説明

平版印刷版材料の処理方法及び平版印刷版

【課題】機上現像タイプの平版印刷版材料の、多色刷り見当ずれ、取り付け間違いがなく、平版印刷版材料の取り扱い情報が読み取り易い平版印刷版材料、およびその処理方法を提供し、更に、印刷機に取り付ける際に滑りによる事故発生のない平版印刷版材料の処理方法を提供する。
【解決手段】親水性表面を有する基材上に、少なくとも像様加熱または光エネルギーにより像様露光した領域が、印刷機の印刷工程で除去不能となる画像形成層を有する平版印刷版材料の処理方法において、該平版印刷版材料を印刷機に取り付けて印刷を行う工程の前に、該平版印刷版材料の周辺部の一部の領域の該画像形成層を除去することを特徴とする平版印刷版材料の処理方法及び平版印刷版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平版印刷版材料の処理方法及び平版印刷版に関し、特にコンピュータ・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能な平版印刷版材料(以後、単に印刷版材料ともいう)の処理方法及び平版印刷版(以後、単に印刷版ともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、印刷の分野においては、印刷画像データのデジタル化に伴い、CTP方式による印刷が行われるようになってきているが、この印刷においては、安価で取り扱いが容易で従来の所謂PS版と同等の印刷適性を有したCTP方式用印刷版材料が求められている。
【0003】
特に近年、特別な薬剤(例えばアルカリ、酸、溶媒など)を含む処理液による現像処理を必要とせず、従来の印刷機に適用可能である印刷版材料が求められており、例えば、全く現像処理を必要としない相変化タイプの印刷版材料、水もしくは水を主体とした実質的に中性の処理液で処理をする印刷版材料、印刷機上で印刷の初期段階で現像処理を行い特に現像工程を必要としない印刷版材料などの、ケミカルフリータイプ印刷版材料やプロセスレスタイプ印刷版材料と呼ばれる印刷版材料が知られている。
【0004】
上記の全く現像処理を必要としない印刷版材料や印刷機上で現像を行うプロセスレスタイプの印刷版材料においても、印刷機に取り付ける際に必要なパンチングを露光後に行うため、従来のPSと同様に所謂露光可視画性をもつことが必要とされている。
【0005】
また、プロセスレスタイプの印刷版材料の画像形成に主として用いられるのは近赤外〜赤外線の波長を有するサーマルレーザー記録方式であり、この方式で画像形成可能なサーマルプロセスレスプレートには、大きく分けて、アブレーションタイプと熱融着画像層機上現像タイプ、および相変化タイプが知られている。
【0006】
一方これらのプロセスレスタイプの印刷版材料に露光可視画性を持たせた印刷版材料として以下の印刷版材料が知られている。
【0007】
例えば、画像形成層中にロイコ色素とその顕色剤といったような感熱発色する素材を含有させた層や、熱によってスルホン酸を発生する官能基を有する高分子化合物および発生した酸によって変色する化合物とを含有する親油層、を有する印刷版材料(例えば、特許文献1、2参照)、画像形成要素の露出によりその光学濃度を変化させることができるIR−色素を含有する層を有する印刷版材料(例えば、特許文献3参照)、露光によって光学濃度を変化させることのできるシアニン系赤外線吸収色素を20質量%以上含有させた、印刷機上で除去可能な親水性オーバーコート層を有する印刷版材料(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【0008】
しかしながら、これらの印刷版材料の露光可視画の付与においては、目視で判別するにはコントラストが不十分であったり、画像形成直後には視認可能であっても明室保存下で徐々にコントラストが消滅することにより、判別が困難になり、多色刷りの印刷物で複数版を取り扱う際等に、取り付け間違いが発生することがあった。また、機上現像タイプの印刷版材料は、取り扱い時の版面傷の発生の防止のために表面を滑りやすくするための滑材を添加したり、版面から突出する微粒子を添加して、表面に凹凸をつけて外力が画像形成層へおよぶのを避ける場合が多い。このような態様の場合、印刷版を印刷機に取り付ける際に、版の固定が不安定となり、印刷工程が進行するに連れて、印刷版面にずれが徐々に生じて、多色刷りの場合、ずれの発生が問題となっていた。
【特許文献1】特開2000−225780号公報
【特許文献2】特開2002−211150号公報
【特許文献3】特開平11−240270号公報
【特許文献4】特開2002−205466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、機上現像タイプの平版印刷版材料の、多色刷り見当ずれ、取り付け間違いがなく、平版印刷版材料の取り扱い情報が読み取り易い平版印刷版材料、およびその処理方法を提供することにある。更に、印刷機に取り付ける際に滑りによる事故発生のない平版印刷版材料の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0011】
