説明

床暖房装置および床暖房方法

【課題】 蓄熱された貯湯タンク内の温熱を利用すると共に、利用頻度の高い場所を集中して暖めると共に、利用頻度の低い箇所も適度に暖めることにより、少コストで大きな暖房効果を発揮することができる床暖房装置およびその方法を提供する。
【解決手段】 貯湯タンク2と、貯湯タンク2に接続された膨張タンク3と、貯湯タンク3内の水を加熱させる電子ボイラー10と、加熱された温水を循環させる送水管およびファン22を収容する放熱器20と、該放熱器20に連結されたチャンバーボックス24と、該チャンバーボックス24に連結された中空パイプ25とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱された貯湯タンク内の温熱を利用することにより、少コストで大きな暖房効果を発揮することができる床暖房装置および床暖房方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、温水を利用して効率よく部屋を暖めることができる床暖房システムは種々知られている(例えば、特許文献1参照)。
上掲特許文献1の床暖房システムは、室内の床に敷設したマット内の管路に温水を循環させて熱を供給する床暖房システムであって、マット内管路の入り側、及び出側、並びに床、及び室内所定箇所のうちの、少なくとも一箇所の温度を感知する温度感知手段と、温水の温度を制御する温度制御手段と、温水の流量を制御する流量制御手段とを具備し、温度制御手段は温水の温度を、流量制御手段は温水の流量を、温度感知手段からの情報に基づいてそれぞれ連続的に制御することを特徴としている。
【特許文献1】特開2005−9701号公報(第1−2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上掲特許文献記載の床暖房システムに限らず、従来の温水利用型床暖房システムにおいては、室内の床に敷設したマット内の管路に温水を循環させるため、管路内すべてに温水を封入させ、広範囲に熱を供給しなければならず、必ずしもコスト的に好ましい床暖房システムとはいえなかった。また、管路が配設されている箇所と配設されていない箇所においては床の温度差が激しく、使用勝手や利便性が低く、また時には身体にヒートショックを与えるという懸念もあった。
【0004】
そこで本発明の目的は、蓄熱された貯湯タンク内の温熱を利用すると共に、利用頻度の高い箇所を集中的に暖め、利用頻度の低い箇所はその余熱で暖房することにより、少ないエネルギーコストで大きな暖房効果を発揮することができる床暖房装置および暖房方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の床暖房装置は、貯湯タンクと、貯湯タンクに接続された膨張タンクと、前記貯湯タンク内の水を加熱させる電子ボイラーと、加熱された温水を循環させる送水管およびファンを収容する放熱器と、該放熱器に連結されたチャンバーボックスと、該チャンバーボックスに連結された中空パイプとを具備することを特徴とするものである。また、前記中空パイプは、好ましくは床材下の空間部に配設される。さらに、前記床材には、好ましくは蓄熱材を挟持させる。さらにまた、前記床材の下層には、好ましくは伝熱体を装着させる。
【0006】
また、本発明における床暖房方法は、貯湯タンク内の温水を送水管内に循環させ、該送水管より放熱される温熱を、床材下の空間部に配設させた中空パイプ内へ送風させることを特徴とするものである。また、前記中空パイプの吹出口から排出される温熱にて利用頻度の高い箇所を集中して暖房することが好ましく、さらに、利用頻度の低い箇所は前記温熱の余熱で暖房することが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
貯湯タンク内で蓄熱された温水を送水管内に循環させ、かかる送水管より放熱される温熱を利用することで、例えば、夜間の安価な電力のもと、少ないエネルギーコストで大きな暖房効果を発揮することができる。また、リビングやダイニング、キッチン等の利用頻度の高い箇所に集中して温熱を排出させ、トイレ、洗面、廊下など、利用頻度の低い箇所は温熱を分散させることで、効率よい床暖房を実現することができる。これは、床材下の利用頻度の高い箇所の空間部に温熱を集中して排出させることで、中空パイプの吹出口近傍の床を暖め、さらには、温熱で箱状の空間部全体を満遍なく暖めることによって、利用頻度の低い床をその余熱で暖めることができる。また、床材に蓄熱材を挟持させることで保温効を一層高めることができる。さらに、床材の下層に伝熱体を装着することで、広範囲に熱を伝導させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の床暖房装置および床暖房方法における一好適実施形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
