説明

床支持具及び床構造

【課題】床衝撃音の遮断性能が良好で、劣化の抑制された床支持具及び床構造を提供する。
【解決手段】クッション台座26の上には、質量体40が載置されている。クッション台座26と質量体40とは、固着されておらず、離間可能とされている。コイルスプリング30は、内径がクッション台座26の外径よりも大径とされ、一端30Aが質量体40の凹部42に接着され、他端30Bが受部材20の受け面20C側に接着されて、クッション台座26に外挿されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持部材を介して二重床とされた床構造、及び二重床の床材を支持する床支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
床構造においては、床衝撃音の遮断性能を向上させるために、支持部材を介して床基盤上から所定の高さに床を設ける二重床構造とする場合がある。このような二重床構造では、例えば、特許文献1に記載のように、弾性体と質量体を用いて床からの振動を減衰させる技術が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の床支持具によれば、動吸振器を用いて、床からの振動を効果的に減衰させることができる。特許文献1に記載された床支持具を採用した場合、質量体がクッション台座に接着されているため、床へ衝撃が加わった際に、慣性力により質量体にクッション台座と離れる方向への力が作用する。このとき、クッション台座と質量体とは接着されているので、質量体の接着が剥がれやすくなってしまう。また、クッション台座に引張方向の力が作用するが、一般的に、ゴム材は圧縮力よりも引張力に弱いという性質を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−040093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮してなされたものであり、床衝撃音の遮断性能が良好で、劣化の抑制された床支持具及び床構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の床支持具は、床スラブ上に配置され、弾性変形可能であって振動を減衰させる第1弾性部材と、前記第1弾性部材上に支持され、前記第1弾性部材と反対側へ延びて床材を支持する支持部材と、前記第1弾性部材又は前記支持部材に支持され、弾性変形可能であって振動を減衰させる第2弾性部材と、前記第2弾性部材上に前記第2弾性部材と離間可能に支持され、前記第1弾性部材及び前記第2弾性部材の少なくとも一方の弾性変形によって変位して振動を減衰させる質量体と、一端が前記質量体に固定され、他端が前記第1弾性部材に固定されたコイルスプリングと、を備えている。
【0007】
ここで、コイルスプリングの第1弾性体への固体は、直接の固定でもよいし、他の部材を介しての固定でもよい。
【0008】
請求項1に記載する床支持具によれば、床材に振動が加わった場合、第2弾性部材上に支持された質量体が慣性力により上下動することで、振動を吸収するように第2弾性部材及び第3弾性部材を交互に弾性変形させて、床材からの振動を減衰する。減衰された振動は、さらに第1弾性部材によって減衰されて床スラブへ伝わるので、床衝撃音が良好に遮断される。
【0009】
本発明では、質量体は、第2弾性部材と離間可能とされているので、慣性力により質量体が第2弾性部材と離れる方向へ移動しても、第2弾性部材は質量体によって引っ張られることはない。したがって、第2弾性部材の引っ張り変形に起因する劣化を抑制することができる。
【0010】
また、本発明では、第2弾性部材と離れる方向に移動した質量体は、他端が第1弾性部材に固定されたコイルスプリングを引っ張り変形させる。これにより、引っ張り変形に適したコイルスプリングを用いて、効果的に振動を減衰させることができる。
【0011】
請求項2に記載する本発明の床支持具は、前記第1弾性部材上に前記支持部材を支持する受部材が固定され、前記コイルスプリングは前記受部材に固定されることにより前記第1弾性部材に固定されていること、特徴とする。
【0012】
このように、受部材を用いて、第1弾性部材上に支持部材を支持することができると共に、コイルスプリングを固定することができる。
【0013】
請求項3に記載する本発明の床支持具は、前記コイルスプリングの内周側に前記第2弾性部材が収容されていること、を特徴とする。
【0014】
このように、コイルスプリングの内周側に第2弾性部材を収容することにより、床支持具をコンパクトな構成にすることができる。
【0015】
