説明

床下通気制御装置およびこれを用いた建築構造

【課題】狭い床下空間における部品交換作業や動作確認作業を容易に行うことを可能な床下通気制御装置およびこれを用いた建築構造を提供する。
【解決手段】壁構造材10と室内壁14との間に、床下空間23と屋根裏25に連通する内部通気層18が設けられた建物の床下空間23と内部通気層18との境界部に配設される床下通気制御装置24であって、建物の土台22に固定され、内部通気層18に連通する連通部52が形成された第1の部材50と、第1の部材50に挿抜可能に取り付けられる第2の部材60と、を具備し、第2の部材60は、連通部52に挿抜自在な差込連結部66と連通孔62が並設された本体部64と、貫通孔55Aが並設されて、本体部64に対してスライドして連通孔62を開閉する遮蔽板65と、外気温の変動に応じて遮蔽板65をスライドさせる開閉機構68とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下空間と屋根裏を連通する内部通気層が設けられた建物に配設される床下通気制御装置およびこれを具備する建築構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、外気を建物の通気層に取り入れることにより、木材等の構造材の蒸れを防止して建築物の耐久性を高め、住環境を好適に維持することを可能にしたいわゆる通気断熱構造を備えた建築構造について提案している。また、本発明者は、このような通気断熱構造を備えた建築構造を実現させるために用いて好適な通気制御装置の提案も行っている。このような通気制御装置およびこれを用いた建築構造としては例えば特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−231820号公報
【0004】
特許文献1には、床下空間と屋根裏に連通する内部通気層が設けられた建物に配設され、床下空間と内部通気層とを連通させる連通部および通気路が形成された本体部と、連通部の少なくとも一方側に配設され、板厚方向に貫通して形成された貫通孔の位置により連通部を開放状態と閉止状態に切り替える遮蔽板と、貫通孔の位置を閉止位置と開放位置との間でスライドさせる開閉機構を備え、開閉機構は形状記憶合金のバネ体とバイアスバネ体を有し、外気温に応じて相互間に生じるバネ圧の差により、遮蔽板をスライドさせて床下空間と内部通気層との通気を制御する構造が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているような床下通気制御装置には、可動部分があり、可動部分の故障の発生は不可避である。もし、可動部分に故障が発生した場合には、床を壊して床下空間の床下通気制御装置にアクセスするか、作業者が直接床下空間に潜り込んで床下通気制御装置にアクセスする必要があるが、いずれの場合においても課題を抱えている。
【0006】
まず、床を壊して床下通気制御装置にアクセスする場合については、床下通気制御部材の交換費用が莫大になるため現実的ではない。そこで、ほとんどの場合においては、作業者が直接床下空間に潜り込んでのアクセス方法が採用されることになるが、狭い床下空間における床下通気制御装置の交換作業や動作確認作業は困難である。また、床下通気制御装置には、床下空間の基礎と同様に断熱材が取り付けられていることが多く、床下通気制御装置の部品交換作業や動作確認作業を行う際には、該当箇所の断熱材を取り除く必要がある。そして、部品交換作業や動作確認作業の後には断熱材の復旧が必要となるため、床下通気制御装置の部品交換および動作確認はきわめて煩雑な作業になることが多い。さらに、床下通気制御装置は、単位床面積あたりの配設個数が決められているため、床下通気制御装置は一般的な住宅であっても20個以上配設されていることが多く、すべての床下通気制御装置の動作確認を行うことや交換作業を行うことは多大な労力を要するものであり、改善が強く望まれていた。
【0007】
本発明は、以上に説明した課題を解決すべくなされたものであり、狭い床下空間における部品交換作業や動作確認作業を容易に行うことを可能にした床下通気制御装置およびこれを具備する建築構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため次の構成を備える。
