説明

平版印刷版原版の製版方法

【課題】レーザーによる画像露光後の検版性が良好であり、検版性の経時劣化を抑制することができ、さらに機上現像性、インキ着肉性および耐刷性の良好な平版印刷版原版の製版方法を提供する。
【解決手段】支持体上に、(A)光または熱により酸を発生する化合物、(B)分子内に窒素原子を含む官能基で置換された芳香族炭化水素化合物または複素環式化合物、および、(C)酸分解性基で保護された芳香族アルデヒドを有する平版印刷版原版を画像様に露光する工程、並びに、印刷機シリンダー上で湿し水及びインキの少なくとも一方を供給し、平版印刷版原版の画像形成層未露光部分を除去する工程を有することを特徴とする平版印刷版原版の製版方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版の製版方法に関する。詳しくは、レーザーによって画像記録し、検版し、機上現像する平版印刷版原版の製版方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像形成層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像部に対応する画像形成層を残存させ、非画像部に対応する不要な画像形成層をアルカリ性現像液または有機溶剤含有現像液によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
【0003】
従来の平版印刷版原版の製版工程においては、露光の後、不要な画像形成層を現像液などによって溶解除去する工程が必要であるが、このような付加的に行われる湿式処理を不要化または簡易化することが課題の一つとして挙げられている。特に、近年、地球環境への配慮から湿式処理に伴って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事となっているので、上記課題の解決の要請は一層強くなってきている。
【0004】
これに対して、簡易な製版方法の一つとして、画像形成層の不要部分の除去を通常の印刷工程の中で行えるような画像形成層を用い、露光後、印刷機上で画像形成層の不要部分を除去して平版印刷版を得る、機上現像と呼ばれる方法が提案されている。
機上現像の具体的方法としては、例えば、湿し水、インキ溶剤または湿し水とインキとの乳化物に溶解しまたは分散することが可能な画像形成層を有する平版印刷版原版を用いる方法、印刷機のローラ類やブランケットとの接触により、画像形成層の力学的除去を行う方法、湿し水、インキ溶剤などの浸透によって画像形成層の凝集力または画像形成層と支持体との接着力を弱めた後、ローラ類やブランケットとの接触により、画像形成層の力学的除去を行う方法が挙げられる。
【0005】
一方、近年、画像情報をコンピュータで電子的に処理し、蓄積し、出力する、デジタル化技術が広く普及してきており、このようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。これに伴い、レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させて、その光で平版印刷版原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート技術が注目されてきている。したがって、このような技術に適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題の一つとなっている。
【0006】
上述したような製版作業の簡易化においては、作業のしやすさの点から明室または黄色灯下で取り扱い可能な画像形成層および光源を用いるシステムが好ましい。
そのようなレーザー光源としては、波長760〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザーおよびYAGレーザー等の固体レーザーは、高出力かつ小型のものを安価に入手できるようになったことから、極めて有用である。また、UVレーザーも用いることができる。
【0007】
この赤外線レーザーで画像記録をする機上現像型の平版印刷版原版として、例えば、特許文献1には、親水性結合剤中に疎水性熱可塑性重合体粒子を分散させた画像形成層を親水性支持体上に設けた平版印刷版原版が記載されている。この特許文献1には、上記平版印刷版原版を赤外線レーザーにより露光して、疎水性熱可塑性重合体粒子を熱により合体させて画像を形成させた後、印刷機のシリンダー上に取り付け、湿し水および/またはインキにより機上現像することが可能である旨記載されている。
【0008】
また、特許文献2および3には、親水性支持体上に、重合性化合物(重合性モノマー)を内包するマイクロカプセルを含む平版印刷版原版が記載されている。さらに、特許文献4には、支持体上に、赤外線吸収剤とラジカル重合開始剤と重合性化合物とを含有する感光層(画像形成層)を設けた平版印刷版原版が記載されている。
【0009】
また、一般に、印刷版を印刷機に取り付ける前工程として、印刷版が目的通りに画像記録されているか、印刷版上の画像を検査、識別する作業が行われる。現像処理行程を伴う通常の平版印刷版原版は、一般に画像形成層を着色しておくことにより、製版後(現像処理後)、印刷前(印刷機に印刷版を取り付ける前)に、画像を確認する(検版する)ことは容易である。
しかし、印刷前に現像処理を行わない機上現像型平版印刷版原版では、印刷版を印刷機に取り付ける段階で印刷版上に画像がなく、版の識別を行うことができない。特に、多色印刷において見当合わせの目印となるトンボ(レジスタマーク)が描きこまれていることを判別できるか否かは印刷作業にとって重要である。そのため、機上現像型平版印刷版原版は、露光または加熱した段階で画像を確認する手段、すなわち、露光または加熱領域が発色または消色することが要求されている。
【0010】
露光または加熱領域を変色させて得られる画像は焼き出し画像と呼ばれるが、この焼き出し画像を得る手段としては、種々の方法が提案されている。しかしながら、検版性、機上現像性および印刷適性を全て満足する手段はまだ見出されていない。例えば、光または熱で酸、塩基またはラジカルを発生する化合物と、発生した酸、塩基またはラジカルと相互作用して変色する化合物とを用いた印刷版が提案されている(例えば、特許文献5参照)。また、熱分解性化合物の色変化を、感熱層を有する直描型平版印刷版原版の焼き出し剤として利用することも提案されている(例えば、特許文献6参照)。さらに、熱分解温度が250℃以下の熱分解性色素を焼き出し剤として用いることも提案されている(例えば、特許文献7参照)。
これらによれば、露光部において発色が生じ、画像のある程度の確認性は得られるが、検版作業を行うにはまだ不十分であった。
【0011】
また、ヒートモード露光により画像描画し、現像処理を行わず直接印刷機に装着して印刷することが可能な平版印刷版原版において、特定の色素前駆体を含有させることが提案されている(特許文献8参照)。しかし、この技術によっても、露光部の発色はある程度向上しているものの、検版作業を行うにはまだ不十分であり、平版印刷版原版の保管経時中に検版性(発色性)が低下する欠点があった。さらに、機上現像性、および着肉性、耐刷性などの印刷適性も不十分であった。
【特許文献1】特許第2938397号明細書
【特許文献2】特開2001−277740号公報
【特許文献3】特開2001−277742号公報
【特許文献4】特開2002−287334号公報
【特許文献5】特開2005−96219号公報
【特許文献6】特開2000−335129公報
【特許文献7】特開2003−191657公報
【特許文献8】特開2005−96219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
レーザーによる画像露光後の検版性が良好であり、検版性の経時劣化を抑制することができ、さらに機上現像性、インキ着肉性および耐刷性の良好な平版印刷版原版の製版方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1.支持体上に、(A)光または熱により酸を発生する化合物、(B)分子内に窒素原子を含む官能基で置換された芳香族炭化水素化合物または複素環式化合物、および、(C)酸分解性基で保護された芳香族アルデヒドを有する平版印刷版原版を画像様に露光する工程、並びに、印刷機シリンダー上で湿し水及びインキの少なくとも一方を供給し、平版印刷版原版の画像形成層未露光部分を除去する工程を有することを特徴とする平版印刷版原版の製版方法。
2.(C)酸分解性基で保護された芳香族アルデヒドが一般式(I)で示される化合物であり、(B)分子内に窒素原子を含む官能基で置換された芳香族炭化水素化合物または複素環化合物が一般式(II)で示される化合物であることを特徴とする前記1記載の平版印刷版原版の製版方法。
【0014】
【化1】



【0015】
式中、R〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、―OCORa、―OCONRaRb、―NRaRb、―N(Ra)CORb、―N(Ra)COORb、―COORa、―CONRaRb、−SRaまたはシアノ基を表す。また、これらの基の任意の炭素鎖の間に、O、S、N(Ra)、COまたはこれらの組み合わせからなる原子団が挿入されていてもよい。R〜Rの中の少なくともいずれか2つが互いに結合して縮環を形成してもよい。また、R〜R11の中の少なくともいずれか2つが互いに結合して縮環を形成してもよい。XおよびXは、それぞれ独立に、―ORx、―NRxRy、または―SRxを表し、複数のRx、Ryがそれぞれ結びついて環状構造を形成してもよい。RaおよびRbは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。RxおよびRyは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。
【0016】
3.(A)光または熱により酸を発生する化合物が、オニウム化合物、オキシムエステル化合物、トリアジン化合物またはイミドエステル化合物であることを特徴とする前記1または2に記載の平版印刷版原版の製版方法。
4.平版印刷版原版が赤外線吸収剤を含有する画像形成層を有することを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の平版印刷版原版の製版方法。
5.画像形成層に、重合性モノマーおよびバインダーポリマーを含有することを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の平版印刷版原版の製版方法。
【0017】
6.画像形成層に、前記(B)分子内にヘテロ原子を含む官能基で置換された芳香族炭化水素化合物または複素環化合物および(C)酸分解性基で保護された芳香族アルデヒドの一方を内包させたミクロゲルを含有することを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載の平版印刷版原版の製版方法。
7.画像形成層に、塩基成分を含有することを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載の平版印刷版原版の製版方法。
【0018】
本発明では、露光により(A)光または熱により酸を発生する化合物から発生した酸の作用により、(C)酸分解性基で保護された芳香族アルデヒドが分解して芳香族アルデヒドを生成し、これがさらに酸の存在下で(B)分子内にヘテロ原子を含む官能基で置換された芳香族炭化水素化合物または複素環化合物と縮合反応を起こし、色素骨格を形成することで露光部が発色し、検版が可能となる。発色メカニズムを下に示した。このように複数の分子が縮合する反応を利用することにより、色素前駆体のように単分子で分解して発色する系よりも、発色の経時安定性が良好になる。
【0019】
【化2】

【0020】
さらに、上記酸存在下(B)と(C)との発色反応を、従来のアルカリ現像方式ではなく、機上現像方式の平版印刷版原版に適用したところ、驚くべきことに、機上現像性、インキ着肉性および耐刷性が向上することを見出し、本発明に至った。機上現像性は低分子の極性化合物により促進される。また、機上現像方式に適用することでインキ着肉性が向上する理由は以下のことが考えられる。すなわち、機上現像方式では湿し水の浸透促進により未露光部を除去する必要があり、従来のアルカリ現像用途よりも親水性の高い平版印刷版原版を使用するため、その分インキ着肉性、耐刷性が低下しているが、本発明のように露光部で(B)成分、(C)成分が縮合することで膜中素材の分子量および疎水性が増加し、インキ着肉性および耐刷性が向上すると推定される。
【0021】
ここで、特許第3839541号明細書には、(A)光または熱により酸を発生する化合物、(B)分子内にヘテロ原子を含む官能基で置換された芳香族炭化水素化合物または複素環化合物と、(C)カルボニル化合物およびその等価体から選択される化合物とを含み、光または熱により発生した酸によって、(B)と(C)が色素骨格を形成する反応を起こすことを特徴とする発色画像形成材料が記載されている。しかし、上記明細書は、水またはアルカリによる現像処理を必要とする平版印刷版原版を対象としており、本発明のごとき機上現像型の平版印刷版原版に関する課題の解決に何ら開示も示唆もしていない。事実、上記特許における(B)の好ましい態様は、側鎖に、分子内にヘテロ原子を含む官能基で置換された芳香族炭化水素化合物及び複素環化合物からの残基を有するポリマーであって、本発明の機上現像性促進のため低分子の極性化合物を用いる発明思想とは全く異なるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、レーザーによる画像露光後の検版性が良好であり、検版性の経時劣化を抑制することができ、さらに機上現像性、インキ着肉性および耐刷性の良好な平版印刷版原版の製版方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の製版方法は、支持体上に、(A)光または熱により酸を発生する化合物、(B)分子内に窒素原子を含む官能基で置換された芳香族炭化水素化合物または複素環式化合物、および、(C)酸分解性基で保護された芳香族アルデヒドを有する平版印刷版原版を画像様に露光する工程、並びに、印刷機シリンダー上で湿し水またはインキの少なくとも一方を供給し、平版印刷版原版の画像形成層未露光部分を除去する工程を有することを特徴とする。
以下では、上記(A)〜(C)の成分、それらを用いた平版印刷版原版、およびその製版方法の順に詳細に説明する。
【0024】
〔(A)光または熱により酸を発生する化合物〕
本発明において光または熱により酸を発生する化合物(以下では酸発生剤とも呼ぶ。)とは、光の照射または100℃以上の加熱により分解して酸を発生する化合物を指す。ここで発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが効果の観点から好ましい。本発明において好適に用いられる酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。具体的には、米国特許第4,708,925号明細書や特開平7−20629号公報に記載されている化合物を挙げることができる。特に、スルホン酸イオンを対イオンとするヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましい。ジアゾニウム塩としては、米国特許第3867147号記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2632703号明細書記載のジアゾニウム化合物や特開平1−102456号および特開平1−102457号の各公報に記載されているジアゾ樹脂も好ましい。また、米国特許第5,135,838号や米国特許第5,200,544号の明細書に記載されているベンジルスルホナート類も好ましい。さらに、特開平2−100054号、特開平2−100055号および特開平9−197671号の各公報に記載されている活性スルホン酸エステル、イミドエステルやジスルホン化合物類も好ましい。また、J.C.S. Perkin II (1979 )1653−1660)、J.C.S.Perkin II (1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報、特開2000−80068号公報に記載のオキシムエステル化合物も好ましい。他にも、特開平7−271029号に記載されている、ハロアルキル置換されたS−トリアジン化合物も好ましい。
【0025】
本発明で用いる酸発生剤としては、上記の中でも、オニウム化合物、オキシムエステル化合物、ハロアルキル置換されたS−トリアジン化合物およびイミドエステル化合物が、より好ましい。これらの化合物は、酸発生剤であるとともに良好なラジカル重合開始剤でもあるので、(B)成分と(C)成分との色素骨格形成反応を促進すると同時に光重合性組成物における光重合反応を促進することができる。
【0026】
酸発生剤は、平版印刷版原版支持体上の、画像形成層、保護層、その他の層のいずれにも含有させることができるが、画像形成層に含有させるのが好ましい。画像形成層への含有量は、画像形成層固形分の0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜25質量%、より好ましくは1〜15質量%である。この範囲で良好な検版性が得られる。
【0027】
〔(C)酸分解性基で保護された芳香族アルデヒド〕
「酸分解性基」とは、酸の存在下で分解し得る基を指し、この条件を満たすものであれば何でもよい。具体的には、アセタール、イミン、アミジン構造などが挙げられる。「酸分解性基で保護された芳香族アルデヒド」とは、アルデヒド基(−CHO)が酸分解性基で保護された芳香族アルデヒドを指す。
本発明で用いられる(C)酸分解性基で保護された芳香族アルデヒドとしては一般式(I)で示される化合物が好ましい。
【0028】
【化3】

