素原子、硫黄原子、またはN−R12を表す。R12としては、一般式(1)において挙げたものが挙げられる。
【0057】
前記一般式(3)において、R9〜R11は、それぞれ独立して1価の置換基を表し、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。ここで、置換基としては、一般式(1)において挙げたものが同様に例示される。Zは、酸素原子、硫黄原子、−N−R12またはフェニレン基を表す。R12としては、一般式(1)において挙げたものが挙げられる。
【0058】
本発明の平版印刷版原版に使用されるグラフトポリマーのうち、(1)で表される基を有する化合物は、下記に示す1)、2)の合成方法の少なくとも1つにより製造することができる。
【0059】
合成方法1)
上記親水性マクロマーおよび疎水性マクロマー合成時、下記一般式(4)または(5)で表されるラジカル重合性化合物の1種以上を加えて重合させてマクロモノマーを合成し、該マクロモノマーと上記親水性モノマーまたは疎水性モノマーとを共重合した後、あるいは、マクロモノマーと、上記親水性モノマーまたは疎水性モノマーとの共重合時に下記一般式(4)または(5)で表されるラジカル重合性化合物の1種以上を加えて重合した後に、塩基処理することにより脱離反応を生起させ、式中のX1およびZ1を除去し、所望のグラフトポリマーを得る方法。
【0060】
【化3】

【0061】
上記式中、X1およびZ1は脱離反応により除去される脱離基であり、ここで言う脱離反応とは、塩基の作用によりZ1が引き抜かれ、X1が脱離するものである。X1はアニオンとして、Z1はカチオンとして脱離するものが好ましい。
1の具体例としては、ハロゲン原子、スルホン酸基、スルフィン酸基、カルボン酸基、シアノ基、アンモニウム基、アジド基、スルホニウム基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシ基、オキソニウム基が例として挙げられ、ハロゲン原子、スルホン酸基、アンモニウム基、スルホニウム基が好ましい。中でも、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキルスルホン酸基、アリールスルホン酸基が特に好ましい。好ましいアルキルスルホン酸基の例としては、メタンスルホン酸基、エタンスルホン酸基、1−プロパンスルホン酸基、イソプロピルスルホン酸基、1−ブタンスルホン酸基、1−オクチルスルホン酸基、1−ヘキサデカンスルホン酸基、トリフルオロメタンスルホン酸基、トリクロロメタンスルホン酸基、2−クロロ−1−エタンスルホン酸基、2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸基、3−クロロプロパンスルホン酸基、パーフルオロ−1−ブタンスルホン酸基、パーフルオロ−1−オクタンスルホン酸基、10−カンファースルホン酸基、ベンジルスルホン酸基が挙げられる。好ましいアリールスルホン酸基の例としては、ベンゼンスルホン酸基、トランス−ベータ−スチレンスルホン酸基、2−ニトロベンゼンスルホン酸基、2−アセチルベンゼンスルホン酸基、3−(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホン酸基、3−ニトロベンゼンスルホン酸基、4−ニトロベンゼンスルホン酸基、p−トルエンスルホン酸基、4−tert−ブチルベンゼンスルホン酸基、4−フルオロベンゼンスルホン酸基、4−クロロベンゼンスルホン酸基、4−ブロモベンゼンスルホン酸基、4−ヨードベンゼンスルホン酸基、4−メトキシベンゼンスルホン酸基、4−(トリフルオロメトキシ)ベンゼンスルホン酸基、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸基、2−ニトロ−4−(トリフルオロメチル)−ベンゼンスルホン酸基、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸基、2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸基、2−メシチレンスルホン酸基、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホン酸基、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸基、1−ナフタレンスルホン酸基、2−ナフタレンスルホン酸基が挙げられる。
【0062】
1の具体例としては、水素原子、ハロゲン原子、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、オキソニウム基が挙げられ、中でも水素原子が特に好ましい。塩基の作用によりプロトンが引き抜かれ、X1が脱離する。
本発明において、最も好ましい組合せとしては、X1がハロゲン原子、Z1が水素原子であり、この場合、X1がアニオンとして、Z1がカチオンとして脱離する。
なお、一般式(4)および(5)において、R13は水素原子または置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、中でも、水素原子、メチル基、メチルアルコキシ基、メチルエステル基が好ましい。Qは、酸素原子、−NH−、またはNR14−(ここで、R14は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)を表す。Aは、2価の有機連結基を表す。R1〜R3およびXは一般式(1)〜(3)の場合と同義である。
【0063】
一般式(4)および(5)において、Aで表される2価の有機連結基は、1から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、および0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては、下記の構造単位が組み合わさって構成されるものを挙げることができる。
【0064】
【化4】

【0065】
(脱離反応に用いられる塩基)
本発明において好ましく用いられる、側鎖に一般式(1)で表される基を少なくとも1つ有するグラフトポリマーの製造方法では、塩基処理によって特定官能基に脱離反応を生起させ、式中のX1およびZ1を除去し、ラジカル反応性基を得ることを特徴とするが、その際に使用される塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物または炭酸塩、有機アミン化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。
アルカリ金属類の水素化物、水酸化物または、炭酸塩の好ましい例としては、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウ
ムなどが挙げられる。
有機アミン化合物の好ましい例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−エチルジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、1、8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルエチルアミン、Schiff塩基などが挙げられる。
金属アルコキシド化合物の好ましい例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどが挙げられる。これらの塩基は、1種あるいは2種以上の混合であってもよい。
【0066】
本発明における脱離反応において、塩基を添加する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、水などが挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合してもよい。
【0067】
使用される塩基の量は、化合物中の特定官能基の量に対して、当量以下であってもよく、また当量以上であってもよい。
また、過剰の塩基を使用した場合、脱離反応後、余剰の塩基を除去する目的で酸などを添加することも好ましい形態である。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、過塩素酸のような無機酸、酢酸、フルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸のような有機酸が例としてあげられる。
脱離反応における、温度条件は、室温、冷却、過熱いずれの条件であってもよい。好ましい温度条件としては、−20〜100℃の範囲である。
【0068】
一般式(4)および(5)で表されるラジカル重合性化合物としては、下記の化合物を例として挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
【化5】

【0070】
【化6】

【0071】
【化7】

【0072】
【化8】

【0073】
【化9】

【0074】
合成方法2)
1種以上の官能基を有するラジカル重合性化合物と上記マクロマーを共重合させてグラフトポリマーを合成した後に、グラフトポリマーの該官能基と一般式(6)で表される構造を有する化合物を反応させて所望のグラフトポリマーを得る方法。
【0075】
【化10】

【0076】
一般式(6)のR1〜R3は、一般式(1)の場合と同義である。
【0077】
合成方法2)においてグラフトポリマーの合成に用いる官能基を有するラジカル重合性化合物の官能基の例としては、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基、カルボン酸無水物基、アミノ基、ハロゲン化アルキル基、イソシアネート基、エポキシ基等が挙げられる。これらの官能基を有するラジカル重合性化合物としては、2一ヒドロキシルエチルアクリレート、2一ヒドロキシルエチルメタクリレート、4一ヒドロキシブチルアクリ
レート、4一ヒドロキシブチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、メタクリル酸無水物、N,N一ジメチル−2−アミノエチルメタクリレート、2−クロロエチルメタクリレート、2−イソシアン酸エチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリンジルメタクリレート等が挙げられる。このような1種以上のラジカル重合性化合物とマクロモノマーを共重合させて、さらに必要に応じて他のラジカル重合性化合物と共重合させ、幹高分子化合物を合成した後に、一般式(6)で表される基を有する化合物を反応させて所望の高分子化合物を得ることできる。ここで、一般式(6)で表される基を有する化合物の例としては、前述の官能基を有するラジカル重合性化合物の例として挙げた化合物が挙げられる。
【0078】
本発明において好ましく用いられる、グラフトポリマー中に一般式(2)で表される基を有する特定高分子化合物は、下記に示す3)および4)の合成方法の少なくとも1つにより製造することできる。
【0079】
合成方法3)
上記マクロマー合成時に、一般式(2)で表される不飽和基と、該不飽和基よりもさらに付加重合性に富んだエチレン性不飽和基とを有するラジカル重合性化合物を1種以上加えて重合させてマクロマーを合成し、該マクロマーと親水性モノマーまたは疎水性モノマーを共重合してグラフトポリマーを得る方法、あるいはマクロマーと親水性モノマーまたは疎水性モノマーとの共重合時に、一般式(2)で表される不飽和基と、該不飽和基よりもさらに付加重合性に富んだエチレン性不飽和基とを有するラジカル重合性化合物を加えて共重合してグラフトポリマーを得る方法。この方法は、一分子中に付加重合性の異なるエチレン性不飽和基を複数有する化合物を用いる方法である。
【0080】
一段式(2)で表される不飽和基と、該不飽和基よりも更に付加重合性に富んだエチレン性不飽和基とを有するラジカル重合性化合物としては、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、2−アリロキシエチルアクリレート、プロパルギルアクリレート、プロパルギルメタクリレート、N−アリルアクリレート、N−アリルメタクリレート、N,N−ジアリルアクリレート、N,N一ジアリルメタクリレート、アリルアクリルアミド、アリルメタクリルアミド等が例として挙げられる。また、官能基を有するラジカル重合性化合物を1種以上重合させて得られる高分子化合物の例としては、前述の合成方法2)で示した例が挙げられる。
【0081】
合成方法4)
マクロマー合成時に、官能基を有するラジカル重合性化合物を加えて共重合させてマクロマーを合成し、該マクロモノマーと親水性モノマーまたは疎水性モノマーを共重合させてグラフトポリマーを合成した後、あるいは、マクロマーと親水性モノマーまたは疎水性モノマーとの共重合時に、官能基を有するラジカル重合性化合物を加えて共重合させてグラフトポリマーを合成した後に、該グラフトポリマーと下記一般式(7)で表される構造を有する化合物を反応させて一般式(2)で表される基を導入する方法。
【0082】
【化11】

