説明

平行空気圧インターフェース・プレートを備えたミクロ流体カートリッジ

本発明は、使い捨てのカートリッジにおいて、インターフェース・プレート(101)と流体動作のための装置(102)との間に設けられるミクロ流体カートリッジ(100)の設計に関する。空気圧による作動は、装置とカートリッジとの間の可逆的な空気圧による相互接触を介して実施される。カートリッジの低コスト化と信頼性のために、空気圧駆動体が装置内に一体化して設けられている。カートリッジ内の流体の動作は、閉鎖された複数の区画を形成する使い捨て可能なカートリッジの主表面に取り付けられた可撓性薄膜(105)によって、カートリッジが装置に取り付けられたときのみ、実現される。これらの区画の中の圧力が薄膜の変形を決定し、これにより流体が動作する。この解決法は、高いパワーと空気圧による動作の大きなストロークを活かすと同時に、カートリッジは安価な単純な構造のままであるため、熱や音響的振動のような、インターフェース・プレートを介した他の物理的な移送の導入を容易にする。空気圧による作動のための、チューブのような個々の固定具が不要であるので、多数のアクチュエータを、平坦な空気圧インターフェース・プレートに容易に一体化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロ流体カートリッジにおける流体の動作に関する。本発明は、特に、空気圧装置の平行空気圧インターフェース・プレートに挿入されるミクロ流体カートリッジと、空気圧装置とミクロ流体カートリッジとの間に設けられてミクロ流体カートリッジに接続する又は相互作用するインターフェース・プレートと、かかるカートリッジとかかるインターフェース・プレートとを有するミクロ流体カートリッジの内部における流体動作のためのシステムと、空気圧装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、蛋白質やDNA等の生体サンプル内の分子を診断を目的として検出するためにバイオセンサが使用されている。血液、尿又は唾液内の治療用又は乱用薬物を検出することも望まれている。このような試験は、多様な場面及び環境において、例えば医療用ケアの場面で、又は薬物乱用について例えば道路上等の任意の所望の場所において、利用されるように開発されている。全ての場合において、丈夫で信頼性があり且つ感度の良い装置が必要とされているが、このような装置は計測後に破棄される必要があるため、安価でなくてはならない。
【0003】
このような生化学的分析の実施には、ある程度流体を扱う必要がある。対象分子を検出面で凝固させるために、少なくともサンプル流体が検出装置に導入されなくてはならない。分析の種類に応じて、多少とも複雑なミクロ流体システムが設計されている。サンプルは汚染しているため、サンプルを装置に接触させてはならず、またサンプルを計測中及び計測後にカートリッジの内部で安全に保管しなくてはならない。
【0004】
近年、完全に一体化されたミクロ流体オン・チップ生化学システム又はミクロ流体オン・チップシステムラボが開発されている。このようなミクロ流体システムにおける課題は、例えばポンプや弁等のミクロ作動装置が必要とされる様々な反応チャンバから反応チャンバへの流体の取り扱いである。ポンプ作用や弁作用は多くの方法において実行され得る。例えば分析の種類、動作条件及びコスト条件等の目的に応じて、試薬の分解、培養、凝固及び洗浄等を目的として、流体の作動が様々な方法により実施されている。制御の程度と単純な構造との間には妥協点があり、単純な構造は安価であることと関係している。流体は、ピストンを用いた機械的計量により直接的に作動される場合もあれば、作動されるのではなくいわゆる受動的駆動と称される毛管力により駆動される場合もある。
【0005】
後者はコスト面で有効な解決法であるが、逆流を考慮していない。また、流量が限定されているとともに距離によって一定でなく、そして最も重要な点として、流量は流体の粘度と表面張力とに依存している。所要の流体特性における変更は、使い捨て可能な「ハードウエア」において行われねばならないが、これによりシステムの柔軟性が低くなる。一方、機械的駆動は非常に柔軟であるが、物理的接触を必要とするため、装置の動作寿命に関する問題や汚染、すなわち洗浄に関する問題が生じる。
【0006】
したがって、バイオセンサのような、特に医療用の使い捨て用品のためのミクロ流体システムにおいて、他の安価な流体作動技術に対する需要があるであろう。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、ミクロ流体カートリッジにおける改良された流体動作を提供することであり得る。
【0008】
同様に、記載された実施形態は、ミクロ流体カートリッジと、空気圧インターフェース・プレートと、ミクロ流体カートリッジと空気圧インターフェース・プレートとを備えたシステムと、空気圧装置と、に関する。詳細は述べないが、これらの実施形態の様々な組み合わせにより、相乗効果が生じ得る。
【0009】
本発明の第一の実施形態によれば、空気圧装置の平行空気圧インターフェース・プレートに載置されるミクロ流体カートリッジが提供される。このカートリッジは、3次元流体チャネルを有しており、その内部を空気圧装置の空気圧によるポンプ作用により流体が移送される。更に、ミクロ流体カートリッジは、可撓性薄膜を有している。この可撓性薄膜は平面内を延びている。この可撓性薄膜はカートリッジの外側面を構成している。また、3次元流体チャネルは、カートリッジの内側壁と可撓性薄膜とにより、3次元において空間的に画成されている。可撓性薄膜は、圧力又は真空が当該可撓性薄膜に印加されていないとき、グラウンド状態にある。カートリッジが平行空気圧インターフェース・プレートに載置されると、可撓性薄膜は、このグラウンド状態から、可撓性薄膜の平面に直交する二方向(二つの向き)に、空気圧により変形可能(偏向可能)である。
【0010】
換言すれば、流体は平坦な表面上を移送されるのではなく、3次元的な液チャネルに沿って移動させられる。
【0011】
また、可撓性薄膜は、カートリッジの外側表面の一部である区域において、空気圧により変形可能(偏向可能)であり得る。換言すれば、第一の領域において、可撓性薄膜は流体チャネルに亘って延びており、この第一の領域はカートリッジの外側表面の一部である。この例示的な実施形態によれば、更に、可撓性薄膜は、カートリッジの外側表面の下方の第二の領域において延びていてもよく、これによりこの第二の領域においては、薄膜にカートリッジの外側からアクセスすることはできない。
【0012】