1.親水性表面を有する基材上に、少なくとも像様加熱または光エネルギーにより像様露光した領域が、印刷機の印刷工程で除去不能となる画像形成層を有する平版印刷版材料の処理方法において、該平版印刷版材料を印刷機に取り付けて印刷を行う工程の前に、該平版印刷版材料周辺部の一部領域の該画像形成層を除去することを特徴とする平版印刷版材料の処理方法。
【0012】
2.前記画像形成層を除去する領域が、非印刷領域であることを特徴とする前記1の平版印刷版材料の処理方法。
【0013】
3.前記画像形成層を除去する領域が、印刷機に取り付ける際の平版印刷版材料のくわえ部、またはくわえ尻部であることを特徴とする前記1又は2記載の平版印刷版材料の処理方法。
【0014】
4.前記画像形成層を除去する領域に、像様に熱または光エネルギーにより画像を記録することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項記載の平版印刷版材料の処理方法。
【0015】
5.前記1〜4のいずれか1項記載の平版印刷版材料の処理方法で処理されたことを特徴とする平版印刷版。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、機上現像タイプの平版印刷版材料の、多色刷り見当ずれ、取り付け間違いがなく、平版印刷版材料の取り扱い情報が読み取り易い平版印刷版材料の処理方法であり、印刷機に取り付ける際に滑りによる事故発生のない平版印刷版材料の処理方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を更に詳しく説明する。
【0018】
〔本発明の平版印刷版材料の処理方法〕
本発明の平版印刷版材料の処理方法は、平版印刷版材料を印刷機に取り付けて印刷を行う工程の前に、平版印刷版材料の周辺部の一部の領域の画像形成層を除去する。除去する領域は、非印刷領域、或いは、印刷機に取り付ける際の平版印刷版材料のくわえ部、またはくわえ尻部であることが好ましい。
【0019】
本発明の処理方法は、水を主成分とする液に接触させることにより、行われ、接触させる方法としては、この液を含む処理槽に浸漬する方法、この液をノズルなどから噴射して接触させる方法、ワイヤーバーなどのコーターを用いて表面に塗布したのち、ウエス、ガーゼ等の布類、ティッシュペーパーの様な紙類、セルローススポンジなど含水性素材で拭き取る方法、もしくはこれらの含水性素材に液を含ませて、印刷版に接触させる方法などがあるが、本発明においては、スプレーコーティング方式の塗布の後に拭き取る方法、含水性素材に液を含ませて擦過する方法が好ましく適用できる。
【0020】
用いられる上記液の温度は、5℃〜60℃が好ましく、特に10℃〜50℃が好ましい。また前処理の時間としては、1秒〜10分が好ましく、特に1秒〜1分が好ましい。
【0021】
本発明において、除去する画像形成層の領域内に像様露光された部分が存在する場合には、その像様に画像形成層が残留することで、視認可能な画像が形成される。この画像情報として例えば、印刷版の色情報や、印刷版の上下を表す文字や記号を付与することで、多色刷り印刷の取り付け位置を間違えることなく作業することが容易になる。また、除去する画像形成層の領域が、印刷版のくわえ部やくわえ尻部である場合には、すべりの原因となる画像形成層中の滑材や、マット材を除去することで摩擦力が増して、印刷機に取り付けた後のずれの発生が大幅に抑制される。その他の態様としては、印刷版のくわえ、くわえ尻ではない、残りの1組の両辺の端部の画像形成層を除去することにより、印刷版断裁時に圧力で固着した画像形成層の残留成分に不要な印刷インキが付着して、印刷物を汚染する、いわゆる「額縁汚れ」を防止することが出来る。
【0022】
〔基材〕
本発明に係る親水性表面を有する基材は、基材の表面を親水化処理する方法あるいは基材上に親水性層を設ける方法により得られる。
【0023】
本発明に係る基材としては、印刷版の基材として使用される公知の材料を使用することができる。
【0024】
例えば、金属板、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、上記材料を適宜貼り合わせた複合基材等が挙げられる。基材の厚さとしては、印刷機に取り付け可能であれば特に制限されるものではないが、50〜500μmのものが一般的に取り扱いやすい。
【0025】
金属板としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられるが、比重と剛性との関係から特にアルミニウムが好ましい。アルミニウム板は、通常その表面に存在する圧延・巻取り時に使用されたオイルを除去するためにアルカリ、酸、溶剤等で脱脂した後に使用される。脱脂処理としては特にアルカリ水溶液による脱脂が好ましい。また、塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下引き層の塗布を行なっても良い。
【0026】
例えば、ケイ酸塩やシランカップリング剤等のカップリング剤を含有する液に浸漬するか、液を塗布した後、十分な乾燥を行なう方法が挙げられる。陽極酸化処理も易接着処理の一種と考えられ、使用することができる。また、陽極酸化処理と上記浸漬または塗布処理を組み合わせて使用することもできる。また、公知の方法で粗面化されたアルミニウム基材、いわゆるアルミ砂目を、親水性表面を有する基材として使用することもできる。