請求項4に記載する床構造は、床スラブと、前記床スラブ上に配置された請求項1〜3のいずれか1項に記載の床支持具と、を備えている。
【0016】
請求項4の床構造によれば、第2弾性部材への引張力がされることを阻止しつつ、床材からの床衝撃音を良好に遮断することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の床支持具及び床構造によれば、床衝撃音の遮断性能を良好としつつ、劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る床構造の縦断面を示す断面図である。
【図2】本実施形態の床支持具を拡大した拡大断面図である。
【図3】本実施形態に係る床支持具の斜視図である。
【図4】本実施形態の床支持具の動作説明図である。
【図5】本実施形態の床支持具の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明における床支持具、及び、この床支持具が適用される床構造の実施形態を図面に基づき説明する。なお、図中の矢印UPは床構造における上方向を示す。
【0020】
図1に示される床構造10は、主に集合住宅に用いられる二重床(乾式遮音二重床)の構造であり、上階で発せられて階下に伝播する床衝撃音(歩行音、物の落下音、子供の飛び跳ね等)を低減させるための構造である。
【0021】
(床構造及び床支持具の構成)
【0022】
図1に示されるように、床構造10は、躯体床となるコンクリート製の床スラブ12と上床材14との間に、所定の間隔で複数本並べられた床支持具16を介在させており、床支持具16の介在によって床スラブ12と上床材14との間に空間を形成して遮音効果を得る状態としている。
【0023】
なお、本実施形態の上床材14は、下地パネル14Aを備えると共に、下地パネル14A上に捨張材14Bを設け、その上にさらに仕上げ材14Cを設けた積層構造となっている。ここで、仕上げ材14Cを除いた上床材14(下地パネル14A及び捨張材14B)、及び、床支持具16が床下地材である。
【0024】
なお、捨張材14Bは、必ずしも必要ではなく、捨張材14Bを除いた構成とすることもできる。
【0025】
図2に示されるように、床支持具16は、第1弾性部材としてのクッションゴム18、支持部材としての支持ボルト22、第2弾性部材としてのクッション台座26、コイルスプリング30、及び質量体40を備えている。
【0026】
クッションゴム18は、床スラブ12上に配置されている。クッションゴム18は、円筒状とされており、上床材14からの振動を減衰させるために、床スラブ12上に支持されるものであり、弾性変形可能とされる。
【0027】
クッションゴム18上には、受部材20が固定され、受部材20を介して支持ボルト22が直立状態で支持されている。受部材20は、円筒状とされて中間部にフランジ部20Aを備え、円筒部の一方側がクッションゴム18の筒内側に挿入されると共にフランジ部20Aの下面(クッションゴム18側へ向けられた面)がクッションゴム18の上面(床スラブ12側の面と反対側の面)に固着されている。受部材20の円筒部内周面には、雌ネジ部20Bが形成され、この雌ネジ部20Bには、支持ボルト22の軸部に形成された雄ネジ部22Aが螺合される。これにより、受部材20が支持ボルト22に一体化される。
【0028】
下地パネル14Aの下側には、下地パネル14Aを支持するように、支持パネル15が配置されている。支持パネル15は正方形板状とされ、中央部に調整孔15Aが構成されている。この調整孔15Aに支持ボルト22の上端部が配置される。
【0029】
支持ボルト22は、クッションゴム18と反対側、すなわち、床スラブ12と反対方向へ延びて、パネル受け部材24及び支持パネル15を介して上床材14を支持している。パネル受け部材24は、円筒状の円筒部24Bと、円筒部24Bの一方の開口部から外側へ向けて突き出した鍔部24Aを備える。パネル受け部材24の円筒部24Bは、支持パネル15の調整孔15A内に挿入されて固着され、鍔部24Aの上面(上床材14側へ向けられた面)が支持パネル15の下面(床スラブ12と対向する側の面)に固着される。パネル受け部材24の円筒部内周面には、雌ネジ部24Cが形成され、この雌ネジ部24Cには、支持ボルト22の軸部に形成された雄ネジ部22Bが螺合される。これらにより、上床材14は、床スラブ12との間に間隔をもって配置される。
【0030】
図3に示すように、支持ボルト22の先端部には、マイナスドライバを差し込むための凹部22Mが形成されており、上床材14の下地パネル14Aに捨張材14B、仕上げ材14Cが載せられる前の状態において、マイナスドライバを支持ボルト22の凹部22Mに差し込んで支持ボルト22を回転させることによって、床スラブ12からの下地パネル14Aの高さを調節することができるようになっている。