また、「可撓性薄膜のグラウンド状態」とは、圧力及び真空のいずれもが可撓性薄膜に印加されていない状態を述べるものである。この初期状態から、可撓性薄膜はカートリッジの内部に向かって変形可能(偏向可能)であり、且つカートリッジから離れるように変形可能(偏向可能)である。この状態は、例えば図1に示されている。図1において、可撓性薄膜は、薄膜に沿った異なる位置で上方向及び下方向に変形されて、これにより所望の液体移送が行われる。換言すれば、可撓性薄膜は、二方向(二つの向き)に、すなわち、流体チャネルに向かう方向(向き)と流体チャネルから離れる方向(向き)に、変形可能(偏向可能)である。しかしながら、このことは、可撓性薄膜が予め張力を与えられ得ること、又は予め偏向され得ることを排除するものではない。
【0013】
カートリッジは、本実施形態において及び他のいずれの実施形態において、例えば使い捨てのカートリッジであり得る。このカートリッジは、空気圧装置とカートリッジとの間の空気圧による可逆的な(元に戻り得る)相互接続であって、可撓性薄膜により形成される相互接続を介して実施される空気圧による動作を可能にするものである。カートリッジの低コスト化と信頼性のために、空気圧駆動体が装置内に一体化して設けられている。カートリッジ内部の流体チャネルに収容されている流体の動作は、カートリッジの主表面に取り付けられ得る可撓性薄膜の変形により実現される。したがって、カートリッジが空気圧インターフェース・プレートに取り付けられ又はこれに挿入されると、カートリッジの可撓性薄膜と空気圧インターフェース・プレートの各部とによって、複数の区画が形成される。これらの区画の中の圧力が可撓性薄膜の変形を決定し、これにより流体を動作させて流体を移動させる。区画の中の圧力は、別の空気圧装置により発生されたものであってもよい。
【0014】
このようなミクロ流体カートリッジは、高いパワーと空気圧による作動の大きなストロークを活かすと同時に、カートリッジは安価な単純な構造のままであるため、熱や音響的振動のような、インターフェース・プレートを介した他の物理的な移送の導入を容易にする。
【0015】
更に、空気圧による作動のための、チューブのような個々の固定具が不要であるので、多数のアクチュエータが、平坦な空気圧インターフェース・プレートに容易に一体化され得る。
【0016】
換言すれば、空気圧チューブ要素や圧力又は真空発生要素が、ミクロ流体カートリッジには存在せず、また対応する相互連結するインターフェース・プレートにも存在しないため、多数のアクチュエータが容易にインターフェース・プレートに一体化され得る。換言すれば、平面的なミクロ流体カートリッジが設けられ、このミクロ流体カートリッジが平面的な空気圧インターフェース・プレートとともに、カートリッジ内の流体の簡便且つ確実な空気圧による駆動を、カートリッジの中にチューブを設ける必要なしに、可能にし得る。これにより、多数の空気圧要素が簡単に設けられ得る。また、同一平面上に熱、音響又は他のインターフェース・プレートを一体化することが平易になり得る。
【0017】
空気圧要素という用語は、本発明の本実施形態及び他のいずれの実施形態において、可撓性薄膜が空気圧により動作する位置、すなわち弁やポンプ又は更に一般的な相互作用領域を意味する。これらの位置を柔軟に変更できること、及びこれらの位置を近接させ得ることは、本発明の利点である。
【0018】
提供されるミクロ流体カートリッジの本質的な特徴は、空気圧装置によるカートリッジ内の流体の動作の実現にあることが理解されるであろう。空気圧による駆動が可撓性薄膜を利用するという事実、及び薄膜の下方の複数の空気圧チャンバが可逆的に構成されるという事実は、重要である。このことは、カートリッジと空気圧装置との間の分離平面が、これらの空気圧チャンバと交差していることを意味する。
【0019】
換言すれば、カートリッジが取り外されると、空気圧供給チャネル、空気圧チャネル及び空気圧チャンバは開放される。動作する薄膜の下方のチャンバは、カートリッジと装置上のインターフェース・プレートとの組み合わせにより形成される。カートリッジが持ち上げられると、圧力はもはや薄膜に伝達されない。これは、機械的に固定されたチューブと対照をなしている。このようなチューブは本発明によれば薄膜の動作に使用されない。
【0020】
ミクロ流体カートリッジは、空気圧装置と組み合わせて使用され得る。空気圧装置は、空気圧による駆動のための供給チャネルを収容し、且つ流体チャネルを収容するミクロ流体カートリッジに向かう略平坦なインターフェース・プレートを収容している。流体チャネルは、カートリッジが装置に載置されると動作し得る可撓性層により囲まれている。可撓性薄膜を上下に移動させることにより、カートリッジ内部で容積(内部空間)が押しのけられるとともに、薄膜がチャネルに接近して流体チャネル内で弁の機能を果たすことができる。
【0021】
薄膜の偏向ストロークは、例えば図1に示すような、薄膜が空気圧装置の空気圧インターフェース・プレートに接触する位置、及び/又は薄膜がカートリッジ内の薄膜の上部の基板チャンバに接触する位置、との間の高さに基づいている(制御性、制御機構)。
【0022】
換言すれば、ミクロ流体カートリッジは、流体路を覆う可撓性薄膜を備えている。これにより、可撓性薄膜は、いくつかの流体路を収容し得る流体チャネルシステム全体を覆っている。可撓性薄膜は、いずれの場所においても完全な外側表面である必要はない。しかし、可撓性薄膜はカートリッジの全外側表面を構成しているような実施形態も可能である。但し、可撓性薄膜は、常にカートリッジに取り付けられている。カートリッジを空気圧装置に挿入した後、流体をカートリッジ内の流体路に沿って移動させるように、薄膜を空気圧により装置上で局所的に変形(偏向)させる。薄膜は、局所的にカートリッジから離れるように吸い込まれ、又はカートリッジに向かって押圧され、これにより流体路における薄膜の下方の容積(内部空間)が変化する。この容積変化に伴って、流体がカートリッジ内を移送される。更に、カートリッジは、可撓性薄膜とともに、内部を流体が移送可能となる変化する容積を作り出す壁を有し得る。したがって、本発明は、カートリッジとカートリッジを処理する装置との間の、比較的単純な構造を有するインターフェース・プレートを用いて、ミクロ流体カートリッジにおける流体移送を可能にする。インターフェース空気圧チューブの代わりに、カートリッジと装置との間のインターフェース・プレートが可撓性薄膜から形成されており、この可撓性薄膜が、流体がカートリッジの内部を移送されるように、当該装置により変形(偏向)される。
【0023】
カートリッジには空気圧要素や電気要素がないため、カートリッジは安価でも確実な方法により製造され得る。
【0024】