【0027】
本発明の印刷版材料に用いることができるアルミニウム基材には、純アルミニウムおよびアルミニウム合金よりなる基材が含まれる。アルミニウム合金としては種々のものが使用でき、例えば珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。
【0028】
アルミニウム基材は、粗面化処理に先立ってアルミニウム表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。また、脱脂処理には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理にアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。
【0029】
脱脂処理にアルカリ水溶液を用いた場合には、燐酸、硝酸、塩酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。中和処理の次に電解粗面化を行う場合は、中和に使用する酸を電解粗面化に使用する酸に合わせることが特に好ましい。
【0030】
基材の粗面化としては公知の方法での電解粗面化処理を行うが、その前処理として、適度な処理量の化学的粗面化や機械的粗面化を適宜組み合わせた粗面化処理を行なってもかまわない。
【0031】
化学的粗面化は脱脂処理と同様に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリの水溶液を用いる。処理後には燐酸、硝酸、塩酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。中和処理の次に電解粗面化を行う場合は、中和に使用する酸を電解粗面化に使用する酸に合わせることが特に好ましい。
【0032】
機械的粗面化処理方法は特に限定されないがブラシ研磨、ホーニング研磨が好ましい。
【0033】
機械的に粗面化された基材は、基材の表面に食い込んだ研磨剤、アルミニウム屑等を取り除いたり、ピット形状をコントロールしたりする等のために、酸またはアルカリの水溶液に浸漬して表面をエッチングすることが好ましい。酸としては、例えば硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が含まれ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が含まれる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。
【0034】
機械的粗面化処理に#400よりも細かい粒度の研磨剤を用い、かつ、機械的粗面化処理の後にアルカリ水溶液によるエッチング処理を行うことで、機械的粗面化処理による入り組んだ粗面化構造を滑らかな凹凸の表面とすることができる。このため、本発明の画像形成層を設けた際にも機上現像性を損なうことなく数μm〜数十μmの比較的長波長のうねりを形成することができ、これに後述する電解粗面化処理を加えることで、印刷性能が良好で、かつ、耐刷性向上にも寄与するアルミニウム基材とすることができる。また、電解粗面化処理時の電気量を低減することもでき、コストダウンにもつながる。
【0035】
上記をアルカリの水溶液で浸漬処理を行った場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0036】
中和処理の次に電解粗面化処理を行う場合は、中和に使用する酸を電解粗面化処理に使用する酸に合わせることが特に好ましい。
【0037】
電解粗面化処理は一般に酸性電解液中で交流電流を用いて粗面化を行うものである。酸性電解液は通常の電解粗面化法に用いられるものが使用できるが、塩酸系または硝酸系電解液を用いるのが好ましく、本発明においては塩酸系電解液を用いるのが特に好ましい。
【0038】
電解に使用する電源波形は、矩形波、台形波、のこぎり波等さまざまな波形を用いることができるが、特に正弦波が好ましい。
【0039】
また、特開平10−869号公報に開示されているような分割電解粗面化処理も好ましく用いることができる。
【0040】
硝酸系電解液を用いての電解粗面化において印加される電圧は、1〜50Vが好ましく、5〜30Vが更に好ましい。電流密度(ピーク値)は、10〜200A/dm2が好ましく、20〜150A/dm2が更に好ましい。
【0041】
電気量は全処理工程を合計して、100〜2000C/dm2、好ましくは200〜1500C/dm2、より好ましくは200〜1000C/dm2である。
【0042】
温度は、10〜50℃が好ましく、15〜45℃が更に好ましい。硝酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。
【0043】
電解液には、必要に応じて硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、蓚酸等を加えることが出来る。
【0044】
本発明においては,電解粗面化処理された基材は、表面のスマット等を取り除いたり、ピット形状をコントロールしたりする等のために、アルカリの水溶液に浸漬して表面のエッチングを行う。
