説明

床構造

【課題】 高い排水効率を安定維持できる床構造を提供することを課題とする。また、施工性の良好な床構造を提供することを課題とする。
【解決手段】 排水経路に連通する大引水路60及びこの大引水路60を内部に設けた大引本体12を有する大引10と、大引水路60に連通する根太水路70及び根太水路70を内部に設けた根太本体31を有し大引10上に並んで載置される複数の根太30と、各根太本体31の間に架設された床パネル80と、大引水路60の上下位置を大引水路長手方向において可変支承する大引水路支承部41と、を備え、根太水路70は床パネル80から滴下する水を大引水路60に排水し、大引水路60は長手方向において勾配を有する床構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床構造に関し、さらに詳細には、床への散水によって床面の洗浄が可能な床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の床構造として、本発明者が先に発明した下記特許文献に記載の床構造が知られている。
【0003】
より詳しくは、内部に水通路を有する大引上に樋形状をなす根太を複数並べて載置し、さらに端部がこの根太の上方に位置するように根太間に架設・位置決めされた矩形の床パネルを備えて床構造が構成されている。また、洗浄に伴って床パネル上に散水された水は、床パネルの端部から樋形状をなす根太に滴り落ち、根太内に滴り落ちた水は、根太の内側を通じて大引内部の水通路に流れ込み、大引に設けられる排水口を通じて外部に排水される構造になっている。
【特許文献1】特開2002−227378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公報に開示された床構造は、井桁状の構造体にて細かく排水手段を講じてあるため、良好に排水を行えるものである。しかし、本発明者らは、高い排水効率をより安定して維持できる床構造の研究を行った結果、高い排水効率と共に良好な施工性を有する床構造の必要性をみいだした。
【0005】
本発明は、このような技術的背景を考慮してなされたものであり、高い排水効率を安定維持できる床構造を提供することを課題とする。また、施工性の良好な床構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した技術的課題を解決するため、本発明では以下の構成を採用した。
【0007】
すなわち本発明は、排水経路に連通する大引水路及びこの大引水路を内部に設けた大引本体を有する大引と、前記大引水路に連通する根太水路及びこの根太水路を内部に設けた根太本体を有し前記大引上に並んで載置される複数の根太と、前記各根太本体の間に架設された床パネルと、大引水路の上下位置を大引水路長手方向において可変支承する大引水路支承部と、を備え、前記根太水路は前記床パネルから滴下する水を前記大引水路に排水し、前記大引水路は長手方向において勾配を有する床構造とした。
【0008】
前記大引水路は、底面部と、この底面部から立設する可撓性を有する側面部とを備え、前記大引水路支承部は、前記側面部を撓ませることにより、大引水路底面部の上下位置を可変する床構造とすることができる。
【0009】
前記大引水路支承部は、大引水路の底面部を引き上げる大引水路支持部を備え、この大引水路支持部は、大引水路の長手方向における複数箇所に設けることができる。
【0010】
前記大引水路支持部は、大引水路を引き上げる操作量を検出する検出部を備えることができる。
【0011】
また、前記大引水路を合成樹脂により成形し、大引水路の底面部にリブを設けることができる。
【0012】
さらに、前記根太水路の上下位置を根太水路長手方向において可変支承する根太水路支承部を備え、前記根太水路は長手方向において勾配を有する構造とすることができる。
【0013】
また、前記根太水路の上下位置を根太水路長手方向において可変支承する根太水路支承部を備え、根太水路が長手方向において勾配を有する構造とすることもできる。
【0014】
そして、前記根太水路は、底面部と、この底面部から立設する可撓性を有する側面部とを備え、前記根太水路支承部は、前記側面部を撓ませることにより、根太水路底面部の上下位置を可変する床構造とすることができる。
【0015】
また、前記根太水路支承部は、根太水路の底面部を引き上げる根太水路支持部を備え、この根太水路支持部は、根太水路の長手方向における複数箇所に設けることができる。