インターフェース・プレートと組み合わされた可撓性薄膜は、空気圧力のみによってカートリッジをインターフェース・プレートに固定する可能性をもたらす。
【0025】
したがって、空気圧装置により発生される空気圧力以外の、例えば螺子等の他の固定媒体が不要となる。これが空気圧インターフェース・プレートが平行インターフェースと称される所以である。換言すれば、可撓性薄膜の変形(偏向)は、カートリッジとインターフェース・プレートとを有する閉鎖された空気圧システムにおいて実施され、この変形(偏向)が固定を導く。薄膜の吸い込みが固定をもたらす。
【0026】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、カートリッジは6つの主外側表面を有する略直方体形状を有しており、可撓性薄膜はカートリッジの主表面のうちの1の表面を形成するとともに、可撓性薄膜は流体チャネルの全域に亘って延びている。
【0027】
この例示的な実施形態は、例えば図2や例えば図8に示されている。
【0028】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、可撓性薄膜に沿った数地点において、可撓性薄膜を空気圧装置の空気圧によるポンプ作用で変形(偏向)させることにより、流体が流体チャネルの始部から流体チャネルの終部まで移送可能となるように、流体チャネルと可撓性薄膜とが互いに対して配置されている。
【0029】
したがって、「空気圧によるポンプ作用」及び「空気圧による駆動」という用語は、まずミクロ流体カートリッジをインターフェース・プレートに、ひいては空気圧装置に固定し、次いでカートリッジ内の流体チャネルの内部での流体の移送が所望の態様で実現されるようにカートリッジの可撓性薄膜を変形させるために、正圧及び/又は負圧を可撓性薄膜の表面に印加することを意味する。換言すれば、薄膜はミクロ流体カートリッジの内側から離れるように吸引され、又は内側に向かって押圧され、これにより流体チャネルにおける可撓性薄膜の下方の容積(内部空間)が変化する。
【0030】
空気圧によるポンプ作用により、可撓性薄膜をこのように移動させることにより、カートリッジ内の流体が移送される。
【0031】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、薄膜が流体チャネルに近接して又は閉鎖して弁作用を提供するように、薄膜は空気圧装置の空気圧によるポンプ作用により変形可能(偏向可能)である。
【0032】
換言すれば、ミクロ流体カートリッジを空気圧インターフェース・プレート及び空気圧装置と組み合わせることにより、流体路が変形された薄膜により閉鎖されるように、正圧及び/又は負圧が薄膜に印加され得る。換言すれば、流体路は別個の区域に空間的に分割され得る。この場合、第一の区域が流体を収容してもよく、第二の区域が流体を含まなくてもよい。これらの区域は、上記の弁作用の提供により空間的に分離可能であり得る。
【0033】
薄膜がインターフェース・プレートの空気圧チャネルを閉鎖するように、すなわち、薄膜がプレートに向かって吸引されるように弁作用が働く場合、下記により詳しく説明するように、この弁作用は、カートリッジをインターフェース・プレートに固定するためにも利用される。
【0034】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、カートリッジは、空気圧制御要素を有さず、且つ空気圧チューブ要素を有さない。
【0035】
換言すれば、本発明は、ミクロ流体カートリッジと装置との間の有利な物理的分離を提供するものであり、この装置が、必要な全ての発電要素及び空気圧発生要素並びに制御要素を有する空気圧インターフェース・プレートを有している。カートリッジは、螺子や固定媒体が必要ないため、迅速且つ容易に交換され得る。
【0036】
本発明のこの例示的な実施形態によれば、カートリッジは、正圧、負圧又は真空の発生と印加の機能を完全に免れ、これらの機能は、例えば、空気圧インターフェース・プレートを有する外部の空気圧装置に設定され得る。したがって、カートリッジのコストを抑えることができる。これは使い捨てミクロ流体カートリッジに非常に重要である。更に、技術面でより複雑でないため、カートリッジの信頼性が増大され得る。
【0037】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、ミクロ流体カートリッジは制御機構を有し、これらの制御機構は、空気圧装置による空気圧によるポンプ作用時に、可撓性薄膜の動作ストロークを制御するように構成されている。
【0038】
更に、本発明の上記及び他のいずれの実施形態の制御機構は、可撓性薄膜を変形(偏向)させたときに生じる弁機能を向上させるようにも構成されている。
【0039】
例えば図1及び図2に示されるように、これらの制御機構は、流体チャネルに沿った特定の箇所において、可撓性薄膜と対向する流体チャネルの空間的境界との間の特定の距離を決定する。換言すれば、これらの制御機構は、流体チャネルに亘っている(流体チャネル内に設けられている)。上記及び下記並びに例えば図1に示すように、カートリッジとインターフェース・プレートとの組み合わせにより、可撓性薄膜の上下の制御機構が緩められ、これにより、正圧又は負圧を可撓性薄膜にインターフェース・プレート内の空気圧チャンバを介して印加することにより、薄膜の規定された所望の変形を生じさせることができる。
【0040】
また、本発明の例示的な実施形態によれば、ゴム製フレームをミクロ流体カートリッジのみの一部とすることが可能である。この場合、ゴム製フレームが、例えばミクロ流体カートリッジに載置され得る。例えば、この形態を平坦なインターフェース・プレートと組み合わせてもよい。
【0041】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、ゴム製フレームと凹部の両方がカートリッジとインターフェース・プレートに設けられ得る。