すなわち、壁構造材と室内壁との間に、床下空間と屋根裏に連通する内部通気層が設けられた建物の、前記床下空間と前記内部通気層との境界部に配設される床下通気制御装置であって、該床下通気制御装置は、前記建物の土台に固定されると共に、前記内部通気層に連通する連通部が形成された第1の部材と、該第1の部材に挿抜可能に取り付けられる第2の部材と、を具備し、該第2の部材は、前記第1の部材の連通部に連通すると共に、前記連通部に挿抜自在な差込連結部と、前記床下空間に連通する複数の連通孔が並設されると共に、前記差込連結部に連通して設けられた本体部と、該本体部にスライド可能に設けられ、複数の貫通孔が並設されて、前記本体部に対してスライドすることにより、前記本体部の連通孔を開閉する遮蔽板と、一端が前記本体部に固定され、他端が前記遮蔽板に固定されたバイアスバネ体と、一端が前記本体部に固定され、他端が前記遮蔽板に固定され、外気温の変動によりバネ圧が変動し、前記バイアスバネ体のバネ圧との差により前記遮蔽板を前記本体部に対してスライド移動させる形状記憶合金からなるバネ体とを具備することを特徴とする床下通気制御装置である。
【0009】
また、前記差込連結部は、前記本体部に対する取付角度が調節可能に形成されていることを特徴とする。これにより、第1の部材への第2の部材の挿抜作業をより簡単に行なうことができる。
【0010】
また、前記連通部には、前記差込連結部の差込位置をガイドするガイド体が形成されていることを特徴とする。
また、前記差込連結部は、前記連通部への差込部分が所要間隔をあけて配設された複数の筒状体に形成されていて、当該複数の筒状体間の隙間部分に前記ガイド体が嵌入可能であることを特徴とする。
これらにより、一旦第1の部材から取り外した第2の部材を再度第1の部材に取り付けする際において、第1の部材に対する第2の部材の位置決めが容易になり、狭い床下空間内での作業効率が向上する。
【0011】
また、前記第1の部材には、前記第1の部材に前記差込連結部の差込部分を差し込んだ状態において、前記本体部を前記差込連結部に対して屈曲させた際に、前記本体部の一部と前記第1の部材との干渉を防止するための切欠部が形成されていることを特徴とする。これにより、第1の部材に第2の部材が連結された状態においては、基礎と床下通気制御装置との隙間がなく、床下通気制御装置のがたつきの発生や、地震発生後による脱落のおそれを低下させることができる点で好都合である。
【0012】
また、他の発明としては、壁構造材と室内壁との間に、床下空間と屋根裏に連通する内部通気層が設けられ、前記床下空間と前記内部通気層との間に配設された床下通気制御装置により、前記床下空間と前記内部通気層との連通状態を外気温に応じて連通・遮断制御する建築構造であって、上記のうちずれかに記載されている床下通気制御装置が配設されていることを特徴とする建築構造がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る床下通気制御装置によれば、建築物側に固定した第1の部材に対して第2の部材が着脱可能に形成されているから、狭い床下空間における床下通気制御装置の可動部の部品交換および動作状況の確認作業を容易に行なうことができる。また、床下空間の基礎に配設されている断熱材は第1の部材のみに配設されているので、第2の部材のみを着脱することが可能な本願構成によれば、床下通気制御装置の部品交換や動作確認を行う際に断熱材の取り外しが不要になるため作業性の面においても、作業後における断熱性能の確保の点においても好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】開閉機構付き地窓を用いた建物の通気断熱構造を示す説明図である。
【図2】床下通気制御装置を床下空間に配設した状態を示す側面図である。
【図3】本実施形態における床下通気制御装置の分離状態を示す斜視図である。
【図4】組立後の床下通気制御装置の背面側斜視図である。
【図5】組立後の床下通気制御装置の床下空間側からの正面図である。
【図6】遮蔽板が連通孔を閉塞した状態を示す床下空間側からの正面図である。
【図7】床下空間に配設した床下通気制御装置から第2の部材のみを取り外す際の状態を示す側面図である。
【図8】床下空間に配設した床下通気制御装置から第2の部材のみを取り外す際の状態を示す側面図である。
【図9】床下空間に配設した床下通気制御装置から第2の部材のみを取り外す際の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態を、添付図面にしたがって詳細に説明する。