【0045】
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が含まれる。
【0046】
アルカリ水溶液によるエッチング処理を行うことで、本発明の画像形成層を設けた際の刷り出し性や地汚れが非常に良好となる。
【0047】
アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。中和処理の次に陽極酸化処理を行う場合は、中和に使用する酸を陽極酸化処理に使用する酸に合わせることが特に好ましい。
【0048】
粗面化処理の次に、陽極酸化処理を行う。
【0049】
本発明で用いられる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理により基材上には酸化皮膜が形成される。本発明において、陽極酸化処理には、硫酸および/または燐酸等を10〜50%の濃度で含む水溶液を電解液として、電流密度1〜10A/dm2で電解する方法が好ましく用いられるが、他に米国特許第1,412,768号に記載されている硫酸中で、高電流密度で電解する方法や、米国特許第3,511,661号に記載されている燐酸を用いて電解する方法等を用いることができる。
【0050】
陽極酸化処理された基材は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等公知の方法を用いて行うことができる。
【0051】
また、陽極酸化処理された基材は適宜、上記封孔処理以外の表面処理を行うこともできる。表面処理としては、ケイ酸塩処理、リン酸塩処理、各種有機酸処理、PVPA処理、ベーマイト化処理といった公知の処理が挙げられる。また、特開平8−314157号に記載の炭酸水素塩を含有する水溶液による処理や、炭酸水素塩を含有する水溶液による処理に続けてクエン酸のような有機酸処理を行ってもよい。
【0052】
本発明に係る基材としてのプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。
【0053】
また、裏面のすべり性を制御する(例えば版胴表面との摩擦係数を低減させる)目的で、裏面コート層を設けた基材も好ましく使用することができる。
【0054】
〔親水性層〕
親水性表面を有する基材は、上記のような基材の表面を親水化処理する方法、あるいは基材上に親水性層を設ける方法により得られる。
【0055】
親水性層を設ける場合、親水性層は親水性素材を含み、親水性素材としては、金属酸化物が好ましく用いられる。
【0056】
金属酸化物としては、金属酸化物の粒子を含むことが好ましい。
【0057】
例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。
【0058】
この金属酸化物粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良い。平均粒径としては、3〜100nmであることが好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物粒子を併用することもできる。又、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0059】
上記金属酸化物粒子はその造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0060】
本発明には、上記の中でも特にコロイダルシリカが好ましく使用できる。コロイダルシリカは比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。
【0061】
上記コロイダルシリカとしては、ネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、さらに、コロイダルシリカはコロイド溶液としてアルカリ性を呈することが好ましい。
【0062】
本発明に用いることができる親水性層は金属酸化物として多孔質金属酸化物粒子を含むことが好ましい。
【0063】
多孔質金属酸化物粒子としては、多孔質シリカ又は多孔質アルミノシリケート粒子もしくはゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0064】
多孔質無機粒子の粒径としては、親水性層に含有されている状態で、実質的に1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることが更に好ましい。
【0065】
親水性層にはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0066】
また、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているもの、又は本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0067】
本発明の好ましい態様として、親水性層には後述の光熱変換剤を含有させることができる。
【0068】
光熱変換素剤としては下記のような素材を挙げることができる。
