説明

幹細胞及び前駆細胞を培養する方法

本願は、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を表面上で培養する、展開させる又は成長させる方法であって、上記表面及び上記細胞に結合するリガンドを介して上記細胞を上記表面上に付着させることを含む、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を表面上で培養する、展開させる又は成長させる方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2009年6月11日付けで出願された米国仮特許出願第61/186,310号及び2010年4月13日付けで出願された米国仮特許出願第61/323,779号(その内容全体が参照により援用される)の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
幹細胞、前駆体、誘導多能性幹細胞又は他の非接着性細胞を培養するか又は増殖させる分野において存在する問題は、どのようにして後の意図された使用(移植又は下流の分化を含む)を妨げないように細胞を培養するかということである。プラスチック製の培養(growth)フラスコ内で培養することのできる、プラスチックに接着する大抵の細胞とは異なり、幹細胞は非接着性であり、したがって伝統的な(traditional)方法を用いて成長させることができない。しかしながら、幹細胞は線維芽細胞の層上で成長する。これらの「フィーダー細胞」層は、接着のための表面を提供し、幹細胞の成長及び生存に必要とされる、未だ特性化されていない成長因子の混合物を細胞に供給する。ごく最近になって、研究者らは、マトリゲル等の細胞外マトリックスに由来する成分に幹細胞を付着させることによって幹細胞を培養することが可能となった。幹細胞はこれらの表面様基質に接着するが、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)と線維芽細胞フィーダー細胞から回収された分泌物との両方を含有する成長培地において培養しなくてはならない。これらの方法はどちらも細胞によって分泌された特性化されていない因子の環境を用いるため、どのようにして又はなぜこれらの方法が幹細胞の増殖を促進するかは完全には明らかになっていはいない。マトリゲル表面上で培養した場合に幹細胞がより急速に分化することが報告されている。いずれかの方法、すなわちフィーダー細胞又はマトリゲル+フィーダー細胞に由来する馴化培地によって成長させた幹細胞は、自発的に分化する。分化幹細胞は、隣接細胞にも分化を開始させる因子を分泌する。したがって、技術者はおよそ7日毎に、未分化のように見えるこれらの幹細胞コロニー又はコロニー部分のみを手作業で解離させて、採取しなくてはならない。次いで、成長を継続するために採取した細胞を再プレーティングする。意図された目的に十分な未分化細胞を採取することができるまでこの手順を繰り返す。幹細胞を培養するこれらの方法は、本業界にとって現行の技術水準である。
【0003】
実質的にいかなる種類の幹細胞又は誘導多能性幹細胞の大規模成長でも、これらの細胞のハイスループット採取を可能にする新たな方法の開発が必要とされている。
【0004】
現行の方式は幹細胞を線維芽細胞フィーダー細胞上で成長させることであるが、そこからの唯一の採取方法は、顕微鏡下で手作業で解離して、「良質な」細胞を単離し、続いて再プレーティングすることによるものである。この手順は主観的であり、時間がかかるために不完全である。技術者の主観的基準ではなく分子認識に基づいて細胞が選択される、自動化可能な採取方法及び所望の細胞を混合プールから精製する自動化可能な方法が必要とされている。
【0005】
幹細胞を培養する現行の技術水準の方法は、1)労働集約的であり、2)大規模な成長には本質的に不適合であり、3)馴化培地等の特性化されていない因子に依存し、4)幹細胞を培養フラスコに接着させるのに細胞又は細胞産物を必要とし、5)ヒト幹細胞を不可逆的に変化させる可能性のある非ヒト細胞及び細胞抽出物をしばしば使用するため不十分である。幹細胞の成長を可能にする個別の因子が特定されれば大幅な改善となる。必要かつ十分な成長因子を添加しさえすれば、自発的な分化が最小限に抑えられると考えられる。顕微鏡下で手作業での解離という現行の方法よりも、大規模な成長に適合した方法で細胞を安全に採取することができれば、更なる大幅な改善となる。現在は、マトリゲル上で成長させた幹細胞は、例えばトリプシンを用いた酵素的切断によって採取することができる。通常は、未分化のコロニー又はコロニー部分を手作業で解離させた後、トリプシン又はコラゲナーゼ等の酵素で消化する。しかしながら、トリプシンは重大な細胞死を引き起こし、マトリゲル上での幹細胞の連続継代が異常核型を生じることが報告されている。これは、トリプシンでの採取に起因するか、又はマトリゲルがマウス肉腫細胞に由来する細胞及び分泌物の混合物であることに起因するようである。非ヒトフィーダー細胞は、得られる幹細胞を完全にヒトではなくなるように変化させることが疑われている。例えば、グリコシル化パターン及び他の翻訳後修飾がフィーダー細胞種の特性に与えられ得ることが疑われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、幹細胞の成長を支持する無細胞方法を開発すれば、現行の技術水準と比べて大きな改善となる。完全に特性化された個別の作用物質(可能な限り多くが合成作用物質である)を使用して幹細胞を成長させて、採取することができれば更に大きな改善となる。ヒト療法に好適な細胞を産生させるには、確定可能な因子のみを含む細胞を培養する方法を開発すれば、現行の技術水準と比べて大きな改善となる。理想的には、確定された成分は非ヒト成分を含まないものとする。組換えタンパク質又は合成成分が好ましい。ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、そのキメラ又は誘導体を含む抗体が、それらの産生に高度に再現性があり、それらが強固であり、例えばプロテインA又はプロテインGを用いた親和性枯渇(affinity depletion)によって、採取した細胞から容易に取り出すことができることから特に好ましい
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を表面上で培養する、展開させる又は成長させる方法であって、前記表面及び前記細胞に結合するリガンドを介して前記細胞を前記表面上に付着させることを含む、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を表面上で培養する、展開させる又は成長させる方法に関する。前記リガンドは直接的に又は媒介物を介して間接的に前記表面に結合し得る。前記媒介物は化学リンカー若しくは別のタンパク質、又はそれらの組み合わせであり得る。前記タンパク質はプロテインA又はプロテインGであり得る。特に、前記リンカーは感光性又は化学物質感応性であり得る。また前記リガンド又は前記媒介物は、前記表面に非特異的に吸着し得るか、又はアフィニティータグ−結合パートナー相互作用によって前記表面に共有結合的に連結若しくは付着し得る。前記リガンドはポリマーに結び付き得る。特定の実施の形態では、前記リガンドは、前記幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞上で発現されたポリペプチドに特異的に結合し得る。前記細胞の表面上の前記ポリペプチドは、MUC1若しくはMUC1、SSEA3、SSEA4、Tra 1−81又はTra 1−60であり得る。前記リガンドが抗体又は成長因子であり得る。好ましくは、前記抗体がPSMGFR又はC−10 PSMGFRに特異的に結合し得る。好ましくは、前記成長因子は野生型NM23若しくはNM23−S120G突然変異体、又はbFGFであり得る。
【0008】
別の態様では、本発明は、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を培養する方法であって、前記細胞を、PSMGFRの配列を有するペプチドに結合する作用物質を含有する培地に曝露する、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を培養する方法に関する。これに関して、前記作用物質は抗体であり得るか、又は前記作用物質は野生型NM23、若しくはNM23−S120G突然変異体であり得る。
【0009】
更に別の態様では、本発明は、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を培養する方法であって、前記細胞を、MUC1陽性がん細胞から分泌された作用物質を含有する培地に曝露することを含む、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を培養する方法に関する。前記MUC1陽性細胞はT47D、ZR−75−30又はZR−75−1であり得る。
【0010】
更に別の態様では、本発明は、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を培養する方法であって、前記細胞を、MUC1陽性がん細胞に由来する馴化培地に曝露することを含む、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を培養する方法に関する。前記MUC1陽性細胞は特に、T47D、ZR−75−30又はZR−75−1であり得る。
【0011】
一態様では、使用される表面はマトリゲルではないのが好ましく、線維芽細胞フィーダー細胞が存在すれば、細胞を取り出す際の手作業での解離プロセスもない。
【0012】
別の態様では、本発明は、上記の方法によって成長させた細胞から細胞を採取する方法であって、前記細胞が前記リガンド又は前記表面との結合から放出されるように、前記リガンドに結合する競合分子を添加することを含む、上記の方法によって成長させた細胞から細胞を採取する方法に関する。
【0013】
更に別の態様では、本発明は、上記の方法によって成長させた細胞から細胞を採取する方法であって、前記細胞が前記表面から放出されるように、前記細胞に直接的又は間接的に付着した前記表面に結合したリンカーを切断することを含む、上記の方法によって成長させた細胞から細胞を採取する方法に関する。
【0014】
更に別の態様では、本発明は、細胞の分化状態を特定する方法であって、前記細胞に結合する抗MUC1抗体を使用することを含み、抗MUC1抗体に対する正のシグナルが多能性細胞状態を示し、非短縮型MUC1への結合を示す細胞が分化細胞状態を示す、細胞の分化状態を特定する方法に関する。この方法は、細胞を幹細胞及び幹様細胞又は誘導多能性幹細胞、並びに新たに分化する細胞の混合集団から分離することを更に含み得るが、前記細胞に結合する抗MUC1抗体を使用することを含み、抗MUC1抗体に対する正のシグナルが多能性細胞状態を示し、非短縮型MUC1への結合を示す細胞が分化細胞状態を示す。特に、この方法は、前記細胞を、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞のマーカーに対する抗体と接触させることを更に含み得るが、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞のマーカーに対する正のシグナルが、多能性幹細胞状態の存在を示す。特に、前記細胞を抗MUC1抗体及び抗Tra 1−81抗体、抗Tra 1−60抗体、SSEA3抗体又はSSEA4抗体と接触させることができる。
【0015】
更に別の態様では、本発明は、がん幹細胞を前記細胞に結合する抗MUC1抗体を用いて検出する方法であって、抗MUC1抗体に対する正のシグナルが、がん幹細胞を示す、がん幹細胞を前記細胞に結合する抗MUC1抗体を用いて検出する方法に関する。この方法は、前記細胞を幹細胞マーカーに対する抗体と反応させることを更に含み得るが、幹細胞マーカーに対する正のシグナルが、がん幹細胞の存在を示す。
【0016】
更に別の態様では、本発明は、表面上での幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞の培養、展開又は成長を調節し、その分化を阻害する方法であって、前記細胞を前記表面に、直接的に又は前記細胞に結合するリガンドを介して間接的に付着させること、及び前記細胞をPSMGFRの配列を有するペプチドに結合する作用物質を含有する培地に曝露することを含む、表面上での幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞の培養、展開又は成長を調節し、その分化を阻害する方法に関する。前記作用物質がMUC1を二量化して、成長を促進し、分化を阻害し得るか、又は前記作用物質がMUC1の二量化を阻害して、分化を促進し得る。
【0017】
更に別の態様では、本発明は、細胞型を分離する方法であって、異なる細胞型、又は細胞段階若しくは細胞型を特定する特異的マーカーに対して親和性を有する様々なリガンドについて表面上の空間アドレスを作成すること、及び前記細胞を前記表面に添加することを含み、前記細胞が、前記細胞の結合するリガンドに応じて空間的に分離されている、細胞型を分離する方法に関する。前記表面が粒子又はナノ粒子であり得る。
【0018】
更に別の態様では、本発明は、宿主の体内に、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞のリガンドが付着した表面を移植する方法に関する。前記宿主が患者であり得る。特に、前記リガンドが、前記宿主の幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞の成長因子であり得る。
【0019】
更に別の態様では、本発明は、宿主の体内に、表面及び細胞に結合するリガンドを介して付着した細胞を有する表面を移植する方法に関する。
【0020】
更に別の態様では、本発明は、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞をin vivoで増殖させる方法であって、宿主の体に、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞のリガンドが付着した表面を投与することを含む、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞をin vivoで増殖させる方法に関する。
【0021】
更に別の態様では、本発明は、組成物であって、プロテインA又はプロテインGが親和性相互作用によって結合した表面であって、前記プロテインA又は前記プロテインGが、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞上で特異的に発現されるポリペプチドに特異的な抗体に結合する、プロテインA又はプロテインGが親和性相互作用によって結合した表面、及びMUC1二量化剤を含む、組成物に関する。前記親和性相互作用が前記表面とのNTA−Niの相互作用によるものであり得る。前記ポリペプチドが、MUC1若しくはMUC1、SSEA3、SSEA4、Tra 1−81又はTra 1−60であり得る。前記MUC1二量化剤が、野生型NM23又はNM23−S120G突然変異体であり得る。
【0022】
更に別の態様では、本発明は、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を増殖させる方法であって、プロテインA又はプロテインGが親和性相互作用によって結合した表面であって、前記プロテインA又は前記プロテインGが、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞上で特異的に発現されるポリペプチドに特異的な抗体に結合する、プロテインA又はプロテインGが親和性相互作用によって結合した表面を、前記細胞を含有するサンプルと、及びMUC1二量化剤と相互作用させることを含む、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を増殖させる方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】マトリゲルに付着したヒト胚性幹細胞(H9)が、標準的なbFGF及び線維芽細胞フィーダー細胞に由来する馴化培地中で培養した場合のより少ない細胞数及びより大きな分化と比較して、最小培地中の抗MUC1において培養した場合に本質的に100%の多能性(OCT4+)をもって成長することを示す図である。DAPIによって全ての細胞の核を染色する。点線はコロニーの未分化部分の境界を画定する。抗MUC1で処理したウェルにおいては、未分化幹細胞がウェルの限界まで成長した。
【図2】抗MUC1及び最小培地単独におけるマトリゲル上でのヒト胚性幹細胞の18回の継代の後、BG01v/hOGの核型が変化しなかったことを示す図である。
【図3】抗MUC1及び最小培地単独においてマトリゲル上で培養したヒト胚性幹細胞が、3つの生殖系列へと分化することが可能であったことを示す図である:A)OCT4陰性であり、細胞が分化したことを意味する;B)αフェトプロテインに陽性であり、内胚葉生殖系列に沿った分化を意味する;C)ネスチンに陽性であり、外胚葉生殖系列への分化を意味する;及びD)平滑筋アクチンに陽性であり、中胚葉生殖系列への分化を意味する。
【図4】抗MUC1抗体をコーティングした表面が、最小幹細胞培地単独又はbFGF+線維芽細胞フィーダー細胞に由来する馴化培地のいずれで培養するかに関わらず、幹細胞の成長を支持することを示す図である。異なる表面上にコーティングした無関連抗体は、幹細胞接着を引き起こさず、細胞は24時間以内に死滅した。
