説明

床衝撃音低減用積層体

【課題】既設の木造建築物において重量床衝撃音を低減するとともに重量増を抑制することの容易な床衝撃音低減用積層体を提供する。
【解決手段】床衝撃音低減用積層体11は、木造建築物における階上において床材22上に敷設される。床衝撃音低減用積層体11は、無機繊維層12と粘弾性体層13との積層構造を有している。無機繊維層12は、床材22と粘弾性体層13との間に位置される。粘弾性体層13の厚みは、4mm以下である。粘弾性体層13の厚みは、2mm以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物において、重量床衝撃音を低減する床衝撃音低減用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物の床構造としては、例えばALCパネルの上層に床材が配置された構造が知られている。こうした床構造では、ALCパネルの防音性能、耐火性能等が発揮される(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−151770号公報
【特許文献2】特開2000−136593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既設の木造建築物において床材の下層に新たな部材を配置する衝撃音対策は、床材を剥がすことになるため、施工に手間が掛かる。本発明は、床材上に敷設する床衝撃音低減用積層体において、粘弾性体を用いて重量床衝撃音を低減させることができるとともに粘弾性体による重量増を抑制することのできる構成を見出すことでなされたものである。
【0005】
本発明の目的は、既設の木造建築物において重量床衝撃音を低減するとともに重量増を抑制することの容易な床衝撃音低減用積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の床衝撃音低減用積層体は、木造建築物の階上において床材上に敷設される床衝撃音低減用積層体であって、無機繊維層と粘弾性体層との積層構造を有し、前記無機繊維層は、前記床材と前記粘弾性体層との間に位置されるとともに、前記粘弾性体層の厚みが4mm以下であることを要旨とする。
【0007】
上述したように、床衝撃音低減用積層体は、床材上に敷設される構成であるため、既設の木造建築物であっても容易に設置することができる。ここで、無機繊維層と粘弾性体層との積層構造を有し、無機繊維層が床材と粘弾性体層との間に位置される床衝撃音低減用積層体において、粘弾性体層の厚みが4mmを超える場合、重量床衝撃音を低減する効果が高まり難くなる。上記のように粘弾性体層の厚みが4mm以下であることで、粘弾性体層の厚みが過剰に厚くなることを回避しつつも、重量床衝撃音を低減することが可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の床衝撃音低減用積層体において、前記粘弾性体層の厚みが2mm以上であることを要旨とする。
この構成によれば、粘弾性体層の成形が容易となり、粘弾性体層の強度も確保され易くなる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の床衝撃音低減用積層体において、前記無機繊維層の厚みが10〜100mmの範囲であることを要旨とする。
このように無機繊維層を構成することで、無機繊維層の強度が得られ易く、また床衝撃音低減用積層体の全体の厚みが過剰に厚くなることを回避することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、既設の木造建築物において重量床衝撃音を低減するとともに粘弾性体層による重量増を抑制することの容易な床衝撃音低減用積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態における床衝撃音低減用積層体、及び床構造の構成を部分的に示す概略側面図。
【図2】(a)は、実施例における床衝撃音低減用積層体の使用状態を示す概略側面図、(b)〜(d)は、比較例における床の積層構造を示す概略側面図。
【図3】粘弾性体層の厚みと重量床衝撃音レベルとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を木造住宅に適用される床衝撃音低減用積層体に具体化した一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示されるように、床衝撃音低減用積層体11は、二階の床21を構成する床材22上に敷設されることで、一階に伝わる重量床衝撃音を低減する。床衝撃音低減用積層体11は、無機繊維層12と粘弾性体層13との積層構造を有している。無機繊維層12は、床材22と粘弾性体層13との間に位置される。粘弾性体層13の厚みは、4mm以下である。
【0013】
まず、無機繊維層12について説明する。無機繊維層12としては、無機繊維を結合する結合剤により、板状に成形した成形体を用いることができる。無機繊維としては、例えばグラスウール、及びロックウール(人造鉱物繊維)が挙げられる。無機繊維層12の厚みは、10〜100mmの範囲であることが好ましい。無機繊維層12の厚みが10mm以上の場合、強度が得られ易くなる。一方、無機繊維層12の厚みを100mm以下とすることで、床衝撃音低減用積層体11の全体の厚みが過剰に厚くなることを回避することができる。