(通気断熱構造)
はじめに、本発明に係る通気制御装置を用いた建築構造(通気断熱構造)ついて説明する。図1に示す建物は、断熱材からなる壁構造材10の外側に、壁構造材10との間に通気層を設けて外壁12を設置し、壁構造材10の内側に、壁構造材10との間に通気層を設けて室内壁14を設置した構造を備える。壁構造材10に沿って外壁12と壁構造材10とに挟まれた部位が外部通気層16であり、壁構造材10と室内壁14とによって挟まれた部位が内部通気層18である。
【0016】
外壁12の下端には通気制御装置17が設けられている。この通気制御装置17は外部通気層16における通気を制御するためのものであり、通気制御装置17を開くことにより外部通気層16では下方から上方に向けて通気され、通気制御装置17を閉止することによって外部通気層16での通気が遮断される。通気制御装置17は、たとえば形状記憶合金を用いたモジュールを利用して構成することができる。通気制御装置17は、夏期のように外気温が高いときには開放され、冬期のように外気温が低いときには閉止するように制御される。
【0017】
一方、室内壁14および床材15は、基礎20に支持された土台22との間に開口部を設けて取り付けられている。内部通気層18は土台22と室内壁14および床材15との間に設けた開口部を介して床下空間23に連通する。
基礎20には外部と連通する開口部20Aが形成され、開口部20Aに開閉機構付き地窓21が取り付けられている。この開閉機構付き地窓21は、開放位置と閉止位置との間で回動する遮蔽板を備え、形状記憶合金を用いた開閉機構モジュールを利用して遮蔽板を開放位置と閉止位置に回動することによって、夏期のように外気温が高いときには開放され、冬期のように外気温が低いときには閉止されるように制御される。
【0018】
内部通気層18と床下空間23とを連絡する部位には、内部通気層18と床下空間23との連通状態を制御する本発明にかかる床下通気制御装置24が設けられている。この床下通気制御装置24もまた、形状記憶合金からなるバネ体68Aを用いた開閉機構68を利用して通気部分を開閉制御する。床下通気制御装置24もまた、開閉機構付き地窓21と同様にして内部通気層18と床下空間23との通気部分の開閉状態を制御する。
なお、形状記憶合金からなるバネ体68Aを利用した開閉機構68は、形状記憶合金からなるバネ体68Aと、通常の弾性材からなるバイアスバネ体68Bとを互いの弾性力(引っ張り力、バネ圧と呼ばれることもある)が逆向きとなるように取り付け、夏期のように外気温が高くなったときには形状記憶合金からなるバネ体68Aによる弾性力が通常の弾性材からなるバイアスバネ体68Bの弾性力を上回るように設定し、その弾性力の差を、床下通気制御装置24の駆動力として利用している。
【0019】
居住室13は、透湿性を備えた材料からなる室内壁14、床材15および天井19によって形成され、内部通気層18は室内壁14の上部で天井19の上方の小屋裏25に連通する。小屋裏25には屋根26の下方に屋根26と同形態に断熱材からなる小屋裏材28が設けられている。こうして、居住室13は内部通気層18および小屋裏25によって囲まれた構造となる。
小屋裏25の頂部には、屋根26と小屋裏25とを連通する開口部25Aが設けられ、小屋裏25と屋根裏30とは開口部25Aを介して連通する。
【0020】
屋根裏30に連通して設けられている軒先32にも形状記憶合金からなるバネ体を利用した通気制御装置34が取り付けられている。通気制御装置34は軒先32に設けた開口部に取り付けられ、外気温が高いときには軒先32の内外を連通させ、外気温が低いときには軒先32の内外の連通を遮断するように作用する。
【0021】
屋根裏30の棟部分には開口部30Aが設けられ、この開口部30Aを覆うように屋根26の棟の上部にハット部材36が設置されている。ハット部材36は開口部30Aに雨風が進入しないように保護するとともに、開口部30Aを介して屋根裏30と戸外とが連通するように設けられている。ハット部材36の内部には遮蔽板を開閉して屋根裏30と戸外との連通を断続する形状記憶合金からなるバネ体を利用した通気制御装置37が設けられている。
【0022】
以上説明したように、本実施形態の建築構造では、居住室13の周囲に設けた内部通気層18と床下空間23とを連通可能とし、内部通気層18を小屋裏25に連通させ、小屋裏25と屋根裏30とを連通させることによって建物全体に通気構造を設け、通気制御装置17,34,37と開閉機構付き地窓21と、床下通気制御装置24を開閉制御することによって、居住室13における住環境を通年にわたって良好な環境に維持することができる。