【0083】
一般式(7)のR4〜R8は、一般式(2)の場合と同義である。
【0084】
一般式(7)で表される構造を有する化合物としては、アリルアルコール、アリルアミン、ジアリルアミン、2−アリロキシエチルアルコール、2−クロロ−1−ブテン、アリルイソシアネート等が例として挙げられる。
【0085】
本発明において好ましく用いられる、側鎖に一般式(3)で示される基を有する前記特定高分子化合物は、下記に示す5)、6)の合成方法の少なくとも1つにより製造することできる。
【0086】
合成方法5)
上記マクロマー合成時に、一般式(3)で表される不飽和基と、該不飽和基よりもさらに付加重合性に富んだエチレン性不飽和基とを有するラジカル重合性化合物を1種以上加えて重合させてマクロマーを合成し、該マクロマーと親水性モノマーまたは疎水性モノマーを共重合してグラフトポリマーを得る方法、あるいはマクロマーと親水性モノマーまたは疎水性モノマーとの共重合時に、一般式(3)で表される不飽和基と、該不飽和基よりもさらに付加重合性に富んだエチレン性不飽和基とを有するラジカル重合性化合物を加えて共重合してグラフトポリマーを得る方法。この方法は、一分子中に付加重合性の異なるエチレン性不飽和基を複数有する化合物用いる方法である。
【0087】
一般式(3)で表される不飽和基と該不飽和基よりもさらに付加重合性に富んだエチレン性不飽和基とを有するラジカル重合性化合物としては、ビニルアクリレート、ビニルメタクリレート、2−フェニルビニルアクリレート、2−フェニルビニルメタクリレート、1−プロペニルアクリレート、1−プロペニルメタクリレート、ビニルアクリルアミド、ビニルメタクリルアミド等が例として挙げられる。官能基を有するラジカル重合性化合物を1種以上重合させて得られる高分子化合物の例としては、前述の合成方法2)において示した例が挙げられる。
【0088】
合成方法6)
マクロマー合成時に、官能基を有するラジカル重合性化合物を加えて共重合させた後に、グラフトポリマーを合成し、該グラフトポリマーと下記一般式(8)で表される構造を有する化合物を反応させて一般式(3)で表される基を導入する方法、あるいは、マクロモノマーと親水性モノマーまたは疎水性モノマーとの共重合時に、官能基を有するラジカル重合性化合物を加えて共重合させてグラフトポリマーを合成した後に、該グラフトポリマーと下記一般式(8)で表される構造を有する化合物を反応させて一般式(3)で表される基を導入する方法。
【0089】
【化12】

【0090】
一般式(8)のR9〜R11は、一般式(3)の場合と同義である。
【0091】
一般式(8)で表される構造を有する化合物としては、2−ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4一クロロメチルスチレン等が例として挙げられる。
【0092】
本発明のグラフトポリマー中の親水性マクロマー含有率は、10〜90質量%が好ましく、より好ましくは15〜85質量%である。
また、本発明のグラフトポリマーの質量平均分子量は、5000〜100万が好ましく、より好ましくは1万〜50万である。
【0093】
本発明のグラフトポリマーの画像記録層への含有量は、画像記録層の全固形分に対して、10〜90質量%であるのが好ましく、15〜80質量%であるのがより好ましく、20〜70質量%がさらに好ましい。これらの範囲内で、機上現像性と、細線再現性および耐刷性とを共に良好にする本発明の効果が得られる。
【0094】
<赤外線吸収剤>
本発明の平版印刷版原版を、例えば760〜1200nmの赤外線を発するレーザーを光源により画像形成する場合には、通常、赤外線吸収剤を用いることが必須である。赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。この際発生した熱により、後述する重合開始剤(ラジカル発生剤)が熱分解し、ラジカルを発生する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料または顔料である。
【0095】
染料としては、市販の染料および例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
【0096】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等の公報に記載されているスクワリリウム色素、英国特許第434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0097】
また、米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、本発明の赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特開2002−278057号公報記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0098】
【化13】

【0099】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。さらに、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい一つの例として下記一般式(I)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0100】
【化14】

【0101】
一般式(I)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1または以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
【0102】
【化15】

【0103】
Xa-は後述するZa-と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0104】
1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
【0105】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環およびナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(I)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0106】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(I)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。
また、特に好ましい他の例としてさらに、前記した特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0107】
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0108】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0109】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0110】
顔料の粒径は0.01〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1〜1μmの範囲にあることが好ましい。この範囲で、顔料分散物の画像記録層塗布液中での良好な安定性と画像記録層の良好な均一性が得られる。
【0111】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0112】
これらの赤外線吸収剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよいが、ネガ型平版印刷版原版を作製した際に、画像記録層の波長760nm〜1200nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が、反射測定法で0.3〜1.2の範囲にあるように添加することが好ましく、より好ましくは、0.4〜1.1の範囲である。この範囲で、画像記録層の深さ方向での均一な重合反応が進行し、良好な画像部の膜強度と支持体に対する密着性が得られる。
画像記録層の吸光度は、画像記録層に添加する赤外線吸収剤の量と画像記録層の厚みにより調整することができる。吸光度の測定は常法により行うことができる。測定方法としては、例えば、アルミニウム等の反射性の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの画像記録層を形成し、反射濃度を光学濃度計で測定する方法、積分球を用いた反射法により分光光度計で測定する方法等が挙げられる。
【0113】
<重合開始剤>
本発明の画像記録層に用いられる重合開始剤としては、使用する光源の波長により、特許、文献等で公知である種々の光重合開始剤、または2種以上の光重合開始剤の併用系(光重合開始系)を適宜選択して使用することができる。
【0114】
青色半導体レーザー、Arレーザー、赤外半導体レーザーの第2高調波、SHG−YAGレーザーを光源とする場合には、種々の光重合開始剤(系)が提案されており、例えば米国特許第2,850,445号明細書に記載のある種の光還元性染料、例えばローズべンガル、エオシン、エリスロシンなど、あるいは染料と開始剤との組合せによる系、例えば染料とアミンの複合開始系(特公昭44−20189号公報)、ヘキサアリールビイミダゾールとラジカル発生剤と染料との併用系(特公昭45−37377号公報)、ヘキサアリールビイミダゾールとp−ジアルキルアミノベンジリデンケトンの系(特公昭47−2528号公報、特開昭54−155292号公報)、環状シス−α−ジカルボニル化合物と染料の系(特開昭48−84183号公報)、環状トリアジンとメロシアニン色素の系(特開昭54−151024号公報)、3−ケトクマリンと活性剤の系(特開昭52−112681号公報、特開昭58−15503号公報)、ビイミダゾール、スチレン誘導
体、チオールの系(特開昭59−140203号公報)、有機過酸化物と色素の系(特開昭59−1504号公報、特開昭59−140203号公報、特開昭59−189340号公報、特開昭62−174203号公報、特公昭62−1641号公報、米国特許第4766055号明細書)、染料と活性ハロゲン化合物の系(特開昭63−1718105号公報、特開昭63−258903号公報、特開平3−264771号公報など)、染料とボレート化合物の系(特開昭62−143044号公報、特開昭62−150242号公報、特開昭64−13140号公報、特開昭64−13141号公報、特開昭64−13142号公報、特開昭64−13143号公報、特開昭64−13144号公報、特開昭64−17048号公報、特開平1−229003号公報、特開平1−298348号公報、特開平1−138204号公報など)、ローダニン環を有する色素とラジカル発生剤の系(特開平2−179643号公報、特開平2−244050号公報)、チタノセンと3−ケトクマリン色素の系(特開昭63−221110号公報)、チタノセンとキサンテン色素さらにアミノ基あるいはウレタン基を含む付加重合可能なエチレン性不飽和化合物を組み合わせた系(特開平4−221958号公報、特開平4−219756号公報)、チタノセンと特定のメロシアニン色素の系(特開平6−295061号公報)、チタノセンとベンゾピラン環を有する色素の系(特開平8−334897号公報)等を挙げることができる。
【0115】
本発明の平版印刷版原版の画像記録層において、特に好ましい光重合開始剤(系)は、少なくとも1種のチタノセンを含有する。本発明において光重合性開始剤(系)として用いられるチタノセン化合物は、後述する増感色素との共存下で光照射した場合、活性ラジカルを発生し得るチタノセン化合物であればいずれであってもよく、例えば、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41483号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−291号公報、特開平3−27393号公報、特開平3−12403号公報、特開平6−41170号公報に記載されている公知の化合物を適宜に選択して用いることができる。
【0116】
更に具体的には、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル(以下「T−1」ともいう。)、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフエニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフエニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフエニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフエニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフエニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)フェニル)チタニウム(以下「T−2」ともいう。)等を挙げることができる。
【0117】
これらのチタノセン化合物は、さらに、画像記録層の特性を改良するための様々な化学修飾を行うことも可能である。例えば、増感色素や、付加重合性不飽和化合物その他のラジカル発生パートとの結合、親水性部位の導入、相溶性向上、結晶析出抑制のための置換基導入、密着性を向上させる置換基導入、ポリマー化等の方法が利用できる。
【0118】
これらのチタノセン化合物の使用法に関しても、先述の付加重合性化合物同様、平版印刷版原版の性能設計により適宜、任意に設定できる。例えば、2種以上併用することで、画像記録層への相溶性を高めることができる。上記チタノセン化合物等の光重合開始剤の使用量は通常多い方が感光性の点で有利であり、画像記録層の不揮発性成分100質量部
に対し、0. 5〜80質量部、好ましくは1〜50質量部の範囲で用いることで充分な感光性が得られる。一方、黄色等、白色灯下での使用に際しては、500nm付近の光によるカブリ性の点からチタノセンの使用量は少ないことが好ましいが、増感色素との組合せによりチタノセンの使用量は6質量部以下、さらに1.9質量部以下、さらには1.4質量部以下にまで下げても充分な感光性を得ることができる。
【0119】
本発明に用いられる、前記付加重合性化合物の硬化反応を開始、進行させるための熱重合開始剤としては、熱により分解してラジカルを発生する熱分解型のラジカル発生剤が有用である。このようなラジカル発生剤は前述する赤外線吸収剤と併用することで、赤外線レーザーを照射した際に赤外線吸収剤が発熱し、その熱によりラジカルを発生するものであり、これらの組合せにより記録が可能となる。
ラジカル発生剤としては、オニウム塩、トリハロメチル基を有するトリアジン化合物、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、キノンジアジド、オキシムエステル化合物、トリアリールモノアルキルボレート化合物などが挙げられるが、オニウム塩またはオキシムエステル化合物が高感度であり、好ましい。以下に、本発明において重合開始剤として好適に用い得るオニウム塩について説明する。好ましいオニウム塩としては、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、ラジカル重合の開始剤として機能する。本発明において好適に用いられるオニウム塩は、下記一般式(A)〜(C)で表されるオニウム塩である。
【0120】
【化16】