【0031】
受部材20のフランジ部20Aの上面である受け面20Cには、クッション台座26が接着されている。すなわち、クッション台座26の下面が受け面20Cに固着されている。クッション台座26はゴム材で構成されている。クッション台座26と受部材20との接着は、加硫接着によって行うことができる。クッション台座26は、円筒状とされて中央に挿入孔26Aが形成されており、この挿入孔26Aに支持ボルト22が挿入された状態となっている。クッション台座26は、上床材14からの振動を減衰させるために、受部材20を介して支持ボルト22に支持されるものであり、軟質ゴムで構成されて弾性変形可能とされる。クッション台座26の上には、質量体40が載置されている。
【0032】
図3に示されるように、質量体40は円柱形状で、設置状態での下面40Aの中央部に凹部42が構成されている。凹部42は、質量体40の中心軸と同軸の円柱状として構成されている。
【0033】
質量体40には、凹部42の中央部から質量体40の上面40B側にかけて、支持孔42Aが構成されている。質量体40は、凹部42側から支持孔42Aに支持ボルト22を挿通して、クッション台座26上に載置され、支持されている。質量体40によって、クッション台座26には、圧縮方向の荷重が作用している。クッション台座26と質量体40とは、固着されておらず、離間可能とされている。
【0034】
上記の設置状態において、クッション台座26は、凹部42内に収納される。これにより、クッション台座26の厚みを質量体40で吸収することができ、床支持具16の高さを低くすることができる。
【0035】
図3に示されるように、コイルスプリング30は、内径がクッション台座26の外径よりも大径とされ、図2に示すように、一端30Aが質量体40の凹部42に接着され、他端30Bが受部材20の受け面20C側に接着されて、クッション台座26に外挿されている。これにより、クッション台座26は、コイルスプリング30の内周側に収容される。コイルスプリング30の、質量体40及び受部材20との接着は、溶接により行うことができる。
【0036】
質量体40は、クッション台座26の弾性変形、及び、コイルスプリング30の弾性変形によって変位して上床材14からの振動を減衰させるようになっており、クッション台座26及び質量体40は、上床材14から床スラブ12への振動に対して動吸振器として機能する。
【0037】
(本実施形態の施工手順)
【0038】
次に、図2に示される床支持具16を用いて二重床の床構造10を構成する際の施工手順について説明する。
【0039】
まず、一体化されたクッションゴム18、受部材20、及び、クッション台座26を、クッションゴム18を下にして床スラブ12上に設置する。
【0040】
次に、パネル受け部材24の円筒部24Bを、支持パネル15の調整孔15Aへ圧入し、鍔部24A上に支持パネル15を配置して、パネル受け部材24に支持パネル15を固着する。
【0041】
次に、クッション台座26の挿入孔26Aに支持ボルト22を上方から挿入し、支持ボルト22の雄ネジ部22Aを受部材20の雌ネジ部20Bに螺合させて取り付け、直立させる。
【0042】
次に、質量体40の凹部42にコイルスプリング30の一端30Aを溶接し、コイルスプリング30側から支持ボルト22を支持孔42A、コイルスプリング30に挿通する。コイルスプリング30は、さらにクッション台座26に外挿して、質量体40をクッション台座26上に載置し、クッション台座26上に質量体40を支持する。
【0043】
次に、支持ボルト22の雄ネジ部22Bにパネル受け部材24の雌ネジ部24Cを螺合させる。そして、支持パネル15上に下地パネル14Aを敷設する。ここで、マイナスドライバを支持ボルト22の凹部22Mに差し込んで支持ボルト22を回転させることによって、床スラブ12からの下地パネル14Aの高さを調節する。
【0044】
次に、下地パネル14A上に捨張材14Bを敷設し、捨張材14B上に仕上げ材14Cを敷設する。このようにして、二重床の床構造10が構成される。
【0045】
(作用)
【0046】
次に、上記の実施形態の作用を説明する。
【0047】
上階で発せられた床衝撃音(例えば、歩行音等)の振動は、上床材14からパネル受け部材24、支持ボルト22、及び、受部材20を介してクッションゴム18へ伝わる。これによって、図4(A)に示すように、クッションゴム18が圧縮変形し、クッション台座26が床スラブ12側へ沈み込む。このとき、質量体40は、慣性力により、クッション台座26と離れる方向に相対移動する。コイルスプリング30の一端30A側は質量体40に追従し、他端30B側はクッションゴム18に追従することから、コイルスプリング30には、引張力が作用し、伸びるように弾性変形する。このとき、クッション台座26は、質量体40と接着されていないので、質量体40と逆方向に移動でき、クッション台座26には、引張力が作用しない。