【0029】
式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(直鎖、分岐、環状を含む)、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、―OCORa、―OCONRaRb、―NRaRb、―N(Ra)CORb、―N(Ra)COORb、―COORa、―CONRaRb、−SRaまたはシアノ基を表す。また、これらの基の任意の炭素鎖の間に、O、S、N(Ra)、COまたはこれらの組み合わせからなる原子団が挿入されていてもよく、R〜Rの中の少なくともいずれか2つが互いに結合して縮環を形成してもよい。なかでも、上記R〜Rの少なくとも1つがアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、または−NRaRbであることが好ましく、R〜Rの少なくとも1つがアルコキシ基または−NRaRbであることがより好ましい。RaおよびRbは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。XおよびXは、それぞれ独立に、―ORx、―NRxRy、または―SRxを表し、複数のRx、Ryがそれぞれ結びついて環状構造を形成してもよい。RxおよびRyは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。
上記R〜R、Ra、Rb、RxおよびRyは、さらに置換基を有してもよい。置換基としてはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基が挙げられる。なかでも、ヒドロキシ基が好ましい。
【0030】
上記の中でも、R〜Rの少なくとも一つがアルキル基、アルコキシ基、または−NRaRbであることがより好ましい。RaおよびRbはアルキル基がより好ましい。上記アルキル基、アルコキシ基、RaおよびRbは炭素原子数が1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜3であることが最も好ましい。また、R〜Rの中のいずれか2つが互いに結合してベンゼン環を形成することも好ましい。
上記XおよびXとしては、−ORxおよび−SRxがより好ましい。
【0031】
一般式(I)で示される化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0032】
【化4】



【0033】
上記(C)成分は、平版印刷版原版支持体上の、画像形成層、保護層、その他の層のいずれに含有させることできるが、画像形成層に含有させるのが好ましい。
上記(C)成分の画像形成層への含有量は、画像形成層固形分の0.5〜50質量%が好ましく、1〜35質量%がより好ましい。この範囲で良好な検版性が得られる。
【0034】
〔(B)分子内に窒素原子を含む官能基で置換された芳香族炭化水素化合物または複素環化合物〕
この(B)成分は、窒素原子を含む官能基で置換された芳香族炭化水素化合物または複素環化合物であり、複素環化合物としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子の内いずれか1つを含む複素環化合物を用いることが好ましい。
【0035】
窒素原子を含む官能基で置換された芳香族炭化水素化合物としては、アミノ基置換された芳香族炭化水素化合物が好ましい。具体的には、アニリン、ナフチルアミン、アントラセニルアミンや、モノメチルアニリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、N−メチル−N−ヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N−フェニルモルホリン等のアルキルアミノ置換された芳香族炭化水素化合物、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン等のアリールアミノ置換された芳香族炭化水素化合物、N−メチルジフェニルアミン等のアルキルアリールアミノ置換された芳香族炭化水素化合物等を挙げることができる。さらに、N,N,N’,N’−テトラメチルフェニレンジアミン等の2つ以上のアミノ基を有する芳香族炭化水素化合物や、N,N−ジメチルアミノフェノールおよびN,N−ジメチルアミノチオアニソール、N,N−ジメチルアミノハロゲノベンゼン等の他の置換基を有する芳香族炭化水素化合物も好ましい。
【0036】
窒素原子、酸素原子および硫黄原子の内いずれか1つを含む複素環化合物としては、これらのヘテロ原子に共役した二重結合を1つ以上有する複素環が好ましい。具体的には、ピロール、フラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、フラザン、オキサジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン等の単環式複素環、およびインドール、イソインドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドリジン、キノリン、イソキノリン、プリン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、キナゾリン、シンノリン、キノキサリン、フタラジン、プテリジン、カルバゾール、アクリジン、フェナントリジン、キサンテン、フェナジン、フェノチアジン等の縮合複素環が挙げられる。これらの複素環化合物は置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、炭素数20個以下の炭化水素基、炭素数20個以下のアルコキシ基、炭素数20個以下のアリールオキシ基、およびハロゲン原子が挙げられる。これらの複素環化合物の内、窒素原子を含むものは、発色した際の濃度が高いので特に好ましい。
【0037】
本発明において好適に用いられる複素環化合物は、2個の共役二重結合をもった5員環、または3個の共役二重結合をもった6員環、およびこれら複素環が縮環した複素環化合物である。さらに、これらの複素環にベンゼン環やナフタレン環等の芳香族炭化水素環が縮環した複素環も好ましい。これらの複素環は、芳香族性をもっているので、芳香族複素環と呼ばれる。
【0038】
本発明に用いられる(B)成分の具体例としては、下記化合物および下記一般式(II)で表される化合物が挙げられる。なかでも、下記一般式(II)で示される化合物が好ましい。
【0039】
【化5】



【0040】
【化6】

【0041】
式中、R〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(直鎖、分岐、環状を含む)、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、―OCORa、―OCONRaRb、―NRaRb、―N(Ra)CORb、―N(Ra)COORb、―COORa、―CONRaRbまたはシアノ基を表す。また、これらの基の任意の炭素鎖の間に、O、S、N(Ra)、COまたはこれらの組み合わせからなる原子団が挿入されていてもよく、R〜R11の中の少なくともいずれか2つが互いに結合して縮環を形成してもよい。RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。
上記R〜R11、RaおよびRbは、さらに置換基を有してもよい。置換基としてはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基が挙げられる。なかでも、ヒドロキシ基が好ましい。
【0042】
上記の中でも、R〜R11としては、水素原子、アルキル基およびアルコキシ基がより好ましい。また、R〜R11の中のいずれか2つが互いに結合してベンゼン環を形成することも好ましい。上記アルキル基およびアルコキシ基は炭素原子数が1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜3であることが最も好ましい。
【0043】
一般式(II)で示される化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0044】
【化7】


【0045】
上記(B)成分は、平版印刷版原版支持体上のいずれの層にも含有させることできるが、画像形成層に含有させることが好ましい。
上記(B)成分の画像形成層への含有量は、画像形成層固形分の1〜65質量%が好ましく、2〜45質量%がより好ましい。この範囲で良好な検版性が得られる。
【0046】
(B)成分および前記(C)成分は、画像形成層用の塗布液あるいは感光液に直接添加、溶解して用いることができるが、本発明では、(B)成分または(C)成分の一方を、後述のマイクロカプセルまたはミクロゲルに内包させて画像形成層に含有させることも好ましい態様である。(B)成分あるいは(C)成分の一方がマイクロカプセルまたはミクロゲルに内包することで、未露光部では上記2成分の縮合反応(発色反応)が抑制され、露光部では発生した酸および/または熱の作用でマイクロカプセルまたはミクロゲルが崩壊し、内包物が流出することで上記2成分の縮合反応(発色反応)が起こり得るようになり、結果として検版性(発色性)と経時安定性の更なる向上が可能となる。
【0047】
また、本発明においては、(B)成分および(C)成分とともに画像形成層に塩基成分を添加することができる。塩基成分を添加することによっても、経時安定性の更なる向上が可能となる。
塩基成分の例としては公知のものを使用できる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基やテトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの第4級アンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−5−ノネン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセン(DBU)などの有機アミンなどが挙げられる。この場合、加える塩基成分の量は、画像形成層に存在する(A)成分(酸発生剤)に対して通常0.05〜50モル%であり、好ましくは0.1〜40モル%、さらに好ましくは0.5〜30モル%である。
【0048】
〔平版印刷版原版〕
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に機上現像が可能な画像形成層を有することが好ましい。また、画像形成層の上に保護層を設けることが好ましい。さらに、必要に応じて、下塗り層など、その他の層を設けることができる。
【0049】
(画像形成層)
本発明に用いられる画像形成層は、露光後、印刷機上で湿し水または印刷インキの少なくとも一方を供給して未露光部分を除去することにより画像形成可能な画像形成層である。画像形成層が含有する機上現像可能な代表的な画像形成機構としては、増感色素、ラジカル重合開始剤(前述の酸発生剤の中でラジカル重合開始剤としても機能するものを用いることが好ましい。)および重合性モノマーを含有して、重合反応を利用して画像部を硬化させる態様と、(2)増感色素(赤外線吸収剤)および疎水化前駆体を含有して、疎水化前駆体の熱融着や熱反応を利用して疎水性領域(画像部)を形成する態様を挙げることができる。また、上記二つの態様が混合したものでもよい。例えば、(1)重合型の画像形成層に疎水化前駆体を含有させてもよいし、(2)疎水化前駆体型に重合性モノマーなどを含有させてもよい。
以下に、本発明の画像形成層に用いられる成分について、順次説明する。
【0050】
<増感色素>
本発明に用いられる増感色素としては、760〜1200nmの赤外線を発するレーザー光源により画像形成する場合には、(S1)赤外線吸収剤を用いることが好ましく、可視光または紫外線レーザー光源により画像形成する場合には、(S2)350〜850nmに吸収ピークを有する増感色素が好ましい。
【0051】
(S1)赤外線吸収剤
本発明の平版印刷版原版は、760〜1200nmの赤外線を発するレーザー等を光源にして画像形成する場合は、画像形成層に赤外線吸収剤を含有することが好ましい。
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して前述の酸発生剤に電子移動および/またはエネルギー移動する機能を有する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料または顔料である。
【0052】
染料としては、市販の染料および例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0053】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、本発明の赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0054】
【化8】

【0055】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0056】
【化9】

【0057】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、−X2−L1または以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。Xa-は後述するZa-と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0058】
【化10】

【0059】
1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。画像形成層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
【0060】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環およびナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、画像形成層塗布液の保存安定性から、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0061】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−023360号公報の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−040638号公報の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0062】
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0063】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0064】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0065】
顔料の粒径は0.01μmから10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μmから1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μmから1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径を0.01μm以上にすると、分散物の画像形成層塗布液中での安定性が増し、また、10μm以下にすると画像形成層の均一性が良好になる。
【0066】
顔料を分散する方法としては、インキ製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0067】
重合性組成物の硬化を促進するために添加される、これらの赤外線吸収剤は、本発明の重合性組成物をネガ型平版印刷版原版の画像形成層として適用する場合、画像形成層に添加してもよいし、別の層、例えば上塗り層、下塗り層を設けそこへ添加してもよい。また、特に、本発明の重合性組成物をネガ型感光性平版印刷版の画像形成層に適用する場合には、これらの赤外線吸収剤は、感度の観点から、画像形成層の波長760nmから1200nmの範囲における吸収極大での光学濃度が、0.1から3.0の間にあることが好ましい。光学濃度は前記赤外線吸収剤の添加量と画像形成層の厚みとにより決定されるため、所定の光学濃度は両者の条件を制御することにより得られる。
画像形成層の光学濃度は常法により測定することができる。測定方法としては、例えば、透明、あるいは白色の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの画像形成層を形成し、透過型の光学濃度計で測定する方法、アルミニウム等の反射性の支持体上に画像形成層を形成し、反射濃度を測定する方法等が挙げられる。
【0068】
(S2)350〜850nmに吸収ピークを有する増感色素
該増感色素としては、300〜850nmに吸収ピークを有するものが好ましく、300〜600nmに吸収ピークを有するものがさらに好ましい。このような増感色素としては、分光増感色素、光源の光を吸収して光重合開始剤と相互作用する以下に示す染料あるいは顔料が挙げられる。
好ましい分光増感色素または染料としては、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロラン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオエン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、フタロシアニン類で(例えば、フタロシアニン、メタルフタロシアニン)、ポルフィリン類(例えば、テトラフェニルポルフィリン、中心金属置換ポルフィリン)、クロロフィル類(例えば、クロロフィル、クロロフィリン、中心金属置換クロロフィル)、金属錯体、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スタアリウム類(例えば、スタアリウム)等が挙げられる。
【0069】
より好ましい分光増感色素または染料の例としては、特公昭37−13034号公報記載のスチリル系色素、特開昭62−143044号公報記載の陽イオン染料、特公昭59−24147号公報記載のキノキサリニウム塩、特開昭64−33104号公報記載の新メチレンブルー化合物、特開昭64−56767号公報記載のアントラキノン類、特開平2−1714号公報記載のベンゾキサンデン染料、特開平2−226148号および特開平2−226149号各公報記載のアクリジン類、特公昭40−28499号公報記載のピリリウム塩類、特公昭46−42363号公報記載のシアニン類、特開平2−63053号公報記載のベンゾフラン色素、特開平2−85858号、特開平2−216154号各公報記載の共役ケトン色素、特開昭57−10605号公報記載の色素、特公平2−30321号公報記載のアゾシンナミリデン誘導体、特開平1−287105号公報記載のシアニン系色素、特開昭62−31844号、特開昭62−31848号、特開昭62−143043号各公報記載のキサンテン系色素、特公昭59−28325号公報記載のアミノスチリルケトン、特公昭61−962l号公報記載のメロシアニン色素、特開平2−179643号公報記載の色素、特開平2−244050号公報記載のメロシアニン色素、特公昭59−28326号公報記載のメロシアニン色素、特開昭59−89803号公報記載のメロシアニン色素、特開平8−129257号記載のメロシアニン色素、特開平8−334897号記載のベンゾピラン系色素、等を挙げることができる。
【0070】
本発明に用いられる増感色素としては、特開2000−147763号公報、特開2001−100412号公報に記載の増感色素が好ましく、なかでも下記一般式(1)で表される化合物がさらに好ましい。
【0071】
【化11】