【図5】抗MUC1及び最小培地を含有する培地中での複数回の継代後のマトリゲルに付着したヒト幹細胞の写真を示す。左側の写真は、全ての細胞の核のDAPI染色を示し、右側のパネルはOCT4染色との1:1相関を示す。まとめると、これらは全ての細胞がOCT4+(多能性を意味する)のままであることを示している。
【図6】抗MUC1抗体表面上で成長させたhu ES H9細胞の写真を示す:A)3日目(A1)及び7日目(A2)の最小培地単独において培養したもの;B)3日目(B1)及び7日目(B2)の最小培地+80ng/mlの抗MUC1において培養したもの;C)3日目(C1)及び7日目(C2)の4ng/mlのbFGF及びHS27線維芽細胞に由来する50%馴化培地において培養したもの;D1、D2)ウェルA及びウェルBからの細胞を、細胞を表面から放出させる遊離PSMGFR(MUC1細胞外ドメイン)ペプチドを添加することによって採取したもの;細胞を新たな抗MUC1抗体表面に再プレーティングし、そこで付着及び増殖させた。
【図7】抗MUC1抗体又はβ−シクロデキストリンに連結した同じ抗体でコーティングした表面上での幹細胞成長のグラフである。このグラフは、抗体をデキストリンに連結した場合に細胞の接着及び成長の向上を示している。
【図8】hu ES細胞を、最小培地+80ng/mlの抗MUC1抗体において培養する場合に、幹細胞表面マーカータンパク質SSEA4及びTra 1−81に結合した抗体でコーティングした表面に付着させることによって培養することができることを示す図である。
【図9】マトリゲル上のhu ES細胞が、最小培地+NM23において培養した場合に、少なくとも現行の技術水準と同様に成長することを示す図である。このグラフは、標準的な4ng/mlのbFGF+線維芽細胞に由来するHS27馴化培地(対照)において培養した場合のマトリゲル上のhu ES H9細胞の成長と、示される濃度での最小幹細胞培地+NM23における成長とを比較するものである。未分化の成長率を未分化のコロニー及び分化したコロニーの両方の盲目計数(blinded count)によって算出し、次いで百分率として算出した。完全に未分化の細胞のみを未分化であると評価した。
【図10】抗MUC1でコーティングした表面上で成長させたhu ES細胞を、シクロデキストランに共有結合的に連結し、最小培地+NM23において示される濃度で分割することが可能な状態となるまで培養したことを示す図である。一組の細胞を初めに4ng/mlのbFGF+50%HS27線維芽細胞馴化培地(CM)において最初の24時間培養した。このグラフは、bFGF及びCMが、適切な量のNM23を添加しても細胞の成長又は分化状態に利益をもたらさなかったことを示す。
【図11】NTA−Niでコーティングした表面上に幹細胞を接着させて、培養し、そこに初めにヒスチジンタグ付きリガンドNM23、RGDペプチド及びプロテインG、続いて抗SSEA4及びTra 1−81を結合したことを示す図である。続いてhu ES H9細胞の成長及びコロニー形成が起こった。3日目に計数した未分化のコロニー及び分化したコロニーの数をプロットした。B〜Gは図11Aでプロットした代表的な幹細胞のコロニーの写真である。
【図11−2】同上
【図12】MUC1陽性がん細胞に由来する馴化培地(Ca CM)が、標準的な線維芽細胞馴化培地(CM)よりもはるかに大幅にhu ES細胞の成長を促進し、分化を阻害することを示す図である。さらに、NM23はCa CMに添加した場合に標準的なbFGFよりもはるかに良好に作用した。
【図13】各々が異なるモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマクローンに由来する吸着上清上で成長させたhu BG01v/hOG ES細胞の写真を示す。幹細胞接着を最も良好に可能にするモノクローナル抗体をこのようにして同定する。
【図14】ハイブリドーマ上清を、N末端又はC末端のいずれかから10個のアミノ酸が失われたPSMGFRペプチドの欠失変異体に結合するその能力について試験したELISAアッセイのグラフである。それらの上清でコーティングした表面への幹細胞の付着を可能にしたハイブリドーマは、C−10 PSMGFRペプチド(GTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDV)への結合も示した。MUC1細胞外ドメインのより遠位の部分に結合した抗体が、表面への幹細胞の付着をより良好に可能にすると推論した。
【図15】分化を開始する前後のH9ヒト胚性幹細胞のICC染色の写真を示す。抗MUC1は未分化のコロニーの細胞を全て染色し、最も基準となる(gold standard)多能性の指標であるOCT4と共局在化した(図15A、図15B)。MUC1完全長を特定するVU4H5抗体は、いずれの未分化細胞も染色しなかった(図15C)。しかしながら、細胞が分化すると、逆のMUC1パターンが検出された。MUC1染色又はOCT4染色は観察されなかった(図15D、図15E)。しかし、全ての細胞が完全長MUC1に陽性であると染色された(図15F)。同様に、未分化幹細胞はNM23に陽性であると染色され、MUC1のリガンド及びNM23は、MUC1及びOCT4と正確に共局在化した(図15G〜図15L)。
【図15−2】同上
【図16】幹細胞成長培地に添加した抗MUC1抗体が、ヒト造血幹細胞(HSC)の成長を増大させることを示す図である(A)。(B)FACS分析から、造血幹細胞のままであった細胞(CD34+/CD38−)の数が、抗MUC1濃度の増大に伴って増加した。一方で、次の前駆体段階に進んだ細胞(CD34+/CD38+)の数が抗MUC1濃度の減少に伴って増加した。これらの結果から、MUC1成長因子受容体の刺激がHSCの分化を阻害したことが示される。
【図17】神経幹細胞(A)及び胎児肝細胞(B)のFACSスキャンを示す図である。細胞を業者から入手し、即座に蛍光標識抗MUC1抗体及び完全長MUC1の遠位部分を認識する標識抗体(HPMV)の両方で染色した。FACSスキャンによって、MUC1の大半が両方のタイプの初期前駆体上でMUC1へと短縮される(clipped)ことが示される。続く実験から、抗MUC1が両方のタイプの細胞の成長を濃度依存的に刺激することが示された。
【図18】抗MUC1濃度に応じた胎児肝細胞の成長のプロットであり、これはMUC1受容体を刺激することによってMUC1前駆細胞を単離し、展開させることができることを示している。
【図19】hu ES H9細胞を、12ウェルプレート上にコーティングした抗MUC1抗体又は抗SSEA4抗体のいずれかの上にプレーティングした後、8nM NM23又は4ng/mlのbFGF+50%HS27線維芽細胞馴化培地のいずれかにおいて培養した後の幹細胞コロニーのプロットである。
【符号の説明】
【0024】
図1
Anti-MUC1 抗MUC1
Minimal StemCell Medium 最小幹細胞培地
ConditioinedMedium 馴化培地
図4
Growth of hESCells on Anti-MUC1* Antibody Coated Surfaces: in Minimal Media Aloneor + 30% Conditioned Media + bFGF 最小培地単独又は30%馴化培地+bFGFにおける抗MUC1抗体をコーティングした表面上でのhES細胞の成長
(Calcein)FluorescenceUnits (カルセイン)蛍光単位
Concentrationof Anti-MUC1* Antibody Adsorbed onto Plate プレート上に吸着した抗MUC1抗体の濃度
Anti-MUC1*on Plate w/Minimal Media 最小培地を有するプレート上の抗MUC1
ControlAntibody on Plate w/Minimal Media 最小培地を有するプレート上の対照抗体
Anti-MUC1*Antibody on Plate 30% + Conditioned Media + bFGF 30%+馴化培地+bFGFを有するプレート上の抗MUC1抗体
図7
Growth of hESCells on Anti-MUC1* Antibody Coated Surfaces: Antibody Alone orCoupled to Cyclodextrin 抗MUC1抗体をコーティングした表面上でのhES細胞の成長:抗体単独又はシクロデキストリンと連結した抗体
RelativeFluorescent Units 相対蛍光単位
ug/mlanti-MUC1* Ab 抗MUC1Ab(ug/ml)
AntibodyConjugated to Beta Cyclodextrin β−シクロデキストリンと結合した抗体
Antibodyalone 抗体単独
図8
hES Cells Canbe Grown on any Surface that Binds Cell Surface Marker Antigens if Fed withMinimal Media + Anti-MUC1* Antibody hES細胞は、最小培地+抗MUC1抗体を供給した場合に、細胞表面マーカー抗原を結合する任意の表面上で成長させることができる
Calcein-AMFluorescence カルセインAM蛍光単位
ug/mlAntibody 抗体(ug/ml)
Anti-SSEA4 抗SSEA4
Anti-Tra-1-81 抗Tra 1−81
図9
hu ES CellsGrowing on Matrigel Cultured in NM23 in Minimal Media 5 days 最小培地中のNM23において培養したマトリゲル上で5日間成長させたhu ES細胞
%Undifferentiated hu ES cells 未分化hu ES細胞(%)
Concentrationof NM23 NM23の濃度
CONTROL 対照
NM23 inMinimal Media 最小培地中のNM23
bFGF CM 24hrsthen NM23 bFGF CMで24時間、続いてNM23
図10
hu ES CellsGrowing on Anti-MUC1* Coupled to Cyclodextran 5 days シクロデキストランに連結した抗MUC1上で5日間成長させたhu ES細胞
%Undifferentiated hu ES cells 未分化hu ES細胞(%)
ConcentrationNM23 NM23の濃度
NM23 inMinimal Media 最小培地中のNM23
bFGF CM 24hrs then NM23 Minimal Media bFGF CMで24時間、続いて最小培地中のNM23
図11
NTA-NiSurfaces Capture His-Tagged Ligands that bind to Stem Cell Surface Proteins NTA−Niは、幹細胞表面タンパク質に結合するHisタグ付きリガンドを捕捉する
Number ofColonies コロニーの数
undifferentiatedcolonies 未分化のコロニー
differentiatedcolonies 分化したコロニー
Surfaces 表面
hu ES H9sGrowing Attached to Histidine-Tagged Ligands that Bind to Stem Cell SurfaceProteins - Images Captured Day 3 Post Plating 幹細胞表面タンパク質に結合するヒスチジンタグ付きリガンドに付着させて成長させたhu ES H9 − プレーティング後3日目に撮影した画像
NM23 ON SURFACE 表面上にNM23
undifferentiated 未分化
differentiated 分化
RGD PEPTIDEON SURFACE 表面上にRGDペプチド
PROTEIN G,ANTI-SSEA4 ON SURFACE 表面上にプロテインG、抗SSEA4
PROTEIN G,ANTI-Tra 1-81 ON SURFACE 表面上にプロテインG、抗Tra 1−81
図12
hu ES H9Cells Attached to an NTA-Ni Coated Plate NTA−Niコーティングプレートに付着させたhu ES H9細胞
Number ofcolonies コロニーの数
80-85%undifferentiated at day 5; NM23 + Ca CM had fully formed colonies ready for 1:2split 5日目に80%〜85%が未分化であった;NM23+Ca CMは2倍に分割することが可能な状態のコロニーを完全に形成した
図13
day 9 9日目
図14
ELISA assayof Hybridoma Supernatants Binding to PSMGFR Deletion Peptides Lacking 10 AminoAcids from either the N- or C-Terminus 10個のアミノ酸がN末端又はC末端のいずれかから失われたPSMGFR欠失ペプチドに結合するハイブリドーマ上清のELISAアッセイ
corrected OD450 nm 450nmでの補正OD
Clone ID クローンID
図15
UNDIFFERENTIATED 未分化
DIFFERENTIATED 分化
図16
minimal media 最小培地
Anti-MUC1* 抗MUC1
MUC1*Stimulated Growth of Hematopoietic Cells from Cord Blood - 11 Days 臍帯血に由来する造血細胞のMUC1によって刺激される成長(11日間)
Percent パーセント
Other cells 他の細胞
Progenitors 前駆体
図17
Neural StemCells 神経幹細胞
RenCell CXcells(Millipore) RenCell CX細胞(Millipore)
Anti-MUC1*Rabbit polyclonal SRY 1a max 抗MUC1ウサギポリクローナルSRY 1a max
Pacific Blue パシフィックブルー
MUC1-full-length MUC1完全長
CD34+FetalLiver Cells(ALLCELLS) CD34+胎児肝細胞(ALLCELLS)
図18
CD34+ FetalLiver Normalized Growth 10 days CD34+胎児肝臓における正規化した10日間の成長
% norm growth 正規化した成長(%)
ng/mlAnti-MUC1* LMP#1(SRY) antibody 抗MUC1 LMP#1(SRY)抗体(ng/ml)
optimalantibody concentration 最適抗体濃度
図19
hu ES CellGrowth on Anti-MUC1* or Anti-SSEA4 Surfaces, Cultured in NM23 orbFGF + CM NM23又はbFGF+CMにおいて培養した、抗MUC1又は抗SSEA4表面上でのhu ES細胞の成長
Number ofcolonies コロニーの数
Anti-MUC1*Coated Surface 抗MUC1をコーティングした表面
Anti-SSEA4Coated Surface 抗SSEA4をコーティングした表面
undifferentiatedcolonies 未分化のコロニー
differentiatedcolonies 分化したコロニー
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願において、「a」及び「an」は、単一及び複数の対象の両方を指すように使用される。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「MUC1成長因子受容体」(MGFR)は、成長因子等の活性化リガンド、又は切断酵素等の修飾酵素と相互作用するMUC1受容体の部分を意味する機能定義である。MUC1のMGFR領域は、細胞表面に最も近い細胞外部分であり、下記に定義されるように、PSMGFRの大部分又は全てによって規定される。MGFRは、未修飾ペプチド、及び例えばリン酸化、グリコシル化等の酵素修飾を受けたペプチドの両方を含む。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「MUC1成長因子受容体の一次配列」(PSMGFR)とは、場合によってはMGFRの大部分又は全て、並びにそのペプチド配列の機能的変異体及び断片を規定するペプチド配列を指す。PSMGFRは、配列番号1、並びに20個までの任意の整数値(すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個又は20個)のアミノ酸置換、及び/又は20個までの任意の整数値のアミノ酸付加若しくは欠失を、そのN末端及び/又はC末端に有する、その全ての機能的変異体及び断片として定義される。上記の文脈における「機能的変異体又は断片」とは、配列番号(SEQ D NO:)1のペプチドに特異的に結合するか、又は別の形で特異的に相互作用するリガンドに特異的に結合するか、又は別の形で特異的に相互作用する能力を有するが、ペプチド分子が他の同一なペプチド分子と会合する(すなわち自己会合する)能力を有するほど、それら自身と同一な他のペプチド分子の同一な領域とは強く結合しない変異体又は断片を指す。配列番号(SEQ NO:)1のPSMGFRペプチドの機能的変異体であるPSMGFRの一例は配列番号2であり、-SRY-の代わりに-SPY-配列を含むことによって配列番号1とは異なる。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「MUC1」とは、細胞外ドメインが本質的にPSMGFR(配列番号1)を含むようにN末端が切断されたMUC1タンパク質を指す。
