説明

床構造

【課題】 高い排水効率を安定維持できる床構造を提供することを課題とする。また、施工性の良好な床構造を提供することを課題とする。
【解決手段】 排水経路に連通する根太水路52を内部に設けるとともに上部に開口部を設ける根太本体53を有して並列に載置される複数の根太50と、根太50を床上に支承するとともに根太50の高さ位置を可変する根太受け体43と、各根太本体53の間に架設された床パネル80と、を備え、根太50は床パネル80から滴下する液体を開口部から根太水路52に受ける床構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床構造に関し、さらに詳細には、床への散水によって床面の洗浄が可能な床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の床構造として、本発明者が先に発明した下記特許文献に記載の床構造が知られている。
より詳しくは、内部に水通路を有する大引上に樋形状をなす根太を複数並べて載置し、さらに端部がこの根太の上方に位置するように根太間に架設・位置決めされた矩形の床パネルを備えて床構造が構成されている。また、洗浄に伴って床パネル上に散水された水は、床パネルの端部から樋形状をなす根太に滴り落ち、根太内に滴り落ちた水は、根太の内側を通じて大引内部の水通路に流れ込み、大引に設けられる排水口を通じて外部に排水される構造になっている。
【特許文献1】特開2002−227378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記公報に開示された床構造は、井桁状の構造体にて細かく排水手段を講じてあるため、良好に排水を行えるものである。しかし、本発明者らは、高い排水効率をより安定して維持できる床構造の研究を行った結果、高い排水効率と共に良好な施工性を有する床構造の必要性をみいだした。
【0004】
本発明は、このような技術的背景を考慮してなされたものであり、施工性の良好な床構造を提供することを課題とする。また、高い排水効率を安定維持できる床構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した技術的課題を解決するため、本発明では以下の構成を採用した。
すなわち本発明は、排水経路に連通する根太水路を内部に設けるとともに上部に開口部を設ける根太本体を有して並列に載置される複数の根太と、前記根太を床上に支承するとともに根太の高さ位置を可変する根太受け体と、前記各根太本体の間に架設された床パネルと、を備え、前記根太は前記床パネルから滴下する液体を開口部から根太水路に受ける床構造とした。
【0006】
前記根太受け体は、根太に当接して荷重を受ける根太受け本体部と、この根太受け本体部を床側から支持する束部とを有し、前記根太受け本体部と束部とは脱着可能に設けられ、さらに前記根太受け体は、根太受け本体部と束部との接合位置を上下動する位置調整部を有する構成とすることができる。
【0007】
また、前記根太受け本体部は、当接した根太の外方に延びる拡開部を備え、この拡開部は外側に開放する切欠き部を有し、前記束部は、上下方向に延びるボルトを有し、このボルトが前記切欠き部に嵌挿して根太受け本体部と束部が接合する構成とすることができる。
【0008】
また、前記根太受け体は、前記束部側に固定され前記ボルトを内挿する固定ナットと、前記根太受け本体部側に位置し前記ボルトを内挿するロックナットと、前記ボルトに固定された回り止め部とを備え、前記ボルトの回転により前記根太受け本体部と束部との相対
位置が上下方向に可変する構成とすることができる。
【0009】
また、前記根太受け本体部と束部との間に、緩衝材を介在させた構成とすることができる。
【0010】
また、前記根太受け部は、各根太の長手方向における複数箇所に設けることができる。
前記位置調整部は、床面から根太受け本体部までの高さ位置を検出する検出部を備えることができる。
【0011】
なお、上記した課題を解決するための手段に記載の内容は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない限りにおいて、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、施工性の良好な床構造を提供することができる。また、高い排水効率を安定維持できる床構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態を説明する。
本実施形態に示す床ユニット(床構造)は、鋼材により形成された根太50を、根太受け体43を介して床スラブ100上に支持して構築してある。そして、直線状の根太50を所定間隔を開けて平行に複数本、床スラブ100上に配置している。
【0014】
前記根太50は、内部に根太水路52を有する根太本体53によって構成されている。
前記各根太50間の所定間隔は、後述する床パネル80の横方向の幅に対応して設定されている。また、根太本体51は上部が開口した樋形状をなしている。
【0015】
根太本体53は、底面部51aと、この底面部51aから立ち上がる側面部51b、51bと、側面部51b、51bの上端に連設して内方に向かう上面部51c、51cと、上面部51c、51cの先端に連設して下方に向かう段部51d、51dを備えている。そして、一方の段部51dと他方の段部51dの間は離反しており、開口を形成している。また、側面部51b、51bには、外面に凹条を呈する屈曲部51e、51eが形成されている。