【0069】
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
また、特開平11−240270号、特開平11−265062号、特開2000−309174号、特開2002−49147号、特開2001−162965号、特開2002−144750号、特開2001−219667号に記載の化合物も好ましく用いることができる。
【0071】
〔画像形成層〕
本発明に用いられる印刷版材料の好ましい態様として、親水性表面基材もしくは親水性層上に機上現像可能な画像形成層をを有する態様が挙げられる。画像形成層は、赤外線レーザーによる露光によって発生する熱によって画像形成するものであることが好ましい。
【0072】
本発明の画像形成層の好ましい態様のひとつとして、画像形成層が疎水化前駆体を含有する態様が挙げられる。
【0073】
疎水化前駆体としては、熱によって親水性(水溶性または水膨潤性)から疎水性へと変化するポリマーを用いることができる。具体的には、例えば、特開2000−56449に開示されている、アリールジアゾスルホネート単位を含有するポリマーを挙げることができる。
【0074】
本発明においては、疎水化前駆体としては、熱可塑性疎水性粒子、もしくは、疎水性物質を内包するマイクロカプセルを用いることが好ましい。熱可塑性微粒子としては、後述する熱溶融性微粒子および熱融着性微粒子を挙げることができる。
【0075】
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上150℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が300℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0076】
使用可能な素材としては、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800から10000程度のものである。又、乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスにステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。又、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0077】
これらの中でもポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。又、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0078】
又、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0079】
又、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。
【0080】
被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。層中の熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0081】
本発明の熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、高分子重合体微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。高分子重合体の質量平均分子量(Mw)は10、000〜1、000、000の範囲であることが好ましい。
【0082】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0083】
高分子重合体微粒子は乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法又は気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水又は水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。又、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。
【0084】
又、熱融着性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱融着性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱融着性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱融着性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0085】
又、熱融着性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。
【0086】
被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0087】
[画像形成層に含有可能なその他の素材]