【0029】
本明細書中で使用される場合、表面に結合される細胞との関連において使用される「表面」は、固体基質又は多孔質基質又は他の非固体基質であり得る。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「最小培地」は、概して細胞に由来する馴化培地、又は生きた宿主に由来する血清等の不確定の作用物質の混合物が存在することなく、細胞培養が可能となる最小限の栄養素を含有する任意の培地であり得る。本明細書中で使用される場合、「最小幹細胞成長培地」は、幹細胞又は幹様細胞の培養が可能となる最小限の栄養素を含有する任意の培地であり得る。これは最小培地又はMMとも称される。以上のように、本発明で使用される最小培地は例示の最小培地に限定されず、確定された成分を有する多数のタイプの溶液を包含し得る。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「幹様」細胞は幹細胞の特性を幾つか有し得る。例えば、幹様細胞は自己再生する能力を幾らか有する。幹様細胞は、a)OCT4、SOX2及びNANOG、若しくはKLF4を発現する、若しくは発現するように誘導されるか、又はb)高レベルのMUC1をそれらの表面上で発現する。幹様細胞の例としては、前駆細胞、多分化能(multipotent)幹細胞、多能性を誘導するプロセスを受けている細胞、がん細胞、がん幹細胞、造血幹細胞、iPS、及び幾つかの抗体産生ハイブリドーマ細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「誘導多能性幹細胞」又は「iPS」とは、非多能性細胞、通常は成体の体細胞から、或る特定の遺伝子の「強制」発現を誘導することによって人為的に誘導された或るタイプの多能性幹細胞を指す。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「MUC1刺激因子」とは、MUC1の二量化又はMUC1を形成するMUC1の切断等のMUC1の活性を活性化することが可能な任意の分子を指す。

【0034】
配列表フリーテキスト
a、g、c、t以外のヌクレオチド記号の使用については、WIPO標準ST.25(付録2、表1)に記載される規則に従うが、ここでは、kはt又はgを表し、nはa、c、t又はgを表し、mはa又はcを表し、rはa又はgを表し、sはc又はgを表し、wはa又はtを表し、yはc又はtを表す。
【0035】
GTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGA(配列番号1)は、MUC1の膜近位の(membrane proximal)細胞外領域をアミノ酸1110からアミノ酸1155まで表す(PSMGFR)。GTINVHDVETQFNQYKTEAASPYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGA(配列番号2)は、MUC1の膜近位の細胞外領域の変異体をアミノ酸1110からアミノ酸1155まで表す(PSMGFRの変異体)。
【0036】
QFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGA(配列番号3)は、N末端の10個のアミノ酸が欠失したPSMGFR配列(N−10 PSMGFR)を表す。
【0037】
GTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDV(配列番号4)は、C末端の10個のアミノ酸が欠失したPSMGFR配列(C−10 PSMGFR)を表す。
【0038】
表面上の幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞
本発明は、細胞表面タンパク質に対するリガンドを、成長培地を保持することができるか、又は成長培地に添加することのできる固体支持体に付着させることを含む、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞及び前駆体を培養するか又は展開させる方法を開示する。
【0039】
本発明は、細胞を培養するための新たな方法及び表面を開示する。該方法は接着性でない細胞を成長させて、維持するのに特に有用である。これらの方法は幹細胞、幹様細胞及び前駆細胞を培養するのに特に有用である。
【0040】
表面
本発明は、細胞を成長させるための新たな表面及び方法を開示する。これらの表面は非接着性の細胞、幹細胞及び幹様細胞(誘導多能性幹(iPS)細胞及び幾つかの前駆細胞を含む)を培養するのに特に有用である。本明細書中に開示される方法によって、どのようにして細胞培養培地を交換しつつも有益な細胞を保持するかという問題が解決される。既存の細胞培養方法の多くは接着性細胞に有効であるが、これは接着性細胞がフラスコの表面に付着するためである。格納容器の表面に付着した細胞に支障を来たすことなく、古い液体培地を除去して、新たな培地で置き換えることができる。本発明の幾つかの方法は、より頻繁に置き換えることが必要とされるより安価な因子を交換しつつも、有益な成長因子の保持を可能にするという点でも有用である。本発明の他の方法は、比較的狭い空間及び少量の培養培地を使用しつつも、細胞付着のための表面積をより大きくし、それにより細胞の収量を増大させる。該方法は概して、リガンドを表面に直接的又は間接的に付着させることを含むが、この場合、リガンドは細胞表面上の分子に結合することが可能である。
【0041】
これらの方法とともに使用するのに好適な表面は、本質的に膜であっても、又は多孔質であってもよい。本明細書中に記載の表面はポリマー、又はポリマー、シクロデキストリン若しくはシクロデキストランでコーティングした表面であり得る。表面は空間的にアドレス可能な表面、又はビーズ、粒子若しくはナノ粒子の表面であり得る。ビーズ、粒子又はナノ粒子は溶液中に遊離していても、又は介在分子によって固定されていてもよい。例えば膜は、ポリマー物質を含んでいても、細胞と表面との間の結合を促進するリガンドを担持するビーズ又は粒子が付着していてもよい。本発明はin vitro、ex vivo及びin vivo成長へのこれらの表面の使用を含む。本発明の表面を使用して、in vitroで細胞を培養することができる。代替的には、本発明の表面を宿主内に埋め込むことができる。表面は、療法として移植される幹細胞等の細胞を担持することができる。例えば、成長幹細胞が付着した又は付着していない本発明の表面を移植して、その表面によって生着の効率を増大させることができる。別の例では、移植した表面は、宿主自身の細胞又は幹細胞を或る領域に動員するため、又はその位置での標的細胞の成長を促進するためにリガンドを担持している。例えば、幹細胞の成長を誘起し(attract)、促進する表面を関節内に挿入し、軟骨の置換を助長することができる。本発明の表面は、細胞が最終的に3次元形態を形成するように足場上に成形するか、又は足場上にコーティングすることができる。例えば、材料を耳の形状にした後、最終的に足場の形状のより成熟した細胞又は組織へと発展する幹細胞又は幹様細胞の付着及び成長を可能にする、本明細書中に記載の表面の1つでコーティングすることができる。本発明の表面及び組成物を使用して、構造化された又は構造化されていない多孔質表面又は固体表面であり得る埋め込み型装置をコーティングすることができることが更に想定される。上記装置によって、組織又は細胞の修復又は再生を目的として幹細胞又は前駆細胞を或る領域に送達又は動員することができる。例えばステントを本発明の表面又は組成物のいずれかでコーティングして、血管を修復又は再生することができる。本発明の表面、例えばNM23−S120Gでコーティングし、幹細胞又は前駆細胞を付着させたステントを宿主又は個体に埋め込んで、宿主自身の細胞を刺激する細胞又は成長因子を送達することができる。該方法はin vitro、ex vivo又はin vivoで行うことができる。
【0042】
リガンド
表面への細胞の結合を促進するか、又は細胞増殖を刺激するリガンドを、表面に直接的に、又は例えば表面に付着したポリマーに間接的に付着させることができる。例えば、細胞表面受容体を認識する抗体を、表面上に付着又は吸着したシクロデキストリン又はシクロデキストラン等のポリマーに共有結合的に付着させることができる(実施例6、実施例10〜実施例12及び図7、図10を参照されたい)。細胞表面上の分子に対して幾らかの親和性を有するリガンドを、任意でこれらの表面に付着させて、細胞の付着及び成長を促進する。リガンドは成長因子受容体等の細胞表面受容体上に特異的に結合し得る。リガンドはタンパク質、ペプチド、小分子、抗体、ポリクローナル抗体若しくはモノクローナル抗体、二重特異性抗体、一価抗体若しくは二価抗体、Fab等の抗体誘導体、一本鎖抗体、遺伝子組換え誘導体、又は抗体の可変領域をその標的に特異的に結合することが可能なように別のタンパク質に挿入した誘導体であり得る。代替的には、リガンドは細胞表面分子に対して特異親和性を有する必要はない。例えば、表面に付着したリガンドは、非特異的相互作用を介して細胞を表面に接着させ得る。非特異的相互作用は本質的に化学的又は生物学的なものであり得る。ヒドロキシル等の親水性部分又はメチル基等の疎水性頭部基で誘導体化された表面は、疎水性相互作用によって細胞を非特異的に保持することができる。荷電した化学的実体又は生物学的実体を担持する表面は、イオン性相互作用によって細胞を吸着することができる。細胞は更に、細胞に対して幾らかの特異性を有する実体を担持する表面(RGD配列含有ペプチド、ポリリシン、正又は負に荷電した表面、コラーゲン、ラミニン、並びにマトリゲル及びマトリゲル様物質を含む他の細胞外マトリックス成分が挙げられるが、これらに限定されない)によって捕捉されていてもよい。細胞は他のタイプの化学修飾表面によって捕捉されていてもよい。例えば、NTA−Ni及び他の金属キレートでコーティングされた表面が細胞及び幹細胞に非特異的に結合する(実施例15及び図12を参照されたい)。
【0043】
好ましい実施形態では、細胞表面上の分子に対して特異親和性を有する部分を表面に付着させて、幹細胞の付着を容易にする。例えば、SSEA3、SSEA4又はTra 1−81又はTra 1−60等の幹細胞の特異的マーカーである細胞表面タンパク質に結合する抗体を表面に付着させる。幹細胞はそれらの細胞表面タンパク質と、培養プレート上のそれらの同種抗体との特異的相互作用によってこれらの表面に接着する。次いで、細胞を標準方法、又はMUC1を刺激する本発明の新規の方法によって培養することができる(実施例1〜実施例4、実施例8〜実施例10、実施例12及び図1〜図10を参照されたい)。別の例では、表面に付着させるリガンドは、成長因子又は成長因子の一部分であり得る。別の例では、表面に付着させるリガンドは、細胞表面分子(成長因子受容体であり得る)を認識する抗体又は抗体の一部分であり得る。別の例では、リガンド複合体を表面上に付着又は固定化させるが、この場合、複合体の少なくとも1つの成員が細胞表面分子に対して親和性を有するか、又は細胞に細胞の成長若しくは分化を調整する作用物質を与える。例えば、プロテインGは、ヒスチジンタグ−NTA−Ni相互作用によって表面に吸着するか、又は特異的に付着することができ、幹細胞表面マーカーを認識する抗体がプロテインGとのその相互作用によって表面に付着する(実施例14、図11を参照されたい)。
【0044】
混合表面
場合によっては、リガンドと成分との混合物を提示する表面を有することが望ましい。これらは本質的に生物学的若しくは化学的なものであってもよく、又は生物学的成分と化学的成分との混合物であってもよい。例えば、表面を成長因子又は同等の活性化抗体+細胞外マトリックスの成分(コラーゲン又はラミニン等)の混合物でコーティングすることができる。ラミニンと成長因子又は抗体との混合物でコーティングした表面も、幹細胞の付着及び成長を促進した。例えば、本発明者らは、コラーゲン又はラミニンと細胞表面マーカーに特異的な抗体とを含む表面コーティングが幹細胞及び幹様細胞の成長に有用であることを示した。
【0045】
別の例では、ラミニン又はコラーゲンを細胞表面マーカーのリガンドと混合する。実験から、ラミニンと抗MUC1とを混合することによって、幹細胞の付着及び細胞成長に必要とされる抗体の量が減少し、正常な幹細胞コロニーが発展することが示された。本発明の別の態様では、混合種を表面に付着させるが、この場合、1つ又は複数の成分が表面への細胞の付着を容易にするリガンドであり、他の成分(複数も可)が細胞の機能に影響を及ぼす作用物質を細胞に与える。表面に付着することのできる機能的作用物質の例としては、成長、分化を促進するか、又は多能性を誘導する作用物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
リガンド付着のための方法
細胞接着を促進するか、又は成長因子であるリガンドは、例えばEDC/NHS又はマレイミドカップリング化学(coupling chemistries)を用いた共有結合カップリング(covalentcoupling)を含むが、これらに限定されない様々な方法で表面に付着させることができる。代替的には、本発明のリガンドは、非共有結合的相互作用又は親和性相互作用によって表面に付着させることができる。例えば、本発明のリガンドにヒスチジンタグを付けた後、ニトリロトリ酢酸−ニッケル(NTA−Ni)部分を介して表面に付着させることができる。アフィニティータグ相互作用を用いて、細胞の培養に好適な成長表面を生成することができる。例えば、NTA−Ni部分を細胞培養フラスコに付着させて、ヒスチジンタグ付きリガンドをNTA−Niによって捕捉させる。リガンドは細胞表面受容体に直接的又は間接的に結合して細胞を表面に接続する。リガンドが成長因子でもある場合、リガンドは細胞接着をもたらし、かつ増殖を促進する働きをする(実施例14、図11を参照されたい)。
【0047】
一実施形態では、リガンドは、MUC1又はFGFR(線維芽細胞成長因子受容体)等の細胞表面受容体を認識する抗体が結合するプロテインG又はプロテインAである。プロテインG又はプロテインAは、表面上に非特異的に吸着し、アフィニティータグ−結合パートナー相互作用によって共有結合的に連結又は付着する。例えば、細胞培養フラスコをNTA−Ni部分でコーティングすることができ、それによりヒスチジンタグ付きプロテインG又はプロテインAを表面によって捕捉することができる。次いで、細胞表面受容体に対する抗体を添加すると、抗体は表面上に固定化されたプロテインG又はプロテインAに結合する。
【0048】
別の態様では、表面に付着するリガンド及び作用物質を、それらが表面から放出されて局所環境を変化させることができるように、又は細胞が作用物質を消費することができるようにして表面に付着させることができる。作用物質を、それが分解するにつれて表面から放出されるか、又は刺激に応答して放出されることができるように表面に付着させることができる。例えば、作用物質を、作用物質が光に応答して又は化学シグナルによって放出されることができるように、感光性又は化学物質感応性のリンカーを用いて表面に付着させることができる。幾つかのリンカーはpHの変化に応答して切断される。OCT4、NANOG、SOX2、KLF4若しくはNM23等の多能性を誘導する遺伝子若しくは遺伝子産物、又はmiR−145(マイクロRNA)等の分化を誘導する遺伝子若しくはその産物を培地に添加するか、又は表面に付着させることができる。これらは経時的な分解によって、又は付着結合を切断する特定の光の波長等の特異的シグナルに応答して表面から放出されることができる。
【0049】
好ましい実施形態では、表面に付着した又は表面上に固定化されたリガンドは、細胞表面上の成長因子受容体を認識する成長因子である。細胞表面上の成長因子受容体を活性化する抗体は、先に記載された方法のいずれか又はその組み合わせを用いて表面に付着させることができる。一例では、成長因子は線維芽細胞成長因子(FGF)又は塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)であり、リガンドが親和性を有する細胞表面上の分子は線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)である。代替的には、リガンドはFGFRを認識する抗体であってもよい。本発明の別の態様では、成長因子は上皮成長因子(EGF)であり、リガンドが親和性を有する細胞表面上の分子は上皮成長因子受容体(EGFR)である。別の態様では、親和性リガンドは幹細胞因子(SCF)、又はc−Kit/SCF−Rを活性化する抗体を含む別の作用物質である。成長表面に付着したリガンドは、Flt 3リガンド、トロンボポエチン(thrombopoetin)(TPO)、IL−2、IL−3、IL−n、又はその同種受容体に対するそれらの影響を模倣する抗体であってもよい。
【0050】
MUC1リガンド