根太50の長手方向における複数箇所には、根太50を床スラブ100の上方に支承する根太受け部43が取り付けられている。
【0016】
根太受け部43は、根太50に当接する根太受け本体部40と、根太受け本体部40に接続して床スラブ100上に根太50を支持する束部20から構成されている。
【0017】
根太受け本体部40は、所定幅の長方形状鉄板をプレス・打ち抜き加工して形成してあり、前記根太本体53の幅方向の外形に対応する形状となっている。すなわち、根太受け本体部40は、底面部40aと、底面部40aの両端から立設する側面部40b,40bと、側面部40b、40bの上端から外方に向けて延設される拡開部40c,40cとを備えている。また、側面部40b,40bの中段には内側に向けた突条である屈曲部40e,40eが形成されており、前記根太受け本体部53の屈曲部51e、51eに係合するようになっている。なお、拡開部40c、40cの先端には、下方に折曲する折曲部40d、40dが形成されている。
【0018】
また、拡開部40c,40cの幅方向中心部には、切欠部45,45が形成されている。この切欠部45,45は、拡開部40c、40cの略中心に位置する円状切欠部45b、45bと、円状切欠部45b、45bに連なり拡開部40c、40cの外端部に至るガ
イド切欠部45a,45aとから構成されている。
【0019】
前記根太受け本体部40に接続する束部20は、根太受け本体部40と同一幅のC型鋼材を基に形成されている。すなわち、束部20は、底面部20aと、底面部20aの内端から立設する内側部20bと、底面部20bの外端から立設する外側部20dと、前記内側部20bの上端に連設する上面部20cと、この上面部20cの先端から垂下する外側部20eとを備えている。前記上面部20cの中心部には、ボルト30を嵌挿する穴20fが形成されており、この穴20fの下方(上面部20cの裏面)には、固定ナット33が溶接固定されている。
【0020】
そして、穴20f及び固定ナット33に嵌挿されるボルト30には、円盤部35が前記上面部20cの上方に位置するよう取り付けられている。また、この円盤部35の上部には、弾性部材38が載置されている。また、ボルト30の上部には、下面に鍔部32aを有するロックナット32が取り付けられている。なお、円盤部35の外周には、舌片35aが中心部から90度間隔にて4個設けられている。
【0021】
また、底面部20aの裏面には、弾性材70が取り付けられている。
そして、一対の前記束部20と、一つの根太受け本体部40により、一組の根太受け部43が構成されている。
床パネル80の上部には、矩形天板の四隅を切り欠いた形状の床仕上材81が設けられている。床パネル80は、隣接する根太50,50間に跨るように載置されており、これら複数の床パネル80(床仕上材81)によって全体床面が形成されている。床パネル80は、凹状に屈曲された補強部を有する芯材上に、床面材となる蓋部を固定することにより構成されている。そして、横方向に隣接する床パネル80間には、間隙部55が形成され、この間隙部55の下方に根太本体53の上部開口が位置し、床上空間と根太水路52の内部空間とが連通することとなる。
【0022】
また、隣接する床パネル80の角部(隅部)間には、矩形天板90が設けられている。この矩形天板90の下方には、図8に示すように、床パネル80の隅部間に載置される皿部92が設けられている。この皿部92は、係合片97によって根太本体53に固定される係合板95と、ボルト93を介して位置固定されている。
【0023】
次に、本実施形態の床構造の施工例について説明する。
根太50、根太受け体43、床パネル80は、それぞれ工場にて生産され、施工現場にて組立られる。
【0024】
施工現場では、各根太50の長手方向における複数箇所に、根太受け本体部40を取り付ける。この取り付けは、根太受け本体部40の屈曲部40eと根太本体53の屈曲部51eとが嵌合することにより行われる。
【0025】
次に、床スラブ100上に、根太受け本体部40が取り付けられた複数の根太50を、所定間隔(床パネル80の幅に基づく間隔)にて並列載置する。この際、根太50の下方には、木材等の仮台を置いておくとよい。
【0026】
次に、各根太受け本体部40に、束部20を取り付ける。束部20は、ボルト30が穴20f及び固定ナット33に嵌挿されるとともに、ロックナット32がボルト30に緩めて取り付けられた状態であり、前記円盤部35及び弾性材38が根太受け本体部53の上面部40cの裏面側に位置するように、ボルト30の上部を、ガイド切欠部45aから円状切欠部45bまで横方向に挿入する。この挿入動作は、根太受け本体部40の側方(根太本体53の側方)から、束部20を垂直に立てたまま、水平移動させればよく、束部2
0を傾斜させたり、ボルト30を束部20から取り外す必要はない。
【0027】
そして、ロックナット32を拡開部40cに接するまで締める。この際、ロックナット32の鍔部32aは円状切欠部45b内に入り込む。また、ボルト30の固定ボルト33に対する上下位置は、予め設定された位置(0点位置)となっており、束部20の下端から根太本体53の上端(上面部51c)までの高さが一定となるように設定されている。