【0121】
一般式(A)中、Ar11とAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、または炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z11-はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、およびスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0122】
一般式(B)中、Ar21は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリール
オキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基または、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。Z21-はZ11-と同義の対イオンを表す。
【0123】
一般式(C)中、R31、R32およびR33は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、または炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。
31-はZ11-と同義の対イオンを表す。
【0124】
本発明において、重合開始剤(ラジカル発生剤)として好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133696号公報に記載されたもの等を挙げることができる。以下に、本発明において、好適に用いることのできる一般式(A)で示されるオニウム塩([OI−1]〜[OI−10])、一般式(B)で示されるオニウム塩([ON−1]〜[ON−5])、および一般式(C)で示されるオニウム塩([OS−1]〜[OS−7])の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0125】
【化17】

【0126】
【化18】

【0127】
【化19】

【0128】
【化20】

【0129】
本発明において用いられる重合開始剤は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、更に360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
【0130】
また、他の好ましい重合開始剤として、特願2000−266797号、特開2002−148790号公報、特開2001−343742号公報、特開2002−6482号公報記載の特定の芳香族スルホニウム塩が挙げられる。以下にその代表的な化合物を例示
する。
以下に、本発明に適用し得る他の好ましい重合開始剤の代表的な化合物を例示する。
【0131】
【化21】

【0132】
【化22】

【0133】
また、以下に、本発明において重合開始剤として好適に用い得るオキシムエステル化合物について説明する。好ましいオキシムエステル化合物としては、下記一般式(D)で表される化合物が挙げられる。
【0134】
【化23】

【0135】
一般式(D)中、Xはカルボニル基、スルホン基、スルホキシド基を表し、Yは炭素数1〜12の環状または鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭素数6〜18のアリール基、複素環基であり、アリール基とはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン基、ピレン基、トリフェニレン基等の芳香族炭化水素化合物であり、複素環とは窒素原子、硫黄原子、酸素原子を環構造に少なくとも1つ有する芳香族化合物であり、例えば、ピロール基、フラン基、チオフェン基、セレノフェノン基、ピラゾール基、イミダゾール基、トリアゾール基、テトラゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、インドール基、ベンゾフラン基、ベンズイミダゾール基、ベンズオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、ピリジン基、ピリミジン基、ピラジン基、トリアジン基、キノリン基、カルバゾール基、アクリジン基、フェノキサジン、フェノチアジン等の化合物が挙げられる。これらYで表される置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルデヒド基、アルキル基、チオール基、アリール基、またはアルケニル基、アルキニル基、エーテル基、エステル基、ウレア基、アミノ基、アミド基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホキシド基、スルホ基、スルホン基、ヒドラジン基、カルボニル基、イミノ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボニル基、ウレタン基、アルキル基、チオール基、アリール基、ホスホロソ基、ホスホ基、カルボニルエーテル基を含有する化合物により置換可能である。
【0136】
一般式(D)におけるZは、Yと同義またはニトリル基、ハロゲン原子、水素原子、またはアミノ基であり、これらのZの化合物はハロゲン原子、水酸基、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルデヒド基、アルキル基、チオール基、アリール基またはアルケニル基、アルキニル基、エーテル基、エステル基、ウレア基、アミノ基、アミド基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホキシド基、スルホ基、スルホン基、ヒドラジン基、カルボニル基、イミノ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボニル基、ウレタン基、アルキル基、チオール基、アリール基、ホスホロソ基、ホスホ基、カルボニルエーテル基を含有する化合物により置換可能である。
【0137】
一般式(D)におけるWは、2価の有機基を表し、メチレン基、カルボニル基、スルホキシド基、スルホン基、イミノ基を表し、メチレン基およびイミノ基はアルキル基、アリール基、エステル基、ニトリル基、カルボニルエーテル基、スルホ基、スルホエーテル基、エーテル基等を含有する化合物により置換可能である。nは0または1の整数を表す。
【0138】
一般式(D)におけるVは、炭素数1〜12の環状または鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭素数6〜18のアリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基であり、アリール基とはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン基、ピレン基、トリフェニレン基等の芳香族炭化水素化合物、ピロール基、フラン基、チオフェン基、セレノフェン基、ピラゾール基、イミダゾール基、トリアゾール基、テトラゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、インドール基、ベンゾフラン基、ベンズイミダゾール基、ベンズオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、ピリジン基、ピリミジン基、ピラジ
ン基、トリアジン基、キノリン基、カルバゾール基、アクリジン基、フェノキサジン、フェノチアジン等のヘテロ原子含有芳香族化合物が挙げられる。これらVの化合物はハロゲン原子、水酸基、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルデヒド基、アルキル基、チオール基、アリール基またはアルケニル基、アルキニル基、エーテル基、エステル基、ウレア基、アミノ基、アミド基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホキシド基、スルホ基、スルホン基、ヒドラジン基、カルボニル基、イミノ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボニル基、ウレタン基、アルキル基、チオール基、アリール基、ホスホロソ基、ホスホ基、カルボニルエーテル基を含有する化合物により置換可能である。
また、VとZは互いに結合して環を形成してもよい。
【0139】
上記一般式(D)で表されるオキシムエステル化合物としては、感度の面から、Xはカルボニル、Yはアリール基またはベンゾイル基、Z基はアルキル基またはアリール基、Wはカルボニル基であり、Vはアリール基であることが好ましい。更に好ましくは、Vのアリール基がチオエーテル置換基を有することが好ましい。
なお、上記一般式(D)におけるN−O結合の構造はE体であってもZ体であっても構わない。
【0140】
その他、本発明に好適に用いることのできるオキシムエステル化合物は、Progress in Organic Coatings、13(1985)123−150;J.C.S Perkin II(1979)1653−1660;Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)205−232;J.C.S Perkin II(1979)156−162;特開2000−66385;特開2000−80068に記載の化合物である。
【0141】
本発明に好適に用いることのできるオキシムエステル化合物の具体例を以下に示すが、これに限定されるものではない。
【0142】
【化24】