より好ましい実施形態では、成長表面に付着したリガンドは、MUC1細胞表面タンパク質に対して親和性を有する。更に好ましい実施形態では、リガンドはこのタンパク質のPSMGFR部分(MUC1)に対して親和性を有する。また、更により好ましい実施形態では、リガンドはMUC1の二量化を誘導する。一例では、リガンドは抗MUC1抗体である(実施例1、実施例4、実施例7、実施例10及び図1、図6A、図6B、図6D、図8)。別の例では、リガンドはNM23、又はS120G等の変異体、又は二量体形成を優先させる(prefers)か、若しくは二量体として機能する他の任意の突然変異体若しくは誘導体である(実施例9、実施例12、実施例14、実施例15、実施例20並びに図9、図10、図11、図12及び図19を参照されたい)。表面はNM23が細胞に二量体として提示されるように構成されていてもよい。別の例では、成長表面に付着したリガンドは、MUC1の細胞外ドメインに結合する抗体である。タンデムリピートドメインが切断され、細胞表面から脱落した後も細胞表面に付着したままであるMUC1の部分に結合する抗体が好ましい。例えば、MUC1のPSMGFR配列に結合する二価抗体は、切断されたMUC1の成長因子受容体機能を活性化し、細胞増殖を刺激する。PSMGFRペプチドの少なくとも一部分での免疫化によって生成したポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体は、表面に付着し、MUC1成長因子受容体の活性化によって表面への細胞の付着を促進し、かつ細胞の成長を刺激する。
【0051】
ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれか、並びに天然及び非天然の抗体誘導体の両方が、全PSMGFR配列を用いて生成した、又はそれに対する親和性について選択された抗体よりも幹細胞接着に適しているように生成又は選択することができる。MUC1細胞外ドメインの配列に対応するが、細胞表面に近接した10個のアミノ酸が欠失したペプチド「C−10 PSMGFR」でウサギを免疫化することによって生成したポリクローナル抗体は、完全PSMGFRペプチド又は最も遠位の10個のアミノ酸が欠失した「N−10 PSMGFR」(QFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGA)(配列番号3)に対して生成した抗体よりも効率的に幹細胞接着を促進する抗体を生成した(実施例16及び図13、図14を参照されたい)。幹細胞に結合する能力が改善された抗体は、C−10 PSMGFRペプチド又は他のN末端断片を提示する表面上でそれらを親和性精製することによって完全PSMGFRペプチドに対して産生されたポリクローナル抗体から単離することもできる。
【0052】
C−10 PSMGFRペプチドに結合したが、N−10 PSMGFRペプチドには結合しなかったモノクローナル抗体を分泌したハイブリドーマクローンは、表面への幹細胞の接着を容易にすることが示された(図13A〜図13C、図14を参照されたい)。対照的に、N−10 PSMGFRペプチドに結合したが、C−10 PSMGFRペプチドに結合しなかったモノクローナル抗体は、幹細胞接着をほとんど可能にしなかった。両方のモノクローナル抗体型が、培養培地に添加した場合に細胞成長を刺激することが可能であった。
【0053】
好ましい実施形態では、MUC1成長因子受容体のリガンドであるNM23を提示する表面上で幹細胞を培養する。NM23は表面に直接的又は間接的に付着させることができる。本発明の一態様では、二量化を優先させるNM23又はS120G突然変異体を、細胞成長のための表面上に非特異的に吸着させる(実施例15、図12を参照されたい)。本発明の別の態様では、表面を初めに、ヒスチジンタグ付きタンパク質又はペプチドに結合するNTA−Ni等のアフィニティータグ結合パートナーで誘導体化する。次いで、ヒスチジンタグ付きNM23をNTA−Ni表面に非共有結合的に連結させる。次いで、幹細胞及び幾つかの前駆体等のMUC1陽性細胞をNM23表面に添加すると、細胞が表面に接着して成長する。更により好ましい実施形態では、NM23 S120G突然変異体をシクロデキストランに共有結合的に連結させる。
【0054】
採取方法
本発明の別の態様では、本発明の表面から細胞を採取する新規の方法が記載される。本発明は、本発明の表面及び他の多くの細胞成長システムに有用なこれらの採取方法を含む。本発明は、本発明の新規の表面とともに手作業での解離及び酵素的切断等の標準的な採取方法を使用することも含む。細胞採取方法の幾つかは表面の成分の固有性に依存する。例えば、抗体表面に吸着することによって成長する細胞は、抗体エピトープと同じ配列を有するペプチドを過剰に添加することによって放出させることができる。例えば、抗体がMUC1の細胞外ドメインを認識する場合、MUC1の細胞外ドメインの配列の幾つか又は全てを有するペプチドを過剰に添加することによって細胞を放出させることができる。遊離ペプチドは、表面に付着した抗体への結合について細胞上のMUC1受容体と競合する。抗体へのペプチドの結合は細胞を放出させる(実施例4、図6Dを参照されたい)。プロテインG又はプロテインAに結合することによって表面に付着する抗体を提示する表面上で培養した細胞は、過剰のFc部分又は過剰の無関連抗体を添加することによって表面から放出される。プロテインGはFcドメインに結合するため、遊離Fcは表面に付着したプロテインG又はプロテインAへの結合について同種抗体と競合し、抗体と複合体形成した細胞を放出させる。リガンドがアフィニティータグ−結合パートナー相互作用によって付着した表面上で培養した細胞は、アフィニティータグ−結合パートナー相互作用を妨げる作用物質を添加するか、又は結合パートナーと相互作用するアフィニティータグの部分を過剰に添加することによって放出される。例えば、NTA−Ni表面に結合したヒスチジンタグ付きリガンド上で成長する細胞は、イミダゾール、無関連ヒスチジンペプチドを添加するか、又は表面に付着したリガンドの結合パートナーの少なくとも一部分を過剰に添加することによって放出される。NM23表面の場合、細胞は、過剰のペプチドの添加が表面に付着したNM23への結合についてMUC1細胞表面受容体と競合し、それにより細胞が放出されるように、MUC1の細胞外ドメインの少なくとも一部分と本質的に同じ配列を有するペプチドを過剰に添加することによって放出させることができる。代替的には、NM23は表面への付着を容易にするアフィニティータグを用いて作られる。アフィニティータグと表面との間の相互作用を妨げる戦略によって、NM23及び付着した細胞が表面から放出される。同様に、Hisタグ付きプロテインG(+抗体)又はHisタグ付きNM23は、a)イミダゾール(0.5M)又はb)過剰の(His)ペプチドを添加することによって表面から放出させることができる。
【0055】
任意のアフィニティータグ、結合パートナー対を表面へのリガンドの付着に使用することができ、アフィニティータグ−結合パートナー相互作用の遮断が幹細胞を表面から放出させる。好適なアフィニティータグ、結合パートナー対の例としては、NTA−Ni/ヒスチジンタグ、グルタチオン/GST融合体、マルトース/マルトース結合タンパク質及びビオチン/ストレプトアビジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
成長培地
本明細書中に記載の表面及び採取方法は、標準的な幹細胞培養方法及び新規の方法と適合する。標準的な幹細胞培養培地は、これまでの幹細胞成長には、これらの細胞によって分泌された未同定の成長因子が必要とされていたため、外因性の塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)の添加及び線維芽細胞フィーダー細胞上での成長を必要とする。幹細胞は、bFGFに加えて線維芽細胞フィーダー細胞に由来する馴化培地(CM)を培地のおよそ30%〜50%添加する必要がある点を除けば、標準的なプロトコルによるマトリゲル上でも成長させることができる。不活性化ヒト包皮(HS27)線維芽細胞フィーダー細胞は通常胚性幹細胞の成長に使用される。
【0057】
標準的な成長培地が本発明の表面上での成長に適合することを実証した(実施例4、図6C及び実施例3、図4)。マトリゲル上での成長と同様、bFGF媒介成長には、本明細書中に記載の本発明の表面上での幹細胞成長を支持するために線維芽細胞馴化培地が必要とされる。MUC1刺激因子又は二量化剤を含有する培養培地が好ましい。PSMGFRペプチドを認識する抗体、又はNM23の野生型若しくは突然変異体S120Gが好ましい成長因子であり、bFGF及び線維芽細胞馴化培地の代わりとすることができる(図6、図9、図10、図11及び図12を参照されたい)。マトリゲル、Cell Start(Invitrogen)、Geltrex(Invitrogen)又は本発明の表面のいずれかに付着したヒト胚性幹細胞の成長は、抗MUC1抗体又はNM23−S120GのいずれかをbFGF及びHS27馴化培地の代わりに最小幹細胞培地に添加した場合に、一貫してより良好であり、成長速度、コロニー形態及び分化の阻害は、MUC1刺激因子でbFGF+馴化培地(CM)を置き換えた場合に一貫してより良好である。
【0058】
成長MUC1陽性がん細胞から回収した馴化培地は、分化を阻害する一方で幹細胞成長及びコロニー形成を増大させる。マトリゲル、NTA−Ni、抗MUC1抗体又はNM23表面上で成長するヒト幹細胞を、最小幹細胞培地+成長MUC1陽性がん細胞から回収した馴化培地中で培養した。MUC1陽性乳がん細胞であるT47D細胞に由来する馴化培地は、NM23−S120G、又は抗MUC1抗体又はbFGFに添加した場合に幹細胞成長、コロニー形成及び分化の阻害を、HS27線維芽細胞フィーダー細胞に由来する馴化培地と比較して大きく改善した(実施例14、実施例15、及び図11、図12を参照されたい)。本明細書中に記載の表面及び採取方法は、幹細胞以外の細胞に対して使用することができる。
【0059】
細胞選別のための抗MUC1抗体
精製:
多能性幹細胞の純粋集団を細胞の混合集団から精製することができる。大量の幹細胞の成長によって、自発的に分化した幾つかの幹細胞を生成することができる。したがって、所望の多能性細胞を捕捉し、分化した細胞を捨てる(disgarding)ハイスループット(throughout)方法が必要とされる場合がある。MUC1は、細胞が分化を開始する際にOCT4より前に失われる多能性の細胞表面マーカーである。多能性(MUC1陽性)幹細胞の純粋集団は、抗MUC1抗体で誘導体化されたカラム上にそれらを捕捉することによって混合集団から単離することができる。一方で、MUC1アフィニティーカラムは、奇形腫形成のリスクを減らすために分化した細胞からMUC1陽性細胞を除去するよう移植の前に使用される。
【0060】
多くの場合、幹細胞と前駆細胞とをそれらの分化段階に応じて分離することが望ましい。本発明者らは以前、多能性幹細胞が短縮MUC1形態を提示するが、完全長MUC1タンパク質を提示せず、分化が開始すると、MUC1の切断が停止し、細胞がほとんどMUC1陰性で、完全長形態に陽性となることを示した。完全長MUC1のタンデムリピート単位に結合する多くの抗体、例えば市販のVU4H5抗体又はHMPV抗体が利用可能である。MUC1の成長因子受容体形態であるMUC1への切断は、これらの部分を細胞表面から放出させるため、タンデムリピートに対する抗体がMUC1を染色しなくなる。PSMGFR配列はMUC1及びその短縮形態(MUC1)の両方に存在するが、PSMGFR配列に対する抗体は、エピトープが隠されているため完全長MUC1に結合しない。図15A〜図15Lは、分化を開始する前及び続いてその後のH9ヒト胚性幹細胞の免疫細胞化学的(ICC)染色の写真を示す。完全PSMGFRペプチドに対して産生されたウサギポリクローナル抗体は、未分化のコロニーのほぼ全ての細胞を染色した。幹細胞の多能性の最も基準となる指標であるOCT4は、抗MUC1(抗PSMGFRとも呼ばれる)抗体染色と正確に共局在化した(図15A、図15B)。MUC1完全長の遠位タンデムリピートに結合するVU4H5抗体は、未分化の細胞のいずれも染色しなかった(図15C)。しかしながら、これらの同じ細胞を、14日間bFGFを控えて分化させると、逆のMUC1パターンが観察された。MUC1染色又はOCT4染色は観察されなかったが(図15D、図15E)、全ての細胞が完全長MUC1に陽性であると染色された(図15F)。同様に、未分化の幹細胞がNM23に陽性であると染色され、MUC1及びNM23のリガンドがMUC1(図15G〜図15I)及びOCT4(図15J〜図15L)と正確に共局在化した。切断酵素MMP14、MMP16及びADAM−17はMUC1の切断に関与していた。これらはまた、未分化の幹細胞上でMUC1と共局在化する(Hikita et al, PLoS ONE, 2008)。
【0061】
したがって、任意でNM23、MMP14、MMP16、ADAM−17及びOCT4に対する抗体を含む他の抗体と組み合わせた抗MUC1抗体を使用して、多能性幹細胞を混合プールから同定し、単離することができる。SSEA3/4又はTra 1−81/1−60に対する抗体も、多能性幹細胞を同定するために抗MUC1抗体とともに使用することができる。未分化の幹細胞及び分化した幹細胞のプールは、PSMGFRペプチドに結合する抗体及び短縮される際に放出されるMUC1の部分に結合する抗体で染色することができる。次いで、FACS(蛍光活性化細胞選別)等の標準的な細胞分離方法を用いて、MUC1提示細胞をこのタンパク質の完全長形態を提示する細胞から分離することができる。場合によっては、分化したこれらの幹細胞を多能性のままである細胞から除去することが望ましい。他の場合では、多能性(MUC1陽性)のままであるこれらの幹細胞を除去することが、これらが宿主に移植した場合に奇形腫形成のリスクを増大させる可能性があることから望ましい。抗MUC1抗体、すなわち抗PSMGFR抗体とNM23抗体との組み合わせも、多能性幹細胞を同定し、更にMUC1刺激によって展開させることのできるこれらの前駆細胞を同定するために使用することができる。
【0062】
がん幹細胞選別による枯渇
がん細胞は化学療法薬に対する耐性を獲得した場合にMUC1の発現を増大させるが、MUC1完全長の発現は増大させない。化学療法に対する耐性を有するこれらの細胞は、がん幹細胞とも呼ばれる。したがって、任意でNM23、MMP14、MMP16、ADAM−17及びOCT4に対する抗体を含む他の抗体と組み合わせた抗MUC1抗体を使用してがん幹細胞を同定することができる。本発明の一実施形態では、抗MUC1抗体及びこれらの他の抗体の組み合わせを使用して、患者、例えば患者の血液からがん幹細胞を枯渇させる。
【0063】
FACS及びヒト幹細胞の成長
本発明は、抗MUC1抗体、又はNM23若しくはNM23 S120G又は二量化を優先させる他の突然変異体を使用して、MUC1の短縮形態(MUC1)を発現する前駆細胞の成長を刺激し、その分化を阻害することを更に開示する。MUC1の切断は幹細胞が分化を開始すると停止するが、切断は後の段階で再開する。造血幹細胞(HSC)は例えば、短縮形態であるMUC1を発現し、細胞をMUC1二量化剤に曝露することによって増殖させることができる。造血幹細胞は幹細胞であるとみなされる場合、CD34陽性かつCD38陰性である。造血幹細胞は次の分化段階に進むと、CD34陽性かつCD38陽性になる。臍帯血からヒトHSCを得て、最小幹細胞培地+抗MUC1抗体において様々な濃度で培養した。細胞を11日間、プレーティング後5日目に新たな抗体を添加して培養した。細胞を分析し、FACSによって選別した。図16A及び図16B、実施例18は、造血幹細胞のままであった細胞(CD34+/CD38−)の数が、抗MUC1濃度の増大に伴って増加したことを示している。一方で、次の前駆体段階へと進んだ細胞(CD34+/CD38+)の数は、抗MUC1濃度が減少するとともに増加した。これらの結果から、MUC1成長因子受容体の刺激がHSCの分化を阻害したことが示される。
【0064】
造血は胎児及び発達早期(early life)の肝臓において起こる。ヒト胎児肝細胞を、MUC1細胞外ドメインのPSMGFR配列に結合する抗体、及び完全長MUC1のタンデムリピート単位に結合する市販の抗体であるVU4H5を用いてFACS選別した。図17BのFACSスキャンは、胎児肝細胞の大半がMUC1陽性かつ完全長陰性であることを示している。MUC1陽性胎児肝細胞を単離し、最小培地+抗MUC1抗体において成長させることによって展開させた。図18のグラフは、胎児肝細胞の成長が最適抗MUC1抗体濃度で大きく増大することを示している。抗体が過剰になり、各々2つの受容体に1つの抗体が結合するのではなく、各々の受容体に1つの抗体が付着すると成長は低下する。同様に、未分化幹細胞を分化した細胞から、FACS又は完全長MUC1タンパク質のPSMGFR領域若しくは遠位部分に結合する抗体等の結合剤を使用する他の分離技術によって分離することができる。
【0065】
他のタイプの細胞がMUC1の短縮形態を提示することがあり、MUC1タンパク質のPSMGFR部分を認識する抗体が細胞に結合するか否かに基づいて細胞集団から単離するか、又は枯渇させることができる。
【0066】
捕捉、成長、放出、選別の組み合わせ