【0016】
前記根太水路支持部は、根太水路を引き上げる操作量を検出する検出部を備えることができる。
【0017】
また、前記大引水路及び根太水路を合成樹脂により成形し、大引水路及び根太水路の底面部にリブを設けることができる。
【0018】
なお、上記した課題を解決するための手段に記載の内容は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない限りにおいて、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高い排水効率を安定維持できる床構造を提供することができる。また、施工性の良好な床構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態を説明する。
【0021】
本実施形態に示す床ユニット(床構造)は、大引10を、支柱50を介して床スラブ上に支持して構築してある。そして、根太30を大引10に対して略直角に交差するよう且つ所定間隔を開けて複数の大引10上に複数本載置している。前記支柱50は締結体59によって支柱50に強固に固定されている。
【0022】
前記大引10は、内部に大引水路60を有する大引本体12によって構成されている。また、前記根太30は、内部に根太水路70を有する根太本体31によって構成されている。
【0023】
前記各根太30間の所定間隔は、後述する床パネル80の横方向の幅に対応して設定されている。また、根太本体31は上部が開口した樋形状をなしている。
【0024】
大引10と根太30の交差する箇所において、大引10の上部には連通孔18が設けられ、根太30の下部にも連通孔37が設けられている。このため両者の内部は、連通孔18及び連通孔37を通じて相互に接続された状態になる。なお、根太30の連通孔37には、その下方に向かって垂下したフランジ部が形成されており、大引10と根太30の位置決め、及び、連通部分における外部への漏水防止がなされている。
【0025】
ここで、大引水路60について詳細を説明する。大引水路60は、押出成形にて形成された合成樹脂製の管状体であり、底面部63と、底面部63から立設する側面部65と、側面部65に延設された上面部を備えている。前記底面部63の外周面には、4条のリブ67が、大引水路60の全長に亘って形成されている。また、側面部65は、可撓性の蛇腹部を有しており、上下方向に大引水路60が撓むようになっている。そして、上面部の所定位置には、押出成形後に開口部が設けられ、前記連通孔18に対応するようになっている。
【0026】
そして、横断面矩形状の鋼管である大引本体12には、大引水路60を引き上げるための大引水路支持金具41(大引水路支持体)が取り付けられている。大引水路支持金具41は、ワイヤー47と、ワイヤー47の両端部に設けられた検出部43と、ワイヤー47及び検出部43を大引本体12に固定する固定具45とから構成されている。ワイヤー47は、大引本体12内にて、U字状をなし大引水路60の外面を支える。そして、2つの固定具45は、ワイヤー47両端部の検出部43が、大引本体12の上面に突出するよう大引水路支持金具41を大引本体12に固定する。検出部43は、大引水路60引上の操作量を検出するが、この検出部43は、棒状部に目盛りが表示されており、大引本体12の上面から突出する長さを計測することにより、操作量を検出できるようになっている。
【0027】
次に、根太水路70について詳細を説明する。根太水路70は、押出成形にて形成された合成樹脂製の樋状体であり、底面部73と、底面部73から立設する側面部75とを備え、上部は全長に亘り開口している。前記底面部73の外周面には、4条のリブ77が、根太水路70の全長に亘って形成されている。また、側面部75は、可撓性の蛇腹部を有しており、上下方向に根太水路70が撓むようになっている。そして、底面部73の所定位置には、押出成形後に開口部が設けられ、前記連通孔37に対応するようになっている。
【0028】