【0072】
一般式(1)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環またはスルホ基を表し、Xは酸素原子または硫黄原子ないし−N(R1)−を表し、Yは酸素原子または−N(R1)−を表す。R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子または、一価の非金属原子団を表し、AとR1、R2、R3とは、それぞれ互いに結合して、脂肪族性または芳香族性の環を形成することができる。ここで、R1、R2、R3が一価の非金属原子団をあらわすとき、好ましくは、置換もしくは無置換のアルキル基またはアリール基を表す。
【0073】
以下に、一般式(1)で表される増感色素の好ましい具体例としては、特開2001−100412号公報の段落番号[0039]〜[0042]に記載されたものを挙げることができる。
【0074】
350〜850nmに吸収ピークを有する増感色素の添加量は、通常、画像形成層を構成する全固形成分100質量部に対し、0.05〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.2〜10質量部の範囲である。
【0075】
<重合性モノマー>
本発明に用いることができる重合性モノマーは、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物並びにそれらの(共)重合体などの化学的形態をもつ。
【0076】
モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、および単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、さらにハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0077】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0078】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0079】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0080】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号の各公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号の各公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。さらに、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0081】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0082】
また、イソシアネートとヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(i)で示されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0083】
CH2=C(R19)COOCH2CH(R20)OH 一般式(i)
(ただし、R19およびR20は、それぞれ、HまたはCH3を示す。)
【0084】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号の各公報記載のエチレンオキシド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。さらに、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号の各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0085】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂とアクリル酸もしくはメタクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号、各公報記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0086】
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、さらに、異なる官能数・異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、画像形成層中の他の成分(例えば、バインダーポリマー、ラジカル重合開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、支持体や後述の保護層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
【0087】
本発明において、重合性モノマーは、画像形成層中の不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、さらに好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。
そのほか、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から、適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、さらに場合によっては、下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0088】
<バインダーポリマー>
本発明の画像形成層には、画像形成層の膜強度を向上させるため、バインダーポリマーを用いることができる。本発明に用いることができるバインダーポリマーは、従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有するポリマーが好ましい。このようなバインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられる。特にアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
これらのバインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していてもよい。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよい。
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,4−イソプレン等が挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドのポリマーであって、エステルまたはアミドの残基(−COORまたは−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0089】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−(CH2 n CR1 =CR2 3 、−(CH2 O)n CH2 CR1 =CR2 3 、−(CH2 CH2 O)n CH2 CR1 =CR2 3 、−(CH2 n NH−CO−O−CH2 CR1 =CR2 3 、−(CH2 n −O−CO−CR1 =CR2 3 および−(CH2 CH2 O)2 −X(式中、R1 〜R3 はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、R1 とR2 またはR3 とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
エステル残基の具体例としては、−CH2 CH=CH2 (特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2 CH2 O−CH2 CH=CH2 、−CH2 C(CH3 )=CH2 、−CH2 CH=CH−C6 5 、−CH2 CH2 OCOCH=CH−C6 5 、−CH2 CH2 −NHCOO−CH2 CH=CH2 および−CH2 CH2 O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH2 CH=CH2 、−CH2 CH2 −Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2 CH2 −OCO−CH=CH2 が挙げられる。
【0090】
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性モノマーの重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接にまたは重合性モノマーの重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0091】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と良好な保存安定性が得られる。
【0092】
また、本発明で使用するバインダーポリマーは親水性基を有することが好ましい。親水性基は画像形成層に機上現像性を付与するのに寄与する。特に、架橋性基と親水性基を共存させることにより、耐刷性と現像性を両立することが可能になる。
【0093】
親水性基としては、たとえば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、アルキレンオキシド構造、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシエチル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホ基、リン酸基等などがあり、好ましいのはアミド基、ヒドロキシ基、ポリオキシエチル基、アルキレンオキシド構造などが挙げられ、下記一般式(2)で表されるアルキレンオキシド構造が最も好ましい。該アルキレンオキシド構造を側鎖に有していることが好ましい。
【0094】
【化12】

【0095】
式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは1、3または5であり、nは1〜9の整数を表す。nは好ましくは1〜8の整数であり、より好ましくは1〜7の整数、さらに好ましくは1〜6の整数、最も好ましくは2〜4の整数である。
【0096】
アクリル樹脂に親水性基を付与するには親水性モノマーを共重合すればよい。親水性基を有する共重合モノマーの具体例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリオキシエチレンモノメタクリレート、ポリオキシエチレンモノアクリレート、ポリオキシプロピレンモノメタクリレート、ポリオキシプロピレンモノアクリレート、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、ポリオキシプロピレンモノアルキルエーテルの(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
これらを1種あるいは2種以上用いることができ、これらの親水性基を有する構造単位の好適に使用される含有量は、特定高分子中の1〜85モル%であり、特に好ましくは5〜70モル%である。
【0097】
さらに本発明には、効果を損なわない程度に、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などの炭素原子を有する親油性の基を導入することができる。これらにより着肉性を制御できる。
アクリル樹脂に親油性を付与するには親油性モノマーを共重合すればよい。共重合モノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、N,N−2置換アクリルアミド類、N,N−2置換メタクリルアミド類、スチレン類、アクリロニトリル類、メタクリロニトリル類などから選ばれるモノマーが挙げられる。
【0098】
具体的には、例えば、アルキルアクリレート(該アルキル基の炭素原子数は1〜20のものが好ましい)等のアクリル酸エステル類、(具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−t−オクチル、クロルエチルアクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリヌリトールモノアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなど)、アリールアクリレート(例えば、フェニルアクリレートなど)、アルキルメタクリレート(該アルキル基の炭素原子は1〜20のものが好ましい)等のメタクリル酸エステル類(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロルベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクゾレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートなど)、アリールメタクリレート(例えば、フェニルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレートなど)、スチレン、アルキルスチレン等のスチレン(例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオルメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレンなど)、アルコキシスチレン(例えばメトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレンなど)、ハロゲンスチレン(例えばクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、テトラクロルスチレン、ペンタクロルスチレン、プロムスチレン、ジブロムスチレン、ヨードスチレン、フルオルスチレン、トリフルオルスチレン、2−ブロム−4−トリフルオルメチルスチレン、4−フルオル−3−トリフルオルメチルスチレンなど)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0099】
バインダーポリマーは、質量平均モル質量(Mw)が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均モル質量(Mn)が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(Mw/Mn)は、1.1〜10であるのが好ましい。
【0100】
バインダーポリマーは、市販品を購入するか、あるいは公知の方法で合成することによって入手できる。
【0101】
バインダーポリマーの含有量は、画像形成層の全固形分に対して、5〜90質量%であり、5〜80質量%であるのが好ましく、10〜70質量%であるのがより好ましい。この範囲で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
また、ラジカル重合性モノマーとバインダーポリマーは、質量比で0.5/1〜4/1となる量で用いるのが好ましい。
【0102】
本発明に用いられるバインダーポリマーの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0103】
【化13】