各束部20の各根太受け本体部40への取り付けが完了した後、前記仮台を根太50の下方から取り外す。
【0028】
次に、各根太50が水平となるように、根太受け本体部40の高さ調整を行う。すなわち、床スラブ100表面の段差や、床パネル80等の部材の成形誤差に起因する高さ誤差を解消するために、根太受け本体部40を上下動させる。これには、ボルト30を回転させることにより、円盤部35が弾性材38と共に上下動し、この円盤部35の上下動に対応して、根太受け本体部40が上下動する。そして、根太受け本体部40の上下位置決めがなされたら、円盤部35の舌片35aを、ガイド切欠部45b内から拡開部40cの上方に突出するよう折り曲げ、ボルト30の回り止めとする。なお、舌片35aの折り曲げ作業にあたっては、根太受け本体部40の位置決めを行った際に、ガイド切欠部45aに最も近接する舌片35aがガイド切欠部45aの下方に位置するように、ボルト30の回転を微調整するとよい。
【0029】
なお、根太水路52の長手方向における排水勾配を設定するよう、各束部20を調整することもできる。排水勾配としては、100分の1から200分の1程度あればよいので、仮に根太50の全長が10メートルだとすると、根太本体53の一端部を、他端部より50ミリメートル持ち上げれば、200分の1の勾配を得ることができる。
【0030】
そして、根太本体53の位置決め作業が完了した後、床パネル80を各根太50間に架設する。そして、各床パネル80の隅部付近に、矩形天板90を取り付けて、床パネル80及び矩形天板90により全体床を形成し、施工は終了する。
【0031】
そして、床パネル80上に洗浄水を散水すると、洗浄水は間隙部55から根太50の根太水路52に滴下し、設定された勾配により流れ、根太水路52に連通する排水路に排水される。
【0032】
以上のように、本実施形態の床構造によれば、根太の高さ調整を含めた床の施工を簡易な作業で行うことができる。したがって、施工現場の床スラブの段差や、床構造製品の成形誤差があったとしても、床パネルを水平に施工する作業、又は排水勾配を設ける施工作業等を、簡易な作業で短時間にて行うことができる。
本実施形態の床構造によれば、根太水路に、所望の勾配を容易に設定することができ、高い排水効率と簡易な施工性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態における床構造の部分断面図。
【図2】本実施形態における根太受け部の上面図。
【図3】本実施形態における根太受け部の部分斜視図。
【図4】本実施形態における要部の断面図。
【図5】本実施形態における要部の断面図。
【図6】本実施形態における床構造の全体斜視図。
【図7】図6に示す破線B部分の拡大斜視図。
【図8】本実施形態における要部の断面図。
【符号の説明】
【0034】
20f 穴
30 ボルト
32 ロックナット
33 固定ナット
40 根太受け本体部
40c 拡開部
43 根太受け体
45 切欠部
45a ガイド切欠部
45b 円状切欠部
50 根太
51a 底面部
51b 側面部
51c 上面部
51d 段部
51e 屈曲部
52 根太水路
53 根太本体
70 弾性材
80 床パネル
90 矩形天板
100 床スラブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水経路に連通する根太水路を内部に設けるとともに上部に開口部を設ける根太本体を有し、並列に載置される複数の根太と、
前記根太を床上に支承するとともに根太の高さ位置を可変する根太受け体と、
前記各根太本体の間に架設された床パネルと、を備え、
前記根太は前記床パネルから滴下する液体を開口部から根太水路に受ける床構造。
【請求項2】
前記根太受け体は、根太に当接して荷重を受ける根太受け本体部と、この根太受け本体部を床側から支持する束部とを有し、前記根太受け本体部と束部とは脱着可能に設けられ、さらに前記根太受け体は、根太受け本体部と束部との接合位置を上下動する位置調整部を有する請求項1記載の床構造。
【請求項3】
前記根太受け本体部は、当接した根太の外方に延びる拡開部を備え、この拡開部は外側に開放する切欠部を有し、
前記束部は、上下方向に延びるボルトを有し、このボルトが前記切欠部に嵌挿して根太受け本体部と束部が接合する請求項2記載の床構造。
【請求項4】
前記根太受け体は、前記束部側に固定され前記ボルトを内挿する固定ナットと、前記根太受け本体部側に位置し前記ボルトを内挿するロックナットと、前記ボルトに固定された回り止め部とを備え、
前記ボルトの回転により前記根太受け本体部と束部との相対位置が上下方向に可変する請求項3記載の床構造。
【請求項5】
前記根太受け本体部と束部との間に、緩衝材を介在させた請求項2〜4のいずれかに記載の床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−196156(P2008−196156A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30821(P2007−30821)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000155333)株式会社木村技研 (29)
【Fターム(参考)】