【0042】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、上記の実施形態のうちの一つの実施形態によるミクロ流体カートリッジと接続する又は相互作用する空気圧インターフェース・プレートであって、ミクロ流体カートリッジと、当該ミクロ流体カートリッジに空気圧によるポンプ作用を与えるための空気圧装置と、の間に設けられる空気圧インターフェース・プレートが提供される。空気圧インターフェース・プレートは、上記の実施形態のうちの一つの実施形態によるミクロ流体カートリッジと、当該ミクロ流体カートリッジに空気圧によるポンプ作用を与えるための空気圧装置と、の間に挿入可能であり得る。挿入可能なインターフェース・プレートは、単純な構造の空気圧装置に対して種々のインターフェース・プレートを用いることを可能にするため、異なる設計の様々なインターフェース・プレートを使用する際の柔軟性が増大する。空気圧インターフェース・プレートは、このインターフェース・プレートが装置に挿入されたときに、当該装置に面する装置側部を有している。また、インターフェース・プレートは、カートリッジがこのインターフェース・プレートに挿入されたときに、当該カートリッジに面するカートリッジ側部を有している。インターフェース・プレートは、装置側部からカートリッジ側部まで、空気圧装置の空気圧流体を通じさせて、ミクロ流体カートリッジの可撓性薄膜の空気圧による駆動を可能とする空気圧チャネルを有し、カートリッジ側部はカートリッジの可撓性薄膜を吸引するための少なくとも1つの凹部を有している。
【0043】
換言すれば、閉鎖された空気圧システムが形成され、そのシステムがまず空気圧力によりカートリッジの固定を可能にし、次いで空気圧によるポンプ作用を許容するように、インターフェース・プレートのカートリッジ側部はカートリッジを受けるように構成されている。したがって、カートリッジをインターフェース・プレートに接続する、つまり装置に接続するための螺子や他の固定媒体は不要である。これが空気圧インターフェース・プレートが平行インターフェースと称される所以である。また、カートリッジを吸引している負圧をオフにするだけで、カートリッジは取り外され得る。
【0044】
したがって、吸い込みは、可撓性薄膜の変形(偏向)を可能にするものとして理解されるべきである。更に、凹部は、カートリッジの一部であり得る。
【0045】
本発明の上記実施形態及び他のいずれの実施形態の空気圧インターフェース・プレートは、ミクロ流体カートリッジの一部であってもよいし、空気圧装置の一部であってもよい。
【0046】
空気圧インターフェース・プレートの下記及び上記の実施形態は、上記及び下記のミクロ流体カートリッジとかかる空気圧インターフェース・プレートとを有するシステムの一部であり得ることが、明示的に言及されるべきである。
【0047】
空気圧インターフェース・プレートは、空気圧装置に一体化されるべき実質的に単独の物理的要素であり得ることが、明示的に言及されるべきである。さらに、上記及び下記の空気圧インターフェース・プレートが、空気圧装置の実質的な構成要素であり、且つそのような空気圧装置に完全に一体化されるようにすることも可能である。
【0048】
空気圧インターフェース・プレートとミクロ流体カートリッジの組み合わせは、例えば図1に示すように、薄膜の下方に複数の空気圧チャンバが構成されることを可能にする。換言すれば、使い捨てカートリッジであり得るカートリッジと装置との間の分離平面は、これらの空気圧チャンバに交差している。
【0049】
これらの空気圧チャンバは、カートリッジをインターフェース・プレートに保持して、インターフェース・プレートとカートリッジとの間の良好な熱的機械的接触を確保するようにも利用され得る。このことは、流体の加熱又は超音波作動等の種々の機能に重要であり得る。
【0050】
また、空気圧による作動点又は熱伝達領域等のような多数の相互作用領域乃至要素が、ミクロ流体カートリッジと空気圧装置と空気圧インターフェース・プレートとのこのような組み合わせに一体化され得る。なぜならば、これらはミクロ流体カートリッジのアクチュエータの下方に配置されるため、更なるフットプリントを必要としないからである。本発明の例示的な実施形態によれば回避されるフットプリントが追加されるという事態は、いずれかの場所にチューブ接続構造と、空気圧による作動が行われるべき地点に向けた別個の供給チャネルとを有する状況に匹敵する。このような状況に対し、本発明によれば、空気圧による接続は、インターフェース・プレートの空気圧チャネルを介するだけで実現可能であるから、更なる空間は不要である。
【0051】
本発明の例示的な実施形態によれば、空気圧インターフェース・プレートのカートリッジ側部と装置側部の少なくとも一方は略平坦である。
【0052】
例えば、空気圧インターフェース・プレートのカートリッジ側部が略平坦である場合、この空気圧インターフェース・プレートを、ミクロ流体カートリッジの略平坦な可撓性薄膜と組み合わせることが可能である。
【0053】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、空気圧インターフェース・プレートは、発熱装置と、アルミニウムからなる熱伝達要素と、銅からなる熱伝達要素と、アルミニウム及び/又は銅の合金からなる熱伝達要素と、ミクロ流体カートリッジまで延びる熱伝達要素を有する発熱装置と、音響エネルギー発生装置と、集束又は非集束超音波により流体を処理する装置と、圧電アクチュエータと、機械的アクチュエータと、磁性アクチュエータと、これらのいずれかの組み合わせと、からなる群から選択される少なくとも1つの要素を有している。
【0054】
換言すれば、カートリッジの中に収容されている流体を加熱する機能が、完全に空気圧インターフェース・プレートに一体化されており、これによりミクロ流体カートリッジが安価に、且つ信頼性のある容易な態様で製造できるという事実が導かれる。複数のカートリッジが、このような空気圧インターフェース・プレートと1つの空気圧装置の唯一の組み合わせとともに使用され得る。このように機能の少ないカートリッジを介してミクロ流体カートリッジの迅速な交換が実現され得る。
【0055】
例えば、加熱要素が、スチールを主体とした断熱材料による空気圧インターフェース・プレートから分離され得る。
【0056】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、空気圧インターフェース・プレートは、スチールと、ステンレス・スチールと、他の化学的耐性を有し且つ適度な熱伝導性を有する材料と、これらのいずれかの組み合わせと、からなる群から選択される材料から形成されている。
【0057】
更に、本発明の他の例示的な実施形態によれば、空気圧インターフェース・プレートは、空気圧要素の周囲に、空気圧チャンバ同士のシールを提供するゴム製機構及び/又は圧縮性機構をも有する。
【0058】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、制御機構を有する空気圧インターフェース・プレートが提供され、これらの制御機構は、空気圧装置によって空気圧によるポンプ作用がもたらされる際の、ミクロ流体カートリッジの可撓性薄膜の動作ストロークを制御するように構成されている。