場合によっては、成長期間前、成長期間中又は成長期間後に或る細胞型を別の細胞型から分離することが望ましいことがある。一方法では、表面の各々の空間アドレスが異なるリガンドを提示し、その各々が異なる細胞型、又は細胞段階若しくは細胞型を特定する特異的マーカーに対して親和性を有する。細胞を表面に添加し、親和性相互作用によって各々の細胞型の表面上のマーカーに応じて空間的に分離する。分離した細胞は、個々に採取して別個の位置で培養するか、又は混合物として培養した後、位置によっては後で採取することができる。一方法では、異なる様式の付着を用いて、異なるマーカーに特異的なリガンドを付着させる。例えば、或る位置で、多能性細胞のマーカーであるMUC1に対するリガンドをヒスチジンタグ/NTA−Ni相互作用によって表面に付着させて、別の位置で、外胚葉系列に沿って分化する細胞のマーカーに対する抗体をプロテインGによって表面に付着させる。このようにして、未分化の細胞をイミダゾール(imidzole)の添加によって放出させて、外胚葉細胞を過剰のFcの添加によって放出させる。別の方法では、各々が異なる親和性リガンドを提示する2つ以上の表面が別個の位置に収容される。2つ以上の表面はフローチャネルによって接続される。一実施形態では、細胞の混合物を、表面が提示するリガンドの同種分子を発現する細胞を捕捉する第1の表面に導入する。次いで、その上清又はフロースルーを、その表面への結合を容易にする同種細胞表面分子を提示する細胞を捕捉する第2の表面に導入する。次いで、その上清又はフロースルーを、所望の細胞型が空間的にアドレス可能な表面によって捕捉されるように第3の表面等に導入する。この方法を使用して、細胞をタイプによって分離するか、又は細胞を分離し、次いで成長させる。フローチャネル及びバルブを、細胞分離の期間中にフローを流すが、その後特定のタイプの細胞をその特定のタイプの細胞に最適な条件下で培養することができるように限定して使用することができる。
【0067】
本発明の方法は、成長プロセス中に分化を受ける可能性のある細胞の分離に好適である。各々が特定の分化状態のマーカー又は細胞型に対する親和性リガンドを提示する混合表面を含むシステムを、分化状態に応じて子孫を選別する動的システムにおいて使用する。細胞を初めに、別の分化状態にある細胞又はその子孫によってもはや発現されない初期分化状態のマーカーであるそれらの細胞表面タンパク質の1つの相互作用によって第1の表面に付着させる。このようにして細胞は放出されるが、この場合、細胞はその新たな分化状態を規定する細胞表面マーカーに対して親和性を有するリガンドを提示する新たな位置に移動する。この選別は新たな表面への上清の導入、又は自己選別によって地理的に、例えばフローチャネル内の位置で行うことができるが、ここでは細胞が或る位置(粒子であり得る)から放出され、第2の位置(隣接する粒子であり得る)に移動し、そこで異なる細胞マーカーに対する親和性リガンドが固定化される。一実施形態では、異なる親和性リガンドを提示するビーズ又は粒子を混合するが、細胞は表面上に同種分子を提示するビーズ/粒子に付着する。この場合、ビーズ又は粒子は細胞付着後のそれらの選別を可能にする性質を有する。例えば、CD34+/38−造血幹細胞に対して親和性を有するリガンド(複数も可)を提示する電磁ビーズを、CD34+/CD38+前駆細胞に対して親和性を有するリガンド(複数も可)を提示する非電磁ビーズと混合する。細胞培養の後、CD34+/38−細胞を担持するビーズを磁気的に単離して回収するが、残りのビーズはCD34+/38+細胞の集団を含む。代替的には、空間的位置、ビーズ又は粒子には、精製のために他の表面によって捕捉され得る部分が付着していてもよい。一例としては、親和性リガンド及び精製リガンドを提示するビーズは、親和性リガンドと同種細胞表面受容体との間の相互作用によって所望の全ての細胞型を捕捉する。精製リガンドは、精製リガンドと第2の表面上の部分との結合によってビーズを特異的空間アドレスに付着させる。本発明は、この方法を使用して混合プールから様々な分化段階にある細胞を選別することを含む。本発明は、この方法を使用して、細胞が多能性であるように誘導され、或る特定の幹様の性質を有するこれらの細胞を多能性誘導プロセス中の様々な時点で選択して増幅することが望ましい細胞培養状況において細胞を選別することを含む。
【0068】
代替的方法においては、細胞を異なる細胞型に特異的なリガンドを提示する粒子上への固定化によって分離する。細胞の混合物を粒子の混合物に導入する。細胞は、その細胞表面分子に対して親和性を有するリガンドを提示する粒子上で分離される。次いで、細胞を担持する粒子を分離した後に培養しても、又は全てをまとめて培養してから成長期間後に分離してもよい。細胞を担持する粒子は、粒子自体の性質又は粒子に付着したリガンドの性質に基づく様々な手段によって分離される。例えば、粒子はサイズ、電荷、密度、光学的性質、電磁的性質等に基づいて分離することができる。これらの性質は粒子自体の固有の性質であっても、又は付着したリガンドの性質であってもよい。例えば、粒子自体が蛍光性であっても、又は粒子に付着したリガンドが蛍光性であってもよい。粒子は磁気特性、帯電特性、蛍光特性又は電子特性を含むが、これらに限定されない性質によって容易に分離される。代替的には、第2の親和性リガンドを担持するリガンドを提示する粒子を使用することができる。この場合、粒子は細胞の付着を容易にするリガンドを担持することに加えて、細胞を担持する粒子の付着を容易にし、表面又は位置を分離する部分も担持し得る。
【0069】
本発明の別の態様では、1つの表面が異なる機能性を有する2つ以上の異なるリガンドを提示する。場合によっては、2つ以上のリガンドは、特異的な細胞への付着について単一のリガンドよりも選択的である。別の例では、第1のリガンドが細胞の付着を媒介し、第2のリガンドが別の表面又は別の位置であってもよい特異的位置に細胞/表面複合体を標的化する。このようにして、特異的な細胞型を捕捉するリガンドを担持する物品又は粒子である表面は、第2の表面又は位置への付着によって非標的細胞から精製することができる。他の場合においては、成長期間前、成長期間後又は成長期間中に細胞をタイプに応じて分離する能力を更に有する2つ以上の異なる細胞型を捕捉することが望ましいこともある。これは、特異的細胞型の付着を容易にする第1のリガンド、及び表面を特異的位置に標的化する第2のリガンドを提示する表面又は粒子を使用することによって達成される。標的化リガンドは、実体に異なる位置で結合することによって粒子を標的化する化学的部分又は生物学的部分であり得る。代替的には、標的化リガンドは、粒子を他の粒子から分離可能とする或る特定の性質を粒子に付与する実体であり得る。例えば、リガンドは蛍光部分、色素、荷電部分、又は光学的性質若しくは電磁的性質を有する部分であり得る。本発明の別の態様では、標的化リガンドはリガンド自体ではなく、むしろ粒子の特異的性質である。
【0070】
本発明の表面及び新規の成長因子は、ウェーブバッグ、ローラーボトルを含むが、これらに限定されない様々なフォーマットでの幹細胞、前駆細胞及び他のMUC1陽性細胞の成長、懸濁液中での成長に使用すること、並びに生きた宿主を含む任意のタイプの格納容器内で使用することが想定される。格納容器は容器への細胞の接着を防止するために運動が維持される。表面に固定化されたリガンドと細胞上のそれらの同種標的との間の相互作用により、細胞を喪失することなく培地の交換が可能になる。細胞を採取するか又は枯渇させることが所望される場合、粒子であり得る表面は、遠心分離、重力、電磁場又は電場によって単離することができる。作用物質を添加して細胞を表面から放出させてもよい。過剰の親和性リガンドを、それらが細胞表面上の受容体への結合について競合し、それにより細胞が粒子から放出されるように溶液中に遊離させて添加することができる。一実施形態では、親和性リガンドが抗体である場合、抗体を粒子から放出させる働きをする抗体のFc部分が過剰に添加され、細胞+活性化リガンドが溶液中で遊離する。別の実施形態では、リガンドはNM23又はその突然変異体である。
【0071】
本発明は、四量体及び六量体の形成を優先させるNM23野生型又は突然変異体を使用して、幹細胞、前駆体又は幹様となるように誘導される細胞の分化を、核酸、siRNA、マイクロRNA又はタンパク質の導入によって誘導することを更に開示する。
【0072】
本発明は、幹細胞及び幹様細胞の分化を誘導する方法も含む。MUC1とその二量化リガンドとの相互作用を遮断するリガンドが分化を誘導する。例えば、NM23とMUC1細胞外ドメインとの相互作用を遮断するMUC1の細胞外ドメインの配列を十分に含有するペプチドの添加は、分化を誘導する。同様に、低濃度の抗MUC1抗体のFab(一価)の添加は、多能性を促進し、分化の開始をもたらす受容体二量化(dimeirization)を防止する。MUC1細胞外ドメインペプチド又はMUC1に結合する抗体のFabを培養培地に添加するか、又は表面に付着させることができる。次いで、幹細胞を採取し、抗MUC1FabのMUC1細胞外ドメインペプチド等のリガンドを提示する表面上に再プレーティングして、分化を誘導することができる。マイクロRNA 145(miR−145)は、MUC1を抑制し、その際に分化を誘導する。miR−145を培養中の幹細胞及び前駆体に添加して、分化を促進することができる。対照的に、miR−145に特異的なsiRNA等のmiR−145の阻害剤を添加して、幹細胞及び幹様細胞を成長させて、それらの分化を阻害することができる。
【0073】
リガンド−ポリマー成長表面:
ポリマー又はデキストリン若しくはシクロデキストラン等の高分子への本発明のリガンドの付着は、標的幹細胞及び前駆細胞を捕捉し成長させるそれらの能力を大きく改善する。得られる表面は溶液中のリガンドを模倣する。タンパク質及び抗体の両方のシクロデキストランへの共有結合的付着は、リガンドを表面上に直接的に吸着させた場合と比較して、細胞接着を増大させて、必要とされるリガンドの量を大きく減少させた。シクロデキストランに連結したNM23又は抗MUC1等のリガンドは、培地中の更なる成長因子を必要とすることなく、最小培地中の胚性幹細胞の成長を支持した。抗体並びに抗MUC1及びNM23等の同種タンパク質は、他のポリマー並びに多孔質膜及び足場を含む他の表面に付着することができる。本発明は、構造化された表面及び構造化されていない表面の両方を含む。例えばステント、耳等の人工構造を、幹細胞及び前駆細胞の付着を容易にする生物学的作用物質及び/又は化学的作用物質でコーティングすることができる。これらのリガンドは任意で、幹細胞又は前駆細胞に、それらの成長及び/又は分化に影響を与える栄養素又はシグナルを提供し得る。
【0074】
合成抗体成長表面:
本発明は、細胞成長培地、更には細胞の付着を容易にする表面コーティングへの成長因子のような合成リガンドの使用も意図する。例えば、細胞表面タンパク質に結合する小分子は、標準的なスクリーニング方法を用いて容易に同定される。本発明者らは、MUC1細胞外ドメイン、特にPSMGFRペプチドに結合する小分子を以前に開示した。これらの合成分子を続いて、非接着性細胞(幹細胞、iPS細胞、及びMUC1を発現する造血幹細胞のような初期前駆体等)の吸着及び成長のために表面に非共有結合的又は共有結合的に付着させることができる。合成リガンドが二量化によって活性化される成長因子受容体に結合する場合、小分子の活性化二量体は2つの小分子を共有結合的に結び付いて二量体とすることによって作製することができる。好ましい実施形態では、小分子はPSMGFRペプチドに結合し、小分子はそれらが二量体となり、人工成長因子として機能するように成長因子受容体に結合する。本発明の別の態様では、小分子の単量体を、それらが二量体として振舞うのに十分なほど接近するように表面に付着させることができる。すなわち、表面は、小分子が受容体を活性化する確定された配置で細胞表面受容体に提示されるようにリンカーとして働く。これらの小分子二量体は、例えば、成長培地に添加する、表面に吸着又は共有結合的に付着させる等の天然の成長因子と同じ方法で使用することができる。合成表面はa)より安価に製造され、b)長期の保管が可能であり、及びc)分解に影響されない可能性がある。本発明者らは、MUC1の細胞外ドメインに高い親和性をもって結合する小分子を以前に記載した。抗MUC1抗体を模倣する小分子二量体(二価)は、小分子をリンカーに連結することによって合成される。合成抗体は、プレート表面に直接的に又はポリマーコーティングを介して固定化することができる。
【0075】
本発明は、本明細書中に記載される具体的な実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際、本明細書中に記載される実施形態に加えて、本発明の様々な変更形態が、以上の記載及び添付の図面から当業者に明らかとなる。かかる変更形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。以下の実施例は限定としてではなく、本発明の例示として与えられる。
【実施例】
【0076】
実施例1.マトリゲルに付着させて、最小培地+抗MUC1抗体において培養した多能性幹細胞は、bFGF及び線維芽細胞フィーダー細胞に由来する馴化培地を添加した場合の成長よりも分化せずにより速く増殖する
H9 hESC(WiCell)又はBG01v/hOG(Invitrogen)を、6ウェルプレート(BD Falcon)においてマイトマイシンC不活性化Hs27ヒト包皮線維芽細胞(ATCC)上、37℃及び5% COで培養した。hESC培養培地は、20%ノックアウト血清代替物、1%非必須アミノ酸ストック、0.1mM β−メルカプトエタノール(全てInvitrogen製)及び4ng/mlのヒト塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF、Peprotech)を有するDMEM/F12/GlutaMAX Iからなるものであった。細胞を5日〜7日毎に1:3の比率で手作業で解離することによって継代し、培地を48時間毎に交換した。幾つかの実験においては、hESCを、30%Hs27馴化培地及び4ng/mlのbFGFを添加したhESC培養培地を有するマトリゲル(BD Biosciences)上で成長させた。抗MUC1を添加した他の実験においては、馴化培地及びbFGFは除外した。これを「最小培地」(MMと略される)と称する。
【0077】
図1は、抗MUC1で処理したヒト幹細胞コロニーのOCT4免疫蛍光を示す。H9細胞をトリプシン解離し、マトリゲルでプレコーティングした8ウェルチャンバースライドに4×10細胞/ウェルで播種した。5週間1日おきに培地を交換し、抗体を二価抗MUC1について1μg/mlという最終濃度で添加した。細胞をOCT4特異的抗体(Santa Cruz、クローンH−134及びクローンC−10)及びDAPIで染色した。
【0078】
図1は、5週間の成長の後、最小培地+抗MUC1抗体において培養した場合にヒト胚性H9幹細胞が100%の多能性をもって(pluripotently)成長したことを示している。最小培地+bFGF及びフィーダー細胞に由来する30%馴化培地を供給したこと以外は同様に成長させた細胞は、増殖がより小さく、より分化していた。核のDAPI染色と多能性細胞を特定するOCT4染色とを比較されたい。点線は未分化の部分の境界を示している。
【0079】
実施例2.マトリゲル上で抗MUC1において培養した多能性幹細胞は、安定な核型を維持し、正常に分化する
BG01v/hOG hu ES細胞(Invitrogen)をマトリゲル上にプレーティングし、最小培地(実施例1を参照されたい)+ウサギポリクローナル抗MUC1抗体(SRY 2a)において、80ng/mlで6ヶ月間にわたって18継代の間培養した。細胞をペレット化し(pelleted)、DNA抽出し、核型分析を外注した。図2は、18回の継代の終了時の核型が変化しなかったことを示している。この幹細胞株は三染色体(tri-somal)異常を有するが、核型が安定であり、抗MUC1において他の成長因子の非存在下で培養することによって変化しなかったことは妥当であることに留意されたい。
【0080】
複数回継代したBG01v/hOG細胞のこの同じバッチから、未分化の幹細胞をコラゲナーゼで処理することによって採取した後、最小培地中に懸濁し14日間置いた。この期間中、分化を促進するために抗MUC1抗体を取り除くことに留意されたい。これによって細胞が胚様体(embroid bodies)を形成するが、これをゼラチン上にプレーティングし7日間置いた後、3つの生殖系列のマーカーを認識する抗体で染色した:図3A)細胞はOCT4陰性であり、分化したことが示された;図3B)内胚葉のマーカーであるαフェトプロテインに陽性であった;図3C)外胚葉のマーカーであるネスチンに陽性であった;及び図3D)中胚葉生殖系列のマーカーである平滑筋アクチンに陽性であった。
【0081】
実施例3.多能性幹細胞の成長を促進する表面
MUC1の細胞外ドメインに結合し、それを二量化するリガンドを提示する表面は、プレート表面に接着する方法を多能性幹細胞に提供し、更にMUC1の成長因子受容体機能を活性化する。細胞培養フラスコ、ペトリ皿又はマルチウェルプレートを、MUC1細胞外ドメインの配列:GTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGA(配列番号1)を有するペプチドに対して産生されたウサギポリクローナル抗体でコーティングした。直前に与えられた配列に結合する抗体は、本明細書中では抗MUC1抗体又は抗PSMGFR抗体と称される。組織培養処理した及び裸のプラスチックプレート及びポリスチレンプレートを使用した。
【0082】
一例においては、抗MUC1抗体(Zymed: custom antibody service)を、96ウェル細胞培養処理プレート(組織培養試験プレート96F TPP #92096)のウェルに30ug/ml、100ug/ml又は300ug/ml添加し、4℃で一晩吸着させた。未分化のBG01v/hOG(Invitrogen)幹細胞を最小培地中に懸濁した。最小培地は400mlのDME/F12/GlutaMAX I(Invitrogen#10565−018、100mlのノックアウト血清代替物(KO−SR、Invitrogen#10828−028)、及び5mlの100×MEM非必須アミノ酸溶液(Invitrogen#11140−050)、及び0.9ml(0.1mM)のβ−メルカプトエタノール(55mMストック、Invitrogen#21985−023)である。BG01v/hOG幹細胞を、抗MUC1抗体をコーティングした表面上に1ウェル当たり10000細胞の密度でプレーティングした。細胞を24時間付着させた。次いで、細胞を最小培地単独において培地を48時間毎に交換しながら5日間培養した。