本発明に用いられる画像形成層にはさらに以下のような素材を含有させることができる。画像形成層には上述の光熱変換素材を含有させることができる。画像形成層は一部が機上現像されるため、可視光での着色の少ない素材を用いることが好ましく、色素を用いることが好ましい。
【0088】
画像形成層には水溶性樹脂、水分散性樹脂を含有させることができる。水溶性樹脂、水分散性樹脂としては、オリゴ糖、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられる。
【0089】
これらのなかでは、オリゴ糖、多糖類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(Na塩等)、ポリアクリルアミドが好ましい。
【0090】
オリゴ糖としては、ラフィノース、トレハロース、マルトース、ガラクトース、スクロース、ラクトースといったものが挙げられるが、特にトレハロースが好ましい。
【0091】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。
【0092】
ポリアクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(Na塩等)、ポリアクリルアミドとしては、分子量3000〜500万であることが好ましく、5000〜100万であることがより好ましい。
【0093】
また、画像形成層には、水溶性の界面活性剤を含有させることができる。Si系、又はF系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%が更に好ましい。
【0094】
さらに、pH調整のための酸(リン酸、酢酸等)またはアルカリ(水酸化ナトリウム、ケイ酸塩、リン酸塩等)を含有していても良い。
【0095】
また、印刷前に画像形成層の表面が擦られて、親水性表面に固着した傷が印刷物に影響するのを避けるために、画像形成層の膜厚よりも突出できるような平均粒径のシリカ、酸化チタンなどの無機粒子、あるいはアクリル、スチレン等の有機の樹脂粒子などを添加することが好ましい。これら粒子の平均粒径は、通常0.2〜10μm、好ましくは0.5〜5μmである。
【0096】
画像形成層の付き量としては、0.01〜10g/m2であり、好ましくは0.1〜3g/m2であり、さらに好ましくは0.2〜2g/m2である。
【0097】
本発明に係る平版印刷版材料の好ましい態様としては、前述の表面を親水化処理されたアルミニウム基材、もしくは基材上に設けられた親水性層上に、画像形成層を設け、画像形成層またはそれ以外の基材上の構成層のいずれかに、光熱変換剤を含有する平版印刷版材料が挙げられる。
【0098】
本発明に係る構成層は、少なくとも感熱画像形成層を含む層である。感熱画像形成層以外の層としては、感熱画像形成層の上に設けられる、保護層、下に設けられる下引き層が挙げられる。
【0099】
前記のように着色剤を含む層が、感熱画像形成層であることが好ましい態様である。
【0100】
保護層に用いる素材としては、水溶性樹脂、水分散性樹脂を好ましく用いることができる。また、特開2002−019318号や特開2002−086948号に記載されている親水性オーバーコート層も好ましく用いることができる。保護層の付き量としては、0.01〜10g/m2であり、好ましくは0.1〜3g/m2であり、さらに好ましくは0.2〜2g/m2である。
【0101】
本発明においては保護層に着色剤を含んでもよい。
【0102】
画像形成層は、印刷機上現像可能な層であることが好ましい態様である。
【0103】
印刷機上現像可能とは、露光後、平版印刷における湿し水及びまたは印刷インキにより非画像部の画像形成層が除去され得ることをいう。
【0104】
印刷機上現像可能とするには、上述の感熱性素材、水溶性樹脂、水分散性樹脂などを含有させることにより得られる。
【0105】
〔像様加熱〕
本発明に係る像様加熱する方法としては、前記のようにサーマルヘッドなどの媒体による加熱あるいはレーザー光の照射による方法があるが、レーザー光を用いる方法が本発明においては好ましい。レーザー光を用いる方法の中でも、特にサーマルレーザーによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0106】
例えば赤外及び/または近赤外領域で発光する、即ち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。
【0107】
レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0108】
走査露光に好適な装置としては、この半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0109】
一般的には、(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式が挙げられる。又特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)の露光方式が用いられる。
【0110】
〔機上現像方法〕