【0059】
また、これらの制御機構は、圧力が印加されて薄膜がこれらの制御機構の周囲で折り曲がる際に、弁のより優れた閉鎖性を可能にするように適用され得る。
【0060】
例えば、図1及び図2に示すように、制御機構は、方形又は矩形形状を有していてもよく、空気圧によるポンプ作用が適用される際の、カートリッジの薄膜の変形の空間的画定要素として使用され得る。
【0061】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、ミクロ流体カートリッジ内部における流体の作動のためのシステムが提供される。このシステムは、上記実施形態のうちの一つの実施形態によるミクロ流体カートリッジと、上記実施形態のうちの一つの実施形態による空気圧インターフェース・プレートと、を備え、流体チャネル内の流体がこの流体チャネルに沿って移動可能となるように、カートリッジの可撓性薄膜は、空気圧によるポンプ作用により、インターフェース・プレートの空気圧チャネルを介して、変形可能(偏向可能)である。
【0062】
このシステムは、例えば使い捨て可能であり得るカートリッジ内での流体の動作を可能にする。流体の空気圧による動作は、装置内の空気圧流体からカートリッジ内の流体を分離する可撓性薄膜を介して実施される。本システムのコストを抑えつつ信頼性を高めるために、空気圧駆動体は、空気圧装置の内部に一体化され得る。
【0063】
提供されるシステムの本質的な特徴は、カートリッジの中の流体が外部の空気圧装置によって作動又は駆動され得る、すなわち移送され得ること、空気圧による駆動がカートリッジの一部である可撓性薄膜を利用すること、及び空気圧インターフェース・プレート内において可撓性薄膜の下方に形成された空気圧チャンバが可逆的に構成されること、であることが理解されるであろう。
【0064】
他の例示的な実施形態によれば、カートリッジと空気圧インターフェース・プレートは2つの物理的に分離した部品であって、これらの部品は空気圧力によってのみ流体動作のために可逆的に互いを保持する。
【0065】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、可撓性薄膜とインターフェース・プレートのカートリッジ側部は、組み合わされたときに、負圧を空気圧インターフェース・プレートの空気圧チャネルを介して印加することにより、カートリッジが完全にインターフェース・プレートに固定されるように、構成されている。
【0066】
したがって、システムの一部でもあり得る空気圧装置により発生される空気圧力以外に、螺子等の他の固定媒体は不要である。換言すれば、可撓性薄膜の変形は、カートリッジとインターフェース・プレートとを有する閉鎖された空気圧システムにおいて実施され、この変形が固定を導く。薄膜の吸い込みが固定をもたらす。
【0067】
他の例示的な実施形態によれば、システムは、ミクロ流体カートリッジに空気圧によるポンプ作用を生じさせる空気圧装置を有する。
【0068】
したがって、空気圧によるポンプ作用には、正圧及び負圧の発生と印加が含まれる。
【0069】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、カートリッジとインターフェース・プレートとは、可撓性薄膜を介して、及びインターフェース・プレートのカートリッジ側部を介して、互いに機械的に接続されている。
【0070】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、流体チャネル内の流体の移送は、空気圧チャネルを介した空気圧によるポンプ作用によってのみ開始される。
【0071】
この例示的な実施形態は、例えば以下の図面のうちの図1に示されている。カートリッジとインターフェース・プレートとが物理的に接続されると、閉鎖体が形成されるのではなく、いくつかの空気圧チャンバが構成される、すなわち形成される。可撓性薄膜の下方のこれらの空気圧チャンバは、空気圧インターフェース・プレートの凹部の内部にある。
【0072】
また、これらのチャンバは、カートリッジをインターフェース・プレートに保持して、インターフェース・プレートとカートリッジとの間の良好な熱的機械的接触を確保するようにも利用され得る。このことは、流体の加熱又は超音波作動等の種々の機能に重要であり得る。
【0073】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、システムは制御機構を備え、これらの制御機構は可撓性薄膜の上下に配置される。可撓性薄膜の上部の制御機構は、カートリッジの流体チャネルの内部における流体移送の障害物として配置される。更に、空気圧によるポンプ作用時に可撓性薄膜が変形して、流体が障害物を避けて通過し得るように、可撓性薄膜が制御機構により機械的に支持されている。
【0074】
換言すれば、可撓性薄膜の長手延出方向に沿った制御機構の空間的分布又は空間的配置は、薄膜が弛緩した状態にあるとき、又は空気圧チャンバに正圧を印加することにより薄膜が制御要素に押圧されているとき、特定の制御要素は流体の移動のために流体チャネルをブロックしているという事実を導く。対応する空気圧によるポンプ作用を適用することにより、すなわち、これは正圧及び/又は負圧を、インターフェース・プレート内の対応する空気圧チャネルに印加することを意味するが、これにより制御機構により依然として流体チャネルがブロックされることなく、流体チャネルに沿って流体が移送され得るように、薄膜が変形することとなる。
【0075】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、システムは複数の空気圧チャンバを含み、可撓性薄膜とインターフェース・プレートとの間でこれらの空気圧チャンバは可逆的に構成される。
【0076】
換言すれば、空気圧インターフェース・プレートのカートリッジ側部の表面と組み合わされたカートリッジの外側表面を形成しているカートリッジの可撓性薄膜の接触面が、空気圧装置(空気圧器)の内部において薄膜の下方に特定の凹部をもたらす。この空気圧装置(空気圧器)は、空気圧インターフェース・プレートに接続され得る外部の空気圧装置により、正圧及び又は負圧を薄膜に印加するために使用され得る。
【0077】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、システムは、装置側部からカートリッジ側部まで、空気圧装置の空気圧流体を通過させて、ミクロ流体カートリッジの可撓性薄膜の空気圧による駆動を可能とする複数の空気圧チャネルを有するインターフェース・プレートを含む。したがって、圧力を印加する工程と負圧を印加する工程を含む交互の空気圧によるポンプ作用が流体チャネルに沿った流体の移送を導くように、可撓性薄膜とインターフェース・プレートとが相互接続されるように構成されている。