そして、鋼管製の根太本体31には、根太水路70を引き上げるための根太水路支持金具91(根太水路支持体)が取り付けられている。根太水路支持金具91は、ワイヤー97と、ワイヤー97の両端部に設けられた検出部93と、ワイヤー97及び検出部93を根太本体31に固定する固定具95とから構成されている。ワイヤー97は、根太本体31内にて、U字状をなし、根太水路70の外面を支える。そして、2つの固定具95は、ワイヤー97両端部の検出部93が、根太本体31の上面に突出するよう根太水路支持金具91を根太本体31に固定する。検出部93は、根太水路70引上の操作量を検出するが、この検出部93は、棒状部に目盛りが表示されており、根太本体31の上面から突出する長さを計測することにより、操作量を検出できるようになっている。なお、大引水路支持金具41は、図4に示すように、検出部43を大引本体12上に垂設するよう固定具45で固定してもよいし、図5に示すように、検出部43を大引本体12上で屈曲させて固定するようにしてもよい。
【0029】
また、根太本体31の上部には、内方に折り曲げられた段部35が形成されており、段部35の内側に、根太水路70の上部が位置するようになっている。
【0030】
また、大引本体12と根太本体31は、L字金具39によって固定されている。このL字金具39は、大引本体12側はボルト16によって固定され、根太本体31側はボルト36で固定されている。
【0031】
矩形状の床パネル80は、隣接する根太30,30間に跨るように載置されており、これら複数の床パネル80によって平面マトリクス状に広がる床面が形成されている。床パネル80は、凹状に屈曲された補強部を有する芯材上に、床面材となる蓋部を固定することにより構成されている。そして、床パネル80の横方向の両端部には、前記根太本体3
1の段部35に嵌合可能な鍔部が形成されており、段部35と鍔部とが合致して、床パネル80の横方向の位置決めがなされる。
【0032】
また、横方向に隣接する床パネル80間には、間隙部83が形成され、この間隙部83の下方に根太本体31の上部開口が位置し、床上空間と根太水路70の内部空間とが連通することとなる。
【0033】
次に、本実施形態の床構造の施工手順について説明する。
【0034】
大引10、根太30、床パネル80は、それぞれ工場にて生産され、施工現場にて組立られる。工場では、大引水路60が、大引水路60に巻回された締結紐により、蛇腹部が圧縮された状態にて大引本体12の一端部から内挿される。この際、大引水路支持金具41は、大引本体12の内面に沿うよう弛緩した状態にしてあり、大引水路60内挿の支障とはならない。すなわち、大引水路60は、大引本体12の内径に対して、直径が充分小さい状態で内挿されるものである。
【0035】
そして、大引本体12に内挿された大引水路60は、大引本体12の上面に設けられた穴部15から、作業者により、巻回された締結紐が取り外されて蛇腹部が伸長する。これにより、大引水路60は大引本体12内で拡大する。
【0036】
なお、前記穴部15は、大引本体12の長手方向にて等間隔に複数設けられた大引水路支持金具41の近傍にそれぞれ形成されている。そして、前記締結紐は、大引水路60を大引本体12に内挿した際に、穴部15から作業可能な位置を考慮して締結されている。
【0037】
また、根太水路70も大引水路60と同様に、締結紐により蛇腹部が圧縮された状態にて根太本体31の一端部から内挿される。この際、根太水路支持金具91は、根太本体31の内面に沿うよう弛緩した状態にしてあり、根太水路70内挿の支障とはならない。なお、根太水路70は、根太本体31の開口した上部から押し込むようにしてもよい。
【0038】
そして、施工現場では、大引10と根太30が組み立てられ、支柱50の高さ調節を行うことにより、大引10及び根太30が、それぞれ水平位置となるように設定される。
【0039】
次に、大引水路支持金具41を調整することにより、大引水路60の長手方向に勾配が設けられる。
【0040】
大引水路支持金具41が弛緩した状態では、大引水路60の底面部63は、大引本体12の底部に当接している。すなわち、大引水路60の底面部63は、全長に亘り水平になっている。
【0041】
ここで、ワイヤー47を引き上げることにより、大引水路60は、図8に示すように、側面部(蛇腹部)65が圧縮されて、大引本体12内で持ち上げられる。前記ワイヤー47の引き上げ量は、検出部43の目盛りにより検出される。すなわち、大引本体12の上方に突出する検出部43の目盛りを任意の位置に合わせて固定具45にて固定することにより、底面部63の大引本体12内における上下位置を決めることができる。
【0042】
排水勾配としては、100分の1から200分の1程度あればよいので、仮に大引10の全長が10メートルだとすると、大引水路60の一端部を50ミリメートル持ち上げれば、200分の1の勾配を得ることができる。
【0043】