【0023】
すなわち、夏期のような高温で多湿になる時期(図1のA−A線の左半部に示す)においては、床下通気制御装置24、開閉機構付き地窓21および通気制御装置17、34、37がいずれも開放され、外部通気層16においては通気層内で温められた空気が上昇気流となって熱気が外部に放出され、内部通気層18では開閉機構付き地窓21から床下空間23に外気が流入し、床下通気制御装置24、小屋裏25、屋根裏30を経由してハット部材36から戸外に流出する。屋根裏30では軒先32から空気が流入し、軒先32から棟側に向けて上昇流が生じる。
こうして、建築物全体が通気循環状態となり、居住室13においては室内壁14から内部通気層18へ熱気、湿気が透過し、室内環境が快適な状態に維持されるようになる。
【0024】
また、冬期のように外気温が低くなった場合(図1のA−A線の右半部に示す)には、開閉機構付き地窓21、床下通気制御装置24および、通気制御装置17,34,37がいずれも閉止状態になり、外部通気層16および内部通気層18における通気がなされない状態になる。外部通気層16および内部通気層18での通気がなされなくなると、通気層は保温層として作用し、居住室13内で保温された空気は戸外に排出されず、建物全体が保温される。床下空間23は地熱によって温められ、建築物の保温に寄与する。こうして居住室13は暖かく保温され、快適な住空間として維持される。
【0025】
(床下通気制御装置)
図2〜図6に、本実施形態における床下通気制御装置を示す。図2は、床下通気制御装置を床下空間に配設した状態を示す側面図である。図3は、本実施形態における床下通気制御装置の分離状態を示す斜視図である。図4は、組立後の床下通気制御装置の背面側斜視図である。図5は、組立後の床下通気制御装置の床下空間側からの正面図である。図6は、遮蔽板が連通孔を閉塞した状態を示す床下空間側からの正面図である。
【0026】
床下通気制御装置24は、図2〜図4に示すように、土台22の床下空間23側の側面に固定される第1の部材50と、第1の部材50に着脱自在であり、外気温の変化に応じて床下空間23と内部通気層18との連通状態をオンオフ切り替えする開閉機構68が配設された第2の部材60とを有している。
【0027】
第1の部材50について説明する。第1の部材50は、第2の部材60の差込連結部66の差込部であると共に、内部通気層18と床下空間23とを連通させる連通部52と、連通部52よりも床下空間23側の位置に、連通部52よりも床下空間23側へ所要距離を離反させた位置に断熱材70を取り付けるための断熱材保持板54とを有する変形筒状体に形成されている。連通部52には差込連結部66をガイドするためのガイド体52Aが形成されている。また、第1の部材50の側壁面下部には切欠部56が形成されている。この切欠部56は、第1の部材50に第2の部材60を着脱する際に用いられ、第2の部材60の本体部64の上部角部形状に倣わせた形状に形成されている。第1の部材50に形成された連通部52の上面側開口部の外周縁のうち、土台22に面する外周縁以外の外周縁には、連通部52の上面開口部を取り囲むようにして起立壁58が立設されている。起立壁58の上面は平坦面に形成されていて、起立壁58の上面には床材15との密着性を高めるためのシール材としてスポンジ72が接着され、起立壁58の上面と、床材15と連通部52の上面開口部とが気密に仕切られている。
【0028】
このようにして形成された第1の部材50は、土台22の上側側面部分にネジ止め等により固定される。土台22の床下空間23側の側面に第1の部材50を取り付けすることにより、第1の部材50の連通部52の上面側開口部を内部通気層18に連通させることができる。また、基礎20の上面と第1の部材50の下面との間には隙間部分が形成されることになる。この隙間部分には第2の部材60が配設される。土台22に取り付けられた第1の部材50の断熱材保持板54には断熱材70が取り付けられる。断熱材70は、床下空間23側における基礎20の表面に取り付けられる断熱材70と同じものが用いられている。ここではパネル状に形成された断熱材70が接着剤等により取り付けられる。
【0029】