【0143】
【化25】

【0144】
【化26】

【0145】
【化27】

【0146】
【化28】

【0147】
【化29】

【0148】
【化30】

【0149】
【化31】

【0150】
【化32】

【0151】
これらの重合開始剤は、感度や、印刷時に発生する非画像部の汚れの観点から、画像記録層を構成する全固形分に対して好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で添加することができる。これらの重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの重合開始剤は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0152】
<増感色素>
本発明の平版印刷版原版において、画像記録層は増感色素を含有することができる。該増感色素としては、350〜850nmに吸収ピークを有するものが好ましい。このよう
な増感色素としては、分光増感色素、光源の光を吸収して光重合開始剤と相互作用する以下に示す染料あるいは顔料が挙げられる。
好ましい分光増感色素または染料としては、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、フタロシアニン類(例えば、フタロシアニン、メタルフタロシアニン)、ポルフィリン類(例えば、テトラフェニルポルフィリン、中心金属置換ポルフィリン)、クロロフィル類(例えば、クロロフィル、クロロフィリン、中心金属置換クロロフィル)、金属錯体、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)等が挙げられる。
【0153】
より好ましい分光増感色素または染料の例としては、特公昭37−13034号公報記載のスチリル系色素、特開昭62−143044号公報記載の陽イオン染料、特公昭59−24147号公報記載のキノキサリニウム塩、特開昭64−33104号公報記載の新メチレンブルー化合物、特開昭64−56767号公報記載のアントラキノン類、特開平2−1714号公報記載のベンゾキサンテン染料、特開平2−226148号および特開平2−226149号各公報記載のアクリジン類、時公昭40−28499号公報記載のピリリウム塩類、特公昭46−42363号公報記載のシアニン類、特開平2−63053号公報記載のベンゾフラン色素、特開平2−85858号、特開平2−216154号各公報記載の共役ケトン色素、特開昭57−10605号公報記載の色素。特公平2−30321号公報記載のアゾシンナミリデン誘導体、特開平1−287105号公報記載のシアニン系色素、特開昭62−31844号、特開昭62−31848号、特開昭62−143043号各公報記載のキサンテン系色素、特公昭59−28325号公報記載のアミノスチリルケトン、特公昭61−962l号公報記載のメロシアニン色素、特開平2−179643号公報記載の色素。特開平2−244050号公報記載のメロシアニン色素、特公昭59−28326号公報記載のメロシアニン色素、特開昭59−89803号公報記載のメロシアニン色素、特開平8−129257号記載のメロシアニン色素、特開平8−334897号記載のベンゾピラン系色素、等を挙げることができる。
【0154】
増感色素の含有量としては、画像記録層を構成する全固形分に対して好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%である。
【0155】
<重合性化合物>
本発明の画像記録層には、効率的な硬化反応を行うため重合性化合物を含有させることが好ましい。本発明に用いることができる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、および単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応
物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0156】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート等がある。
【0157】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0158】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0159】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0160】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0161】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(II)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0162】
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH (II)
(ただし、R4およびR5は、HまたはCH3を示す。)
【0163】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0164】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂とアクリル酸もしくはメタクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0165】
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、画像記録層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板や後述の保護層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
【0166】
重合性化合物は、画像記録層中の不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0167】
<バインダーポリマー>
本発明の画像記録層には、前記グラフトポリマー以外に、バインダーポリマーを含有させることができる。本発明に用いることができるバインダーポリマーは、従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有する線状有機ポリマーが好ましい。このようなバインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられる。
【0168】
バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していることが好ましい。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよい。
【0169】
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,4−イソプレン等が挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドのポリマーであって、エステルまたはアミドの残基(−COORまたは−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0170】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−(CH2 n CR1 =CR2 3 、−(CH2 O)n CH2 CR1 =CR2 3 、−(CH2 CH2 O)n CH2 CR1 =CR2 3 、−(CH2 n NH−CO−O−CH2 CR1 =CR2 3 、−(CH2 n −O−CO−CR1 =CR2 3 および−(CH2 CH2 O)2 −X(式中、R1 〜R3 はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、R1 とR2 またはR3 とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
【0171】
エステル残基の具体例としては、−CH2 CH=CH2 (特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2 CH2 O−CH2 CH=CH2 、−CH2 C(CH3 )=CH2 、−CH2 CH=CH−C6 5 、−CH2 CH2 OCOCH=CH−C6 5 、−CH2 CH2 −NHCOO−CH2 CH=CH2 および−CH2 CH2 O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH2 CH=CH2 、−CH2 CH2 −Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2 CH2 −OCO−CH=CH2 が挙げられる。
【0172】
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接にまたは重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0173】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と良好な保存安定性が得られる。
【0174】
また、機上現像性向上の観点から、バインダーポリマーは、インキおよび/または湿し水に対する溶解性または分散性が高いことが好ましい。
インキに対する溶解性または分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親油的な方が好ましく、湿し水に対する溶解性または分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親水的な方が好ましい。このため、本発明においては、親油的なバインダーポリマーと親水的なバインダーポリマーを併用することも有効である。
【0175】
親水的なバインダーポリマーとしては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホン酸基、リン酸基等の親水性基を有するものが好適に挙げられる。
【0176】
具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類およびそれらの塩、ポリメタクリル酸類およびそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシピロピルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が60質量%以上、好ましくは80質量%以上である加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマーおよびポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、ポリビニルピロリドン、アルコール可溶性ナイロン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンとのポリエーテル等が挙げられる。
【0177】
バインダーポリマーは、質量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
【0178】
バインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマーのいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。また、バインダーポリマーは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0179】
バインダーポリマーは、従来公知の方法により合成することができる。合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコール
モノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられる。
バインダーポリマーを合成する際に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等の公知の化合物を用いることができる。
【0180】
バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全固形分に対して、5〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましく、10〜70質量%であるのがさらに好ましい。この範囲で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
また、重合性化合物とバインダーポリマーは、質量比で0.5/1〜9/1となる量で用いるのが好ましい。
【0181】
<界面活性剤>
本発明において、画像記録層には、印刷開始時の機上現像性を促進させるため、および、塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0182】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0183】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0184】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
【0185】
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0186】
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号および同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
【0187】
界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜7質量%であるのがより好ましい。
【0188】
<着色剤>
本発明では、更に必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、および特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
【0189】
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、画像記録材料全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合が好ましい。
【0190】
<焼き出し剤>
本発明の画像記録層には、焼き出し画像生成のため、酸またはラジカルによって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0191】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH[保土ケ谷化学(株)製]、オイルブルー#603[オリエント化学工業(株)製]、オイルピンク#312[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッド5B[オリエント化学工業(株)製]、オイルスカーレット#308[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドOG[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドRR[オリエント化学工業(株)製]、オイルグリーン#502[オリエント化学工業(株)製]、スピロンレッドBEHスペシャル[保土ケ谷化学工業(株)製]、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシステアリルアミノ−4−p−N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等の染料やp,p’,p”−ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ染料が挙げられる。
【0192】
上記の他に、感熱紙や感圧紙用の素材として知られているロイコ染料も好適なものとして挙げられる。具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノ−フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)−フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチルー7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフロオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−ザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、などが挙げられる。
【0193】
酸またはラジカルによって変色する染料の好適な添加量は、それぞれ、画像記録層固形分に対して0.01〜10質量%の割合である。
【0194】
<重合禁止剤>
本発明の画像記録層には、画像記録層の製造中または保存中において(C)ラジカル重合性化合物の不要な熱重合を防止するために、少量の熱重合防止剤を添加するのが好ましい。
熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好適に挙げられる。
熱重合防止剤の添加量は、画像記録層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
【0195】
<高級脂肪酸誘導体等>
本発明の画像記録層には、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、画像記録層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
【0196】
<可塑剤>
本発明の画像記録層は、機上現像性を向上させるために、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステル等のグリコールエステル類;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエート等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル等が好適に挙げられる。
可塑剤の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、約30質量%以下であるのが好ましい。
【0197】
<無機微粒子>
本発明の画像記録層は、画像部の硬化皮膜強度向上および非画像部の機上現像性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは光熱変換性でなくても、皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、画像記録層中に安定に分散して、画像記録層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
【0198】
<低分子親水性化合物>
本発明の画像記録層は、機上現像性向上のため、親水性低分子化合物を含有しても良い。親水性低分子化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類およびそのエーテルまたはエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類およびその塩、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類およびその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類およびその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類およびその塩等が上げられる。
【0199】
〔画像記録層の形成〕
本発明においては、上記の画像記録層構成成分を画像記録層に含有させる方法として、いくつかの態様を用いることができる。一つは、例えば、特開2002−287334号公報に記載のごとく、該構成成分を適当な溶媒に溶解して塗布する態様であり、もう一つは、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分をマイクロカプセルに内包させて画像記録層に含有させる態様(マイクロカプセル型画像記録層)である。さらに、マイクロカプセル型画像記録層において、該構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセル型画像記録層においては、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性構成成分をマイクロカプセル外に含有させることが好ましい態様である。より良好な機上現像性を得るためには、画像記録層は、マイクロカプセル型画像記録層であることが好ましい。
【0200】
上記の画像記録層構成成分をマイクロカプセル化する方法としては、公知の方法が適用できる。例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号の各明細書、特公昭38−19574号、同42−446号の各公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号の各明細書にみられる尿素―ホルムアルデヒド系または尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号の各公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号、同第967074号の各明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0201】
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、およびこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレアおよびポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプセル壁に、前記バインダーポリマー導入可能なエチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を有する化合物を導入しても良い。
【0202】
上記のマイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0203】
本発明の画像記録層は、必要な上記各成分を溶剤に分散、または溶かして塗布液を調製し、塗布される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独または混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明の画像記録層は、同一または異なる上記各成分を同一または異なる溶剤に分散、または溶かした塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
【0204】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/m2が好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
【0205】
〔支持体〕
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
【0206】
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、または、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
【0207】
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましく、0.2〜0.3mmであるのが更に好ましい。
【0208】
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、親水性の向上および画像記録層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
【0209】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流または直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
【0210】
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理を施され、更に、中和処理された後、所望により、耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施される。
【0211】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸またはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/d m2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2 であるのが好ましく、1.5〜4.0g/m2 であるのがより好ましい。この範囲で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られる。
【0212】
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでもよいが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などの一層改良のため、必要に応じて、特開2001−253181号や特開2001−322365号の公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理、マイクロポアの封孔処理、および親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。もちろんこれら拡大処理、封孔処理は、これらに記載のものに限られたものではなく従来公知の何れも方法も行うことができる。
【0213】
封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理など無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔、熱水による封孔処理でも可能である。
なかでも、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理および熱水による封孔処理が好ましい。
【0214】
親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理し、または電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号および同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
【0215】
本発明の支持体としてポリエステルフィルムなど表面の親水性が不十分な支持体を用いる場合は、親水層を塗布して表面を親水性にすることが望ましい。親水層としては、特開2001−199175号公報に記載の、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、珪
素、チタン、硼素、ゲルマニウム、スズ、ジルコニウム、鉄、バナジウム、アンチモンおよび遷移金属から選択される少なくとも一つの元素の酸化物または水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層や、特開2002−79772号公報に記載の、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリックスを有する親水層や、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネートまたはアルミネートの加水分解、縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリックスを有する親水層、あるいは、金属酸化物を含有する表面を有する無機薄膜からなる親水層が好ましい。中でも、珪素の酸化物または水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。
【0216】
また、本発明の支持体としてポリエステルフィルム等を用いる場合には、支持体の親水性層側または反対側、あるいは両側に、帯電防止層を設けるのが好ましい。帯電防止層を支持体と親水性層との間に設けた場合には、親水性層との密着性向上にも寄与する。帯電防止層としては、特開2002−79772号公報に記載の、金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層等が使用できる。
【0217】
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。この範囲で、画像記録層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
また、支持体の色濃度としては、反射濃度値として0.15〜0.65であるのが好ましい。この範囲で、画像露光時のハレーション防止による良好な画像形成性と現像後の良好な検版性が得られる。
【0218】
〔バックコート層〕
支持体に表面処理を施した後または下塗層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコートを設けることができる。
バックコートとしては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH3 4 、Si(OC2 5 4 、Si(OC3 7 4 、Si(OC4 9 4 等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
【0219】
〔下塗層〕
本発明の平版印刷版原版においては、特に機上現像型平版印刷版原版の場合、必要に応じて、画像記録層と支持体との間に下塗層を設けることができる。下塗層は、未露光部において、画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、機上現像性が向上する。また、赤外線レーザー露光の場合は、下塗層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。
下塗層用化合物(下塗り化合物)としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物等が好適に挙げられる。
好ましい下塗り化合物としては、(a1)エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ含有する繰り返し単位と(a2)支持体表面と相互作用する官能基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位とを有する共重合体が挙げられる。さらに、(a3)親水性基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位を含む共重合体がより好ましい。
【0220】
親水性支持体表面と相互作用する官能基(以下、「吸着性基」と略記する場合がある。)としては、例えば、陽極酸化処理または親水化処理を施した支持体上に存在する金属、金属酸化物、水酸基などと共有結合、イオン結合、水素結合、極性相互作用、ファンデルワールズ相互作用などの相互作用が可能な基が挙げられる。
【0221】
親水性支持体表面との相互作用の有無に関しては、例えば以下のような吸着量を測定する方法で判断できる。
試験化合物を易溶性の溶媒に溶解させた塗布夜を作製し、その塗布夜を乾燥後の塗布量が30mg/m2となるように支持体上に塗布・乾燥させる。次に試験化合物を塗布した支持体を、易溶性溶媒を用いて十分に洗浄した後、洗浄除去されなかった試験化合物の残存量を測定して支持体吸着量を算出する。ここで残存量の測定は、残存化合物量を直接定量してもよいし、洗浄液中に溶解した試験化合物量を定量して算出してもよい。化合物の定量は、例えば蛍光X線測定、反射分光吸光度測定、液体クロマトグラフィー測定などで実施できる。上記のような洗浄処理を行っても1mg/m2以上残存する化合物が支持体吸着性がある化合物、すなわち支持体と相互作用のある化合物と見なされる。
【0222】
親水性支持体表面への吸着性基は、親水性支持体表面に存在する物質(例えば、金属、金属酸化物)あるいは官能基(例えば、水酸基)と、化学結合(例えば、イオン結合、水素結合、配位結合、分子間力による結合)を引き起こすことができる官能基である。吸着性基は、酸基またはカチオン性基が好ましい。
酸基は、酸解離定数(pKa)が7以下であることが好ましい。酸基の例は、フェノール性水酸基、カルボキシル基、−SO3H、−OSO3H、−PO32、−OPO32、−CONHSO2−、−SO2NHSO2−および−COCH2COCH3を含む。なかでも−OPO32および−PO32が特に好ましい。またこれら酸基は、金属塩であっても構わない。
カチオン性基は、オニウム基であることが好ましい。オニウム基の例は、アンモニウム基、ホスホニウム基、アルソニウム基、スチボニウム基、オキソニウム基、スルホニウム基、セレノニウム基、スタンノニウム基、ヨードニウム基を含む。アンモニウム基、ホスホニウム基およびスルホニウム基が好ましく、アンモニウム基およびホスホニウム基がさらに好ましく、アンモニウム基が最も好ましい。
【0223】
吸着性基を有するモノマーの特に好ましい例としては、下記式(III)または(IV)で表される化合物が挙げられる。
【0224】
【化33】