【0104】
【化14】

【0105】
【化15】

【0106】
【化16】

【0107】
【化17】



【0108】
【化18】

【0109】
<疎水化前駆体>
本発明の画像形成層には前記のように疎水化前駆体を用いることができる。疎水化前駆体は機上現像性を向上させるのに有効である。ここで疎水性化前駆体とは、熱が加えられたときに画像形成層を疎水性に変換できる微粒子を意味する。微粒子としては、疎水性熱可塑性ポリマー微粒子、熱反応性ポリマー微粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、およびミクロゲルから選ばれる少なくともひとつの粒子が好ましい。
【0110】
疎水性熱可塑性ポリマー微粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報および欧州特許第931647号明細書などに記載の疎水性熱可塑性ポリマー微粒子を好適なものとして挙げることができる。
このようなポリマー微粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾールなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマーまたはそれらの混合物を挙げることができる。その中で、より好適なものとして、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。
【0111】
本発明に用いられる疎水性熱可塑性ポリマー微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。
疎水化前駆体として用いうる前記粒径の疎水性熱可塑性ポリマー微粒子の合成方法としては、乳化重合法、懸濁重合法が挙げられ、その他に、これら化合物を非水溶性の有機溶剤に溶解し、これを分散剤が入った水溶液と混合乳化し、さらに熱をかけて、有機溶剤を飛ばしながら微粒子状に固化させる方法(溶解分散法)がある。
【0112】
本発明に用いられる熱反応性ポリマー微粒子としては、熱反応性基を有するポリマー微粒子が挙げられ、これらは、熱反応による架橋、およびその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0113】
本発明に用いる熱反応性基を有するポリマー微粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基など)、付加反応を行うイソシアナート基またはそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基およびこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基および反応相手であるヒドロキシ基またはアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物および反応相手であるアミノ基またはヒドロキシ基などを好適なものとして挙げることができる。
【0114】
これらの官能基のポリマー微粒子への導入は、重合時に行ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。
重合時に導入する場合は、上記の官能基を有するモノマーを乳化重合または懸濁重合ることが好ましい。上記の官能基を有するモノマーの具体例として、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、2−(ビニルオキシ)エチルメタクリレート、p−ビニルオキシスチレン、p−{2−(ビニルオキシ)エチル}スチレン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−イソシアナートエチルメタクリレートまたはそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−イソシアナートエチルアクリレートまたはそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2官能アクリレート、2官能メタクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
本発明では、これらのモノマーと、これらのモノマーと共重合可能な、熱反応性基をもたないモノマーとの共重合体も用いることができる。熱反応性基をもたない共重合モノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどを挙げることができるが、熱反応性基をもたないモノマーであれば、これらに限定されない。
【0116】
熱反応性基の導入を重合後に行う場合に用いる高分子反応としては、例えば、国際公開第96/34316号パンフレットに記載されている高分子反応を挙げることができる。
【0117】
上記熱反応性基を有するポリマー微粒子の中で、ポリマー微粒子同志が熱により合体するものが好ましく、その表面は親水性で水に分散するものが特に好ましい。ポリマー微粒子のみを塗布し、凝固温度よりも低い温度で乾燥して作製した皮膜の接触角(空中水滴)が、凝固温度より高い温度で乾燥して作製した皮膜の接触角(空中水滴)よりも低くなることが好ましい。このようにポリマー微粒子表面を親水性にするには、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーもしくはオリゴマーまたは親水性低分子化合物をポリマー微粒子表面に吸着させてやればよい。しかし、表面親水化の方法は、これに限定されない。
【0118】
これらの熱反応性基を有するポリマー微粒子の凝固温度は、70℃以上が好ましいが、経時安定性を考えると100℃以上がさらに好ましい。ポリマー微粒子の平均粒径は、0.01〜2.0μmが好ましいが、そのなかでも0.05〜2.0μmがさらに好ましく、特に0.1〜1.0μmが最適である。この範囲内で良好な解像度および経時安定性が得られる。
【0119】
本発明で用いられるマイクロカプセルとしては、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像形成層の構成成分の全てまたは一部をマイクロカプセルに内包させたものである。なお、画像形成層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。さらに、マイクロカプセルを含有する画像形成層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
【0120】
本発明においては、架橋樹脂粒子、すなわちミクロゲルを含有する態様であってもよい。このミクロゲルは、その中および/または表面に、画像形成層の構成成分の一部を含有することができ、重合性モノマーをその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が、画像形成感度や耐刷性の観点から好ましい。
【0121】
本発明では、前述のように、一般式(I)または一般式(II)で表される化合物の一方を内包させたマイクロカプセルまたはミクロゲルを画像形成層に含有させることは好ましい態様の一つである。
【0122】
画像形成層の構成成分をマイクロカプセル化、もしくはミクロゲル化する方法としては、公知の方法が適用できる。
【0123】
例えば、マイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号の各明細書、特公昭38−19574号、同42−446号の各公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号の各明細書にみられる尿素―ホルムアルデヒド系または尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号の各公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号、同第967074号の各明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、およびこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレアおよびポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプセル壁に、前述のバインダーポリマーに導入可能なエチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を有する化合物を導入してもよい。
【0125】
一方、ミクロゲルを調製する方法としては、特公昭38−19574号、同42−446号明細書に記載されている界面重合による造粒、特開平5−61214号明細書に記載されているような非水系分散重合による造粒を利用することが可能である。但し、これらの方法に限定されるものではない。
上記界面重合を利用する方法としては、上述した公知のマイクロカプセル製造方法を応用することができる。
【0126】
本発明に用いられる好ましいミクロゲルは、界面重合により造粒され3次元架橋を有するものである。このような観点から、使用する素材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、およびこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレアおよびポリウレタンが好ましい。
【0127】
上記のマイクロカプセルやミクロゲルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0128】
疎水化前駆体の含有量としては、固形分濃度で5〜90質量%の範囲であることが好ましく、添加により、画像部強度を向上させることができる。
【0129】
<その他の成分>
本発明における画像形成層には、必要に応じて、さらに他の成分を含有することができる。以下、本発明の画像形成層に用いられる他の成分について説明する。
【0130】
(1)界面活性剤
本発明における画像形成層には、塗布面状を向上させるため、界面活性剤を用いることができる。
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられるが、なかでもフッ素系の界面活性剤が好ましい。
【0131】
フッ素系界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号および同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
【0132】
界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、画像形成層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
【0133】
(2)着色剤
本発明における画像形成層には、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、および特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
これらの着色剤を用いると、画像形成後の画像部と非画像部の区別がつきやすくなるので、添加する方が好ましい。
なお、添加量は、画像形成層の全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
【0134】
(3)焼き出し剤
本発明における画像形成層には、焼き出し画像の生成のため、酸またはラジカルによって変色する化合物を添加することができる。
このような化合物としては、例えば、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0135】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH[保土ケ谷化学(株)製]、オイルブルー#603[オリエント化学工業(株)製]、オイルピンク#312[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッド5B[オリエント化学工業(株)製]、オイルスカーレット#308[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドOG[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドRR[オリエント化学工業(株)製]、オイルグリーン#502[オリエント化学工業(株)製]、スピロンレッドBEHスペシャル[保土ケ谷化学工業(株)製]、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシステアリルアミノ−4−p−N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等の染料やp,p’,p”−ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ染料が挙げられる。
【0136】
上記の他に、感熱紙や感圧紙用の素材として知られているロイコ染料も好適なものとして挙げられる。具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノ−フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)−フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチルー7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフロオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−ザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、などが挙げられる。
【0137】
酸またはラジカルによって変色する染料の好適な添加量は、画像形成層固形分に対して0.01〜10質量%の割合であることが好ましい。
【0138】
(4)重合禁止剤
本発明における画像形成層には、画像形成層の製造中または保存中において、重合性モノマーの不要な熱重合を防止するために、少量の熱重合防止剤を添加するのが好ましい。
熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好適に挙げられる。
熱重合防止剤の添加量は、画像形成層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
【0139】
(5)高級脂肪酸誘導体等
本発明における画像形成層には、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像形成層の表面に偏在させてもよい。
高級脂肪酸誘導体の添加量は、画像形成層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
【0140】
(6)可塑剤
本発明における画像形成層は、機上現像性を向上させるために、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステル等のグリコールエステル類;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエート等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル等が好適に挙げられる。
可塑剤の含有量は、画像形成層の全固形分に対して、約30質量%以下であるのが好ましい。
【0141】
(7)無機微粒子
本発明における画像形成層は、硬化皮膜強度向上および機上現像性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム、またはこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5μm〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、画像形成層中に安定に分散して、画像形成層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、画像形成層の全固形分に対して、40質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましい。
【0142】
(8)低分子親水性化合物
本発明における画像形成層は、耐刷性を低下させることなく機上現像性を向上させることから、低分子親水性化合物を含有してもよい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類およびそのエーテルまたはエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類およびその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類およびその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類およびその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類およびその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類およびその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類およびその塩、ベタイン化合物、等が挙げられる。
これらのなかでも、有機スルホン酸、有機スルファミン酸、有機硫酸のナトリウム塩やリチウム塩などの有機硫酸塩、ベタイン化合物が好ましく使用される。
【0143】
有機スルホン酸塩の具体的な化合物としては、ノルマルブチルスルホン酸ナトリウム、イソブチルスルホン酸ナトリウム、sec−ブチルスルホン酸ナトリウム、tert−ブチルスルホン酸ナトリウム、ノルマルペンチルスルホン酸ナトリウム、1−エチルプロピルスルホン酸ナトリウム、ノルマルヘキシルスルホン酸ナトリウム、1、2−ジメチルプロピルスルホン酸ナトリウム、2−エチルブチルスルホン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、ノルマルヘプチルスルホン酸ナトリウム、ノルマルオクチルスルホン酸ナトリウム、tert−オクチルスルホン酸ナトリウム、ノルマルノニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、2−メチルアリルスルホン酸ナトリウム、4−[2−(2−ブチルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−ブタン−1−スルホン酸ナトリウム、4−[2−(2−ヘキシルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−ブタン−1−スルホン酸ナトリウム、4−{2−[2−(2−エチル)ヘキシルオキシ−エトキシ]−エトキシ}−ブタン−1−スルホン酸ナトリウム、4−[2−(2−デシルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−ブタン−1−スルホン酸ナトリウム、4−{2−[2−(2−ブチルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−ブタン−1−スルホン酸ナトリウム、4−〔2−{2−[2−(2−エチル)ヘキシルオキシ−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ〕−ブタン−1−スルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム、1,3−ベンゼンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,5−ベンゼントリスルホン酸トリナトリウム、p−クロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、1−ナフチルスルホン酸ナトリウム、2−ナフチルスルホン酸ナトリウム、4−ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、2,6−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸トリナトリウム、およびこれらのリチウム塩交換体などが挙げられる。
【0144】
有機スルファミン酸塩の具体的な化合物としては、ノルマルブチルスルファミン酸ナトリウム、イソブチルスルファミン酸ナトリウム、tert−ブチルスルファミン酸ナトリウム、ノルマルペンチルスルファミン酸ナトリウム、1−エチルプロピルスルファミン酸ナトリウム、ノルマルヘキシルスルファミン酸ナトリウム、1、2−ジメチルプロピルスルファミン酸ナトリウム、2−エチルブチルスルファミン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルファミン酸ナトリウム、およびこれらのリチウム塩交換体などが挙げられる。
【0145】
これらの化合物は疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどなく、長鎖アルキルスルホン酸塩や長鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩などが良好に用いられる前述の界面活性剤とは明確に区別される。
【0146】
有機硫酸塩としては、特に、下記一般式(3)で示される化合物が好ましく使用される。
【0147】
【化19】

【0148】
上記一般式(3)中、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、mは1〜4の整数を表し、Xはナトリウム、カリウム、またはリチウムを表す。
【0149】
Rは、好ましくは、直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数20以下のアリール基が挙げられる。これらの基はさらに置換基を有していてもよく、その場合、導入可能な置換基としては、直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、ハロゲン原子、炭素数20以下のアリール基が挙げられる。
【0150】
一般式(3)で表される化合物の好ましい例としては、オキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸カリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸リチウム、トリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、テトラオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレンヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレンオクチルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。なかでも、最も好ましい化合物としては、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸カリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸リチウムが挙げられる。
【0151】
上記の低分子親水性化合物の画像形成層への添加量は、画像形成層全固形分量の0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上8質量%以下である。この範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。
【0152】
ベタイン化合物としては、一般式(4)および一般式(5)で表される化合物が好ましく使用される。
【0153】
【化20】


【0154】
1〜R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、ヒドロキシ基あるいはアミノ基で置換されていてもよい。Zは炭素数1〜4のアルキレン基を表し、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。R1〜R3およびZの少なくとも2つが結合して複素環を形成してもよい。
【0155】
これらの化合物を画像形成層に含有することにより、耐刷性を低下させることなく機上現像性を向上させることが可能になる。なかでも、R1〜R3が炭素数1〜3のアルキル基、またはR1〜R3およびZの2つが結合した5〜6員環の複素環であることが望ましく、特に、R1〜R3がメチル基もしくはエチル基である第4級アンモニウム骨格、またはR1〜R3およびZの2つが結合して環を形成したピロリジン骨格、ピペリジン骨格、ピリジン骨格、イミダゾリン骨格を有すものが望ましい。
【0156】
上記一般式(4)の具体的な化合物を以下に例示するが、本発明は以下に限定される
ものではない。
【0157】
【化21】

【0158】
上記一般式(5)の具体的な化合物を以下に例示するが、本発明は以下に限定される
ものではない。
【0159】
【化22】

【0160】
これらの有機スルホン酸、有機スルファミン酸、有機硫酸塩およびベタイン化合物は、疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像形成層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像形成層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持できる。
【0161】
一般式(4)または(5)で表される化合物の画像形成層への添加量は、画像形成層全固形分量の0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.2質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは0.4質量%以上2質量%以下である。これらの範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。
【0162】
上記の有機スルホン酸、有機スルファミン酸、有機硫酸塩、ベタイン化合物などの低分子親水性化合物は、疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像形成層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像形成層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持できる。
これらの低分子親水性化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0163】
(9)感脂化剤
後述の保護層に無機質の層状化合物を含有させる場合は、着肉性を向上させるために、画像形成層にホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマーなどの感脂化剤を用いることができる。また、感脂化剤としては種類の異なるものを併用してもよい。
これらの化合物は無機質の層状化合物の表面被覆剤(感脂化剤)として機能し、無機質の層状化合物による印刷途中の着肉性低下を防止する。
【0164】
好適なホスホニウム化合物としては、特開2006−297907号公報に記載の下記一般式(K1)または特開2007−50660号公報に記載の下記一般式(K2)で表される化合物が挙げられる。
【0165】
【化23】

【0166】
一般式(K1)において、R1〜R4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、複素環基または水素原子を表す。R1〜R4の少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。X-はカウンターアニオンを示す。
【0167】
一般式(K2)において、Ar1〜Ar6は、各々独立してアリール基または複素環基を表し、Lは2価の連結基を表し、Xn−はn価のカウンターアニオンを表し、nは1〜3の整数を表し、mはn x m=2を満たす数を表す。ここでアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、ジメチルアミノフェニル基などが好適なものとして挙げられる。複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、ピリミジニル基、チエニル基、フリル基などが挙げられる。Lは2価の連結基を表す。連結基中の炭素数は6〜15が好ましく、より好ましくは、炭素数6〜12の連結基である。Xn−の好ましいものとしては、Cl-、Br-、I-などのハロゲン化物アニオン、トルエンスルホナート、ナフタレン−1,7−ジスルホナート、ナフタレン−1,3,6−トリスルホナート、5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシベンゼン−4−スルホナートなどのスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、硫酸エステルアニオン、硫酸アニオン、PF、BF、過塩素酸アニオンなどが挙げられる。なかでも、スルホン酸アニオンが特に好ましい。
【0168】
上記一般式(K1)または(K2)で表されるホスホニウム化合物の具体例を以下に示す。
【0169】
【化24】

【0170】
本発明に好適の用いられる感脂化剤として、上記ホスホニウム化合物の他に、次の含窒素低分子化合物が挙げられる。好ましい含窒素低分子化合物としては下記一般式(K3)の構造を有す化合物が挙げられる。
【0171】
【化25】

【0172】
式中、R1〜R4は、それぞれ独立に置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、複素環基または水素原子を表す。R1〜R4の少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。X-はアニオンであり、PF6-、BF4-、またはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基ならびに複素環基から選ばれる置換基を有する有機スルホン酸アニオンを示す。
【0173】
すなわち本発明に用いられる含窒素低分子化合物としては、R1〜R4の少なくとも1つが水素原子であるアミン塩類、およびR1〜R4がいずれも水素原子でない第4級アンモニウム塩類が挙げられる。また下記一般式(K4)で示されるイミダゾリニウム塩類、下記一般式(K5)で示されるベンゾイミダゾリニウム塩類、下記一般式(K6)で示されるピリジニウム塩類、下記一般式(K7)で示されるキノリニウム塩類の構造でもよい。
【0174】
【化26】

【0175】
上記式中、R5とR6は、置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、複素環基または水素原子を表す。X-はアニオンであり、前記一般式(K3)のX-と同義である。
【0176】
これらのなかでも、第4級アンモニウム塩類、およびピリジニウム塩類が好ましく用いられる。以下に、それらの具体例を示す。
【0177】
【化27】

【0178】
画像形成層への上記ホスホニウム化合物または含窒素低分子化合物の添加量は、画像形成層固形分の0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜10質量%がさらに好ましく、0.1〜5質量%が最も好ましい。これらの範囲内で印刷途中の良好なインキ着肉性が得られる。
【0179】
本発明に用いられる感脂化剤としては、さらに下記のアンモニウム基含有ポリマーも好適なものとして挙げられる。アンモニウム基含有ポリマーは、その構造中にアンモニウム基を有すれば如何なるものでもよいが、繰り返し単位として下記一般式(K8)および一般式(K9)の構造を含むポリマーであることが好ましい。
【0180】
【化28】

【0181】
(式中、R11およびR12は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。R2は置換基を有してもよいアルキレン基、および置換基を有してもよいアルキレンオキシ基などの2価の連結基を表し、R31、R32およびR33は、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基を表す。X-は、F-、Cl-、Br-、I-、置換基を有してもよいベンゼンスルホン酸アニオン、メチル硫酸アニオン、エチル硫酸アニオン、プロピル硫酸アニオン、分岐してもよいブチル硫酸アニオン、分岐してもよいアミル硫酸アニオン、PF6-、BF4-、B(C654-などの有機または無機のアニオンを表す。R4は炭素数1〜21のアルキル基、アラルキル基、アリール基、-(C24O)n- R5、または(C36O)n-R5を表し、R5は水素原子、メチル基またはエチル基を表す。nは1または2を表す。)
【0182】
上記アンモニウム塩含有ポリマーは、一般式(K8)および一般式(K9)で表される構造単位を、それぞれ少なくとも1種含有するが、どちらかが2種以上であってもよいし、両方が2種以上であってもよい。両構造単位の比率は限定されないが、特に好ましくは、モル比として5:95〜80:20である。また、このポリマーは、本発明の効果を確保できる範囲内で、他の共重合成分を含有してもよい。
【0183】
上記アンモニウム塩含有ポリマーは、下記の測定方法で求められる還元比粘度(単位:cSt/g/ml)の値で、5〜120の範囲のものが好ましく、10〜110の範囲のものがより好ましく、15〜100の範囲のものが特に好ましい。
【0184】
<還元比粘度の測定方法>
30質量%ポリマー溶液3.33g(固形分として1g)を、20mlのメスフラスコに秤量し、N−メチルピロリドンでメスアップする。この溶液をウベローデ還元粘度管(粘度計定数=0.010cSt/s)に入れ、30℃にて流れおちる時間を測定し、計算(「動粘度」=「粘度計定数」×「液体が細管を通る時間(秒)」)を用いて定法により算出する。
【0185】
アンモニウム塩含有ポリマーの含有量は、画像形成層の全固形分に対して0.0005質量%〜30.0質量%が好ましく、0.001質量%〜20.0質量%がより好ましく、0.002質量%〜15.0質量%が最も好ましい。この範囲で、良好な着肉性が得られる。アンモニウム塩含有ポリマーは、さらに保護層に含有させてもよい。
以下に、アンモニウム塩含有ポリマーの具体例を示す。
【0186】
【化29】