第2の部材60について説明する。第2の部材60は、床下空間23に連通する連通孔62が所要間隔をあけて複数箇所に配設されると共に、上面に連結部63が形成された本体部64と、本体部64に配設され、板厚方向に貫通すると共に、所要間隔をあけて複数箇所に配設された貫通孔65Aを有する遮蔽板65と、本体部64に取り付けられ、第1の部材50の連通部52に差し込み可能な差込連結部66と、外気温の変化に応じて本体部64に対する遮蔽板65の位置をスライド移動させるための開閉機構68と、を有している。このように、本体部64の連通孔62と遮蔽板65の貫通孔65Aとはそれぞれ同じ配設間隔で並設されている。
【0030】
差込連結部66は2つの筒状体66Aが所要間隔をあけた状態で立設されている。2つの筒状体66A,66A間の隙間部分66Bに第1の部材50の連通部52に形成されたガイド体52Aが嵌合することにより、第1の部材50に対する差込連結部66の装着容易性を向上させている。
また、差込連結部66の下部位置には接合ピンが形成され、筒状体63の側壁部分には接合ピン用連結孔(いずれも図示せず)が形成されている。差込連結部66と連結部63とは、連結部63の接合用ピン孔に差込連結部66の連結ピンが嵌入することにより、連結部63(本体部64)に対する差込連結部66の連結角度が調整可能な状態で連結されることになる。
このようにして本体部64に連結された差込連結部66は、第1の部材50に形成された連通部52内に挿通され、差込連結部66の上面開口部は第1の部材50の上面側開口部と共に内部通気層18に開口することになる。このように第2の部材60の連通孔62から第1の部材50の連通部52の上面開口部までを連通させることにより、床下空間23と内部通気層18との間において空気の流通が可能になる。
【0031】
また、本体部64の背面部下側には遮蔽板65を駆動させるための駆動力源となる開閉機構68が収容されている。開閉機構68は、外気温の変動により生じるバネ圧が異なる形状記憶合金製のバネ体68Aと、通常の鋼材からなり、バネ体68Aのバネ圧に対するバイアス力を付与するバイアスバネ体68Bを有している。形状記憶合金製のバネ体68Aは、一端部が本体部64に設けられた係合部64Aに取り付けられ、他端部が遮蔽板65から本体部64を貫通して配設した係合ピン65Bに取り付けられている。また、鋼材からなるバイアスバネ体68Bは、一端部が本体部64に形成された係合部64Bに取り付けられ、他端部が遮蔽板65から本体部64を貫通して配設した係合ピン65Bに取り付けられている。このようなバネ体68Aとバイアスバネ体68Bとを直列に連結した構造を採用することで、外気温の変化による両者のバネ圧に相違を生じさせ、係合ピン65Bを移動させることで遮蔽板65をスライド移動可能にしている。
【0032】
本実施形態においては、外気温が所定温度以上になった場合に、遮蔽板65に形成された貫通孔65Aの位置が本体部64に形成された連通孔62の位置に重複する(図5に示す状態)ように、また、外気温が所定温度以下になった場合に、遮蔽板65に形成された貫通孔65Aの位置が本体部64に形成された連通孔62の位置からずれて、遮蔽板65が連通孔62を閉塞する(図6に示す状態)ようになっている。より具体的には、貫通孔65Aと連通孔62は同一開口形状に形成されていると共に、並設間隔も同一間隔になっている。また、貫通孔65Aと連通孔62の配設間隔は、貫通孔65Aの幅寸法よりも広い配設間隔に配設されている。バネ体68Aおよびバイアスバネ体68Bは、遮蔽板65のスライド量が貫通孔65Aの幅寸法と等しくなるようにそれぞれのバネ圧が調整されている。
【0033】
このようにして形成された開閉機構68は、基礎20と土台22との間に配設したスペーサ80により形成された隙間部分により外部空気と直接接触可能な状態で配設されているので、バネ体68Aに外部空気の温度変化を正確に検出させることができる。なお、本実施形態における建物の床下空間23と室外との連通は、床下通気制御装置24を介してのみ連通させているため、開閉機構68が面しない建物の基礎20の上端部と建物の土台22との間の隙間部分には図示しないコーキング材等により気密にシールされている。
【0034】
(床下通気制御装置の交換)
開閉機構68は、先述にもあるように室外気温の変化に伴って駆動力を生じる構成であるから、日格差が大きい地方においては、頻繁にバネ体68Aとバイアスバネ体68Bが伸縮作動することがある。また、開閉機構68は室外空気と直接接触させるように配設されているため、ゴミ等の侵入によりバネ体68Aとバイアスバネ体68Bの伸縮動作が阻害されることもある。