【0014】
無機繊維層12の密度は、好ましくは40〜300kg/mであり、より好ましくは40〜100kg/mであり、さらに好ましくは64〜96kg/mである。無機繊維層12の密度が40kg/m以上の場合、強度が得られ易くなる。一方、無機繊維層12の密度が300kg/m以下の場合、床衝撃音低減用積層体が過剰に重くなることを回避することができる。
【0015】
無機繊維層12の具体例としては、JIS A 6301:2007に規定されるグラスウール吸音材又はロックウール吸音材が挙げられる。
次に、粘弾性体層13について説明する。粘弾性体層13は、粘弾性材料をシート状に成形したものが用いられる。粘弾性材料としては、JIS K 6255:1996に準拠してリュプケ式反発弾性試験機を用いて25℃で測定される反発弾性率において、0〜41%の範囲である粘弾性材料が好ましく、0〜10%の範囲である粘弾性材料がより好ましく、0〜5%の範囲である粘弾性材料がさらに好ましい。
【0016】
粘弾性材料は、例えば市販の材料から上記反発弾性率の測定結果を基準に選択して用いることができる。また、粘弾性材料は、高分子材料にその反発弾性率を低下させる添加剤を配合して構成することができる。
【0017】
高分子材料の具体例としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びゴム類が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、スチレン・アクリロニトリル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、及びポリ塩化ビニリデンが挙げられる。
【0018】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、及びユリア樹脂が挙げられる。
ゴム類としては、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ポリイソブチレン、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルゴム、及び天然ゴムが挙げられる。
【0019】
高分子材料は、単独種を用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。粘弾性材料中における高分子材料の含有量は、例えば50〜70質量%の範囲とされる。
高分子材料の反発弾性を低下させる添加剤の具体例は、例えば、ベンゾチアジル系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ジフェニルアクリレート系化合物、正リン酸エステル系化合物、及び芳香族第二級アミン系化合物から選ばれる少なくとも一種を含む。
【0020】
ベンゾチアジル系化合物としては、N,N−ジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DCHBSA)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、N−シクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(CBS)、N−t−ブチルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(BBS)、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(OBS)、及びN,N−ジイソプロピルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DPBS)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0021】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、ベンゼン環にアゾール基が結合したベンゾトリアゾールを母核とし、これにフェニル基が結合したものであって、2−[2′−ハイドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラハイドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(2HPMMB)、2−(2′−ハイドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2HMPB)、2−(2′−ハイドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(2HBMPCB)、2−(2′−ハイドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(2HDBPCB)、及び2−(2′−ハイドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2HOPB)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0022】
ジフェニルアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(ECDPA)、及びオクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(OCDPA)から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0023】
正リン酸エステル系化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、及び2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0024】
芳香族第二級アミン系化合物としては、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N´−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N´−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N´−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N´−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、及び4,4´−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0025】
粘弾性材料中における上記添加剤の含有量は、好ましくは3〜30質量%であり、より好ましくは5〜30質量%であり、さらに好ましくは10〜30質量%である。
粘弾性材料には、上記添加剤以外の成分として、充填剤、難燃剤、腐食防止剤、着色剤、分散剤、湿潤剤等を必要に応じて含有させることもできる。
【0026】
上述した粘弾性材料を例えば押出成形やロール成形等の方法で成形することで、シート状をなす粘弾性体を得ることができる。粘弾性体は、非発泡体として構成されてもよいし、例えば粘弾性材料に発泡材を含有させることで発泡体として構成されてもよい。本実施形態では、粘弾性体(粘弾性体層13)は、非発泡体として構成されることで、強度が確保され易くなっている。
【0027】
粘弾性体の厚みは、4mm以下とされることで、粘弾性体層13として用いることができる。粘弾性体層13の厚みは、シート状をなす粘弾性体の成形、すなわち粘弾性体層13の成形が容易となり、粘弾性体層13の強度も確保され易いという観点から、2mm以上であることが好ましい。
【0028】
床衝撃音低減用積層体11は、無機繊維層12の上面に粘弾性体層13を載置することで形成される。粘弾性体層13は、無機繊維層12の上面全体を覆うように設けられる。これにより、無機繊維層12の上面は、粘弾性体層13により保護されることで、無機繊維層12に含まれる無機繊維の飛散が抑制される。
【0029】
次に、床21及びその周辺構造について説明する。図1に示される床21は、枠組壁工法による木造住宅における二階の床21である。床21は、床梁31に直交して取着される根太32上において、下張り23、ALCパネル24、及び床材22の順に積層された構造となっている。
【0030】
下張り23は、日本農林規格(JAS)に規定される構造用合板から構成される。ALCパネル24は、オートクレーブ養生した軽量気泡コンクリート(ALC:Autoclaved Lightweight aerated Concrete)からなるパネルであり、JIS A 5416:2007に記載される平パネルが用いられる。床材22は、木質系床材から構成される。この木質系床材は、特に限定されず、例えば単層構造であってもよいし、複層構造であってもよい。
【0031】
床梁31には、吊木41及び野縁受42を介して野縁43が設けられ、野縁43には天井材44が設けられる。天井材44の材質としては、例えば、木材、樹脂材、石膏等が用いられる。ここでは打ち上げ天井を一例として示しているが、例えば竿縁天井等に変更してもよい。また、図1では、各部材を連結する連結部材(釘やねじ等)、床21の周囲に配置される壁材等については省略している。
【0032】
続いて、床衝撃音低減用積層体11の使用方法を作用とともに説明する。
床衝撃音低減用積層体11は、床材22上において、無機繊維層12及び粘弾性体層13の順に積層することで設置される。このように、床衝撃音低減用積層体11は、既設の木造住宅において床材22を剥がすことなく、設置することができる。このとき、無機繊維層12は床材22上に固定せずに設置されるため、床衝撃音の低減が不要になった際には、床材22上から床衝撃音低減用積層体11を容易に取り除くことができる。またこのとき、粘弾性体層13は、無機繊維層12に接合されずに載置されているため、例えば粘弾性体層13のみを新しい粘弾性体層13に交換することが容易である。
【0033】
このように敷設された床衝撃音低減用積層体11上において、例えば子供が飛び跳ねたりすることで、床衝撃音低減用積層体11に衝撃が加わる。このとき、粘弾性体層13の粘弾性、及び無機繊維層12に含まれる空気による粘性により、衝撃エネルギーが熱エネルギーに変換される結果、階下に伝わる重量床衝撃音が低減される。ここで、粘弾性体層13の厚みが4mmを超える場合、重量床衝撃音を低減する効果が高まり難くなる。このため、粘弾性体層13の厚みが4mm以下であることで、粘弾性体層13の厚みが過剰に厚くなることを回避しつつも、重量床衝撃音を低減することが可能となる。