【0187】
【化30】

【0188】
【化31】

【0189】
【化32】

【0190】
(10)連鎖移動剤
本発明の画像形成層には連鎖移動剤を含有することができる。特に、露光光源が紫外線または可視光で、波長350〜850nmに吸収ピークを有する増感色素を用いる場合は連鎖移動剤を用いることが好ましい。
連鎖移動剤は、感度および保存安定性に寄与する。連鎖移動剤として作用する化合物としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、または、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。
【0191】
本発明の画像形成層には、特に、チオール化合物(例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類、2−メルカプトベンズチアゾール類、2−メルカプトベンズオキサゾール類、3−メルカプトトリアゾール類、5−メルカプトテトラゾール類、等)を連鎖移動剤として好ましく用いることができる。
また、1分子中2個以上のメルカプト基を有する多官能チオール化合物を使用することができる。多官能チオール化合物の具体例としては、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールビス(メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
【0192】
連鎖移動剤としては、なかでも、特開2006−091479号公報記載の下記一般式(6)で表されるチオール化合物が特に好適に使用される。連鎖移動剤としてこのチオール化合物を用いることによって、臭気の問題、および画像形成層から蒸発や他の層への拡散による感度減少を回避し、保存安定性に優れ、さらには高感度で高耐刷の平版印刷版原版が得られる。
【0193】
【化33】

【0194】
一般式(6)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表し、AはN=C−N部分と共に炭素原子を有する5員環または6員環の複素環を形成する原子団を表し、Aはさらに置換基を有してもよい。
【0195】
さらに好ましくは下記一般式(6A)または一般式(6B)で表されるものが使用される。
【0196】
【化34】

【0197】
一般式(6A)および式(6B)中、Rは置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表し、Xはハロゲン原子、アルコキシル基、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。
【0198】
具体的化合例としては、1−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−プロピル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−ヘキシル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−ヘキシル−2−メルカプト−5−クロロベンゾイミダゾール、1−ペンチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−オクチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−オクチル−2−メルカプト−5−メトキシベンゾイミダゾール、1−シクロヘキシル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−フェニル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−フェニル−2−メルカプト−5−メチルスルホニルベンゾイミダゾール、1−(p−トリル)−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−メトキシエチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−ブチル−2−メルカプトナフトイミダゾール、1−メチル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−ブチル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−ヘプチル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−フェニル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−ベンジル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−フェネチル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−シクロヘキシルル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−フェネチル−2−メルカプト−5−(3−フルオロフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−フェネチル−2−メルカプト−5−(3−トリフルオロメチルフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−ベンジル−2−メルカプト−5−(p−トリル)−1,3,5−トリアゾール、1−ベンジル−2−メルカプト−5−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−ベンジル−2−メルカプト−5−(p−トリフルオロメチルフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−ベンジル−2−メルカプト−5−(3,5−ジクロロフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−フェニル−2−メルカプト−5−(p−トリル)−1,3,5−トリアゾール、1−フェニル−2−メルカプト−5−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−(1−ナフチル)−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−(4−ブロモフェニル)−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−(4−トリフルオロフェニル)−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、などが挙げられる。
【0199】
これらの連鎖移動剤の使用量は画像形成層の全固形分の質量に対し、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%である。さらに好ましくは1.0〜10質量%である。
【0200】
<画像形成層の形成>
本発明における画像形成層は、必要な上記各成分を溶剤に分散または溶解して塗布液を調製し、これを支持体上に塗布、乾燥することで形成される。
ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独または混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0201】
本発明における画像形成層は、同一または異なる上記各成分を同一または異なる溶剤に分散または溶解した塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して、多層構造の画像形成層を形成することも可能である。
【0202】
また、塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像形成層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/m2が好ましい。この範囲で、良好な感度と画像形成層の良好な皮膜特性が得られる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等が挙げられる。
【0203】
(保護層)
本発明の平版印刷版原版は、画像形成層の上に保護層(オーバーコート層)を有することが好ましい。保護層は酸素遮断によって画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像形成層での傷の発生防止、高照度レーザー露光時のアブレーション防止などの機能も有する。以下、保護層を構成する成分等について説明する。
【0204】
通常、平版印刷版の露光処理は大気中で実施する。露光処理によって生じる画像形成層中での画像形成反応は、大気中に存在する酸素、塩基性物質等の低分子化合物によって阻害され得る。保護層は、この酸素、塩基性物質等の低分子化合物が画像形成層へ混入することを防止し、結果として大気中での画像形成阻害反応を抑制する。従って、保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性を低くすることであり、さらに、露光に用いられる光の透過性が良好で、画像形成層との密着性に優れ、かつ、露光後の機上現像処理工程で容易に除去することができるものである。このような特性を有する保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書および特公昭55−49729号公報に記載されている。
【0205】
保護層に用いられる材料としては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニルの部分鹸化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、水溶性セルロース誘導体、ゼラチン、デンプン誘導体、アラビアゴム等の水溶性ポリマーや、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリサルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、セロハン等のポリマー等が挙げられる。
これらは、必要に応じて2種以上を併用して用いることもできる。
【0206】
上記材料中で比較的有用な素材としては、結晶性に優れる水溶性高分子化合物が挙げられる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸等の水溶性アクリル樹脂、ゼラチン、アラビアゴム等が好適であり、なかでも、水を溶媒として塗布可能であり、かつ、印刷時における湿し水により容易に除去されるという観点から、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾールが好ましい。そのなかでも、ポリビニルアルコール(PVA)は、酸素遮断性、現像除去性等の基本的な特性に対して最も良好な結果を与える。
【0207】
保護層に用い得るポリビニルアルコールは、必要な水溶性を有する実質的量の未置換ビニルアルコール単位を含有するかぎり、一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を含有していてもよい。例えば、カルボキシ基、スルホ基等のアニオンで変性されたアニオン変性部位、アミノ基、アンモニウム基等のカチオンで変性されたカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位等種々の親水性変性部位をランダムに有す各種重合度のポリビニルアルコール、前記のアニオン変性部位、前記のカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位、さらにはアルコキシル変性部位、スルフィド変性部位、ビニルアルコールと各種有機酸とのエステル変性部位、前記アニオン変性部位とアルコール類等とのエステル変性部位、エポキシ変性部位等種々の変性部位をポリマー鎖末端に有す各種重合度のポリビニルアルコール等も好ましく用いられる。
【0208】
これら変性ポリビニルアルコールは71〜100モル%加水分解された重合度300〜2400の範囲の化合物が好適に挙げられる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105,PVA−110,PVA−117,PVA−117H,PVA−120,PVA−124,PVA−124H,PVA−CS,PVA−CST,PVA−HC,PVA−203,PVA−204,PVA−205,PVA−210,PVA−217,PVA−220,PVA−224,PVA−217EE,PVA−217E,PVA−220E,PVA−224E,PVA−405,PVA−420,PVA−613,L−8等が挙げられる。
また、変性ポリビニルアルコールとしては、いずれも(株)クラレ製の、アニオン変性部位を有すKL−318、KL−118、KM−618、KM−118、SK−5102、カチオン変性部位を有すC−318、C−118、CM−318、末端チオール変性部位を有すM−205、M−115、末端スルフィド変性部位を有すMP−103、MP−203、MP−102、MP−202、高級脂肪酸とのエステル変性部位を末端に有すHL−12E、HL−1203、その他反応性シラン変性部位を有すR−1130、R−2105、R−2130等が挙げられる。
【0209】
また、保護層には無機質の層状化合物、すなわち、無機化合物であって層状構造を有し、かつ、平板状の形状を有する化合物を含有することが好ましい。このような無機質の層状化合物を併用することにより、酸素遮断性はさらに高まり、耐刷性が顕著に改善される。また、保護層の膜強度が一層向上して耐キズ性が向上する他、保護層にマット性を付与することができる。
無機質の層状化合物としては、例えば、下記一般式A(B,C)2−5D410(OH,F,O)2〔ただし、AはLi,K,Na,Ca,Mg,有機カチオンの何れか、BおよびCはFe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、DはSiまたはAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群、式3MgO・4SiO・H2Oで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0210】
雲母化合物のうち、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母および鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg3(AlSi310)F2、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si410)F2等の非膨潤性雲母、およびNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si410)F2、NaまたはLiテニオライト(Na,Li)Mg2Li(Si410)F2、モンモリロナイト系のNaまたはLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si410)F2等の膨潤性雲母等が挙げられる。また合成スメクタイトも有用である。
【0211】
上記雲母化合物のなかでも、合成の層状化合物であるフッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、雲母、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト等の膨潤性粘土鉱物類等は、10〜15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi+、Na+、Ca2+、Mg2+、アミン塩、第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩およびスルホニウム塩等の有機カチオンの陽イオンを吸着している。これらの層状化合物は水により膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。ベントナイトおよび膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、本発明に有用であり、特に、入手容易性、品質の均一性の観点から、膨潤性合成雲母が好ましく用いられる。
【0212】
層状化合物の形状は平板状であり、拡散制御の観点からは、その厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。従って、アスペクト比は20以上であり、好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、たとえば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
【0213】
層状化合物の粒子径は、その平均長径が0.3〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。粒子径が0.3μmよりも小さいと酸素や水分の透過の抑制が不十分であり、効果を十分に発揮できない。また20μmよりも大きいと塗布液中での分散安定性が不十分であり、安定的な塗布を行うことができない問題が生じる。また、該粒子の平均の厚さは、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下、特に好ましくは、0.01μm以下である。例えば、無機質の層状化合物のうち、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは厚さが1〜50nm、面サイズが1〜20μm程度である。
【0214】
このようにアスペクト比が大きい無機質の層状化合物の粒子を保護層に含有させると、塗膜強度が向上し、また、酸素や水分の透過を効果的に防止しうるため、変形などによる保護層の劣化を防止し、高湿条件下において長期間保存しても、湿度の変化による平版印刷版原版における画像形成性の低下もなく保存安定性に優れる。
【0215】
次に、層状化合物を保護層に用いる場合の一般的な分散方法の例について述べる。
まず、水100質量部に先に層状化合物の好ましいものとして挙げた膨潤性の層状化合物を5〜10質量部添加し、充分水になじませ、膨潤させた後、分散機にかけて分散する。ここで用いる分散機としては、機械的に直接力を加えて分散する各種ミル、大きな剪断力を有する高速攪拌型分散機、高強度の超音波エネルギーを与える分散機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、サンドグラインダーミル、ビスコミル、コロイドミル、ホモジナイザー、ティゾルバー、ポリトロン、ホモミキサー、ホモブレンダー、ケディミル、ジェットアジター、毛細管式乳化装置、液体サイレン、電磁歪式超音波発生機、ポールマン笛を有する乳化装置等が挙げられる。上記の方法で分散した無機質層状化合物の5〜10質量%の分散物は高粘度あるいはゲル状であり、保存安定性は極めて良好である。
この分散物を用いて保護層用塗布液を調製する際には、水で希釈し、充分攪拌した後、バインダー溶液と配合して調製するのが好ましい。
【0216】
保護層中の無機質層状化合物の含有量は、保護層に使用されるバインダーの量に対し、質量比で5/1〜1/100であることが好ましい。複数種の無機質の層状化合物を併用した場合でも、これら無機質の層状化合物の合計量が上記の質量比に適合することが好ましい。
【0217】
保護層の他の添加物として、例えば、グリセリン、ジプロピレングリコール、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、ソルビトール等を前記水溶性または水不溶性ポリマーに対して数質量%相当量添加して可撓性を付与することができる。また、皮膜の物性改良のため水溶性の(メタ)アクリル系ポリマー、水溶性可塑剤などの公知の添加剤を加えることができる。
【0218】
さらに、本発明における保護層は後述のような保護層用塗布液を用いて形成されるが、この塗布液には、画像形成層との密着性、塗布液の経時安定性を向上するための公知の添加剤を加えてもよい。
すなわち、保護層用塗布液には、塗布性を向上させためのアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤、具体的には、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を添加することができる。これら界面活性剤の添加量は前記水溶性または水不溶性ポリマーに対して0.1〜100質量%添加することができる。
【0219】
また、画像部との密着性を良化させるため、例えば、特開昭49−70702号公報および英国特許出願公開第1303578号明細書には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルション、水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体等を20〜60質量%混合させ、画像形成層上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明においては、これらの公知の技術をいずれも用いることができる。
【0220】
さらに、保護層に、前記の低分子窒素化合物やアンモニウム塩含有ポリマーなどの感脂化剤を添加することもできる。これらの添加で、さらなる、着肉性の向上効果が得られる。感脂化剤を保護層に添加する場合の添加量としては、0.5〜30質量%の範囲であることが好ましい。
【0221】
さらに、保護層には、他の機能を付与することもできる。例えば、露光に用いられる赤外線の透過性に優れ、かつ、それ以外の波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(例えば、水溶性染料)の添加により、感度低下を引き起こすことなく、セーフライト適性を向上させることができる。また、平版印刷版原版最表面の滑り性を制御する目的で、前述の画像形成層に添加したような球状の無機微粒子を含有してもよい。この無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム、またはこれらの混合物が好適に挙げられる。この無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、50nm〜3μmであるのがより好ましい。上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、保護層の全固形分に対して、40質量%以下であるのが好ましく、20質量%以下であるのがより好ましい。
【0222】
保護層の形成は、上記保護層成分を溶媒に分散または溶解して調製された保護層用塗布液を、画像形成層上に塗布、乾燥して行われる。
塗布溶剤は、バインダーとの関連において適宜選択することができるが、水溶性ポリマーを用いる場合には、蒸留水、精製水を用いることが好ましい。
【0223】
保護層の塗布方法は、特に制限されるものではなく、米国特許第3,458,311号明細書または特公昭55−49729号公報に記載されている方法など公知の方法を適用することができる。
具体的には、例えば、保護層を形成する際には、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等が用いられる。
【0224】
保護層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.01〜10g/m2の範囲であることが好ましく、0.02〜3g/m2の範囲がより好ましく、最も好ましくは0.02〜1g/m2の範囲である。
【0225】
(下塗り層)
平版印刷版原版においては、必要に応じて、画像形成層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある。)が設けられる。下塗り層は、露光部においては支持体と画像形成層との密着を強化し、未露光部においては画像形成層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわず現像性を向上させるのに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合は、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散せず効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。以下に、本発明の下塗り層に用いられる成分などについて説明する。
【0226】
下塗り層用化合物としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物等が好適に挙げられる。
最も好ましい下塗り層用化合物としては、吸着性基、親水性基、および架橋性基を有する高分子樹脂が挙げられる。この高分子樹脂は、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー、および架橋性基を有するモノマーを共重合してなることが好ましい。
【0227】
下塗り層用の高分子樹脂は、親水性支持体表面への吸着性基を有することが好ましい。親水性支持体表面への吸着性の有無は、例えば、以下のような方法で判断できる。
試験化合物を易溶性の溶媒に溶解させた塗布夜を作製し、その塗布夜を乾燥後の塗布量が30mg/m2となるように支持体上に塗布・乾燥させる。次に、試験化合物を塗布した支持体を、易溶性溶媒を用いて十分に洗浄した後、洗浄除去されなかった試験化合物の残存量を測定して支持体吸着量を算出する。ここで残存量の測定は、残存化合物量を直接定量してもよいし、洗浄液中に溶解した試験化合物量を定量して算出してもよい。化合物の定量は、例えば、蛍光X線測定、反射分光吸光度測定、液体クロマトグラフィー測定などで実施できる。支持体吸着性がある化合物は、上記のような洗浄処理を行っても1mg/m2以上残存する化合物である。
【0228】
親水性支持体表面への吸着性基は、親水性支持体表面に存在する物質(例えば、金属、金属酸化物)、あるいは官能基(例えば、ヒドロキシ基)と、化学結合(例えば、イオン結合、水素結合、配位結合、分子間力による結合)を引き起こすことができる官能基である。吸着性基は、酸基またはカチオン性基が好ましい。
酸基は、酸解離定数(pKa)が7以下であることが好ましい。酸基の例は、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、−SO3H、−OSO3H、−PO32、−OPO32、−CONHSO2−、−SO2NHSO2、−COCH2COCH3が挙げられる。なかでも、−OPO32、およびPO32が特に好ましい。またこれら酸基は、金属塩であっても構わない。
カチオン性基は、オニウム基であることが好ましい。オニウム基の例は、アンモニウム基、ホスホニウム基、アルソニウム基、スチボニウム基、オキソニウム基、スルホニウム基、セレノニウム基、スタンノニウム基、ヨードニウム基が挙げられる。なかでも、アンモニウム基、ホスホニウム基、およびスルホニウム基が好ましく、アンモニウム基、およびホスホニウム基がさらに好ましく、アンモニウム基が最も好ましい。
【0229】
下塗り層用化合物として好適な高分子樹脂を合成する際に用いられる、吸着性基を有するモノマーの特に好ましい例としては、下記一般式(U1)または一般式(U2)で表される化合物が挙げられる。
【0230】
【化35】