【0048】
続いて、クッションゴム18の反力が加わると、図4(B)に示すように、クッション台座26は上方へ移動し、質量体40に押されて圧縮変形する。また、コイルスプリング30についても、圧縮変形する。このように、質量体40が、コイルスプリング30を引っ張り方向に弾性変形させると共にクッション台座26及びコイルスプリング30を圧縮変形させつつ振動を吸収するように上下動することで、振動を減衰する。
【0049】
本実施形態によれば、クッション台座26には、質量体40から圧縮力のみが作用し、引張力が作用されないので、引張りによる接着部分の剥がれを防止することができる。また、クッション台座26の引張変形による劣化も抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、コイルスプリング30の内周側にクッション台座26が収容されているので、コンパクトに設計することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、コイルスプリング30の内周側にクッション台座26が収容されているが、必ずしもこの構成とする必要はなく、コイルスプリング30は、他の位置、例えば、図5に示すように、クッション台座26の挿入孔26A内に配置してもよい。
【0052】
また、本実施形態では、受部材20にコイルスプリング30の他端30Bを接着した例について説明したが、他端30Bは、クッションゴム18に直接接着してもよい。特に、受部材20を用いることにより、溶接により、安定して固定することができる。
【0053】
また、本実施形態では、クッション台座26及び質量体40は、支持ボルト22を囲んで配置されているため、支持ボルト22に沿って弾性変形し、支持ボルト22に沿って移動することになるので、動吸振の作用が安定する。
【0054】
また、質量体40が円柱形状とされているので、同一質量で他の形状の質量体を用いた場合と比較して、水平方向の干渉範囲を狭くすることができる。
【0055】
また、質量体40の下面に凹部42が構成され、凹部42にクッション台座26が収納されているので、クッション台座26の高さ分、床支持具16の高さを低くすることができる。
【0056】
また、本実施形態では、床スラブ12がコンクリート製であるコンクリート床の場合について説明したが、床スラブは、木製等の他の床スラブであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 床構造
12 床スラブ
14 上床材
16 床支持具
18 クッションゴム
20 受部材
26 クッション台座
30 コイルスプリング
30A 一端
30B 他端
40 質量体
42 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブ上に配置され、弾性変形可能であって振動を減衰させる第1弾性部材と、
前記第1弾性部材上に支持され、前記第1弾性部材と反対側へ延びて床材を支持する支持部材と、
前記第1弾性部材又は前記支持部材に支持され、弾性変形可能であって振動を減衰させる第2弾性部材と、
前記第2弾性部材上に前記第2弾性部材と離間可能に支持され、前記第1弾性部材及び前記第2弾性部材の少なくとも一方の弾性変形によって変位して振動を減衰させる質量体と、
一端が前記質量体に固定され、他端が前記第1弾性部材に固定されたコイルスプリングと、
を備えた床支持具。
【請求項2】
前記第1弾性部材上に前記支持部材を支持する受部材が固定され、前記コイルスプリングは前記受部材に固定されることにより前記第1弾性部材に固定されていること、特徴とする請求項1に記載の床支持具。
【請求項3】
前記コイルスプリングの内周側に前記第2弾性部材が収容されていること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の床支持具。
【請求項4】
床スラブと、
前記床スラブ上に配置された請求項1〜3のいずれか1項に記載の床支持具と、
を備えた床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−265597(P2010−265597A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115446(P2009−115446)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】