【0225】
式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数が1乃至6のアルキル基を表し、Xは、酸素原子(−O−)又はイミノ(−NH−)を表し、Lは、2価の連結基を表し、Zは、親水性支持体表面に吸着する官能基を表し、Yは、炭素原子又は窒素原子を表す。
【0226】
式(III)において、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基である。R1、R2およびR3は、それぞれ独立
に、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素原子数が1乃至3のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子またはメチル基であることが最も好ましい。R2およびR3は、水素原子であることが特に好ましい。
式(III)において、Xは、酸素原子(−O−)またはイミノ(−NH−)である。Xは、酸素原子であることがさらに好ましい。式(III)において、Lは、2価の連結基である。Lは、2価の脂肪族基(アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(アリーレン基、置換アリーレン基)または2価の複素環基であるか、あるいはそれらと、酸素原子(−O−)、硫黄原子(―S―)、イミノ(−NH−)、置換イミノ(−NR−、Rは脂肪族基、芳香族基または複素環基)またはカルボニル(−CO−)との組合せであることが好ましい。
脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20が好ましく、1乃至15がさらに好ましく、1乃至10が最も好ましい。脂肪族基は、不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、芳香族基および複素環基を含む。
芳香族基の炭素原子数は、6乃至20が好ましく、6乃至15がさらに好ましく、6乃至10が最も好ましい。芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、脂肪族基、芳香族基および複素環基を含む。
複素環基は、複素環として5員環または6員環を有することが好ましい。複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。複素環基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N−R、Rは脂肪族基、芳香族基または複素環基)、脂肪族基、芳香族基および複素環基を含む。
Lは、複数のポリオキシアルキレン構造を含む二価の連結基であることが好ましい。ポリオキシアルキレン構造は、ポリオキシエチレン構造であることがさらに好ましい。言い換えると、Lは、−(OCH2CH2)n−(nは2以上の整数)を含むことが好ましい。
式(III)において、Zは、親水性支持体表面に吸着する官能基である。また、Yは、炭素原子または窒素原子である。Y=窒素原子でY上にLが連結し四級ピリジニウム基になった場合、それ自体が吸着性を示すことからZは必須ではない。
【0227】
以下に、式(III)または(IV)で表される代表的なモノマーの例を示す。
【0228】
【化34】