このような状況下においては、きわめて稀にではあるものの、開閉機構68が故障するおそれがあり、場合によっては床下通気制御装置24の交換作業を行う必要がある。以下に、床下通気制御装置24の交換方法について説明する。
【0035】
図7〜図9は床下空間に配設した床下通気制御装置から第2の部材のみを取り外す際の状態を示す側面図である。
最初に床下空間23に配設された床下通気制御装置24は、図2に示されているように、床下通気制御装置24を構成する第1の部材50が土台22に固定されていると共に、断熱材70が取り付けられているが、第2の部材60を構成する本体部64と差込連結部66との連結角度が調整可能に形成されているので、第1の部材50はそのままの状態にしておき、開閉機構68のような可動部を有する第2の部材60のみを交換可能にしている点が、本発明の特徴点の一つである。
【0036】
具体的には、図7に示すように、第1の部材50の連通部52に挿通されている差込連結部66に対して本体部64を屈曲させた状態にする。差込連結部66に対する本体部64の連結角度を屈曲させても、第1の部材50の側面には切欠部56が形成されているので、第1の部材50から第2の部材60を取り外す際に必要な屈曲角度までは第1の部材50と本体部64が干渉することはないのである。
このように、差込連結部66に対して本体部64が屈曲する連結状態にすることで、本体部64の下面と基礎20の上面との間に引抜用スペースを形成することができる。
【0037】
次に、図8に示すように引抜用スペースを利用して、第2の部材60全体を下側(引抜用スペース側)に移動させて、第1の部材50の連通部52から差込連結部66を引き抜いた後、第2の部材60全体を回転させながら床下空間23側に引抜くようにすれば、図9に示すように第2の部材60を取り外すことができる。このとき差込連結部66を連通部52から引き抜きつつ、差込連結部66に対する本体部64の連結角度を調整することで周辺の断熱材70を傷めることなく、第2の部材60を取り外しすることができる。作業者は、第1の部材50から分離させた第2の部材60について可動部である開閉機構68の動作確認を行うことができ、必要に応じて新しい第2の部材60に交換することもできる。第2の部材60を第1の部材50に装着する手順は、取り外し手順を逆の手順で行えばよい。
【0038】
第2の部材60の差込連結部66は、筒状体66A間の隙間66Bを第1の部材50の連通部52に配設されているガイド体52Aを嵌入させれば確実に第2の部材60を適正位置に取り付けることができる。
このようにきわめて簡単な作業により床下通気制御装置24の第2の部材60を分離させることができるため、床下空間23のような狭小な作業スペースであっても床下通気制御装置24の動作確認や部品交換の作業を容易に行なうことができる点で好都合である。
【0039】
以上に本実施形態に基づいて本願発明に係る床下通気制御装置およびこれを用いた建築構造について説明してきたが、本願発明は以上の実施形態に限定されるものではないのはもちろんである。
例えば、開閉機構68のバネ体68Aとバイアスバネ体68Bのバネ圧の設定は、夏季においてバネ体68Aのバネ圧をバイアスバネ体68Bよりも大きくする形態としているが、逆のバネ圧の設定形態であってもよいのはもちろんである。要は、夏季と冬季におけるバネ体68Aとバイアスバネ体68Bのバネ圧に差をもたせることにより、本体部64の連通孔62の位置に対して遮蔽板65の貫通孔65Aの位置をスライドさせることができればよいのである。
【0040】
また、本実施形態においては、第2の部材60は、本体部64と差込連結部66とが回動自在に連結された構成について説明しているが、本体部64と差込連結部66とが回動しない形態であってもよい。このような第2の部材60を採用した場合、本体部64に対して差込連結部66を斜めに連結しておく形態や、差込連結部66を湾曲した筒状体に形成しておけば、第1の部材50に対する第2の部材60の連結角度を変更しなくても第1の部材50から第2の部材60を挿抜自在にすることは十分可能である。
【0041】