本発明に係る平版印刷の方法では、画像露光による未露光部は、前現像処理で一部除去されるが、印刷時に印刷機上で除去されて非画像部となり印刷が行われる。
【0111】
印刷機上での画像形成層の未露光部の除去は、版胴を回転させながら水付けローラーやインクローラーを接触させて行なうことができるが、下記に挙げる例のような、もしくは、それ以外の種々のシークエンスによって行なうことができる。
【0112】
また、その際には、印刷時に必要な湿し水水量に対して、水量を増加させたり、減少させたりといった水量調整を行ってもよく、水量調整を多段階に分けて、もしくは、無段階に変化させて行ってもよい。
(1)印刷開始のシークエンスとして、水付けローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転させ、次いで、インクローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転させ、次いで、印刷を開始する。
(2)印刷開始のシークエンスとして、インクローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転させ、次いで、水付けローラーを接触させて版胴を1回転〜数十回転させ、次いで、印刷を開始する。
(3)印刷開始のシークエンスとして、水付けローラーとインクローラーとを実質的に同時に接触させて版胴を1回転〜数十回転させ、次いで、印刷を開始する。
【実施例】
【0113】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例中「部」は特に断りのないかぎり「質量部」を表す。
【0114】
実施例1
《基材1の作製》
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を、50℃の1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、溶解量が2g/m2になるように溶解処理を行い水洗した後、25℃の0.1質量%塩酸水溶液中に30秒間浸漬し、中和処理した後、水洗した。
【0115】
次いで、このアルミニウム板を塩酸10g/L、アルミを0.5g/L含有する電解液により、正弦波の交流を用いて、ピーク電流密度が50A/dm2の条件で電解粗面化処理を行なった。この際の電極と試料表面との距離は10mmとした。電解粗面化処理は12回に分割して行い、一回の処理電気量(陽極時)を40C/dm2とし、合計で480C/dm2の処理電気量(陽極時)とした。また、各回の粗面化処理の間に5秒間の休止時間を設けた。
【0116】
電解粗面化後は、50℃に保たれた1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、粗面化された面のスマットを含めた溶解量が1.2g/m2になるようにエッチングし、水洗し、次いで25℃に保たれた10%硫酸水溶液中に10秒間浸漬し、中和処理した後、水洗した。次いで、20%硫酸水溶液中で、20Vの定電圧条件で電気量が150C/dm2となるように陽極酸化処理を行い、更に水洗した。
【0117】
次いで、水洗後の表面水をスクイーズした後、70℃に保たれた1質量%のリン酸二水素ナトリウム水溶液に30秒間浸漬し、水洗を行った後に、80℃で5分間乾燥した。
【0118】
次に、日産化学社製リチウムシリケートLSS−45のSiO2濃度として0.1質量%水溶液となるように純水希釈した液を、50℃に加温した浴に30秒浸漬した後、水洗、60℃で3分乾燥した。
【0119】
下記組成の素材を、ホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、濾過して、固形分15質量%の親水性層の塗布液を作製した。
【0120】
粗面化された上記アルミニウム板の上に、親水性層の塗布液を、ワイヤーバーを用いて乾燥後の付量が2.5g/m2となるように塗布し、110℃で3分間乾燥して、親水性層を有する基材1を作製した。
【0121】
(親水性層塗布液組成)
親水性層コロイダルシリカ(アルカリ系):スノーテックス−S(日産化学社製)
(固形分30.0%) 3.33部
ネックレス状コロイダルシリカ(アルカリ系):スノーテックス−PSM
(日産化学社製)(固形分20.0%) 7.50部
リチウムシリケート35
(日産化学社製、アモルファスシリカとして固形分20.0%) 3.00部
層状鉱物粒子モンモリロナイト:ミネラルコロイドMO(Southern Clay Products社製、平均粒径0.1μm)をホモジナイザで強攪拌して5質量%の水膨潤ゲルとしたもの 2.00部
低磁化量黒色顔料:ETB−300(チタン工業株式会社製) 4.79部
リン酸三ナトリウム・12水(関東化学社製試薬)の10.0質量%の水溶液
0.10部
多孔質金属酸化物粒子シルトンAMT08
(水澤化学社製、多孔質アルミノシリケート粒子、平均粒径0.6μm)1.50部
多孔質金属酸化物粒子シルトンJC−30
(水澤化学社製、多孔質アルミノシリケート粒子、平均粒径3μm) 0.50部
純水 7.28部
〔印刷版材料の作製〕
続けて、下記組成の素材を十分に混合攪拌し、濾過して固形分10質量%の画像形成層の塗布液を作製した。
【0122】