【0229】
本発明の下塗層用の共重合体は、エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ含有することが好ましい。エチレン性不飽和結合によって画像部との密着の向上が得られる。下塗層用の共重合体にエチレン性不飽和結合を持たせるためには、エチレン性不飽和結合を有する架橋性官能基を高分子の側鎖中に導入したり、共重合体の極性置換基と対荷電を有する置換基とエチレン性不飽和結合を有する化合物で塩構造を形成させたりして導入することができる。
【0230】
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドのポリマーであって、エステルまたはアミドの残基(−COORまたは−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0231】
エチレン性不飽和結合を有する架橋性基(上記R)の例としては、−(CH2)nCR1=C
23、−(CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2) nNH−CO−O−CH2CR1=CR23、−(CH2) n−O−CO−CR1=CR23、および−(CH2CH2O)2−X(式中、R1〜R3はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、R1とR2またはR3とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
エステル残基の具体例としては、−CH2CH=CH2(特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2CH2O−CH2CH=CH2、−CH2C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH−C65、−CH2CH2OCOCH=CH−C65、−CH2CH2NHCOO−CH2CH=CH2、および−CH2CH2O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH2CH=CH2、−CH2CH2O−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2CH2OCO−CH=CH2が挙げられる。
下塗層用共重合体用の架橋性基を有するモノマーとしては、上記架橋性基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドが好適である。
【0232】
下塗層用共重合体中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、共重合体1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と汚れ性の両立、および良好な保存安定性が得られる。
【0233】
下塗り用共重合体の親水性基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位の親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホン酸基、リン酸基等が好適に挙げられる。中でも高親水性を示すスルホン酸基を有するモノマーが好ましい。スルホン酸基を有するモノマーの具体例としては、メタリルオキシベンゼンスルホン酸, アリルオキシベンゼンスルホン酸 , アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、アクリルアミドt-ブチルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(3−アクリロイルオキシプロピル)ブチルスルホン酸のナトリウム塩、アミン塩が挙げられる。中でも親水性能および合成の取り扱いから2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩が好ましい。
【0234】
下塗層用の共重合体は、質量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
下塗層用の共重合体は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
【0235】
本発明において上記共重合体は、画像記録層中に含有させることも、また支持体と画像記録層との間に設けられる下塗層(中間層)などの画像記録層に隣接する層に含有させることもできるが、下塗層中に用いるのが本発明の効果が十分に発揮されるため特に好ましい。共重合体は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0236】
下塗り層用塗布液は、上記下塗り用の共重合体を有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンなど)および/または水に溶解して得られる。下塗り層用塗布液には、赤外線吸収剤を含有させることもできる。
下塗り層塗布液を支持体に塗布する方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜30mg/m2であるのがより好ましい。
【0237】
〔保護層〕
本発明の平版印刷版原版には、酸素遮断性付与、画像記録層での傷等の発生防止、高照度レーザー露光時に生じるアブレーション防止等のために、必要に応じて画像記録層の上に保護層(オーバーコート層)を設けることができる。
【0238】
通常、平版印刷版の露光処理は大気中で実施する。露光処理によって生じる画像記録層中での画像形成反応は、大気中に存在する酸素、塩基性物質等の低分子化合物によって阻害され得る。保護層は、この酸素、塩基性物質等の低分子化合物が画像記録層へ混入することを防止し、結果として大気中での画像形成阻害反応を抑制する。従って、保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性を低くすることであり、更に、露光に用いられる光の透過性が良好で、画像記録層との密着性に優れ、かつ、露光後の機上現像処理工程で容易に除去することができるものである。このような特性を有するオーバーコート層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書および特公昭55−49729号公報に記載されている。
【0239】
保護層に用いられる材料としては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができる。具体的には例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニルの部分鹸化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、水溶性セルロース誘導体、ゼラチン、デンプン誘導体、アラビアゴム等の水溶性ポリマーや、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリサルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、セロハン等のポリマー等が挙げられる。これらは、必要に応じて2種以上を併用して用いることもできる。
上記材料中で比較的有用な素材としては、結晶性に優れる水溶性高分子化合物が挙げられる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸等の水溶性アクリル樹脂、ゼラチン、アラビアゴム等が好適であり、なかでも、水を溶媒として塗布可能であり、且つ、印刷時における湿し水により容易に除去されるという観点から、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾールが好ましい。その中でも、ポリビニルアルコール(PVA)は、酸素遮断性、現像除去性等の基本的な特性に対して最も良好な結果を与える。
【0240】
保護層に用い得るポリビニルアルコールは、必要な水溶性を有する実質的量の未置換ビニルアルコール単位を含有するかぎり、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を含有していてもよい。例えば、カルボキシル基、スルホ基等のアニオンで変性されたアニオン変性部位、アミノ基、アンモニウム基等のカチオンで変性されたカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位等種々の親水性変性部位をランダムに有する各種重合度のポリビニルアルコール、前記のアニオン変性部位、前記のカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位、更にはアルコキシル変性部位、スルフィド変性部位、ビニルアルコールと各種有機酸とのエステル変性部位、前記アニオン変性部位とアルコール類等とのエステル変性部位、エポキシ変性部位等種々の変性部位をポリマー鎖末端に有す各種重合度のポリビニルアルコール等も好ましく用いられる。
【0241】
これら変性ポリビニルアルコールは71〜100%加水分解された重合度300〜2400の範囲の化合物が好適に挙げられる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。また変性ポリビニルアルコールとしては、アニオン変性部位を有するKL−318、KL−118、KM−618、KM−118、SK−5102、カチオン変性部位を有するC−318、C−118、CM−318、末端チオール変性部位を有するM−205、M−115、末端スルフィド変性部位を有するMP−103、MP−203、MP−102、MP−202、高級脂肪酸とのエステル変性部位を末端に有するHL−12E、HL−1203、その他反応性シラン変性部位を有するR−1130、R−2105、R−2130等が挙げられる。
【0242】
また保護層には層状化合物を含有することが好ましい。層状化合物とは薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、下記一般式で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群、式3MgO・4SiO・H2Oで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サボナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
A(B,C)2-5410(OH,F,O)2
【0243】
〔ただし、AはLi、K、Na、Ca、Mg、有機カチオンの何れか、B及びCはFe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg、Vの何れかであり、DはSi又はAlである〕。
【0244】
上記天然雲母としては白雲母、ゾーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg3(AlSi310)F2、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si410)F2等の非膨潤性雲母、及びNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si410)F2、Na又はLiテニオライト(Na、Li)Mg2Li(Si410)F2、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na、Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si410)F2等の膨潤性雲母等が挙げられる。また合成スメクタイトも有用である。
上記の層状化合物の中でも、合成の層状化合物であるフッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。即ち、雲母、モンモリロナイト、サボナイト、ヘクトライト、ベントナイト等の膨潤性粘土鉱物類等は、10〜15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi+、Na+、Ca2+、Mg2+、アミン塩、第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩及びスルホニウム塩等の有機カチオンの陽イオンを吸着している。これらの層状化合物は水により膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。ベントナイト及び膨潤性合成雲母はこの傾向が強い。
【0245】
層状化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。従って、アスペクト比は20以上であり、好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
【0246】
層状化合物の粒子径は、その平均径が1〜20μm、好ましくは1〜10μm、特に好
ましくは2〜5μmである。粒子径が1μmよりも小さいと酸素や水分の透過の抑制が不十分であり、効果を十分に発揮できない。また20μmよりも大きいと塗布液中での分散安定性が不十分であり、安定的な塗布を行うことができない問題が生じる。また、該粒子の平均の厚さは、0.1μm以下、好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。例えば、無機質の層状化合物のうち、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは厚さが1〜50nm、面サイズが1〜20μm程度である。
【0247】
このようにアスペクト比が大きい無機質の層状化合物の粒子を保護層に含有させると、塗膜強度が向上し、また、酸素や水分の透過を効果的に防止しうるため、変形などによるオーバーコート層の劣化を防止し、高湿条件下において長期間保存しても、湿度の変化による平版印刷版原版における画像形成性の低下もなく保存安定性に優れる。
【0248】
保護層中の無機質層状化合物の含有量は、オーバーコート層に使用されるバインダーの量に対し、質量比で5/1〜1/100であることが好ましい。複数種の無機質の層状化合物を併用した場合でも、これら無機質の層状化合物の合計の量が上記の質量比であることが好ましい。
【0249】
保護層の他の組成物として、グリセリン、ジプロピレングリコール等を(共)重合体に対して数質量%相当添加して可撓性を付与することができ、また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を添加することができる。これら活性剤の添加量は(共)重合体に対して0.1〜100質量%添加することができる。
【0250】
また、画像部との密着性を良化させるため、例えば、特開昭49−70702号公報および英国特許出願公開第1303578号明細書には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジョン、水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体等を20〜60質量%混合させ、画像記録層上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明においては、これらの公知の技術をいずれも用いることができる。
【0251】
更に、保護層には、他の機能を付与することもできる。例えば、露光に用いられる赤外線の透過性に優れ、かつ、それ以外の波長の光を効率良く吸収しうる。着色剤(例えば、水溶性染料)の添加により、感度低下を引き起こすことなく、セーフライト適性を向上させることができる。
【0252】
次に、保護層に用いる層状化合物の一般的な分散方法の例について述べる。まず、水100質量部に先に層状化合物の好ましいものとして挙げた膨潤性の層状化合物を5〜10質量部添加し、充分水になじませ、膨潤させた後、分散機にかけて分散する。ここで用いる分散機としては、機械的に直接力を加えて分散する各種ミル、大きな剪断力を有する高速撹拌分散機、高強度の超音波エネルギーを与える分散機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、サンドグラインダーミル、ビスコミル、コロイドミル、ホモジナイザー、ティゾルバー、ポリトロン、ホモミキサー、ホモブレンダー、ケディミル、ジェットアジター、毛細管式乳化装置、液体サイレン、電磁歪式超音波発生機、ポールマン笛を有する乳化装置等が挙げられる。上記の方法で分散した無機質層状化合物の5〜10質量%の分散物は高粘度あるいはゲル状であり、保存安定性は極めて良好である。この分散物を用いて保護層塗布液を調製する際には、水で希釈し、充分撹拌した後、バインダー溶液と配合して調製するのが好ましい。
【0253】
この保護層塗布液には、塗布性を向上させたためのアニオン界面活性剤、ノニオン界面
活性剤、カチオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤や皮膜の物性改良のため水溶性可塑剤などの公知の添加剤を加えることができる。水溶性の可塑剤としては、例えば、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーを加えることもできる。さらに、この塗布液には、画像記録層との密着性、塗布液の経時安定性を向上するための公知の添加剤を加えてもよい。
【0254】
このように調製されたオーバーコート層の塗布液を、支持体上に備えられた画像記録層の上に塗布し、乾燥することでオーバーコート層を形成する。塗布溶剤はバインダーとの関連において適宜選択することができるが、水溶性ポリマーを用いる場合には、蒸留水、精製水を用いることが好ましい。オーバーコート層の塗布方法は、特に制限されるものではなく、米国特許第3,458,311号明細書又は特公昭55−49729号公報に記載されている方法など公知の方法を適用することができる。具体的には、例えば、オーバーコート層は、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等が挙げられる。
オーバーコート層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.01〜10g/m2の範囲であることが好ましく、0.02〜3g/m2の範囲がより好ましく、最も好ましくは0.02〜1g/m2の範囲である。
【0255】
〔平版印刷方法〕
本発明の平版印刷版原版を露光する光源としては、公知のものを制限なく用いることができる。望ましい光源の波長は300nmから1200nmであり、具体的には各種レーザーを光源として用いることが好適であり、中でも、波長760nm〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザーが好適に用いられる。
露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。
また、本発明の平版印刷版原版に対するその他の露光光線としては、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、可視および紫外の各種レーザーランプ、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等も使用できる。
【0256】
本発明の平版印刷方法においては、上述したように、本発明の平版印刷版原版をレーザーで画像様に露光した後、なんらの現像処理工程を経ることなく油性インキと水性成分とを供給して印刷する。
具体的には、平版印刷版原版をレーザーで露光した後、現像処理工程を経ることなく印刷機に装着して印刷する方法、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上においてレーザーで露光し、現像処理工程を経ることなく印刷する方法等が挙げられる。
【0257】
平版印刷版原版をレーザーで画像様に露光した後、湿式現像処理工程等の現像処理工程を経ることなく水性成分と油性インキとを供給して印刷すると、画像記録層の露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成する。一方、未露光部においては、供給された水性成分および/または油性インキによって、未硬化の画像記録層が溶解しまたは分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。
【0258】
その結果、水性成分は露出した親水性の表面に付着し、油性インキは露光領域の画像記録層に着肉し、印刷が開始される。ここで、最初に版面に供給されるのは、水性成分でもよく、油性インキでもよいが、水性成分が未露光部の画像記録層により汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給するのが好ましい。水性成分および油性インキとしては、通常の平版印刷用の湿し水と印刷インキが用いられる。
このようにして、平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
【実施例】
【0259】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0260】
<エチレン性不飽和結合を疎水性主鎖中に有し、且つ親水性セグメントをグラフト鎖とするグラフトポリマー(A−1)の合成>
(親水性マクロマーの合成)
アクリルアミド30g、3−メルカプトプロピオン酸3.8gをエタノール70gに溶解後、窒素雰囲気下60℃に昇温し、熱重合性開始剤2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)300mgを加えて6時間反応した。反応後、白色沈殿をろ過し、十分洗浄して、末端カルボン酸プレポリマーを30.8g得た(カルボン酸価0.78meq/g、質量平均分子量1.3×103)。
得られたプレポリマー20gをN,N−ジメチルアセトアミド62gに溶解し、グリシジルメタクリレート6.71g、N,N−ジメチルドデシルアミン(触媒)504mg、ハイドロキノン(重合禁止剤)62.4mgを加え、130℃に昇温して6時間反応した。反応後、アセトンに投入し、ポリマーを沈殿させ、よく洗浄して末端メタクリレートアクリルアミドマクロモノマーを23.4g得た。(質量平均分子量:1.4×103)。1H−NMR(D2O)6.12,5.70ppmメタクリロイル基オレフィンピークの存在と、カルボン酸価(0.023meq/g)の減少から、末端に重合性基が導入できたことを確認した。親水性マクロマーのガラス転移温度をセイコーインスツルメンツ(株)製示差走査熱量計(DSC)により測定したところ、160℃であった。
【0261】
(ラジカル重合性化合物M−1の合成)
1000ml三口フラスコ内に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート133gのTHF520ml溶液を調製し、0℃に冷却した。攪拌しながら、3−クロロプロピオン酸クロリド130gを滴下ロートを用いて、1時間かけて滴下した後に、徐々に室温まで昇温させた。室温で12時間攪拌した後に、反応溶液を氷水1L中に投じた。1時間攪拌した後に、酢酸エチル2Lで3回に分け抽出し、得られた有機層を、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次、洗浄した後に、硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過した後に溶媒をロータリーエバポレーターにて減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(流出溶媒;ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、化合物(M−1)を180g得た。化合物(M−1)の構造は、NMR、質量分析スペクトル、IRから確認した。
【0262】
(エチレン性不飽和結合を疎水性主鎖中に有し、且つ親水性セグメントをグラフト鎖とするグラフトポリマー(A−1)の合成)
N,N−ジメチルアセトアミドアミド15gをフラスコに採り、窒素雰囲気下、60℃に昇温し、上記マクロモノマー10g、メタクリル酸メチル5g、化合物(M−1)4.6g、熱重合性開始剤2,2’-アゾビスイソブチロニトリル150mgをN,N−ジメチルアセトアミドアミド15gに溶解した溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、引き続き6時間加熱を続けた。生成物を沈殿させ、よく洗浄して、親水性セグメントをグラフト鎖とするグラフトポリマーを得た。
フラスコ中に得られたグラフトポリマー26g、p-メトキシフェノール0.1gを入れ、N,N-ジメチルアセトアミド60g、アセトン60gに溶解し、氷水を入れた氷浴にて冷却した。混合液温度が5℃以下になった後に、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)20.3gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、氷浴を外してさらに8時間攪拌した。生成物を沈殿させ、よく洗浄してグラフトポリマー(A−1)を得た。得られたグラフトポリマーの1H-NMRを測定したところ、化合物(M−1)由来の側鎖基の100%がエチレンメタクリレート基に変換されたことが確認された。質量平均分子量を表1に示す。
【0263】
<親水性セグメントをグラフト鎖とするグラフトポリマー(A−2〜5)の合成>
上記合成例の疎水性モノマー(メタクリル酸メチル)を表1のように代えた以外はグラフトポリマー(A−1)の合成と同様の方法でグラフトポリマー(A−2)〜(A−5)を得た。質量平均分子量を表1に示す。
【0264】
【表1】