また、本実施形態における第2の部材60の差込連結部66は、第1の部材50の連通部52への差込部分が所要間隔をあけて配設した2つの筒状体66Aにより形成されているが、3つ以上の筒状体66Aにより形成することもできる。このとき筒状体66A間の隙間部分66Bのすべてに対してガイド体52Aを配設する必要はなく、少なくとも1箇所の隙間部分66Bに嵌入可能なガイド体52Aが設けられていれば良い。また、差込連結部66の第1の部材50の連通部52への差込部分は一つの筒状体66Aにより構成することもできる。この場合のガイド体52Aは、筒状体66Aの表面に形成された溝または凸部に嵌入可能な凸部または溝とすればよい。さらには、差込連結部66の形態にかかわらず、ガイド体52Aの配設を省略することもできる。
【符号の説明】
【0042】
10 壁構造材
12 外壁
14 室内壁
15 床材
16 外部通気層
18 内部通気層
20 基礎
20A,25A,30A 開口部
22 土台
23 床下空間
24 床下通気制御装置
50 第1の部材
52 連通部
52A ガイド体
54 断熱材保持板
56 切欠部
60 第2の部材
62 連通孔
63 連結部
64 本体部
64A,64B 係合部
65 遮蔽板
65A 貫通孔
65B 係合ピン
66 差込連結部
66A 筒状体
66B 隙間部分
68 開閉機構
68A バネ体
68B バイアスバネ体
70 断熱材
72 スポンジ
80 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁構造材と室内壁との間に、床下空間と屋根裏に連通する内部通気層が設けられた建物の、前記床下空間と前記内部通気層との境界部に配設される床下通気制御装置であって、
該床下通気制御装置は、
前記建物の土台に固定されると共に、前記内部通気層に連通する連通部が形成された第1の部材と、
該第1の部材に挿抜可能に取り付けられる第2の部材と、を具備し、
該第2の部材は、
前記第1の部材の連通部に連通すると共に、前記連通部に挿抜自在な差込連結部と、
前記床下空間に連通する複数の連通孔が並設されると共に、前記差込連結部に連通して設けられた本体部と、
該本体部にスライド可能に設けられ、複数の貫通孔が並設されて、前記本体部に対してスライドすることにより、前記本体部の連通孔を開閉する遮蔽板と、
一端が前記本体部に固定され、他端が前記遮蔽板に固定されたバイアスバネ体と、
一端が前記本体部に固定され、他端が前記遮蔽板に固定され、外気温の変動によりバネ圧が変動し、前記バイアスバネ体のバネ圧との差により前記遮蔽板を前記本体部に対してスライド移動させる形状記憶合金からなるバネ体とを具備することを特徴とする床下通気制御装置。
【請求項2】
前記差込連結部は、前記本体部に対する取付角度が調節可能に形成されていることを特徴とする請求項1記載の床下通気制御装置。
【請求項3】
前記連通部には、前記差込連結部の差込位置をガイドするガイド体が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の床下通気制御装置。
【請求項4】
前記差込連結部は、前記連通部への差込部分が所要間隔をあけて配設された複数の筒状体に形成されていて、当該複数の筒状体間の隙間部分に前記ガイド体が嵌入可能であることを特徴とする請求項3記載の床下通気制御装置。
【請求項5】
前記第1の部材には、前記第1の部材に前記差込連結部の差込部分を差し込んだ状態において、前記本体部を前記差込連結部に対して屈曲させた際に、前記本体部の一部と前記第1の部材との干渉を防止するための切欠部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の床下通気制御装置。
【請求項6】
壁構造材と室内壁との間に、床下空間と屋根裏に連通する内部通気層が設けられ、前記床下空間と前記内部通気層との間に配設された床下通気制御装置により、前記床下空間と前記内部通気層との連通状態を外気温に応じて連通・遮断制御する建築構造であって、
前記床下通気制御装置は、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載されたものであることを特徴とする建築構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−112100(P2012−112100A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259437(P2010−259437)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(397054901)株式会社ウッドビルド (17)
【Fターム(参考)】