【0083】
比較のために、対照ウェル中の細胞を、4ng/mlのbFGF及びHS27線維芽細胞に由来する30%馴化培地を添加した培地中で培養した。図4は、生細胞からの蛍光をこれらの細胞を成長させた表面上での抗MUC1抗体密度に応じて測定する、カルセインAM(分子プローブ)染色によるグラフを示す。図4のグラフは、抗MUC1表面上で成長させた細胞が他の任意の成長因子の非存在下で増殖することを示している。成長はbFGF及びフィーダー細胞から分泌された特性化されていない因子の添加によって緩やかにしか向上しない。陰性対照として、無関連抗体を表面上にプレーティングした。これらの表面上にプレーティングした幹細胞は接着せず、浮遊しているか又は24時間の付着期間の終了時までに死滅していた。
【0084】
並行して、得られた幹細胞をDAPI(核染色剤)及び抗OCT4で二重染色した。OCT4陽性とDAPI染色との1:1の相関から、得られる細胞が多能性であったことが確認される(図5を参照されたい)。
【0085】
実施例4.ヒト多能性幹細胞は、MUC1刺激因子を溶液中に添加した又は添加していない抗MUC1抗体表面上で増殖する
ヒト胚性幹細胞株を、組織培養処理プレート、ポリスチレンプレート又はチャンバースライドプレートのいずれかに吸着させた抗MUC1抗体上で成長するその能力について試験した。100ug/mlの抗MUC1をプレート上に吸着させて、4℃で一晩吸着させた。未分化のヒトH9胚性幹細胞を96ウェルプレートの1ウェル当たり10000細胞若しくは40000細胞、又は8ウェルプレートの1ウェル当たり25000細胞でプレーティングした。いずれの場合においても、未分化の幹細胞を抗MUC1表面上で付着及び増殖させて、最小培地単独において又は最小幹細胞成長培地に抗MUC1を添加して培養した。次いで、未分化のH9幹細胞をA)最小培地、B)最小培地+80ng/mlの抗MUC1抗体、又はC)最小培地+4ng/mlのbFGF及び不活性化HS27線維芽細胞フィーダー細胞に由来する50%馴化培地において培養した。実験は3連で行った。未分化の幹細胞が抗MUC1表面に接着した。未分化のコロニーは、抗MUC1抗体を最小培地に更に添加した場合に最も速く成長した。しかしながら、同様の形態及び品質の未分化幹細胞コロニーが、最小培地単独において培養したウェル内に一両日中に展開した。未分化の(undiffereniated)幹細胞コロニーの増殖量及び品質は、細胞を最小培地、最小培地+抗MUC1、又は最小培地+bFGF及び線維芽細胞に由来する馴化培地のいずれで培養したかに関わらず同程度であった。多能性幹細胞が得られ、5日目〜7日目に分割することができたが、これは標準的なフィーダー細胞、bFGFプロトコルに従って成長させた幹細胞に典型的である。図6は、異なる培地:6A)最小培地、6B)最小培地+80ng/mlの抗MUC1抗体、又は6C)最小培地+4ng/mlのbFGF及び線維芽細胞フィーダー細胞に由来する50%馴化培地において培養した場合の成長させたウェルの写真を示す。1と付されたパネル(例えばA1、B1、C1)は、3日間の成長後に撮影した写真であり、A2、B2及びB3は7日目に撮影した同じウェルの写真である。
【0086】
実施例5.幹細胞を採取する方法
上記実施例4で成長させた幹細胞は、7日目に採取及び分割することが可能な状態であった。細胞は抗MUC1表面上に固定化されているため、プレート表面上の抗MUC1抗体への結合について細胞表面受容体と競合するペプチドを添加することによって放出させることができると推論した。配列GTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGA(配列番号1)を有するペプチドは、MUC1受容体の細胞外ドメインに相当し、抗MUC1抗体が産生されるペプチドでもあったが、本明細書中ではMUC1ecdペプチド又はPSMGFRペプチドと称される。MUC1ecdペプチドを成長幹細胞に10uMの濃度で添加し、30分間インキュベートした。その時点で、幹細胞が表面から放出されていることが観察された。上清中の幹細胞を回収し、すすいで、新たな抗MUC1表面上に再プレーティングし、そこで細胞を接着させ増殖を続けた。この手順は、ヒト胚性幹(huES)細胞株BG01v/hOG(Invitrogen)、続いてhuES H9を使用しても首尾よく行われた。図6Dは、抗MUC1抗体表面上で成長させて、単一細胞から培養し、次いで競合ペプチドを用いた放出によって採取し、新たな抗MUC1表面上に再プレーティングし、そこで増殖を続けたH9幹細胞を示す。
【0087】
実施例6.β−シクロデキストリンに連結した抗MUC1抗体は、MUC1成長因子と細胞表面受容体との溶液相互作用を刺激する
抗MUC1抗体を、標準的な連結プロトコル(Fraschini, C.; Vignon, M.R. Selective oxidation of primary alcoholgroups of β-cyclodextrin mediated by 2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-oxylradical (TEMPO). Carbohydrate Research 2000. 328(4):585-589)に従ってカルボキシ−β−シクロデキストリン(Cβ−CD)に共有結合的に連結した。96ウェル細胞培養処理プレート(組織培養試験プレート96F TPP #92096)を、β−シクロデキストリンに連結した抗MUC1によって0ug/ml、10ug/ml、30ug/ml、100ug/ml、300ug/ml又は1000ug/mlの最終抗体濃度でコーティングした。各々のウェル内のβ−シクロデキストリン濃度は一定に維持し、抗体濃度のみを変化させた。対照として、抗MUC1抗体をシクロデキストリンなしにプレート上に直接吸着させた。BG01v/hOG幹細胞の単一細胞懸濁液を作製し、細胞を10000細胞/ウェルの密度で最小培地中にプレーティングした。幹細胞は抗体表面とシクロデキストリン表面に連結した抗体との両方に付着し、その上で増殖した。他の成長因子は添加しなかった。プレーティングの2日後、生細胞をカルセインAM試薬によってアッセイした。図7のグラフは、最小培地における幹細胞成長がβ−シクロデキストリン上に提示される抗MUC1抗体によって支持され、おそらくは成長細胞への抗体の3次元提示のために、必要とされる抗体量が培養プレート上に吸着した裸の(naked:ネイキッド)抗体より少ないことを示している。
【0088】
実施例7.任意の細胞表面抗原に対する抗体は幹細胞を表面に付着させて、従来の手段によって又は抗MUC1抗体を最小培地に添加することによって培養した場合に増殖する
SSEA4抗体、Tra 1−60抗体及びTra 1−81抗体は、最小培地+抗MUC1抗体において培養した場合に多能性幹細胞の成長を促進する。96ウェル細胞培養処理プレート(組織培養試験プレート96F TPP #92096)を、抗SSEA4抗体(Santa Cruz)、抗Tra 1−60抗体(Santa Cruz)又は抗Tra 1−81抗体(Santa Cruz)を用いて、滅菌PBS中0ug/ml、3ug/ml、10ug/ml、30ug/ml及び100ug/mlの最終濃度、4℃で、別個に3連でコーティングした。翌日、細胞をPBSですすいだ。マトリゲル上で成長させて、最小幹細胞成長培地+線維芽細胞に由来する30%馴化培地+4ng/mlのbFGFにおいて培養したBG01v/hOGヒト胚性幹細胞(Invitrogen)を使用して、単一細胞懸濁液を作製した。細胞を各々のウェルの最小培地中に1ウェル当たり10000細胞の密度でプレーティングした。翌日、培地をウェルから除去し、最小培地+80ng/mlの抗MUC1抗体に置き換えた。培地を1日おきに交換し、細胞をカルセインAM試薬によってアッセイした。図8は、幹細胞が表面に細胞表面タンパク質及びその同種抗体との相互作用によって付着することができ、次いで最小培地+抗MUC1抗体において、又は任意の標準的な幹細胞成長培地を用いて培養することができることを示している。
【0089】
同様に、未分化のH9幹細胞を、抗SSEA4抗体を予め吸着させた(100ug/ml)96ウェルプレートに1ウェル当たり10000細胞の密度でプレーティングした。幹細胞を最小幹細胞成長培地+80ng/mlの抗MUC1抗体において8日間培養した。未分化の幹細胞コロニーが展開及び増殖した。
【0090】
実験を並行して行ったが、それによりH9ヒト胚性幹細胞が、96ウェルプレート及び12ウェルプレートの表面上に吸着した抗SSEA4及び抗Tra 1−81に結合したことが示された。次いで、細胞を、4ng/mlのbFGF及びHS27線維芽細胞フィーダー細胞に由来する50%馴化培地を含有する標準的な幹細胞成長培地、又は最小培地+80ng/mlの抗MUC1抗体、又は最小培地+8nMの組換えNM23−S120Gにおいて培養した。いずれの場合においても、標準的な方法によって成長させた形態学的に同一な幹細胞コロニーである未分化の幹細胞コロニーが形成された。無関連抗体で抗MUC1抗体を置き換えるか、又は細胞を最小培地単独において培養した場合、幹細胞は約1日以内に死滅した。
【0091】
実施例8.MUC1ecdペプチドの添加は分化を誘導する
フィーダー細胞、マトリゲル又は成長表面上で成長する未分化のヒト幹細胞は、MUC1ecdペプチドを添加することによって迅速に分化を誘導することができる。このペプチドは、MUC1成長因子受容体への結合について天然リガンドと競合する。天然リガンドとMUC1との相互作用は多能性細胞の成長を促進する。この相互作用を遮断することで、多能性幹細胞の成長が阻害され、細胞の分化が誘導される。マトリゲル上で成長するH9幹細胞は、MUC1ecdペプチドによる処理後に約3倍速く分化した。MUC1細胞外ドメインペプチドを使用して、MUC1のリガンドをコーティングした表面から幹細胞を採取することができる。分化速度の増大は、採取した細胞を抗MUC1と共にインキュベートし、競合させてペプチドを取り除き、続いてすすいで再プレーティングすることによって阻止された。
【0092】
実施例9.最小培地中のNM23は、ヒト幹細胞の培養について、現行の技術水準のbFGF+HS27線維芽細胞フィーダー細胞に由来する馴化培地と同等である
未分化のH9ヒト胚性幹細胞を手作業での解離によって採取した。1辺がおよそ0.1cmのコロニー片を最小培地中に混合し、製造業者の指示に従って幹細胞品質のマトリゲルでコーティングした24ウェルプレート上に均一に分散させた。未分化のコロニー片を、6ウェルプレートの3つのウェルから24ウェルプレートに移した。最小培地(MM)中4nM又は8nMの濃度の組換えNM23−S120G(優先的に二量体を形成する突然変異体)を、現在は4ng/mlのbFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)+不活性化HS27線維芽細胞フィーダー細胞に由来する50%馴化培地(CM)である現行の技術水準と比較した。新たにプレーティングした細胞をbFGF/CMで最初の24時間、続いてMM中のNM23に替えて処理することの影響も試験した。4日間の培養の後、分化したコロニーに対する未分化のコロニーの数を計数した。結果を図9中にグラフ化する。対照と付されたバーは、4ng/mlのbFGF及び不活性化HS27線維芽細胞フィーダー細胞に由来する50%CMにおけるマトリゲル上での標準的な培養方法を指す。グラフは、1)NM23+MM中で成長する細胞がbFGF+CMよりも速く成長したこと、2)NM23+MMが現行の技術水準よりも分化が少なかったこと、3)最初の24時間のbFGF+CMの添加が、NM23+MM中で直接培養したものよりわずかに悪かったこと、及び4)この傾向が最高濃度のNM23(8nM)で最も良好であったと示されるように思われることを示している。
【0093】
細胞を5日目に分割して、マトリゲル上に再プレーティングした。次の5日間、細胞を4nM、8nM、16nM、32nM又は64nMで培養した。結果から、NM23−S120Gの濃度の増大がより良好に作用したことが示される。16nM及び32nMのNM23−S120Gによって、bFGF+CM対照とほぼ同じ数及び品質の未分化のコロニーが産生された。16nMでは、各々のウェルは4つ又は5つのコロニーを生じ、そのうち1つのみが分化していた。32nMのウェルは各々合計して3つのコロニーを生じ、1つが部分的に分化していた。bFGF+CM対照は2つの未分化のコロニーを産生し、一方のウェルでは1つが部分的に分化しており、他方のウェルでは1つが未分化で、2つが完全に分化していた。NM23−S120Gによって、bFGF/CMよりもはるかに大きなコロニーが産生された。
【0094】
実施例10.シクロデキストランに連結した抗MUC1+抗MUC1又はシクロデキストランに連結したbFGF−抗MUC1抗体は、伝統的な培地又は最小培地+MUC1刺激因子において幹細胞の付着及び成長を促進する
標準的な方法によってHS27線維芽細胞、続いてマトリゲル上で2継代の間成長させたヒト胚性H9幹細胞を、実施例9に記載されるように手作業で解離させて、採取した。6ウェルプレートの2つのウェルからの未分化コロニー片を、シクロデキストランに共有結合的に連結した抗MUC1抗体でコーティングした24ウェルプレートのウェル上で継代した。次いで、細胞を160ng/mlという最終濃度の最小培地中の抗MUC1抗体、又は4ng/mlのbFGF及び50%HS27馴化培地(CM)において培養した。数時間内に付着した細胞は、成長速度の加速を除いて、フィーダー細胞又はマトリゲル上での成長で期待されるように成長した。細胞はプレーティング後5日目〜6日目に分割することが可能な状態であった。未分化のコロニー片を手作業で採取し、新たなシクロデキストラン−抗MUC1コーティングプレート上に再プレーティングし、そこで増殖及び未分化コロニーの形成を続けた。細胞数、コロニー形態及び分化の阻害は、抗MUC1及びbFGF+HS27 CMにおいて培養したウェル間で同程度であった。
【0095】
実施例11.リガンドをシクロデキストランに連結する方法
デキストランカルボキシル化:
材料:
デキストラン500(平均分子量500kD、Aldrichカタログ#31392、ロイコノストック種から単離、Sigma-Aldrich、St. Louis、Missouri)、ブロモ酢酸及びNaOH(Sigma-Aldrich)、I型HO(RiccaChemical Company、Arlington、Texas)、20000MWCO透析チューブ又はスライド(Fisher Scientific、Waltham、Massachusetts)。
【0096】
手順:
NaOHの2N溶液を、I型HOを用いて調製した。清浄な乾燥20mL容シンチレーションバイアルに6mLの上記溶液を添加した。これに834mgのブロモ酢酸を添加し、溶解させると溶液は濁った。次いで、1.00gのデキストラン500をバイアルに添加し、溶液をボルテックスし、光超音波処理すると、5分以内に完全な溶解が得られた。次いで、この溶液を室温で24時間攪拌した。次いで、溶液を水道水を流して8時間透析し、その後0.1N HClで18時間透析し、その後蒸留水で12時間透析した。次いで、溶液を凍結乾燥して、アルゴン下、−20℃で保存した。
【0097】
デキストラン−タンパク質/抗体連結:
材料:
社内で調製したカルボキシル化デキストラン500、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)(Sigma-Aldrich)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(Sigma-Aldrich)、連結させるタンパク質又は抗体、I型HO(Ricca Chemical Company)、エタノールアミン(Sigma-Aldrich)。
【0098】
手順:
0.5mg/mLのカルボキシル化デキストラン500のI型HO溶液を調製した。100mM EDC/100mM NHSのI型HO溶液を調製した。1.5mL容エッペンドルフチューブにおいて、1mLアリコートのデキストラン溶液を12μLのEDC/NHS溶液に添加した。混合物をボルテックスし、室温で15分間振動させて、カルボン酸残渣を活性化した。一方で、6.67nmolのタンパク質又は抗体(適切な緩衝液に溶解した)を別個のチューブに等分した。15分間の活性化の後、110μLの活性化デキストラン溶液を、連結させるタンパク質又は抗体を含有するチューブにピペットで取った。溶液を穏やかにボルテックスして混合した後、チューブを室温で2時間軽く振動させた。5μLのエタノールアミンをチューブに添加し、室温で更に15分間振動させた。チューブの内容物をリン酸緩衝食塩水(pH7.4)で4℃で少なくとも18時間透析した。溶液をそのまま(fresh)使用しても、又は凍結乾燥し、−20℃で保存した後、使用前に再構成してもよい。
【0099】
カルボキシル化の最適量及び連結させるタンパク質の濃度は、幹細胞の成長をカルボキシル化及びタンパク質濃度を体系的に変化させた24個の表面上で試験することによって経験的に決定したことに留意されたい。
【0100】
実施例12.H9幹細胞をシクロデキストランに連結した抗MUC1に付着させて、最小培地中のNM23−S120G又はHS27馴化培地中のbFGFにおいて培養した