図1に示す床暖房装置1は、貯湯タンク2と、貯湯タンク2に接続された膨張タンク3と、貯湯タンク2内の水を加熱させる電子ボイラー10と、加熱された温水を循環させる送水管21およびファン22を収容する放熱器20と、かかる放熱器20に連結されたチャンバーボックス24と、チャンバーボックス24に連結された、床材30下の空間部36に配設される中空パイプ25とで構成されている。また、図示する例では、床暖房装置1には、湯温や風量を調整する制御盤5が装着されている。
【0010】
貯湯タンク2内には、電子ボイラー10で加熱された約150リットルの温水が蓄熱された状態で収容されている。また、貯湯タンク2の一端には、膨張タンク3と連結されている通水管4が設置されている。膨張タンク3は、貯湯タンク2内の温水が加熱され膨張した際、通水管4から膨張タンク3内に温水を流入させ、貯湯タンク2内の湯量を一定状態に調節する働きを有する。
【0011】
また、貯湯タンク2の他端には吸水管13と給水管14が連結されており、かかる吸水管13と給水管14には電子ボイラー10が設置されている。電子ボイラー10は、内部に収容された電子ヒーター11と、吸水管13に設置されたポンプ12とで主に構成されている。前記電子ボイラー10は、加熱用ポンプ12にて貯湯タンク2内の水を吸水管13から吸水して加熱した後、給水管14により再び貯湯タンク2内に給水させるものであり、電子ボイラー自体は市販のものを採用することができる。また、貯湯タンク2内の温水は高温で蓄熱された状態で収容されるため、例えば、電子ボイラー10が切れた状態でも、貯湯タンク2内の温水を循環させることによる床暖房が可能となる。これにより、低コストで効率よい床暖房が実現できる。なお、前記貯湯タンク2内の湯量や湯温は、建築物の大きさや室内の広さにより適宜変更すればよい。
【0012】
放熱器20は、貯湯タンク2内の加熱され蓄熱した温水を循環させる送水管21と、送水管21から放熱される湯熱を中空パイプ25内へ送り込む複数のファン22とで主に構成されている。また、送水管21には、貯湯タンク2内の温水を循環させる循環用ポンプ23が設置されている。さらに、放熱器20の下部には、複数の中空パイプ25を連結するチャンバーボックス24が配設されている。
【0013】
中空パイプ25は、図2に示すように、床材30下の空間部36に配設されており、支持具31により水平状態に保持されている。また、中空パイプ25は、送水管21から放熱される湯熱を吹出口37から排出させる。更に、中空パイプ25の温熱が吹き出される吹出口37は、図6に示すようにリビングAやダイニングB、キッチンC等の利用頻度の高い箇所に集中して配設することが好ましく、利用頻度の低いトイレDや洗面E等には必要に応じて配設することが好ましい。なお、空間部36に温熱を排出させることで、中空パイプ25の吹出口37近傍の床を暖め、さらに箱状化された空間部36全体を満遍なく暖めることによって、利用頻度の低いトイレ等の床をその余熱で適度に暖めることもできる。
【0014】
また、床材30には、図3に示すように、蓄熱材34を挟持させることが好ましい。蓄熱材34は、石膏ボードやフレキシブルボード、またコンクリートボード等からなり、床材30を構成する下地床32と上面の仕上材33との間に挟持される。蓄熱材34を床材30に介在させることにより、床材30の保温性が高まり、床暖房効果を向上させることができる。
【0015】
また、床材30の下層には、図4に示すように、伝熱体35を装着させることが好ましい。かかる伝熱体35は下地床32の下側に配設されるもので、アルミや銅等の素材で構成することができる。伝熱体35を床材30の下層に装着させることにより、中空パイプ25の排出口37から排出された湯熱が広範囲に伝熱され、床暖房効果をより一層向上させることができる。
【0016】
また、本発明の床暖房方法は、貯湯タンク2内の温水を送水管21内に循環させ、かかる送水管21の表面より放熱される温熱を床材30下の空間部36に配設させた中空パイプ25内へ送風させると共に、好ましくは中空パイプ25の吹出口37から排出する温熱にて利用頻度の高い箇所を集中して暖房し、利用頻度の低い箇所はその余熱で適度に暖房することもできる。
【0017】