そして、図1に示すように、大引水路支持金具41(41a、41b、41c、41d
)は、大引本体12の長手方向において等間隔に設けられているので、例えば大引水路支持金具41aにおいては検出部43を目盛り4に合わせ、大引水路支持金具41bにておいては目盛り3に合わせ、大引水路支持金具41cにおいては検出部43を目盛り2に合わせ、大引水路支持金具41dにておいては目盛り1に合わせると、大引水路60が200分の1の勾配となるよう設定しておくことができる。なお、大引水路60の底面部63には、4条のリブ67が形成されているので、底面部の保形性は高く維持され、底面部が波状に変形する等の問題は生じない。
【0044】
一方、根太水路70も、大引水路60と同様にして、根太水路支持金具91を調整することにより、根太水路70に所定の勾配を形成する。
【0045】
そして、大引水路60及び根太水路70の勾配設定が完了した後、床パネル80を各根太30間に架設して、全体床を形成し、施工は終了する。
【0046】
そして、床パネル80上に洗浄水を散水すると、洗浄水は間隙部83から根太30の根太水路70に滴下し、設定された勾配により流れ、連通穴37、18から大引10の大引水路60内に流下する。大引水路60内の洗浄水は、さらに一方向に流れ、大引10に連通した排水路100に排水される。
【0047】
以上のように、本実施形態の床構造によれば、大引水路及び根太水路に、所望の勾配を容易に設定することができ、高い排水効率と簡易な施工性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態における床構造の部分斜視図。
【図2】本実施形態における大引と根太が交差する部分の断面図。
【図3】本実施形態における大引と根太が交差する部分の断面図。
【図4】本実施形態における要部の断面図。
【図5】本実施形態における要部の断面図。
【図6】本実施形態における大引の斜視図。
【図7】本実施形態における根太水路に勾配がなされる状態を示す図。
【図8】本実施形態における大引水路に勾配がなされる状態を示す図。
【符号の説明】
【0049】
10 大引
12 大引本体
30 根太
31 根太本体
41 大引水路支持金具
43 検出部
47 ワイヤー
60 大引水路
65 側面部(蛇腹部)
67 リブ
70 根太水路
77 リブ
65 側面部(蛇腹部)
80 床パネル
91 根太水路支持金具
93 検出部
97 ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水経路に連通する大引水路及びこの大引水路を内部に設けた大引本体を有する大引と、
前記大引水路に連通する根太水路及びこの根太水路を内部に設けた根太本体を有し前記大引上に並んで載置される複数の根太と、
前記各根太本体の間に架設された床パネルと、
大引水路の上下位置を大引水路長手方向において可変支承する大引水路支承部と、を備え、
前記根太水路は前記床パネルから滴下する水を前記大引水路に排水し、前記大引水路は長手方向において勾配を有する床構造。
【請求項2】
前記大引水路は、底面部と、この底面部から立設する可撓性を有する側面部とを備え、
前記大引水路支承部は、前記側面部を撓ませることにより、大引水路底面部の上下位置を可変する請求項1記載の床構造。
【請求項3】
前記大引水路支承部は、大引水路の底面部を引き上げる大引水路支持部を備え、この大引水路支持部は、大引水路の長手方向における複数箇所に設けられている請求項1又は2に記載の床構造。
【請求項4】
前記大引水路支持部は、大引水路を引き上げる操作量を検出する検出部を備える請求項3記載の床構造。
【請求項5】
前記大引水路を合成樹脂により成形し、大引水路の底面部にリブを設けた請求項1〜4のいずれかに記載の床構造。
【請求項6】
前記根太水路の上下位置を根太水路長手方向において可変支承する根太水路支承部を備え、
前記根太水路は長手方向において勾配を有する請求項1〜5のいずれかに記載の床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−85002(P2007−85002A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271226(P2005−271226)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000155333)株式会社木村技研 (29)
【Fターム(参考)】