【0034】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)床衝撃音低減用積層体11は、床材22上に敷設される構成であるため、既設の木造住宅であっても容易に設置することができる。粘弾性体層13の厚みが4mm以下であることで、粘弾性体層13の厚みが過剰に厚くなることを回避しつつも、重量床衝撃音を低減することが可能となる。従って、既設の床21において重量床衝撃音を低減するとともに粘弾性体層13による重量増を抑制することの容易な床衝撃音低減用積層体11を提供することができる。
【0035】
このように、床材22上に敷設される床衝撃音低減用積層体11によれば、重量床衝撃音の低減が必要な箇所に床衝撃音低減用積層体11を設置又は移動することが容易である。また、重量床衝撃音の低減が不要になった際には、床材22上から床衝撃音低減用積層体を取り除くことが容易である。このため、例えば子供部屋の移動や家庭用ゲーム機の設置箇所等に応じた重量床衝撃音の対策を簡便に行うことができるようになる。
【0036】
(2)粘弾性体層13の厚みが2mm以上であることで、粘弾性体層13の成形が容易となり、粘弾性体層13の強度も確保され易くなる。粘弾性体層13の強度が確保され易くなることで、床衝撃音低減用積層体11の使用に際して耐久性が得られ易くなる。
【0037】
(3)無機繊維層12の厚みが10〜100mmの範囲であることで、無機繊維層12の強度が得られ易く、また床衝撃音低減用積層体11の全体の厚みが過剰に厚くなることを回避することができる。特に、床衝撃音低減用積層体11は、床材22上に敷設されるため、無機繊維層12の厚みが厚くなることで、天井に対する圧迫感が生じる傾向にある。この点、無機繊維層12の厚みを100mm以下とすることで、そうした圧迫感を抑制することができる。
【0038】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・前記床衝撃音低減用積層体11は、無機繊維層12の上面に粘弾性体層13を載置することで構成されているが、無機繊維層12と粘弾性体層13との間に接着層を設けることで、それら無機繊維層12と粘弾性体層13とを接着した構成に変更してもよい。
【0039】
・前記無機繊維層12は、床材22上に載置して使用しているが、無機繊維層12の下面に粘着層を設けることで、床材22の上面に無機繊維層12を粘着して使用することもできる。
【0040】
・前記粘弾性体層13の上面は、露出した状態として使用されているが、粘弾性体層13の上面に、例えば装飾、保護等を目的とした層を積層してもよい。
・前記無機繊維層12及び粘弾性体層13は、それぞれ単層構造とされているが、無機繊維層12及び粘弾性体層13の少なくとも一方を複層構造としてもよい。但し、粘弾性体層13については、成形が容易であるという観点から、単層構造であることが好ましい。
【0041】
・前記粘弾性体層13は、無機繊維層12の上面全体を覆うように設けられているが、例えば、粘弾性体層13の外形を無機繊維層12よりも小さく形成することで、無機繊維層12の一部が露出する構成に変更してもよい。
【0042】
・前記床衝撃音低減用積層体11は、例えば部屋全体の床材22上に敷設して用いてもよいし、部屋の床材22上に部分的に敷設して用いてもよい。
・床衝撃音低減用積層体11の適用される木造住宅は、特に限定されず、例えば木造軸組工法による木造住宅であってもよい。また、床衝撃音低減用積層体11の適用される床の構造についても、前記床21の構造に限定されず、例えばALCパネル24を省略した構造の床、根太32を介さずに下張り23を床梁31上に固定した構造の床に適用してもよい。
【0043】
・前記床衝撃音低減用積層体11は、部屋内の床材22に適用しているが、例えば廊下の床材に適用してもよい。また、前記床衝撃音低減用積層体11は、二階の床材22に適用しているが、階上、すなわち二階以上の床材に好適に適用することができる。
【0044】
・前記床衝撃音低減用積層体11は、木造住宅に限らず、階上にホールやスタジオを有する木造建築物において、重量床衝撃音の対策として適用することもできる。
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0045】
(イ)前記粘弾性体層は、JIS K 6255:1996に準拠してリュプケ式反発弾性試験機を用いて25℃で測定される反発弾性率において、0〜41%の粘弾性材料から構成される床衝撃音低減用積層体。
【0046】
(ロ)前記粘弾性体層は、前記無機繊維層の上面全体を覆う床衝撃音低減用積層体。
(ハ)前記無機繊維層は、JIS A 6301:2007に規定されるグラスウール吸音材又はロックウール吸音材から構成される床衝撃音低減用積層体。
【0047】
(ニ)前記無機繊維層の密度は、40〜300kg/mである床衝撃音低減用積層体。
(ホ)ALCパネルの上層となる床材上に敷設される床衝撃音低減用積層体。
【0048】