24ウェルプレートを、実施例11に記載されるように、シクロデキストランに連結した抗MUC1でコーティングした。H9細胞を実施例9に記載されるようにこれらの表面上で継代し、最小培地中の組換えNM23−S120Gにおいて1nM、2nM、4nM又は8nMという最終濃度で培養した。別の条件では、細胞を4ng/mlのbFGF及び50%HS27馴化培地(CM)で24時間処理した後、最小培地中のNM23−S120Gに交換した。実験は2連で行った。4日間の成長の後、分化したコロニーに対する未分化のコロニーの数を計数し、コロニーの合計数に対する未分化のコロニーの割合としてグラフ化した。100%未分化であったコロニーのみを未分化として計数した。図10は、bFGF+CMがNM23−S120Gの濃度が不十分である場合にのみ有用であったことを示している。さらに、結果は、最小培地中のNM23−S120Gが、コロニー形態、数及び分化の阻害の観点からbFGF+線維芽細胞フィーダー細胞馴化培地と同様又はより良好に機能したことを示した。
【0101】
実施例13.培養フラスコをNTA−Niでコーティングする手順
材料:
24ウェルカルボン酸提示表面細胞培養プレート(BD Biosciences Purecoat:#356775)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、Nα,Nα−ビス(カルボキシメチル)−L−リシン水和物、I型HO、滅菌シリンジ(20mL容)、0.45μm PVDF(登録商標)膜シリンジフィルター。
【0102】
手順:
誘導体化される1つのプレート当たり75mLの10mM EDC/10mM NHS溶液を調製した。滅菌シリンジ及びシリンジフィルターを用いて、EDC/NHS溶液を各々のウェルに濾過して、ウェルを約80%満たした。プレートに蓋をし、プレートシェーカーで、室温で15分間穏やかに振盪した。プレートを振盪している間、1つのプレート当たり約40mLの10mM Nα,Nα−ビス(カルボキシメチル)−L−リシン水和物を調製した。15分間のプレートの活性化の後、プレートを空にし、I型水で3回すすいだ。新たな滅菌シリンジ及びシリンジフィルターを用いて、Nα,Nα−ビス(カルボキシメチル)−L−リシン水和物の溶液を各々のウェルに濾過し、ウェルを半分位まで満たした。プレートに蓋をして、室温で3時間穏やかに振盪した。3時間後、プレートを空にし、I型水で5回すすいだ。残存する活性化NHSエステルを、この時点で1%エタノールアミンの滅菌溶液を添加し、室温で15分間インキュベートした後、10%炭酸ナトリウムの滅菌溶液を添加し、室温で30分間インキュベートすることによってクエンチした。これは、プレートを滅菌I型HO中に4℃で少なくとも48時間〜72時間入れておくことによっても達成することができる。残留NHSエステルをクエンチするか、又は加水分解してカルボン酸に戻した後、ウェルを滅菌I型HOで満たし、続いてパラフィルムで包み、蓋をし、スズ箔で包み、4℃で保存しなくてはならない。プレートを使用直前に再度滅菌I型HOですすぐ必要がある。使用前に1%硫酸ニッケル溶液をプレートに添加した後、PBSですすいだ。
【0103】
エタノールアミン溶液の使用によって、残留NHSエステルがヒドロキシル頭部基を提示するアミドに変換されることに留意されたい。これによって表面の化学的性質が変化する。このことが望ましくない場合、炭酸塩溶液浸漬又は長期の水溶液浸漬(aqueous soak)によって、残り全てのNHSエステルを加水分解して元のカルボン酸に戻す。
【0104】
実施例14.H9幹細胞は、ヒスチジンタグを担持するリガンドでコーティングしたNTA−Niプレートに付着した
12ウェルプレートを、実施例13に記載されるようにNTA−Niによって誘導体化した。ヒスチジンタグ付きNM23−S120G、配列HHHHHHSSSSGSSSSGSSSSGGRGDSGRGDS(配列番号5)の合成ペプチド(RGDペプチド)、及びヒスチジンタグ付き組み換えプロテインG(Minerva)を、NTA−Niコーティングウェルに200nMという最終濃度で別個に添加し、15分間インキュベートした。プレートをPBS中ですすいだ。プロテインGウェルに対し、抗SSEA4及び抗Tra 1−81を200nMで添加し、15分間インキュベートした後、PBSで洗浄した。実施例9に記載されるように、マトリゲル上で2継代の間成長させたH9細胞の6ウェルプレートの3つのウェルからコロニー片を採取し、ウェル上にプレーティングした。幹細胞を最小培地中の8nM NM23−S120G、4ng/mlのbFGF+HS27CM、8nM NM23−S120G+T47D MUC1陽性がん細胞から回収した50%馴化培地(「Ca CM」)、又は4ng/mlのbFGF+50%Ca CMにおいて培養した。細胞は24時間以内にプレートに付着し、未分化幹細胞の増殖が観察された。プレーティング後3日目に、未分化のコロニー及び分化したコロニーを計数し、プロットした(図11Aを参照されたい)。以下のものの代表的な写真(40倍)を撮影した:図11B)NM23−S120G表面、8nM NM23−S120G+50%Ca CMにおいて培養、図11C)RGDペプチド表面、8nM NM23−S120G+50%Ca CMにおいて培養、図11D)RGDペプチド表面、4ng/mlのbFGF+50%HS27 CMにおいて培養、図11E)プロテインG表面、抗SSEA4、次いで8nM NM23−S120G+50%Ca CMにおいて培養、図11F)プロテインG表面、抗Tra 1−81、次いで8nM NM23−S120G+50%Ca CMにおいて培養、図11G)RGDペプチド表面、4ng/mlのbFGF+50%Ca CMにおいて培養。この実験の最良の条件は、NTA−Ni表面に付着させ、次いで抗SSEA4又はTra 1−81に親和性付着させ、次いでMM又はCaCM中のNM23−S120Gにおいて培養したHisタグ付きプロテインGから得られた。
【0105】
同様の実験において、他のMUC1陽性がん細胞(ZR−75−1及びZR−75−30)に由来する馴化培地を使用したが、同じ結果が得られた。
【0106】
実施例15.MUC1陽性がん細胞から回収した馴化培地は、線維芽細胞に由来する馴化培地よりも良好に幹細胞の成長を促進し、分化を阻害する
ヒト胚性幹細胞(H9)を、標準的な方法に従って6ウェルプレートにおいてマトリゲル上で成長させた後、手作業での解離によって採取した。6ウェルプレートの3つのウェルからのコロニー片を、24ウェルNTA−Niコーティングプレートのウェル上に分散させた。細胞表面上のタンパク質又は培地中のタンパク質が、プレート表面に付着した金属キレートに接着するか否かを調べることに興味を持った。プレーティングしたコロニー片に添加した培地は以下のいずれかであった:a)4ng/mlのbFGF+HS27(線維芽細胞)馴化培地(CM)、b)4ng/mlのbFGF+T47D(MUC1陽性乳がん細胞株、これらの細胞に由来するCMは本明細書中では「Ca CM」と称される)に由来するCM、c)最小培地(「MM」)中の4nM NM23、d)MM中の8nM NM23、e)Ca CM中の4nM NM23、又はf)Ca CM中の8nM NM23。24時間後、最小培地又はCM又はCa CM中の細胞が表面に付着していたことが観察されたが、使用したNM23が、NTA−Niプレートによって容易に捕捉され得るヒスチジンタグ付き組換えタンパク質であったことを考えると、なぜbFGF/CM又はbFGF Ca CM中の細胞が付着するかについての明白な理由はなかった。がん細胞馴化培地(Ca CM)中で成長させた細胞が他の条件よりもはるかに良好に成長していたことが観察された。培地を48時間毎に交換して6日間培養した後、プレートを幹細胞コロニーの形態、コロニーの数及び分化の程度について分析した。4ng/mlのbFGF+がん細胞馴化培地において培養した幹細胞は、対照のbFGF+HS27よりも多くのコロニーを形成し、はるかに少ない(全くない)分化を有していた。NM23単独において培養した細胞は成長し、コロニーを形成したが、NM23+がん細胞馴化培地において培養した細胞は、他のどの条件よりも多くのコロニーを形成し、コロニーは約80%〜85%が未分化であり、完全に形成され、分割することが可能な状態であった。一方、フィーダー細胞又はマトリゲル上での現行の技術水準の方法では、平均して30%〜40%が分化しているが、同じ段階に到達するには9日間かかる。図12は、9日目のコロニー数のグラフを示す、NM23+がん細胞馴化培地(Ca CM)について20個のコロニーでグラフ化したが、細胞は完全にウェル全体を覆っており、実際に計数することができなかった。9日目には、対照bFGF+HS27線維芽細胞馴化培地(HS27CM)の割合にほぼ等しい未分化の部分が未だ存在していたが、NM23で刺激したウェルにおいては、細胞ははるかに速く増殖した。
【0107】
実施例16.細胞表面より遠位のペプチド領域に結合する抗体が細胞接着に好ましい
細胞表面より遠位のMUC1細胞外ドメインの部分に結合する抗体は、幹細胞接着を容易にすることについて細胞表面に近い領域に結合する抗体よりも良好である。MUC1の細胞外ドメインは、約45アミノ酸長である。この45アミノ酸ペプチドに対して産生されたポリクローナル抗体は、本明細書及び先願においては配列GTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGA(配列番号1)を有するPSMGFRと称され、それが付着した表面への幹細胞の接着を容易にした。モノクローナル抗体のスクリーニングによって、細胞表面に近いMUC1細胞外ドメインの部分を認識する抗体は、これらの同じモノクローナル抗体が培地に添加した場合に幹細胞の成長を刺激したにもかかわらず、表面への幹細胞の接着を促進しなかったことが示された。MUC1受容体の遠位部分に結合する抗体を産生したハイブリドーマを同定するために、ハイブリドーマ上清を96ウェルプレートのウェルに吸着させた後、マトリゲル上で成長させたBG01v/hOG細胞から採取した未分化のコロニー片をプレーティングした。3つのクローンに由来する上清は幹細胞の接着を可能にした。最小培地を48時間毎に交換し、増殖する未分化幹細胞コロニーをプレーティング後9日目に撮影した(図13を参照されたい)。
【0108】
追跡実験においては、ELISAアッセイを行って、これらのハイブリドーマによって分泌された抗体が実際にMUC1細胞外ドメインの遠位部分に結合したか否かを決定した(図14を参照されたい)。以下の2つの欠失ペプチドを合成した:配列QFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGA(配列番号3)を有する、10個のN末端アミノ酸が失われたペプチド(N−10 PSMGFR)、及び配列GTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDV(配列番号4)を有する、C末端の10個のアミノ酸が失われたペプチド(C−10 PSMGFR)。96ウェルプレートのウェルへの幹細胞の接着をもたらしたハイブリドーマ上清は、ELISAアッセイによって、細胞表面に近接した10個のアミノ酸が失われたペプチドに結合するが、遠位の10個のアミノ酸が失われたペプチドには結合しないことが示された。ハイブリドーマ上清上にプレーティングした幹細胞は、完全に形成されたコロニーに成長し、これは最小培地単独において数日間培養した後も未分化であった。
【0109】
実施例17.MUC1抗体を使用して、多能性幹細胞を分化細胞から同定する
MUC1リガンドであるNM23は、未分化のhESC上でMUC1及びOCT4と共局在化するが、3つ全てのタンパク質の免疫反応性が分化を開始したコロニーの部分において失われる。未分化のH9 hESCコロニーがNM23、MUC1及びOCT4に陽性であると染色された。新しく分化したコロニーは、3つのタンパク質のいずれに対する抗体とも反応しなかった。NM23とOCT4及びMUC1との同時発現は、分化を開始したコロニーにおいて最も良く見られる。点線はコロニーの未分化部分と分化部分との間の境界を示す。三重染色実験を以下のものを使用して行った:図15G)抗NM23(緑色)、図15H)抗MUC1(赤色)、図15I)抗NM23(緑色)、抗MUC1(赤色)及びDAPI(青色)。同様のコロニーを以下のもので染色した:図15J)抗NM23(緑色)、K)抗OCT4(赤色)、図15L)抗NM23(緑色)、抗OCT4(赤色)及びDAPI(青色)。スケールバー=100μm。抗NM23はSanta Cruz(クローンNM301)及びBD Biosciences(クローン56)から購入した。抗MUC1は、ZymedによってMinervaのPSMGFRペプチドから特別に作製されたものであった。
【0110】
多能性幹細胞は、生細胞を抗MUC1及び完全長MUC1に結合するVU4H5等の抗体で標識した後、FACS、電磁細胞分離又は同様の技術によって選別することで未分化の幹細胞及び分化した幹細胞の混合プールから単離することができる。MUC1陽性は多能性幹細胞を意味する。生細胞に結合した二価抗MUC1は、成長因子として機能するために続く成長を妨げず、細胞分離に理想的である。
【0111】
実施例18.MUC1抗体を使用して、MUC1初期前駆体を後期前駆体である造血幹細胞から単離する
ヒト臍帯血(ALLCELLS)から得られるCD34陽性造血幹細胞(HSC)を得た(obtaineded)。細胞は、真のHSCであると報告されているCD34+/CD38−の混合物を含有していたが、CD34+/CD38+(次の前駆体段階)も含有していた。細胞を解凍し、ペレット化し、StemSpan製のSFEM(無血清展開培地)中で洗浄し、成長因子を添加しないSFEMで再懸濁した。およそ4000個の細胞を96ウェルプレートのウェルにプレーティングし、接着を防止するためにポリHEMAで被覆した。PSMGFRペプチドで免疫化することによって生成したウサギポリクローナル抗MUC1抗体を、5つのウェルの各々に0ng/ml、80ng/ml、250ng/ml及び2000ng/mlという最終濃度で添加した。細胞を3日目に撮影した(図16A)。プレーティング後5日目に、抗体を細胞に再添加した。
【0112】
プレーティングの11日後に細胞を目視で検査したところ、大半がプレーティングした時点と同じ直径のままであったが、これは細胞が依然として造血幹細胞であり、次の前駆体段階へ進んでいないことの指標となる。同一ウェルから細胞をプールし、抗CD34−FITC及び抗CD38−PE−Cy5で染色した。細胞を分析し、FACS(蛍光活性化細胞選別)によって選別した。図16Bは、MUC1抗体の濃度が増大するにつれ、真の造血幹細胞(CD34+/CD38−)のままである細胞の割合が増加することを示している。その逆もまた真であった。次の前駆体段階(CD34+/CD38+)に進んだ細胞の割合は、MUC1抗体の濃度が最低であるときに最高であった。代表的なウェルの統計から、MUC1抗体による刺激によって、非刺激の細胞よりも多くのCD34+/38−細胞(HSC)及び少ないCD34+/38+(前駆体)細胞が生じることが示される。
【0113】
実施例19.胎児肝細胞のFACS選別及び続くMUC1刺激による成長
完全長MUC1を認識する抗体(VU4H5、Santa Cruz Biotechnology、又はHMPV、BDBiosciences)又は抗MUC1(PSMGFRの免疫化によるウサギポリクローナル抗体、Minerva)を用いたFACS分析を多数の異なる前駆細胞に対して行い、どれがMUC1を発現したかを決定したが、それによりこれらの細胞を単離して、MUC1受容体を刺激することによって展開させることができた。図17Aは、神経幹細胞(RenCell CX、Millipore)がMUC1を発現することを示している。少数の細胞が切断されたMUC1及び切断されていないMUC1の両方を発現する。それらの成長は、抗MUC1又はMUC1を二量化するNM23のような他の作用物質と共に培養することによって刺激される。胎児肝細胞(ALLCELLS)は、ほぼ例外なくMUC1を発現する(図17B)。
【0114】
胎児肝細胞を、最小培地+抗MUC1抗体において図18に示される濃度で培養した。示された成長曲線は、これらのMUC1前駆体の成長がMUC1成長因子受容体の二量化によって刺激されることを示している。最適抗体濃度では、1つの抗体が2つのMUC1受容体を二量化し、抗体が過剰になると、1つの受容体につき1つの抗体が存在し、成長が阻害される。これらの結果から、造血幹細胞及びMUC1を発現する他の前駆細胞を、MUC1受容体を二量化する作用物質を添加することによって展開させることができることが示される。
【0115】
実施例20.hu ES細胞は、任意の細胞表面マーカータンパク質に対する抗体でコーティングした表面に接着し、標準的な幹細胞培地又はMUC1刺激因子を含有する培地において培養することができる
12ウェルプレートを、0.5mlの抗MUC1又は抗SSEA4抗体を用いて100ug/mlの濃度でコーティングした。プレートを4℃で一晩インキュベートした後、滅菌PBS中ですすいだ。マトリゲル上で成長するhu ES H9細胞に由来する未分化のコロニー片を手作業で解離させて、再懸濁した後、表面上にプレーティングした。最終濃度8nMの組換えNM23−S120G(Minerva)、又は4ng/mlのbFGF+50%HS27線維芽細胞馴化培地を含有する培地を添加した。プレーティング後5日目に未分化のコロニーを手作業で採取し、分割して、同様にコーティングした表面上に再プレーティングした。図19のグラフは、幹細胞が最小培地(MM)中のNM23又はbFGF+HS27馴化培地において培養した場合に抗体表面上で成長することを示している。NM23で処理したウェルにおける細胞が、bFGFで処理したウェルにおけるものよりも著しく速く成長することが分かった。