【0265】
<エチレン性不飽和結合を有する疎水セグメントをグラフト鎖とするグラフトポリマー(B−1)の合成>
(疎水性マクロマーの合成)
スチレン44g、化合物(M−1)9.2g、3−メルカプトプロピオン酸3.8gをメチルエチルケトン88gに溶解後、窒素雰囲気下60℃に昇温し、熱重合性開始剤2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)300mgを加えて6時間反応した。反応後、白色沈殿をろ過し、十分洗浄して、末端カルボン酸プレポリマーを38.5g得た(カルボン酸価0.75meq/g、質量平均分子量1.25×103)。
得られたプレポリマー20gをN,N−ジメチルアセトアミド62gに溶解し、グリシジルメタクリレート6.71g、N,N−ジメチルドデシルアミン(触媒)504mg、ハイドロキノン(重合禁止剤)62.4mgを加え、130℃に昇温して6時間反応した。反応後、アセトンに投入し、ポリマーを沈殿させ、よく洗浄して末端メタクリレートアクリルアミドマクロモノマーを23.4g得た。(質量平均分子量:1.33×103)。1H−NMR(D2O)6.12,5.70ppmメタクリロイル基オレフィンピークの存在と、カルボン酸価(0.019meq/g)の減少から、末端に重合性基が導入できたことを確認した。親水性マクロマーのガラス転移温度をセイコーインスツルメンツ(株)製示差走査熱量計(DSC)により測定したところ、90℃であった。
【0266】
(エチレン性不飽和結合を有する疎水性セグメントをグラフト鎖とするグラフトポリマーの合成)
N,N−ジメチルアセトアミドアミド15gをフラスコに採り、窒素雰囲気下、60℃に昇温し、上記マクロモノマー10g、メタクリルアミド5g、熱重合性開始剤2,2’-アゾビスイソブチロニトリル150mgをN,N−ジメチルアセトアミドアミド15gに溶解した溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、引き続き6時間加熱を続けた。生成物を沈殿させ、よく洗浄して、疎水性セグメントをグラフト鎖とするグラフトポリマーを得た。
得られたグラフトポリマー26g、p-メトキシフェノール0.1gをフラスコ中に入れ、N,N-ジメチルアセトアミド60g、アセトン60gに溶解し、氷水を入れた氷浴にて冷却した。混合液温度が5℃以下になった後に、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)20.3gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、氷浴を外してさらに8時間攪拌した。生成物を沈殿させ、よく洗浄してグラフトポリマー(B−1)14.5gを得た(質量平均分子量1.0×105)。得られたグラフトポリマーの1H-NMRを測定したところ、化合物(M−1)由来の側鎖基の100%がエチレンメタクリレート基に変換されたことが確認された。質量平均分子量を表1に示す。
【0267】
<エチレン性不飽和結合を有する疎水セグメントをグラフト鎖とするグラフトポリマー(B−2〜5)の合成>
上記合成例の親水性モノマー(メタクリル酸アミド)を表2のように代えた以外はグラフトポリマー(B−1)の合成と同様の方法でグラフトポリマー(B−2)〜(B−5)を得た。質量平均分子量を表2に示す。
【0268】
【表2】