【0231】
上記一般式(U1)および(U2)中、R1、R2、およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素原子数が1乃至6のアルキル基である。
1、R2、およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素原子数が1乃至6のアルキル基であることが好ましく、水素原子、または炭素原子数が1乃至3のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子、またはメチル基であることが最も好ましい。R2およびR3は、水素原子であることが特に好ましい。
Zは、親水性支持体表面に吸着する官能基であり、該吸着性の官能基については、前述した通りである。
【0232】
一般式(U1)および(U2)において、Lは、単結合、または2価の連結基である。
Lは、2価の脂肪族基(アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(アリレン基、置換アリレン基)、または2価の複素環基であるか、あるいはそれらと、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、イミノ(−NH−)、置換イミノ(−NR−、Rは脂肪族基、芳香族基または複素環基)、またはカルボニル(−CO−)との組み合わせであることが好ましい。
【0233】
前記2価の脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。2価の脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20が好ましく、1乃至15がさらに好ましく、1乃至10が最も好ましい。また、2価の脂肪族基は、不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。さらに、2価の脂肪族基は、置換基を有していてもよく、その置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、芳香族基、複素環基が挙げられる。
前記2価の芳香族基の炭素原子数は、6乃至20が好ましく、6乃至15がさらに好ましく、6乃至10が最も好ましい。また、2価の芳香族基は、置換基を有していてもよく、その置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、脂肪族基、芳香族基、複素環基が挙げられる。
前記2価の複素環基は、複素環として5員環または6員環を有することが好ましい。また、複素環に他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。2価の複素環基は、置換基を有していてもよく、その置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N−R、Rは脂肪族基、芳香族基または複素環基)、脂肪族基、芳香族基、複素環基が挙げられる。
【0234】
本発明において、Lは、複数のポリオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であることが好ましい。ポリオキシアルキレン構造は、ポリオキシエチレン構造であることがさらに好ましい。言い換えると、Lは、−(OCH2CH2n−(nは2以上の整数)を含むことが好ましい。
一般式(U1)において、Xは、酸素原子(−O−)、またはイミノ(−NH−)である。Xは、酸素原子であることがさらに好ましい。
一般式(U2)において、Yは炭素原子または窒素原子である。Y=窒素原子でY上にLが連結し四級ピリジニウム基になった場合、それ自体が吸着性を示すことからZは必須ではなく、Zが水素原子でもよい。
【0235】
以下に、一般式(U1)または一般式(U2)で表される代表的な化合物の例を示す。
【0236】
【化36】