【0078】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、ミクロ流体カートリッジの内部における流体移送のために、空気圧によるポンプ作用をミクロ流体カートリッジに生じさせるための空気圧装置が提供される。空気圧装置は、ミクロ流体カートリッジの可撓性薄膜を空気圧により動作させる手段と、上記及び下記の実施形態のうちの1の実施形態による空気圧インターフェース・プレートと、を備えている。空気圧インターフェース・プレートは、装置にミクロ流体カートリッジの可撓性薄膜を空気圧により動作させる手段を持たせたまま、且つ本発明の空気圧インターフェース・プレートの受容に適した状態としたまま、装置から取り外し可能である。
【0079】
本発明の主旨として、ミクロ流体カートリッジと空気圧インターフェース・プレートとの組み合わせを提供することが理解されるであろう。本発明において、可撓性薄膜により形成されるミクロ流体カートリッジの外側面は、空気圧装置から発生される正圧又は負圧を当該薄膜に提供する空気圧インターフェース・プレートにより動作させられる。この動作が薄膜の変形(偏向)をもたらし、この変形(偏向)によりカートリッジに収容されている流体の流体移送が、カートリッジ内の流体チャネルを介して開始される。
【0080】
本発明の実施形態が種々の実施例を参照して記載されることに注意すべきである。特に、いくつかの実施形態はカートリッジに関する請求項を参照して記載されるが、他の実施形態は空気圧インターフェース・プレートに関する請求項、システムに関する請求項、又は装置に関する請求項を参照して記載される。しかしながら、当業者には、上記及び下記の説明から、他に別段の記載がない限り、1種類の実施例に属するあらゆる組み合わせ又は特徴の他に、他の実施例に関する特徴の組み合わせもが本出願に開示されていると考えられることが理解されるであろう。
【0081】
本発明の上記の態様及び更なる態様、特徴及び利点は、実施形態の例を参照して以下に記載され説明される実施形態の例からも導き出され得る。本発明は、実施形態の例を参照して以下に更に詳細に記載されるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、本発明の例示的な実施形態による、ミクロ流体カートリッジと、空気圧インターフェース・プレートと、空気圧装置とを概略的に示す。
【図2】図2は、本発明の例示的な実施形態による、ミクロ流体カートリッジと空気圧インターフェース・プレートとを概略的に示す。
【図3】図3は、本発明の例示的な実施形態による、ミクロ流体カートリッジと空気圧インターフェース・プレートとを概略的に示す。
【図4】図4は、本発明の例示的な実施形態による、ミクロ流体カートリッジと空気圧インターフェース・プレートとを概略的に示す。
【図5】図5は、本発明の例示的な実施形態による、ミクロ流体カートリッジと空気圧インターフェース・プレートとを概略的に示す。
【図6】図6は、本発明の例示的な実施形態による、ミクロ流体カートリッジと空気圧インターフェース・プレートとを備えた空気圧装置を概略的に示す。
【図7】図7は、本発明の例示的な実施形態による、ミクロ流体カートリッジと空気圧インターフェース・プレートとが内部で一体化可能な装置を概略的に示す。
【図8】図8は、本発明の例示的な実施形態によるミクロ流体カートリッジを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0083】
図において、類似する又は関連する部品には、同一の参照符号が付されている。図面中の図は概略的なものであり、縮尺は完全ではない。
【0084】
図1の上部には、第一の状態にある、ミクロ流体カートリッジ100の内部における流体作動のためのシステム121が示されている。図1の下部には、第二の状態にあるシステム121が示され、この状態においてはカートリッジの内部に収容された流体104が移送済みである。図示された上方及び下方のシステム121はいずれも同じ構成要素からなる。
【0085】
図1は、空気圧装置の平行空気圧インターフェース・プレート101に挿入されるためのミクロ流体カートリッジ100を示している。このカートリッジは、3次元流体チャネル103を有しており、その内部を流体104が移送される。更に、カートリッジは可撓性薄膜105を有し、この可撓性薄膜は平面に亘って延びている。この平面は方向107に沿って延びている。また、可撓性薄膜はカートリッジの外側表面を構成しており、流体チャネルはカートリッジの壁部と可撓性薄膜とにより空間的に画成されている。正圧(加圧)、負圧又は真空が可撓性薄膜に印加されていないとき、可撓性薄膜は弛緩した状態にある。可撓性薄膜は、この弛緩した状態から可撓性薄膜の平面に直交する二方向に、空気圧により変形可能(偏向可能)である。換言すれば、薄膜105は、方向106において、最初に上方向に次いで下方向に方向付けられ得る。
【0086】
可撓性薄膜は、空気圧によるポンプ作用108により、数個の地点109、110、111及び114において変形(偏向)されることが理解されるであろう。したがって、空気圧によるポンプ作用は、例えば137のような空気圧チャンバ内の薄膜に、正圧及び/又は負圧が印加されることを意味する。外部空気圧装置102は、このような空気圧によるポンプ作用108を作り出すことができる。空気圧インターフェース・プレート101内の2つの空気圧チャネル122及び123に対応する負圧を印加することにより、可撓性薄膜105はこれらの空気圧チャネルの上方にある凹部内に吸い込まれる。図1の下図に示すように、空気圧インターフェース・プレートの空気圧チャネル内の圧力状況を変化させることにより、可撓性薄膜は、カートリッジの中央の空気圧チャネルにおいてカートリッジの内側に向かって押圧される。また、負圧が右側の空気圧チャネル138に印加されると、流体は図1の左側から図1の右側へと、流体チャネルの内部を移送される。
【0087】
図1に示すように、インターフェース・プレートは、このインターフェース・プレートが装置102に挿入されたときに、当該装置に面する装置側部119を有している。更に、インターフェース・プレートは、カートリッジがこのインターフェース・プレートに挿入されたときに、当該カートリッジに面するカートリッジ側部120を有している。空気圧チャネル122、123及び138は、装置側部からカートリッジ側部へ、例えば空気等の空気圧流体を通過させて、ミクロ流体カートリッジの可撓性薄膜の空気圧による駆動を可能にするために設けられている。凹部124乃至126は、可撓性薄膜がそれらの凹部に吸い込まれることを許容する。図1の下部に示すように、中央の空気圧チャネル122において、薄膜は流体チャネルに近接してこの流体チャネル内部の弁114となる。