(ヘ)木造建築物の階上における床材と、前記床材上に設けられる床衝撃音低減用積層体とを備える床構造であって、前記床衝撃音低減用積層体は、粘弾性体層と無機繊維層との積層構造を有し、前記無機繊維層は、前記床材と前記粘弾性体層との間に位置されるとともに、前記粘弾性体層の厚みが4mm以下であることを特徴とする床構造。
【実施例】
【0049】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
エポキシ樹脂(ナガセケムテックス株式会社製)75質量部に25質量部のエチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートを混合した粘弾性材料を調製し、その粘弾性材料を成形することで、厚み2mmのシート状をなす粘弾性体を得た。ここで用いた粘弾性材料の上記反発弾性率は、3%である。
【0050】
得られた粘弾性体を無機繊維層12としてのグラスウールボード(パラマウント硝子工業株式会社製、パラボード(商品名)、厚み25mm、密度64kg/m)に重ね合わせることで、厚み2mmの粘弾性体層13を有する床衝撃音低減用積層体11を作製した。
【0051】
図1に示される床部分を有する枠組壁工法の実験用住宅(音源室及び受音室の床面積:3.6m×3.6m)において、音源室の床材上に床衝撃音低減用積層体を敷設した。
図2(a)には、床部分の積層構造の概略を示している。なお、下張り23は、2級の構造用合板(厚み12mm)であり、ALCパネル24は、平パネル(厚み36mm、JIS A 5416:2007に規定される密度:500kg/m)である。
【0052】
次に、重量床衝撃音の最大音圧レベル(dB)を測定した。この測定では、JIS A 1418−2:2000「建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法−第2部:標準重量衝撃源による方法」に準拠して、重量衝撃源としてバングマシンを用い、一般に低減されにくい低周波(63Hz)における最大音圧レベル(dB)の平均値を算出した。その結果を表1の“重量床衝撃音レベル(dB)”欄に示す。
【0053】
(実施例2)
粘弾性体層13の厚みを4mmに変更した以外は、実施例1と同様に、床衝撃音低減用積層体11を作製し、63Hzにおける最大音圧レベル(dB)の平均値を算出した。その結果を表1の“重量床衝撃音レベル(dB)”欄に示す。
【0054】
(比較例1)
図2(b)に示されるように粘弾性体層53の厚みを20mmに変更した以外は、実施例1と同様に、床衝撃音低減用積層体51を作製し、63Hzにおける最大音圧レベル(dB)の平均値を算出した。その結果を表1の“重量床衝撃音レベル(dB)”欄に示す。
【0055】
(比較例2)
比較例2では、図2(c)に示されるように床材22上に無機繊維層12のみを敷設した以外は、実施例1と同様に、63Hzにおける最大音圧レベル(dB)の平均値を算出した。その結果を表1の“重量床衝撃音レベル(dB)”欄に示す。
【0056】
(比較例3)
比較例3では、図2(d)に示されるように床材上に厚み20mmの粘弾性体層53のみを敷設した以外は、実施例1と同様に、63Hzにおける最大音圧レベル(dB)の平均値を算出した。その結果を表1の“重量床衝撃音レベル(dB)”欄に示す。
【0057】
(比較例4)
比較例4は、床材上に何も設けていない未対策の場合について、実施例1と同様に、63Hzにおける最大音圧レベル(dB)の平均値を算出した。その結果を表1の“重量床衝撃音レベル(dB)”欄に示す。
【0058】
【表1】

表1に示されるように、各実施例の重量床衝撃音レベルは、各比較例よりも低減されていることが分かる。ここで、図3には、粘弾性体層の厚みと床衝撃音レベルとの関係をグラフで示している。同グラフから、粘弾性体層の厚みが4mm以下であると、重量床衝撃音レベルを低減する効果が高いことが分かる。
【符号の説明】
【0059】
11…床衝撃音低減用積層体、12…無機繊維層、13…粘弾性体層、22…床材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築物の階上において床材上に敷設される床衝撃音低減用積層体であって、無機繊維層と粘弾性体層との積層構造を有し、前記無機繊維層は、前記床材と前記粘弾性体層との間に位置されるとともに、前記粘弾性体層の厚みが4mm以下であることを特徴とする床衝撃音低減用積層体。
【請求項2】
前記粘弾性体層の厚みが2mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の床衝撃音低減用積層体。
【請求項3】
前記無機繊維層の厚みが10〜100mmの範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の床衝撃音低減用積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−214997(P2012−214997A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79844(P2011−79844)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000106771)シーシーアイ株式会社 (245)
【Fターム(参考)】