【0116】
実施例21.幹細胞の成長を促進し、分化を阻害するがん細胞馴化培地中の作用物質の同定
MUC1陽性がん細胞に由来する馴化培地は、ヒト幹細胞の成長を促進する一方で、それらの分化を阻害する。幹細胞の成長に影響を及ぼすがん馴化培地中の個別の作用物質を同定することは、2つの理由から望ましいといえる。第1に、これらの作用物質を合成又は組み換えによって作製し、個別の作用物質として成長培地又は表面コーティングに添加して、幹細胞及び或る特定の初期前駆体の成長を促進することができる。第2に、これらの作用物質の同定によって、がんの治療のためにそれらを抑制する戦略が可能となり得る。
【0117】
がん細胞馴化培地Ca CM中のタンパク質を同定するために、Ca CMをMUC1陽性がん細胞から回収し、その個々の成分を、例えばイオン交換、サイズ排除等のカラム分離によって分離することができる。様々な画分を別個に又は組み合わせて、未分化幹細胞の成長を刺激するそれらの能力について試験することができる。次いで、影響を及ぼした画分(複数も可)をマイクロシークエンシング又は質量分析によって分析し、成分の固有性を決定することができる。
【0118】
より直接的なアプローチは、未処理のMUC1陽性がん細胞に由来するCa CMと、miR−145で処理した細胞から回収したCa CMとを比較することである。miR−145は、未分化から分化への幹細胞の移行が起こった場合にその発現が上方制御される制御性マイクロRNAである。この移行中にMUC1の切断が中断され、MUC1の発現が下方制御されることを想起されたい。最近になって、miR−145がMUC1をサイレンシングする(silences)ことが示された。がん細胞をmiR−145で処理することによって、がん細胞の成長及び未分化幹細胞の成長の両方に特徴的な幹様成長ではなく、分化に特徴的な成長の制御へのシフトが引き起こされる。未感作がん細胞及びmiR−145で処理した細胞によって分泌された因子の比較から、幹細胞及びがん細胞の成長の促進に関与するこれらの作用物質が同定され得る。それらは未処理のCa CM中に存在し、処理したCa CM中には存在しない。同定は、同種のタンパク質の分離、続くシークエンシング又は質量分析によって達成することができる。成分はゲル上で分離することができ、未処理のCa CMに特有のタンパク質バンドをゲルから切り出した後、マイクロシークエンシング又は質量分析によって分析する。
【0119】
並行して、未分化の幹細胞に由来する馴化培地を、MUC1細胞外ドメインペプチド等の分化を開始する作用物質で処理した幹細胞から回収した馴化培地と比較する。この場合、未処理の幹細胞によって独自に又は優先的に分泌された成分は、幹細胞の成長を促進するか又は多能性を誘導する作用物質として望ましいものであり得る。これらの作用物質を抑制する分子は、がんの治療薬として使用され得る。これに対して、分化幹細胞から独自に又は優先的に分泌されたこれらの成分は、がんを治療する作用物質として望ましいものであり得る。同様に、これらの作用物質を抑制する分子は、幹細胞の成長を促進するか又は多能性を誘導するために使用され得る。
【0120】
幹様成長、すなわち幹細胞又はがん細胞の成長を促進又は抑制するマイクロRNA等の制御性核酸は、細胞からの分泌物を分析するのではなく、核酸を抽出し、分析すること以外は上記のように同定され得る。例えば、ディープシーケンシング(Deep Sequencing)及び全トランスクリプトーム解析として知られる技法を行って、幹様成長を抑制した場合に上方制御又は下方制御されるこれらの制御性RNAを同定することができる。幹細胞が分化する際に上方制御されるmiR−145等の制御性RNAは、抗がん治療に使用することができる。同様に、これらのマイクロRNAを抑制するsiRNAを含む分子は、多能性を促進又は誘導するために使用することができる。未分化幹細胞の成長及びがん細胞の成長において上方制御される制御性核酸は、がんの治療におけるサイレンシング若しくは抑制のため、又は幹細胞の分化の開始を同期させるための標的であり得る。
【0121】
当業者であれば、日常実験のみを用いて、本明細書中で具体的に記載される本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認識する、又は確認することができる。かかる均等物は特許請求の範囲内に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を表面上で培養する、展開させる又は成長させる方法であって、前記表面及び前記細胞に結合するリガンドを介して前記細胞を前記表面上に付着させることを含む、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を表面上で培養する、展開させる又は成長させる方法。
【請求項2】
前記リガンドが直接的に又は媒介物を介して間接的に前記表面に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記媒介物が化学リンカー又は別のタンパク質又はそれらの組み合わせである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質がプロテインA又はプロテインGである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記リンカーが感光性又は化学物質感応性である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記リガンド又は前記媒介物が、前記表面に非特異的に吸着しているか、又はアフィニティータグ−結合パートナー相互作用によって前記表面に共有結合的に連結若しくは付着している、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記リガンドがポリマーに結び付いている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記リガンドが、前記幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞上で発現されたポリペプチドに特異的に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記リガンドが抗体又は成長因子である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞の表面上の前記ポリペプチドが、MUC1若しくはMUC1、SSEA3、SSEA4、Tra 1−81又はTra 1−60である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞の表面上の前記ポリペプチドが、MUC1である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体がPSMGFR又はC−10 PSMGFRに特異的に結合する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記成長因子が野生型NM23若しくはNM23−S120G突然変異体、又はbFGFである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を培養する方法であって、前記細胞を、PSMGFRの配列を有するペプチドに結合する作用物質を含有する培地に曝露する、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を培養する方法。
【請求項15】
前記作用物質が抗体である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記作用物質が野生型NM23、又はNM23−S120G突然変異体である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を培養する方法であって、前記細胞を、MUC1陽性がん細胞から分泌された作用物質を含有する培地に曝露することを含む、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を培養する方法。
【請求項18】
前記MUC1陽性細胞がT47D、ZR−75−30又はZR−75−1から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を培養する方法であって、前記細胞を、MUC1陽性がん細胞に由来する馴化培地に曝露することを含む、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を培養する方法。
【請求項20】
前記MUC1陽性細胞がT47D、ZR−75−30又はZR−75−1から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記表面がマトリゲルではない、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞を線維芽細胞フィーダー細胞なしに培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞を手作業で解離させることなく前記表面から取り出す、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法によって成長させた細胞から細胞を採取する方法であって、前記細胞が前記リガンド又は前記表面との結合から放出されるように、前記リガンドに結合する競合分子を添加することを含む、請求項1に記載の方法によって成長させた細胞から細胞を採取する方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法によって成長させた細胞から細胞を採取する方法であって、前記細胞が前記表面から放出されるように、前記細胞に直接的又は間接的に付着した前記表面に結合したリンカーを切断することを含む、請求項1に記載の方法によって成長させた細胞から細胞を採取する方法。
【請求項26】
細胞の分化状態を特定する方法であって、前記細胞に結合する抗MUC1抗体を使用することを含み、抗MUC1抗体に対する正のシグナルが多能性(puripotent)細胞状態を示し、非短縮型MUC1への結合を示す細胞が分化細胞状態を示す、細胞の分化状態を特定する方法。
【請求項27】
細胞を幹細胞及び幹様細胞又は誘導多能性幹細胞、並びに新たに分化する細胞の混合集団から分離することを含み、前記細胞に結合する抗MUC1抗体を使用することを含み、抗MUC1抗体に対する正のシグナルが多能性細胞状態を示し、非短縮型MUC1への結合を示す細胞が分化細胞状態を示す、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞を、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞のマーカーに対する抗体と接触させることを更に含み、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞のマーカーに対する正のシグナルが、多能性幹細胞状態の存在を示す、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞を抗MUC1抗体及び抗Tra 1−81抗体、抗Tra 1−60抗体、SSEA3抗体又はSSEA4抗体と接触させる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
がん幹細胞を前記細胞に結合する抗MUC1抗体を用いて検出する方法であって、抗MUC1抗体に対する正のシグナルが、がん幹細胞を示す、がん幹細胞を前記細胞に結合する抗MUC1抗体を用いて検出する方法。
【請求項31】
前記細胞を幹細胞マーカーに対する抗体と反応させることを含み、幹細胞マーカーに対する正のシグナルが、がん幹細胞の存在を示す、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
表面上での幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞の培養、展開又は成長を調節し、その分化を阻害する方法であって、前記細胞を前記表面に、直接的に又は前記細胞に結合するリガンドを介して間接的に付着させること、及び前記細胞をPSMGFRの配列を有するペプチドに結合する作用物質を含有する培地に曝露することを含む、表面上での幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞の培養、展開又は成長を調節し、その分化を阻害する方法。
【請求項33】
前記作用物質がMUC1を二量化して、成長を促進し、分化を阻害する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記作用物質がMUC1の二量化を阻害して、分化を促進する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
細胞型を分離する方法であって、
異なる細胞型、又は細胞段階若しくは細胞型を特定する特異的マーカーに対して親和性を有する様々なリガンドについて表面上の空間アドレスを作成すること、及び
前記細胞を前記表面に添加すること
を含み、前記細胞が、前記細胞の結合するリガンドに応じて空間的に分離されている、細胞型を分離する方法。
【請求項36】
前記表面が粒子である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記粒子がナノ粒子である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
宿主の体内に、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞のリガンドが付着した表面を移植する方法。
【請求項39】
前記宿主が患者である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記リガンドが、前記宿主の幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞の成長因子である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
宿主の体内に、表面及び細胞に結合するリガンドを介して前記細胞が付着した前記表面を移植する方法。
【請求項42】
幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞をin vivoで増殖させる方法であって、宿主の体に、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞のリガンドが付着した表面を投与することを含む、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞をin vivoで増殖させる方法。
【請求項43】
組成物であって、
プロテインA又はプロテインGが親和性相互作用によって結合した表面であって、前記プロテインA又は前記プロテインGが、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞上で特異的に発現されるポリペプチドに特異的な抗体に結合する、プロテインA又はプロテインGが親和性相互作用によって結合した表面、及び
MUC1二量化剤
を含む、組成物。
【請求項44】
前記親和性相互作用が前記表面とのNTA−Niの相互作用によるものである、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記ポリペプチドが、MUC1若しくはMUC1、SSEA3、SSEA4、Tra 1−81又はTra 1−60である、請求項43に記載の組成物。
【請求項46】
前記MUC1二量化剤が、野生型NM23又はNM23−S120G突然変異体である、請求項43に記載の組成物。
【請求項47】
幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を増殖させる方法であって、プロテインA又はプロテインGが親和性相互作用によって結合した表面であって、前記プロテインA又は前記プロテインGが、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞上で特異的に発現されるポリペプチドに特異的な抗体に結合する、プロテインA又はプロテインGが親和性相互作用によって結合した表面を、MUC1二量化剤とともに前記細胞を含有するサンプルと相互作用させることを含む、幹細胞若しくは幹様細胞又は誘導多能性幹細胞を増殖させる方法。
【請求項48】
前記培地が最小培地である、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図15−2】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−529890(P2012−529890A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515205(P2012−515205)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/038438
【国際公開番号】WO2010/144887
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(507081094)ミネルバ バイオテクノロジーズ コーポレーション (4)
【出願人】(311017935)
【Fターム(参考)】