【0088】
対応する態様で正圧及び/又は負圧を順次印加するこのような方法を適用することにより、ミクロ流体カートリッジ内において、流体チャネルの始部112から流体チャネルの終部113へと、流体を移送することができる。
【0089】
空気圧チャネルと凹部を断面において見たとき、インターフェース・プレートのカートリッジ側部が、凹部を有した段状表面と、T字状に形成された空気圧チャネルを有していることが理解されるであろう。
【0090】
換言すれば、本実施形態は、流体路を覆う外部可撓性薄膜を含むカートリッジを提供するものである。カートリッジを装置に挿入した後、流体が流体路に沿って移動するように、薄膜が装置の空気圧により局所的に変形(偏向)される。薄膜は、局所的にカートリッジから離れるように吸引され又はカートリッジに向かって押圧されることにより、流体チャネルである流体路内における、流体がカートリッジを通過して移送される薄膜の下方の容積を変化させる。カートリッジは、流体が移送され得るようにする容積の変化を、可撓性の膜とともに画成する壁部を、有し得る。
【0091】
図2は、ミクロ流体カートリッジ100と、空気圧インターフェース・プレート101と、を有するシステム121を示す。空気圧装置(図示せず)も含まれ得る。
【0092】
インターフェース・プレートは、略平坦であってもよく、空気圧チャンバの改善されたシール性のための機構を含んでもよく、及び/又はカートリッジの可撓性薄膜の動作ストロークを制御する機構を含んでもよい。図3に示す他の実施形態において、これらのストローク制御機構127、128、129及び130並びに115及び116は、カートリッジ内で一体化されている。
【0093】
図3は、空気圧インターフェース・プレート101のカートリッジ側のストローク制御機構127乃至130を示す。
【0094】
図4は、カートリッジ100とインターフェース・プレート101とを有するシステム121であって、ゴム製フレーム139がインターフェース・プレートの一部をなし、凹部140及び141がカートリッジとインターフェース・プレートとにそれぞれ部分的に存在している、システム121を示す。
【0095】
更に、本発明の他の例示的な実施形態によれば、ゴム製フレームはミクロ流体カートリッジのみの一部とすることも可能である。この場合、ゴム製フレームは、例えばミクロ流体カートリッジに接して配置される。例えば、この実施形態を、平坦なインターフェース・プレートと組み合わせてもよい。
【0096】
本発明の他の例示的な実施形態によれば、ゴム製フレームと凹部の両方が、カートリッジとインターフェース・プレートとに設けられ得る。
【0097】
図5に示されるように、上記及び下記のインターフェース・プレートは、装置のインターフェース・プレートを貫通するアクチュエータ間の領域を真空131とすることにより、カートリッジを保持するよう使用され得る。更に、インターフェース・プレート101のカートリッジ側部において、ゴム製フレーム139が適用され、これは参照符号139として図8にも表されている。これらのゴム製フレームは、空気圧チャンバ同士の密着を可能にする。アクチュエータは、ミクロ流体カートリッジ100の底面(装置)側において空気圧チャネルに取り付けられている。したがって、アクチュエータは、薄膜が空気圧システムにより可逆的に変形(偏向)される全ての箇所にある。真空によりカートリッジを保持したい領域において、薄膜は偏向されない。更に、別の層を外側(薄膜の上部)に適用して、真空の力による薄膜の層割れを回避することも可能である。
【0098】
図6に、空気圧インターフェース・プレート101を備えた空気圧装置102を示す。この装置は、空気圧スイッチとヒータとを有してもよく、これらは図示の箱体の内部で一体化されている。更に、装置102の内部に、空気圧チューブ1が含まれる。このような装置の内部で空気圧スイッチとヒータとが一体化されている。
【0099】
図7は、本発明の他の例示的な実施形態によるシステム121を示す。このシステムは、空気圧装置102と、ミクロ流体カートリッジ(図7に図示せず、図8に図示)を収容するように構成された空気圧インターフェース・プレート101と、を有している。インターフェース・プレートの内部に数個のヒータ135、136が示されており、更に空気圧チャネル122、123及び138が示されている。更にまた、凹部124、125及び126が図7に示されている。図示の空気圧インターフェース・プレート101は、図2に示すインターフェース・プレートに対応する。図5にも示されるゴム製フレーム139も明確に示されている。
【0100】
図8は、例えば図7のインターフェース・プレート101と一体化され得る、したがって図示の装置102に挿入可能なミクロ流体カートリッジ100を示す。図7の装置102に対応するこのカートリッジは、図7に示す装置により駆動可能な14個の個別のアドレス可能な弁を有している。したがって、駆動という用語は、空気圧によるポンプ作用を意味する。
【0101】
例えば、個々の区画を安定的にシール可能な1.5バール以下の正圧を弁に印加することにより、弁は閉鎖され得る。10秒に1mlより大きいポンプ速度が実現され得る。これらは単なる例示の値である。これより高い又は低い他の圧力、及びこれより早い又は遅い他のポンプ速度も実現され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧装置(102)の平行空気圧インターフェース・プレート(101)に載置されるミクロ流体カートリッジ(100)であって、
その内部で流体(104)が移送される3次元流体チャネル(103)と、
可撓性薄膜(105)と、を備え、
前記可撓性薄膜は、面状に延びており、
前記可撓性薄膜は、前記カートリッジの外側面の一部であり、
前記3次元流体チャネルは、前記カートリッジの内側壁と前記可撓性薄膜とにより、3次元において空間的に画成されており、
前記可撓性薄膜は、圧力又は吸引が当該可撓性薄膜に行われていないとき、グラウンド状態にあり、
前記カートリッジが前記平行空気圧インターフェース・プレート上に載置されると、前記可撓性薄膜は、前記グラウンド状態から、前記可撓性薄膜の面に直交(106)する二方向に、空気圧により変形可能である、ミクロ流体カートリッジ。
【請求項2】