上記の親水性層塗布液を塗布し、乾燥した基材1上に、画像形成層の塗布液を、ワイヤーバーを用いて乾燥付量が0.7g/m2となるように塗布し、55℃で1分間乾燥した。次いで、40℃24時間のエイジング処理を行って、印刷版材料を得た。
【0123】
(画像形成層塗布液組成)
マット材 多孔質金属酸化物粒子 シルトンJC−40
(水澤化学社製、多孔質アルミノシリケート粒子、平均粒径 4μm) 10.0部
滑材 アミドワックスエマルション:ニッサンエレクトール
WEP−5(日本油脂株式会社製、固形分40質量%) 25.0部
カルナバワックスエマルジョン:A118
(岐阜セラック社製、平均粒子径0.3μm、融点80℃、固形分40質量%)
170部
ポリアクリル酸ナトリウム:アクアリックDL522
(日本触媒社製)の水溶液、固形分10質量% 100部
光熱変換色素:ADS830WS
(American Dye Source社製)の1質量%水溶液 2.00部
純水 1693部
(赤外線レーザーによる露光)
上記平版印刷版材料を露光ドラムに巻付け固定した。露光には波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成した。露光した画像はベタ画像と1〜99%の網点画像と2400dpiのラインアンドスペース細線画像、および印刷版の四隅に位置確認用のトンボ(いずれも印刷可能な領域)と、印刷版の上下の区別を表す印を、印刷領域にかからない、くわえ部、およびくわえ尻部に含むものである。くわえ部には直径2cmのベタ丸印、くわえ尻部には一辺が1.5cmのベタ四角印を記録した。
【0124】
(印刷前の処理)
印刷前の上記露光済み平版印刷版材料の、くわえ部、およびくわえ尻部に、水を含ませた東レ・ファインケミカル社製のセルローススポンジを用いて、画像形成層表面を擦り、表面から画像形成層を除去した。擦った領域は水を保持できるのに対して、上下判別用の丸、四角印部は水をはじくため、容易に上下の判別が出来た。この処理をしないと、上下判別用の丸、四角印部が見難い。
【0125】
印刷方法
K(黒)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各印刷版に画像露光を行い、次いで小森コーポレーション(株)製リスロン426印刷機にてOKトップコート(王子製紙(株)製)、湿し水:アストロマーク3(日研化学研究所製)2質量%、インク(東洋インク社製TKハイユニティネオ墨、藍、紅、黄)を用いて9000枚/時の印刷速度で印刷を行った。印刷の順序はK→C→M→Yの刷り順で行った。
【0126】
露光後の平版印刷版材料をそのまま印刷機の版胴に取り付け、PS版と同様の印刷条件および刷り出しシークエンスを用いて20000枚まで印刷を行なった。
【0127】
(比較例)
上記本発明例について、「印刷前の処理をおこなわない」ように変更した以外は同様にして、印刷を行った。
【0128】
《評価方法》
〔額縁汚れ〕
刷り出しから印刷物の両端部を観察し、印刷版のエッジ部に当たる印刷物のインキ汚れ(額縁汚れ)が目視で確認できなくなる枚数を確認した。比較例の場合は、100枚まで、両端に印刷インキのすじ状の汚れが付着していたのに対して、本発明の場合は、印刷インキのみの付着だけであった。
【0129】
〔見当ずれ〕
100枚目の印刷物と20000枚目までの印刷物のKに対するMのトンボのずれ量を測定した。トンボのずれ量が、20μmを超えたときの印刷枚数を確認した。
【0130】
本発明の場合には、トンボのずれ量が20000枚印刷後も20μm以下であったのに対して、比較例の場合では、5000枚で20μmを超えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性表面を有する基材上に、少なくとも像様加熱または光エネルギーにより像様露光した領域が、印刷機の印刷工程で除去不能となる画像形成層を有する平版印刷版材料の処理方法において、該平版印刷版材料を印刷機に取り付けて印刷を行う工程の前に、該平版印刷版材料周辺部の一部領域の該画像形成層を除去することを特徴とする平版印刷版材料の処理方法。
【請求項2】
前記画像形成層を除去する領域が、非印刷領域であることを特徴とする請求項1の平版印刷版材料の処理方法。
【請求項3】
前記画像形成層を除去する領域が、印刷機に取り付ける際の平版印刷版材料のくわえ部、またはくわえ尻部であることを特徴とする請求項1又は2記載の平版印刷版材料の処理方法。
【請求項4】
前記画像形成層を除去する領域に、像様に熱または光エネルギーにより画像を記録することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の平版印刷版材料の処理方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の平版印刷版材料の処理方法で処理されたことを特徴とする平版印刷版。

【公開番号】特開2008−100426(P2008−100426A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284865(P2006−284865)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】