【0237】
下塗り層用化合物として好適な高分子樹脂は親水性基を有することが好ましく、この親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホ基、リン酸基等が好適に挙げられる。なかでも、高親水性を示すスルホ基が好ましい。
【0238】
スルホ基を有するモノマーの具体例としては、メタリルオキシベンゼンスルホン酸,アリルオキシベンゼンスルホン酸,アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、アクリルアミドt−ブチルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(3−アクリロイルオキシプロピル)ブチルスルホン酸のナトリウム塩、アミン塩が挙げられる。なかでも、親水性能および合成の取り扱いから、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩が好ましい。
これらは下塗り層用化合物として好適な高分子樹脂を合成する際に好適に用いられる。
【0239】
本発明における下塗り層用の高分子樹脂は架橋性基を有することが好ましい。架橋性基によって画像部との密着の向上が得られる。下塗り層用の高分子樹脂に架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の側鎖中に導入したり、高分子樹脂の極性置換基と対荷電を有する置換基とエチレン性不飽和結合を有する化合物で塩構造を形成させたりして導入することができる。
【0240】
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドのポリマーであって、エステルまたはアミドの残基(−COORまたはCONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0241】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−(CH2nCR1=CR23、−(CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2nNH−CO−O−CH2CR1=CR23、−(CH2n−O−CO−CR1=CR23、および(CH2CH2O)2−X(式中、R1〜R3はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、R1とR2またはR3とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
エステル残基の具体例としては、−CH2CH=CH2(特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CH2CH2O−CH2CH=CH2、−CH2C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH−C65、−CH2CH2OCOCH=CH−C65、−CH2CH2NHCOO−CH2CH=CH2、およびCH2CH2O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH2CH=CH2、−CH2CH2O−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2CH2OCO−CH=CH2が挙げられる。
下塗り層用の高分子樹脂の架橋性基を有するモノマーとしては、上記架橋性基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドが好適である。
【0242】
下塗り層用高分子樹脂中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、高分子樹脂1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と汚れ性の両立、および良好な保存安定性が得られる。
【0243】
下塗り層用の高分子樹脂は、質量平均モル質量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均モル質量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均モル質量/数平均モル質量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
下塗り層用の高分子樹脂は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
【0244】
下塗り用の高分子樹脂は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0245】
本発明の下塗り層は、生版(未露光の平版印刷版原版)の経時における汚れ防止するため、第2級または第3級アミンや重合禁止剤を含有することができる。第2級または第3級アミンとしては、イミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、トリス(2−ヒドロキシー1−メチル)アミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,5,7−トリアザビシクロ[4,4,0]デカ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、1,10−フェナントロリン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ビフェニル、ジフェニルアミン、1,3−ジフェニルグアニジン、4−フェニルピリジン、N,N’−エチレンビス(2,2,5,5−テトラメチルピロリジン)などが挙げられる。
【0246】
重合禁止剤としては、公知の熱重合禁止剤が挙げられる。なかでも好ましい重合禁止剤は、フェノール系ヒドロキシ基含有化合物、キノン化合物類、N−オキシド化合物類、ピペリジン−1−オキシル フリーラジカル化合物類、ピロリジン−1−オキシル フリーラジカル化合物類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン類、ジアゾニウム化合物類、カチオン染料類、スルフィド基含有化合物、ニトロ基含有化合物、およびFeCl3 、CuCl2 等の遷移金属化合物からなる群より選択される化合物である。上記の化合物のなかでも特にキノン化合物類が好適である。キノン化合物類の具体例としては、1,4−ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾキノン、クロラニル、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン、ナフトキノン、2−フルオロ−1,4−ナフトキノン、2−ヒドロキシエチル−1,4−ナフトキノン、アントラキノン、1,2,4−トリヒドロキシアントラキノン、2,6−ジヒドロキシアントラキノン、などが挙げられる。
【0247】
下塗り層へのこれらの化合物の添加量は、下塗り層構成成分の10〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がさらに好ましく、30〜70質量%が最も好ましい。
【0248】
また、生版経時における汚れ防止に効果のある化合物として、アミノ基または重合禁止能を有する官能基と、アルミニウム支持体表面と相互作用する基とを有する化合物を用いることもできる。アルミニウム支持体表面と相互作用する基としては、トリアルコキシシリル基、オニウム基、またはフェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、−SO3H、−OSO3H、−PO32、−OPO32、−CONHSO2−、−SO2NHSO2−およびCOCH2CO−から選ばれる酸基もしくはその金属塩などが挙げられる。
【0249】
アミノ基とアルミニウム支持体表面との相互作用基を有する化合物の例としては、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンと酸との塩、4−アザ−1−アゾニアビシクロ[2,2,2]オクタン構造を少なくとも1つ有する化合物(例えば、1−メチル−4−アザ−1−アゾニアビシクロ[2,2,2]オクタン=p−トルエンスルホナート)、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、などが挙げられる。重合禁止能を有する官能基とアルミニウム支持体表面と相互作用する基を有する化合物としては、2−トリメトキシシリルプロピルチオ−1,4−ベンゾキノン、2、5−ビス(トリメトキシシリルプロピルチオ)−1,4−ベンゾキノン、2―カルボキシアントラキノン、2−トリメチルアンモニオアントラキノン=クロリドなどが挙げられる。
【0250】
下塗り層用塗布液は、上記下塗り用の高分子樹脂および必要な添加物を有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンなど)および/または水に溶解して得られる。下塗り層用塗布液には、赤外線吸収剤を含有させることもできる。
下塗り層用塗布液を支持体に塗布する方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/m2であるのが好ましく、1〜30mg/m2であるのがより好ましい。
【0251】
(支持体)
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。なかでも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
【0252】
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、または、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
【0253】
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましい。
【0254】
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、親水性の向上および画像形成層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
【0255】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、アルミニウムの圧延段階において凹凸を設けたロールで凹凸形状を転写する転写法も用いることができる。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流または直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
【0256】
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理を施され、さらに、中和処理された後、所望により、耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施される。
【0257】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸またはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2であるのが好ましく、1.5〜4.0g/m2であるのがより好ましい。この範囲で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られる。
【0258】
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでもよいが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などを一層改良するため、必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、および親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。もちろん、これら拡大処理、封孔処理はこれらに記載のものに限られたものではなく従来公知の何れも方法も行うことができる。例えば、封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔でも可能である。
【0259】
本発明に用いられる封孔処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができるが、なかでも、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理および熱水による封孔処理が好ましい。以下にそれぞれ説明する。
【0260】
<1>無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理に用いられる無機フッ素化合物としては、金属フッ化物が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸アンモニウム、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化ニッケル、フッ化鉄、フッ化リン酸、フッ化リン酸アンモニウムが挙げられる。なかでも、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸が好ましい。
【0261】
水溶液中の無機フッ素化合物の濃度は、陽極酸化皮膜のマイクロポアの封孔を十分に行う点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.05質量%以上であるのがより好ましく、また、耐汚れ性の点で、1質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以下であるのがより好ましい。
【0262】
無機フッ素化合物を含有する水溶液は、さらに、リン酸塩化合物を含有するのが好ましい。リン酸塩化合物を含有すると、陽極酸化皮膜の表面の親水性が向上するため、機上現像性および耐汚れ性を向上させることができる。
【0263】
リン酸塩化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属のリン酸塩が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸鉛、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが挙げられる。なかでも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが好ましい。
無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の組み合わせは、特に限定されないが、水溶液が、無機フッ素化合物として、少なくともフッ化ジルコン酸ナトリウムを含有し、リン酸塩化合物として、少なくともリン酸二水素ナトリウムを含有するのが好ましい。
【0264】
水溶液中のリン酸塩化合物の濃度は、機上現像性および耐汚れ性の向上の点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上であるのがより好ましく、また、溶解性の点で、20質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましい。
【0265】
水溶液中の各化合物の割合は、特に限定されないが、無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の質量比が、1/200〜10/1であるのが好ましく、1/30〜2/1であるのがより好ましい。
また、水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましく、80℃以下であるのがより好ましい。
また、水溶液は、pH1以上であるのが好ましく、pH2以上であるのがより好ましく、また、pH11以下であるのが好ましく、pH5以下であるのがより好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理の方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法が挙げられる。これらは単独で1回または複数回用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、浸漬法が好ましい。浸漬法を用いて処理する場合、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0266】
<2>水蒸気による封孔処理
水蒸気による封孔処理は、例えば、加圧または常圧の水蒸気を連続的にまたは非連続的に、陽極酸化皮膜に接触させる方法が挙げられる。
水蒸気の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、105℃以下であるのが好ましい。
水蒸気の圧力は、(大気圧−50mmAq)から(大気圧+300mmAq)までの範囲(1.008×105 〜1.043×105 Pa)であるのが好ましい。
また、水蒸気を接触させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0267】
<3>熱水による封孔処理
熱水による封孔処理としては、例えば、陽極酸化皮膜を形成させたアルミニウム板を熱水に浸漬させる方法が挙げられる。
熱水は、無機塩(例えば、リン酸塩)または有機塩を含有していてもよい。
熱水の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましい。
また、熱水に浸漬させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0268】
前記親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理または電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号および同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
【0269】
本発明の支持体としてポリエステルフィルムなど表面の親水性が不十分な支持体を用いる場合は、親水層を塗布して表面を親水性にすることが望ましい。親水層としては、特開2001−199175号公報に記載の、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、硼素、ゲルマニウム、スズ、ジルコニウム、鉄、バナジウム、アンチモンおよび遷移金属から選択される少なくとも一つの元素の酸化物または水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層や、特開2002−79772号公報に記載の、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリックスを有する親水層や、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネートまたはアルミネートの加水分解および縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリックスを有する親水層、あるいは、金属酸化物を含有する表面を有する無機薄膜からなる親水層が好ましい。なかでも、珪素の酸化物または水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。
【0270】
また、本発明の支持体としてポリエステルフィルム等を用いる場合には、支持体の親水性層側または反対側、あるいは両側に、帯電防止層を設けるのが好ましい。帯電防止層を支持体と親水性層との間に設けた場合には、親水性層との密着性向上にも寄与する。帯電防止層としては、特開2002−79772号公報に記載の、金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層等が使用できる。
【0271】
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。この範囲で、画像形成層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
【0272】
(バックコート層)
支持体に表面処理を施した後または下塗り層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコート層を設けることができる。
バックコート層としては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。なかでも、Si(OCH34、Si(OC254、Si(OC374、Si(OC494等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい
点で好ましい。
【0273】
〔製版方法〕
本発明の製版方法は、上記の平版印刷版原版を画像様に露光する工程、並びに、印刷機シリンダー上で湿し水またはインキの少なくとも一方を供給し、平版印刷版原版の画像形成層未露光部分を除去する機上現像工程を有することを特徴とする。
以下製版方法について、詳しく説明する。
【0274】
<画像様に露光する工程>
本発明の製版方法における露光方法は、公知の方法を制限なく用いることができる。すなわち、本発明の平版印刷版原版は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通して露光するか、デジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光される。また、デジタルミラーデバイスを用いたデジタル変調紫外線露光を用いることもできる。
なかでも、デジタルデータによるレーザー光走査による画像様露光が好ましい。
【0275】
露光光源としては、公知のものを制限なく用いることができる。光源の波長は250nmから1200nmが好ましい。
具体的な露光光源としては、カーボンアーク灯、水銀灯、キセノンランプ、メタルハイラドランプ、ストロボ、紫外線、赤外線、レーザー光線などが挙げられる。特にレーザー光線が好ましく、760〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザーおよび半導体レーザー(例えば、約830nm光を放射するレーザーダイオード、約1060nm光を放射するNdYAGレーザー等)、250〜420nmの光を放射する紫外線半導体レーザー(例えば、約405nm光を照射するInGaN系半導体レーザー)、可視光を放射するアルゴンイオンレーザー(488nm)、FD−YAGレーザー(532nm)などが挙げられる。 なかでも、製版の簡易化の点からは、白灯または黄色灯下で作業を行うことができる赤外線レーザーまたは紫外線レーザーが好ましい。
赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20μs以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10〜300mJ/cm2であるのが好ましい。露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。
【0276】
また、露光機構は内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等のいずれでもよい。
【0277】
露光された平版印刷版原版は、印刷機の版胴に装着される。レーザー露光装置付きの印刷機の場合は、平版印刷版原版を印刷機の版胴に装着したのち画像様露光される。
【0278】
<機上現像工程>
平版印刷版原版をレーザーで画像様に露光した後、湿式現像処理工程等の現像処理工程を経ることなく湿し水と印刷インキとを供給して印刷すると、画像形成層の露光部においては、露光により硬化した画像形成層が、親油性表面を有する印刷インキ受容部を形成する。一方、未露光部においては、供給された湿し水および/または印刷インキによって、未硬化の画像形成層が溶解または分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。その結果、湿し水は露出した親水性の表面に付着し、印刷インキは露光領域の画像形成層に着肉して印刷が開始される。
ここで、最初に版面に供給されるのは、湿し水でもよく、印刷インキでもよいが、湿し水が除去された画像形成層成分によって汚染されることを防止する点で、最初に印刷インキを供給するのが好ましい。湿し水および印刷インキとしては、通常の平版印刷用の湿し水と印刷インキが用いられる。
【0279】
このようにして、平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
【実施例】
【0280】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0281】
[実施例1〜18および比較例1〜2]
1.平版印刷版原版(1)〜(5)の作製
(1)支持体の作製
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミニウム表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
【0282】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0283】
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dm2の条件で、硝酸電解と同様の方法で電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、この板に15質量%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
その後、非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて70℃で12秒間、シリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/m2であった。その後、水洗して、支持体(1)を得た。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0284】
(2)下塗り層(1)の形成
次に、上記支持体(1)上に、下記下塗り層用塗布液(1)を乾燥塗布量が28mg/m2になるよう塗布して、下塗り層(1)を設けた。
【0285】
<下塗り層用塗布液(1)>
・下記構造の下塗り層用化合物(1) 0.18g
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸 0.10g
・メタノール 55.24g
・水 6.15g
【0286】
【化37】

【0287】
(3)画像形成層(1)〜(5)の形成
上記のようにして形成された下塗り層(1)上に、下記組成の画像形成層塗布液(1)〜(5)をバー塗布した後、100℃60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/m2の画像形成層(1)〜(5)を形成した。
画像形成層塗布液(1)〜(5)は下記感光液(1)〜(5)およびミクロゲル液(1)を塗布直前に混合し攪拌することにより得た。
【0288】
<感光液(1)〜(5)>
・バインダーポリマー(1)〔下記構造〕 0.240g
・赤外線吸収剤(1)〔下記構造〕 0.030g
・酸発生剤〔表1記載の化合物 ラジカル重合開始剤としても機能〕 0.162g
・重合性モノマー
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
(NKエステルA−9300、新中村化学(株)製) 0.192g
・低分子親水性化合物
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート 0.062g
・低分子親水性化合物(1)〔下記構造〕 0.050g
・感脂化剤 ホスホニウム化合物(1)〔下記構造〕 0.055g
・感脂化剤
ベンジル−ジメチル−オクチルアンモニウム・PF6塩 0.018g
・(C)化合物(表1に記載) 0.200g
・(B)化合物(表1に記載) 0.100g
・フッ素系界面活性剤(1)〔下記構造〕 0.008g
・メチルエチルケトン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
【0289】
<ミクロゲル液(1)>
・ミクロゲル(1) 2.640g
・蒸留水 2.425g
【0290】
上記の、バインダーポリマー(1)、赤外線吸収剤(1)、ホスホニウム化合物(1)、低分子親水性化合物(1)、およびフッ素系界面活性剤(1)の構造は、以下に示す通りである。
【0291】
【化38】

【0292】
上記のミクロゲル(1)は、以下のようにして合成されたものである。
【0293】
<ミクロゲル(1)の合成>
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、およびパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、50℃で3時間攪拌した。このようにして得られたミクロゲル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、これを前記ミクロゲル(1)とした。ミクロゲルの平均粒径を光散乱法により測定したところ、平均粒径は0.2μmであった。
【0294】
(4)保護層(1)の形成
上記のようにして形成された画像形成層(1)〜(5)上に、さらに下記組成の保護層塗布液(1)をバー塗布した後、120℃60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/m2の保護層(1)を形成し、平版印刷版原版(1)〜(5)を得た。
【0295】
<保護層用塗布液(1)>
・無機質層状化合物分散液(1) 1.5g
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS50、スルホン酸変性
、けん化度99モル%以上、 重合度300)6質量%水溶液 0.55g
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA−405、
けん化度81.5モル%重合度500)6質量%水溶液 0.03g
・日本エマルジョン(株)製界面活性剤
(エマレックス710)1質量%水溶液 8.60g
・イオン交換水 6.0g
【0296】
(無機質層状化合物分散液(1)の調製)
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0297】
2.平版印刷版原版(6)〜(13)の作製
上記感光液(1)〜(5)を下記の感光液(6)〜(13)に変更した以外は平版印刷版原版(1)の作製と同様にして、平版印刷版原版(6)〜(13)を作製した。
【0298】
<感光液(6)〜(13)>
・バインダーポリマー(1)〔上記構造〕 0.50g
・赤外線吸収剤(2)〔下記構造〕 0.05g
・酸発生剤〔表1記載の化合物 ラジカル重合開始剤としても機能〕 0.20g
・重合性モノマー
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
(NKエステルA−9300、新中村化学(株)製) 0.60g
・低分子親水性化合物
n−へプチルスルホン酸ナトリウム 0.05g
・(C)化合物(表1に記載) 0.20g
・(B)化合物(表1に記載) 0.10g
・感脂化剤
ベンジル−ジメチル−オクチルアンモニウム・PF6塩 0.018g
・感脂化剤 アンモニウム基含有ポリマー
(本明細書の例示化合物(23)、還元比粘度44cSt/g/ml) 0.035g
・フッ素系界面活性剤(1)〔上記構造〕 0.10g
・メチルエチルケトン 18.0g
【0299】
【化39】

【0300】
3.平版印刷版原版(14)〜(18)の作製
前記のように形成された下塗り層(1)上に、下記の画像形成層塗布液(14)〜(18)をバー塗布した後、70℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.6g/m2の画像形成層(14)〜(18)を形成した。
【0301】
<画像形成層塗布液(14)〜(18)>
・下記ポリマー微粒子(疎水化前駆体)水分散液 33.0g
・赤外線吸収剤(3)〔下記構造〕 1.0g
・酸発生剤〔表1記載の化合物〕 1.5g
・低分子親水性化合物
1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム 0.1g
・(C)化合物(表1に記載) 0.2g
・(B)化合物(表1に記載) 0.1g
・メタノール 16.0g
【0302】
【化40】