床暖房方法における一連の操作としては、制御盤5にて貯湯タンク2内の湯温により、電子ボイラー10および放熱器20を作動させ、電子ボイラー10のポンプ12が貯湯タンク2内の水を吸水管13にて吸水するようにする。吸水された水は電子ボイラー10で加熱され、給水管14を通って貯湯タンク2へ運ばれる。貯湯タンク2内で加熱され蓄熱された温水は送水管21内を通って放熱器20へ運ばれる。この際、送水管21の表面より放熱される湯熱は、放熱器20内の複数のファン22にて中空パイプ25内に送り込まれる。中空パイプ25内に送り込まれた湯熱は排出口37から排出され、例えば、利用頻度の高いリビングAやダイニングB、キッチンC等の床材30下の空間部36を暖める。また、空間部36に温熱を排出させることで、中空パイプの吹出口37近傍の床を暖め、さらに、箱状化された空間部36全体を満遍なく暖めることによって、利用頻度の低い床をその余熱で適度に暖めることができる。
【0018】
以下、床暖房方法における動作設定を図5に基づき具体的に説明する。先ず、スイッチ(タイマー)を入力すると、加熱用ポンプ12と循環用ポンプ23が始動する。各ポンプが始動すると、電子ヒーター11は通水により電源が入り貯湯タンク2内の水を加熱する。この際、温度センサー15により、例えば、放熱器20への入口温度が50℃に達すると放熱器20が低温作動、60℃で中温作動、さらに70℃で高温作動に切り換わるようにする。また、温度センサー16により電子ヒーター11の出口温度が73℃に達すると加熱用ポンプ12が停止し、続いて電子ヒーター11が停止するようにする。設定室温に達すると、加熱用ポンプ12、循環用ポンプ23、放熱器20は停止する。なお、図中、17はエアー抜きバルブ、18は流量計、19は循環水圧送用のチーズバルブ、26は電子ヒーターエレメント交換用のバルブを表す。
【0019】
本発明の床暖房方法により、送水管21から放熱される温熱と、貯湯タンク2内の蓄熱された温水を利用することで、低コストで安定して床下を暖めることができる。また、利用頻度の高い箇所は集中して暖房し、利用頻度の低い箇所は適度に暖房することにより、結果として家の床全体を効率よく暖める床暖房を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一好適実施形態に係る床暖房装置の全体構造を示す略図である。
【図2】前記床暖房装置の使用状態を示す側面図である。
【図3】他の好適例を示す床材の断面図である。
【図4】他の好適例を示す床材の断面図である。
【図5】床暖房装置の動作設定を示す略図である。
【図6】本発明の床暖房装置の使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 床暖房装置
2 貯湯タンク
3 膨張タンク
4 通水管
5 制御盤
10 電子ボイラー
11 電子ヒーター
12 加熱用ポンプ
13 吸水管
14 給水管
15 温度センサー
16 温度センサー
17 エアー抜きバルブ
18 流量計
19 チーズバルブ
20 放熱器
21 送水管
22 ファン
23 循環用ポンプ
24 チャンバーボックス
25 中空パイプ
26 バルブ
30 床材
31 支持具
32 下地板
33 仕上材
34 蓄熱材
35 伝熱体
36 空間部
37 吹出口
A リビング
B ダイニング
C キッチン
D トイレ
E 洗面
a 温度測定器
b 温度測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、貯湯タンクに接続された膨張タンクと、前記貯湯タンク内の水を加熱させる電子ボイラーと、加熱された温水を循環させる送水管およびファンを収容する放熱器と、該放熱器に連結されたチャンバーボックスと、該チャンバーボックスに連結された中空パイプとを具備することを特徴とする床暖房装置。
【請求項2】
前記中空パイプが、床材下の空間部に配設される請求項1記載の床暖房装置。
【請求項3】
前記床材に蓄熱材が挟持されている請求項2記載の床暖房装置。
【請求項4】
前記床材の下層に伝熱体を装着した請求項2または3記載の床暖房装置。
【請求項5】
貯湯タンク内の温水を送水管内に循環させ、該送水管より放熱される温熱を、床材下の空間部に配設させた中空パイプ内へ送風させることを特徴とする床暖房方法。
【請求項6】
前記中空パイプの吹出口から排出される温熱にて利用頻度の高い箇所を集中して暖房する請求項5記載の床暖房方法。
【請求項7】
利用頻度の低い箇所は前記温熱の余熱で暖房する請求項6記載の床暖房方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−275430(P2006−275430A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96085(P2005−96085)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(597105382)株式会社駒匠 (1)
【Fターム(参考)】