前記可撓性薄膜に沿った数地点(109、110、111、114)において、当該可撓性薄膜を前記空気圧装置の空気圧によるポンプ作用(108)で変形させることにより、流体が前記流体チャネルの始部(112)から前記流体チャネルの終部(113)まで移送可能となるように、前記流体チャネルと前記可撓性薄膜とが互いに対して配置されている、請求項1に記載のミクロ流体カートリッジ。
【請求項3】
前記薄膜が前記流体チャネルを閉鎖して弁(114)作用を提供するように、当該薄膜は前記空気圧装置の空気圧によるポンプ作用により変形可能である、請求項1又は2に記載のミクロ流体カートリッジ。
【請求項4】
前記カートリッジは、空気圧制御要素を有さず、且つ空気圧チューブ要素(133)を有さない、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のミクロ流体カートリッジ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに一項に記載のミクロ流体カートリッジ(100)に接続する空気圧インターフェース・プレート(101)であって、前記ミクロ流体カートリッジと、空気圧により当該ミクロ流体カートリッジを固定するとともに空気圧によるポンプ作用を当該ミクロ流体カートリッジに与えるための空気圧装置(102)との間に設けられる空気圧インターフェース・プレートであって、
前記インターフェース・プレートが前記装置に入れられたときに、当該装置に面する装置側部(119)と、
前記カートリッジが前記インターフェース・プレートに載置されたときに、当該カートリッジに面するカートリッジ側部と、
前記装置側部から前記カートリッジ側部まで前記空気圧装置の空気圧流体が通じており、前記ミクロ流体カートリッジの可撓性薄膜の空気圧による駆動を可能とする空気圧チャネル(122、123、138)と、を備える、空気圧インターフェース・プレート。
【請求項6】
前記カートリッジ側部は、負圧が前記可撓性薄膜に加えられたときに、前記カートリッジの当該可撓性薄膜を吸引するための少なくとも1つの凹部(124、125、126)を有している、請求項5に記載の空気圧インターフェース・プレート。
【請求項7】
発熱装置(135、136)と、アルミニウムからなる熱伝達要素と、銅からなる熱伝達要素と、アルミニウム及び/又は銅の合金からなる熱伝達要素と、前記ミクロ流体カートリッジまで延びる熱伝達要素を有する発熱装置と、音響エネルギー発生装置と、集束又は非集束超音波により流体を処理する装置と、圧電アクチュエータと、機械的アクチュエータと、磁性アクチュエータと、これらのいずれかの組み合わせと、からなる群から選択される少なくとも1つの要素を備える、請求項5又は6に記載の空気圧インターフェース・プレート。
【請求項8】
スチールと、ステンレス・スチールと、ガラスと、エラストマーと、ポリマーと、他の化学的耐性を有し且つ適度な熱伝導性を有する材料と、これらのいずれかの組み合わせと、からなる群から選択される材料から形成されている、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の空気圧インターフェース・プレート。
【請求項9】
ミクロ流体カートリッジの内部における流体動作のためのシステム(121)であって、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のミクロ流体カートリッジと、
請求項5乃至8のいずれか一項に記載の空気圧インターフェース・プレートと、
を備え、
流体チャネル内の流体が当該流体チャネルに沿って移動可能となるように、前記カートリッジの可撓性薄膜は、前記インターフェース・プレートの空気圧チャネルを介した空気圧によるポンプ作用により、変形可能である、システム。
【請求項10】
前記カートリッジと前記空気圧インターフェース・プレートは2つの物理的に分離した構成要素であって、これらの部品は、空気圧のみによって、流体動作のために可逆的に互いを保持する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記可撓性薄膜と前記インターフェース・プレートのカートリッジ側部は、組み合わされたときに、前記空気圧インターフェース・プレートの前記空気圧チャネルを介して負圧とすることにより、前記カートリッジが完全に前記インターフェース・プレートに固定されるように、構成されている、請求項9又は10に記載のシステム。
【請求項12】
空気圧によるポンプ作用を前記ミクロ流体カートリッジに生じさせるための空気圧装置を更に備える、請求項9乃至11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
制御機構(115、116)を更に備え、
前記制御機構は前記可撓性薄膜の上下に配置されており、
前記可撓性薄膜の上部の前記制御機構は、前記流体チャネルの内部における流体移送の障害物として配置されており、
空気圧によるポンプ作用時に前記可撓性薄膜が変形して、流体が前記障害物を避けて通過できるように、前記可撓性薄膜が前記制御機構により機械的に支持されている、請求項9乃至12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記可撓性薄膜と前記インターフェース・プレートとの間に、空気圧チャンバが可逆的に構成される、請求項9乃至13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
ミクロ流体カートリッジ(100)の内部における流体移送のために、空気圧によるポンプ作用を前記ミクロ流体カートリッジに生じさせるための空気圧装置(102)であって、
前記ミクロ流体カートリッジの可撓性薄膜を空気圧により動作させる手段と、
請求項5乃至8のいずれか一項に記載の空気圧インターフェース・プレートと、を備える、空気圧装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2013−508715(P2013−508715A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534801(P2012−534801)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054520
【国際公開番号】WO2011/048521
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(511238284)バイオカルティス、ソシエテ、アノニム (2)
【氏名又は名称原語表記】BIOCARTIS SA
【Fターム(参考)】