【0303】
(ポリマー微粒子(疎水化前駆体)水分散液の製造)
1000mlの4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ蒸留水350mLを加えて内温が80℃となるまで加熱した。分散剤としてドデシル硫酸ナトリウムを1.5g添加し、さらに開始剤として過硫化アンモニウム0.45gを添加し、次いでメチルメタクリレート45.0gとスチレン45.0gとの混合物を滴下ロートから約1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、水蒸気蒸留で未反応単量体を除去した。その後冷却しアンモニア水でpH6に調整し、最後に不揮発分が15質量%となるように純水を添加してポリマー微粒子(疎水化前駆体)水分散液を得た。このポリマー微粒子の粒径分布は、粒子径60nmに極大値を有していた。
【0304】
ここで、粒径分布は、ポリマー微粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で微粒子の粒径を総計で5000個測定し、得られた粒径測定値の最大値から0の間を対数目盛で50分割して各粒径の出現頻度をプロットして求めた。なお非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒径値を粒径とした。
【0305】
上記のようにして形成された画像形成層(14)〜(18)上に、さらに下記組成の保護層塗布液(2)をバー塗布した後、60℃、120秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.3g/m2の保護層(2)を形成し、平版印刷版原版(14)〜(18)を得た。
【0306】
<保護層塗布液(2)>
・カルボキシメチルセルロース(Mw2万) 5.0g
・水 50.0g
【0307】
4.比較例1用 平版印刷版原版(C−1)の作製
上記感光液(1)の(C)化合物0.200gおよび(B)化合物0.100gの代わりに、比較用化合物(C−1)0.200gを含有させた感光液(C−1)を用いた以外は平版印刷版原版(1)の作製と同様にして、比較例1用の平版印刷版原版(C−1)を作製した。
5.比較例2用 平版印刷版原版(C−2)の作製
上記画像形成層塗布液(14)〜(18)の(C)化合物0.200gおよび(B)化合物0.100gの代わりに、比較用化合物(C−1)0.200gを含有させた画像形成層塗布液(C−2)を用いた以外は平版印刷版原版(14)〜(18)の作製と同様にして、比較例2用の平版印刷版原版(C−2)を作製した。
【0308】
6.平版印刷版原版の製版と評価
(露光)
得られた平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−6000IIIにて、外面ドラム回転数1000rpm、レーザー出力70%、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像にはベタ画像および20μmドットFMスクリーンの50%網点チャートを含むようにした。
【0309】
(検版性の評価)
未露光部と露光画像(ベタ画像)について、色差計( 色彩色差計C R − 2 2 1 、ミノルタ( 株) 製) を用いて測色し、下記式から未露光−露光の色濃度差(相対値)を求めた。この値が大きいほど検版性が良好であることを示す。結果を表1に示す。
【0310】
未露光―露光の色濃度差(相対値)
=(実施例の未露光−露光色差)/(比較例1または比較例2の未露光−露光色差)
【0311】
(検版の経時安定性)
上記で作製した平版印刷版原版(1)〜(18)および比較例1用の平版印刷版原版(C−1)を60℃の恒温槽で3日間保管した後、上記と同様に露光し、色差計を用いて測色し、下記式(記号||は、絶対値を示す。)から検版の経時安定性を求めた。この値が小さいほど検版の経時安定性が良好であることを示す。結果を表1に示す。
【0312】
検版の経時安定性=|(60℃、3日間経時後の色濃度−経時前の色濃度)| /(経時前の色濃度)
【0313】
(機上現像性の評価)
得られた露光済み原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して、毎時10000枚の印刷速度で、特菱アート(76.5kg)紙に印刷を100枚行った。
画像形成層の未露光部の印刷機上での機上現像が完了し、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測した。枚数が少ないほど、機上現像性に優れることを示す。
結果を表1に示す。
【0314】
(着肉性の評価)
印刷枚数を増やしていくなかで、徐々に画像形成層のインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下する。印刷100枚目と3000枚目において、FMスクリーン50%網点の網点濃度をグレタグ濃度計で計測し、以下の式から着肉性を求めた。この値が大きいほど着肉性が良好であることを示す。結果を表1に示す。
【0315】
着肉性=(印刷3000枚目の網点濃度)/(印刷100枚目の網点濃度)
【0316】
(耐刷性の評価)
上述した機上現像性の評価を行った後、さらに印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に画像形成層が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン50%網点の網点面積率をグレタグ濃度計で計測した値が印刷100枚目の計測値よりも5%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。この値が大きいほど耐刷性が良好であることを示す。結果を表1に示す。
【0317】
【表1】

【0318】
【化41】

【0319】
【化42】

【0320】
[実施例19〜21]
1.平版印刷版原版(19)の製作
上記感光液(6)を下記の感光液(19)に変更し、上記ミクロゲル液(1)を下記ミクロゲル液(2)に変更した以外は平版印刷版原版(6)の作製と同様にして、平版印刷版原版(19)を作製した。
【0321】
<感光液(19)>
・バインダーポリマー(1)〔上記構造〕 0.50g
・赤外線吸収剤(2)〔上記構造〕 0.05g
・酸発生剤(1)〔ラジカル重合開始剤としても機能 上記構造〕 0.20g
・重合性モノマー
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートアロニックス
(NKエステルA−9300、新中村化学(株)製) 0.60g
・低分子親水性化合物
n−へプチルスルホン酸ナトリウム 0.05g
・(B)化合物(表2に記載) 0.10g
・感脂化剤
ベンジル−ジメチル−オクチルアンモニウム・PF6塩 0.018g
・感脂化剤 アンモニウム基含有ポリマー
(本明細書の例示化合物(23)、還元比粘度44cSt/g/ml) 0.035g
・フッ素系界面活性剤(1)〔上記構造〕 0.10g
・メチルエチルケトン 18.0g
【0322】
<ミクロゲル液(2)>
・ミクロゲル(2) 2.640g
・蒸留水 2.425g
【0323】
上記に記載のミクロゲル(2)は、以下のようにして合成されたものである。
【0324】
<ミクロゲル(2)の合成>
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、(C)化合物(表2に記載)4.95gおよびパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、50℃で3時間攪拌した。このようにして得られたミクロゲル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、これを前記ミクロゲル(2)とした。ミクロゲルの平均粒径を光散乱法により測定したところ、平均粒径は0.2μmであった。
【0325】
2.平版印刷版原版(20)の作製
上記感光液(6)を下記の感光液(20)に変更し、上記ミクロゲル液(1)を下記ミクロゲル液(3)に変更した以外は平版印刷版原版(6)の作製と同様にして、平版印刷版原版(20)を作製した。
【0326】
<感光液(20)>
・バインダーポリマー(1)〔上記構造〕 0.50g
・赤外線吸収剤(2)〔上記構造〕 0.05g
・酸発生剤(1)〔ラジカル重合開始剤としても機能 上記構造〕 0.20g
・重合性モノマー
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートアロニックス
(NKエステルA−9300、新中村化学(株)製) 0.60g
・低分子親水性化合物
n−へプチルスルホン酸ナトリウム 0.05g
・(C)化合物(表2に記載) 0.2g
・感脂化剤
ベンジル−ジメチル−オクチルアンモニウム・PF6塩 0.018g
・感脂化剤 アンモニウム基含有ポリマー
(本明細書の例示化合物(23)、還元比粘度44cSt/g/ml) 0.035g
・フッ素系界面活性剤(1)〔上記構造〕 0.10g
・メチルエチルケトン 18.0g
【0327】
<ミクロゲル液(3)>
・ミクロゲル(3) 2.640g
・蒸留水 2.425g
【0328】
上記に記載のミクロゲル(3)は、以下のようにして合成されたものである。
【0329】
<ミクロゲル(3)の合成>
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、(B)化合物(表2に記載)2.48gおよびパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、50℃で3時間攪拌した。このようにして得られたミクロゲル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、これを前記ミクロゲル(3)とした。ミクロゲルの平均粒径を光散乱法により測定したところ、平均粒径は0.2μmであった。
【0330】
3.平版印刷版原版(21)の作製
上記感光液(6)を下記の感光液(21)に変更した以外は平版印刷版原版(6)の作製と同様にして、平版印刷版原版(21)を形成した。
【0331】
<感光液(21)>
・バインダーポリマー(1)〔上記構造〕 0.50g
・赤外線吸収剤(2)〔上記構造〕 0.05g
・酸発生剤(1)〔ラジカル重合開始剤としても機能 上記構造〕 0.20g
・重合性モノマー
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートアロニックス
(NKエステルA−9300、新中村化学(株)製) 0.60g
・低分子親水性化合物
n−へプチルスルホン酸ナトリウム 0.05g
・(C)化合物(表2に記載) 0.20g
・(B)化合物(表2に記載) 0.10g
・塩基成分
トリ−n−デシルアミン 0.007g
・感脂化剤
ベンジル−ジメチル−オクチルアンモニウム・PF6塩 0.018g
・感脂化剤 アンモニウム基含有ポリマー
(本明細書の例示化合物(23)、還元比粘度44cSt/g/ml) 0.035g
・フッ素系界面活性剤(1)〔上記構造〕 0.10g
・メチルエチルケトン 18.0g
【0332】
4.平版印刷版原版の製版と評価
得られた平版印刷版原版を実施例1〜17と同様に製版し、実施例1〜17と同様に、検版性、検版の経時安定性、機上現像性、着肉性および耐刷性を評価した。結果を表2に示す。
【0333】
【表2】

【0334】
実施例18〜20を実施例6と比較すると、(B)成分または(C)成分をミクロゲルに内包するか、あるいは画像形成層に塩基成分を添加することによって、検版性、検版の経時安定性のさらに向上することが分かる。
【0335】
[実施例22〜26および比較例3]
1.平版印刷版原版(22)〜(26)の作製
上記感光液(1)を下記の感光液(22)〜(26)に変更した以外は平版印刷版原版(1)の作製と同様にして、平版印刷版原版(22)〜(26)を作製した。
【0336】
<感光液(22)〜(26)>
・バインダーポリマー(1)〔上記構造〕 0.24g
・酸発生剤(2)〔ラジカル重合開始剤としても機能 上記構造〕 0.162g
・350〜850nmに吸収ピークを有する増感色素(1)〔下記構造〕0.162g
・重合性モノマー
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
(NKエステルA−9300、新中村化学(株)製) 0.192g
・低分子親水性化合物
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート 0.062g
・低分子親水性化合物(1)〔上記構造〕 0.050g
・感脂化剤 ホスホニウム化合物(1)〔上記構造〕 0.055g
・感脂化剤
ベンジル−ジメチル−オクチルアンモニウム・PF6塩 0.018g
・(C)化合物(表3に記載) 0.200g
・(B)化合物(表3に記載) 0.100g
・メチルエチルケトン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
・熱重合禁止剤
N − ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩 0.070g
【0337】
【化43】

【0338】
2.比較例3用の平版印刷版原版(C−3)の作製
上記感光液(22)の(C)化合物0.200gおよび(B)化合物0.100gの代わりに、比較用化合物(C−1)0.200gを添加した感光液(C−3)を用いた以外は平版印刷版原版(22)の作製と同様にして、平版印刷版原版(C−3)を作製した。
【0339】
3.平版印刷版原版の製版および評価
(露光)
上記平版印刷版原版(22)〜(26)および比較例2用の平版印刷版原版(C−3)について、FUJIFILM Electronic Imaging Ltd. 製Violet半導体レーザープレートセッターVx9600(InGaN系半導体レーザー 405nm±10nm発光/出力30mWを搭載)により画像露光した。露光画像は、ベタ画像とともに解像度2438dpiで、富士フイルム(株)製FMスクリーン(TAFFETA 20)を用い、50%の平網を版面露光量0.05mJ/cmで描画した。画像露光後、30秒以内に平版印刷版原版をオーブンに入れ、熱風を吹き付けて平版印刷版原版の全面を加熱し、110℃で15秒間保持した。
【0340】
(検版性の評価)
未露光部と露光画像(ベタ画像)について、色差計(色彩色差計C R − 2 2 1 、ミノルタ( 株) 製) を用いて測色し、下記式から未露光−露光の色濃度差(相対値)を求めた。この値が大きいほど検版性が良好であることを示す。結果を表3に示す。
【0341】
未露光―露光の色濃度差(相対値)
=(実施例の未露光−露光色差)/(比較例3の未露光−露光色差)
【0342】
(検版の経時安定性、機上現像性、着肉性および耐刷性の評価)
上記のように露光した平版印刷版原版(22)〜(26)および比較例3用の平版印刷版原版(C−3)を、実施例(1)〜(5)と同様にして、検版の経時安定性、機上現像性、着肉性および耐刷性を評価した。結果を表3に示す。
【0343】
【表3】

【0344】
表3から明らかなように、本発明によれば、UV露光系においても、検版性、検版の経時安定性、機上現像性、着肉性および耐刷性がいずれも良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、(A)光または熱により酸を発生する化合物、(B)分子内に窒素原子を含む官能基で置換された芳香族炭化水素化合物または複素環式化合物、および、(C)酸分解性基で保護された芳香族アルデヒドを有する平版印刷版原版を画像様に露光する工程、並びに、印刷機シリンダー上で湿し水及びインキの少なくとも一方を供給し、平版印刷版原版の画像形成層未露光部分を除去する工程を有することを特徴とする平版印刷版原版の製版方法。
【請求項2】
(C)酸分解性基で保護された芳香族アルデヒドが一般式(I)で示される化合物であり、(B)分子内に窒素原子を含む官能基で置換された芳香族炭化水素化合物または複素環化合物が一般式(II)で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版原版の製版方法。
【化1】



式中、R〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、―OCORa、―OCONRaRb、―NRaRb、―N(Ra)CORb、―N(Ra)COORb、―COORa、―CONRaRb、−SRaまたはシアノ基を表す。また、これらの基の任意の炭素鎖の間に、O、S、N(Ra)、COまたはこれらの組み合わせからなる原子団が挿入されていてもよい。R〜Rの中の少なくともいずれか2つが互いに結合して縮環を形成してもよい。また、R〜R11の中の少なくともいずれか2つが互いに結合して縮環を形成してもよい。XおよびXは、それぞれ独立に、―ORx、―NRxRy、または―SRxを表し、複数のRx、Ryがそれぞれ結びついて環状構造を形成してもよい。RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。RxおよびRyは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。
【請求項3】
(A)光または熱により酸を発生する化合物が、オニウム化合物、オキシムエステル化合物、トリアジン化合物またはイミドエステル化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の平版印刷版原版の製版方法。
【請求項4】
平版印刷版原版が赤外線吸収剤を含有する画像形成層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の平版印刷版原版の製版方法。
【請求項5】
画像形成層に、重合性モノマーおよびバインダーポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の平版印刷版原版の製版方法。
【請求項6】
画像形成層に、前記(B)分子内にヘテロ原子を含む官能基で置換された芳香族炭化水素化合物または複素環化合物および(C)酸分解性基で保護された芳香族アルデヒドの一方を内包させたミクロゲルを含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の平版印刷版原版の製版方法。
【請求項7】
画像形成層に、塩基成分を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の平版印刷版原版の製版方法。

【公開番号】特開2010−69857(P2010−69857A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243375(P2008−243375)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】