【0269】
<比較用グラフトポリマー(C−1)の合成>
1−メトキシ−2−プロパノール53gをフラスコに採り、窒素雰囲気下、60℃に昇温後、メタクリル酸メチル22g、ポリオキシエチレンモノメタクリレート(日本油脂(株)製 ブレンマーPME1000)30g、熱重合性開始剤2,2’-アゾビスイソブチロニトリル250mgを1−メトキシ−2−プロパノール53gに溶解した溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、引き続き6時間加熱を続けた。生成物を沈殿させ、よく洗浄して、比較用グラフトポリマー(C−1)を45g得た(質量平均分子量1.3×105)。
<比較用グラフトポリマー(C−2)の合成>
1−メトキシ−2−プロパノール53gをフラスコに採り、窒素雰囲気下、60℃に昇温後、メタクリルアミド22g、ポリメタクリル酸メチルモノマー(東亜合成(株)製 AA−1)30g、熱重合性開始剤2,2’-アゾビスイソブチロニトリル250mgを1−メトキシ−2−プロパノール53gに溶解した溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、引き続き6時間加熱を続けた。生成物を沈殿させ、よく洗浄して、比較用グラフトポリマー(C−1)を45g得た(質量平均分子量1.4×105)。
【0270】
<支持体の作製>
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミニウム板表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
【0271】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1の台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2 、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0272】
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dm2の条件で、上記硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。この板を15%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥し、さらに、珪酸ナトリウム2.5質量%水溶液にて30℃で10秒処理した。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0273】
上記支持体に下記下塗り液(1)を乾燥塗布量が10mg/m2になるよう塗布して水溶性高分子を含む下塗層を設け、以下の実験に用いる下塗層付きの支持体を作製した。
【0274】
下塗り液(1)
・下塗り化合物(1) 0.017g
・メタノール 9.00g
・水 1.00g
【0275】
【化35】

【0276】
〔実施例1〜10、比較例1,2〕
<平版印刷版原版の作製>
上記支持体上に、下記組成の画像記録層塗布液(1)をバー塗布した後、100℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の画像記録層を形成して平版印刷版原版を得た。引き続き、下記組成の保護層塗布液(1)を前記画像記録層上にバー塗布し、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/m2の保護層を形成することで平版印刷版原版1〜10及び比較用平版印刷版原版1’、2’を得た。
【0277】
画像記録層塗布液(1)
・下記の赤外線吸収剤(1) 0.05g
・下記の重合開始剤(1) 0.2g
・表3に記載のグラフトポリマー 0.5g
・重合性化合物 1.0g
アロニックスM−215(東亜合成(株)製)
・ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩 0.02g
・下記のフッ素系界面活性剤(1) 0.1g
・メチルエチルケトン 18.0g
【0278】
保護層塗布液(1)
・下記無機粒子分散液(1) 1.5g
・ポリビニルアルコールPVA105 0.06g
(株)クラレ製、ケンカ度98.5モル%、重合度500)
・ポリビニルピロリドンK30 0.01g
(東京化成工業(株)製、分子量Mw=4万)
・ビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体LUVITEC 0.01g
VA64W(ISP社製、共重合比=6/4)
・ノニオン系界面活性剤エマレックス710 0.01g
日本エマルジョン(株)製
・イオン交換水 6.0g
【0279】
【化36】

【0280】
【化37】

【0281】
【化38】

【0282】
無機粒子分散液(1)の調製
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル社製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散無機粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0283】
<露光および印刷>
得られた平版印刷版原版を水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像には細線チャートを含むようにした。得られた露光済み原版を現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。湿し水(EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、湿し水とインキを供給した後、毎時6000枚の印刷速度で印刷を行った。
【0284】
<評価>
一般に、ネガ型平版印刷版原版の場合、露光量が少ないと画像記録層の硬化度が低くなり、露光量が多いと硬化度が高くなる。画像記録層の硬化度が低すぎる場合には、平版印刷版の耐刷性が低くなり、また、小点や細線の再現性が不良となる。一方、画像記録層の硬化度が高い場合には、耐刷性が高くなり、また、小点や細線の再現性が良好となる。
本実施例では、以下に示すように、上記で得られたネガ型平版印刷版原版1〜10および1’を、上述した同一の露光量条件で耐刷性および細線再現性を評価することにより、平版印刷版原版の感度の指標とした。すなわち、耐刷性における印刷枚数が高いほど、また、細線再現性における細線幅が細いほど、平版印刷版原版の感度が高いと言える。
【0285】
(1)機上現像性
前記のように印刷を開始し、100枚印刷後、印刷用紙上の非画像部にインキ汚れのない印刷物が得られるまでに要した印刷用紙の枚数を数え、機上現像枚数とした。枚数が少ないほど機上現像性が高いと評価する。
【0286】
(2)細線再現性
上述したように100枚印刷して非画像部にインキ汚れがない印刷物が得られたことを確認した後、続けて500枚の印刷を行った。合計600枚目の印刷物の細線チャート(10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、60、80、100および200μmの細線を露光したチャート)を25倍のルーペで観察し、途切れることなくインキで再現された細線幅により、細線再現性を評価した。結果を表3に示す。
【0287】
(3)耐刷性
上述のように細線再現性評価の印刷を行った後、更に印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に画像記録層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるイン
キ濃度が低下した。インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性を評価した。結果を表3に示す。
【0288】
【表3】

【0289】
上記の結果から、分子内にエチレン性不飽和結合のないグラフトポリマーC−1およびC−2を用いた比較例では、機上現像性は良好であるものの、細線再現性および耐刷性が不十分であるのに対して、分子内にエチレン性不飽和結合を有するグラフトポリマーを用いた本発明の平版印刷版原版は、機上現像性が良好であるばかりでなく、細線再現性および耐刷性も優れていることが分かる。従って、本発明の平版印刷版原版は、感度の点でも優れていると言える。
【0290】
〔実施例11〜15,比較例3,4〕
実施例1で用いたのと同じ支持体上に、下記組成の画像記録層塗布液(2)をバー塗布した後、100℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の画像記録層を形成して平版印刷版原版を得た。引き続き、上記組成の保護層塗布液(1)を前記画像記録層上にバー塗布し、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/m2の保護層を形成することで平版印刷版原版11〜15および平版印刷版原版3’、4'を得た。
【0291】
画像記録層塗布液(2)は、下記感光液(1)及びマイクロカプセル液(1)を塗布直前に混合し攪拌することにより得た。
感光液(1)
・上記の重合開始剤(1) 0.1g
・下記の赤外線吸収剤(2) 0.02g
・重合性モノマー、アロニックスM−215 0.385g
(東亜合成(株)製)
・上記のフッ素系界面活性剤(1) 0.044g
・表4記載のグラフトポリマー 0.162g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 8.609g
・メチルエチルケトン 1.091g
マイクロカプセル液(1)
・下記の通り合成したマイクロカプセル(1) 2.640g
・水 2.425g
【0292】
【化39】

【0293】
(マイクロカプセル(1)の合成)
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N、75%酢酸エチル溶液)10g、アロニックスM−215(東亜合成(株)製)6.00g、パイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.12gを酢酸エチル16.67gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液37.5gを調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で2時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。平均粒径は0.2μmであった。
【0294】
このようにして得られた平版印刷版原版を、実施例1と同様の方法で露光し、印刷して評価した。結果を表4に示す。
【0295】
【表4】

【0296】
上記の結果から、画像記録層にマイクロカプセルを用いた平版印刷版原版においても、本発明の平版印刷版原版は、分子内にエチレン性不飽和結合のないグラフトポリマーC−
1およびC−2を用いた比較例3および比較例4より、細線再現性および耐刷性が優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、疎水性の主鎖および親水性のセグメントまたは、親水性の主鎖および疎水性のセグメントを有するグラフトポリマーを含有する画像記録層からなり、該グラフトポリマーが分子内にエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有することを特徴とする平版印刷版原版。
【請求項2】
支持体上に、赤外線吸収剤を含有する請求項1記載の平版印刷版原版。
【請求項3】
該グラフトポリマーが、エチレン性不飽和結合を下記一般式(1)〜(3)の群から選ばれる少なくとも1つの基として有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の平版印刷版原版。
【化1】

(式中、XおよびYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子または−N−R12を表す。Zは酸素原子、硫黄原子、−N−R12またはフェニレン基を表す。R1〜R12はそれぞれ独立に、水素原子または1価の置換基を表す。)
【請求項4】
該画像記録層が、マイクロカプセルを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項5】
該画像記録層またはその他の層に少なくとも(a1)エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ含有する繰り返し単位と(a2)支持体表面と相互作用する官能基を少なくとも1つ含有する繰り返し単位とを有する共重合体を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項6】
該画像記録層が印刷インキおよび/または湿し水により除去可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
【請求項7】
請求項6に記載の平版印刷版原版を、印刷機に装着し、レーザーで画像様に露光した後、または、レーザーで画像様に露光した後、印刷機に装着し、該平版印刷版原版に油性インキと水性成分とを供給して、画像記録層の赤外線未露光部分を除去し、印刷する平版印刷方法。

【公開番号】特開2006−248113(P2006−248113A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69873(P2005−69873)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】